説明

センサネットワークシステム

【課題】周囲環境を正確に測定するとともに、バッテリー交換頻度を少なくするセンサ端末を有するセンサネットワークシステムを提供すること。
【解決手段】センサネットワークシステム1000において、空気流の変動を測定するフローセンサを備え、このフローセンサの測定データをもとに、他の物理現象を測定する周囲環境測定センサの起動タイミングを決めるセンサ端末5を有するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に有するセンサからの測定データの受信、及び、該センサに対して動作制御を行うセンサ端末と、通信制御装置を介して該センサ端末と相互にデータ通信を行う外部装置とを有し、一定空間内での環境を監視及び管理するセンサネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、通信技術、特に無線通信技術の進歩に伴い、複数のセンサ付無線端末を散在させ、その端末同士が協調して環境や物理的状況を採取する無線ネットワークシステムが提唱されている。このようなシステム概念はセンサネットワークシステムと呼ばれており、多様な分野への応用が期待されている。
【0003】
一例をあげると、発電設備から末端の電力機器までをセンサ付端末のネットワークで結ぶ構成がある。このような構成からなるセンサネットワークシステムは、電力需要と供給双方の情報が取得可能なので、電力網内での需給バランスを最適化できる。この構成はスマートグリッドと呼ばれ、米国で提案されたシステムである。
【0004】
また、センサネットワークシステムは、上記のような非常に広範囲における情報取得を目的としたものだけではなく、限定的な空間管理を目的に情報取得を行うものもある。例えば、半導体製造におけるクリーンルームの清浄度監視及び管理、病院等の空気感染防止のための空調管理、ホームセキュリティ関連分野(車両盗難監視、屋内不審者侵入監視、火災監視等)等、センサネットワークシステムを応用できる分野は幅広い。
【0005】
ここでは、一例として、クリーンルームの清浄度監視及び管理について適用されるセンサネットワークシステムをとりあげる。
【0006】
近年の半導体製造技術は微細化の一途をたどり、半導体製造装置を設置するクリーンルーム内の清浄度の向上およびその維持への要求が高まっている。このため、クリーンルーム内に設置する製造装置や空調機器に対し、発塵量の低減を目的とした開発が進められている。同時に、発塵の主因の一つである作業者数の低減を図ることで、クリーンルーム内の無人化及び自動化が進められている。このため、特許文献1では、クリーンルーム内の清浄度を自動的に情報取得し、この情報を外部に無線送信するシステムが開示されている(例えば、図2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−19095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようなシステムでは、センサの駆動や無線通信を行う電力源となるバッテリーが必要不可欠な構成となる。つまり、上記システムでは、センシングに要する電力及び無線通信に要する電力全てをバッテリーが賄うこととなる。このため、上記システムにおいて、クリーンルームの状況(例えば、クリーンルーム内の清浄度合いなど)を正確に取得するために短時間間隔で情報収集及び通信を行うと、バッテリー交換が必要となる時間間隔が非常に短くなる。一方で、上記システムにおいて、クリーンルームの状況を長時間間隔で取得すると、異常な状況を把握しそこなうという課題があった。換言すると、上記システムでは、当該システムの配置される正確な状況変動の把握と、バッテリーの長寿命化と、を両立できないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、このような事情を鑑みてなされたもので、その目的は、センサネットワークシステムの配置される状況変動を正確に把握するとともに、バッテリー電力を有効かつ長期間活用するセンサネットワークシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の手段を提供する。
本発明のセンサネットワークシステムは、複数のセンサを有し、該センサからの測定データに基づいて、該センサに対して動作制御を行うセンサ端末と、該センサ端末と相互にデータ通信を行う外部装置とを有するセンサネットワークシステムであって、前記センサ端末は、前記センサが、周囲の空気流の流量を測定し当該測定の結果に基づく測定データを生成するフローセンサと、周囲環境の物理量を測定し当該測定の結果に基づく測定データを生成する周囲環境測定センサと、を含み、前記周囲環境測定センサが、起動後に測定を行った後に停止し、所定時間後に再度測定を行う動作を繰り返す間欠測定を行うように構成され、前記フローセンサの測定データに応じて、前記所定時間を決定して前記周囲環境測定センサに前記所定時間後に再度測定を行わせるための制御信号を送信するとともに、前記周囲環境測定センサの測定データを取得可能な制御部を有し、前記制御部及び前記外部装置とのデータの送受信が可能に構成され、前記制御部より送信される前記周囲環境測定センサの測定データを受信して前記外部装置へ送信し、前記外部装置から受信する信号を前記制御部へ送信する通信制御装置を備えたことを特徴とする。
かかる特徴によれば、周囲環境を変化させる可能性のある空気流が発生したときだけセンサを起動して周囲環境を測定することができ、それ以外の時間はセンサが停止しているので消費電力を最低限度に抑えることができる。また、一度センサが周囲環境を測定したあと、再度測定するべき適切な時刻を推定することによって、周囲環境が有意な変化を起こすタイミングでの測定が可能となり、不必要な測定を低減することができる。これにより、センサ端末のバッテリー寿命を長くでき、バッテリー交換頻度を低減することが可能となる。
【0011】
また、本発明のセンサネットワークシステムは、制御部が、フローセンサの測定データが予め定められた基準値となるデータから変動した時に、周囲環境測定センサに起動信号を送信することを特徴とする。
かかる特徴によれば、周囲環境の変動をフローセンサが測定し、周囲環境の変動情報を元に、必要な周囲環境測定センサのみを起動させることができる。このため、周囲環境の変動によって、必要な周囲環境変動センサのみが起動するため、必要な周囲環境変動を測定しそこなうことがなくなる。また、不必要な周囲環境測定センサは起動しないため、電力消費がなく、バッテリー寿命を長くでき、バッテリー交換頻度を低減することが可能となる。
【0012】
また、本発明のセンサネットワークシステムは、前記センサ端末は複数備わり、各センサ端末にはそれぞれのセンサ端末を一意に特定するための識別番号が割り振られており、前記制御部は、自機の前記識別番号を付加した測定データを前記通信制御装置に送信することを特徴とする。
かかる特徴によれば、外部装置はどのセンサ端末からの通信かを容易に判断できる。このため、効率的な情報処理が可能となる。
【0013】
また、本発明のセンサネットワークシステムは、フローセンサが、空気流によって発電することにより駆動することを特徴とする。
かかる特徴によれば、フローセンサはバッテリーからの電力供給無しで駆動することができるので、バッテリーの長寿命化ができ、バッテリー交換頻度を低減することが可能となる。
【0014】
また、本発明のセンサネットワークシステムは、前記制御部は、前記フローセンサの測定データとともに、前記周囲環境測定センサが起動後に行なった測定の結果に基づく測定データに応じて、前記所定時間を決定することを特徴とする。
かかる特徴によれば、周囲環境が有意な変動を起こしたときをねらってセンサによる測定を行うことができるので、不必要な測定を最低限度に低減することで、消費電力を低減できる。
【0015】
また、本発明のセンサネットワークシステムは、制御部が、周囲環境測定センサが間欠測定を行う回数を、フローセンサの測定データに応じて決定することを特徴とする。
かかる特徴によれば、周囲環境が有意な変動を起こしたときをねらってセンサによる測定を行い、変動が無くなることが予想できるときには測定を停止することができるので、不必要な測定を最低限度に低減することで、消費電力を低減できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、周囲環境の測定が必要なときのみ測定を行い、測定データ送信することで、バッテリー電力を有効かつ長時間活用できるため、周囲環境情報を精度よく把握できるとともにバッテリー交換頻度を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るセンサネットワークシステムの構成を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るセンサネットワークシステムにおけるセンサ端末の構成を示す構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るセンサネットワークシステムにおける通信制御装置の構成を示す構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るセンサネットワークシステムにおける外部装置の構成を示す構成図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るセンサネットワークシステムの駆動状態を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るパーティクル濃度の時間変化を示す。
【図7】本発明の第2の実施形態における、フローセンサ511と周囲環境測定センサ521の駆動状態を示す。
【図8】本発明の第3の実施形態における、フローセンサ511と周囲環境測定センサ521の駆動状態を示す。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るパーティクル濃度の時間変化を示す。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るパーティクル濃度の時間変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る第1の実施形態を、図1から図5を参照して説明する。なお、本実施形態に係るセンサネットワークシステム1000は、半導体製造を行うクリーンルーム内の空気清浄度を監視及び管理に用いるシステムである。
(全体構成)
図1は、本実施形態に係るセンサネットワークシステム1000の構成を示す図である。センサネットワークシステム1000は、センサネットワーク1及び外部装置2と、センサネットワーク1と外部装置2相互を接続する通信回線3からなる。
センサネットワーク1は、通信制御装置4と複数のセンサ端末5からなる。さらに、通信制御装置4は前述の通信回線3で外部装置2と接続されている。複数のセンサ端末5各々と通信制御装置4とは無線通信により、相互にデータ送受信できる。
【0019】
複数のセンサ端末5各々は異なった識別番号(ID)が設定され、複数のセンサ端末5を個別に識別できるよう構成されている。
なお、図1では、通信制御装置4と外部装置2とは別に設け、通信回線3で結ぶ構成を示したが、通信制御装置4に外部装置2の機能を付加して同一装置としてもよい。
また、図1では外部装置2と接続されるセンサネットワーク1は単数であるが、複数のセンサネットワーク1が存在する構成も可能である。
【0020】
(センサ端末構成)
センサネットワーク1におけるセンサ端末5の構成について、以下に詳細に示す。図2に、センサ端末5の構成を示す。
センサ端末5は、フローセンサ511、周囲環境測定センサ521、522、523、CPU541、記憶部542、無線通信用IC561、バッテリー57、アンテナ562からなる。
【0021】
フローセンサ511は、周囲の空気流量を測定するセンサである。フローセンサ511は、例えば、熱源からの温度分布を利用して測定する方式、超音波の伝達速度差を利用して測定する方式、ピトー管、電歪素子の歪を利用して測定する方式、等のセンサである。本実施形態に係るフローセンサ511は、空気流によって内部構造が機械的に移動して発電を行う圧電素子を搭載したセンサである。この原理に基づくセンサは、待機時の消費電力がほぼゼロであるので、空気流が起きない時間が長く続くようなクリーンルームにおいて、システム全体の消費電力を最小限に抑えることができる。そして、フローセンサ511は、空気流量を測定した際、その測定結果を測定データとしてCPU541へ送信する。
【0022】
周囲環境測定センサ521、522、523は、周囲環境の物理量を計測するセンサである。具体的に、周囲環境測定センサ521、522、523は、例えば、温度、湿度、気圧、振動、塵埃数、空気流、照度、画像等を測定するセンサである。使用するセンサの種類は、測定したい物理量に応じて選定すればよい。そして、周囲環境測定センサ521、522、523は、周囲環境の物理量を測定した際、その測定結果を測定データとしてCPU541へ送信する。
【0023】
CPU541は、演算処理機能等を備えたマイクロコンピュータ等から構成される。CPU541は、各センサ及び無線通信用IC561、記憶部542それぞれと接続されている。そして、CPU541は、フローセンサ511及び周囲環境測定センサ521、522、523が取得した測定データのデータ処理及び無線通信用IC561や記憶部542への指示、各種センサの制御を行う。
【0024】
記憶部542は、センサ端末IDや各種センサが取得した測定データ、CPU541が用いる各種プログラムが格納されている。
無線通信用IC561は、CPU541からの指示を元に、アンテナ562を経て通信制御装置4と無線通信によるデータ送受信を行う。
【0025】
ここで、CPU541と記憶部542と無線通信用IC561が、制御部を構成する。
バッテリー57はアンテナ562をのぞくセンサ端末5に備わる他の構成に接続され、当該他の構成に対して電力供給を行う。
【0026】
(通信制御装置)
次に、センサネットワーク1における通信制御装置4の構成について説明する。図3に、通信制御装置4の構成を示す。通信制御装置4は、CPU441、記憶部442、無線通信用IC461、アンテナ462、外部装置2との通信用インターフェース49、電源IC471からなる。
無線通信用IC461は、アンテナ462を経て、センサ端末5から送信されるデータの受信及び各センサ端末5への制御命令の送信等を無線通信で行う。
【0027】
CPU441は、無線通信用IC461を経て受信した各センサ端末5からのデータ処理、外部装置2に接続される通信用インターフェース49に対するデータ送受信制御、記憶部442へのデータ読み書き等を制御する。
記憶部442は、各センサ端末5からのデータ、CPU441が用いる各種プログラムが格納されている。
通信インターフェース49は、通信回線3を経て、外部装置2と通信制御装置4との間でデータ送受信を行う。
【0028】
また、通信制御装置4全体を駆動する電力は、外部から有線472で供給され、電源IC471を経て各構成に電力を供給する構成である。しかし、電力の有線供給が難しい場合、通信制御装置4内にバッテリーを搭載し、バッテリーから通信制御装置4の各構成に電力を供給する構成でも実施可能である。
【0029】
(外部装置)
次に、外部装置2の構成について説明する。図4に、外部装置2の構成を示す。
外部装置2は、センサネットワーク1から送信されるデータの各種処理を行うための装置であり、例えば、通信機能を備えたコンピュータによって構成される。
外部装置2は、CPU241、記憶部242、通信制御装置4との通信用インターフェース29からなり、加えて、入力部281、表示部282を備えている。
通信用インターフェース29は、通信回線3を経て、通信制御装置4との間でデータ送受信を行う。
【0030】
CPU241は通信用インターフェース29で送受信されるデータの各種処理を行う。同時に、CPU241は、その演算機能に基づいて、通信制御装置4や各センサ端末5への指示制御を行うことができる。CPU241と接続された記憶部242はCPU241における各種処理を行うための各種プログラムやデータを記憶している。
また、CPU241には、CPU241を介して記憶部242へ各種情報の入力、更新等を行うための入力部281(キーボード、マウス等)や表示部282(ディスプレス等)が接続されている。
【0031】
上記構成により、外部装置2は、センサネットワーク1からの測定データに応じて、ユーザに対する情報提供や各種情報処理を行うものであるが、外部装置2の構成は、図4に示す構造に限られるものではない。例えば、外部装置2として、各種ポータブル電子機器や携帯電話機等を採用してもよい。
【0032】
(センサネットワークの動作)
次に、本実施の形態にかかるセンサネットワークシステム1000の動作について図5と図6を用いて説明する。図5はフローセンサ511と、周囲環境測定センサ521の駆動パターンを示すタイミングチャートである。図5において、横軸は時間tであり、縦軸はそれぞれのセンサの状態(駆動状態又は停止状態)を示す。図6はパーティクル濃度dの時間変化を示す。ここで、図6に示すdthは、パーティクル濃度dの正常範囲の上限値を示す。また、図6の(1)は、フローセンサ511の検知・測定する空気流が所定の流量(例えば、予め設定された閾値となる流量)以内である場合のパーティクル濃度dの時間変化を、図6の(2)は、フローセンサ511の検知・測定する空気流が所定の流量を上回る場合のパーティクル濃度dの時間変化を、それぞれ模式的に表している。
【0033】
まず、図5の(1)に基づき、周囲環境測定センサ521の標準的な駆動パターンについて説明する。はじめに、時刻t0でフローセンサ511が空気流を検知・測定すると、その信号(測定データ)がCPU541に送られる。すると、CPU541は、予め定められた空気流の流量の基準値となるデータを記憶部542より抽出して測定データとの比較を行い、測定データが変動したと判断すると、周囲環境測定センサ521へ起動信号を送信して時刻t1において周囲環境測定センサ521を起動させる。すると、周囲環境測定センサ521は室内のパーティクル濃度dを測定し、その測定結果のデータであるd11をCPU541に送信する。そして、図6の(1)で示すように、d11はパーティクル濃度dの正常範囲の上限値dthよりも大きいため、CPU541が異常値と判断する。なお、周囲環境測定センサ521以外の他の周囲環境測定センサ522、523はパーティクル濃度dを測定するセンサでもよいし、他の物理量たとえば温度や湿度を測定するセンサでもよいが、ここでは図示を略している。ここで、フローセンサ511の測定した空気流が所定の流量(例えば、予め設定された閾値となる流量)以内である場合は、周囲環境測定センサ521は最初の測定時刻t1から所定時間dt1だけ経過した時刻t12において、再度周囲環境を測定し、その測定結果のデータであるdokをCPU541に送信し、その後停止する。図6に示すように、dokは正常範囲の上限値dthより小さいため、CPU541が正常値と判断する。以上のように、フローセンサ511が一回起動すると、周囲環境測定センサ521は2回測定を行う。そして、その測定における時間間隔dt1はあらかじめ決まっている。つまり、dt1は、空気流が上記所定の流量の場合に、その空気流によってまき上がるパーティクルがその後落下して、パーティクル濃度dが正常範囲に戻ることを期待できる時間に設定される。そうすることで、CPU541はパーティクル濃度が正常値に戻ったことを確認できるので、次に空気流が発生するまで周囲環境測定センサ521は停止状態を継続するため、消費電力はほとんどゼロに近い。
【0034】
次に、図5の(2)に基づき、フローセンサ511の検知・測定する空気流が特別に大きかった場合の、周囲環境測定センサ521の駆動パターンについて説明する。はじめに、時刻t0でフローセンサ511が空気流を検知し、その流量が所定の値を超えるものであった場合は、その結果を表す信号がCPU541に送られる。次いで、CPU541は時刻t1において周囲環境測定センサ521を起動する。すると、周囲環境測定センサ521はパーティクル濃度dを測定し、その測定結果のデータであるd12をCPU541に送信する。ここで、空気流が大きいと、より多くのパーティクルがまき上げられていることが予想されるため、図6の(2)に図示されるように、パーティクル濃度dが元の値に戻る(つまり、d12から正常範囲の上限値dthよりも小さい値になる)ために必要な時間もより長くなると予想される。そこで、そのような場合には2回目の測定までの経過時間dt2をdt1よりも長くすることで、パーティクル濃度dが元の値に戻ったことを確認する時刻t13はt12よりも後に設定されることになる。この時刻t13で再度測定して得られた結果データdokは正常範囲の上限値dthよりも小さいため、CPU541は正常値に戻ったと判断できる。このあとは、次に空気流が発生するまで周囲環境測定センサ521は停止状態を継続するため、消費電力はほとんどゼロに近い。もし2回目の測定までの経過時間dt2がdt1と同じ値に設定されていると、2回目の測定での結果データはdngとなり、これは正常範囲の上限値dthよりも高いため、まだ異常状態が継続していることになり、再度の測定が必要となってしまう。
【0035】
ここで、上述のセンサネットワークシステム1000の動作は、具体的には、以下のようにして実現する。つまり、記憶部542には、フローセンサ511がCPU541に対して出力する測定データの信号のレベル(例えば、ハイレベル/ローレベル)に対応付けた時間間隔(dt2/dt1)が予め記憶される。そして、CPU541は、フローセンサ511より取得した信号のレベルがハイレベルであった場合(つまり、検知・測定された空気流が特別に大きかった場合)、時間間隔dt2を記憶部542より抽出する。一方で、CPU541は、フローセンサ511より取得した信号のレベルがローレベルであった場合(つまり、検知・測定された空気流が所定の流量以内である場合)、時間間隔dt1を記憶部542より抽出する。次に、CPU541は、抽出した時間間隔dt2又はdt1に応じて周囲環境測定センサ521の駆動パターン(図5の(2)又は(1))を切換えるための指示信号を、当該周囲環境測定センサ521へ送信する。すると、周囲環境測定センサ521は、受信した指示信号に基づくタイミングでパーティクル濃度dを2回測定し、その後停止状態に至る。
【0036】
このように、CPU541は、最初にフローセンサ511が検知・測定した空気流の大きさによって、周囲環境測定センサ521がパーティクル濃度dを測定する時間間隔を異なるものにすることで、周囲環境測定センサ521は2回駆動するのみでそれ以外の時間は停止しているにも関わらず、パーティクル濃度が正常値に戻ったことを正確に確認することができる。基本的に、CPU541は、パーティクルがまき上がる可能性が高いときだけ周囲環境測定センサ521を駆動してパーティクル濃度dを測定させ、それ以外の時間は停止させることでセンサネットワークシステム1000全体の消費電力を低減することができる。更には、CPU541は、パーティクル濃度dが正常値に戻るタイミングに一致させて2回目の測定を囲環境測定センサ521に実行させるために、無駄な測定が無くなり、センサネットワークシステム1000全体の消費電力を最小化させることができる。
【0037】
(第2の実施形態)
図7は本発明の第2の実施形態における、フローセンサ511と周囲環境測定センサ521の駆動パターンを示すタイミングチャートである。図7の(1)は標準的な駆動パターンを示し、第1の実施形態で述べた図5の(1)に係る駆動パターンと同じであるので説明を省略する。図7の(2)はフローセンサ511が測定した空気流が特別に大きかった場合の駆動パターンを示したものであるが、2回目の周囲環境測定までの時間間隔dt1は図7の(1)と同じに設定してある。ただし、図7の(2)の駆動パターンでは、測定回数が計4回に増やしてある。こうすることによって、CPU541は、パーティクルが多くまき上がっていることが予想されるときだけ周囲環境測定センサ521の測定回数を増やすことで、パーティクル濃度dが正常値に戻ったことを正確に把握することができる。一方、CPU541は、パーティクルのまき上がり量が通常程度であるときには、測定回数は計2回にして、それ以外の時間について周囲環境測定センサ521を停止させているため、センサネットワークシステム1000全体の消費電力を極めて低い水準に留めることができる。
【0038】
ここで、本実施形態2において、記憶部542には、フローセンサ511がCPU541に対して出力する信号のレベル(例えば、ハイレベル/ローレベル)に対応付けた周囲環境測定センサ521の測定回数(4回/2回)が予め記憶される。なお、時間間隔は、上記信号のレベルに依らずにdt1が予め記憶部542に記憶される。つまり、CPU541は、フローセンサ511より取得した信号のレベルに応じた測定回数を記憶部542より抽出することで、上述の駆動パターンの切換えを実現できる。
【0039】
(第3の実施形態)
図8と図9は本発明の第3の実施形態における、フローセンサ511と周囲環境測定センサ521の駆動パターンを示すタイミングチャート、パーティクル濃度dの時間変化をそれぞれ示す図である。図8の(1)は標準的な駆動パターンを示し、図9の(1)は当該駆動パターンに基づくパーティクル濃度dの時間変化を示し、第1の実施形態で述べた図5の(1)に係る駆動パターンや図6の(1)に係るパーティクル濃度dの時間変化と同じであるので説明を省略する。
【0040】
図8の(2)はフローセンサ511が測定した空気流が特別に大きかった場合の駆動パターンを示したものであるが、周囲環境測定センサ521が2回目に測定するまでの時間間隔dt2は、図8の(1)の場合の時間間隔dt1よりも長く設定してある。一方、その後の周囲環境測定センサ521が測定を行う時間間隔dt3、dt4は時間間隔dt2よりも段階的に短くなるように設定している。つまり、CPU541は、図9に示すように、パーティクル濃度dが正常範囲の上限値dthを下回ると予測される時刻に近いタイミングを表す測定時刻t13、t14、t15において、複数回にわたって周囲環境測定センサ521にパーティクル濃度dを測定させるため、正常範囲に戻ったことを一層確実に把握することができる。一方、CPU541は、それ以外の時間では周囲環境測定センサ521を停止させるため、センサネットワークシステム1000全体の消費電力を極めて低い水準に留めることができる。
【0041】
ここで、本実施形態3において、記憶部542には、フローセンサ511がCPU541に対して出力する信号のレベル(例えば、ハイレベル/ローレベル)に対応付けて、周囲環境測定センサ521の測定回数(4回/2回)が予め記憶される。なお、記憶部542には、測定回数が2回の場合の時間間隔dt1と、が予め記憶される。
【0042】
つまり、CPU541は、フローセンサ511より取得した信号のレベルに応じた測定回数を記憶部542より抽出する。そして、CPU541は、信号のレベルがローレベルの場合は時間間隔dt1に基づいて図8の(1)に示す駆動パターンを実現する、一方、CPU541は、信号のレベルがハイレベルの場合、時刻t1における周囲環境測定センサ521からの測定データを取得した後、当該測定データに基づいて、パーティクル濃度dがdthを下回ると予測される時刻に近いタイミング(例えば測定時刻t13、t14、t15)で、複数回にわたって周囲環境測定センサ521にパーティクル濃度dを測定させるように、dt2、dt3、dt4を決定する。これにより、CPU541は、図8の(2)に示す駆動パターンを実現できる。なお、dt2(はじめの時間間隔)については、予め記憶部542に記憶しておき、CPU541はdt3以降の時間間隔を決定するように構成しても良い。
以上が、クリーンルーム内の塵埃量監視及び管理に応用した場合のセンサネットワークシステム1000の動作である。
【0043】
また、長期間、空気流を測定せず、無線通信が発生しないセンサ端末5は、CPU541が一定期間毎に、端末IDのみを送信する制御指示を無線通信用IC561に行う。これは、センサ端末5のバッテリー切れやセンサ端末の故障を測定するためである。この端末IDのみの無線通信がなされないセンサ端末のみを、バッテリー交換や故障診断を行うことで、簡易にセンサネットワークシステム全体の維持管理ができる。
【0044】
(第4の実施形態)
本発明はオフィスの火災測定システムにも応用できる。センサネットワークシステムの基本構成は図1と同じであるので説明を省略する。第1の実施形態との相違は、周囲環境測定センサ521〜523のうち、522に温度測定センサを、523に煙感知センサを用いた点である。図10は温度センサ522により測定される室内の温度の時間変化を示す。
【0045】
まず、図10の(1)は標準的な駆動パターンを示す。フローセンサ511が空気流を検知・測定すると、その信号がCPU541に送られ、CPU541は時刻t1において温度センサ522を起動する。温度センサ522は室内の温度を測定し、その測定結果のデータであるTp11をCPU541に送信する。Tp11は温度の正常範囲の上限値Tpthよりも高いため異常値と言えるが、火災の発生可能性が出る温度Tpcrよりは低いため、システムは状況の監視を継続する。次に、温度センサ522は所定時間後の時刻t12において再度温度を測定し、測定結果の温度がTpthよりも低くなっているので、火災は起きなかったと判断して停止する。システムは次回にフローセンサ511が起動するまで停止状態となる。
【0046】
次いで、(2)は空気流が特別に大きかった場合の駆動パターンを示す。フローセンサ511が空気流を検知・測定し、その流量が所定の値を超えるものであった場合は、その結果を表す信号がCPU541に送られ、CPU541は時刻t1において温度センサ522を起動する。温度センサ522は温度を測定し、その測定結果のデータであるTp12を得る。Tp12は火災の発生可能性が出る温度Tpcrより高いため、緊急信号をCPU541に送信する。同時に、その温度Tp12に応じて次回の測定時刻t13を決定し、測定する。この場合はt13とt1との時間差はほとんど無く、連続して測定している状態に近い。その測定を繰り返したあと時刻t15で、温度が火災の発生可能性が出る温度Tpcrよりも低くなると、火災は起きなかったと判断し、次回の測定までの時間を長くする。時刻t16において正常範囲の上限値Tpth以下の温度になったので、正常状態に戻ったと判断して、停止する。システムは次回にフローセンサ511が起動するまで停止状態となる。このように、フローセンサ511が起動した際に測定された空気流の流量に応じて周囲環境測定センサ522の測定タイミングを決定することで、不必要な測定は最小限に抑えながら、必要時には多数回の測定を連続して行うことができる。必要な測定は行うことを確保して、システム全体の消費電力を最小限に抑えることができる。また、各センサは常時停止しており、必要時にのみ駆動するため、センサ端末に搭載されたバッテリーの寿命を長くすることができ、バッテリー交換頻度を低減することができる。
【0047】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。また、上述した各実施形態を適宜組み合わせて採用することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 センサネットワーク
2 外部装置
3 通信回線
4 通信制御装置
5 センサ端末
29 通信用インターフェース
49 通信用インターフェース
57 バッテリー
241 CPU
242 記憶部
281 入力部
282 表示部
441 CPU
442 記憶部
452 記憶部
461 無線通信用IC
471 電源IC
472 有線
462 アンテナ
511 フローセンサ
521、522、523 周囲環境測定センサ
541 CPU
542 記憶部
561 無線通信用IC
582 アンテナ
1000 センサネットワークシステム
d、d11、d12、dng、dth、dok パーティクル濃度
dt1、dt2、dt3、dt4 時間間隔
t、t0、t1、t12、t13、t14、t15、t16 時刻
Tpth、Tp11、Tpcr、Tp12 温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサを有し、該センサからの測定データに基づいて、該センサに対して動作制御を行うセンサ端末と、該センサ端末と相互にデータ通信を行う外部装置とを有するセンサネットワークシステムであって、
前記センサ端末は、
前記センサが、周囲の空気流の流量を測定し当該測定の結果に基づく測定データを生成するフローセンサと、周囲環境の物理量を測定し当該測定の結果に基づく測定データを生成する周囲環境測定センサと、を含み、
前記周囲環境測定センサが、起動後に測定を行った後に停止し、所定時間後に再度測定を行う動作を繰り返す間欠測定を行うように構成され、
前記フローセンサの測定データに応じて、前記所定時間を決定して前記周囲環境測定センサに前記所定時間後に再度測定を行わせるための制御信号を送信するとともに、前記周囲環境測定センサの測定データを取得可能な制御部を有し、
前記制御部及び前記外部装置とのデータの送受信が可能に構成され、前記制御部より送信される前記周囲環境測定センサの測定データを受信して前記外部装置へ送信し、前記外部装置から受信する信号を前記制御部へ送信する通信制御装置を備えたことを特徴とするセンサネットワークシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記フローセンサの測定データが予め定められた基準値となるデータから変動した時に、前記周囲環境測定センサに起動信号を送信することを特徴とする請求項1に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項3】
前記センサ端末は複数備わり、各センサ端末にはそれぞれのセンサ端末を一意に特定するための識別番号が割り振られており、
前記制御部は、自機の前記識別番号を付加した測定データを前記通信制御装置に送信することを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項4】
前記フローセンサは、前記空気流によって発電することにより駆動することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記フローセンサの測定データとともに、前記周囲環境測定センサが起動後に行なった測定の結果に基づく測定データに応じて、前記所定時間を決定することを特徴とする請求項1に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記周囲環境測定センサが前記間欠測定を行う回数を、前記フローセンサの測定データに応じて決定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のセンサネットワークシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−11962(P2013−11962A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143075(P2011−143075)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】