センサー較正
アナライトを検出するためのセンサー、センサー囲い、及び較正室を含むセンサーキット。較正室は、第一較正溶液の入った第一隔室、及び検出すべきアナライト源の入った第二隔室を含む。第一隔室と第二隔室との間に区画材料が配置されており、その区画材料の破壊又は除去によりそれらを混合することができる。場合により、更に別のアナライト源(一種又は多種)の入った隔室(単数又は複数)を与えてもよい。較正は、(a)第一較正溶液のアナライト濃度の読みを取り、(b)区画材料を破壊するか又は除去することにより第一及び第二隔室の内容物を混合し、そして(c)得られた混合物のアナライト濃度の読みを取ることにより遂行することができる。もし望むならば、工程(b)及び(c)は更に別の隔室(単数又は複数)について繰り返し、更に読み(単数又は複数)を与えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、アナライトを検出するためのセンサー及び前記センサーの較正を可能にする較正室を含むセンサーに関する。キットを殺菌する方法、及びセンサーを較正する方法も記載する。本発明は、特に、殺菌されている必要がある侵入型(invasive)又は植え込み型(implantable)センサーに関する。しかし、例えば、或る含有試薬の生物分解を防ぐために、殺菌が利点になる他の用途で用いられるセンサーも考慮されている。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
化学的センサー又はバイオセンサーを開発する通常の目的は、特定の化学物質又は一組の化学物質(アナライト)の濃度に比例したデジタル電子信号を生じさせることにある。センサーは通常二つの主要な成分を含み、問題のアナライトと反応又は錯化し(理想的には特異的に)新しい化学的又は生物学的生成物を形成するか、又は第二成分、トランスデューサーにより検出することができるエネルギー変化を起こす化学的又は生物学的部分を含む。化学的/生物学的成分は、アナライトのためのレセプター/指示薬として働くと言うことができる。電気化学的測定(例えば、電位差測定、電流測定、電気伝導度測定、インピーダンス測定)、光学的測定、熱量測定、及び音波測定を含めた種々の変換方法を用いることができる。変換後、信号は、通常電子デジタル信号に転化する。
【0003】
アナライトとの化学的/生物学的反応により発生した信号は、通常アナライトの濃度のみならず、センサー自身の特性にも依存するので、そのようなセンサーは、それらが定量的に使用することができるようになる前に、通常較正を必要とする。信号がアナライト濃度と共に変動する仕方は較正曲線(信号対アナライト濃度)の形を決定し、較正点の数を定めるであろう。典型的な較正曲線は、直線型、指数型、s字型、等になることがあり、較正の基本は、化学的又は生物学的センサーのための全ての変換方法論に適用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
侵入型医療用途でのセンサーの較正は、それ自身に特有の一連の問題を有する。侵入型又は植え込み型医療センサーは、殺菌状態で患者に与えなければならず、屡々一回の使用で捨てることができる機器である。理想的には、センサーは使用直前に較正すべきである。なぜなら、較正曲線に影響を与えることがある或るセンサー特性は、時間と共に変化するからである(エージング効果)。センサー製造と使用との間の時間は何ヵ月にもなる場合が屡々あるので、製造時点での較正は、最終的結果に誤りをもたらすことがある。このことは、付き添い臨床医又は看護婦が、センサーの殺菌性を維持しながら、較正を行う必要があるであろうことを意味する。臨床医/看護婦のために適用される付加的制約は、較正方法が簡単に実行でき、理想的には較正を行う人には見えず、迅速に(好ましくは10秒より短い時間で)完了されるべきことである。
【0005】
現在入手できる多くの医療センサーの較正は、臨床医/看護婦が多くの特別な工程を行う必要があり、それらは、もしその方法が正しく踏襲されなければ、測定に誤差又は不正確さを与える結果になることがある。従って、どのような侵入型又は植え込み型の機器に関連しても有用で、上に論じた要件を満たす一層簡単な較正方法が求められている。
【0006】
そのような機器の殺菌も問題を与えることがある。殺菌処理は、病院又は診療所で不良又は不完全な殺菌手順になる問題を回避し、時間を節約するため、臨床医又は看護婦に代わって製造時点で行われているのが典型的である。医療機器の殺菌には、普通三つの型の殺菌が用いられている:水蒸気、照射、及びエチレンオキシドである。水蒸気は通常金属外科器具、包帯、及び容器内の液体のために用いられており、低融点プラスチック部品又は不安定な化学的又は生物学的成分を含む装置には不適切である。なぜなら、水蒸気殺菌は、通常116℃より高い温度で行われるからである。通常γ線照射である照射は、透過性殺菌手段であり、従って、容器内の液体を殺菌することができるが、多くのプラスチック、化学物質、及び生物学的物質を劣化することがある。この劣化は、水及び酸素が存在すると最も起き易いと思われる。エチレンオキシド殺菌は、センサーを含む他の材料及びレセプターを一般に劣化することはない表面殺菌剤であるが、多量の水を含まない材料を殺菌するためだけに用いるべきである。なぜなら、エチレンオキシドは水と反応し、エチレングリコールを形成することができるからである。従って、エチレンオキシドは、化学的センサーを殺菌する好ましい手段である。
【0007】
しかし、エチレンオキシド殺菌は数多くの欠点を持っている。第一に、センサーを構成する時、レセプターをトランスデューサーに固定するのが普通であり、これは通常重合体材料を使用して達成されている。もしセンサーが水溶性アナライト及び血漿に可溶性のアナライトを測定しなければならないならば、重合体固定材料は、アナライトが固定材料を通ってレセプター材料へ拡散され、測定を行えるようにするため、親水性で(すぐに水を吸収し)なければならない。そのようなセンサーをエチレンオキシドで殺菌するためには、殺菌前にその親水性材料から全ての水を除去しなければならない。
【0008】
第二に、水溶性アナライトを測定するためのセンサーを使用時に較正するためには、使用者はアナライト(又はアナライト類似物)の水性溶液中にセンサーを、殺菌の完全性を維持しながら浸漬しなければならない。しかし、較正溶液(一種又は多種)の入った較正容器は、表面殺菌剤であるエチレンオキシドでは殺菌できず、従って、熱又は好ましくは照射により殺菌しなければならない。従って、較正溶液はセンサーとは別に殺菌されたパッケージとして提供されているのが典型的である。較正中、その較正処理を行うためそれらのパッケージを開ける必要があるため、殺菌性が失われることがある。
【0009】
従って、較正中、殺菌性の損失を起こさないセンサー較正手段も要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
本発明は、
(i) アナライトを検出するためのセンサーで、前記アナライトのためのレセプターを含む感知領域を有するセンサー;
(ii) 前記センサーの入ったセンサー囲いで、その少なくとも一部分が水又は水性溶液により透過可能なセンサー囲い;
(iii) 較正室で、少なくとも第一及び第二隔室を含み、前記第一隔室には水又は水性溶液を含む第一較正溶液が入っており、前記第二隔室には前記アナライトの源が入っており、前記第一及び第二隔室が水不透過性区画材料により分離されている較正室;
を含む、センサーキットを与える。
【0011】
本発明のキットのための較正室及びキット内に入っているセンサーを較正する方法も与える。較正方法は、
(i) 場合により、センサーの感知領域を較正室の第一隔室に露出し、前記隔室内の第一較正溶液を前記感知領域と接触させること;
(ii) 前記第一較正溶液についてセンサー出力(即ち、測定されたアナライト濃度)を決定すること;
(iii) 前記較正室の区画材料を破壊するか、さもなければ除去し、前記第一較正溶液とアナライト源との混合物を含む第二較正溶液を形成すること;
(iV) 第二較正溶液についてセンサー出力(即ち、測定されたアナライト濃度)を決定すること;及び
(V) 前記決定されたセンサー出力の読みを用いてセンサーを較正すること;
を含む。
【0012】
本発明の最も簡単な態様として、使用者が受取った時に、センサーの感知領域は既に較正室の第一隔室内に位置しており、従って、場合による工程(i)は行う必要はない。しかし、そうでない場合には、感知領域は、例えばセンサーの囲いを取り除き、その囲いの尖った先端を第一隔室の外側壁に衝き刺し、囲いとセンサーを第一隔室に入れるようにセンサー囲いを移動することにより、第一隔室に容易に露出することができる。別法として、これは、センサーを第一隔室から分離しているシールを破壊するか、又は障壁を除去することにより、達成されるようにしてもよい。
【0013】
感知領域を第一隔室の内容物に露出したならば、第一隔室内の溶液(第一較正溶液)のアナライト濃度の読みを取ることができる。典型的には、第一隔室にはアナライトは全く入っていないので、この工程はアナライト濃度零に相当する第一読みを与える。
【0014】
第二工程では、区画材料を除去するか、又は破壊させ、それにより第一及び第二隔室の内容物を混合する。既知の量ののアナライトを含む第二隔室内のアナライト源は、このようにして第一隔室の水又は水性溶液と混合され、既知の濃度のアナライトを含む第二較正溶液を与えるであろう。次にアナライト濃度の第二の読みを取ることができる。これらの二つの読み及び予め定められたアルゴリズムを用いることにより、較正曲線を作成することができ、その機器を適当に較正することができる。
【0015】
従って、本方法は、非常に簡単な工程を含み、非常に短時間で、典型的には5分以内で完了することができる。手動センサーの場合、方法の簡単性は較正過程中に誤謬が起きる機会を少なくし、使用者が順応し易くする。この方法は、下で論ずるように、自動化するのも簡単である。
【0016】
区画材料を「破壊する(breaking)」と言う用語により、我々は、区画材料が破られるか又は突き刺されるか、或は第一と第二隔室の内容物が互いに接触できるようになる或る仕方で区画材料に開口を作ることを意味する。区画材料を「除去する(removing)」と言う用語により、我々は、区画材料の少なくとも一部分を、第一と第二隔室の内容物が互いに接触できるような或る仕方で除去、即ち、剥ぎ取られることを意味する。区画材料が破壊されるか、又は除去される特別な手段は、第一と第二隔室の内容物が互いに接触できるようになる限り、特別に限定されるものではない。
【0017】
本方法の工程の全てを自動化することができる。典型的には、センサーを、規則的な時間間隔でアナライト濃度を測定するようにプログラムすることができる適当な検出システムに接続する。このようにして、検出システムは自動的にセンサーに関連した第一の読みを取る。第一と第二隔室の内容物の混合に続き(これらの工程は、もし望むならば、機械で駆動することもできる)、アナライト源が溶解し、平坦な値に到達するまで、検出濃度は徐々に増大するであろう。この連続的平坦値が第二の読みを形成する。
【0018】
好ましい態様として、較正室の区画材料は張力状態になっている。このことは、例えば、センサー囲いの尖った先端か又は別の針を用いて、区画材料に突き刺すことにより材料を破裂させ、それが単に小さな刺された穴を開けると言うよりは、むしろ較正室を完全に開かせることを意味する。このことは、今度は第一と第二隔室の内容物の混合を容易にする。
【0019】
更に好ましい態様は、三点較正を含んでいる。この態様では、較正室にはアナライトの第二源が入っている。第二アナライト源を溶液中に混合すると、第一及び第二溶液よりもアナライト濃度の大きな第三溶液が生ずる。この第三溶液についてのセンサー出力の第三の読みを取ることにより、第三較正点を発生させることができる。予め定められた較正アルゴリズムで正確に較正するためには、多数の機器が三つの較正点を必要とするので、第二アナライト源を使用するのが好ましい。
【0020】
第二アナライト源は第三隔室に与えてもよく、第三隔室を較正室の残余のものから分離する区画材料を破壊又は除去することにより、それに達することができる。しかし、別の態様として、第二アナライト源を徐放出カプセル又はパッケージ内の第二隔室中に入れる。区画材料を破壊すると、徐放出(slow release)カプセルが第一隔室の水又は水性溶液と接触し、ゆっくり溶解し始める。或る時間が経過し、その間に第二の(第二較正溶液に関する)読みが取られた後、徐放出カプセルが溶解し、平坦な第二溶解度を与え、従って、第三較正溶液を与える。第三の読みを取ることができる。
【0021】
この後者の態様は、必要になる機械的工程が非常に僅かであると言う特別な利点を有する。上に述べた自動化した方法では、第二の読みを取った後、徐放出カプセルがその内容物を放出し始めるに従って、検出濃度はもう一度増大し始めるであろう。完全に放出され、溶解した後、更にその平坦な検出濃度に到達するであろう。この濃度が第三の読みを形成する。同様に、異なった時間間隔で内容物を放出する追加の徐放出カプセルを使用することにより、四点以上の較正を同時に達成することができるであろう。
【0022】
本発明のセンサーキットは、侵入型又は植え込み型センサーで使用するのに特に適しており、特に使用者に殺菌状態で提供される使い捨てセンサーに適している。キットは、本発明の殺菌方法により準備することができる一つの殺菌容器に入れて使用者に提供することができる。この殺菌方法には、較正室を、好ましくはγ線照射を用いて殺菌し、予め殺菌した較正室、センサー、及びセンサー囲いを容器中に挿入し、容器を密封し、その容器、センサー、及びセンサー囲いを、好ましくはエチレンオキシド殺菌を用いて殺菌することを含む。
【0023】
較正室は別個の密封部分を形成し、従って、それは容器中に挿入する前に別個に殺菌することができる。従って、本発明の方法は、較正室内に殺菌された較正試薬が入った一つの殺菌パッケージを与える。使用者は、場合により、較正前に殺菌容器を開けても良いが、較正室は密封されたままであり、これにより較正中殺菌性が維持される。
【0024】
好ましい態様として、センサーの感知領域を、密封容器を開ける前に較正室の第一隔室に露出する。この態様は、容器を開けた時、既にセンサーの感知領域が殺菌較正室内に入っており、更に較正中の殺菌性の低下を避ける利点を有する。例えば、これは、第一隔室からセンサーを密封分離材を除去することにより達成することができる。別法として、センサー囲いを、第一隔室の外側の位置から第一隔室の内側へ、例えば、密封容器の外側へ伸びるセンサー囲いの一部分を押し込むことにより移動させてもよい。別法として、圧縮可能な腕を、センサー囲いが伸びて入っている容器内に与える。その圧縮可能な腕を圧縮することによりセンサー囲いを容器中に更に押し込み、センサー囲いの尖った先端を較正室の第一隔室の壁に突き刺すことができる。
【0025】
この態様の好ましい特徴として、容器が、センサー囲いの入ったガイドチャンネルを含み、圧縮可能な腕を圧縮した時、センサー囲いがガイドチャンネル内で横に動き、較正室中に入るようにする。別の方向へのセンサー囲いの動きを、このようにして最小限にすることができる。
【0026】
(図面の簡単な説明)
本発明を態様の例及び図面を参照して更に下に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のセンサーキットで用いるためのセンサーを描いた図である。
【図2】図1のセンサーの感知領域の一層詳細な図である。
【図3】図3において、図3a〜図3cは、本発明の較正室の態様を描いた図である。
【図4】本発明の較正室の別の態様を描いた図である。
【図5】本発明の較正室の更に別の態様を描いた図である。
【図6】本発明の較正室の更に別の態様を描いた図である。
【図7】本発明の較正室の更に別の態様を描いた図である。
【図8】本発明の較正室の更に別の態様を描いた図である。
【図9】図9において、図9a及び図9bは、グルコースセンサーの三点較正のための典型的な溶解度曲線及び較正グラフを描いた図である。
【図10】三点較正を与える本発明の較正室を描いた図である。
【図11】三点較正を与える本発明の別の較正室を描いた図である。
【図12】三点較正を与える本発明の更に別の較正室を描いた図である。
【図13】三点較正を与える本発明の更に別の較正室を描いた図である。
【図14】三点較正を与える本発明の更に別の較正室を描いた図である。
【図15】較正室の内容物を混合することができる手段を描いた図である。
【図16】較正室の内容物を混合することができる別の手段を描いた図である。
【図17】較正室の内容物を混合することができる更に別の手段を描いた図である。
【図18】較正室の内容物を混合することができる更に別の手段を描いた図である。
【図19】図19において、図19a〜図9cは、キット内の異なった位置(図19a=殺菌のための位置;図19b=較正方法の第一の読みを記憶及び測定するための位置;図19c=較正方法の第二の読み及び場合により更にそれ以降の読みのための位置)にセンサーがある、本発明のセンサーキットを描いた図である。
【図20】本発明のセンサーキットの実施例の詳細な構造を描いた図である。
【図21】本発明のセンサーキットの別の実施例の詳細な構造を描いた図である。
【図22】本発明のセンサーキットの更に別の実施例の詳細な構造を描いた図である。
【図23】本発明のセンサーキットの更に別の実施例の詳細な構造を描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な記述)
センサー
本発明は、較正を必要とするどのような型のセンサーにでも用いるのに適しているが、特に殺菌状態に維持されなければならないセンサーに有用である。これには、バクテリア数が増大することにより精度が悪影響を受けることがある生体外試験を行うためのセンサーが含まれる。例えば、バクテリアの存在がセンサーのpHに影響を与え、従って、精度に悪影響を与えることがある。しかし、本発明は、保存及び較正中に殺菌状態に維持されなければならない侵入型又は植え込み型センサー(今後、侵入型センサーと呼ぶ)に特に有用である。
【0029】
そのような侵入型センサーには、種々の性質、典型的には、血液の性質を決定するためのセンサーが含まれるが、他の組織が感知されるようにしてもよい。そのような侵入型センサーの例は、カリウム、尿素、クレアチニン、及びグルコースセンサーである。本発明を、侵入型グルコースセンサーの特定の型を参照して更に記述するが、本発明はそのようなセンサーに限定されるものではないことを理解すべきである。
【0030】
患者のグルコースレベルを監視することは、集中治療室では特に有用である。集中治療患者は非常に高いグルコースレベルを有する傾向があることが判明している。インシュリンの投与により正常なグルコースレベルを単に維持するだけで、死亡率は著しく減少させることができる。しかし、もし患者が余りにも多くのインシュリンを投与されると、低血糖症の危険がある。グルコースの間欠的監視は低血糖症を防ぐには不充分である。なぜなら、試料を採取してから結果が確認されるまでの時間が一般に長すぎて、患者の現状及びどの投与インシュリンに対しても彼らの反応を正確に決定することはできないからである。更に間欠的生体外監視は、必要な試験頻度により看護要員の労働時間を著しく増大する。従って、連続的グルコース監視を与える侵入型機器は、集中治療環境中では特に有用である。
【0031】
ファイバー光学技術に基づく一つの特別な侵入型グルコースセンサーが図1に描かれている。センサー1は、患者の中への挿入、例えば、カニュールを通して血管の中に挿入するのに適合する挿入可能な先端2を有する。その挿入可能な先端は感知領域3(図2に一層詳細に描かれている)を有し、その中にグルコースレセプター4及び、典型的には温度センサー5も配置されている。グルコースレセプターは光ファイバー6上に、又はその中に固定されていて、レセプターにより発せられた信号が光ファイバーを通って伝達される。光ファイバーはケーブル7を通ってコネクター8へ伸びており、コネクターは適当な監視装置(描かれていない)と係合させるのに適合する。監視装置には更に光ケーブルが含まれていて、そのケーブルは一方の端でコネクターと係合し、他方の端で二股に分かれて(a)光学的センサーのための適当な光源、及び(b)発生信号検出器に接続している。コネクター8により温度センサーへの電気的接続も与えられており、適当な検出設備が監視装置により与えられている。
【0032】
センサーの感知領域を、一般に血液適合性であるべき膜9で、グルコース(又は、適当な場合には他のアナライト)を周囲の血液又は体液からレセプター4へ拡散させる膜で被覆する。
【0033】
そのようなセンサー中に組込むことができる多くのアナライトのためのレセプターは、当分野で知られている。例えば、クラウンエーテルは、カリウムを検出するのに用いることができ、種々の酵素も有用である。グルコースの場合、有用なレセプターは発蛍光団を有するボロン酸化合物である。ボロン酸類はグルコースと錯化する能力を与え、分子の蛍光発光パターンはグルコースの存在で変化し、それにより光学的検出を可能にする。
【0034】
レセプターは、水及びグルコースのレセプター化合物への拡散を可能にするヒドロゲル中の光ファイバーに固定されるのが典型的である。架橋ポリアクリルアミド又はポリヒドロキシエチルメタクリレート(p−HEMA)は、用いることができるヒドロゲルの例である。
【0035】
較正室
本発明の重要な特徴は較正室であり、それは、上に記載したようなセンサーの較正を、典型的には殺菌状態で可能にするために与えられている。較正室は、既知のアナライト濃度の較正溶液についてのセンサーの読みを二つ以上得るための手段を与える。較正室は典型的には密封され、予め殺菌されており、較正室のその密封及び殺菌性を損なうことなく較正を行うことができるように設計されている。
【0036】
態様(embodiment)1
本発明による較正室の第一の態様は、図3aに描かれている。較正室10は二つの隔室101及び102を有し、それらは水不透過性区画材料11、例えば、破壊可能な区画材料により分離されている。第一隔室101には水又は水性溶液が入っている。典型的には、この隔室には等張性溶液が入っており、アナライトは含まれていない。従って、この隔室中のアナライト濃度の感知は、零の読みを与えるのが典型的である。しかし、もし望むならば、アナライトは第一隔室中に、例えば低い濃度で含まれていてもよい。好ましくはアナライトは、水が存在する中での照射により劣化しない場合にのみ、第一隔室中に含まれている。
【0037】
第二隔室には、アナライト源12、例えばグルコースが入っている。これは、アナライトの濃厚な溶液の形態になっていてもよく、或は図3aに12で描いたように、アナライト自身が固体状態になっていてもよい。アナライトがグルコースである場合、第一隔室にはグルコースは入っていないが、第二隔室にはグルコースが固体状態(例えば、粉末、錠剤、等)で入っているのが典型的である。グルコースの水溶液は、熱又はγ線照射による殺菌で劣化することが見出されている。従って、この態様は、グルコースの水溶液が存在せず、劣化が最小限になる利点を有する。第二隔室は、酸素誘導照射劣化が起きないように不活性ガス雰囲気(例えば、乾燥窒素)になっていてもよい。
【0038】
センサーの較正は、センサーの感知領域を、第一較正溶液の入った第一隔室101に露出することにより行うことができる。この態様の一つの特徴として、センサーの感知領域を第一隔室101中に挿入する。センサーを挿入できるようにするため、典型的には第一隔室の外側壁13を少なくとも部分的に突き刺すことができるようになっている。例えば、外側壁13は、針で突き刺すことができる隔膜になっていてもよい。センサーは、針を通して又は針内で第一隔室中に挿入することができる。感知領域が第一隔室内の適所に来たならば、センサー出力の第一の読みをとる。
【0039】
この態様の別の特徴として、センサーと第一隔室との間にシールを与える。例えば、センサーの動き又は第一隔室の外側壁13の一部分の動きによりシールを破壊すると、第一隔室の内容物がセンサーの周囲に流れ、それによりセンサーが第一較正溶液に露出される。
【0040】
第一と第二隔室とを分離する区画材料を、次に破壊するか、又は除去し、これらの隔室の内容物を混合する。区画材料は、典型的には、殺菌性を維持するため密封された較正室を開けることなく破壊又は除去される。例えば、外側壁13を通して針を第一隔室中へ突き刺して挿入することにより、その材料を破壊する。典型的な態様では、センサーを針内の第一隔室に挿入し、次にセンサーの入った針を前方へ推し進めて区画材料を破裂する。
【0041】
区画材料は、第一と第二隔室の内容物を混合させるため破壊、破裂、又は除去することができるどのような材料でもよい。一つの態様として、区画材料は、針で突き刺した時、その材料が完全に破られるように、張力状態に維持されるエラストマー材料である。天然ゴム又は合成ゴムは、そのような材料の例である。別の態様として、材料は堅いが、針で突き刺した時、それが直ぐに構成部分に砕けるように、破砕線を切り込んである。プラスチック及びセラミックが適当な堅い材料の例である。これらの種類の区画材料は、両方共第一隔室と第二隔室との間に大きな開口を与え、隔室内容物の迅速な混合を可能にする。別の区画材料には、金属箔(例えば、アルミニウム箔)が含まれ、それらはプラスチックで被覆されていてもよい。
【0042】
区画材料は、較正室の二つの隔室の間に漏洩が起きないように、水及びアナライトに対し不透過性であるのがよい。一つの態様として、区画材料の一つの表面を金属化し、水の拡散を防ぐのを補助する。金属化表面は、好ましくは不活性雰囲気中にある第二隔室と接触しているのが典型的である。
【0043】
第一と第二隔室の内容物の混合(例えば、固体アナライトを水又は水性溶液に溶解する)速度を上げるため、較正室の物理的混合、例えば、撹拌又は超音波混合を用いてもよく、或は別法として、泡立つ化学的添加剤を較正室へ添加し、混合を与えることができる。隔室の内容物を混合するための特別な態様を下に記述する。
【0044】
二つの隔室の内容物が混合されたならば、第一較正溶液よりアナライトの濃度が大きい第二較正溶液を与える。従って、この溶液について得られた読みからのセンサー出力は、第二較正点を与える。これにより、予め定められた較正アルゴリズムと共に、較正曲線を作成し、センサーを較正することができる。当業者は、どのような特別な型のセンサーの較正についても適当なアルゴリズムをよく知っているであろう。
【0045】
典型的には、較正は、センサーの接続部8をセンサー出力の連続的測定に適合するモニターに接続することにより行われる。従って、センサーが較正室の第一隔室に露出され、モニターが接続され、スイッチが入ると、直ちに第一の読みを取ることができる。次に区画材料の破裂又は破壊が行われ、モニターは、第一隔室の水又は水性溶液とアナライト源との混合中センサーの出力を連続的に記録する。混合が完了したことによりセンサー出力が平坦になった時、第二の読みを取る。これは一般に較正過程の開始から約2分以内で達成することができる。
【0046】
自動化された方法では、センサーを第一隔室に露出する工程と、区画材料11を除去又は破壊する工程の一つ以上を機械で駆動してもよい。これに関し、ステッパーモーター又はリードスクリューに取り付けたステッパーモーターを用いてもよい。
【0047】
侵入型センサーは、典型的には35〜39℃の温度範囲で作動する。しかし、通常較正は室温で行われる。多くのセンサーが温度変化に敏感であり、その場合、室温で得られた較正曲線は、例えば、37℃の異なった一連の値に移行するであろう。本発明は、この問題を回避できる二つの技術を与えている。センサーは、較正が行われる温度を決定することができるように、温度センサーを含んでいるのが典型的である。どの特定のセンサーの場合でも温度による較正曲線の移行が知られているならば、上に記載したような較正曲線の一般化に従い、37℃へ較正する時、センサーにより測定された曲線から温度差を考慮に入れる必要に応じ、曲線を移行させることができる。別法として、加熱素子(図3aの14)を配備し、較正前に較正室内の温度を37℃へ上昇させてもよい。センサー1内の温度センサーは、較正中の実際の温度を監視するのに用いることができる。
【0048】
本発明の多くの別の態様を下に記述する。それらの態様の各々は、特別に記述する点を除き、態様1と同じである。
【0049】
態様2
較正室の別の態様が図4に描かれている。この態様では、第一較正室101には水又は水性溶液が入っている。センサーの先端2は、ここでは第一隔室内に描かれているが、同様に第一隔室の外側に与えるか、又は第一隔室から密封することができる。第二隔室102にはアナライト12が入っている。この態様では、区画材料11は、その区画材料を通って矢印の方向に針31を動かすことにより破壊する。これは、例えば、手動か又は自動化した方法により針31に取付けたプランジャーの押し下げにより達成することができる。
【0050】
針は、ここでは第二隔室と実質的に同じ環境になっていて、アナライトが区画材料を通って第一隔室中へ押し込まれ、混合を補助する。
【0051】
態様3
図5には、第二隔室102を第一隔室101から分離する二つの区画材料11、11aを有する態様が描かれている。図5に描かれた矢印の方向に左から右へ針31を動かすことにより先ず区画材料11を破壊するか又は破裂し、アナライト12を第一隔室に内容物に露出する。更に同じ方向への針3の動きにより区画材料11aの破壊又は破裂を起こす。これは、第一にアナライト12を第一隔室101へ押しむ効果を有し、第二に、第一隔室中に存在していた液体を二隔室を通って流すことを可能にする。これは、アナライト12と、第一隔室中の液体との混合を補助する。
【0052】
態様4
区画材料11を破壊する別の手段が図6に描かれている。この態様は、プランジャー33に取付けられた刃32を有する。第二隔室102は、第一隔室101の壁に取付けられた区画材料11の袋によって形成されている。刃32の矢印の方向の動きは区画材料11を通って切断し、それによりアナライト12を第一隔室の内容物に露出する。この態様では第二隔室の壁は、刃の動きにより大きく除去され、アナライトと第一隔室の水性溶液との混合が改良される。
【0053】
態様5
第5の態様が図7に描かれている。この場合、区画材料11は、針31が突き刺された時に破裂するような物である。例えば、区画材料はプラスチック積層箔、例えば、プラスチック積層アルミニウム箔でもよい。この態様では第二隔室102は加圧された状態に維持され、針が区画材料を突き刺した時、アナライト12が第二隔室から第一隔室中へ噴出する。
【0054】
態様6
本発明の第六の態様が図8に描かれている。この場合、区画材料11は、腕34に取付けられた放出シール(例えば、ポリオレフィン)である。矢印の方向への腕34の動きはその放出シールを引き剥がし、それによりアナライト12を第一隔室の水性溶液に露出する。
【0055】
態様7
好ましい較正は、較正曲線に一層よく適合させるため、三つの較正点を含むであろう。三つの較正点を与えるためには異なった濃度のアナライトを含む三種類の別々の較正溶液が必要である。態様7及び下に記載するものは3点較正に関連する。しかし、適当な場合には、これらのシステムの特徴は2点較正でも、或は別法として、4点以上の較正でも用いることができるであろう。
【0056】
較正室の好ましい態様が図3bに描かれている。この態様では、3点較正は、徐放出カプセルの形態の中の第二アナライト源15を第二隔室中へ混入することにより達成される。区画材料11を破裂/破壊/除去すると、徐放出カプセルが第一隔室の水又は水性溶液と接触し、ゆっくり溶解するであろう。
【0057】
徐放出カプセルは、その内容物が、第二較正溶液に相当する第二の読みが取られた後にのみ放出される。従って、センサー出力を検出するモニターは、第一アナライト源の溶解に伴うアナライト濃度の第一の増大に続いて、徐放出カプセル破壊後の第二アナライト源の溶解に伴うアナライト濃度の第二の明確な増大を観測するであろう。
【0058】
そのような較正室についての典型的な溶解度曲線が図9aに描かれている。時間t=0で、第一較正溶液に相当する第一の読みを取る。次に区画材料を破裂/破壊し、アナライト濃度が増大するのが見られ、約t=2分で平坦部に到達する。第二較正溶液に相当するこの時点で第二の読みを取る。次に徐放出カプセルがその内容物を放出し始めたのが分かり、濃度が再び増大し、約t=5分で平坦部に到達する。第三較正溶液に相当する第三の読みを取る。このようにして、この態様は一層正確な較正曲線(図9b)を作成することができる。同様なやり方で単に更に別の徐放出カプセル内に入れた更に別のアナライト源を含ませることにより、4点以上の較正を行うことができることを、当業者は認めるであろう。徐放出カプセルの放出時間の適当な設計により、4点以上の別の較正点を生じさせることができる。
【0059】
この態様では、どのような適当な徐放出カプセルでも用いることができる。過度に長い較正時間を回避するため、約1〜10分、好ましくは約2〜5分の範囲で溶解するカプセルが好ましい。ポリエチレンオキシドカプセルが、適当な材料の例である。カプセルの正確な放出時間は、当分野でよく知られているやり方でカプセルの厚さを変えることにより制御することができる。
【0060】
当業者は、第一、第二、及び場合により第三以上の較正溶液のための適当なアナライト濃度を決定することができるであろう。典型的な濃度は、零(第一アナライト濃度)及びセンサーにより測定されると思われる濃度の上端及び下端の濃度を含むべきである。集中治療患者で用いるためのグルコースセンサーの較正例として、第一較正溶液は零濃度を含むのが典型的であるが、第二及び第三較正溶液は、例えば、5mM/l及び10mM/lの濃度を夫々持つのが典型的である。しかし、センサーの型及び最終用途により別の濃度を選択することができるであろう。第一隔室中の水又は水性溶液の体積、及び第一アナライト源、場合により第二以上のアナライト源中に含まれるアナライトの量は、較正溶液の希望の最終濃度に従って選択すべきである。
【0061】
態様8
較正室の別の態様が図3cに描かれている。この態様では、三つの隔室101、102、及び103が存在する。区画材料11、11aは、各隔室を分離する。この態様は、異なった手段で3点較正を与える。第一の読みを取った後、他の態様で論じたように区画材料11を破裂/破壊/除去し、第一と第二隔室の内容物を混合し、第二較正溶液を得る。第二の読みを取る。続いて第二区画材料11aを破裂/破壊/除去し、隔室103の内容物を第二較正溶液と混合する。隔室103には第二アナライト源が入っており、それにより第一又は第二較正溶液よりもアナライト濃度の高い第三較正溶液を与える。第三の読みを取り、較正曲線を作成することができる。この態様は、第一及び第二アナライト源がアナライトの濃厚な溶液であるか、又は固体状態のアナライトである場合の3点較正を行うのに適している。
【0062】
態様9
図10には、三つの別々の隔室101、102、及び103を有する別の3点較正システムが描かれている。この態様は、ここに記載する点を除き、上の態様8と同じである。この場合、第二隔室102の区画材料11を針31で突き刺す。隔室101及び102の内容物の混合により第二較正溶液を与える。混合が完了したならば、センサー出力の読みを取る。第三隔室103の区画材料11aを針31aで突き刺す。これによりアナライト12aを第二較正溶液と混合し、一層高いアナライト濃度を有する第三較正溶液を与える。混合が完了したならば、センサー出力の第三の読みを取ることができる。
【0063】
図10には、隔室102及び103を突き刺す二本の簡単な針が描かれている。しかし、描かれている態様を変更したものを与えることができ、異なったやり方で第二及び第三隔室を破壊又は破裂させる。例えば、態様2〜6に記載した特徴のいずれかを用いてもよい。別法として、図11に示したように、針31及び31aの両方の動きを制御するため一つのプランジャー35を与えてもよい。この態様では、針31は、針31aが隔室103に対するよりも近く、隔室102に対して配置されている。このやり方で、第一「停止位置」までのプランジャーの動きは、破壊可能な材料11を針31が突き刺し、続くプランジャーの第二「停止位置」までの動きにより、針31aを破壊可能な材料11aに突き刺すことが起きる。
【0064】
更に別の変更した例として、適当な時間に隔室102及び103の両方を突き刺すように制御することができる一本の針31を与えてもよい。例えば、針31を、矢印の方向に動かすことにより隔室102の区画材料11を突き刺すのに用い、次にその隔室から引き抜くることができる。次にその針を第三区画材料と一列に並ばせ(例えば、針をスライドさせることにより、又は針を取付けた軸を回転させることにより)、再び矢印の方向に移動させて第三隔室の区画材料11aを突き刺すように、針を運動させることができる。
【0065】
態様10
本発明の回転式態様が図12に描かれている。この態様では、較正室には内側シリンダー36及び外側シリンダー37が入っており、それらは互いに対し回転することができる。第一較正溶液の入った第一隔室101は、内側シリンダーと外側シリンダーとの間に位置している。第二及び第三隔室102及び103で、各々にアナライト源12及び12aが入った隔室が与えられている。第二及び第三隔室の各々は、内側シリンダー36に取付けられた区画材料11、11aの袋から形成されている。刃38は外側シリンダーに固定されている。この態様を変更したものとして、刃を内側シリンダーに取付け、第二及び第三隔室を外側シリンダーに取付けることもできるであろう。
【0066】
内側シリンダーに対する矢印の方向への外側シリンダーの動きは、第二隔室102の破壊又は破裂を起こすであろう。アナライト12は第一較正溶液と混合し、第二較正溶液を与え、センサー出力の読みを取ることができる。同じ方向へ外側シリンダーが更に動くことにより刃が第三隔室103を破壊又は破裂し、アナライト12aと第二較正溶液との混合を起こし、このようにして第三較正溶液を与える。
【0067】
態様11
図13に描かれた態様11は、回転式態様10を変更したものであるが、シール39を剥がすことにより第二及び第三隔室102及び103に到達することを含む。第一隔室101は、内側シリンダー36と外側シリンダー37との間に位置している。アナライト源12、12aが入った第二及び第三隔室は、内側シリンダーの凹所の形で与えられている。各凹所は、11の所で第二隔室を密封し、11aの所で第三隔室を密封するシール39により第一隔室から密封されている。そのシールは39aの所の較正室の外側まで伸びている。矢印の方向に39aの所のシールを引っ張ることにより第二隔室102のシールを破壊し、アナライト12を第一隔室内の第一較正溶液と混合し、それにより第二較正溶液を与えることができるであろう。次にセンサー出力の読みを取る。同じ方向にシール39aを更に引っ張ることにより、第三隔室中に入っていたアナライト12aを最終的に露出し、それにより第三較正溶液を与えるであろう。
【0068】
ここに描いたように、隔室102及び103の両方を密封する一つのシール39を与えてもよい。しかし、別法として、夫々別の隔室のための二つの別のシールを与えてもよい。
【0069】
態様12
態様11を変更したものが図14に描かれている。この態様では、第一と第二隔室(101/102)の間及び第一と第三隔室(101/103)の間のシールを形成するシール39が与えられている。このシールは、ここではプランジャー40に取付けられている。矢印の方向のプランジャー40の動きは、そのシールの一部分11を剥ぎ取ることにより先ず第二隔室内のアナライト12を露出する。同じ方向に続くプランジャーの運動で、シールの一部分11aを剥ぎ取ることによりアナライト12aを露出する。
【0070】
較正溶液の混合
上で論じた如く、一種類以上のアナライト源を第一較正溶液と混合するための手段を与えることは有用である。混合は較正過程の速度を上げるのに役立つのみならず、アナライト源の全体が較正溶液に溶解するのを確実にする。これは正確な読みを与えるのに重要である。
【0071】
機械的手段、磁気的又は電磁気的、及び超音波処理を含めた数多くの異なった混合装置が与えられている。一つの特別な態様として、図15に描かれているように、電磁石51が較正室10の周りに与えられており、可動磁気パドル52が室内に与えられている。電磁場の動きは、パドルの動きを発生し、室内容物の混合を起こす。
【0072】
別法として、機械的に操作されるパドルを、例えば、較正室から伸びた棒に回転ヒレ又はプロペラを取付けることにより用いることができる回転ヒレを組込んだ機器が図16に描かれている。この態様では、ヒレ53、53aが中心棒54のに与えられている。棒54の回転は、隔室101の内容物の混合を起こす。この種の混合技術は、上に記載した回転式態様と組合せて便利に用いることができる。例えば、上に記載した態様10では、内側シリンダー36に第一隔室101中に伸びるヒレのような混合パドルを取付けるか、又はプロペラをシリンダーの端に取付けることができる。外側シリンダーに対する内側シリンダーの回転は、ヒレ又はプロペラを回転させ、第一隔室101の内容物の混合を与えるであろう。
【0073】
往復ポンプによる混合も考慮に入れられている。図17は棒56に取付けられたピストン55を伴った混合技術を示している。ピストンを通って液体が移動できるように、孔57、57aが開けられている。矢印の方向の棒56の往復運動は隔室101の内容物の混合を与える。典型的には、ピストンが較正室を通って動くに従って、室内の液体の全て又は殆ど全てが孔57、57aを通って移動しなければならないように、ピストンは比較的気密に較正室に嵌合する。
【0074】
別法としての往復型態様が図18a及びbに示されている。この態様は、較正室の一端を形成する可撓性隔膜58を有する。その可撓性隔膜に面した凹型端部60を有するのが典型的な内側套管59も与えられている。凹型端部60は、開口を有する固体の壁である。図18a及びbに示したように可撓性隔膜の方へ近づき、それから離れる内側套管の往復運動は、較正室内の液体を、凹型端部60中の開口を通って出入りさせ、液体の混合物を起こす。
【0075】
図17及び18に描かれている往復混合型の態様は、線状運動が区画材料11/11aを破壊又は突き刺す態様と組合せて用いるのに適している。例えば、上の態様9で、針31、31aをピストン55に取付けてもよい。同様に、態様12の棒40をピストン57に取付け、一本の棒40がピストン及びシール39の動きを与えるようにしてもよい。同様に、上記態様2に室の一端に可撓性隔膜を取付け、針31を内側套管に取付けてもよい。従って、往復方向の針31の動きが、区画材料11の破壊を与えるのみならず、内側套管/可撓性隔膜を使用することにより混合を与えるであろう。
【0076】
どの態様の全て又は一部分を、適切ならば、他のどの態様のいずれでも又はその一部分とでも組合せて用いることができる。
【0077】
センサーキット
本発明は、上述したような本発明のセンサー及び較正室を組込んだセンサーキットを与える。そのキットは、使用者に殺菌状態で非常に使い易いフォーマットで、センサー及び較正室を提供することができる。更に、このセンサーキットは、較正中の較正室及びセンサー感知領域の殺菌性を使用者に容易に維持できるようにしている。
【0078】
センサーキットの一つの態様が図19aに描かれている。このキットは、センサー1及び較正室10を収容する容器20を有する。較正室10は、典型的には、容器内の締止位置に固定されている。センサーは、囲い本体22及び突き刺し用先端23、例えば、針を有するセンサー囲い21の中に含まれている。センサーの感知領域は、突き刺し用先端内に配置されているのが典型的である。
【0079】
センサーが入ったセンサー囲いは、容器内を横に動くことができ、即ち、図19aに描いたように、左右方向に動くことができる。センサー囲いの運動をこの横方向に限定し、囲いの自由な動きを制限するのを確実にするため、トラック25a、25bにより形成された誘導チャンネルが与えられてもよい。このやり方でセンサー囲いを、突き刺し用先端が較正室の外側壁13を貫通し、センサーの感知領域を第一隔室101中に挿入するように、動かすことができる。図19bには、この後者の位置にあるセンサーが描かれている。センサー及び囲いがこの位置にある時に、第一較正の読みを取ることができる。
【0080】
センサー囲いは、第一較正溶液を、図19bに示した位置にある時に、感知領域3と接触させるのに適合する。典型的には、突き刺し用先端23は針であり、それは、液体を針にその先端を通って入れることができる。しかし、較正溶液を囲いに侵入させ、センサーと接触させることができる他の手段を与えてもよい。
【0081】
一つの態様として、センサー囲いがの一層の動きが区画材料11を破裂/破壊し、第二、及び場合により、第三較正の読みを取ることができるようになるであろう。図19cには突き刺し用先端23により区画材料を破裂/破壊した後のセンサーが描かれている。別の態様として、区画材料11を破壊又は除去するための別の手段を与え、第二、及び場合により、第三較正の読みを、更にセンサー囲いを動かすことなく取ることができるようにする。
【0082】
容器20は、ガス透過性蓋(描かれていない)で密封されているのが典型的である。
【0083】
機器の殺菌性を維持するため、センサー及びセンサー囲いを容器の密封を破壊することなく移動できるのが有利である。図5aに描かれた態様では、これは圧縮可能な腕26を圧縮することにより達成することができる。これにより、センサーの入ったセンサー囲いを容器内で横に移動させる。圧縮可能な腕は、圧縮可能な蛇腹の形に構成してもよい。
【0084】
センサーキットの別の態様として、センサーと較正室の第一隔室との間にシールを与える。この態様では、そのシールの破壊は、センサー自身の運動を必要とすることなく、センサーを第一隔室に露出する。
【0085】
図20aは、センサーキットの更に別の態様を断面で示している。図20bは、図20aの態様の一部分を切り取った斜視図である。
【0086】
図20のセンサーキットは、図14に例示した態様12と同様である。丁度態様12と同様に、図20aのセンサーキットはシール39(このシール39は区画材料としても働く)が取付けられたプランジャー40を含む。例えば、一部分の往復運動が、水不透過性区画材料を除去し、第一と第二(及び第三)隔室の内容物を混合のに効果的である。
【0087】
シール39は、それがプランジャー40の一端に取付けられている所から、夫々、第一隔室10の副隔室101aの開口101bを横切り、第二隔室102の開口102bを横切って第一隔室101中に伸び、第三隔室103の開口103bを横切り第一隔室101中に伸びている。
【0088】
センサー1の感知領域3は、第一副隔室101a内に配置されている。
【0089】
先ずキットを殺菌する(下の殺菌の節を参照)。チャンネル75を第一副隔室101aと流体が流通するように与える。このチャンネル75により、第一副隔室101aとセンサー1の少なくともその感知領域3とをエチレンオキシドを用いて殺菌することができる。次にプランジャー40を容器520及びそのプランジャーに組合せたo−リング76、77の中に挿入し、それによりチャンネル75を密封する。
【0090】
プランジャー40を更に容器20中に、シール39を第一副隔室101aの開口101bから引き剥がすのに充分な距離移動させる。それにより第一副隔室101a及びセンサー1の感知部分3も、第一隔室101を定める容器20の内部に露出される。
【0091】
図20のセンサーを較正するため(それは使用する時点で行われる)、プランジャー40を更に前進させ(好ましくはステッパーモーター/リードスクリュー装置によるが、これは手動で行ってもよい)、シール39を第二隔室102の開口102bの上から引きはがすことにより、第二隔室中に入っていたアナライトを露出する。このようにして第二隔室102を、センサー1の感知部分3と同様、第一隔室101を定める容器20の内部に開放する。第二隔室102からシール39が除去される位置と、左手の位置との間のプランジャー40の軸方向の往復運動は、感知部分が露出される容器20(第一隔室101)中の溶液を混合するのに効果的である。次に較正測定を行ってもよい。
【0092】
次にプランジャー40を、容器20内の更に右手側に(例示したように)移動させ、第三隔室103の開口103bからシール39を引き剥がし、それにより第三隔室103中のアナライトを容器20の(第一隔室)内部に露出する。次にプランジャー40の軸方向の往復運動により溶液を混合し、さらに較正の読みを取ることができる。
【0093】
このように、図20の態様は態様12と図17に例示した態様の両方の特徴を組込んでいることが分かるであろう。
【0094】
図21には別の態様が例示されている。図21aはこの態様の断面図であり、図21bはこの態様の一部を切り取った斜視図である。この態様は、態様9の原理と同様な原理を用いており、即ち、針31と、第二及び第三隔室102、103の内容物を第一隔室101の内容物から密封する区画材料11との間の相対的直線運動を用いている。その相対的直線運動は、リードスクリューを使用することにより達成される。
【0095】
図21の態様では、容器20はその内側に、丁度図20の態様のような第一隔室101を定める。第一隔室101は二本の針31、31aを含み、較正室10として見ることができるアナライト囲いを有する。アナライト囲い10は容器20に対しスプラインされており、リードスクリュー80のネジ山81に嵌合する内側ネジ山82を有する。リードスクリュー80は容器20と同軸になっている。このようにして、リードスクリュー80の回転はアナライト囲い10を回転することなくセンサー囲い20内でアナライト囲い10の線状運動をもたらすことができる。
【0096】
センサー1は、図21aに示した位置では第一隔室101に対し開いている第一副隔室101a中のリードスクリュー80内に配置されている。製造及び殺菌中、リードスクリュー80は、室101aがチャンネル75と流体流通し、少なくとも第一副隔室101aと感知部分3のエチレンオキシド殺菌を行うことができるように配置されている。次にリードスクリュー80を更に隔室20中に押込み、それによりo−リング76が室101中へ動き、o−リング77が室101aをチャンネル75から密封する。次にリードスクリュー80をセンサー囲い20から取り外すことができなくるのを確実するため、スナップ取付け具88を与えることができる。
【0097】
アナライト囲い10は、第二隔室102及び第三隔室103を含む。第二及び第三隔室102、103は、アナライト囲い10を通る貫通孔により形成されている。貫通孔は軸方向になっており、両方の側が水不透過性区画材料11により隔室101から密封されている。
【0098】
機器を較正するため、リードスクリュー80を回転し(好ましくはステッパーモーターのような電気モーターにより)、アナライト囲い10を容器20内で直線状に移動させる(勿論、アナライト囲い10は、容器20にスプラインされているので回転しない)。較正を行うため、リードスクリュー80を回転し、アナライト囲い10を左か又は右へ移動させる。左方向への移動は、針31aを材料11に突き刺す結果になり、それにより第二隔室102中に入っていたアナライトを第一隔室101中に放出する。リードスクリュー80の回転によるアナライト囲いの往復運動は、次に溶液を混合することができる。次に較正測定を行ってもよい。次にリードスクリュー80の回転によるアナライト囲い10の右手側への移動は、第三隔室103の一方の側又は両側の材料11を針31で突き刺すのに用いることができる。これは第三隔室103中のアナライトを第一隔室101中へ放出させる。更にリードスクリュー80の両方方向への回転は、第一隔室101内のアナライト囲い10の軸方向の往復運動により溶液の混合を与える結果になる。最終的較正測定を行うことができる。
【0099】
センサーキットの別の態様が図22に例示してある。図22aは断面図であり、図22bはその態様の一部分を切り取った斜視図である。図22cはリードスクリューナットの斜視図である。図22a及びbには、第二隔室102が、容器20により定められた第一隔室101に既に開放され、即ち、較正の読みを行うことができる位置にあるように、種々の部品の位置が例示されている。
【0100】
図22の態様は、シール39を隔室間から除去するために利用される線状運動を発生させるのに回転を利用する。
【0101】
アナライト囲い10は、管の形をしており、開口101bにより第一隔室101へ開いている第一副隔室101中に感知部分3を有するセンサー1が入っている。アナライト囲い10も第二隔室102及び第三隔室103を有し、それら両方が区画材料として働くシール39により密封されている。
【0102】
シール39は開口101bを覆うように伸びていてもよい。その場合、特にチャンネル75が、エチレンオキシドによるセンサーの殺菌のために与えられている。
【0103】
殺菌後、蓋90を容器20の中に挿入する。蓋90は、o−リングにより容器20に対し密封され、それにより容器20の内側壁により定められる第一隔室101を密封する。チャンネル75も蓋90により密封される。
【0104】
蓋90は、粗いネジ山81を有するリードスクリュー80に対しスプラインされている。リードスクリュー80のネジ山81は、リードスクリューナット83のネジ山84と嵌合し、それは図22cに一層詳細に例示されている。
【0105】
リードスクリューナット83のネジ山84は、リードスクリューナット83の可撓性腕85上に形成されている。このことは、リードスクリュー80の第一方向の回転中、リードスクリューナット83のネジ山84がリードスクリュー80のネジ山81と嵌合し、それによりリードスクリューナットを線状方向(例示では右手方向)に移動させる。ネジ山の形及び可撓性腕85上に取付けられていると言う事実のため、リードスクリュー80が反対(第二)方向に回転すると、可撓性腕85は曲がり、リードスクリューナット83を動かすことなくリードスクリュー80を回転できるようになる。例えば摩擦により、リードスクリュー80が第二方向に回転してもリードスクリューナット83が回転しないことを確実にするため、下に説明するリードスクリューナット83の適当な位置にあるアナライト囲い10中の凹所中に位置する弾力性スナップ取付け腕86を与える。
【0106】
シール39の一端をリードスクリューナット83に取付ける。従って、第一副隔室101aが第一隔室101に対し開くことができるように、シール39を開口101bから除去するためには、リードスクリュー80を第一方向に回転し、リードスクリューナット83が右へ移動するようにする。もし望むならば、リードスクリュー80を反対(第二)方向に回転することができ、リードスクリューナット83は適所に留まるであろう。リードスクリュー回転中、リードスクリュー80に取付けたヒレ53は、第一隔室101中の溶液を混合するであろう。
【0107】
第二隔室102中のアナライトを第一隔室101に露出するため、リードスクリュー80を第一方向に回転し、それによりリードスクリューナット83を、例示したように右方向へ更に移動させる。この移動は、第二隔室102の開口102bからシール39を引き離す効果を有する。次にリードスクリュー80の第二方向の回転が、ヒレ53により第一隔室101中の溶液を第二隔室102中のアナライトと混合させる結果になる。可撓性腕85が曲がり、それによりリードスクリューナット83のネジ山84がリードスクリュー80のネジ山81から外されることにより、リードスクリューナット83は適所に留まる。スナップ取付け腕86も、リードスクリューナット83が更に左手側へ移動しないように補助する。
【0108】
上記方法は、そこでも第三隔室103の覆いを取り外し、第三隔室103からのアナライトと、第一隔室101中に既に入っていた溶液とを混合するように行われる。
【0109】
図23は最後のセンサーキットを例示している。図23aは、アナライト囲い10が挿入される容器20の一部を切り取った斜視図である。図23bは、アナライト囲い10の斜視図である。アナライト囲い10は、第二隔室102と第三隔室103を含む。容器20は、その内側壁により第一隔室101を定める。
【0110】
図23に例示した態様は、シール39(区画材料)を先ず第二隔室102の開口から、次に第三隔室103の開口から除去するため少なくとも一つの回転部材の原理を用いている。用いられた原理は、図13及び16に例示したものと、図13の態様の引き剥がし作用が、図16の態様の混合作用と組合されている点で同様である。
【0111】
製造時点で、溶液放出プラグ98を容器20中へ押し込む。これによりチャンネル75の密封を解き、それをエチレンオキシドによる殺菌のために用いることができる。溶液放出プラグ98を容器20中へ押し込むと、溶液が開口101bからセンサー1上に流れる。
【0112】
図23の態様では、二つの回転部材を用いる。第一の回転部材92は、例えば、ステッパーモーターにより駆動するが、手動でも可能である。第一シール39の一端を第一回転部材92に取付け、他端で第二隔室102と第一隔室101との間の開口を覆う。第一回転部材92の第一方向の回転は、シール39aを引き離し、第一と第二隔室101、102を流体流通させるのに効果的である。
【0113】
第一回転部材92の更なる回転は、その第一回転部材92の内側に混合用ヒレ53が存在することにより、第一隔室101中の溶液と、第二隔室102中に入っているアナライトとの混合を与える結果になる。次に、較正の読みを行ってもよい。
【0114】
第二回転部材94も与えられている。第二回転部材94は、第一回転部材が第一方向とは反対の方向である第二方向に駆動された時にのみ、第一回転部材92上に配置された駆動ラグ93により駆動される。これは、第一回転部材の駆動ラグ93が、第二回転部材94の駆動されたスプリング腕95と相互作用するからである。これらの駆動されたスプリング腕95は、それらに対し駆動ラグ93が第一方向に移動した時、駆動されたスプリング腕がその行路から跳ねだし、第二回転部材94が回転しなくなるように成形され、跳ね返される。第二回転部材94が第一方向に回転しないのを確実にするため、容器20上の相合特殊構造と嵌合する保持スプリング腕96が与えられている。
【0115】
このようにして、第一回転部材92が第一方向に回転した後、第一較正測定を行ったならば、回転部材92を第二方向に回転し、このことが今度は第二回転部材94を第二方向に駆動する。これは、第三隔室と第一隔室101との間の開口を覆うシール39bを剥ぐ効果を有する。シール39bは、第二回転部材94に一端で取付けられており、他端で第三隔室103の開口を覆う。第一回転部材92の第二(又は第一)方向の継続した回転は、ヒレ53の存在により、第三隔室103からのアナライトを混合する結果になる。更に較正の読みを取ってもよい。
【0116】
殺菌
本発明のキットは、殺菌された状態で与えられているのが好ましく、従って、本発明は、キットを殺菌する方法も与える。その方法は、較正室を、例えば、熱又はγ−線、好ましくはγ−線により別に殺菌することを含む。従って、較正室は、そのような殺菌技術で損傷を受けないように適当な材料から作るべきであり、例えば、劣化性プラスチックは回避すべきである。更に、アナライト(第一アナライト源、及び場合により更に別のアナライト源)は、不活性ガス雰囲気中で固体であるのが好ましい。これにより、殺菌中、水及び酸素とアナライトとの接触が回避され、かくしてアナライトの劣化を防ぐのに役立つ。
【0117】
次に、センサー囲い中にセンサーを入れ、そのセンサー囲いを容器中に(例えば、容器内のチャンネルに)配置することにより、キットを組立る。較正室も容器内の指定された場所に配置する。次に容器を、少なくとも一部がガス透過性である蓋で密封し、全キットを、好ましくはエチレンオキシドを用いて殺菌する。キットの蓋は、エチレンオキシド殺菌を行えるように少なくとも部分的にガス透過性である。蓋として用いるのに適した材料には、マイクロポーラスなポリエチレンが含まれる。蓋以外の容器のどの部分も、エチレンオキシド殺菌を行える限り、ガス透過性部品から形成してよいことは、当業者には明らかであろう。
【0118】
侵入型用途で用いられる多くのセンサーは、上に記載したグルコースセンサーの例を含めて、レセプターを固定するのに、親水性材料、例えば、親水性固定材料を含む。エチレンオキシドは水と反応することができるので、エチレンオキシド殺菌前にセンサー及び他の材料を乾燥して微量の水を除去するのが好ましい。
【0119】
密封し、殺菌したキットは、そのまま次に較正し、使用者、例えば、病院へこの形態で提供することができる。しかし、好ましい態様として、キットを使用者に供給する前に、較正室とセンサーとの間のシールを破壊するか、又はセンサーを、図5aに描かれているその最初の位置から、図5bに描かれている位置まで移動させることにより、センサーを第一較正隔室に露出する。センサーの感知領域を、次に水又は水性溶液中に浸漬する。もし望むならば、センサー囲いを適当な締止機構によりその位置に固定することができる。
【0120】
この態様は、機器を受け取った使用者により行われる工程を最小限にする。しかし、それは、上に記載したグルコースセンサーのような親水性固定材料を含めセンサーに関連して特に利点を有する。そのようなセンサーは、効果的に使用するためには水和する必要があるのが典型的である。センサーはエチレンオキシド殺菌剤の前には脱水しなければならないので、センサーの再水和が必要である。これは単にセンサーを第一較正隔室に露出することにより達成することができ、センサーは第一隔室中の水又は水性溶液により再水和される。このように、センサーは、使用者が受け取った時、既に完全に水和されており、直ちに較正し、使用することができる。
【0121】
本発明を種類の特別な態様及び例を参照して記述してきた。しかし、本発明は、それらの特別な態様及び例に何ら限定されるものではないことは理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、アナライトを検出するためのセンサー及び前記センサーの較正を可能にする較正室を含むセンサーに関する。キットを殺菌する方法、及びセンサーを較正する方法も記載する。本発明は、特に、殺菌されている必要がある侵入型(invasive)又は植え込み型(implantable)センサーに関する。しかし、例えば、或る含有試薬の生物分解を防ぐために、殺菌が利点になる他の用途で用いられるセンサーも考慮されている。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
化学的センサー又はバイオセンサーを開発する通常の目的は、特定の化学物質又は一組の化学物質(アナライト)の濃度に比例したデジタル電子信号を生じさせることにある。センサーは通常二つの主要な成分を含み、問題のアナライトと反応又は錯化し(理想的には特異的に)新しい化学的又は生物学的生成物を形成するか、又は第二成分、トランスデューサーにより検出することができるエネルギー変化を起こす化学的又は生物学的部分を含む。化学的/生物学的成分は、アナライトのためのレセプター/指示薬として働くと言うことができる。電気化学的測定(例えば、電位差測定、電流測定、電気伝導度測定、インピーダンス測定)、光学的測定、熱量測定、及び音波測定を含めた種々の変換方法を用いることができる。変換後、信号は、通常電子デジタル信号に転化する。
【0003】
アナライトとの化学的/生物学的反応により発生した信号は、通常アナライトの濃度のみならず、センサー自身の特性にも依存するので、そのようなセンサーは、それらが定量的に使用することができるようになる前に、通常較正を必要とする。信号がアナライト濃度と共に変動する仕方は較正曲線(信号対アナライト濃度)の形を決定し、較正点の数を定めるであろう。典型的な較正曲線は、直線型、指数型、s字型、等になることがあり、較正の基本は、化学的又は生物学的センサーのための全ての変換方法論に適用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
侵入型医療用途でのセンサーの較正は、それ自身に特有の一連の問題を有する。侵入型又は植え込み型医療センサーは、殺菌状態で患者に与えなければならず、屡々一回の使用で捨てることができる機器である。理想的には、センサーは使用直前に較正すべきである。なぜなら、較正曲線に影響を与えることがある或るセンサー特性は、時間と共に変化するからである(エージング効果)。センサー製造と使用との間の時間は何ヵ月にもなる場合が屡々あるので、製造時点での較正は、最終的結果に誤りをもたらすことがある。このことは、付き添い臨床医又は看護婦が、センサーの殺菌性を維持しながら、較正を行う必要があるであろうことを意味する。臨床医/看護婦のために適用される付加的制約は、較正方法が簡単に実行でき、理想的には較正を行う人には見えず、迅速に(好ましくは10秒より短い時間で)完了されるべきことである。
【0005】
現在入手できる多くの医療センサーの較正は、臨床医/看護婦が多くの特別な工程を行う必要があり、それらは、もしその方法が正しく踏襲されなければ、測定に誤差又は不正確さを与える結果になることがある。従って、どのような侵入型又は植え込み型の機器に関連しても有用で、上に論じた要件を満たす一層簡単な較正方法が求められている。
【0006】
そのような機器の殺菌も問題を与えることがある。殺菌処理は、病院又は診療所で不良又は不完全な殺菌手順になる問題を回避し、時間を節約するため、臨床医又は看護婦に代わって製造時点で行われているのが典型的である。医療機器の殺菌には、普通三つの型の殺菌が用いられている:水蒸気、照射、及びエチレンオキシドである。水蒸気は通常金属外科器具、包帯、及び容器内の液体のために用いられており、低融点プラスチック部品又は不安定な化学的又は生物学的成分を含む装置には不適切である。なぜなら、水蒸気殺菌は、通常116℃より高い温度で行われるからである。通常γ線照射である照射は、透過性殺菌手段であり、従って、容器内の液体を殺菌することができるが、多くのプラスチック、化学物質、及び生物学的物質を劣化することがある。この劣化は、水及び酸素が存在すると最も起き易いと思われる。エチレンオキシド殺菌は、センサーを含む他の材料及びレセプターを一般に劣化することはない表面殺菌剤であるが、多量の水を含まない材料を殺菌するためだけに用いるべきである。なぜなら、エチレンオキシドは水と反応し、エチレングリコールを形成することができるからである。従って、エチレンオキシドは、化学的センサーを殺菌する好ましい手段である。
【0007】
しかし、エチレンオキシド殺菌は数多くの欠点を持っている。第一に、センサーを構成する時、レセプターをトランスデューサーに固定するのが普通であり、これは通常重合体材料を使用して達成されている。もしセンサーが水溶性アナライト及び血漿に可溶性のアナライトを測定しなければならないならば、重合体固定材料は、アナライトが固定材料を通ってレセプター材料へ拡散され、測定を行えるようにするため、親水性で(すぐに水を吸収し)なければならない。そのようなセンサーをエチレンオキシドで殺菌するためには、殺菌前にその親水性材料から全ての水を除去しなければならない。
【0008】
第二に、水溶性アナライトを測定するためのセンサーを使用時に較正するためには、使用者はアナライト(又はアナライト類似物)の水性溶液中にセンサーを、殺菌の完全性を維持しながら浸漬しなければならない。しかし、較正溶液(一種又は多種)の入った較正容器は、表面殺菌剤であるエチレンオキシドでは殺菌できず、従って、熱又は好ましくは照射により殺菌しなければならない。従って、較正溶液はセンサーとは別に殺菌されたパッケージとして提供されているのが典型的である。較正中、その較正処理を行うためそれらのパッケージを開ける必要があるため、殺菌性が失われることがある。
【0009】
従って、較正中、殺菌性の損失を起こさないセンサー較正手段も要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
本発明は、
(i) アナライトを検出するためのセンサーで、前記アナライトのためのレセプターを含む感知領域を有するセンサー;
(ii) 前記センサーの入ったセンサー囲いで、その少なくとも一部分が水又は水性溶液により透過可能なセンサー囲い;
(iii) 較正室で、少なくとも第一及び第二隔室を含み、前記第一隔室には水又は水性溶液を含む第一較正溶液が入っており、前記第二隔室には前記アナライトの源が入っており、前記第一及び第二隔室が水不透過性区画材料により分離されている較正室;
を含む、センサーキットを与える。
【0011】
本発明のキットのための較正室及びキット内に入っているセンサーを較正する方法も与える。較正方法は、
(i) 場合により、センサーの感知領域を較正室の第一隔室に露出し、前記隔室内の第一較正溶液を前記感知領域と接触させること;
(ii) 前記第一較正溶液についてセンサー出力(即ち、測定されたアナライト濃度)を決定すること;
(iii) 前記較正室の区画材料を破壊するか、さもなければ除去し、前記第一較正溶液とアナライト源との混合物を含む第二較正溶液を形成すること;
(iV) 第二較正溶液についてセンサー出力(即ち、測定されたアナライト濃度)を決定すること;及び
(V) 前記決定されたセンサー出力の読みを用いてセンサーを較正すること;
を含む。
【0012】
本発明の最も簡単な態様として、使用者が受取った時に、センサーの感知領域は既に較正室の第一隔室内に位置しており、従って、場合による工程(i)は行う必要はない。しかし、そうでない場合には、感知領域は、例えばセンサーの囲いを取り除き、その囲いの尖った先端を第一隔室の外側壁に衝き刺し、囲いとセンサーを第一隔室に入れるようにセンサー囲いを移動することにより、第一隔室に容易に露出することができる。別法として、これは、センサーを第一隔室から分離しているシールを破壊するか、又は障壁を除去することにより、達成されるようにしてもよい。
【0013】
感知領域を第一隔室の内容物に露出したならば、第一隔室内の溶液(第一較正溶液)のアナライト濃度の読みを取ることができる。典型的には、第一隔室にはアナライトは全く入っていないので、この工程はアナライト濃度零に相当する第一読みを与える。
【0014】
第二工程では、区画材料を除去するか、又は破壊させ、それにより第一及び第二隔室の内容物を混合する。既知の量ののアナライトを含む第二隔室内のアナライト源は、このようにして第一隔室の水又は水性溶液と混合され、既知の濃度のアナライトを含む第二較正溶液を与えるであろう。次にアナライト濃度の第二の読みを取ることができる。これらの二つの読み及び予め定められたアルゴリズムを用いることにより、較正曲線を作成することができ、その機器を適当に較正することができる。
【0015】
従って、本方法は、非常に簡単な工程を含み、非常に短時間で、典型的には5分以内で完了することができる。手動センサーの場合、方法の簡単性は較正過程中に誤謬が起きる機会を少なくし、使用者が順応し易くする。この方法は、下で論ずるように、自動化するのも簡単である。
【0016】
区画材料を「破壊する(breaking)」と言う用語により、我々は、区画材料が破られるか又は突き刺されるか、或は第一と第二隔室の内容物が互いに接触できるようになる或る仕方で区画材料に開口を作ることを意味する。区画材料を「除去する(removing)」と言う用語により、我々は、区画材料の少なくとも一部分を、第一と第二隔室の内容物が互いに接触できるような或る仕方で除去、即ち、剥ぎ取られることを意味する。区画材料が破壊されるか、又は除去される特別な手段は、第一と第二隔室の内容物が互いに接触できるようになる限り、特別に限定されるものではない。
【0017】
本方法の工程の全てを自動化することができる。典型的には、センサーを、規則的な時間間隔でアナライト濃度を測定するようにプログラムすることができる適当な検出システムに接続する。このようにして、検出システムは自動的にセンサーに関連した第一の読みを取る。第一と第二隔室の内容物の混合に続き(これらの工程は、もし望むならば、機械で駆動することもできる)、アナライト源が溶解し、平坦な値に到達するまで、検出濃度は徐々に増大するであろう。この連続的平坦値が第二の読みを形成する。
【0018】
好ましい態様として、較正室の区画材料は張力状態になっている。このことは、例えば、センサー囲いの尖った先端か又は別の針を用いて、区画材料に突き刺すことにより材料を破裂させ、それが単に小さな刺された穴を開けると言うよりは、むしろ較正室を完全に開かせることを意味する。このことは、今度は第一と第二隔室の内容物の混合を容易にする。
【0019】
更に好ましい態様は、三点較正を含んでいる。この態様では、較正室にはアナライトの第二源が入っている。第二アナライト源を溶液中に混合すると、第一及び第二溶液よりもアナライト濃度の大きな第三溶液が生ずる。この第三溶液についてのセンサー出力の第三の読みを取ることにより、第三較正点を発生させることができる。予め定められた較正アルゴリズムで正確に較正するためには、多数の機器が三つの較正点を必要とするので、第二アナライト源を使用するのが好ましい。
【0020】
第二アナライト源は第三隔室に与えてもよく、第三隔室を較正室の残余のものから分離する区画材料を破壊又は除去することにより、それに達することができる。しかし、別の態様として、第二アナライト源を徐放出カプセル又はパッケージ内の第二隔室中に入れる。区画材料を破壊すると、徐放出(slow release)カプセルが第一隔室の水又は水性溶液と接触し、ゆっくり溶解し始める。或る時間が経過し、その間に第二の(第二較正溶液に関する)読みが取られた後、徐放出カプセルが溶解し、平坦な第二溶解度を与え、従って、第三較正溶液を与える。第三の読みを取ることができる。
【0021】
この後者の態様は、必要になる機械的工程が非常に僅かであると言う特別な利点を有する。上に述べた自動化した方法では、第二の読みを取った後、徐放出カプセルがその内容物を放出し始めるに従って、検出濃度はもう一度増大し始めるであろう。完全に放出され、溶解した後、更にその平坦な検出濃度に到達するであろう。この濃度が第三の読みを形成する。同様に、異なった時間間隔で内容物を放出する追加の徐放出カプセルを使用することにより、四点以上の較正を同時に達成することができるであろう。
【0022】
本発明のセンサーキットは、侵入型又は植え込み型センサーで使用するのに特に適しており、特に使用者に殺菌状態で提供される使い捨てセンサーに適している。キットは、本発明の殺菌方法により準備することができる一つの殺菌容器に入れて使用者に提供することができる。この殺菌方法には、較正室を、好ましくはγ線照射を用いて殺菌し、予め殺菌した較正室、センサー、及びセンサー囲いを容器中に挿入し、容器を密封し、その容器、センサー、及びセンサー囲いを、好ましくはエチレンオキシド殺菌を用いて殺菌することを含む。
【0023】
較正室は別個の密封部分を形成し、従って、それは容器中に挿入する前に別個に殺菌することができる。従って、本発明の方法は、較正室内に殺菌された較正試薬が入った一つの殺菌パッケージを与える。使用者は、場合により、較正前に殺菌容器を開けても良いが、較正室は密封されたままであり、これにより較正中殺菌性が維持される。
【0024】
好ましい態様として、センサーの感知領域を、密封容器を開ける前に較正室の第一隔室に露出する。この態様は、容器を開けた時、既にセンサーの感知領域が殺菌較正室内に入っており、更に較正中の殺菌性の低下を避ける利点を有する。例えば、これは、第一隔室からセンサーを密封分離材を除去することにより達成することができる。別法として、センサー囲いを、第一隔室の外側の位置から第一隔室の内側へ、例えば、密封容器の外側へ伸びるセンサー囲いの一部分を押し込むことにより移動させてもよい。別法として、圧縮可能な腕を、センサー囲いが伸びて入っている容器内に与える。その圧縮可能な腕を圧縮することによりセンサー囲いを容器中に更に押し込み、センサー囲いの尖った先端を較正室の第一隔室の壁に突き刺すことができる。
【0025】
この態様の好ましい特徴として、容器が、センサー囲いの入ったガイドチャンネルを含み、圧縮可能な腕を圧縮した時、センサー囲いがガイドチャンネル内で横に動き、較正室中に入るようにする。別の方向へのセンサー囲いの動きを、このようにして最小限にすることができる。
【0026】
(図面の簡単な説明)
本発明を態様の例及び図面を参照して更に下に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のセンサーキットで用いるためのセンサーを描いた図である。
【図2】図1のセンサーの感知領域の一層詳細な図である。
【図3】図3において、図3a〜図3cは、本発明の較正室の態様を描いた図である。
【図4】本発明の較正室の別の態様を描いた図である。
【図5】本発明の較正室の更に別の態様を描いた図である。
【図6】本発明の較正室の更に別の態様を描いた図である。
【図7】本発明の較正室の更に別の態様を描いた図である。
【図8】本発明の較正室の更に別の態様を描いた図である。
【図9】図9において、図9a及び図9bは、グルコースセンサーの三点較正のための典型的な溶解度曲線及び較正グラフを描いた図である。
【図10】三点較正を与える本発明の較正室を描いた図である。
【図11】三点較正を与える本発明の別の較正室を描いた図である。
【図12】三点較正を与える本発明の更に別の較正室を描いた図である。
【図13】三点較正を与える本発明の更に別の較正室を描いた図である。
【図14】三点較正を与える本発明の更に別の較正室を描いた図である。
【図15】較正室の内容物を混合することができる手段を描いた図である。
【図16】較正室の内容物を混合することができる別の手段を描いた図である。
【図17】較正室の内容物を混合することができる更に別の手段を描いた図である。
【図18】較正室の内容物を混合することができる更に別の手段を描いた図である。
【図19】図19において、図19a〜図9cは、キット内の異なった位置(図19a=殺菌のための位置;図19b=較正方法の第一の読みを記憶及び測定するための位置;図19c=較正方法の第二の読み及び場合により更にそれ以降の読みのための位置)にセンサーがある、本発明のセンサーキットを描いた図である。
【図20】本発明のセンサーキットの実施例の詳細な構造を描いた図である。
【図21】本発明のセンサーキットの別の実施例の詳細な構造を描いた図である。
【図22】本発明のセンサーキットの更に別の実施例の詳細な構造を描いた図である。
【図23】本発明のセンサーキットの更に別の実施例の詳細な構造を描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な記述)
センサー
本発明は、較正を必要とするどのような型のセンサーにでも用いるのに適しているが、特に殺菌状態に維持されなければならないセンサーに有用である。これには、バクテリア数が増大することにより精度が悪影響を受けることがある生体外試験を行うためのセンサーが含まれる。例えば、バクテリアの存在がセンサーのpHに影響を与え、従って、精度に悪影響を与えることがある。しかし、本発明は、保存及び較正中に殺菌状態に維持されなければならない侵入型又は植え込み型センサー(今後、侵入型センサーと呼ぶ)に特に有用である。
【0029】
そのような侵入型センサーには、種々の性質、典型的には、血液の性質を決定するためのセンサーが含まれるが、他の組織が感知されるようにしてもよい。そのような侵入型センサーの例は、カリウム、尿素、クレアチニン、及びグルコースセンサーである。本発明を、侵入型グルコースセンサーの特定の型を参照して更に記述するが、本発明はそのようなセンサーに限定されるものではないことを理解すべきである。
【0030】
患者のグルコースレベルを監視することは、集中治療室では特に有用である。集中治療患者は非常に高いグルコースレベルを有する傾向があることが判明している。インシュリンの投与により正常なグルコースレベルを単に維持するだけで、死亡率は著しく減少させることができる。しかし、もし患者が余りにも多くのインシュリンを投与されると、低血糖症の危険がある。グルコースの間欠的監視は低血糖症を防ぐには不充分である。なぜなら、試料を採取してから結果が確認されるまでの時間が一般に長すぎて、患者の現状及びどの投与インシュリンに対しても彼らの反応を正確に決定することはできないからである。更に間欠的生体外監視は、必要な試験頻度により看護要員の労働時間を著しく増大する。従って、連続的グルコース監視を与える侵入型機器は、集中治療環境中では特に有用である。
【0031】
ファイバー光学技術に基づく一つの特別な侵入型グルコースセンサーが図1に描かれている。センサー1は、患者の中への挿入、例えば、カニュールを通して血管の中に挿入するのに適合する挿入可能な先端2を有する。その挿入可能な先端は感知領域3(図2に一層詳細に描かれている)を有し、その中にグルコースレセプター4及び、典型的には温度センサー5も配置されている。グルコースレセプターは光ファイバー6上に、又はその中に固定されていて、レセプターにより発せられた信号が光ファイバーを通って伝達される。光ファイバーはケーブル7を通ってコネクター8へ伸びており、コネクターは適当な監視装置(描かれていない)と係合させるのに適合する。監視装置には更に光ケーブルが含まれていて、そのケーブルは一方の端でコネクターと係合し、他方の端で二股に分かれて(a)光学的センサーのための適当な光源、及び(b)発生信号検出器に接続している。コネクター8により温度センサーへの電気的接続も与えられており、適当な検出設備が監視装置により与えられている。
【0032】
センサーの感知領域を、一般に血液適合性であるべき膜9で、グルコース(又は、適当な場合には他のアナライト)を周囲の血液又は体液からレセプター4へ拡散させる膜で被覆する。
【0033】
そのようなセンサー中に組込むことができる多くのアナライトのためのレセプターは、当分野で知られている。例えば、クラウンエーテルは、カリウムを検出するのに用いることができ、種々の酵素も有用である。グルコースの場合、有用なレセプターは発蛍光団を有するボロン酸化合物である。ボロン酸類はグルコースと錯化する能力を与え、分子の蛍光発光パターンはグルコースの存在で変化し、それにより光学的検出を可能にする。
【0034】
レセプターは、水及びグルコースのレセプター化合物への拡散を可能にするヒドロゲル中の光ファイバーに固定されるのが典型的である。架橋ポリアクリルアミド又はポリヒドロキシエチルメタクリレート(p−HEMA)は、用いることができるヒドロゲルの例である。
【0035】
較正室
本発明の重要な特徴は較正室であり、それは、上に記載したようなセンサーの較正を、典型的には殺菌状態で可能にするために与えられている。較正室は、既知のアナライト濃度の較正溶液についてのセンサーの読みを二つ以上得るための手段を与える。較正室は典型的には密封され、予め殺菌されており、較正室のその密封及び殺菌性を損なうことなく較正を行うことができるように設計されている。
【0036】
態様(embodiment)1
本発明による較正室の第一の態様は、図3aに描かれている。較正室10は二つの隔室101及び102を有し、それらは水不透過性区画材料11、例えば、破壊可能な区画材料により分離されている。第一隔室101には水又は水性溶液が入っている。典型的には、この隔室には等張性溶液が入っており、アナライトは含まれていない。従って、この隔室中のアナライト濃度の感知は、零の読みを与えるのが典型的である。しかし、もし望むならば、アナライトは第一隔室中に、例えば低い濃度で含まれていてもよい。好ましくはアナライトは、水が存在する中での照射により劣化しない場合にのみ、第一隔室中に含まれている。
【0037】
第二隔室には、アナライト源12、例えばグルコースが入っている。これは、アナライトの濃厚な溶液の形態になっていてもよく、或は図3aに12で描いたように、アナライト自身が固体状態になっていてもよい。アナライトがグルコースである場合、第一隔室にはグルコースは入っていないが、第二隔室にはグルコースが固体状態(例えば、粉末、錠剤、等)で入っているのが典型的である。グルコースの水溶液は、熱又はγ線照射による殺菌で劣化することが見出されている。従って、この態様は、グルコースの水溶液が存在せず、劣化が最小限になる利点を有する。第二隔室は、酸素誘導照射劣化が起きないように不活性ガス雰囲気(例えば、乾燥窒素)になっていてもよい。
【0038】
センサーの較正は、センサーの感知領域を、第一較正溶液の入った第一隔室101に露出することにより行うことができる。この態様の一つの特徴として、センサーの感知領域を第一隔室101中に挿入する。センサーを挿入できるようにするため、典型的には第一隔室の外側壁13を少なくとも部分的に突き刺すことができるようになっている。例えば、外側壁13は、針で突き刺すことができる隔膜になっていてもよい。センサーは、針を通して又は針内で第一隔室中に挿入することができる。感知領域が第一隔室内の適所に来たならば、センサー出力の第一の読みをとる。
【0039】
この態様の別の特徴として、センサーと第一隔室との間にシールを与える。例えば、センサーの動き又は第一隔室の外側壁13の一部分の動きによりシールを破壊すると、第一隔室の内容物がセンサーの周囲に流れ、それによりセンサーが第一較正溶液に露出される。
【0040】
第一と第二隔室とを分離する区画材料を、次に破壊するか、又は除去し、これらの隔室の内容物を混合する。区画材料は、典型的には、殺菌性を維持するため密封された較正室を開けることなく破壊又は除去される。例えば、外側壁13を通して針を第一隔室中へ突き刺して挿入することにより、その材料を破壊する。典型的な態様では、センサーを針内の第一隔室に挿入し、次にセンサーの入った針を前方へ推し進めて区画材料を破裂する。
【0041】
区画材料は、第一と第二隔室の内容物を混合させるため破壊、破裂、又は除去することができるどのような材料でもよい。一つの態様として、区画材料は、針で突き刺した時、その材料が完全に破られるように、張力状態に維持されるエラストマー材料である。天然ゴム又は合成ゴムは、そのような材料の例である。別の態様として、材料は堅いが、針で突き刺した時、それが直ぐに構成部分に砕けるように、破砕線を切り込んである。プラスチック及びセラミックが適当な堅い材料の例である。これらの種類の区画材料は、両方共第一隔室と第二隔室との間に大きな開口を与え、隔室内容物の迅速な混合を可能にする。別の区画材料には、金属箔(例えば、アルミニウム箔)が含まれ、それらはプラスチックで被覆されていてもよい。
【0042】
区画材料は、較正室の二つの隔室の間に漏洩が起きないように、水及びアナライトに対し不透過性であるのがよい。一つの態様として、区画材料の一つの表面を金属化し、水の拡散を防ぐのを補助する。金属化表面は、好ましくは不活性雰囲気中にある第二隔室と接触しているのが典型的である。
【0043】
第一と第二隔室の内容物の混合(例えば、固体アナライトを水又は水性溶液に溶解する)速度を上げるため、較正室の物理的混合、例えば、撹拌又は超音波混合を用いてもよく、或は別法として、泡立つ化学的添加剤を較正室へ添加し、混合を与えることができる。隔室の内容物を混合するための特別な態様を下に記述する。
【0044】
二つの隔室の内容物が混合されたならば、第一較正溶液よりアナライトの濃度が大きい第二較正溶液を与える。従って、この溶液について得られた読みからのセンサー出力は、第二較正点を与える。これにより、予め定められた較正アルゴリズムと共に、較正曲線を作成し、センサーを較正することができる。当業者は、どのような特別な型のセンサーの較正についても適当なアルゴリズムをよく知っているであろう。
【0045】
典型的には、較正は、センサーの接続部8をセンサー出力の連続的測定に適合するモニターに接続することにより行われる。従って、センサーが較正室の第一隔室に露出され、モニターが接続され、スイッチが入ると、直ちに第一の読みを取ることができる。次に区画材料の破裂又は破壊が行われ、モニターは、第一隔室の水又は水性溶液とアナライト源との混合中センサーの出力を連続的に記録する。混合が完了したことによりセンサー出力が平坦になった時、第二の読みを取る。これは一般に較正過程の開始から約2分以内で達成することができる。
【0046】
自動化された方法では、センサーを第一隔室に露出する工程と、区画材料11を除去又は破壊する工程の一つ以上を機械で駆動してもよい。これに関し、ステッパーモーター又はリードスクリューに取り付けたステッパーモーターを用いてもよい。
【0047】
侵入型センサーは、典型的には35〜39℃の温度範囲で作動する。しかし、通常較正は室温で行われる。多くのセンサーが温度変化に敏感であり、その場合、室温で得られた較正曲線は、例えば、37℃の異なった一連の値に移行するであろう。本発明は、この問題を回避できる二つの技術を与えている。センサーは、較正が行われる温度を決定することができるように、温度センサーを含んでいるのが典型的である。どの特定のセンサーの場合でも温度による較正曲線の移行が知られているならば、上に記載したような較正曲線の一般化に従い、37℃へ較正する時、センサーにより測定された曲線から温度差を考慮に入れる必要に応じ、曲線を移行させることができる。別法として、加熱素子(図3aの14)を配備し、較正前に較正室内の温度を37℃へ上昇させてもよい。センサー1内の温度センサーは、較正中の実際の温度を監視するのに用いることができる。
【0048】
本発明の多くの別の態様を下に記述する。それらの態様の各々は、特別に記述する点を除き、態様1と同じである。
【0049】
態様2
較正室の別の態様が図4に描かれている。この態様では、第一較正室101には水又は水性溶液が入っている。センサーの先端2は、ここでは第一隔室内に描かれているが、同様に第一隔室の外側に与えるか、又は第一隔室から密封することができる。第二隔室102にはアナライト12が入っている。この態様では、区画材料11は、その区画材料を通って矢印の方向に針31を動かすことにより破壊する。これは、例えば、手動か又は自動化した方法により針31に取付けたプランジャーの押し下げにより達成することができる。
【0050】
針は、ここでは第二隔室と実質的に同じ環境になっていて、アナライトが区画材料を通って第一隔室中へ押し込まれ、混合を補助する。
【0051】
態様3
図5には、第二隔室102を第一隔室101から分離する二つの区画材料11、11aを有する態様が描かれている。図5に描かれた矢印の方向に左から右へ針31を動かすことにより先ず区画材料11を破壊するか又は破裂し、アナライト12を第一隔室に内容物に露出する。更に同じ方向への針3の動きにより区画材料11aの破壊又は破裂を起こす。これは、第一にアナライト12を第一隔室101へ押しむ効果を有し、第二に、第一隔室中に存在していた液体を二隔室を通って流すことを可能にする。これは、アナライト12と、第一隔室中の液体との混合を補助する。
【0052】
態様4
区画材料11を破壊する別の手段が図6に描かれている。この態様は、プランジャー33に取付けられた刃32を有する。第二隔室102は、第一隔室101の壁に取付けられた区画材料11の袋によって形成されている。刃32の矢印の方向の動きは区画材料11を通って切断し、それによりアナライト12を第一隔室の内容物に露出する。この態様では第二隔室の壁は、刃の動きにより大きく除去され、アナライトと第一隔室の水性溶液との混合が改良される。
【0053】
態様5
第5の態様が図7に描かれている。この場合、区画材料11は、針31が突き刺された時に破裂するような物である。例えば、区画材料はプラスチック積層箔、例えば、プラスチック積層アルミニウム箔でもよい。この態様では第二隔室102は加圧された状態に維持され、針が区画材料を突き刺した時、アナライト12が第二隔室から第一隔室中へ噴出する。
【0054】
態様6
本発明の第六の態様が図8に描かれている。この場合、区画材料11は、腕34に取付けられた放出シール(例えば、ポリオレフィン)である。矢印の方向への腕34の動きはその放出シールを引き剥がし、それによりアナライト12を第一隔室の水性溶液に露出する。
【0055】
態様7
好ましい較正は、較正曲線に一層よく適合させるため、三つの較正点を含むであろう。三つの較正点を与えるためには異なった濃度のアナライトを含む三種類の別々の較正溶液が必要である。態様7及び下に記載するものは3点較正に関連する。しかし、適当な場合には、これらのシステムの特徴は2点較正でも、或は別法として、4点以上の較正でも用いることができるであろう。
【0056】
較正室の好ましい態様が図3bに描かれている。この態様では、3点較正は、徐放出カプセルの形態の中の第二アナライト源15を第二隔室中へ混入することにより達成される。区画材料11を破裂/破壊/除去すると、徐放出カプセルが第一隔室の水又は水性溶液と接触し、ゆっくり溶解するであろう。
【0057】
徐放出カプセルは、その内容物が、第二較正溶液に相当する第二の読みが取られた後にのみ放出される。従って、センサー出力を検出するモニターは、第一アナライト源の溶解に伴うアナライト濃度の第一の増大に続いて、徐放出カプセル破壊後の第二アナライト源の溶解に伴うアナライト濃度の第二の明確な増大を観測するであろう。
【0058】
そのような較正室についての典型的な溶解度曲線が図9aに描かれている。時間t=0で、第一較正溶液に相当する第一の読みを取る。次に区画材料を破裂/破壊し、アナライト濃度が増大するのが見られ、約t=2分で平坦部に到達する。第二較正溶液に相当するこの時点で第二の読みを取る。次に徐放出カプセルがその内容物を放出し始めたのが分かり、濃度が再び増大し、約t=5分で平坦部に到達する。第三較正溶液に相当する第三の読みを取る。このようにして、この態様は一層正確な較正曲線(図9b)を作成することができる。同様なやり方で単に更に別の徐放出カプセル内に入れた更に別のアナライト源を含ませることにより、4点以上の較正を行うことができることを、当業者は認めるであろう。徐放出カプセルの放出時間の適当な設計により、4点以上の別の較正点を生じさせることができる。
【0059】
この態様では、どのような適当な徐放出カプセルでも用いることができる。過度に長い較正時間を回避するため、約1〜10分、好ましくは約2〜5分の範囲で溶解するカプセルが好ましい。ポリエチレンオキシドカプセルが、適当な材料の例である。カプセルの正確な放出時間は、当分野でよく知られているやり方でカプセルの厚さを変えることにより制御することができる。
【0060】
当業者は、第一、第二、及び場合により第三以上の較正溶液のための適当なアナライト濃度を決定することができるであろう。典型的な濃度は、零(第一アナライト濃度)及びセンサーにより測定されると思われる濃度の上端及び下端の濃度を含むべきである。集中治療患者で用いるためのグルコースセンサーの較正例として、第一較正溶液は零濃度を含むのが典型的であるが、第二及び第三較正溶液は、例えば、5mM/l及び10mM/lの濃度を夫々持つのが典型的である。しかし、センサーの型及び最終用途により別の濃度を選択することができるであろう。第一隔室中の水又は水性溶液の体積、及び第一アナライト源、場合により第二以上のアナライト源中に含まれるアナライトの量は、較正溶液の希望の最終濃度に従って選択すべきである。
【0061】
態様8
較正室の別の態様が図3cに描かれている。この態様では、三つの隔室101、102、及び103が存在する。区画材料11、11aは、各隔室を分離する。この態様は、異なった手段で3点較正を与える。第一の読みを取った後、他の態様で論じたように区画材料11を破裂/破壊/除去し、第一と第二隔室の内容物を混合し、第二較正溶液を得る。第二の読みを取る。続いて第二区画材料11aを破裂/破壊/除去し、隔室103の内容物を第二較正溶液と混合する。隔室103には第二アナライト源が入っており、それにより第一又は第二較正溶液よりもアナライト濃度の高い第三較正溶液を与える。第三の読みを取り、較正曲線を作成することができる。この態様は、第一及び第二アナライト源がアナライトの濃厚な溶液であるか、又は固体状態のアナライトである場合の3点較正を行うのに適している。
【0062】
態様9
図10には、三つの別々の隔室101、102、及び103を有する別の3点較正システムが描かれている。この態様は、ここに記載する点を除き、上の態様8と同じである。この場合、第二隔室102の区画材料11を針31で突き刺す。隔室101及び102の内容物の混合により第二較正溶液を与える。混合が完了したならば、センサー出力の読みを取る。第三隔室103の区画材料11aを針31aで突き刺す。これによりアナライト12aを第二較正溶液と混合し、一層高いアナライト濃度を有する第三較正溶液を与える。混合が完了したならば、センサー出力の第三の読みを取ることができる。
【0063】
図10には、隔室102及び103を突き刺す二本の簡単な針が描かれている。しかし、描かれている態様を変更したものを与えることができ、異なったやり方で第二及び第三隔室を破壊又は破裂させる。例えば、態様2〜6に記載した特徴のいずれかを用いてもよい。別法として、図11に示したように、針31及び31aの両方の動きを制御するため一つのプランジャー35を与えてもよい。この態様では、針31は、針31aが隔室103に対するよりも近く、隔室102に対して配置されている。このやり方で、第一「停止位置」までのプランジャーの動きは、破壊可能な材料11を針31が突き刺し、続くプランジャーの第二「停止位置」までの動きにより、針31aを破壊可能な材料11aに突き刺すことが起きる。
【0064】
更に別の変更した例として、適当な時間に隔室102及び103の両方を突き刺すように制御することができる一本の針31を与えてもよい。例えば、針31を、矢印の方向に動かすことにより隔室102の区画材料11を突き刺すのに用い、次にその隔室から引き抜くることができる。次にその針を第三区画材料と一列に並ばせ(例えば、針をスライドさせることにより、又は針を取付けた軸を回転させることにより)、再び矢印の方向に移動させて第三隔室の区画材料11aを突き刺すように、針を運動させることができる。
【0065】
態様10
本発明の回転式態様が図12に描かれている。この態様では、較正室には内側シリンダー36及び外側シリンダー37が入っており、それらは互いに対し回転することができる。第一較正溶液の入った第一隔室101は、内側シリンダーと外側シリンダーとの間に位置している。第二及び第三隔室102及び103で、各々にアナライト源12及び12aが入った隔室が与えられている。第二及び第三隔室の各々は、内側シリンダー36に取付けられた区画材料11、11aの袋から形成されている。刃38は外側シリンダーに固定されている。この態様を変更したものとして、刃を内側シリンダーに取付け、第二及び第三隔室を外側シリンダーに取付けることもできるであろう。
【0066】
内側シリンダーに対する矢印の方向への外側シリンダーの動きは、第二隔室102の破壊又は破裂を起こすであろう。アナライト12は第一較正溶液と混合し、第二較正溶液を与え、センサー出力の読みを取ることができる。同じ方向へ外側シリンダーが更に動くことにより刃が第三隔室103を破壊又は破裂し、アナライト12aと第二較正溶液との混合を起こし、このようにして第三較正溶液を与える。
【0067】
態様11
図13に描かれた態様11は、回転式態様10を変更したものであるが、シール39を剥がすことにより第二及び第三隔室102及び103に到達することを含む。第一隔室101は、内側シリンダー36と外側シリンダー37との間に位置している。アナライト源12、12aが入った第二及び第三隔室は、内側シリンダーの凹所の形で与えられている。各凹所は、11の所で第二隔室を密封し、11aの所で第三隔室を密封するシール39により第一隔室から密封されている。そのシールは39aの所の較正室の外側まで伸びている。矢印の方向に39aの所のシールを引っ張ることにより第二隔室102のシールを破壊し、アナライト12を第一隔室内の第一較正溶液と混合し、それにより第二較正溶液を与えることができるであろう。次にセンサー出力の読みを取る。同じ方向にシール39aを更に引っ張ることにより、第三隔室中に入っていたアナライト12aを最終的に露出し、それにより第三較正溶液を与えるであろう。
【0068】
ここに描いたように、隔室102及び103の両方を密封する一つのシール39を与えてもよい。しかし、別法として、夫々別の隔室のための二つの別のシールを与えてもよい。
【0069】
態様12
態様11を変更したものが図14に描かれている。この態様では、第一と第二隔室(101/102)の間及び第一と第三隔室(101/103)の間のシールを形成するシール39が与えられている。このシールは、ここではプランジャー40に取付けられている。矢印の方向のプランジャー40の動きは、そのシールの一部分11を剥ぎ取ることにより先ず第二隔室内のアナライト12を露出する。同じ方向に続くプランジャーの運動で、シールの一部分11aを剥ぎ取ることによりアナライト12aを露出する。
【0070】
較正溶液の混合
上で論じた如く、一種類以上のアナライト源を第一較正溶液と混合するための手段を与えることは有用である。混合は較正過程の速度を上げるのに役立つのみならず、アナライト源の全体が較正溶液に溶解するのを確実にする。これは正確な読みを与えるのに重要である。
【0071】
機械的手段、磁気的又は電磁気的、及び超音波処理を含めた数多くの異なった混合装置が与えられている。一つの特別な態様として、図15に描かれているように、電磁石51が較正室10の周りに与えられており、可動磁気パドル52が室内に与えられている。電磁場の動きは、パドルの動きを発生し、室内容物の混合を起こす。
【0072】
別法として、機械的に操作されるパドルを、例えば、較正室から伸びた棒に回転ヒレ又はプロペラを取付けることにより用いることができる回転ヒレを組込んだ機器が図16に描かれている。この態様では、ヒレ53、53aが中心棒54のに与えられている。棒54の回転は、隔室101の内容物の混合を起こす。この種の混合技術は、上に記載した回転式態様と組合せて便利に用いることができる。例えば、上に記載した態様10では、内側シリンダー36に第一隔室101中に伸びるヒレのような混合パドルを取付けるか、又はプロペラをシリンダーの端に取付けることができる。外側シリンダーに対する内側シリンダーの回転は、ヒレ又はプロペラを回転させ、第一隔室101の内容物の混合を与えるであろう。
【0073】
往復ポンプによる混合も考慮に入れられている。図17は棒56に取付けられたピストン55を伴った混合技術を示している。ピストンを通って液体が移動できるように、孔57、57aが開けられている。矢印の方向の棒56の往復運動は隔室101の内容物の混合を与える。典型的には、ピストンが較正室を通って動くに従って、室内の液体の全て又は殆ど全てが孔57、57aを通って移動しなければならないように、ピストンは比較的気密に較正室に嵌合する。
【0074】
別法としての往復型態様が図18a及びbに示されている。この態様は、較正室の一端を形成する可撓性隔膜58を有する。その可撓性隔膜に面した凹型端部60を有するのが典型的な内側套管59も与えられている。凹型端部60は、開口を有する固体の壁である。図18a及びbに示したように可撓性隔膜の方へ近づき、それから離れる内側套管の往復運動は、較正室内の液体を、凹型端部60中の開口を通って出入りさせ、液体の混合物を起こす。
【0075】
図17及び18に描かれている往復混合型の態様は、線状運動が区画材料11/11aを破壊又は突き刺す態様と組合せて用いるのに適している。例えば、上の態様9で、針31、31aをピストン55に取付けてもよい。同様に、態様12の棒40をピストン57に取付け、一本の棒40がピストン及びシール39の動きを与えるようにしてもよい。同様に、上記態様2に室の一端に可撓性隔膜を取付け、針31を内側套管に取付けてもよい。従って、往復方向の針31の動きが、区画材料11の破壊を与えるのみならず、内側套管/可撓性隔膜を使用することにより混合を与えるであろう。
【0076】
どの態様の全て又は一部分を、適切ならば、他のどの態様のいずれでも又はその一部分とでも組合せて用いることができる。
【0077】
センサーキット
本発明は、上述したような本発明のセンサー及び較正室を組込んだセンサーキットを与える。そのキットは、使用者に殺菌状態で非常に使い易いフォーマットで、センサー及び較正室を提供することができる。更に、このセンサーキットは、較正中の較正室及びセンサー感知領域の殺菌性を使用者に容易に維持できるようにしている。
【0078】
センサーキットの一つの態様が図19aに描かれている。このキットは、センサー1及び較正室10を収容する容器20を有する。較正室10は、典型的には、容器内の締止位置に固定されている。センサーは、囲い本体22及び突き刺し用先端23、例えば、針を有するセンサー囲い21の中に含まれている。センサーの感知領域は、突き刺し用先端内に配置されているのが典型的である。
【0079】
センサーが入ったセンサー囲いは、容器内を横に動くことができ、即ち、図19aに描いたように、左右方向に動くことができる。センサー囲いの運動をこの横方向に限定し、囲いの自由な動きを制限するのを確実にするため、トラック25a、25bにより形成された誘導チャンネルが与えられてもよい。このやり方でセンサー囲いを、突き刺し用先端が較正室の外側壁13を貫通し、センサーの感知領域を第一隔室101中に挿入するように、動かすことができる。図19bには、この後者の位置にあるセンサーが描かれている。センサー及び囲いがこの位置にある時に、第一較正の読みを取ることができる。
【0080】
センサー囲いは、第一較正溶液を、図19bに示した位置にある時に、感知領域3と接触させるのに適合する。典型的には、突き刺し用先端23は針であり、それは、液体を針にその先端を通って入れることができる。しかし、較正溶液を囲いに侵入させ、センサーと接触させることができる他の手段を与えてもよい。
【0081】
一つの態様として、センサー囲いがの一層の動きが区画材料11を破裂/破壊し、第二、及び場合により、第三較正の読みを取ることができるようになるであろう。図19cには突き刺し用先端23により区画材料を破裂/破壊した後のセンサーが描かれている。別の態様として、区画材料11を破壊又は除去するための別の手段を与え、第二、及び場合により、第三較正の読みを、更にセンサー囲いを動かすことなく取ることができるようにする。
【0082】
容器20は、ガス透過性蓋(描かれていない)で密封されているのが典型的である。
【0083】
機器の殺菌性を維持するため、センサー及びセンサー囲いを容器の密封を破壊することなく移動できるのが有利である。図5aに描かれた態様では、これは圧縮可能な腕26を圧縮することにより達成することができる。これにより、センサーの入ったセンサー囲いを容器内で横に移動させる。圧縮可能な腕は、圧縮可能な蛇腹の形に構成してもよい。
【0084】
センサーキットの別の態様として、センサーと較正室の第一隔室との間にシールを与える。この態様では、そのシールの破壊は、センサー自身の運動を必要とすることなく、センサーを第一隔室に露出する。
【0085】
図20aは、センサーキットの更に別の態様を断面で示している。図20bは、図20aの態様の一部分を切り取った斜視図である。
【0086】
図20のセンサーキットは、図14に例示した態様12と同様である。丁度態様12と同様に、図20aのセンサーキットはシール39(このシール39は区画材料としても働く)が取付けられたプランジャー40を含む。例えば、一部分の往復運動が、水不透過性区画材料を除去し、第一と第二(及び第三)隔室の内容物を混合のに効果的である。
【0087】
シール39は、それがプランジャー40の一端に取付けられている所から、夫々、第一隔室10の副隔室101aの開口101bを横切り、第二隔室102の開口102bを横切って第一隔室101中に伸び、第三隔室103の開口103bを横切り第一隔室101中に伸びている。
【0088】
センサー1の感知領域3は、第一副隔室101a内に配置されている。
【0089】
先ずキットを殺菌する(下の殺菌の節を参照)。チャンネル75を第一副隔室101aと流体が流通するように与える。このチャンネル75により、第一副隔室101aとセンサー1の少なくともその感知領域3とをエチレンオキシドを用いて殺菌することができる。次にプランジャー40を容器520及びそのプランジャーに組合せたo−リング76、77の中に挿入し、それによりチャンネル75を密封する。
【0090】
プランジャー40を更に容器20中に、シール39を第一副隔室101aの開口101bから引き剥がすのに充分な距離移動させる。それにより第一副隔室101a及びセンサー1の感知部分3も、第一隔室101を定める容器20の内部に露出される。
【0091】
図20のセンサーを較正するため(それは使用する時点で行われる)、プランジャー40を更に前進させ(好ましくはステッパーモーター/リードスクリュー装置によるが、これは手動で行ってもよい)、シール39を第二隔室102の開口102bの上から引きはがすことにより、第二隔室中に入っていたアナライトを露出する。このようにして第二隔室102を、センサー1の感知部分3と同様、第一隔室101を定める容器20の内部に開放する。第二隔室102からシール39が除去される位置と、左手の位置との間のプランジャー40の軸方向の往復運動は、感知部分が露出される容器20(第一隔室101)中の溶液を混合するのに効果的である。次に較正測定を行ってもよい。
【0092】
次にプランジャー40を、容器20内の更に右手側に(例示したように)移動させ、第三隔室103の開口103bからシール39を引き剥がし、それにより第三隔室103中のアナライトを容器20の(第一隔室)内部に露出する。次にプランジャー40の軸方向の往復運動により溶液を混合し、さらに較正の読みを取ることができる。
【0093】
このように、図20の態様は態様12と図17に例示した態様の両方の特徴を組込んでいることが分かるであろう。
【0094】
図21には別の態様が例示されている。図21aはこの態様の断面図であり、図21bはこの態様の一部を切り取った斜視図である。この態様は、態様9の原理と同様な原理を用いており、即ち、針31と、第二及び第三隔室102、103の内容物を第一隔室101の内容物から密封する区画材料11との間の相対的直線運動を用いている。その相対的直線運動は、リードスクリューを使用することにより達成される。
【0095】
図21の態様では、容器20はその内側に、丁度図20の態様のような第一隔室101を定める。第一隔室101は二本の針31、31aを含み、較正室10として見ることができるアナライト囲いを有する。アナライト囲い10は容器20に対しスプラインされており、リードスクリュー80のネジ山81に嵌合する内側ネジ山82を有する。リードスクリュー80は容器20と同軸になっている。このようにして、リードスクリュー80の回転はアナライト囲い10を回転することなくセンサー囲い20内でアナライト囲い10の線状運動をもたらすことができる。
【0096】
センサー1は、図21aに示した位置では第一隔室101に対し開いている第一副隔室101a中のリードスクリュー80内に配置されている。製造及び殺菌中、リードスクリュー80は、室101aがチャンネル75と流体流通し、少なくとも第一副隔室101aと感知部分3のエチレンオキシド殺菌を行うことができるように配置されている。次にリードスクリュー80を更に隔室20中に押込み、それによりo−リング76が室101中へ動き、o−リング77が室101aをチャンネル75から密封する。次にリードスクリュー80をセンサー囲い20から取り外すことができなくるのを確実するため、スナップ取付け具88を与えることができる。
【0097】
アナライト囲い10は、第二隔室102及び第三隔室103を含む。第二及び第三隔室102、103は、アナライト囲い10を通る貫通孔により形成されている。貫通孔は軸方向になっており、両方の側が水不透過性区画材料11により隔室101から密封されている。
【0098】
機器を較正するため、リードスクリュー80を回転し(好ましくはステッパーモーターのような電気モーターにより)、アナライト囲い10を容器20内で直線状に移動させる(勿論、アナライト囲い10は、容器20にスプラインされているので回転しない)。較正を行うため、リードスクリュー80を回転し、アナライト囲い10を左か又は右へ移動させる。左方向への移動は、針31aを材料11に突き刺す結果になり、それにより第二隔室102中に入っていたアナライトを第一隔室101中に放出する。リードスクリュー80の回転によるアナライト囲いの往復運動は、次に溶液を混合することができる。次に較正測定を行ってもよい。次にリードスクリュー80の回転によるアナライト囲い10の右手側への移動は、第三隔室103の一方の側又は両側の材料11を針31で突き刺すのに用いることができる。これは第三隔室103中のアナライトを第一隔室101中へ放出させる。更にリードスクリュー80の両方方向への回転は、第一隔室101内のアナライト囲い10の軸方向の往復運動により溶液の混合を与える結果になる。最終的較正測定を行うことができる。
【0099】
センサーキットの別の態様が図22に例示してある。図22aは断面図であり、図22bはその態様の一部分を切り取った斜視図である。図22cはリードスクリューナットの斜視図である。図22a及びbには、第二隔室102が、容器20により定められた第一隔室101に既に開放され、即ち、較正の読みを行うことができる位置にあるように、種々の部品の位置が例示されている。
【0100】
図22の態様は、シール39を隔室間から除去するために利用される線状運動を発生させるのに回転を利用する。
【0101】
アナライト囲い10は、管の形をしており、開口101bにより第一隔室101へ開いている第一副隔室101中に感知部分3を有するセンサー1が入っている。アナライト囲い10も第二隔室102及び第三隔室103を有し、それら両方が区画材料として働くシール39により密封されている。
【0102】
シール39は開口101bを覆うように伸びていてもよい。その場合、特にチャンネル75が、エチレンオキシドによるセンサーの殺菌のために与えられている。
【0103】
殺菌後、蓋90を容器20の中に挿入する。蓋90は、o−リングにより容器20に対し密封され、それにより容器20の内側壁により定められる第一隔室101を密封する。チャンネル75も蓋90により密封される。
【0104】
蓋90は、粗いネジ山81を有するリードスクリュー80に対しスプラインされている。リードスクリュー80のネジ山81は、リードスクリューナット83のネジ山84と嵌合し、それは図22cに一層詳細に例示されている。
【0105】
リードスクリューナット83のネジ山84は、リードスクリューナット83の可撓性腕85上に形成されている。このことは、リードスクリュー80の第一方向の回転中、リードスクリューナット83のネジ山84がリードスクリュー80のネジ山81と嵌合し、それによりリードスクリューナットを線状方向(例示では右手方向)に移動させる。ネジ山の形及び可撓性腕85上に取付けられていると言う事実のため、リードスクリュー80が反対(第二)方向に回転すると、可撓性腕85は曲がり、リードスクリューナット83を動かすことなくリードスクリュー80を回転できるようになる。例えば摩擦により、リードスクリュー80が第二方向に回転してもリードスクリューナット83が回転しないことを確実にするため、下に説明するリードスクリューナット83の適当な位置にあるアナライト囲い10中の凹所中に位置する弾力性スナップ取付け腕86を与える。
【0106】
シール39の一端をリードスクリューナット83に取付ける。従って、第一副隔室101aが第一隔室101に対し開くことができるように、シール39を開口101bから除去するためには、リードスクリュー80を第一方向に回転し、リードスクリューナット83が右へ移動するようにする。もし望むならば、リードスクリュー80を反対(第二)方向に回転することができ、リードスクリューナット83は適所に留まるであろう。リードスクリュー回転中、リードスクリュー80に取付けたヒレ53は、第一隔室101中の溶液を混合するであろう。
【0107】
第二隔室102中のアナライトを第一隔室101に露出するため、リードスクリュー80を第一方向に回転し、それによりリードスクリューナット83を、例示したように右方向へ更に移動させる。この移動は、第二隔室102の開口102bからシール39を引き離す効果を有する。次にリードスクリュー80の第二方向の回転が、ヒレ53により第一隔室101中の溶液を第二隔室102中のアナライトと混合させる結果になる。可撓性腕85が曲がり、それによりリードスクリューナット83のネジ山84がリードスクリュー80のネジ山81から外されることにより、リードスクリューナット83は適所に留まる。スナップ取付け腕86も、リードスクリューナット83が更に左手側へ移動しないように補助する。
【0108】
上記方法は、そこでも第三隔室103の覆いを取り外し、第三隔室103からのアナライトと、第一隔室101中に既に入っていた溶液とを混合するように行われる。
【0109】
図23は最後のセンサーキットを例示している。図23aは、アナライト囲い10が挿入される容器20の一部を切り取った斜視図である。図23bは、アナライト囲い10の斜視図である。アナライト囲い10は、第二隔室102と第三隔室103を含む。容器20は、その内側壁により第一隔室101を定める。
【0110】
図23に例示した態様は、シール39(区画材料)を先ず第二隔室102の開口から、次に第三隔室103の開口から除去するため少なくとも一つの回転部材の原理を用いている。用いられた原理は、図13及び16に例示したものと、図13の態様の引き剥がし作用が、図16の態様の混合作用と組合されている点で同様である。
【0111】
製造時点で、溶液放出プラグ98を容器20中へ押し込む。これによりチャンネル75の密封を解き、それをエチレンオキシドによる殺菌のために用いることができる。溶液放出プラグ98を容器20中へ押し込むと、溶液が開口101bからセンサー1上に流れる。
【0112】
図23の態様では、二つの回転部材を用いる。第一の回転部材92は、例えば、ステッパーモーターにより駆動するが、手動でも可能である。第一シール39の一端を第一回転部材92に取付け、他端で第二隔室102と第一隔室101との間の開口を覆う。第一回転部材92の第一方向の回転は、シール39aを引き離し、第一と第二隔室101、102を流体流通させるのに効果的である。
【0113】
第一回転部材92の更なる回転は、その第一回転部材92の内側に混合用ヒレ53が存在することにより、第一隔室101中の溶液と、第二隔室102中に入っているアナライトとの混合を与える結果になる。次に、較正の読みを行ってもよい。
【0114】
第二回転部材94も与えられている。第二回転部材94は、第一回転部材が第一方向とは反対の方向である第二方向に駆動された時にのみ、第一回転部材92上に配置された駆動ラグ93により駆動される。これは、第一回転部材の駆動ラグ93が、第二回転部材94の駆動されたスプリング腕95と相互作用するからである。これらの駆動されたスプリング腕95は、それらに対し駆動ラグ93が第一方向に移動した時、駆動されたスプリング腕がその行路から跳ねだし、第二回転部材94が回転しなくなるように成形され、跳ね返される。第二回転部材94が第一方向に回転しないのを確実にするため、容器20上の相合特殊構造と嵌合する保持スプリング腕96が与えられている。
【0115】
このようにして、第一回転部材92が第一方向に回転した後、第一較正測定を行ったならば、回転部材92を第二方向に回転し、このことが今度は第二回転部材94を第二方向に駆動する。これは、第三隔室と第一隔室101との間の開口を覆うシール39bを剥ぐ効果を有する。シール39bは、第二回転部材94に一端で取付けられており、他端で第三隔室103の開口を覆う。第一回転部材92の第二(又は第一)方向の継続した回転は、ヒレ53の存在により、第三隔室103からのアナライトを混合する結果になる。更に較正の読みを取ってもよい。
【0116】
殺菌
本発明のキットは、殺菌された状態で与えられているのが好ましく、従って、本発明は、キットを殺菌する方法も与える。その方法は、較正室を、例えば、熱又はγ−線、好ましくはγ−線により別に殺菌することを含む。従って、較正室は、そのような殺菌技術で損傷を受けないように適当な材料から作るべきであり、例えば、劣化性プラスチックは回避すべきである。更に、アナライト(第一アナライト源、及び場合により更に別のアナライト源)は、不活性ガス雰囲気中で固体であるのが好ましい。これにより、殺菌中、水及び酸素とアナライトとの接触が回避され、かくしてアナライトの劣化を防ぐのに役立つ。
【0117】
次に、センサー囲い中にセンサーを入れ、そのセンサー囲いを容器中に(例えば、容器内のチャンネルに)配置することにより、キットを組立る。較正室も容器内の指定された場所に配置する。次に容器を、少なくとも一部がガス透過性である蓋で密封し、全キットを、好ましくはエチレンオキシドを用いて殺菌する。キットの蓋は、エチレンオキシド殺菌を行えるように少なくとも部分的にガス透過性である。蓋として用いるのに適した材料には、マイクロポーラスなポリエチレンが含まれる。蓋以外の容器のどの部分も、エチレンオキシド殺菌を行える限り、ガス透過性部品から形成してよいことは、当業者には明らかであろう。
【0118】
侵入型用途で用いられる多くのセンサーは、上に記載したグルコースセンサーの例を含めて、レセプターを固定するのに、親水性材料、例えば、親水性固定材料を含む。エチレンオキシドは水と反応することができるので、エチレンオキシド殺菌前にセンサー及び他の材料を乾燥して微量の水を除去するのが好ましい。
【0119】
密封し、殺菌したキットは、そのまま次に較正し、使用者、例えば、病院へこの形態で提供することができる。しかし、好ましい態様として、キットを使用者に供給する前に、較正室とセンサーとの間のシールを破壊するか、又はセンサーを、図5aに描かれているその最初の位置から、図5bに描かれている位置まで移動させることにより、センサーを第一較正隔室に露出する。センサーの感知領域を、次に水又は水性溶液中に浸漬する。もし望むならば、センサー囲いを適当な締止機構によりその位置に固定することができる。
【0120】
この態様は、機器を受け取った使用者により行われる工程を最小限にする。しかし、それは、上に記載したグルコースセンサーのような親水性固定材料を含めセンサーに関連して特に利点を有する。そのようなセンサーは、効果的に使用するためには水和する必要があるのが典型的である。センサーはエチレンオキシド殺菌剤の前には脱水しなければならないので、センサーの再水和が必要である。これは単にセンサーを第一較正隔室に露出することにより達成することができ、センサーは第一隔室中の水又は水性溶液により再水和される。このように、センサーは、使用者が受け取った時、既に完全に水和されており、直ちに較正し、使用することができる。
【0121】
本発明を種類の特別な態様及び例を参照して記述してきた。しかし、本発明は、それらの特別な態様及び例に何ら限定されるものではないことは理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) アナライトを検出するためのセンサーで、前記アナライトのためのレセプターを含む感知領域を有するセンサー;
(ii) 前記センサーの入ったセンサー囲いで、その少なくとも一部分が水又は水性溶液により透過可能なセンサー囲い;
(iii) 較正室で、少なくとも第一及び第二隔室を含み、前記第一隔室には水又は水性溶液を含む第一較正溶液が入っており、前記第二隔室には前記アナライトの源が入っており、前記第一及び第二隔室が水不透過性区画材料により分離されている較正室;
を含む、センサーキット。
【請求項2】
較正室の第二隔室には固体状態のアナライトが入っており、場合により不活性雰囲気になっている、請求項1に記載のセンサーキット。
【請求項3】
較正室が、更に別のアナライト源の入った第三隔室を含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載のセンサーキット
【請求項4】
較正室の第二隔室が付加的に第二アナライト源を含み、前記第二源がアナライトの入った徐放出カプセルである、請求項2に記載のセンサーキット。
【請求項5】
区画材料が、張力状態にあるエラストマー材料であるか、又はプラスチック積層金属箔である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項6】
較正室の第一隔室がセンサーから密封されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項7】
較正室が、室の内容物を混合するための混合装置を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項8】
センサー囲いの少なくとも一部分及びセンサーの感知領域が、較正室の第一隔室内に配置されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項9】
センサー、センサー囲い、及び較正室が、密封された、場合により殺菌された容器内に入れられている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項10】
容器が蓋を有し、その少なくとも一部分がガス透過性である、請求項9に記載のセンサーキット。
【請求項11】
センサーが温度センサーを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項12】
センサーがグルコースセンサーであり、アナライトがグルコースである、請求項1〜11のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項13】
センサーが感知領域及び接続端部を有する光ファイバーを含み、グルコースレセプター材料が前記ファイバーの感知領域に対し、又はその中に固定されており、前記ファイバーの感知領域がグルコース透過性膜ケース内に配置されている、請求項12に記載のセンサーキット。
【請求項14】
アナライト検出用センサーを較正するための較正室で、請求項1〜7のいずれか1項に記載の較正室。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のセンサーキット中のセンサーを較正する方法において、
(i) 場合により、センサーの感知領域を較正室の第一隔室に露出し、第一較正溶液を感知領域と接触させること;
(ii) 前記第一較正溶液についてセンサー出力を決定すること;
(iii) 前記較正室の区画材料を破壊するか、除去し、前記第一較正溶液とアナライト源との混合物を含む第二較正溶液を形成すること;
(iV) 前記第二較正溶液についてセンサー出力を決定すること;及び
(V) 前記決定されたセンサー出力の読みを用いてセンサーを較正すること;
を含む、センサー較正方法。
【請求項16】
較正室が更に別のアナライト源が入っている第三隔室を含み、前記第三隔室が第二区画材料により前記較正室の残余から分離されており、第二区画材料を破壊するか又は除去して、第二較正溶液と前記更に別のアナライト源との混合物を含む第三較正溶液を形成し、前記第三較正溶液についてのセンサー出力を決定することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
更に、工程(iv)で第二較正溶液についてのセンサー出力を決定する前に第二較正溶液を混合する工程を含み、場合により更に、第三較正溶液についてのセンサー出力を決定する前に、前記第三較正溶液を混合する工程を含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
センサーの感知領域を、前記センサーを第一隔室から分離するシールを破壊するか又は除去することにより較正溶液の第一隔室に露出する、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
工程(i)〜(v)を自動化する、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項9〜14のいずれか1項に記載のセンサーキットを殺菌する方法において、較正室を、好ましくはγ−線照射を用いて殺菌すること、前記予め殺菌された較正室、センサー、及びセンサー囲いを容器中に挿入すること、前記容器を密封すること、及び前記容器、センサー、及びセンサー囲いを、好ましくはエチレンオキシド殺菌を用いて殺菌することを含む、殺菌方法。
【請求項21】
殺菌に続き、付加的に、センサーを較正室の第一隔室から分離するシールを除去するか又は破壊し、それにより前記センサーを第一較正室に露出する工程を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
図面を参照し、本文中に記載したのと実質的に同じ、請求項1〜14のいずれか1項に記載のセンサーキット又は較正室。
【請求項1】
(i) アナライトを検出するためのセンサーで、前記アナライトのためのレセプターを含む感知領域を有するセンサー;
(ii) 前記センサーの入ったセンサー囲いで、その少なくとも一部分が水又は水性溶液により透過可能なセンサー囲い;
(iii) 較正室で、少なくとも第一及び第二隔室を含み、前記第一隔室には水又は水性溶液を含む第一較正溶液が入っており、前記第二隔室には前記アナライトの源が入っており、前記第一及び第二隔室が水不透過性区画材料により分離されている較正室;
を含む、センサーキット。
【請求項2】
較正室の第二隔室には固体状態のアナライトが入っており、場合により不活性雰囲気になっている、請求項1に記載のセンサーキット。
【請求項3】
較正室が、更に別のアナライト源の入った第三隔室を含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載のセンサーキット
【請求項4】
較正室の第二隔室が付加的に第二アナライト源を含み、前記第二源がアナライトの入った徐放出カプセルである、請求項2に記載のセンサーキット。
【請求項5】
区画材料が、張力状態にあるエラストマー材料であるか、又はプラスチック積層金属箔である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項6】
較正室の第一隔室がセンサーから密封されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項7】
較正室が、室の内容物を混合するための混合装置を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項8】
センサー囲いの少なくとも一部分及びセンサーの感知領域が、較正室の第一隔室内に配置されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項9】
センサー、センサー囲い、及び較正室が、密封された、場合により殺菌された容器内に入れられている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項10】
容器が蓋を有し、その少なくとも一部分がガス透過性である、請求項9に記載のセンサーキット。
【請求項11】
センサーが温度センサーを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項12】
センサーがグルコースセンサーであり、アナライトがグルコースである、請求項1〜11のいずれか1項に記載のセンサーキット。
【請求項13】
センサーが感知領域及び接続端部を有する光ファイバーを含み、グルコースレセプター材料が前記ファイバーの感知領域に対し、又はその中に固定されており、前記ファイバーの感知領域がグルコース透過性膜ケース内に配置されている、請求項12に記載のセンサーキット。
【請求項14】
アナライト検出用センサーを較正するための較正室で、請求項1〜7のいずれか1項に記載の較正室。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のセンサーキット中のセンサーを較正する方法において、
(i) 場合により、センサーの感知領域を較正室の第一隔室に露出し、第一較正溶液を感知領域と接触させること;
(ii) 前記第一較正溶液についてセンサー出力を決定すること;
(iii) 前記較正室の区画材料を破壊するか、除去し、前記第一較正溶液とアナライト源との混合物を含む第二較正溶液を形成すること;
(iV) 前記第二較正溶液についてセンサー出力を決定すること;及び
(V) 前記決定されたセンサー出力の読みを用いてセンサーを較正すること;
を含む、センサー較正方法。
【請求項16】
較正室が更に別のアナライト源が入っている第三隔室を含み、前記第三隔室が第二区画材料により前記較正室の残余から分離されており、第二区画材料を破壊するか又は除去して、第二較正溶液と前記更に別のアナライト源との混合物を含む第三較正溶液を形成し、前記第三較正溶液についてのセンサー出力を決定することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
更に、工程(iv)で第二較正溶液についてのセンサー出力を決定する前に第二較正溶液を混合する工程を含み、場合により更に、第三較正溶液についてのセンサー出力を決定する前に、前記第三較正溶液を混合する工程を含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
センサーの感知領域を、前記センサーを第一隔室から分離するシールを破壊するか又は除去することにより較正溶液の第一隔室に露出する、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
工程(i)〜(v)を自動化する、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項9〜14のいずれか1項に記載のセンサーキットを殺菌する方法において、較正室を、好ましくはγ−線照射を用いて殺菌すること、前記予め殺菌された較正室、センサー、及びセンサー囲いを容器中に挿入すること、前記容器を密封すること、及び前記容器、センサー、及びセンサー囲いを、好ましくはエチレンオキシド殺菌を用いて殺菌することを含む、殺菌方法。
【請求項21】
殺菌に続き、付加的に、センサーを較正室の第一隔室から分離するシールを除去するか又は破壊し、それにより前記センサーを第一較正室に露出する工程を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
図面を参照し、本文中に記載したのと実質的に同じ、請求項1〜14のいずれか1項に記載のセンサーキット又は較正室。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18a】
【図18b】
【図19a】
【図19b】
【図19c】
【図20a】
【図20b】
【図21a】
【図21b】
【図22a】
【図22b】
【図22c】
【図23a】
【図23b】
【図9】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18a】
【図18b】
【図19a】
【図19b】
【図19c】
【図20a】
【図20b】
【図21a】
【図21b】
【図22a】
【図22b】
【図22c】
【図23a】
【図23b】
【図9】
【公表番号】特表2009−543031(P2009−543031A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517398(P2009−517398)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002414
【国際公開番号】WO2008/001091
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(509002132)グリシュア リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002414
【国際公開番号】WO2008/001091
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(509002132)グリシュア リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
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