説明

センサー部材、および衝撃検出装置

【課題】落下衝撃時に一方のビームが破損したとしても、他方のビームがフレームに結合した状態を保つように構成することにより、質量体が機器内を自由に移動することを防ぎ、電気回路部品や電気回路基板をショートさせてしまうことを防止することができるセンサー部材および衝撃検出装置を提供する。
【解決手段】電極を備えたマス部1と、マス部1に機械的及び電気的に接合された一対のビーム2及び3と、一対のビーム間に電圧を印加し電圧の変化を検出する検出手段とを備え、電圧の変化に基づきビーム3が破断しているか否かを判断する衝撃検出装置であって、一対のビームのうちの一方のビーム2は、他方のビーム3よりも脆性を高くしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃検出装置に関する。具体的には、自由に可搬可能なモバイル機器に搭載し、そのモバイル機器を誤って床等に落下させてしまった際の衝撃を検出することができる装置に関する。また、そのような衝撃検出装置に備えることが可能なセンサー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノート型パーソナルコンピューターや携帯電話端末などの各種モバイル機器は、小型軽量の構成上の特徴を有するが故、使用者が手で持ち運んだり、手で把持しながら使用する機会が多い。したがって、このようなモバイル機器は、使用者が手で把持している時に誤って床等に落下させてしまう可能性が極めて高いため、落下衝撃を検出するためのセンサーを搭載してモバイル機器の落下衝撃を検出し、衝撃検出時に機器の保護機能が働くように構成されていることが多い。保護機能とは、例えば機器内部の電源をオフにしたり、ハードディスクドライブなどの記録媒体が破損しないように保護する機能である。
【0003】
上記のような落下衝撃を検出する手段としては、特許文献1、2及び3等で提案されているように、重り(マス部)と、その重りをフレームに支持する梁(ビーム)とを備え、落下衝撃時に重りが慣性により変位する際の変位量や、重りの大きな変位により梁が切断したことを検出することによって、落下衝撃を検出する手段がある。
【特許文献1】特開平5−142243号公報
【特許文献2】特開2004−132942号公報
【特許文献3】特開2007−64711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に開示されている構成では、図10に示す模式図のように、マス部101を支持しているビーム102及び103が同じ外形寸法であるため、ほぼ同等の脆性を有する。したがって、電子機器の落下衝撃時にマス部101が矢印AまたはBに示す方向に変位した場合、マス部101とビーム102との接続部およびマス部101とビーム103との接続部、あるいはビーム102自身において、破断が生じる場合がある。すると、マス部101がビーム102及び103から完全に分離してしまい、分離したマス部101が機器の振動や揺動により機器内を自由に移動してしまう状態になる。よって、マス部101に形成された電極膜が機器内の電気回路部品や電気回路基板における導電部に接触した場合、電気回路部品や電気回路基板をショートして破損させてしまう可能性がある。なお、特許文献2〜3についても同様の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、落下衝撃時に一方のビームが破損したとしても、他方のビームがフレームに結合した状態を保つように構成することにより、質量体が機器内を自由に移動することを防ぎ、電気回路部品や電気回路基板をショートさせてしまうことを防止することができるセンサー部材および衝撃検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセンサー部材は、第1のビーム及び第2のビームが質量体を介して配置され、前記質量体を支持体に対して支持する構成を備えたセンサー部材であって、前記第1のビームは、前記第2のビームよりも脆性を高くしたものである。
【0007】
本発明の衝撃検出装置は、電極を備えた質量体と、前記質量体に機械的及び電気的に接合された一対のビームと、前記一対のビーム間に電圧を印加し、前記電圧の変化を検出する検出手段とを備え、前記電圧の変化に基づき前記ビームが破断しているか否かを判断する衝撃検出装置であって、前記一対のビームのうちの一方のビームは、他方のビームよりも脆性を高くしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、質量体が機器内を自由に移動することを防ぎ、電気回路部品や電気回路基板をショートさせてしまうことを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のセンサー部材は、第1のビーム及び第2のビームが質量体を介して配置され、前記質量体を支持体に対して支持する構成を備えたセンサー部材であって、前記一対のビームのうちの第1のビームは、第2のビームよりも脆性を高くしたものである。このような構成とすることにより、衝撃が印加された際に、第1のビームのみを破断させ、質量体を第2のビームのみで支持することができる。よって、質量体が機器内を自由に移動することを防ぎ、電気回路部品や電気回路基板をショートさせてしまうことを防止する。
【0010】
本発明のセンサー部材は、上記構成を基本として以下のような態様をとることができる。
【0011】
本発明のセンサー部材において、前記第1のビームの質量をM1、前記第2のビームの質量をM2、前記質量体の質量をM3とした時、
M1<M2<M3
の関係を有する構成とすることができる。このような構成とすることで、第1のビームを破断しやすい構成とすることができ、衝撃が印加された際に、第1のビームのみを破断させ、質量体を第2のビームのみで支持することができる。よって、質量体が機器内を自由に移動することを防ぎ、電気回路部品や電気回路基板をショートさせてしまうことを防止する。
【0012】
本発明のセンサー部材において、前記第1のビームの厚さをD1、前記第2のビームの厚さをD2とした時、
D1<D2
の関係を有する構成とすることができる。このような構成とすることで、第1のビームを破断しやすい構成とすることができ、衝撃が印加された際に、第1のビームのみを破断させ、質量体を第2のビームのみで支持することができる。よって、質量体が機器内を自由に移動することを防ぎ、電気回路部品や電気回路基板をショートさせてしまうことを防止する。
【0013】
本発明のセンサー部材において、前記第1のビームと前記第2のビームとは同一断面積を有し、前記第2のビームは、前記第1のビームよりも多数のビームで構成してもよい。このような構成とすることで、第1のビームを破断しやすい構成とすることができ、衝撃が印加された際に、第1のビームのみを破断させ、質量体を第2のビームのみで支持することができる。よって、質量体が機器内を自由に移動することを防ぎ、電気回路部品や電気回路基板をショートさせてしまうことを防止する。また、衝撃が印加された際に質量体がビームを軸に回転することを防ぐことができ、ビームが捻れることにより破断することを防ぐことができる。よって、正確に落下衝撃に基づくビームの破断を検出することができる。
【0014】
本発明のセンサー部材において、前記質量体は、前記第1のビームに接合された部位近傍の質量が、前記第2のビームに接合された部位近傍の質量よりも、小さくなるように形成されている構成とすることができる。このような構成とすることにより、第1のビームをより破断しやすくすることができる。
【0015】
本発明の衝撃検出装置は、電極を備えた質量体と、前記質量体に機械的及び電気的に接合された一対のビームと、前記一対のビーム間に電圧を印加し、前記電圧の変化を検出する検出手段とを備え、前記電圧の変化に基づき前記ビームが破断しているか否かを判断する衝撃検出装置であって、前記一対のビームのうちの一方のビームは、他方のビームよりも脆性を高くしたものである。このような構成とすることで、一対のビームのうちの一方のビームを破断しやすい構成とすることができ、衝撃が印加された際に、一方のビームのみを破断させ、質量体を他方のビームのみで支持することができる。よって、質量体が機器内を自由に移動することを防ぎ、電気回路部品や電気回路基板をショートさせてしまうことを防止する。
【0016】
(実施の形態1)
図1Aは、実施の形態における衝撃検出装置の概略構成を示す。図1Aに示す衝撃検出装置は、ノート型パソコンや携帯電話端末などの各種電子機器に内蔵され、主にマス部1(質量体)とビーム2及び3を備えている。
【0017】
図1Aにおいて、ビーム2は、略平板状でかつ弾性変形可能に形成され、一端部がマス部1の一側面に接合し、一端部に対向する他端部が電子機器のフレームや電気回路基板(いずれも不図示)に固定されている。ビーム3は、略平板状でかつ弾性変形可能に形成され、一端部がマス部1におけるビーム2が配されている面の裏面に接合し、一端部に対向する他端部が電子機器のフレームや電気回路基板(いずれも不図示)などの支持部材に固定されている。また、ビーム3の質量をM1、ビーム2の質量をM2、マス部1の質量をM3とした時、
M1<M2<M3
の関係を有するように構成されている。また、本実施の形態では、上式に示す関係を確立するために、ビーム2の厚さ寸法D51とビーム3の厚さ寸法D52とは、
D52<D51
の関係とした。これにより、ビーム2の剛性をビーム3の剛性よりも高く、すなわちビーム部3の脆性(破断し易さ)はビーム部2のそれよりも低くしている。また、ビーム2とビーム3は、同一材料で形成してもよいが、異なる材料で形成してもよく、少なくともビーム3よりもビーム2の剛性が高くなるような材料で形成すればよい。ビーム2の脆性がビーム3の脆性よりも低くなるように異なる材料で形成した場合は、ビーム2とビーム3とは同一厚さ寸法(D51=D52)かつ同一幅寸法(W51=W52)で形成することができる。また、ビーム2とビーム3は、金属で形成されているが、主に樹脂などの不導体で形成して電極を備える構成としてもよく、少なくとも一部に導体を備えていればよい。したがって、ビーム2、マス部1、ビーム3は、電気的に接続されて接合されている。また、ビーム2及びビーム3の少なくともいずれか一方(本実施の形態ではビーム2)は、別途設けられた検出回路に電気的に接続され、他方(本実施の形態ではビーム3)は接地されている。マス部1とビーム3とが破断した時のビーム2またはビーム3における電圧変化を検出することで、破断状態を検出することができる。
【0018】
マス部1は、所定の質量を有する材料で形成されている。また、マス部1は、金属で形成されているが、主に樹脂などの不導体で形成して電極を備える構成としてもよく、少なくとも一部に導体を備えていればよい。また、マス部1は、ビーム2及び3によって支持部材に支持され、ビーム2及び3が弾性変形可能であるため矢印AまたはBに示す方向へ変位可能である。また、マス部1とビーム2及び3とは、半田、メッキ、接着剤などにより接合することができるが、マス部1とビーム2及び3とを一体成型により形成してもよい。
【0019】
以下、衝撃検出方法について説明する。なお、電子機器の落下衝撃時、マス部1の変位によりマス部1とビーム3との接合部が破断する場合と、ビーム3自身が破断する場合とが考えられるが、本実施の形態においてはビーム3自身が破断するものとして説明する。
【0020】
まず、検出回路(不図示)によりビーム2、マス部1、ビーム3を通電状態にする。また、検出回路は、例えばビーム2における電圧変化の監視を開始する。
【0021】
衝撃検出装置が図1Aに示す状態の時、電子機器を誤って床等に落下させてしまうと、マス部1が落下衝撃時の慣性により例えば矢印Aに示す方向へ変位する。小さい落下衝撃であれば、ビーム2及び3の変形量は小さく、マス部1は時間の経過とともにやがて図1Aに示す位置に戻るが、大きい落下衝撃であれば、ビーム2及び3が大きく撓む。本実施の形態では、ビーム3の剛性をビーム2の剛性よりも低くしているため、ビーム3がビーム2によりも大きく撓む。ビーム3は、その弾性変形の限界を超えると破断が生じ、図1Bに示す状態になる。
【0022】
図1Bに示すように、ビーム3において破断が生じると、マス部1とビーム3とは電気的にも破断した状態となるため、ビーム2における電圧がグランド電位から上昇する。検出回路は、ビーム2における電圧上昇を検出することにより、ビーム3において破断が生じたことを検出する。
【0023】
図2は、図1Aに示す衝撃検出装置を電気回路基板に実装した例を示す。図2において、マス部1、ビーム2、ビーム3の構成については、図1AにおけるZ−Z部の断面に対応する。図2に示すように、衝撃検出装置は、ビーム2の端部が電気回路基板4に形成された孔部4aに挿入されて半田やメッキで固定され、ビーム3が電気回路基板4に形成された孔部4bに挿入された半田やメッキで固定されている。電気回路基板4には、マス部1とビーム3との電気的破断を検出可能な検出回路(不図示)が実装されている。検出回路は、ビーム2と電気的に接続するように形成されている。また、ビーム3は、電気回路基板4に形成されたグランドパターン(不図示)に電気的に接続するように実装されている。上記接続関係に基づき、検出回路は、ビーム2とビーム3との間に所定の電圧を印加する。
【0024】
なお、図2に示す構成は、衝撃検出装置を電気回路基板4に実装する構成を示したが、電子機器の筐体に固定する構成でもよい。このような構成とした場合、ビーム2を電気回路基板4に実装された検出回路に電気的に接続する構成が必要である。また、ビーム3を電気回路基板4に実装されたグランドパターンに電気的に接続する構成、または電子機器の筐体が金属などの導電性材料で形成されている場合は、ビーム3を筐体に電気的に接続する構成が必要である。
【0025】
以上のように本実施の形態によれば、マス部1を支持している2つのビーム2及び3のうち少なくとも一方(本実施の形態ではビーム3)の脆性を、他方(本実施の形態ではビーム2)の脆性よりも高くしたことにより、本装置を搭載した電子機器を落下させてしまった際の衝撃によってマス部1が変位した際、ビーム3が破断してビーム2が破断しないようにした。このような構成とすることで、マス部1がビーム2及び3から完全に分離しないため、マス部1が機器内を自由に移動することによる電気回路部品などのショートを防止することができる。
【0026】
なお、本実施の形態では、ビーム2の厚さD51とビーム3の厚さD52とを異ならせる構成としたが、
D51=D52
とし、ビーム2の幅寸法W51とビーム3の幅寸法W52とを、
W52<W51
の関係にして、ビーム2の脆性をビーム3の脆性よりも低くする構成としても同様の効果が得られる。
【0027】
また、本実施の形態では、2つのビーム2及び3でマス部1を支持する構成としたが、3つ以上のビームでマス部を支持する構成としてもよい。その場合は、3つ以上のビームのうち少なくとも1つのビームを、他のビームよりも脆性を低くする。このような構成であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0028】
以下、衝撃検出装置の具体構成例について説明する。
【0029】
(実施例1)
図3は、衝撃検出装置の実施例1の斜視図である。
【0030】
図3に示すように、センサー部材10は、例えば略長方形のアルミニウム薄板に切り欠き部10a〜10dを形成して構成されている。なお、センサー部材10は、本実施の形態ではアルミニウム薄板で形成したが、少なくとも電気抵抗が低い金属材料であればよい。切り欠き部10a及び10bは、互いに対向する位置に形成され、両者の間には幅寸法D1のビーム部14を備えている。また、切り欠き部10c及び10dは、互いに対向する位置に形成され、両者の間には幅寸法D2のビーム部15を備えている。幅寸法D1と幅寸法D2とは、
D2<D1
の関係にある。したがって、ビーム部14の方がビーム部15よりも剛性が高く、落下衝撃時に破断しにくい。なお、本実施例では、D1=60μm、D2=120μm、マス部1の質量を1gとした。また、ビーム部14は、マス部11と支持部12とに一体的に配されている。ビーム部15は、マス部11と支持部13とに一体的に配されている。
【0031】
マス部11は、その幅寸法W1が、支持部12の幅寸法W2及び支持部13の幅寸法W3よりも大きく形成されている。切り欠き部10a〜10dの形成位置を適宜選択し、マス部11の幅寸法W1を大きくしたり小さくしたりすることで、マス部11を所望の質量に設計することができる。
【0032】
支持部12(または支持部13)は、例えば電気回路基板に半田などにより実装固定され、検出回路(不図示)に電気的に接続されている。また、支持部13(または支持部12)は、例えば電気回路基板に半田などにより実装固定され、接地されている。
【0033】
図3に示すセンサー部材10を電子機器に搭載し、電子機器を誤って床等に落下させてしまった場合、マス部11が落下衝撃時の慣性により変位する。落下衝撃時のエネルギーが大きい場合は、ビーム部15が破断してマス部11と支持部13とが分離してしまい、マス部11はビーム部14のみで支持部12に支持された状態になる。検出回路は、ビーム部15が破断することによって支持部12(または支持部13)における電圧が変化したことを検出して、ビーム部15における破断を検出することができる。
【0034】
本実施例では、ビーム部14の幅寸法D1をビーム部15の幅寸法D2よりも大きくすることで、ビーム部14の脆性をビーム部15の脆性よりも低くし、ビーム部14を破断しにくくかつビーム部15を破断しやすく構成している、これにより、電子機器の落下衝撃時にビーム部15のみを破断させ、電子機器の落下衝撃を検出することができるとともに、マス部11が支持部12から分離しないため、マス部11が電子機器内を自由に移動しない、よって、マス部11が電子機器内の電気回路部品や電気回路基板に電気的に接触して、回路がショートしてしまうことを防止することができる。
【0035】
(実施例2)
図4は、衝撃検出装置の実施例2の斜視図である。
【0036】
図4に示すセンサー部材20において、図3に示すセンサー部材10と異なるのは、マス部21と支持部22との接続構成である。他の部位については、図3とは異なる符号を付与しているが、同一構成及び同一機能を有するため、詳しい説明は省略する。
【0037】
センサー部材20において、マス部21と支持部22とはビーム部24a及び24bで接続されている。ビーム部24aは、切り欠き部20aと切り欠き部20eとの間に配され、幅寸法D11を有する。ビーム部24bは、切り欠き部20bと切り欠き部20eとの間に配され、幅寸法D12を有する。ビーム部25は、切り欠き部20cと切り欠き部20dとの間に配され、幅寸法D13を有する。幅寸法D11〜D13は、
D11=D12=D13
の関係を有する。すなわち、ビーム部25、24a及び24bそれぞれの断面積は等しくしている。
【0038】
図4に示すセンサー部材20を電子機器に搭載し、電子機器を誤って床等に落下させてしまった場合、マス部21が落下衝撃時の慣性により変位する。落下衝撃時のエネルギーが大きい場合は、総断面積の差でビーム部25が破断してマス部21と支持部23とが分離してしまい、マス部21はビーム部24a及び24bのみで支持部22に支持された状態になる。検出回路は、ビーム部25が破断することによって支持部22(または支持部23)における電圧が変化したことを検出して、ビーム部25における破断を検出することができる。
【0039】
本実施例では、マス部21と支持部22とを2つのビーム部24a及び24bで接続し、マス部21と支持部23とを1つのビーム部25で接続することで、マス部21と支持部22との接続脆性をマス部21と支持部23との接続脆性よりも低くし、マス部21と支持部22との間が破断しにくくかつマス部21と支持部23との間が破断しやすく構成している、これにより、電子機器の落下衝撃時にビーム部25のみを破断させ、電子機器の落下衝撃を検出することができるとともに、マス部21が支持部22から分離しないため、マス部21が電子機器内を自由に移動しない、よって、マス部21が電子機器内の電気回路部品や電気回路基板に電気的に接触して、回路がショートしてしまうことを防止することができる。
【0040】
また、本実施例では、マス部21に対して斜め方向のエネルギーが印加された場合、マス部21が矢印Cに示す方向またはその逆方向に回転しようとする力が加わる可能性がある。仮に、マス部21が回転してしまった場合、ビーム部25が捻れて破断してしまう可能性がある。このような捻れによるビーム部25の破断は、本来検出しないといけない落下衝撃時のエネルギーに基づく破断とは異なるものであるため、落下衝撃時のエネルギーによる破断を正常に検出したとは言えない。本実施例では、マス部21と支持部22とが2つのビーム部24a及び24bで接続されているため、1つの接続部で接続する構成よりも捻れ方向の剛性を高くすることができ、マス部21が矢印Cに示す方向またはその逆方向に回転するのを防ぐことができる。よって、捻れによるビーム部25の破断が生じないようにすることができる。
【0041】
なお、本実施例では、ビーム部24a及び24bの数を2つとしたが、3つ以上であってもよい。また、マス部21と支持部22とを接続するビーム部の数を増やすことで、さらに捻れ方向の剛性を上げることができる。
【0042】
なお、本実施形態では1つの切欠き部20eを介してビーム部24a及び24bを備える構成で説明したが、切欠き部を複数備える構成であってもよい。
【0043】
(実施例3)
図5は、衝撃検出装置の実施例3の斜視図である。
【0044】
図5に示すセンサー部材30は、例えば略長方形のアルミニウム薄板に切り欠き部30a及び30bを形成して、幅寸法D22のビーム部35を備えている。また、センサー部材30は、マス部31における支持部32側に切り欠き部31a及び31bを形成したことを構成上の特徴としている。切り欠き部31a及び31bは、マス部31におけるビーム部34側の端部が幅寸法D21となり、マス部31におけるビーム部35側の端部が幅寸法D23となり、
D21<D23
の関係となるように形成されている。したがって、マス部31は、ビーム部34側よりもビーム部35側が重心となる。
【0045】
また、マス部31と支持部32との間のビーム部34の幅寸法D21と、マス部31と支持部33との間の幅寸法D22とは、
D22<D21
の関係を有している。すなわち、ビーム部34と35とに断面積の差を設けている。したがって、ビーム部34の方がビーム部35よりも脆性が低く、落下衝撃時に破断しにくい。ビーム部34は、マス部31と支持部32とに一体的に配されている。ビーム部35は、マス部31と支持部33とに一体的に配されている。
【0046】
図5に示すセンサー部材30を電子機器に搭載し、電子機器を誤って床等に落下させてしまった場合、マス部31が落下衝撃時の慣性により変位する。落下衝撃時のエネルギーが大きい場合は、ビーム部35が破断してマス部31と支持部33とが分離してしまい、マス部31はビーム部34のみで支持部32に支持された状態になる。検出回路は、ビーム部35が破断することによって支持部32(または支持部33)における電圧が変化したことを検出して、ビーム部35における破断を検出することができる。
【0047】
本実施例では、ビーム部34の幅寸法D21をビーム部35の幅寸法D22よりも大きくすることで、ビーム部34の剛性をビーム部35の脆性よりも低くし、ビーム部34を破断しにくくかつビーム部35を破断しやすく構成している、これにより、電子機器の落下衝撃時にビーム部35のみを破断させ、電子機器の落下衝撃を検出することができるとともに、マス部31が支持部32から分離しないため、マス部31が電子機器内を自由に移動しない、よって、マス部31が電子機器内の電気回路部品や電気回路基板に電気的に接触して、回路がショートしてしまうことを防止することができる。
【0048】
また、本実施例では、マス部31に切り欠き部31a及び31bを形成して、ビーム部35側の幅寸法D23をビーム部34側の幅寸法D21よりも大きくしたので、マス部31の重心がビーム部35側に位置することになるため、弱い衝撃エネルギーによってビーム部35を破断させることができる。
【0049】
また、切り欠き部31a及び31bを設けたことにより、例えば図1に示すような略長方形のマス部に比べて、マス部31の外形寸法を小さくすることができるので、センサー部材30を小型化することができる。また、センサー部材30を形成するのに必要な材料を少なくすることができるので、材料コストを削減することができる。
【0050】
なお、本実施の形態では切り欠き部31a及び31bを、ビーム部34側の端部とビーム部35側の端部とを直線的に結ぶ形状に形成したが、少なくともマス部31におけるビーム部35側に重心を設けることができれば、この形状に限らない。例えば、マス部31を円弧状に切り欠いてもよい。
【0051】
(実施例4)
図6は、衝撃検出装置の実施例4の斜視図である。
【0052】
図6に示すセンサー部材40は、例えば略長方形のアルミニウム薄板に切り欠き部40a及び40bを形成して、幅寸法D31のビーム部45を備えている。また、センサー部材40は、切り欠き部40cを形成して、幅寸法D32のビーム部44を備えている。幅寸法D31と幅寸法D32とは、
D31<D32
の関係を有する。したがって、ビーム部44の方がビーム部45よりも脆性が低く、落下衝撃時に破断しにくい。ビーム部44は、マス部41と支持部42とに一体的に配されている。ビーム部45は、マス部41と支持部43とに一体的に配されている。
【0053】
図6に示すセンサー部材40を電子機器に搭載し、電子機器を誤って床等に落下させてしまった場合、マス部41が落下衝撃時の慣性により変位する。落下衝撃時のエネルギーが大きい場合は、ビーム部45が破断してマス部41と支持部43とが分離してしまい、マス部41はビーム部44のみで支持部42に支持された状態になる。検出回路は、ビーム部45が破断することによって支持部42(または支持部43)における電圧が変化したことを検出して、ビーム部45における破断を検出することができる。
【0054】
本実施例では、ビーム部44の幅寸法D32をビーム部45の幅寸法D31よりも大きくすることで、ビーム部44の剛性をビーム部45の脆性よりも低くし、ビーム部44を破断しにくくかつビーム部45を破断しやすく構成している、これにより、電子機器の落下衝撃時にビーム部45のみを破断させ、電子機器の落下衝撃を検出することができるとともに、マス部41が支持部42から分離しないため、マス部41が電子機器内を自由に移動しない、よって、マス部41が電子機器内の電気回路部品や電気回路基板に電気的に接触して、回路がショートしてしまうことを防止することができる。
【0055】
また、本実施例では、マス部41に対して斜め方向のエネルギーが印加された場合、マス部41が矢印Cに示す方向またはその逆方向に回転しようとする力が加わる可能性がある。仮に、マス部41が回転してしまった場合、ビーム部45が捻れて破断してしまう可能性がある。このような捻れによるビーム部45の破断は、本来検出しないといけない落下衝撃時のエネルギーに基づく破断とは異なるものであるため、落下衝撃時のエネルギーによる破断を正常に検出したとは言えない。本実施例では、ビーム部44及び45を、マス部41の中心からずらした位置に設けたことにより、接続部をマス部の中心に設ける構成よりも捻れ方向の剛性を高くすることができ、マス部41が矢印Cに示す方向またはその逆方向に回転するのを防ぐことができる。
【0056】
また、ビーム部44を形成するための切り欠き部40cは1カ所であるため、加工工数を削減することができる。
【0057】
なお、本実施例では、ビーム部45を形成するための切り欠き部40a及び40bは2カ所としたが、切り欠き部40aのみを形成してビーム部45を形成する構成としてもよい。このような構成とすることで、加工工数をさらに削減することができる。
【0058】
(実施の形態2)
図7A及び図7Bは、本実施の形態における衝撃検出装置の構成を示す側面図である。図7A及び図7Bにおいて、図1A及び図1Bに示す衝撃検出装置の構成と同様の構成については、同一符号を付与して詳しい説明は省略する。また、マス部1とビーム3との破断を検出する動作についても実施の形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0059】
図7A及び図7Bに示す衝撃検出装置は、マス部1を金属で形成し、マス部1の近傍(本実施の形態では下方)にマグネット5を備えたことを特徴としている。
【0060】
図7Aに示す衝撃検出装置を電子機器に搭載し、電子機器を誤って床等に落下させてしまった場合、マス部1が落下衝撃時の慣性により変位する。落下衝撃時のエネルギーが大きい場合は、マス部1とビーム3とが破断あるいはビーム3自身が破断して分離してしまい、マス部1はビーム2でのみ支持された状態になる。この時、マス部1は、自重によりビーム2を撓ませて矢印Aに示す方向へ変位し、下方に配されたマグネット5に吸着される。なお、マグネット5は、マス部1を吸着した状態で電子機器を振動あるいは揺動させたとしても、マス部1が離間することがないような磁力を有することが好ましい。
【0061】
以上のように本実施の形態によれば、ビーム3から分離したマス部1をマグネット5に吸着させることにより、破断後のマス部1が機器内を自由に移動することによる電気回路部品などのショートを防止することができる。
【0062】
また、ビーム3から分離したマス部1をマグネット5に吸着させることにより、マス部1が機器内の他の部材と衝突することにより発生する異音を防止することができる。つまり、マグネット5を備えていない構成では、ビーム2でのみ支持されているマス部1が、機器の振動や揺動に伴って機器内の他の部材に衝突し、異音が発生してしまう可能性がある。本実施の形態では、マス部1の位置をマグネット5で固定するため、機器が振動や揺動したとしてもマス部1が他の部材に衝突することがないため、異音の発生を抑えることができる。
【0063】
なお、本実施の形態では、マス部1を位置を固定する手段としてマグネット5を備えたが、両面テープや接着剤など粘着力を有する材料でマス部1の位置を固定してもよい。粘着力を有する材料を用いることで、ハードディスクドライブなどのように磁界に対して耐性が低いものを電子機器に搭載していたとしても、磁気的な悪影響を与えないため、実用的である。
【0064】
また、本実施の形態では、マス部1の少なくとも外郭を金属で形成し、マグネット5に吸着させる構成としたが、マス部1の少なくとも外郭に磁性材料を塗布あるいはマグネットを固定し、マグネット5に代えて金属を配置し、マス部1を金属に吸着させる構成としてもよい。
【0065】
(実施の形態3)
図8は、本実施の形態における衝撃検出装置の斜視図である。図9は、図8におけるZ−Z部の断面図である。
【0066】
図8及び図9において、図1A及び図1Bに示す衝撃検出装置の構成と同様の構成については、同一符号を付与して詳しい説明は省略する。また、マス部1とビーム3との破断を検出する動作についても実施の形態1と同様であるため、説明は省略する。図8及び図9に示す衝撃装検出置は、マス部1をケース6で覆ったことを特徴としている。ケース6は、図9に示すように内壁とマス部1との間に隙間ができる程度の容積を有する空間61を備えている、空間61は、マス部1とビーム3とが破断し、マス部1が自重により例えば矢印Aに示す方向に変位した際に、マス部1をビーム3から完全に離間させるために必要な空間である。また、ケース6は、互いに対向する一対の側面に、ビーム2を挿通させるための孔部6bと、ビーム3を挿通させるための孔部6aを備えている。
【0067】
以上のように本実施の形態によれば、マス部1をケース6で覆うことにより、万が一、マス部1とビーム2及び3との接続部あるいはビーム2及び3自身において破断が生じ、マス部1がビーム2及び3から完全に分離してしまったとしても、マス部1はケース6内に位置し、マス部1が電子機器内を自由に移動することがない。よって、分離したマス部1が電気回路部品などに接触することにより電気回路部品を破損してしまうことを防止することができる。
【0068】
なお、本実施の形態におけるマス部1の外郭に磁性材料を塗布するかマグネットを配し、ケース6を金属材料で形成する構成としてもよい。また、マス部1の少なくとも外郭を金属で形成し、ケース6の内面に磁性材料を塗布するかマグネットを配する構成としてもよい。上記いずれの構成においても、マス部1とビーム3との間で破断が生じた場合、マス部1とビーム2及び3との間で破断が生じた場合、ビーム2及び3のいずれか一方または両方において破断が生じた場合に、マス部1をケース6の内壁に吸着させて位置を固定することができるので、電子機器が振動または揺動した際にマス部1がケース6の内壁に衝突して異音が発生することを防止することができる。
【0069】
また、本実施の形態の衝撃検出装置は、ノート型パソコンの他、携帯電話端末、PDA(personal digital assistance)、医療機器、携帯型ゲーム機などの電子機器に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の衝撃検出装置は、落下させてしまう恐れがある電子機器に有用である。特に携帯型電子機器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1A】実施の形態1における衝撃検出装置の外観を示す斜視図
【図1B】実施の形態1における衝撃検出装置の破断時の状態を示す斜視図
【図2】実施の形態1における衝撃検出装置の断面図
【図3】実施の形態1におけるセンサー部材の外観を示す斜視図(実施例1)
【図4】実施の形態1におけるセンサー部材の外観を示す斜視図(実施例2)
【図5】実施の形態1におけるセンサー部材の外観を示す斜視図(実施例3)
【図6】実施の形態1におけるセンサー部材の外観を示す斜視図(実施例4)
【図7A】実施の形態2における衝撃検出装置の外観を示す側面図
【図7B】実施の形態2における衝撃検出装置の破断時の状態を示す側面図
【図8】実施の形態3における衝撃検出装置の外観を示す斜視図
【図9】図8におけるZ−Z部の断面図
【図10】従来の衝撃検出装置の斜視図
【符号の説明】
【0072】
1 マス部(質量体)
2 ビーム
3 ビーム
5 マグネット
6 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のビーム及び第2のビームが質量体を介して配置され、前記質量体を支持体に対して支持する構成を備えたセンサー部材であって、
前記第1のビームは、前記第2のビームよりも脆性を高くした、センサー部材。
【請求項2】
前記第1のビームの質量をM1、前記第2のビームの質量をM2、前記質量体の質量をM3とした時、
M1<M2<M3
の関係を有する、請求項1記載のセンサー部材。
【請求項3】
前記第1のビームの厚さをD1、前記第2のビームの厚さをD2とした時、
D1<D2
の関係を有する、請求項1記載のセンサー部材。
【請求項4】
前記第1のビームと前記第2のビームとは同一断面積を有し、
前記第2のビームは、前記第1のビームよりも多数のビームで構成されている、請求項1記載のセンサー部材。
【請求項5】
前記質量体は、前記第1のビームに接合された部位近傍の質量が、前記第2のビームに接合された部位近傍の質量よりも、小さくなるように形成されている、請求項1記載のセンサー部材。
【請求項6】
電極を備えた質量体と、
前記質量体に機械的及び電気的に接合された一対のビームと、
前記一対のビーム間に電圧を印加し、前記電圧の変化を検出する検出手段とを備え、
前記電圧の変化に基づき前記ビームが破断しているか否かを判断する衝撃検出装置であって、
前記一対のビームのうちの一方のビームは、他方のビームよりも脆性を高くした、衝撃検出装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−216509(P2009−216509A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59851(P2008−59851)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)