説明

センサ機器装着ベルト

【課題】他の人の手助けなしに、正確に腰背部の中心にセンサ機器を固定し、正確な測定が可能なセンサ機器装着ベルトを提供する。
【解決手段】生体の胴体の所定部位に巻き付けて装着し、生体の体動を検出するセンサ機器2を装着するためのセンサ機器装着ベルト100であって、センサ機器を固定するためのポケット部3と、ポケット部が固定されるパッド1と、伸縮性を有する弾性部材4,5と、実際の長さの2倍を示す目盛が付された第一調整ベルト6及び第二調整ベルト7と、第一調整ベルト及び第二調整ベルトに設けられ、目盛に標線をあわせることで、第一調整ベルト及び第二調整ベルトの長さを調整し、センサ機器を体の中心部に設定する第一アジャスタ10及び第二アジャスタ11と、連結機能を有するバックル12,13から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の動きを、センサ機器を用いてセンシングするための機器(以下、センサ機器と記す)を備えた装着ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療、介護、健康管理等の分野において、さまざまな疾病と生体リズムとの関係を正確に調査するために、日常生活での人体の生体リズム等をリアルタイムで常時計測することは重要である。この常時計測が可能な従来の計測機器として、例えば特許文献1に示すような、装着形計測機器が開示されている。図6は該文献に示された装着形計測機器の断面図である。ここでは、ベルト60が人体の手首61に巻きつけられ、固定される。センサ部62はベルト60の装着状態における内周面側に固定されており、処理部を手の甲側にして装着者の手首61に取り付けると、センサ部62が装着者のほぼとう骨動脈63の外方に位置して固定される。
【0003】
また、特許文献2には、生体の動きを検出する体動センサ機器が開示されている。図7は該文献に示された体動センサ機器の斜視図である。センサ機器70を内蔵した部材71を被験者が普段身に付けているベルト72などに取り付けて使用される。
【0004】
これらの計測機器は、いずれもベルトに取り付けられるため、被験者の負担無く、生体リズムの常時計測あるいは長時間の計測が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−159457号公報(平成14年6月4日公開)
【特許文献2】特開2009−279211号公報(平成21年12月3日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に身体の動きをセンシングするセンサ機器を装着するベルトは、パッド、長さ調整ベルト、アジャスタ、バックルで構成され、以下のような装着手順で装着される。まず、アジャスタでベルトの長さを被験者の略腰回りサイズに合わせ、センサ機器が装着されたパッド部を測定対象者の背中に密着させる。次に、腹部側のバックルを留め、長さ調整ベルトを左右に軽く引き、仮留めし、最後に背中の中心にセンサ機器の中心を合わせた後、ベルトに緩み、ずれなどが発生しないようにしっかりと締める。
【0007】
体動の測定精度を向上させるには、体の動きの対称性をセンシングするため、センサ機器を体の中心位置に装着する必要がある。特に腰背体幹部に装着する場合、背中の中心にセンサ機器の中心を合わせて装着する必要があり、一人でこれを行うのは困難である。また、アジャスタでベルトの長さを測定者の腰囲に合わせる際に、ベルト側には何の指標も無いため、ベルト長を測定者の腰囲に合わせることが非常に困難であり、仮留めする際にベルト長が測定者の腰回りの寸法より極端に短い状態になっていた場合は、測定者に装着できない事態が発生する。また逆にベルト長が測定者の腰回り寸法より極端に長い場合は、長さ調整ベルトを左右に軽く引く際に体からずり落ちてしまうなど不便である。さらに、体の動きから発生する加速度に重畳する重力加速度の影響を極小化するために、センサ機器を傾き無く装着する必要がある。
【0008】
特許文献1に示された計測機器を用いる場合、手首などのように被験者が見て確認できる位置にセンサ機器を固定するのは容易であるが、上記で示したように、装着時にセンサ機器を正しい位置に固定する必要がある場合、例えば背中の中央部分などに固定するときには、一人で固定するには困難が伴う。
【0009】
また、特許文献2に示された計測機器を用いる場合は、既に身に着けいているベルトにおいて、例えば腰部の中央部分に当たる部分に正確に計測機器を取り付けるのは一人では困難である。さらに、特許文献2に示された計測機器を用いる場合は、センサ機器の傾きが発生する可能性がある。すなわち、既に身に着けているベルトなどに取り付けるだけでは、センサ機器が体の動きに伴い、簡単にずれたり傾いたりするため、精度確保が非常に困難であり、正しい測定位置に固定し続けることができるかどうかも不明である。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、他の人の手助けなしに、正確に腰背部の中心にセンサ機器を固定し、センサ機器が傾くことなく正確な測定が可能なセンサ機器装着ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るセンサ機器装着ベルトは、生体の体動を検出するセンサ機器を生体の所定部位に巻き付けて装着するためのセンサ機器装着ベルトであって、前記センサ機器の両側に設けられ、目盛が付された第一調整ベルト及び第二調整ベルトと、前記第一調整ベルト及び第二調整ベルトに設けられ、前記第一調整ベルト及び第二調整ベルトの長さを調整する、移動可能な第一アジャスタ及び第二アジャスタと、前記センサ機器装着ベルトを装着するための連結部材より構成され、前記目盛は、長さを2分の1に縮尺したものであり、前記第一アジャスタ及び第二アジャスタには前記目盛に合わせるための標線が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、前記第一アジャスタ及び第二アジャスタの前記標線の示す目盛の数値が一致した場合、前記数値は前記センサ機器装着ベルトの全長を示すことを特徴としてもよい。また、前記第一アジャスタ及び第二アジャスタの前記標線の示す目盛の数値を一致させることにより、前記センサ機器を体の中心部に設定することを特徴としてもよい。また、前記第一アジャスタ及び第二アジャスタの標線において示される数値が一致した場合、前記センサ機器中心から前記連結部材が連結された状態における連結部材中心までの距離が前記センサ機器装着ベルトの左右において略等しいことを特徴としてもよい。
【0013】
また、前記センサ機器装着ベルトは、前記センサ機器を固定するためのポケット部と、前記ポケット部が固定されるパッドを備え、前記パッドには、前記センサ機器の傾きを防止するガイドを設けたことを特徴としてもよい。また、前記ポケット部は、伸縮性を有したメッシュ素材で構成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、他の人の手助けなしに、正確に腰背部の中心にセンサ機器を固定し、正確な測定が可能なセンサ機器装着ベルトを実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係るセンサ機器装着ベルトの全体構成図である。
【図2】センサ機器装着ベルトの断面図である。
【図3】パッド周辺の拡大図である。
【図4】センサ機器装着ベルトの装着手順を示すフロー図である。
【図5】アジャスタ周辺の拡大図である。
【図6】従来技術を示す図である。
【図7】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5を用いて説明する。図1は、本発明のセンサ機器装着ベルト100の全体構成図である。また、図2は、センサ機器装着ベルト100の長手方向における断面図である。なお、図2においては、図1に示すセンサ機器の中心線Aより左側を省略し、右側のみを示している。本発明のセンサ機器装着ベルト100は、パッド1、センサ機器2、ポケット部3、第一弾性部材4、第二弾性部材5、第一調整ベルト6、第二調整ベルト7、平カン8、ベルトエンド9、第一アジャスタ10、第二アジャスタ11、バックルオス12、バックルメス13より構成される。
【0017】
図3は、パッド1周辺の拡大図である。パッド1は、主にPET素材等より構成され、センサ機器2を保護するとともに、安定して保持するものである。センサ機器2は、例えば三軸加速度センサを用いることが出来る。センサ機器で計測されたデータは、センサ機器装着ベルト100に内蔵されたメモリに記録したり、あるいは、センサ機器装着ベルト100に内装された通信機能により、外部の装置にデータ送信したりするなどして管理される。
【0018】
ポケット部3は、図1において網掛で示した部分であり、伸縮自在なメッシュ素材で形成され、センサ機器2はここに収納される。ポケット部3には、内部には断面L字、またはコの字状のガイド31がセンサ機器2を挟んだ状態で一対設置されている。本実施形態では、ガイド31はガイド保持部材32にセットした後、ガイド31のパッド1に接する面の上から重ねてガイド保持部材端部をパッド1に縫い付けて、ガイド31をパッド1に固定している。このようにガイド31でセンサ機器2を固定することにより、センサ機器2の傾きを防止することができる。ポケット部3の素材を伸縮自在のメッシュ状にすることでセンサ機器2をパッド1へ密着することができ、さらにポケット部3にセンサ機器2を収納した状態でセンサ機器2の動作状態を示すLEDランプ21等の点灯状態が判別可能である。
【0019】
第一弾性部材4は、主にテープ状のゴム素材等より構成され、ポケット部3を挟んだ状態でパッド1内に配置され、腰部への密着性を向上させる。第二弾性部材5は、第一弾性部材4と同様の素材より構成され、後述するアジャスタ10と、バックルオス11、バックルメス12の間を連結し、腰部への密着性を向上させる。第一調整ベルト6、第二調整ベルト7は、主にナイロン系素材等より構成され、第一弾性部材4に平カン8を介して連結され、主にこの部分が腰囲に巻回される。詳細は後述するが、第一調整ベルト6、第二調整ベルト7には、目盛が印刷されており、この目盛を設定することでセンサ位置調整及びベルト長さの調整が行われる。ベルトエンド9は、ベルト端末処理のため用いられるものであり、本実施形態では、樹脂素材で被覆している。もちろんベルト端を折返し、重ね縫いすることでも構わない。本処理により、ベルト端のほつれ防止やアジャスタがベルトから容易に抜け落ちることを防止するという働きがある。
【0020】
第一アジャスタ10、第二アジャスタ11は、主にアセタール樹脂等より構成され、ここでベルト長さを設定する。第一アジャスタ10は、第二弾性部材5と第一調整ベルト6を連結し、第二アジャスタ11は、第二弾性部材5と第二調整ベルト7を連結する。連結部材としてのバックルオス12、バックルメス13は、第二弾性部材5の端部に配され、これらを連結することにより、センサ機器装着ベルト100が被験者に装着される。本実施形態では、連結部材をバックルを例に挙げて説明しているが、これ以外に、マジックテープ(登録商標)などサイズが変わらないように固定できるものであれば用いることが出来る。
【0021】
次に、センサ機器装着ベルト100の装着方法について説明する。図4は、センサ機器装着ベルト100の装着手順を示すフロー図である。なお、本フロー図におけるSは各ステップを示す。まず、被験者において、センサ機器装着ベルト100を装着したい部位の周囲を測定し、測定値nを得る(ステップS1)。ここでは、仮に腰囲の測定を行っているが、実際には、センサ機器装着ベルト100を装着する部位であれば、腹囲、胸囲などでもかまわない。次に、第一アジャスタ10、第二アジャスタ11の標線をn+αに設定する(ステップS2)。ここで測定値nにαを加える理由は、ベルト装着時に装着しやすくし、また、正確な長さ調整及び位置合わせを行いやすくするためであるが、必ずしも必要とされるわけではない。本実施形態では、仮にnを60(cm)とし、αを3(cm)とする。すなわち第二アジャスタ11の標線を63(cm)とする。
【0022】
図5は、第二アジャスタ11周辺の拡大図である。ここでは、わかりやすいように図1に示すセンサ機器の中心線Aより右半分の第二アジャスタ11近傍を例示している。図1における左半分についても同様である。第二調整ベルト7の裏面には目盛が印刷されており、この目盛によりベルトの長さが決定される。ここで、裏面とは、センサ機器装着ベルト100を装着した状態で、被験者の正面から見て、第二アジャスタ11の標線11aが見えている面を表面とし、他面を裏面とする。
【0023】
第二調整ベルト7の裏面へ印刷された目盛は、第二アジャスタ11の標線11aの位置に表示された数値が、図1におけるパッド1の中心線Aからバックルメス13のまでの距離Wの2倍と一致するように印刷され、目盛間隔は実際の寸法の1/2で印刷されている。例えば、図1におけるWが実際には40cmであった場合、標線11aに表示された数値は80cmとなる。第一調整ベルト6においても、同様の目盛が印刷されている。バックルまでの距離は、より正確にはバックルの形状により異なるが、バックルが連結された状態において、バックルの中心を求め、そのバックルの中心とパッド1の中心との距離となる。つまり第一アジャスタ10、第二アジャスタ11の数値を一致させてそれぞれの標線に設定した場合、標線に表示された数値とセンサ機器装着ベルト100の長さが一致する。本実施形態の場合は、センサ機器装着ベルト100の長さは63(cm)となる。さらにパッド1の中心からバックルオス12までの距離とパッド1の中心からバックルメス13までの距離が同一となる。
【0024】
次に、センサ機器装着ベルト100を被験者の腰囲に巻き、バックルオス12及びバックルメス13を連結させて装着する(ステップS3)。この時点ではセンサ機器装着ベルト100の全長は被験者の腰囲の測定値n+αの長さがあるのでセンサ機器装着ベルト100は被験者の腰囲に密着せず、手で回せる状態である。
【0025】
次に、連結されたバックルを被験者の体の中心に合わせる(ステップS4)。上述のように、第一アジャスタ10、第二アジャスタ11の標線は、腰囲よりαの長さ分だけ長い数値が設定されているので、実際の腰囲にα分だけ余裕があり、バックルを連結した状態でも体の中心に合わせることが容易である。腹部側でバックルオス12とバックルメス13を連結した状態で体の中心にバックルの中心を一致させることで、腰背部側のパッドの中心を自動的に体の中心付近に合致させることが可能になる。
【0026】
最後に、第一アジャスタ10、第二アジャスタ11において、標線の設定数値を最初に設定したαの長さ分、つまり、今回は3(cm)分だけ減らして、測定値nの60(cm)に設定し、センサ機器装着ベルト100の長さを調整する(ステップS5)。ここでの調整は、αの長さ分だけ減らすことが一般的であるが、これに限らず、2つのアジャスタの標線を同じ数値に合わせ、かつ体の中心に連結されたバックルの中心を合わせることで、適切に調整でき、鏡などで位置を確認する必要なく、腰背部側のパッドの中心も自動的に体の中心に合致させることが可能になる。
【0027】
あるいは、第一アジャスタ10、第二アジャスタ11に設けられた標線に加えて、それぞれにセンサ機器の位置をずらすための標線を別に設けてもよい。このようにすることで、センサ機器を装着した後で、所望の長さだけ位置を簡単にずらすことが出来る。
【0028】
以上のことから、他の人の手助けなしに、また、鏡などで位置を確認する必要なく、正しく腰背部の中心にセンサ機器を固定し、正確な測定を実現することの出来るセンサ機器装着ベルトを実現することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係るセンサ機器装着ベルトは、医療、介護、健康管理等の分野において、生体リズム等をリアルタイムで常時計測する器具に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 パッド
2 センサ機器
3 ポケット部
4 第一弾性部材
5 第二弾性部材
6 第一調整ベルト
7 第二調整ベルト
8 平カン
9 ベルトエンド
10 第一アジャスタ
11 第二アジャスタ
12 バックルオス
13 バックルメス
21 LEDランプ
31 ガイド
32 ガイド保持部材
100 センサ機器装着ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の体動を検出するセンサ機器を生体の所定部位に巻き付けて装着するためのセンサ機器装着ベルトであって、
前記センサ機器の両側に設けられ、目盛が付された第一調整ベルト及び第二調整ベルトと、
前記第一調整ベルト及び第二調整ベルトに設けられ、前記第一調整ベルト及び第二調整ベルトの長さを調整する、移動可能な第一アジャスタ及び第二アジャスタと、
前記センサ機器装着ベルトを装着するための連結部材より構成され、
前記目盛は、長さを2分の1に縮尺したものであり、
前記第一アジャスタ及び第二アジャスタには前記目盛に合わせるための標線が設けられていることを特徴とするセンサ機器装着ベルト。
【請求項2】
前記第一アジャスタ及び第二アジャスタの前記標線の示す目盛の数値が一致した場合、
前記数値は前記センサ機器装着ベルトの全長を示すことを特徴とする請求項1記載のセンサ機器装着ベルト。
【請求項3】
前記第一アジャスタ及び第二アジャスタの前記標線の示す目盛の数値を一致させることにより、前記センサ機器を体の中心部に設定することを特徴とする請求項2記載のセンサ機器装着ベルト。
【請求項4】
前記第一アジャスタ及び第二アジャスタの標線において示される数値が一致した場合、
前記センサ機器中心から前記連結部材が連結された状態における連結部材中心までの距離が前記センサ機器装着ベルトの左右において略等しいことを特徴とする請求項3記載のセンサ機器装着ベルト。
【請求項5】
前記センサ機器装着ベルトは、
前記センサ機器を固定するためのポケット部と、
前記ポケット部が固定されるパッドを備え、
前記パッドには、前記センサ機器の傾きを防止するガイドを設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のセンサ機器装着ベルト。
【請求項6】
前記ポケット部は、伸縮性を有したメッシュ素材で構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のセンサ機器装着ベルト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−34511(P2013−34511A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170585(P2011−170585)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】