説明

センサ用複合材料および変形センサ

【課題】 耐久性に優れ、応答性の良好なセンサ用複合材料、および変形センサを提供する。
【解決手段】 変形センサ2を、センサ用複合材料からなるセンサ本体21と、センサ本体21に接続され、電気抵抗を出力可能な電極22A、22Bと、を備えて構成する。センサ本体21は、エラストマーと該エラストマー中に配合されている導電性フィラーとを有する導電性エラストマー層210と、導電性エラストマー層210に積層して配置され面展開方向に伸縮可能な伸縮性シート211と、を備える。導電性エラストマー層210と伸縮性シート211とは一体的に弾性変形可能である。センサ本体21の電気抵抗は、弾性変形に伴い変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の変形等を検出可能なセンサに用いられるセンサ用複合材料、およびそれを用いた変形センサに関する。
【背景技術】
【0002】
部材の変形や部材に作用する荷重の大きさ、分布を検出するセンサ材料として、導電性エラストマーが用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。導電性エラストマーは、母材となるエラストマー中に導電性フィラーを分散させて構成されている。導電性エラストマーが変形すると、導電性フィラー同士の接触状態が変化することにより、電気抵抗が変化する。
【特許文献1】特開平4−349301号公報
【特許文献2】特開2003−247802号公報
【特許文献3】特開2008−69313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
センサ材料には、曲げや引張り等の変形に対する正確な応答性が要求される。また、変形による歪みが繰り返し加えられても、初期の応答性ができるだけ維持されることが望ましい。一方、導電性エラストマーは、エラストマーを母材とする。このため、クリープ、ヒステリシスといったエラストマー特有の性質を有する。例えば、ヒステリシスがあると、荷重印加時と除去時とにおいて、電気抵抗の変化挙動が異なる。このため、変形を繰り返した場合、電気抵抗の初期値にばらつきが生じてしまい、正確な応答が得られないおそれがある。
【0004】
例えば、本発明者が開発したエラストマー複合材料は、エラストマーに球状の導電性フィラーが高充填されてなる(上記特許文献3参照)。このエラストマー複合材料では、変形していない自然状態で、導電性フィラー同士の接触により、三次元的な導電パスが形成されている。このため、自然状態で高い導電性を有する。一方、エラストマー複合材料が変形すると、導電性フィラー同士が反発し合い、三次元的な導電パスが崩壊する。このため、変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する。
【0005】
球状の導電性フィラーが高充填されている上記エラストマー複合材料の場合、変形により導電性フィラーが移動して、導電性フィラー間に隙間が生じる場合がある。隙間部分のヤング率は、導電性フィラーが少なくなった分だけ小さくなる。すると、隙間部分に応力が集中しやすくなる。その結果、変形を繰り返すことにより、母材が破壊されるおそれがある。また、エラストマー複合材料が伸長された場合、ヤング率の小さい部分が選択的に伸びやすい。しかし、導電性フィラー同士が一旦離れると、変形量が大きくなっても、電気抵抗は変わりにくい。このため、変形を正確に検出することができない。また、ヤング率の小さい部分は、応力が除去されても復元しにくい。このため、ヒステリシスが大きくなり、応答性が低下する。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、耐久性に優れ、応答性の良好なセンサ用複合材料を提供することを課題とする。また、このセンサ用複合材料を用いることにより、耐久性に優れ、応答性の良好な変形センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のセンサ用複合材料は、エラストマーと該エラストマー中に配合されている導電性フィラーとを有する導電性エラストマー層と、該導電性エラストマー層に積層して配置され面展開方向に伸縮可能な伸縮性シートと、を備え、該導電性エラストマー層と該伸縮性シートとは一体的に弾性変形可能であって、弾性変形に伴い電気抵抗が変化することを特徴とする(請求項1に対応)。
【0008】
本発明のセンサ用複合材料によると、面展開方向に伸縮可能な伸縮性シートが、導電性エラストマー層に積層されて一体化している。したがって、荷重が加わると、導電性エラストマー層は、伸縮性シートと共に一体的に弾性変形する。つまり、導電性エラストマー層の弾性変形は、伸縮性シートに規制される。これにより、導電性エラストマー層の全体に応力が加わるようになる。したがって、導電性フィラーが高充填されている場合でも、ヤング率の小さい部分への応力の集中を抑制することができる。その結果、部分的な母材の破壊が抑制され、耐久性が向上する。また、部分的な変形が抑制されるため、弾性変形量が大きくなっても、電気抵抗の変化により変形を検出することが可能となる。さらに、荷重が除去された場合には、伸縮性シートの復元力により、導電性エラストマー層も強制的に復元される。このため、ヒステリシスが改善される。これにより、変形を繰り返しても、初期の応答性を維持しやすい。
【0009】
(2)本発明の変形センサは、上記本発明のセンサ用複合材料からなるセンサ本体と、該センサ本体に接続され電気抵抗を出力可能な電極と、を備えてなることを特徴とする(請求項8に対応)。
【0010】
本発明の変形センサは、電極から出力されるセンサ本体の電気抵抗に基づいて、対象となる部材、部位に作用する荷重、および部材、部位の様々な変形を検出することができる。本発明の変形センサでは、センサ本体の導電性エラストマー層を構成するエラストマーの種類、導電性フィラーの材質、形状、大きさ、充填率等を調整することにより、荷重が印加されていない状態(以下、適宜「無荷重状態」と称す)、言い換えると、変形していない自然状態における電気抵抗値を所定の範囲に設定することができる。したがって、本発明の変形センサの用途における弾性変形の態様等に応じて、電気抵抗の増減を適宜設定すればよい。本発明の変形センサにおいて、センサ本体は、上記本発明のセンサ用複合材料からなる。したがって、本発明の変形センサは、耐久性に優れると共に、繰り返し使用しても外部からの刺激に対する応答性が低下しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のセンサ用複合材料および変形センサについて、それぞれ詳細に説明する。
【0012】
<センサ用複合材料>
本発明のセンサ用複合材料は、導電性エラストマー層と伸縮性シートとを備える。まず、導電性エラストマー層について説明する。導電性エラストマー層は、エラストマーと導電性フィラーとを有する。エラストマーは、ゴムおよび熱可塑性エラストマーから適宜選択すればよい。例えば、導電性フィラーを高充填率で配合し、弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加するという特性を発現させるためには、導電性フィラーとの関係を考慮して選択することが望ましい。
【0013】
具体的には、ゴムとして、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム[エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)等]、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Cl−IIR、Br−IIR等)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(AR)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、合成ラテックス等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとして、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系等の各種熱可塑性エラストマー、およびこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、一種を単独で、あるいは二種以上を併せて用いることができる。例えば、導電性フィラーとして炭素材料が使用されている場合には、該導電性フィラーと相溶性が良好なEPDM、NBR、シリコーンゴムが好適である。
【0014】
導電性フィラーは、導電性を有する粒子であれば、特に限定されるものではない。例えば、炭素材料、金属等の微粒子が挙げられる。これらのうち、一種を単独で、あるいは二種以上を併せて用いることができる。導電性フィラーの形状は、球状、柱状、薄板状、箔状、繊維状、針状等、種々のものを採用することができる。なかでも、弾性変形した際の、導電性フィラーとエラストマー(母材)との界面における応力集中を低減させるという観点から、導電性フィラーとして、アスペクト比(最短径に対する最長径の比)が1以上2以下のものを使用するとよい。例えば、球状の粒子を採用することが望ましい。「球状」には、真球、略真球状の他、楕円球状、長円球状(一対の対向する半球を円柱で連結した形状)、部分球状、部分毎に半径の異なる球状、水滴形状等が含まれる。また、後述するように、導電性フィラーの充填状態を、より最密充填状態に近づけたい場合には、真球あるいは極めて真球に近い形状(略真球状)の粒子を採用するとよい。
【0015】
導電性フィラーの充填率は、導電性フィラーの種類(材質、形状、大きさ等)や、センサの用途等を考慮して、適宜決定すればよい。例えば、球状の導電性フィラーをエラストマー中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合し、弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加するよう、導電性エラストマー層を構成することができる。ここで、「略単粒子状態」とは、導電性フィラーの全重量を100重量%とした場合の50重量%以上が、凝集した二次粒子としてではなく、単独の一次粒子の状態で存在していることをいう。また、「高充填率」とは、導電性フィラーが最密充填に近い状態で配合されていることをいう。
【0016】
この場合、導電性フィラーの充填率は、導電性エラストマー層の全体の体積を100vol%とした場合の30vol%以上であることが望ましい。30vol%未満の場合には、導電性フィラーが最密充填に近い状態で配合されにくく、所望の導電性が発現しない。また、弾性変形に対する電気抵抗の変化が緩慢になり、電気抵抗の増加挙動を制御することが難しくなる。35vol%以上であるとより好適である。反対に、導電性フィラーの充填率は、導電性エラストマー層の全体の体積を100vol%とした場合の65vol%以下であることが望ましい。65vol%を超えると、エラストマーへの混合が困難となり、成形加工性が低下する。また、導電性エラストマー層が弾性変形しにくくなる。55vol%以下であるとより好適である。
【0017】
また、導電性フィラーは、できるだけ凝集せず、一次粒子の状態で存在することが望ましい。よって、導電性フィラーを選択する際には、平均粒子径やエラストマーとの相溶性等を考慮するとよい。例えば、弾性変形した際の、導電性フィラーとエラストマーとの界面における応力集中を低減させるという観点から、導電性フィラーの粒子径は小さい方が望ましい。具体的には、一次粒子の状態で存在する導電性フィラーの平均粒子径は、0.05μm以上200μm以下であることが望ましい。平均粒子径が0.05μm未満の場合には、凝集して二次粒子を形成し易い。平均粒子径が0.5μm以上、さらには1μm以上であると好適である。反対に、平均粒子径が200μmを超えると、弾性変形による導電性フィラーの並進運動(平行運動)が、粒子径に比べて相対的に小さくなり、弾性変形に対する電気抵抗の変化が緩慢となる。平均粒子径が60μm以下、さらには30μm以下であると好適である。本明細書では、平均粒子径として、累積粒度曲線において積算重量が50%となる粒子径(D50)を採用する。
【0018】
また、導電性フィラーの粒度分布は狭い方が望ましい。例えば、D90/D10の値が1以上30以下であることが望ましい。D90/D10の値が10以下であるとより好適である。ここで、D90は、累積粒度曲線において積算重量が90%となる粒子径であり、D10は、同積算重量が10%となる粒子径である。D90/D10の値が30を超えると、粒度分布がブロードになるため、弾性変形量に対する電気抵抗の増加挙動が不安定になりやすい。
【0019】
球状の導電性フィラーとしては、例えば、カーボンビーズが好適である。具体的には、大阪ガスケミカル社製のメソカーボンマイクロビーズ[MCMB6−28(平均粒子径約6μm)、MCMB10−28(平均粒子径約10μm)、MCMB25−28(平均粒子径約25μm)]、日本カーボン社製のカーボンマイクロビーズ:ニカビーズ(登録商標)ICB、ニカビーズPC、ニカビーズMC、ニカビーズMSB[ICB0320(平均粒子径約3μm)、ICB0520(平均粒子径約5μm)、ICB1020(平均粒子径約10μm)、PC0720(平均粒子径約7μm)、MC0520(平均粒子径約5μm)]、日清紡社製のカーボンビーズ(平均粒子径約10μm)等が挙げられる。
【0020】
導電性エラストマー層は、エラストマー成分、導電性フィラーに加え、各種添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、硬化剤、加硫促進剤、加工助剤、加硫助剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、着色剤、カップリング剤等が挙げられる。
【0021】
次に、伸縮性シートについて説明する。伸縮性シートは、上記導電性エラストマー層に積層して配置される。伸縮性シートは、面展開方向に伸縮可能なものであればよい。つまり、伸縮性シートは、面展開方向において、少なくとも一方向に伸縮可能であればよい。縦、横両方向に二次元的に伸縮可能なものがより望ましい。また、伸縮性シートは、絶縁性であることが望ましい。伸縮性シートとしては、例えば、合成繊維あるいは天然繊維からなる織布、編布、不繊布等を用いることができる。編布(ニット)は、構造上伸縮性を有しているので好適である。合成繊維としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル等の繊維が好適である。また、天然繊維としては、綿、麻、絹等が好適である。特に、ポリウレタン系の繊維とそれ以外の繊維とを併用するとよい。二次元的に伸縮可能な布としては、東レ社製の商品「トリンティ(登録商標)」、「プログレスキン(登録商標)」等が挙げられる。
【0022】
伸縮性シートの伸び率は、特に限定されるものではない。例えば、50%以上であることが望ましい。本明細書において、伸び率は、以下の測定方法により求めた値とする。まず、縦5cm×横30cmの試験片を作成する。この試験片を、同じ材料の縦5cm×横1mの試料の重さと同等の荷重を加えた状態で、つかみ間隔を200mm(L0)として引張り試験機にセットする。引張り速度200mm/分で荷重17.65N(1.8kgf)まで伸長し、その時のつかみ間隔(L1)を測定する。そして、次式(1)により伸び率を算出する。
伸び率(%)={(L1−L0)/L0}×100・・・(1)
[L0:初期つかみ間隔(mm)、L1:荷重17.65Nまで伸長した時のつかみ間隔(mm)]
伸縮性シートは、導電性エラストマー層と一体的に弾性変形し、導電性エラストマー層の伸縮を規制する役割を果たす。したがって、伸縮性シートの伸び率は、前記導電性エラストマー層中の前記エラストマーの伸び率よりも小さいことが望ましい。また、伸縮性シートの厚さは、導電性エラストマー層の厚さ等に応じて適宜決定すればよい。
【0023】
本発明のセンサ用複合材料は、例えば、導電性エラストマー層と伸縮性シートとを、接着剤等により貼り合わせて製造することができる。また、エラストマーの架橋前ポリマーと導電性フィラーとを有するエラストマー組成物と、伸縮性シートと、を積層させて、一体成形することにより製造してもよい。一体成形は、例えば、プレス成形、カレンダーロール機を用いたロール成形等により行えばよい。例えば、伸縮性シートが布からなる場合、一体成形すると、エラストマー組成物の一部が伸縮性シートに含浸する。これにより、製造された本発明のセンサ用複合材料において、導電性エラストマー層が伸縮性シートに含浸した状態となる。こうすることで、導電性エラストマー層と伸縮性シートとの接合性が向上し、両者を確実に一体化させることができる。また、使用するエラストマーの種類により、カップリング剤等を適宜併用することにより、導電性エラストマー層と伸縮性シートとの接合性を向上させることができる。
【0024】
本発明のセンサ用複合材料によると、導電性エラストマー層と伸縮性シートとは一体的に弾性変形可能であって、弾性変形に伴い電気抵抗が変化する。電気抵抗は、導電性エラストマー層中の導電性フィラーの種類、充填率等によって変化する。したがって、センサの用途における弾性変形の態様等に応じて、導電性フィラーの種類、充填率等を調整して、電気抵抗の増減を設定すればよい。なお、本発明のセンサ用複合材料の「弾性変形」には、圧縮、伸長、曲げ等による変形がすべて含まれる。
【0025】
<変形センサ>
上記本発明のセンサ用複合材料を用いて、変形センサを構成することができる。以下、本発明のセンサ用複合材料を用いた変形センサ、すなわち本発明の変形センサの一実施形態について説明する。
【0026】
まず、本実施形態の変形センサの構成について説明する。図1に、変形センサの正面図を示す。図2に、図1のII−II断面図を示す。なお、図2では、説明の便宜上、導線を省略して示す。図1、図2に示すように、変形センサ2は、フィルム部20とセンサ本体21と電極22A、22Bとを備えている。
【0027】
フィルム部20は、基材フィルム200とカバーフィルム201とを備えている。基材フィルム200は、ポリイミド製であって、左右方向に延びる帯状を呈している。基材フィルム200は、基材900の表面に固定されている。基材フィルム200の右端には、コネクタ23が取り付けられている。カバーフィルム201は、アクリルゴム製であって、左右方向に延びる帯状を呈している。カバーフィルム201は、基材フィルム200およびセンサ本体21の表面を覆っている。
【0028】
センサ本体21は、左右方向に延びる長尺板状を呈している。センサ本体21は、表面をカバーフィルム201により覆われた状態で、基材フィルム200の表面に固定されている。センサ本体21は、導電性エラストマー層210と伸縮性シート211とを備えるセンサ用複合材料からなる。導電性エラストマー層210は、シリコーンゴムにカーボンビーズ(導電性フィラー)が略単粒子状態で配合されてなる。カーボンビーズの充填率は、導電性エラストマー層210の体積を100vol%とした場合の約55vol%である。伸縮性シート211は、導電性エラストマー層210の表面(後面)に配置されている。伸縮性シート211は、左右および上下の二方向に伸縮可能な布からなる。
【0029】
センサ本体21は、架橋前のシリコーンゴムおよびカーボンビーズを有するエラストマー組成物と、伸縮性シート211と、を積層し、プレス成形により一体成形して製造されている。このため、導電性エラストマー層210の一部は、伸縮性シート211に含浸している(図略)。
【0030】
電極22Aは、センサ本体21の左端に取り付けられている。電極22Bは、センサ本体21の右端に取り付けられている。詳しく説明すると、電極22A、22Bは、共に、上下に延びる短冊状を呈しており、センサ本体21と基材フィルム200との間、およびカバーフィルム201と基材フィルム200との間に、介装されている。電極22Aとコネクタ23とは導線24Aにより、電極22Bとコネクタ23とは導線24Bにより、各々、結線されている。
【0031】
次に、変形センサ2の動きについて説明する。荷重が基材900側から変形センサ2の左右方向中央付近に加わると、基材900は、後方に撓むように変形する。基材900の変形は、基材フィルム200を介して、センサ本体21に伝達される。このため、センサ本体21も、前方に開口するC字状に、弾性的に湾曲する。この際、導電性エラストマー層210および伸縮性シート211は、一体的に湾曲する。導電性エラストマー層210において、導電性フィラーは、最密充填に近い状態で充填されている。このため、無荷重状態では、多数の導電パスが形成されている。したがって、検出される電極22A、22B間の電気抵抗値は、比較的小さい。これに対して、荷重が加わった後においては、変形により導電性フィラー同士が反発し合い、導電パスが崩壊する。したがって、検出される電極22A、22B間の電気抵抗値は、無荷重状態に対して、大きくなる。
【0032】
次に、本実施形態の変形センサ2の作用効果について説明する。本実施形態の変形センサ2では、センサ本体21が弾性変形すると、電気抵抗が増加する。このため、電極22A、22Bから出力されるセンサ本体21の電気抵抗の増加に基づいて、基材900に作用する荷重、および曲げ、引張り等の変形を容易に検出することができる。また、本実施形態の変形センサ2は、変形していない自然状態で、導電状態にある。よって、変形センサ2が組み込まれている回路に電流を流すことにより、変形センサ2が作動可能か否かの自己診断を容易に行うことができる。
【0033】
また、センサ本体21は、導電性エラストマー層210と伸縮性シート211とを備えるセンサ用複合材料からなる。荷重が加わると、導電性エラストマー層210は、伸縮性シート211と共に一体的に弾性変形する。これにより、導電性エラストマー層210において、部分的な応力の集中が抑制される。したがって、センサ本体21が弾性変形を繰り返しても、エラストマーは破壊されにくい。つまり、センサ本体21は耐久性に優れる。また、導電性エラストマー層210において、部分的な変形が抑制される。このため、弾性変形量が大きくなっても、電気抵抗が増加し、変形を検出することができる。さらに、荷重が除去された場合には、伸縮性シート211の復元力により、導電性エラストマー層210も強制的に復元される。このため、ヒステリシスが改善される。これにより、変形を繰り返しても、初期の応答性を維持しやすい。
【0034】
なお、本発明の変形センサの実施形態は上記形態に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。例えば、センサ本体21を、基材フィルム200を介することなく、直接、基材900の表面に固定してもよい。また、センサ本体21の表面には、カバーフィルム201を配置しなくてもよい。また、基材900側からではなく、センサ本体21の表面(後面)から、直接、荷重が入力されてもよい。また、センサ本体21は、上述した本発明のセンサ用複合材料の好適な態様を適宜採用して構成すればよい。
【実施例】
【0035】
<センサ用複合材料および変形センサの製造>
まず、シリコーンゴム(GE東芝シリコーン社製「XE21−B3761」)100重量部と、カーボンビーズ(日本カーボン社製「ニカビーズMC0520」、平均粒子径約5μm)115重量部と、硬化剤の過酸化物(GE東芝シリコーン社製「TC−8」)2.5重量部と、をロール練り機にて混合、分散させて、エラストマー組成物を調製した。調製したエラストマー組成物を、縦100mm、横10mm、厚さ0.5mmの長尺板状に成形して成形体とした。次に、伸縮性シート(東レ社製「トリンティ」;縦100mm、横10mm、厚さ0.6mm)を準備した。そして、金型に、エラストマー組成物の成形体と、伸縮性シートと、を積層配置すると共に、長手方向両端に一対の電極を配置して、170℃で20分間プレス成形した。このようにして、一対の電極が取り付けられたセンサ用複合材料(センサ本体)、すなわち、変形センサを得た。ここで、センサ本体は、導電性エラストマー層と伸縮性シートとを備えている。導電性エラストマー層のカーボンビーズの充填率は、導電性エラストマー層の体積を100vol%とした場合の約55vol%であった。得られた変形センサを、実施例の変形センサとした。
【0036】
一方、比較のため、伸縮性シートを積層させずにセンサ用複合材料(センサ本体)を成形し、変形センサを製造した。すなわち、センサ本体は、導電性エラストマー層(縦100mm、横10mm、厚さ0.5mm;カーボンビーズの充填率は約55vol%)のみからなる。製造した変形センサを、比較例の変形センサとした。
【0037】
<変形センサの評価>
(1)耐久性評価
まず、製造した実施例および比較例の各変形センサについて加振試験を行い、耐久性を評価した。図3に、試験装置の概略図を示す。図3に示すように、試験装置4は、上端ホルダ40と下端ホルダ41と加振ジグ42とレーザ変位計43とを備えている。上端ホルダ40は、不動であり、変形センサ3の長手方向一端(上端)を把持している。下端ホルダ41は、上端ホルダ40に対して、下方に離間して配置されている。下端ホルダ41は、変形センサ3の長手方向他端(下端)を把持している。また、下端ホルダ41は、加振ジグ42に固定されている。加振ジグ42は、上下方向に繰り返し移動可能である。下端ホルダ41の変位量は、レーザ変位計43により測定される。変形センサ3の電気抵抗値は、電極および導線(図略)から外部回路(図略)に出力される。
【0038】
加振ジグ42を上下方向に動かすと、上端ホルダ40〜下端ホルダ41間の間隔が収縮、拡大する。これにより、変形センサ3は曲げられ、あるいは引張られて変形する。本試験では、変形センサ3の長さが自然状態から±2%変化するよう、5Hzの周波数で加振ジグ42を上下させ、変形センサ3の電気抵抗の経時変化を測定した。図4に、実施例の変形センサにおける電気抵抗変化量(ΔR)の経時変化を示す。同様に、図5に、比較例の変形センサにおける電気抵抗変化量(ΔR)の経時変化を示す。図4および図5では、試験開始直後(初期)、加振1000回目以降、および20000回以降の経時変化を各々部分的に抽出し、それらを重ねて示す。
【0039】
図5に示すように、比較例の変形センサによると、変形を20000回繰り返した後では、初期と比較して電気抵抗変化量(ΔR)が低下していた(点線参照)。これに対して、実施例の変形センサによると、図4に示すように、変形を繰り返しても、電気抵抗変化量(ΔR)の経時変化にほとんど差は見られなかった。つまり、1000回、さらには20000回変形を繰り返した後も、初期の電気抵抗変化量(ΔR)が維持されていた。以上より、伸縮性シートを備えるセンサ本体を使用した本発明の変形センサによると、弾性変形を繰り返しても、初期の電気抵抗変化の挙動を維持できることが確認された。したがって、本発明の変形センサは、耐久性に優れる。
【0040】
(2)応答性評価
次に、実施例および比較例の各変形センサについて引張り試験を行い、応答性を評価した。引張り試験には、前出図3に示した試験装置4を使用した。試験装置4において、加振ジグ42を5秒ごとに10mm(変形センサ3の自然長の10%)ずつ下方に移動させて、変形センサ3を伸長した。図6に、実施例の変形センサにおける電気抵抗の経時変化を示す。同様に、図7に、比較例の変形センサにおける電気抵抗の経時変化を示す。
【0041】
図7に示すように、比較例の変形センサによると、弾性変形量がある程度大きくなると、電気抵抗がほとんど変化しなくなった。これに対して、実施例の変形センサによると、図6に示すように、弾性変形量が増加するに従って、電気抵抗は規則的に増加した。つまり、弾性変形量が大きくなっても、初期の応答性が維持されていた。以上より、伸縮性シートを備えるセンサ本体を使用した本発明の変形センサによると、弾性変形量が大きくなっても、応答可能であることが確認された。つまり、本発明の変形センサは、応答性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態の変形センサの正面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】実施例における試験装置の概略図である。
【図4】加振試験における実施例の変形センサの電気抵抗変化量(ΔR)の経時変化を示すグラフである。
【図5】加振試験における比較例の変形センサの電気抵抗変化量(ΔR)の経時変化を示すグラフである。
【図6】引張り試験における実施例の変形センサの電気抵抗の経時変化を示すグラフである。
【図7】引張り試験における比較例の変形センサの電気抵抗の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
2:変形センサ
20:フィルム部 200:基材フィルム 201:カバーフィルム
21:センサ本体 210:導電性エラストマー層 211:伸縮性シート
22A、22B:電極 23:コネクタ 24A、24B:導線
900:基材
3:変形センサ
4:試験装置 40:上端ホルダ 41:下端ホルダ 42:加振ジグ
43:レーザ変位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーと該エラストマー中に配合されている導電性フィラーとを有する導電性エラストマー層と、
該導電性エラストマー層に積層して配置され面展開方向に伸縮可能な伸縮性シートと、
を備え、
該導電性エラストマー層と該伸縮性シートとは一体的に弾性変形可能であって、弾性変形に伴い電気抵抗が変化することを特徴とするセンサ用複合材料。
【請求項2】
前記エラストマーの架橋前ポリマーと前記導電性フィラーとを有するエラストマー組成物と、前記伸縮性シートと、を積層させて一体成形されてなる請求項1に記載のセンサ用複合材料。
【請求項3】
前記伸縮性シートは布からなる請求項1または請求項2に記載のセンサ用複合材料。
【請求項4】
前記導電性フィラーは球状を呈し、前記エラストマー中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されており、
弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のセンサ用複合材料。
【請求項5】
前記導電性フィラーの充填率は、前記導電性エラストマー層の体積を100vol%とした場合の30vol%以上65vol%以下である請求項4に記載のセンサ用複合材料。
【請求項6】
前記導電性フィラーの平均粒子径は、0.05μm以上200μm以下である請求項4または請求項5に記載のセンサ用複合材料。
【請求項7】
前記伸縮性シートの伸び率は、前記導電性エラストマー層中の前記エラストマーの伸び率よりも小さい請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のセンサ用複合材料。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のセンサ用複合材料からなるセンサ本体と、
該センサ本体に接続され電気抵抗を出力可能な電極と、
を備えてなる変形センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−276183(P2009−276183A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127167(P2008−127167)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】