説明

センサ

【課題】細胞分類方法及び装置を提供する。
【解決手段】精子細胞を分類・配向する装置は、導入口を有するフローチャンバーを形成する対向し合う一対の壁面と、下流側導出口と、中間検出領域とを備える。導入口は、導入流体による第1、第2の隔離した流れと、分類すべき細胞を含有する試料流体による第3の流れを受け取る。第1、第2の流れは、第3の流れが収縮して比較的狭い試料流れを形成しそれにより細胞が壁面に対して平行に配向されるような、第3の流れに対して相対的な流量をそれぞれ有している。検出器は所望の細胞を検出し、検出器の下流側の分類器は流れから所望の細胞を分類する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を分類するための、多角度判別可能な検出・撮像システムを用いた流量分類器に関する。本発明の別の側面は、光を検出して物体を撮像する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の撮像システムは、方位角的に対称的であることが多く、撮像システムの開口数(NA)により規定される特定の角度範囲内において光を受光する。光学系又は開口が過度に小さいことによる収差又は口径食がない状態では、NA範囲内の物体面から出射する光の全てが撮像面へと均一に、理想的に転送される。このような設計を行う理由は、適度に集光効率(即ち、NA)が高いことが望ましく、かつ、強度が角度により異なることには重要な情報が含まれないことが多いためである。
【0003】
典型的な撮像システムとは、単一の円形レンズ又は一対の円形レンズである。撮像が不鮮明であるシステムの場合等、高集光率が望まれる場合には、物体の大きさに比較して大きく、自身の大きさに比較して近接した光学素子を用いて高NAとなるシステムを設計する。この方法によると、光の多くの部分がレンズに受光される。高NAであることは、分解能を最大化するためにも、また焦点深度を狭めるためにも重要である。
【0004】
流量血球計算器は、光拡散及び蛍光発光を利用して細胞と、蛍光ビーズ等のその他の小物体とを判別し、判別した光の測定値に基づいて細胞を分類するデバイスである。物体が狭い噴流を流れるときに、そこへ導入したレーザー光が散乱して物体に衝突し、蛍光発光を生じる。散乱光と蛍光光の信号は多様な角度から検出され、物体を様々な特徴によって特性化して判別させる。
【0005】
性別を分類するための精子の難点は、特にウシの精子のように、形状が扁平であることである。形状が扁平であることにより、DNAの屈折率が水性の環境に比較して高いことと重なって、精子頭部から出射する蛍光光も含め光がレンズ効果と内部反射を起こす。このレンズ効果により、光は精子の縁からの出射に偏り、精子頭部の二扁平面からの出射はずっと少ない。それゆえ、光強度の検出、及び精子がX、又はY染色体を含有するかの判別は、精子のアラインメントを信頼できる程度に行えること、及び精子の蛍光発光を多様な角度から観察できることに依存している。
【0006】
既存のアラインメントシステムにおいては、たとえばRensらへ発行された米国特許5,985,216号に示すようなノズルにより、精子細胞を配向させて検出ゾーンへと吹き付けるデバイスが用いられる。このようなデバイスにおいて、当該分類ノズルは、扁平な細胞を配向させるために楕円形の断面を有している。Rensにおける欠点は、流量が1秒当たり精子細胞が約5000個より多いものである場合に、細胞を信頼できる程度に撮像して特性化することができないことである。1秒当たり精子細胞5000個の精子流量では、効率が悪く時間を浪費する。精子を分類するためのより実際的な流量は、1秒当たり精子細胞約100,000個か、それより多い。
【0007】
微粒子を操作するために用いる撮像システムの一形態が、2004年10月28日出願の米国特許出願10/974,976号、発明の名称「ホログラフィーによる光トラッピングを利用したナノ材料の操作・処理システム及び方法」、及び2004年9月3日出願の米国特許出願10/934,597号、発明の名称「レーザー運転による、粒子と細胞の多層流分離」に記載されており、両出願の開示を本明細書に参照として取り込む。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、細胞を分類するための、多角度判別可能な検出・撮像システムを用いた流量分類器に関する。本発明の一側面は、光を検出して物体を撮像する方法及び装置に関する。特に、本発明は、ウシ精子を性別により特性化かつ分類する方法及び装置に関する。しかし、本発明を用いてその他の種の哺乳類の精子細胞等を分類してよいことは理解されるべきである。
【0009】
本発明は、細胞を分類・配向する流量分類器は、導入口を有するフローチャネル、導出口、中間検出領域、及び、任意に分類領域を用いるという発見に基づく。導入口は、導入シース流体による互いに離れた複数の流れと、複数のシース流れの間の分類すべき細胞を含有する試料流れとを、互い違いに受け取る。シース流れと試料流れは、試料流れが収縮して検出領域において比較的狭い試料流れとなり、それによって細胞が入力光に対して選択した方向に配向されるような、流量又は圧力をフローチャンバー内においてそれぞれ有する。多角度、又はKベクトルによる撮像装置を採用した検出器が、検出領域において所望の細胞と所望でない細胞とを判別するために設定されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、物体を、特にウシ精子細胞を、低温保存することを目的として、特性化、分類、及び処理するための工程を説明するフロー図を示す。
【0011】
収集100から、伸長101、低速冷却102までの第1段階は、多様な方法における題目であり、それら方法のうちいくつかは新規であり、その他は既知である。
【0012】
分類すべき細胞を用意するための新規なシステムが、2005年2月1日出願の米国同時係属出願(願番未付与)、発明の名称「細胞を生体内染色して同定・分類するための新規な方法」に記載されており、当出願の開示を本明細書に参照として取り込むものとする。
【0013】
工程には、試料を使い捨てチップに盛ること200、試料をろ過して卵黄会合体等の大きな会合体材料を除去すること201、以下に述べる流量に基づくアラインメントを用いること202、並列的に性別の検出203、識別(即ち、性別識別204)、及び駆動(即ち、性別駆動205)を行うこと、受動的濃縮と均衡化を行うこと206、及び出力容器へと送出すること207が含まれる。本方法においては、任意にいくつかの工程を省き、生きた精子の所望でないものを判別し死滅させて除去する工程を含めてよい。
【0014】
上述の工程を含む性別分類工程103の後には、摂氏4度へと低速冷却して沈殿させる工程104、最終伸長105、ストロー詰め106、沈殿107、及び冷凍108の工程が続く。
【0015】
図2及び図3においては、本発明に係る流量血球計算器300を多様な形態において示す。このデバイスは、単一チャネルシステムであってよい。しかし、本発明は、特に大量の精子細胞を適度な長さの時間内に分類しなければならない精子細胞分類用途においては、マルチチャネル用法にも十分に対応している。
【0016】
図2及び図3において、デバイス300は、一対の対向面314、一対の端面316(そのうちの一方のみを図1に示す)、開放上面すなわち導入口318、及び開放底面すなわち導出口320から形成される本体すなわちフローチャンバー312を備える。
【0017】
導入口318は、複数の外面側導入口322、及び中央すなわち試料導入口324を含む3つの部分に分割されている。外面側導入口322は、シース流体326を内部に受け入れ、中央導入口324は液状媒質及び細胞330を分散させた試料流体328を受け入れる。
【0018】
導出口320は、複数の外面側導出口332、及び複数の中央試料回収チャネル、つまり、左側導出試料チャネル334L、中央導出試料チャネル334C,及び右側導出試料チャネル334Rを備える。チャネル334Lは第1分類試料用であり、334Cは第2分類試料用であり、334Lは更に別の分類の試料用である。
【0019】
シース流体326は、選択した流量にて外面側導入口322から導入される。試料流体326は、シース流体により試料流が圧縮・収縮されて図示するように比較的狭い試料流路336を取るようにシース流量又は圧力に対して相対的に選択された流量又は圧力にて中央導入口324に導入される。典型的な実施形態において、試料流路336の幅は、中央導入口324での試料流体の幅の約10%以下であり、たとえば約50ミクロンである。
【0020】
細胞330は円形であるが、扁平である。その結果、試料流体が収縮することにより、細胞330はその扁平面がほぼ対向面314に平行になるよう向きが定まる。向きが異なれば細胞から出射する光の強度は変わる。2又はそれより多くの細胞の強度を比較するためには、細胞に同一の向きを持たせなければならない。それゆえ、向きにバラツキのある異方性の光出射体が存在することにより生じるノイズ又は定誤差は、細胞をアラインメントすることにより減少する。
【0021】
互い違いに導入するシース流体326及び試料又は物体含有溶液328(図3参照)はシステムに入り、少量の収縮(直交方向での収縮に比較して)401を起こし、それによりせん断が生じ、当該せん断流により細胞400がアラインメントされる。この互い違いの流れパターンによると、長いシース流体流を2本導入するとその2本の間ではより激しい収縮が起き、それにより必要なアラインメントが達成される。この処理を以下に述べる検出と組み合わせて、何本もの流れを検査する並列的システムを提供してよい。
【0022】
具体的には、収縮流は物体が焦点面402へと移動させ、検出領域403の通過を速める。システム内の曲線404は流体の境界線404を示しており、検出領域405において特性化が行われる。光円錐406により検査が可能であり、既定の導出位置407は複数の導出口の間で移動することができる。
【0023】
3つの導出チャネル409〜411内でそれぞれ流量を変えることにより、溶液内の細胞又はその他の物体を複数の導出流のうちの一つに分類することができる。駆動は、先に挙げたように多様な方法にて行うことができる。装置、又は使い捨ての流れチャネルカートリッジに備えてよい圧電素子によって高速の流れ切り替えを行ってよい。流れ切り替え領域408においては、精密に流量が制御され、流量を経時的に変えて導出チャネル409〜411間で切り替える(但し、V2<V1、V4〜v2)。
【0024】
検出器340(図2)は、導入口と導出口との間の検出域338において試料流路336に向けられる出力ビーム344を発生するレーザー342又はその他の適切な出力源を備える。ビーム344は検出域338において細胞330に衝突して散乱し、出力ビーム346となる。細胞は蛍光物質を含んでいるので蛍光光を発生し、それは出力ビーム346に含まれる。出力ビーム346の散乱蛍光成分346S及び346Fのそれぞれは、光学システム348及び電子検出システム350を含む光検出器へと入力される。光学システム及び電子検出システムは、後に説明する。
【0025】
出力ビーム346により検出器340へと情報が運ばれ、検出器340は細胞330を判別して分類器356への出力354を生成する。分類器356は、各細胞330がふさわしいチャネルへと分類されるように流量比を切り替える目的で、導出チャネル334と動的に連携するようにドライバ358を制御する。又は、細胞を要不要により分類して、必要な細胞を回収し不要な細胞を破壊してもよい。
【0026】
図3は、2つのシース流源326と1つの試料流源328のみを備える単一チャネルシステムを示す。図4は、4つの試料流源328と共有シース流源326を備えるマルチチャネルシステムを示す。図4Aは、フローチャンバーと流路の上面図を示す。
【0027】
図4及び図4Aにおいては、導入する溶液を多数の平行流500とするための並列的設計の一つの可能な方法を示す。流れは平面方向においても、平面の垂直方向においても収縮する。しかし、ウシ精子等のように、細胞のアラインメントが必要である場合、入射光の垂直方向のアラインメントを確保するためには、入射光方向に沿ったせん断はより大きくなければならない。光検査領域502は、レーザーの散乱と蛍光発光が生じる場所である。
【0028】
本例においては、各シースに、専用のレンズシステムと、各々対応の流れに用いられる複数のPMT素子が用意されている。本システムにおいては、全てのチャネルに対して1つのレンズ検出システム、同様に全てのチャネルに対して1つのレーザー光システムを用意してもよいことが理解されるべきである。各流れが取り得る導出チャネル503が複数ある。
【0029】
検出器640の光学システムの簡単な上面図を図5に示す。試料660は対物面662内にある。この図において、出力ビーム、すなわち光線646は試料660からビームレット646C、646L、及び646Rとして発散する。ビームレット646Cは、中央光軸C近傍の中央部のビーム団であり、ビームレット646L及び646Rは中央軸Cの左側及び右側に集まっている。ビームレットにより、試料600の様々な面が観察される。集光レンズ664(顕微鏡の対物レンズであってよい)は、対物面662から、レンズの有効焦点距離(EFL)に等しい距離を置いて設置される。レンズ664は、望ましいのであれば複合レンズであってよいが、簡略化の目的で、EFLを有する単体レンズとして示されている。このようにレンズ664を位置付けることにより、物体からの光646は集光レンズ664を出射し、図示のように同様に666R、666C、666Lに分割された平行なビームレット666となる。これにより、撮像システム内に無限空間が形成される。本発明においては、この無限空間は必須ではないが、便利な構成である。各々の平行光の横方向の位置付けは、対物面から進行してきた角度により主に決定される。ビームレット666L、666R、及び666Cはそれぞれビームレット642l、642R、及び642Cに連続している。
【0030】
中央光ビームレット666Cは、レンズ664を中央軸Cに沿って出射し、光を前方の画像プレーン680Cへと集中する集束レンズ676Cに到達する。ミラー672L及び672Rにより、集光レンズ664を出射した軸上にないビームレット666L及び666Rが分離される。これを、当該領域におけるビームの大きさに比較して小型の検出器674A(図5A)、又は光ファイバー674B(図5B)を当該領域に設置することによって実現してもよい。また、集光レンズ664から出射する光の角度範囲を制限するための、又は共焦点顕微鏡測定におけるように光を集める焦点深度を制御(再設定、又は拡大)するための、付加的レンズ674C(図5C)、又はピンホール674D(図5D)等の、付加的な光学素子を当該領域に挿入してもよい。状況によっては、一対の付加的レンズをピンホールとともに用いてよい。その他の場合においては、大きさ、形状、又は位置の調整が可能なマスクを用いて所定の検出器に到達する光を制御してよい。
【0031】
ビームレット666Lの光はミラー672Lにより屈折して左側集束レンズ676Lに到達し、ビームレット666Rの光はミラー672Rによりレンズ676R及び右側画像プレーン678Rへと方向付けられる。光検出器680L,680R,及び680Cを各画像焦点プレーン670L,670R,及び670Cに設置して各像を検出してよい。これらの光検出器は、CCD、光ダイオード、光電子増倍管、マルチアノード光電子増倍管、又はその他のセンサであってよい。
【0032】
多くの場合、散乱光と蛍光光の両方を回収することが望ましく、得られる画像又は検出結果の少なくとも1つにおいて、試料からの光線の角度範囲が減少していなければならない。図6において、上述のようなKベクトル撮像装置を、必要に応じてフィルターとビームスプリッタとともに用いて、これを達成する方法を示す。類似の要素には同一の参照番号を付す。
【0033】
図6において、照明・励起光800は、集光レンズ801を透過し、ミラー802又は803で反射して放射フィルター688EL又は688ERを介して集束レンズ804又は805、及び左側又は右側蛍光画像プレーンを構成する光検出器690L又は690Rへとそれぞれ到達する。
【0034】
686Cにおけるビームスプリッタは、中央フィールド666Cにおいて光を方向付け直して、放射フィルター688Eを介して集束レンズ676FCへと到達させる。放射フィルター688Eからの出力689Eは、細胞からの蛍光発光の放射に対応する。中央光軸内のレーザー線フィルター688Lが散乱レーザー光をフィルタリングしてレンズ676C、及び前方散乱光画像プレーンが形成されている光検出器690Cへと導く。
【0035】
デバイスの処理量と全般的性能を向上するためには、並列化が望ましい。図7にこれを実現する方法を示す。レーザー642が入力レーザービーム644を放射し、入力レーザービーム644は蛍光発光を励起してビームスプリッタ690(たとえば、回折格子、又はホログラム)によりN個のビームへと分割される。ビーム692Aと692Nは扇状に散開してそれぞれ対応する試料シース(図4参照)の検出域へと方向付けられる。ビームレット692A〜692Nは平行化レンズ694により平行なビームとなるよう平行化される。平行化レンズ694からの出力696は円筒状レンズ698を通過して方向付けられ、円筒状レンズ698により各ビーム700A〜700Nは対物面701において試料流へと集中する。図示のように、(図4)、導入した流れは多くの流れへと分割される。図示例におけるビームレット700A〜700Nの1つ又は全ての光と試料流は集光レンズ702Kへと進入して、図6おいて上述した通りに処理される。しかし、本例においては、検出器アレイデバイス(マルチアノードPMT等)デバイス720(720C、720R、720L、720CF...)を各検出ビーム群につき1つ用いる。最良の検出は、各撮像位置に単一の検出器を設置することによってではなく、32要素の直線PMTアレイ720等の、アレイ状検出器を採用することにより達成される。
【0036】
多くの物体を撮像又は測定するシステムの処理量は、部分的には検出器の数とそれらの速度に依存する。多くの用途においては、各画像プレーンにつき光電子増倍管(PMT)等の検出器を1つ用いる。これは、物体が対物面を一列に並んで通過する場合に適する。
【0037】
分類器856を以下に詳述する。単一チャネル分類器を図8に示す。分類器856は、構造部材812、フローチャネル820を規定するスロット818が形成されたチャネル規定層816、チャネル規定層816上の柔軟膜層822、構成を完成させる構造部材824を備える。圧電性の、又はその他の種類のアクチュエータ826がコントローラ828に接続される。アクチュエータ826により駆動されるピストン860がフローチャネル820に対向する部分において柔軟膜822に陥入し、圧電への電圧供給に従ってチャネル内での流れパターンを変化させる。複数のこのような構造を小型化してアクチュエータの窓部に設置し、それにより複数本の試料流を分類してよい。
【0038】
1つ、又はそれより多いアクチュエータ826は、電気信号を流量の機械的駆動力に変換する圧電変換器、流体、材料、又は気泡をすばやく膨張させるために領域を加熱するヒータ、溶液流を収縮するための気泡を形成する熱気泡生成、膜の容量運動デバイス、材料、壁面、膜、気泡、又はその他の材料又は物体を加熱し、又は動かして流れの速度に作用を与えて1つ又はそれより多くの導出チャネル934へと到達させる光学デバイスを含んでよい。駆動力を、デバイスに備えてよく、又は外部から印加してよい。たとえばアクチュエータ826とピストン860は、使い捨てのフローデバイス856から独立した外部装置であってよい(つまり、使い捨てチップと使い捨てでない外部アクチュエータ)。
【0039】
図9は、導入チャネル900からフローチャネルへとシース流を供給し、導出チャネル901において様々に分類された精子細胞を受け取る、マルチチャネル並列構成を示す。並列検出器の各試料チャネルへと検査光をつなぐことを目的として、窓930が設けられる。分類窓932に、複数のアクチュエータと使い捨て分類エレメントを設置する。デバイス100のチップ登録ピンを940として特定する。
【0040】
図10A〜図10Rは、精子を分類するフローデバイスにおいて多様なアクチュエータ934を用いた、細胞を案内するための別の実施形態を示す。各ケースにおいて、1つ又はそれより多くのアクチュエータが用いられており、各アクチュエータは、圧電素子(カートリッジに内在又は外在)、容量アクチュエータ、熱膨張、又は先行開示に記載のその他の技術に基づいてよい。多くの場合、特定の細胞又は物体がどの導出チャネル936へと進入するかを制御するには、少なくとも2つのアクチュエータ934が望ましく、また2つより多くのアクチュエータが望まれる可能性もある。アクチュエータにより、流れを大変高速に制御及び変化することが可能となる。流れを一時的に一つの導出口から別の導出口へと転じるには、流れへの微小な摂動のみが必要である。
【0041】
図11A〜図11Bは、分類を行わずに、所望の結果を得るための殺細胞又は活性化装置の例を示す。図11Aにおいて、レーザー940は、物体・精子流942に衝突する。このレーザーは、検査の結果に基づいて、特定の精子又は物体にのみ致死的エネルギーを衝突させるように制御される。たとえば、このレーザーにより、所望のとおりに特定の精子又は他の細胞を死滅させてよい。たとえば、所定の性別の、又は性別が不確定な精子を全て死滅させてよい。または、レーザーにより細胞を直接的に死滅させずに、反対に「活性化」してよい。たとえば、事前に精子に導入したある種の化学物質を活性化することにより、全体の結果としては、精子を死滅させるか又は受精能力を弱めることもできる。より一般的な用途においては、活性化にはより多様な操作を含めてよい。
【0042】
図11Bは、中央流942に局所的に接触させる目的で流れへと差し込まれる電極944を通じて導入される致死電気パルスを用いる殺細胞又は活性化を示す。レーザーによる方法においてと同様に、電極は検査結果に基づいてすばやく発振・停止させることができる。
【0043】
細胞を光トラッピング装置により操作する光学的案内を行ってもよい。または、駆動処理を、細胞を死滅させるか又はその他の効果を与え得る、細胞の電気穿孔により行ってよい。
【0044】
以下の技術においては、収縮流を用いて精子細胞をアラインメントする。
【0045】
蠕動ポンプを用いて3本の流れをフローチップへ供給した。流れが互いに交じり合わないように各流れを層流態勢に維持した。精子含有流は、水である上層流と下層流との間を流れる。上層及び下層の流れの速度を互いに等しく保ちつつこれらの精子流に対する比を変化させることにより、精子流の収縮を観察することができた。
【0046】
収縮流により精子が流れ方向へと配向されることが想定される。
【0047】
流れの中の精子の画像を、我々の顕微鏡に装備されたCCDカメラにより撮影した。
【0048】
上の表は、流れの中の精子配向の角度を示しており、Reは、Dがフローチャネルの直径、Uが速度、rが流体の密度、mが粘性であるDur/mとして定義されるレイノルズ数である。
【0049】
Reにより、流れが層流であるか否かが示される。1000未満のReである場合には層流であると考えられるが、ある用途においてはたとえば1未満等の大変に小さいReが要求される。
【0050】
精子流の速度が増大するにつれ、チャネル導入部のReは増大するが、層流を得られる範囲に維持されており、我々の実験範囲では流れは妨げられないことを示している。
【0051】
精子配向を、これらを精子頭部の流れ方向に対するアラインメント角度関数として数値化することにより定量化した。
【0052】
実験範囲においては、撮像した精子の約80%が流れ方向に対して15度未満に配向された。
【0053】
より高い速度においては、流れ方向に対してより良好なアラインメントが示されたが、損傷した精子がより多く観察された。
【0054】
この結果により、本システムが当該技術を用いて精子をアラインメントすることができたことが示される。
【0055】
精子を延命する目的でシース流体と試料流体の温度管理を行うことができることが理解されるべきである。典型的実施形態においては、精子細胞の動きを封じて寿命を延長する目的で、フローデバイス内での流体温度を約摂氏2〜10度に維持してよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】蛍光染料で着色した細胞を分類するための工程のフロー図である。
【0057】
【図2】本発明に係るフローデバイス又はカートリッジの斜視概略図である。
【0058】
【図3】分類用の単一チャネルフローデバイスの概略図である。
【0059】
【図4】分類用のマルチチャネルフローデバイスの側面図である。
【0060】
【図4A】図4に示すマルチチャネルシステムの導入口に面した上面(境界)図である。
【0061】
【図5】散乱光を検知するための単一チャネルセンサ(つまり、Kベクトル撮像のための光学システム)の概略図である。
【0062】
【図5A−5D】図5の構成に採用する別の光学素子を示す。
【0063】
【図6】Kベクトル撮像を用いて蛍光光と散乱光を検出する単一チャネルセンサの概略図である。
【0064】
【図7】散乱光と蛍光光の励起と検出を行うKベクトル撮像のためのマルチチャネルデバイスである。
【0065】
【図8】細胞を分類するチャネル又はデバイス内の流速を調整する外部アクチュエータの概略図である。
【0066】
【図9】細胞を検出・分類するマルチチャネルデバイス又はカートリッジの上面の概略図である。
【0067】
【図10A−10D】M、W、Fに3つのアクチュエータ(図10A)、S1、S2に2つのアクチュエータ(図10B)、S1に1つのアクチュエータ(図10C)、M、Fに2つのアクチュエータ(図10D)を用いて細胞を案内する多様な代替的方法を示す。
【0068】
【図11A−11B】レーザー死滅又は活性化(図11A)と、電気死滅又は活性化(図11B)による細胞を死滅させるための多様な代替的方法を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入口を有する1つのフローチャンバーを形成する対向し合う一対の壁面と、1つの下流側導出口と、1つのフローチャネルを形成する中間検出領域とを備え、前記導入口は、導入シース流体による第1、第2の複数の隔離した流れと、分類すべき複数の細胞を含有する試料流体による、前記第1と第2の複数のシース流れの間の1つの第3の流れを受け取り、前記第1と第2の複数のシース流れは、前記第3の流れがそれらの間において収縮して少なくとも前記検出領域において比較的狭い1つの試料流れを形成し、それにより前記複数の細胞が前記複数の壁面に対して選択される1つの方向へと配向されるような、前記第3の流れの1つの流量又は圧力に相対的な流量又は圧力を前記フローチャンバーにおいてそれぞれ有しており、前記検出領域における1つの検出器は複数の所望の細胞を検出してそれを示す出力を生成する、複数の細胞を分類・配向する1つのフローデバイス装置。
【請求項2】
前記流れから前記複数の所望の細胞を分類する、前記検出器の下流に存在する1つの分類器を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記分類器は、前記検出器の下流において、少なくとも一方が前記複数の所望の細胞を受け取る第1、第2の複数の隔離した領域が形成された、前記チャンバーの1つの部分を含むことを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記分類器は、前記複数の所望の細胞を1つの第1領域へと案内し、複数の所望でない細胞を1つの第2領域へと案内する目的で、前記検出器に応答して、1つの領域又はそれより多くの複数の領域へと選択的に圧力を印加する1つの圧力変換器を含むことを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
複数の所望の細胞を複数の所望でない細胞から分離する1つの分類器を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記複数の壁面は、複数の平面部材であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1、第2の流れは1つの液状媒質を含み、前記第3の流れは複数の細胞又は複数の粒子が懸濁した1つの液状媒質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1、第2の複数の流れの、前記第3の流れに相対的な前記流量又は圧力は、少なくとも前記検出領域において前記第3の流れが前記第1、第2の複数の流れの幅の約10パーセント以下となるように前記第3の流れを収縮させ、それにより前記検出領域に進入する複数の細胞を互いに対して、また前記複数の壁面に対して略平行な1つの方向に配向させることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記検出領域は、1つの入力光信号を集中させる比較的狭い領域を含むことを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記導出口は、第1と第2の複数の隔離した領域により形成され、前記第1の領域は1つの所望の細胞を受け取り、前記第2の領域は、1つの所望でない種の複数の細胞を受け取ることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記検出器は、前記検出領域において、前記複数の細胞に入力光を光学的に照射する1つの光源を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の細胞は前記入力光に反応して出力光を生成する反応性を有しており、前記検出器は前記複数の細胞が生成する光に反応する1つの光検出器を備えることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項13】
前記出力光は、前記複数の細胞から散乱する光と、前記複数の細胞が生成する蛍光光の少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記検出器は、前記複数の細胞からの出力光を受光するための、また、当該出力光を集光してそれによる複数の集光光ビームレットを生成する1つの第1光学素子を含む、1つの光学系配列を備え、前記複数のビームレットは、前記細胞の前記入力光との相互作用に従って生成される、前記細胞の多様な角度における複数の画像を示すことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記検出器は、前記光学系配列の1つの中央光軸に沿っており、前記中央軸に沿った複数の選択された軸上ビームレットを複数の対応する光検出器へと方向付ける1つの光検出器を更に備えることを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記検出器は、前記中央光軸からずれて方向付けられる複数の光路を有する複数の軸ずれビームレットを検出するための、1つの対応する軸ずれ光路を有する少なくとも1つの軸ずれ光検出器を更に備えることを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの軸ずれ光検出器の前記光路内の1つの光スプリッタであって、前記複数の集光光ビームレットから選択される複数のビームレットを前記対応する軸ずれ検出器へと方向づける1つの光スプリッタを更に備える、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記複数の集光光ビームレットは、散乱光と蛍光光を含み、前記検出器は、前記集光光から前記散乱光と前記蛍光光の少なくとも一方をフィルタリングする複数の光フィルターを更に備えることを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記分類器は、細胞種ごとに1つのチャネルと、前記フローチャネルに接続され、前記試料流れの複数の選択位置において前記流体流量を変更して前記複数の細胞を前記複数のチャネルうちの選択した複数のチャネルへと案内するための1つの駆動部材とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
駆動部材は、フローチャネルへと印加する変化する前記圧力用の1つの圧力変換器を備えることを特徴とする、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記駆動部材は、1つの圧電変換器、1つの加熱器、1つの容量膜、及び、1つの光加熱器の少なくとも1つを備えることを特徴とする、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
1つの対物面内の1つの物体を撮像するための1つのセンサであって、前記センサの1つの中心軸に対して複数の異なる角度にて前記対物面を離れる光という形態にて前記物体の複数の像を定義する複数のビームを発生する前記物体を照射する1つの光源と、前記物体からの光に反応する1つの検出器を備えるセンサ。
【請求項23】
前記検出器は、前記センサの前記光軸に沿って方向付けられる光と、前記検出器の前記軸からずれて方向付けられる光の少なくとも一方に反応することを特徴とする、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記軸ずれ検出器は、前記対物面内の複数の異なる位置に対応する軸ずれ光を検出するための、前記中心軸に対して横に変位した少なくとも2つの光検出器を含むことを特徴とする、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
各ビームからの蛍光光と散乱光の少なくとも一方をフィルタリングするための1つのフィルターを更に含む、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記光検出器は、複数の光ビームを検出する、1つのマルチエレメント光電子増倍管を備えることを特徴とする、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記光源はレーザーを含むことを特徴とする、請求項22に記載の装置。
【請求項28】
各物体からの前記光を平行化して複数の別個のビームにする1つのレンズを更に含む、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
各ビーム用に集光レンズを更に含む、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
軸ずれ光から軸上光を分割する1つのスプリッタを更に含む、請求項28に記載の装置。
【請求項31】
複数の所望でない細胞を死滅させるための、前記検出器の下流に存在する1つの殺細胞器を更に含む、請求項22に記載の装置。
【請求項32】
前記殺細胞器は、前記複数の所望でない細胞へ致死エネルギーを当てるための1つのレーザーと電極の少なくとも一方を備えることを特徴とする、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記殺細胞器は、前記細胞内の致死ターゲットを活性化するための光の、1つの発生源をそなえることを特徴とする、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
複数の所望でない細胞を効果的に処理し、又は死滅させる1つの細胞電気穿孔をさらに含む、請求項22に記載の装置。
【請求項35】
細胞寿命を延長するためには、前記フローデバイスを、約摂氏2度から10度にて運転することができることを特徴とする、請求項22に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【公開番号】特開2012−13714(P2012−13714A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−226095(P2011−226095)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【分割の表示】特願2007−553366(P2007−553366)の分割
【原出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(503419767)アリックス インコーポレイテッド (13)