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ゼラチンカプセル及びカプセル皮膜成形用ゼラチン組成物
説明

ゼラチンカプセル及びカプセル皮膜成形用ゼラチン組成物

本発明の課題は、カプセル充填物中やカプセル皮膜成形用原料中の添加物に由来するアルデヒドによって経時的なカプセル皮膜の不溶化が起こるのを防止すると同時に、機械的強度の低下の少ないゼラチンカプセル及びその製造に使用する新規なゼラチン皮膜成形用組成物を提供することである。[解決手段]通常のゼラチンに、低分子量ゼラチン(分子量が6,000〜26,000の範囲のゼラチン分解物)をゼラチン総量に対して5〜10重量%配合したゼラチン組成物を原料として使用し、硬質カプセル、軟質カプセルを定法によって製造することにより、機械的強度を保持し、かつ不溶化が起こりがたいカプセルが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時的なカプセル皮膜の不溶化が起こり難く、かつ、機械的強度の低下の少ないゼラチンカプセル及びその製造に使用する新規なゼラチン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カプセル剤は、錠剤と同様に1個の計数単位として扱うことができ、錠剤と異なり圧縮工程を経ないため薬物の変質が少なく、又錠剤として成形しにくい場合にも製造できる利点がある。硬質カプセルはゼラチンを基剤とし、これに可塑剤や着色剤などを加えて製造される。軟質カプセルは基剤であるゼラチンに比較的多量の可塑剤が添加され、弾性、柔軟性に富む製剤である(非特許文献1)。
【0003】
しかし、カプセル皮膜の主成分であるゼラチンはアミノ基を有しているため、アルデヒド系成分を含む樹脂の包装体を使用する場合や、カプセル中に還元糖やマクロライド系抗生物質などのアルデヒド基を含む薬物や経時的に分解してアルデヒドを生じる薬物や賦形剤(以下、これらを総称して不溶化誘起物質という)が存在する場合には、長期保存中に架橋や重合等の経時変化を起こして不溶化し、その結果として充填された薬物の放出の遅延をまねくという問題点があった。
【0004】
また、硬質ゼラチンカプセルのゼラチン皮膜は50%RHの環境で約15%程度の水分を含んでおり、これが可塑剤となってゼラチンに適度なしなやかさと強度を与えているが、水分量が低下すると皮膜は硬く脆くなり、弾性を失いカプセルは割れやすくなる。これを改善するため、ゼラチンにポリエチレングリコール(以下、PEGという)を添加して低水分時の強度を飛躍的に高めた研究がなされているが(非特許文献2)、PEGも経時的に酸化されてアルデヒドを発生し、不溶化誘起物質となってゼラチンカプセルを不溶化させるという問題があった。
【0005】
これら不溶化の問題を解決するため、従来から多くの研究が行われてきた。例えば包装体のカプセルに接触する面にアルデヒド系成分を含まない樹脂を使用するもの(特許文献1)、カプセル充填物中にアミノ酢酸を含有させ、充填物中のアルデヒドが硬カプセルのゼラチンのアミノ基と反応するのを防止し不溶化を軽減するもの(特許文献2)、充填物中に分子量500〜10,000のコラーゲンペプチド等のアミノ化合物を配合し、充填物中のアルデヒドが軟質カプセルのゼラチンのアミノ基と反応するのを防止し不溶化を軽減するもの(特許文献3)が知られている。
【0006】
また、カプセル外皮の改善としては、ゼラチンに硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、グルタミン酸、アスパラギン酸などを添加するもの(特許文献4)、ゼラチンに分子量5,000〜10,000程度のポリペプチドを15〜70%加えアルデヒドとゼラチンの反応を抑えるもの(特許文献5)、不溶化の原因となるゼラチンのアミノ酸リジン残基(−NH2)を化学修飾したコハク化ゼラチンを使用する硬質カプセル(特許文献6、7)や軟質カプセル(特許文献8)等が知られている。
【0007】
これらの各種方法のうち、カプセル外皮自体を安定化することが最も根本的な解決法である。しかしながら、コハク化ゼラチンの使用は皮膜の機械的強度の低下を招き、特に、僅か100マイクロメートル前後の厚みしか持たない硬質カプセルにおいては、従来よりも割れ易くなるという問題が発生するため実用化が困難であり(特許文献7)、分子量5,000〜10,000程度のポリペプチドの使用の場合は添加量が多いと製品の保形性の
低下を招くという問題点があり(特許文献5)、必ずしも満足のできるものではなかった。
【0008】
上記のとおり、ゼラチンと不溶化誘起物質との反応を抑制するために分子量の小さいポリペプチドのような水溶性高分子物質を使用する場合、それによる不溶化が防止されても、機械的強度が低下するため、その両立は高分子の物理化学を鑑みれば本来矛盾する方向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平7−13761号公報
【特許文献2】特開2000−26282号公報
【特許文献3】特開2003−55263号公報
【特許文献4】特表平10−509470号公報
【特許文献5】特公平6−2665号公報
【特許文献6】特開平7−252138号公報
【特許文献7】特開平6−72862号公報
【特許文献8】特開2000−44465号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「総合製剤学」 杉山雄一 山本恵司編著 南山堂 2000年4月3日発行 第456〜457頁
【非特許文献2】「Polymer reviews - The structure and properties of solid gelatin and the principles of their modification」(Polymer, 1983, Vol. 24 June, 651-666)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、経時的なカプセル皮膜の不溶化が防止されるとともに機械的強度が保持されたゼラチンカプセル、並びにその製造に使用する新規なゼラチン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々検討した結果、通常のゼラチンに、低分子量ゼラチン(分子量6,000〜26,000の範囲のゼラチン分解物)をゼラチン総量(通常のゼラチン(平均分子量20万)と低分子量ゼラチンの重量の合計量)に対して5〜10重量%配合することにより得られる新規なゼラチン組成物を用いてカプセルを製造すると、不溶化誘起物質によるカプセルの不溶化が抑制され、なおかつ機械的強度も低下しないこと、このため、長期保存後においても、実用的な溶解性の改善されたカプセルが得られることを見出した。分子量10,000を超えるポリペプチドは、従来は経時的な不溶化を防ぐ効果が小さいとされてきたこと(特許文献5)からすると、分子量が6,000〜26,000の範囲の低分子量ゼラチンの使用でこのような効果が得られることは驚くべきことである。また、本発明は硬質カプセルの低水分時の強度を高めるためにゼラチンにPEGを添加した場合であっても、低分子量ゼラチンを上記の割合で使用することにより不溶化を生じさせにくい理想的な硬質カプセルを提供することができる。この場合PEGは平均分子量が2,600〜25,000のものをゼラチン総量に対し2〜5重量%加えることにより得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にしたがい通常のゼラチンに、低分子量ゼラチンをゼラチン総量に対して5〜1
0重量%配合したゼラチン組成物を原料として、硬質カプセル、軟質カプセルを製造すると、不溶化誘起物質によるカプセルの不溶化を防止することができ、特に硬質カプセルにおいては機械的強度を損なうことが無いという理想的なカプセルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明について以下にさらに詳しく説明する。
本発明のカプセルは、以下に示す通常のゼラチンに低分子量ゼラチンを配合した組成物を基本原料とし、所望のカプセルが硬質であるか、軟質であるかにより、添加物、製造方法が選択される。最初に、製造原料について説明する。
1.原料
(1)ゼラチン
通常のカプセル製造用のゼラチンには、豚皮などを酸処理して製造した酸処理ゼラチンや牛骨などをアルカリ処理して製造したアルカリ処理ゼラチンがあり、分子量約10万のポリペプチド鎖(α鎖)とその二量体(β鎖)、三量体(γ鎖)およびそれらが加水分解したポリペプチド鎖で構成され、平均分子量は20万程度である。
本発明のカプセル製造には、酸、アルカリ処理のいずれによって得られたゼラチンでも使用可能であり、それらの混合物を使用してもよい。
【0015】
(2)低分子量ゼラチン
本発明における低分子量ゼラチンとはゼラチン分解物であって、ゲル浸透クロマトグラフィーで分析した場合、6,000〜26,000の範囲の分子量分布を有するゼラチンをいい、好ましくは6,000〜24,000、さらに好ましくは12,000〜24,000の範囲の分子量分布を有するゼラチンをいう。
低分子量ゼラチンは、コラーゲンを加熱分解、酸、アルカリ分解あるいはタンパク質分解酵素により酵素的に分解し、上記の分子量範囲のゼラチンを分離精製することによって製造することができる。
また、低分子量ゼラチンはゲル化能を有する。ここで「ゲル化能」とは、水溶液の温度を下げた時にゾル−ゲル転移によりゼリー状に固める能力を意味する。
低分子量ゼラチンの含有率はゼラチン総量(通常のゼラチンと低分子量ゼラチンの重量の合計量)に対して5〜25重量%の範囲、好ましくは5〜10重量%の範囲であって、5重量%未満の場合は、不溶化を防ぐ効果が小さくなり、25重量%を超える場合はゼラチン溶液の粘度が低下し、既存のカプセル製造機の規格の厚みでカプセルを製造するには適さないため、上記の範囲が好ましい。
【0016】
(3)PEG
本発明はポリエチレングリコール(PEG)を添加しても不溶化を生じさせにくく、低水分時であっても機械的強度が低下しにくい理想的な硬質カプセルを提供することができる。ゼラチン原料に添加するPEGは特に制限されるものではないが、カプセルの機械的強度を顕著に向上させることができることから、平均分子量は2,600〜9,300とすることが好ましく、2,600〜3,800を用いることがより好ましい。
【0017】
好ましいPEGは商品名「マクロゴール4000」として入手することができる。該PEGの添加配合量は特に制限されるものではないが、上記ゼラチン原料(ゼラチン)の総量に対して2〜15重量%、好ましくは2〜10重量%、さらに好ましくは2〜5重量%使用することが適当であり、2重量%未満または15重量%以上では機械的強度の改善が見られないか、或いは却って機械的強度が低下する場合がある。
【0018】
(4)その他の添加物
本発明のカプセルの製造するにあたり、外皮原料であるゼラチンにさらに通常添加される添加物を添加することができる。例えば硬質ゼラチンの場合は、食用色素、二酸化チタン、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸エステル類などの界面活性剤、ソフトカプセルの場合は、食用色素、グリセリン、ソルビトール、パラオキシ安息香酸エチルなどの安息香酸エステル類などが必要に応じて添加される。
【0019】
2.充填物
本発明のゼラチンカプセルは医薬または食品分野におけるカプセル材料として好適に利用されうるが、これに限定されるものではない。該カプセルは、例えば医薬部外品、化粧品に対しても同様に使用されうる。
【0020】
3.カプセルの製造方法
本発明のカプセルの製造は、低分子量ゼラチンを含有するカプセル皮膜成形用ゼラチン組成物を使用し、通常のカプセル製造方法を適用することにより行うことができる。硬質カプセルは、ゼラチンおよびゲル化能を有する低分子量ゼラチンを溶解し色素等を混合した皮膜溶液に金型を浸漬してゼラチン液を付着させ水分が15〜18%になるまで乾燥して調製する浸漬法などを用いることができる。軟質カプセルは、ゼラチンおよびゲル化能を有した低分子量ゼラチンを溶解した液に可塑剤としてグリセリンやソルビトールを加えた基剤で液状の薬剤を被包し、一定の形状に成形するロータリー法、二重ノズル法を用いることができる。
【実施例】
【0021】
[実施例1]
平均分子量が約20万のアルカリ処理ゼラチンに低分子量ゼラチン(分子量6,000〜26,000の範囲)を各々0、5、10、25重量%の割合で配合したゼラチン1.5kgに80℃の水を2.9kg加えて完全に溶解させて濃度34%の均一なゼラチン溶液を作成する。これを50℃に保ち、十分に脱泡したのち回転式粘度計を使い回転数4000rpmで各々の溶液粘度を測定した。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
低分子量ゼラチンを0〜10%混合したゼラチン溶液の粘度は1000mPa・s以上であるため既存のカプセル製造機の規格の厚みでカプセルを製造することができる。しかしながら、低分子量ゼラチンを25%混合したゼラチン溶液の粘度は1000mPa・sを大きく下回るため既存のカプセル製造機には適さない。
【0024】
[実施例2]
実施例1で調製した低分子量ゼラチンの含有率が0、5、10%のゼラチン水溶液に加水して、各々の溶液粘度が硬質カプセル試作機でカプセルを成型するのに都合の良い粘度にまで粘度調整を行った。該カプセル調製液にカプセル成型用金型を浸漬してサイズ2号の硬質カプセルを製造した。該カプセルにアセトアミノフェン粉末を充填し、日本薬局方の溶出試験(パドル法、50rpm、水、37℃)によりカプセルの溶解性を測定した。その結果を表2に示す。
残りのカプセル1個あたりにアルデヒド類である乳糖粉末を充填し、無包装にて40℃、75%RHの環境で3週間保管して不溶化を促進した。保管後のカプセルの充填物をアセトアミノフェン粉末に詰め替えた後、日本薬局方の溶出試験(パドル法、50rpm、水、37℃)によりカプセルの溶解性を測定した。その結果を表3に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【0027】
表3に示されるように、低分子量ゼラチンの配合率が各々5%および10%であるカプセルAおよびカプセルBは、低分子量ゼラチンの含有率が0%である参考品−1と比べて何れも保管後の溶出率が高く、カプセルの溶解性低下が大きく改善している。
【0028】
[実施例3]
実施例2で調製したカプセル調製液を平滑な塩ビ板上にフィルム形成用のアプリケーターを用いて乾燥時のフィルムの厚さが0.1mmのゼラチンフィルムを調製し、カプスゲル社製振り子式の衝撃試験器を使って皮膜の破れるエネルギーを測定した(n=10測定の平均値)。さらに、市場で多用される酸化チタンが配合された白色カプセルを再現するため、ゼラチン溶液に2%の酸化チタン色材を加えて同様の手順で参考品−2のフィルムを調製し試験に加えた。
試験に供すフィルムは予め10%RH〜50%RHの湿度に保たれた箱の中に1週間置いてフィルム中の水分含有量を低下させた。その結果を表4に示す
【0029】
【表4】

【0030】
低分子量ゼラチンの含有率が各々5%および10%であるフィルムAおよびフィルムBは、低分子量ゼラチンの含有率が0%である参考品−1および参考品−2と比べ、何れも十分に遜色の無い強度を有していることが分かった。
【0031】
[実施例4]
通常のゼラチンのみ(参考品−3)、通常のゼラチンに局方マクロゴール4000を2.5%又は5%の割合で配合したもの(参考品−4および参考品−5)、通常のゼラチンに実施例1で使用した低分子量ゼラチンを含有率が5重量%又は10重量%で配合したものにさらに局方マクロゴール4000を2.5%の割合で配合したもの(カプセルCおよびカプセルD)を用いて、実施例2に記載の方法によりカプセル調製液を調製し、カプセル成型用金型を各カプセル調製液に浸漬して硬質カプセルを製造した。該カプセルにトコフェロールニコチン酸エステル製剤(エーザイ製ユベラ−N(登録商標)細粒同等品)を充填して50℃、75%RHの環境で4週間保管した。保管前後のカプセルの崩壊時間を日本薬局方の崩壊試験により測定した。その結果を表5および表6に示す。
【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

【0034】
PEGを配合した硬質カプセルは保管中に不溶化が進むためカプセル開口時間および溶消時間は長くなるが、カプセル外皮に低分子量ゼラチンを配合することにより開口時間は殆ど変わらず、溶消時間の遅延も抑制されている。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明のカプセルは不溶化誘起物質が包装体や充填物内あるいはカプセル原料中に存在しても経時的な崩壊遅延を起こすことがなく、かつ十分な機械的強度を保持することができるので、医薬、食品、健康食品などのカプセル内容物の保持と同時に確実な溶出が必要とされる分野において、既存のゼラチンカプセルの改良品として広く有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量が6,000〜26,000の低分子量ゼラチンの含有率がゼラチン総量の5〜10重量%であるカプセル皮膜成形用ゼラチン組成物。
【請求項2】
色素、界面活性剤、可塑剤およびポリエチレングリコールから群より選択される少なくとも1種の添加物を含む、請求項1記載のカプセル皮膜成形用ゼラチン組成物。
【請求項3】
分子量が6,000〜26,000の低分子量ゼラチンの含有率がゼラチン総量の5〜10重量%であるゼラチンカプセル。
【請求項4】
ゼラチンカプセルが硬質ゼラチンカプセルである、請求項3記載のゼラチンカプセル。
【請求項5】
ゼラチンカプセルが軟質ゼラチンカプセルである、請求項3記載のゼラチンカプセル。
【請求項6】
ポリエチレングリコールを含む、請求項4記載のゼラチンカプセル。
【請求項7】
ポリエチレングリコールの平均分子量が2,600〜3,800である、請求項6記載のゼラチンカプセル。
【請求項8】
ポリエチレングリコールの含有率がゼラチン総量の2〜5重量%である、請求項7記載のゼラチンカプセル。

【公表番号】特表2013−515715(P2013−515715A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545499(P2012−545499)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055867
【国際公開番号】WO2011/080647
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(511291027)カプスゲル・ベルギウム・ナムローゼ・フェンノートシャップ (4)
【氏名又は名称原語表記】Capsugel Belgium NV
【Fターム(参考)】