説明

ゼリー飲料の製造方法

【課題】本発明の目的は、タンパク加水分解物を含有する溶液を加熱して攪拌する際に生じる泡の発生が抑制されたタンパク加水分解物含有ゼリー飲料の製造方法を提供する。
【解決手段】グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルを含有する溶液を添加することを特徴とするゼリー飲料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼリー飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乳清タンパク質加水分解物やコラーゲンペプチドなどのタンパク加水分解物を配合して栄養を強化したゼリー飲料が提案されている(特許文献1および2参照)。このようなゼリー飲料は、例えば水にタンパク加水分解物、砂糖、酸味料、香料などの原料を加えて調整した溶液を約70〜90℃に加熱し、これにゲル化剤を加えて攪拌・溶解して得られた溶液を冷却しゲル化することにより製造される。しかし、タンパク加水分解物を含む溶液を加熱・攪拌すると泡が発生(発泡)し、生産性の低下や商品の品質不良を引き起こす虞があり、問題となっている。
【0003】
このような発泡を抑制し、または発生した泡を消失させるため、通常シリコーン樹脂が用いられている。しかし、シリコーン樹脂は食品の表示の問題から敬遠される傾向にあり、これに替わり得る方法が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−006663号公報
【特許文献2】特開2006−180812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、タンパク加水分解物を含有する溶液を加熱して攪拌する際に生じる泡の発生が抑制されたタンパク加水分解物含有ゼリー飲料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルを、タンパク加水分解物を含有する溶液に添加することにより、泡の発生が十分に抑制されることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルを添加することを特徴とするゼリー飲料の製造方法、からなっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法は、従来の製造方法に比べ、タンパク加水分解物を含有する溶液を加熱・攪拌する工程において生じる泡の量が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられるグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルは、通常グリセリンモノ脂肪酸エステル(別称:モノグリセライド)とジアセチル酒石酸若しくはジアセチル酒石酸の酸無水物との反応、またはグリセリンとジアセチル酒石酸と脂肪酸との反応により得ることができる。
【0010】
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの製法の概略は以下の通りである。即ち、グリセリンモノ脂肪酸エステルを溶融し、これにジアセチル酒石酸の酸無水物を加え、温度120℃前後で約90分間反応する。グリセリンモノ脂肪酸エステルとジアセチル酒石酸の酸無水物との比率はモル比で1/1〜1/2が好ましい。さらに、反応中は生成物の着色、臭気を防止するために、反応器内を不活性ガスで置換する方が好ましい。得られたグリセリンモノ脂肪酸エステルとジアセチル酒石酸の酸無水物との反応物は、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの他に、ジアセチル酒石酸、未反応のグリセリンモノ脂肪酸エステル、その他を含む混合物である。
【0011】
上記グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸等の群から選ばれる1種あるいは2種以上の混合物が挙げられ、好ましくはステアリン酸を約50質量%以上含有する脂肪酸又は脂肪酸混合物である。
【0012】
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール又はソルビタンと脂肪酸のエステル化生成物であり、自体公知のエステル化反応等により製造される。
【0013】
上記ソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸等の群から選ばれる1種あるいは2種以上の混合物が挙げられるが、好ましくはラウリン酸約70質量%以上含有する脂肪酸又は脂肪酸混合物である。
【0014】
本発明のゼリー飲料の製造方法としては、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルを添加する工程を含むものであれば特に制限はなく、例えば、以下の工程(1)〜(3)を実施することにより製造できる。
工程(1):水にタンパク加水分解物、その他糖類や甘味料などの甘味質、ビタミン類、アミノ酸類、ミネラル類、果汁、香料、酸味料、着色料などを加えて均一に混合し、得られた混合液を約45〜60℃に加熱する。
工程(2):(1)で得た混合液を約45〜60℃に加熱し、これにグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルを加え攪拌・溶解する。
工程(3):(2)で得た溶液を加熱し、これに適量のゲル化剤(例えばゼラチン、ペクチン、寒天、カラギーナン、ジェランガム、グルコマンナン、ローカストビーンガム等)を加え攪拌・溶解し、ゼリー液を調整する。
【0015】
上記タンパク加水分解物としては、例えば、動物タンパク質(例えば、牛骨、豚骨、鶏骨、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏足、豚足、牛皮、豚皮または鶏皮等由来タンパク質)若しくは植物タンパク質(小麦、大豆、とうもろこしまたは米等由来タンパク質)の酸加水分解物、酵素分解物または自己消化物等が挙げられる。
【0016】
上記攪拌では、攪拌機としてTKホモミクサー(プライミクス社製)、クレアミックス(エムテクニック社製)などの高速回転式分散・乳化機を使用することができる。さらに、攪拌機以外にも、超音波乳化機などの均質化処理機を用いてもよい。
【0017】
上記工程(2)により得られる溶液100質量%中のタンパク加水分解物、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルの含有量に特に制限はないが、例えば、タンパク加水分解物が通常約1〜5質量%、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルが通常約0.05〜1.0質量%、ソルビタン脂肪酸エステルが通常約0.05〜1.0質量%となるように調整するのが好ましい。
【0018】
次に、上記工程(3)における加熱の方法に特に制限はなく、常法により行うことができる。また、溶液の加熱温度は、使用するゲル化剤の種類等に応じて任意に選択することができる。
【0019】
このようにして得られたゼリー液を、常法により殺菌処理した後、容器に充填して冷却し、ゼリー飲料の製品とすることができる。
【実施例】
【0020】
以下に本発明を実施例に基づいて、より具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
[実施例1]
水250mlに大豆ペプチド(商品名:ハイニュートPM;不二製油社製)10.5g、砂糖26g、無水クエン酸1.0g、りんご果汁9g、香料0.6gを加え、薬さじで攪拌して均一に混合した。得られた混合液を60℃に調温しながら、これにグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW−70;理研ビタミン社製)0.75gおよびソルビタン脂肪酸エステル(商品名:ポエムL−300;理研ビタミン社製)0.15gを加えて薬さじで攪拌して溶解した(溶液1)。得られた溶液を90℃に加温して寒天2.0gを加え、これをTKホモミキサー(プライミクス社製)を用いて寒天が溶解するまで攪拌し、ゼリー液300gを得た。
【0022】
[実施例2]
実施例1記載のグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル0.75gおよびソルビタン脂肪酸エステル0.15gに替えて、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW−70;理研ビタミン社製)0.6gおよびソルビタン脂肪酸エステル(商品名:ポエムL−300;理研ビタミン社製)0.3gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、溶液300g(溶液2)を得た。続いて、得られた溶液について実施例1と同様に実施し、ゼリー液300gを得た。
【0023】
[実施例3]
実施例1記載のグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル0.75gおよびソルビタン脂肪酸エステル0.15gに替えて、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW−70;理研ビタミン社製)0.9gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、溶液300g(溶液3)を得た。続いて、得られた溶液について実施例1と同様に実施し、ゼリー液300gを得た。
【0024】
[実施例4]
実施例1記載のグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル0.75gおよびソルビタン脂肪酸エステル0.15gに替えて、ソルビタン脂肪酸エステル(商品名:ポエムL−300;理研ビタミン社製)0.9gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、溶液300g(溶液4)を得た。続いて、得られた溶液について実施例1と同様に実施し、ゼリー液300gを得た。
【0025】
対照として、実施例1記載のグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル0.75gおよびソルビタン脂肪酸エステル0.15gを使用しなかったこと以外は実施例1と同様に実施し、溶液300mlを得た(溶液5)。続いて、得られた溶液について実施例1と同様に実施し、ゼリー液300gを得た。
【0026】
[試験例]
上記実施例および対照の方法において、溶液(溶液1〜5)を90℃に加温して寒天2.0gを加え、これをTKホモミキサー(プライミクス社製)を用いて攪拌する際に生じる泡の量を測定した。具体的には、溶液(溶液1〜5)を各々500ml容ガラス製ビーカーに入れて90℃に加温し、TKホモミキサー(プライミクス社製)を用いて回転数6000rpmで30秒間攪拌した。攪拌直後の泡の厚さを、ガラス製ビーカーの外側から測定した。結果を表1に示した。
【0027】
【表1】

【0028】
本発明の製造方法により得られた溶液(溶液1〜4)を90℃に加熱して攪拌する際に生じる泡の量は、比較例および対照の製造方法により得られた溶液(溶液5)について同様に加熱・攪拌した際に生じる泡の量に比べて著しく少なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルを添加することを特徴とするゼリー飲料の製造方法。

【公開番号】特開2009−125057(P2009−125057A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306968(P2007−306968)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】