説明

ソフトキャンディーの製造方法

【課題】フォンダンを使用することなく、糖アルコール微粉末を使用して簡便に、滑らなテクスチャーを持ち、経時安定性に優れたソフトキャンディーの製造方法を提供する。
【解決手段】60重量%:40重量%〜99重量%:1重量%の割合の6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(以下、「1,6−GPS」とする)と1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール(以下、「1,1−GPM」とする)との混合物、非結晶性の炭水化物、植物性油脂、及び乳化剤を水に溶解する工程、並びに、該溶解液に、シーディング剤として平均粒径が30μm以下の粉砕微粉末である、1,6−GPSと1,1−GPMとの混合物を直接添加する工程を経る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトキャンディーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトキャンディーは、ハードキャンディーと比較して、一般に水分含量が多く、しかも油脂が配合されて乳化状態にある、白濁したやわらかめのキャンディーである。ソフトキャンディーは口の中で適当に噛んで、そのチューイング性や弾力を楽しむものである
【0003】
特許文献1は、砂糖を使用したソフトキャンディーを記載する。当該ソフトキャンディーは、糖類、植物性油脂、乳化剤、及び結晶の大きさが30μm未満の砂糖微結晶を配合する。当該砂糖微結晶はフォンダンとして添加される。砂糖の粉末は固結しやすく、安定性が悪いため、フォンダンとして添加するのが一般的である。
特許文献2及び特許文献3は、粉糖の固結防止法を記載する。粉糖は非常に固結しやすく、取扱いが難しい。そのため、上記固結防止方法が開発されている。
【0004】
しかし、砂糖を主な原料として製造されたソフトキャンディーは歯につきやすく、虫歯の原因になり、カロリーも高い。そのために、シュガーレスタイプのソフトキャンディーが多数提案されている。シュガーレスソフトキャンディーの製造では、砂糖と水あめの代わりに糖アルコールを用いる。
【0005】
特許文献4は、シュガーレスソフトキャンディーを記載する。当該ソフトキャンディーでは、砂糖微結晶の代わりに、糖アルコールの微結晶を用いる。当該微結晶はフォンダンとして添加される。
糖アルコールも、砂糖と同様に固結しやすいので、フォンダンとして添加されるのが一般的である。しかし、糖アルコールによっては、フォンダンの製造方法は確立されていない。
【0006】
特許文献5及び特許文献6は、還元パラチノースを使用してシュガーレスソフトキャンディーを調製することを記載する。
特許文献5は、主原料となる糖アルコールとしてパラチニットPNを使用し、種結晶としてパラチニットPNPを使用したシュガーレスソフトキャンディーを記載する。
特許文献6は、1,6−GPS濃厚混合物(67%1,6−GPS、33%1,1−GPM)及び1,1−GPM濃厚混合物(85%1,1−GPM、15%1,6−GPS)を使用したシュガーレスソフトキャンディーを記載する。
【0007】
【特許文献1】国際公開第02/09530号パンフレット
【特許文献2】特公平5−28120号明細書
【特許文献3】特開平4−71500号明細書
【特許文献4】特開2007−289129号明細書
【特許文献5】特開2006−158234号明細書
【特許文献6】特表平11−507243号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フォンダンを使用することなく、糖アルコール微粉末を使用して簡便に製造でき、滑らかであり(好ましいテクスチャーを持つ)、経時安定性に優れ、しかも虫歯の原因にならないシュガーレスキャンディーの開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、60重量%:40重量%〜99重量%:1重量%の割合の6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(以下、「1,6−GPS」とする)と1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール(以下、「1,1−GPM」とする)との混合物(1,6−GPSと1,1−GPMとの混合物を還元パラチノース(商標)(一般名「イソマルト」、「還元イソマルチュロース」ともいう。以下、本明細書では還元パラチノースという。)という。)、非結晶性の炭水化物、植物性油脂、及び乳化剤を水に溶解する工程、並びに、該溶解液に、シーディング剤として平均粒径が30μm以下の粉砕微粉末である還元パラチノースを直接添加する工程を含む、ソフトキャンディーの製造方法を提供する。好ましくは、上記非結晶性の炭水化物として、非結晶性の糖アルコールを用いる。
【0010】
好ましくは、上記シーディング剤として、1,6−GPSと1,1―GPMの割合が40重量%:60重量%〜99重量%:1重量%である還元パラチノースが用いられる。
【0011】
好ましくは、上記シーディング剤として、1,6−GPSと1,1―GPMの割合が60重量%:40重量%〜99重量%:1重量%である還元パラチノースが用いられる。
【0012】
好ましくは、上記シーディング剤として、1,6−GPSと1,1―GPMとの割合が75重量%:25重量%〜99重量%:1重量%である還元パラチノースが用いられる。
【0013】
好ましくは、上記シーディング剤の16%粒径は70μm以下であり且つ84%粒径は11μm以下である。
【0014】
好ましくは、上記平均粒径は、25μm以下である。
【0015】
本発明はさらに、1,6−GPSと1,1−GPMの割合が60重量%:40重量%〜99重量%:1重量%である還元パラチノース、非結晶性の炭水化物、植物性油脂、及び乳化剤を水に溶解する工程、並びに、該溶解液に、シーディング剤として平均粒径が30μm以下の粉砕微粉末である還元パラチノースを直接添加する工程を含む方法により製造されたソフトキャンディーを提供する。好ましくは、上記非結晶性の炭水化物は、非結晶性の糖アルコールを含む。
【0016】
好ましくは、上記シーディング剤は、1,6−GPSと1,1―GPMの割合が40重量%:60重量%〜99重量%:1重量%である還元パラチノースである。
【0017】
好ましくは、上記シーディング剤は、1,6−GPSと1,1―GPMの割合が60重量%:40重量%〜99重量%:1重量%である還元パラチノースである。
【0018】
好ましくは、上記シーディング剤は、1,6−GPSと1,1―GPMとの割合が75重量%:25重量%〜99重量%:1重量%である還元パラチノースである。
【0019】
好ましくは、上記シーディング剤の16%粒径は70μm以下であり且つ84%粒径は11μm以下である。
【0020】
好ましくは、上記平均粒径は25μm以下である。
【0021】
本発明はさらに、1,6−GPSと1,1−GPMとの混合物の粉砕微粉末である、ソフトキャンディーの製造の為のシーディング剤を提供し、ここで該粉砕微粉末の平均粒径は30μm以下である。より好ましくは、上記シーディング剤の16%粒径は70μm以下であり且つ84%粒径は11μm以下である。より好ましくは、上記平均粒径は25μm以下である。
【0022】
本発明は、糖アルコールである還元パラチノースで60重量%:40重量%〜99重量%:1重量%の割合の1,6−GPSと1,1−GPMからなる1,6−GPS濃縮混合物を配合し、還元パラチノース、好ましくは前記1,6−GPS濃縮混合物を粉砕し、得られた微粉末をシーディング剤として用いて製造されたソフトキャンディーを提供する。
【0023】
また、本発明は、糖アルコールである60重量%:40重量%〜99重量%:1重量%の割合の1,6−GPSと1,1−GPMからなる1,6−GPS濃縮混合物を主原料として配合し、還元パラチノース、好ましくは前記1,6−GPS濃縮混合物を粉砕し、得られた微粉末をシーディング剤として用いた、滑らかであり、経時安定性に優れたソフトキャンディーの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、舌触りが滑らかであり、経時安定性に優れたソフトキャンディーを製造することができる。
【0025】
本発明において用いられるシーディング剤の平均粒径は30μm以下である。このため、ソフトキャンディー中に細かい結晶を晶出させることができる。その結果、舌触りが滑らかな製品を製造することができると考えられる。また細かい結晶は比表面積が大きく非結晶成分をその結晶表面で保持安定化させることから、分離やダレが起こりにくく経時安定性に優れた製品を製造することができると考えられる。本発明のシーディング剤である還元パラチノースの微粉末は、保存性に優れ、取り扱いが容易であるため、ソフトキャンディーの工業生産に用いることができる。さらに、本発明は、好ましくは、1,1−GPMより1,6−GPSを多く含むシーディング剤を用いて、ソフトキャンディーを製造する方法を提供する。
【0026】
本発明の製造方法により製造されたソフトキャンディーは、舌触りが滑らかである。また、本方法に従い製造されたソフトキャンディーは製品中に安定した結晶を保つ。それにより、保存中も滑らかさが保たれ、微細結晶の成長も無く、分離も起こらない。また、細かい結晶は比表面積が大きく非結晶成分をその結晶表面で保持安定化させることから、分離やダレが起こりにくく経時安定性に優れたソフトキャンディーが提供される。
また、従来、1,1−GPMは1,6−GPSと比べて、結晶性が良く、粉末化しやすいため、シーディング剤としてより適当であると考えられていた。しかし、本発明において用いられるシーディング剤の平均粒径は30μm以下であるため、シーディング剤中の1,6−GPS及び1,1−GPMの割合がいかなるものであっても、舌触り、固さ、保形性が特に優れたソフトキャンディーを製造することができる。さらに、微細結晶の成長が無く、分離も起こらない。
【0027】
さらに、本発明によって、ソフトキャンディーの製造においてフォンダンを使用する必要がなくなった。これにより、フォンダンの製造の為に必要とされる多くの時間を節約できる。さらに、フォンダンを製造する為の複数の装置も不要となる。さらに、フォンダンの製造に要する人員コストの削減が可能である。従って、従来よりも低コスト且つ簡便にソフトキャンディーを製造することができる。
【0028】
本発明の1,6−GPSと1,1−GPMとの混合物であって、平均粒径が30μm以下の粉砕微粉末は、砂糖の微粉末よりも固結しにくいことが発見された。それ故に、本発明の微粉末は、保存性に優れ、取り扱いが容易である。ソフトキャンディーの工業生産に容易に用いることができる。さらに、その他のシュガーレス製品の製造においても容易に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の製造方法では、還元パラチノースが用いられる。還元パラチノースは結晶性糖アルコールとして用いられる。結晶性糖アルコールとは、所定の温度で、水溶液中の所定割合の糖アルコールが結晶化する糖アルコールである。本発明の製造方法では、上記溶解する工程で用いられる還元パラチノースと、シーディング剤としての還元パラチノースとが夫々用いられる。特に、上記溶解する工程で用いられる還元パラチノースは、60重量%:40重量%〜99重量%:1重量%の割合の1,6−GPSと1,1−GPMとからなる1,6−GPS濃縮混合物(以下、「1,6−GPS濃縮混合物」という)を使用する。この還元パラチノースとして、例えばパラチニットGS(パラチニットはズ−ドツツカ− アクチエンゲゼルシヤフト マンハイムの登録商標である。パラチニットGSは、製品中の1,6−GPSが1,6−GPS と1,1−GPMの和に対して80±5%以上である1,6−GPS濃縮混合物である。三井製糖株式会社)を用いることができる。
【0030】
また、本発明において、シーディング剤の原料として使用される還元パラチノースは、例えばパラチニットPNタイプ(1,6−GPSと1,1−GPMのほぼ等モル混合物であり組成比が40〜60%:60〜40%、三井製糖株式会社)またはパラチニットGSタイプを使用できる。具体的にはパラチニットPNタイプとしてパラチニットPN(1,6−GPSと1,1−GPMのほぼ等モル混合物であり組成比が40〜60%:60〜40%、三井製糖株式会社)または粉末パラチニットPNP(1,6−GPSと1,1−GPMのほぼ等モル混合物であり組成比が40〜60%:60〜40%、三井製糖株式会社)、もしくはパラチニットGSタイプとしてパラチニットGS(製品中の1,6−GPSが1,6−GPSと1,1−GPMの和に対して80±5%以上である1,6−GPS濃縮混合物である。三井製糖株式会社)または粉末パラチニットGSP(製品中の1,6−GPSが1,6−GPSと1,1−GPMの和に対して80±5%以上である1,6−GPS濃縮混合物である。三井製糖株式会社製)を用いることができる。また、シーディング剤の原料として使用される還元パラチノースは、好ましくは1,6−GPS濃縮混合物を使用でき、具体的にはパラチニットGSタイプとしてパラチニットGSまたは粉末パラチニットGSPを用いることができる。
シーディング剤として用いる還元パラチノースにおいて、1,6−GPSと1,1−GPMの組成比はいかなるものであってもよいが、好ましくは40%:60%〜99%:1%であり、より好ましくは60%:40%〜99%:1%であり、さらにより好ましくは75%:25%〜99%:1%である。
シーディング剤として、平均粒径が30μm以下の微粉砕粉末が用いられる。該微粉砕粉末は、粉砕及び分級によって得ることができる。本発明の好ましい実施態様において、シーディング剤として、上記還元パラチノースを粉砕したものを分級し、平均粒径が30μm以下、好ましくは25μm以下に分級したものを用いることができる。
上記粉砕は粉砕機により行われうる。粉砕機の例として、パルベライザーが挙げられるがこれに限定されない。上記分級は分級機により行われうる。分級機の例として、ミクロンセパレーターが挙げられるがこれに限定されない。また、粉砕機と分級機とが結合したものを用いてもよい。
シーディング剤の所望の平均粒径が得られることを条件として、上記の装置以外の装置も使用されうる。また、粉砕機等の装置を用いずに、シーディング剤の所望の平均粒径が得られてもよい。
さらに、シーディング剤は好ましくは、所望の16%粒径及び84%粒径を有する。16%粒径は好ましくは70μm以下である。84%粒径は好ましくは11μm以下である。
【0031】
シーディング剤を上記溶解液に添加するタイミングや添加時の温度は任意に定められる。本発明においてシーディング剤は分級されており、どのタイミング又はどの温度でも添加することが可能である。
【0032】
本明細書において、非結晶性の炭水化物とは、水溶液の状態でいかなる濃度、温度域においても結晶化しない炭水化物をいう。非結晶性の炭水化物には、非結晶性の糖質と非結晶性の食物繊維とが含まれる。非結晶性の糖質としては、水飴、カップリングシュガー、オリゴ糖類(例えば、乳果オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖など)、並びにデンプン、プルラン、デキストリンなどの多糖類、並びに非結晶性糖アルコールなどが挙げられるがこれらに限定されない。非結晶性の食物繊維としては、グルコマンナン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、セルロース、アラビアガム、プルラン、寒天、ビートファイバー、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられるがこれらに限定されない。また、これらは単独で用いてもよく、または2つ以上の混合物を使用することもできる。
本明細書において、非結晶性の糖アルコールとは、水溶液の状態でいかなる濃度、温度域においても結晶化しない糖アルコールをいう。非結晶性の糖アルコールとしては、還元澱粉糖化物やその同義語である還元澱粉加水分解物として市販されている糖アルコールが挙げられる。これらには、還元麦芽糖水あめ、還元水飴、マルチトールシロップなどの品名で販売されているものも含まれるがこれらに限定されない。また、これらは単独で用いてもよく、または2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0033】
本明細書において、植物性油脂とは、植物の種々な部分より得られる油脂をいう。
具体的には、菜種、大豆、ヒマワリ種子、綿実、落花生、米糠、米、コーン、サフラワー、オリーブ、ゴマ、ラッカセイ、ベニバナ、シソ、ヒマワリ、胡麻、アマ、カカオ、ヤシ、アブラヤシ、沙羅双樹、ブドウ種子、エゴマ、藻類、各種ナッツなどから採取した植物油脂、あるいは必要に応じて水素添加、分別、エステル交換などを施した加工油などが挙げられるがこれらに限定されない。また、これらは単独で用いてもよく、または2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0034】
本明細書において、乳化剤とは、乳濁液製造を容易にし、安定に保つ作用を持つ物質をいう。乳化剤として、食用乳化剤を用いることが好ましい。具体例としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸あるいは乳酸等の有機酸モノグリセリド、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンなどを挙げることができるがこれらに限定されない。また、これらは単独で用いてもよく、または2つ以上の混合物を使用することもできる。
ここで、グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンと脂肪酸のエステルの外、グリセリン有機酸脂肪酸エステル(例えば、グリセリン酢酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルなど)、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステルが含まれる。またレシチンとしては、大豆レシチンおよび卵黄レシチンなど油分を含む液状レシチン、液状レシチンから油分を除き乾燥した粉末レシチン、液状レシチンを分別精製した分別レシチン並びにレシチンを酵素で処理した酵素分解レシチンおよび酵素処理レシチンなどが挙げられる。
【0035】
本明細書において、ゼラチンとは、コラーゲンを含む物質から煮沸等人為的処理により得られるものをいう。豚由来、牛由来、魚由来などのタイプのゼラチンを用いることができる。
【0036】
本明細書において、水は、ソフトキャンディー等の食品製造に使用可能なものであれば、いかなるものであってもよい。
【0037】
本明細書において、シーディング剤とは、ソフトキャンディー中に細かい結晶を晶出させる為に用いる剤をいう。
【0038】
本明細書において、平均粒径とは、粒度分布の平均値をいう。平均粒径は、島津遠心沈降式粒度分布測定装置(型番:SA-CP3L、株式会社島津製作所製)を用いて測定される。
【0039】
本明細書において、16%粒径とは、粒径が大きいものから積算(重量基準)した場合、この粒径以上が16.0%あることをいう。また、本明細書において、84.0%粒径とは粒径が大きいものから積算した場合、この粒径以上が84.0%あることをいう。平均粒径と16.0%粒径の差、平均粒径と84.0%粒径の差が小さいほど粒度分布が平均粒径に近いことを示し、差が大きいほど粒度分布が平均粒径から広がっていることを示す。
【0040】
本明細書において、粉砕微粉末とは、大体数十ミクロンの粉末である。一般的には、粉砕微粉末は、粒子又は固形物を粉砕して得られる。しかし、上記粉末が得られるならば、粉砕によらなくてもよい。本発明における微粉砕粉末は好ましくは所定の平均粒径を有し、さらにより好ましくは、所定の平均粒径及び所定の16%粒径及び84%粒径を有する。当該平均粒径は好ましくは30μm以下であり、より好ましくは25μm以下である。好ましくは16.0%粒径は70μm以下である。好ましくは84%粒径は11μm以下である。
【0041】
一つの好ましい実施態様において、本発明のソフトキャンディーの製造方法ではまず、1,6−GPS濃縮混合物及び非結晶性の炭水化物に加水して加温しながら110〜140℃まで煮詰め、その後冷却しながら水で膨潤させたゼラチンを添加し溶解する。ここに植物油脂、乳化剤及び酸味料を添加する。最後に前記シーディング剤を添加する。シーディング剤を添加した後、強力撹拌により乳化させるとともに微細結晶を晶出させる。強力撹拌機としては、泡立てに用いるビーター状のものが好ましいが、通常のソフトキャンディーの撹拌に用いるニーダーも用いることができる。シーディング剤を添加する際に、同時に香料、果汁を添加することができる。冷却後適当なホモジナイザーで混合する。以上の工程により得られた粘調な混合物を42〜47℃まで冷却する。約10分間この混合物を引き伸ばしながら練り(プーリング)、適当な大きさに成形又はカットし、ソフトキャンディーを得る。
植物油脂、乳化剤及び酸味料を添加する順は、適宜変更されうる。
シーディング剤を添加するときの温度は、上記溶解液の温度が、シーディング剤が溶解する温度未満であることが好ましいが、シーディング剤が完全に溶解しないことを条件として、上記温度以上の温度で添加されてもよい。
【0042】
〔実施例〕
下記に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、表中の配合量はすべて重量%である。
【0043】
(シーディング剤用微粉末の製造)
パラチニットGS及びパラチニットPNそれぞれを粉砕機(パルベライザーACM−10、ホソカワミクロン株式会社製)により粉砕し、分級機(ホソカワミクロン株式会社製、ミクロンセパレーターMS−2)の回転数を変化させることにより、平均粒径29.5μm、23.3μm、19.6μm、18.4μm、15.9μm、33.0μmの6種類のパラチニットGS粉砕品サンプル、および平均粒径28.2μm、24.3μm、22.9μmの3種類のパラチニットPN粉砕品サンプルが得られた。これら9種類のサンプルをシーディング剤とした。また、パラチニットGSPの平均粒径実測値34.7μmのサンプル、およびパラチニットPNPの平均粒径実測値34.2μmのサンプルを比較のためのシーディング剤とした。
【0044】
表1はパラチニットGSの粉砕結果を、表2はパラチニットPNの粉砕結果を示す。粉砕品、GSP、及びPNPの平均粒径及び粒度分布は島津遠心沈降式粒度分布測定装置(型番:SA-CP3L、島津製作所製)を用いて測定した。平均粒径は分布の平均値、16.0%粒径とは粒径が大きいものから積算(重量基準)した場合、この粒径以上が16.0%あったということを示し、84.0%粒径とは粒径が大きいものから積算した場合、この粒径以上が84.0%あったということを示す。平均粒径と16.0%粒径の差、平均粒径と84.0%粒径の差が小さいほど粒度分布が平均に近いことを示し、差が大きいほど粒度分布が平均から広がっていることを示す。平均粒径が小さくなるほど、大きい粒子が減少するため粒度分布が狭い範囲に収まった。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【実施例1】
【0047】
(シュガーレスソフトキャンディーの製造)
シュガーレスソフトキャンディーの原料配合は表3の通りである。
パラチニットGS、還元水飴及び水を混合し、140℃まで煮詰めた。ここにゼラチン溶液を添加し、よく溶解撹拌した。植物性油脂、乳化剤、クエン酸、シーディング剤として前記粉末2、香料を添加し、高速撹拌機(ハンドミキサーHM300、株式会社東芝製)でよく混合撹拌した。44℃まで冷却した混合物を、プーリングすることにより微細結晶の晶出を促進し、径1cm、長さ1.5cm程度に成形した。
【0048】
得られたシュガーレスソフトキャンディーは、実施例1のソフトキャンディーとして、後の試験に用いた(以下、実施例1のソフトキャンディーという)。
【0049】
【表3】

【実施例2】
【0050】
シーディング剤として上記粉末2を用いた以外は実施例1の方法に従ってシュガーレスソフトキャンディーを製造した(以下、実施例2のソフトキャンディーという)。
【実施例3】
【0051】
シーディング剤として上記粉末3を用いた以外は実施例1の方法に従ってシュガーレスソフトキャンディーを製造した(以下、実施例3のソフトキャンディーという)。
【実施例4】
【0052】
シーディング剤として上記粉末4を用いた以外は実施例1の方法に従ってシュガーレスソフトキャンディーを製造した(以下、実施例4のソフトキャンディーという)。
【実施例5】
【0053】
シーディング剤として上記粉末5を用いた以外は実施例1の方法に従ってシュガーレスソフトキャンディーを製造した(以下、実施例5のソフトキャンディーという)。
【実施例6】
【0054】
シーディング剤として上記粉末7を用いた以外は実施例1の方法に従ってシュガーレスソフトキャンディーを製造した(以下、実施例6のソフトキャンディーという)。
【実施例7】
【0055】
シーディング剤として上記粉末8を用いた以外は実施例1の方法に従ってシュガーレスソフトキャンディーを製造した(以下、実施例7のソフトキャンディーという)。
【実施例8】
【0056】
シーディング剤として上記粉末9を用いた以外は実施例1の方法に従ってシュガーレスソフトキャンディーを製造した(以下、実施例8のソフトキャンディーという)。
【0057】
[比較例1]
シーディング剤として上記粉末6を用いた以外は実施例1の方法に従ってシュガーレスソフトキャンディーを製造した(以下、比較例1のソフトキャンディーという)。
【0058】
[比較例2]
シーディング剤として上記パラチニットGSPを用いた以外は実施例1の方法に従ってシュガーレスソフトキャンディーを製造した(以下、比較例2のソフトキャンディーという)。
【0059】
[比較例3]
シーディング剤として上記パラチニットPNPを用いた以外は実施例1の方法に従ってシュガーレスソフトキャンディーを製造した(以下、比較例3のソフトキャンディーという)。
【実施例9】
【0060】
(官能検査)
実施例1〜8および比較例1〜3のソフトキャンディー夫々について、製造翌日の舌触り(ざらつき)および噛んだときの硬さについて、8人のパネラーによる官能検査による試験をおこなった。製造直後(翌日も入る)のソフトキャンディーの評価で最も重要なのは、滑らかさである。また、すべてのソフトキャンディーにおいて形状はしっかりしており、保形性の基準(初期値)であるため評価を記載しなかった。
【0061】
食べたときの舌触りは、◎◎が非常に滑らか、◎が滑らか、◎○がやや滑らか、○が普通、○△がややざらつく、△がざらつく、×が非常にざらつく、の7段階で評価した。
【0062】
噛んだときの硬さは、◎◎が非常にやわらかい、◎がやわらかい、◎○がやややわらかい、○が普通、○△がやや硬い、△が硬い、×が非常に硬い、の7段階で評価した。
【0063】
8人のパネラーのうちもっとも多くの回答を得た記号を表4に示した。なお、すべての回答の記号は、半分(4人)以上のパネラーが選択した記号である。
【0064】
【表4】

【0065】
表4の結果は製造翌日であるため、製造後すぐの評価結果とすることができる。これによると、すべてのシュガーレスソフトキャンディーが形を保持しており、噛んだときの硬さが普通であった。舌触りについては、実施例1〜8のすべてにおいて普通〜非常に滑らかであった。しかし、比較例1および比較例2のソフトキャンディーはややざらつくおよび普通であり、比較例3のソフトキャンディーはざらつきがあった。シーディング剤の平均粒径が小さいほど、舌触りは良い評価であった。パラチニットGSタイプの場合、平均粒径30μm以下(実施例1〜5)において、舌触りについてほとんど差がなくよい評価であり、パラチニットPNタイプの場合、平均粒径25μm以下において、舌触りについて好ましい評価であった。
【0066】
また、実施例1〜5および実施例6〜8の結果を夫々、合わせて比較すると、パラチニットGSタイプの粉砕品の方がパラチニットPNタイプの粉砕品より若干、舌触りについて評価が良かった。
【実施例10】
【0067】
(保存安定性)
1ヶ月保存後の製品の安定性を比較した。経時変化を見る場合、滑らかさが保たれていることと、冬場の低温化における硬化がないこと、夏場の高温化におけるダレがないことが重要である。そこで、舌触り(ざらつき)および硬さについては5℃、相対湿度50%の冬場の条件で、保形性については35℃、相対湿度75%の夏場の条件で、実施例1〜8および比較例1〜3のソフトキャンディー夫々を1ヶ月間保存し、保存後の製品の舌触り、噛んだときの硬さ、保形性について、8人のパネラーによる官能検査による試験をおこなった。
【0068】
食べたときの舌触りは、◎◎が非常に滑らか、◎が滑らか、◎○がやや滑らか、○が普通、○△がややざらつく、△がざらつく、×が非常にざらつく、の7段階で評価した。
【0069】
噛んだときの硬さは、◎◎が非常にやわらかい、◎がやわらかい、◎○がやややわらかい、○が普通、○△がやや硬い、△が硬い、×が非常に硬い、の7段階で評価した。
【0070】
保形性は、◎が変化なし、◎○がややべたつきあり、○がべたつきあり、○△がややにじみあり、△がにじみあり、△×が角の変形あり、×が全体的な変形あり、の7段階で評価した。
【0071】
8人のパネラーのうちもっとも多くの回答を得た記号を表5に示した。なお、すべての回答の記号は、半分(4人)以上のパネラーが選択した記号である。
【0072】
【表5】

【0073】
比較例1〜3のソフトキャンディーは、舌触りは全体的に悪くなっており、ざらつきが目立った。しかし、実施例1〜8のソフトキャンディーは比較的滑らかさが保持されており、比較例1〜3のソフトキャンディーより舌触りが優れていた。
【0074】
硬さについては、比較例1〜3のソフトキャンディーが硬くなったのに対し、実施例1〜8のソフトキャンディーが比較的やわらかさを保持していた。
【0075】
また、保形性については、比較例1〜3のソフトキャンディーはすべてダレが認められたのに対し、実施例のソフトキャンディーは比較的形が保持されていた。
【0076】
パラチニットGSタイプの粉砕品の場合、平均粒径30μm以下(実施例1〜5)では、ほとんど差がなく、舌触り、硬さ及び保形性においてよい評価であり、パラチニットPNタイプの粉砕品(実施例6〜8)の場合、平均粒径25μm以下の方が好ましい評価であった。また、シーディング剤の平均粒径が小さいほど、舌触り、硬さ及び保形性において良い評価となる傾向にあった。また、実施例1〜5および実施例6〜8の結果を夫々合わせて比較すると、パラチニットGSタイプの粉砕品の方がパラチニットPNタイプの粉砕品より若干、舌触り、硬さ及び保形性において評価が良かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
60重量%:40重量%〜99重量%:1重量%の割合の6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール(以下、「1,6−GPS」とする)と1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール(以下、「1,1−GPM」とする)との混合物、非結晶性の炭水化物、植物性油脂、及び乳化剤を水に溶解する工程、並びに、該溶解液に、シーディング剤として平均粒径が30μm以下の粉砕微粉末である、1,6−GPSと1,1−GPMとの混合物を直接添加する工程を含む、ソフトキャンディーの製造方法。
【請求項2】
該非結晶性の炭水化物として、非結晶性の糖アルコールを用いる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
該シーディング剤として、1,6−GPSと1,1―GPMの割合が40重量%:60重量%〜99重量%:1重量%である1,6−GPSと1,1−GPMとの混合物を用いる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
該シーディング剤として、1,6−GPSと1,1―GPMの割合が60重量%:40重量%〜99重量%:1重量%である1,6−GPSと1,1−GPMとの混合物を用いる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
該シーディング剤として、1,6−GPSと1,1―GPMとの割合が75重量%:25重量%〜99重量%:1重量%である1,6−GPSと1,1−GPMとの混合物を用いる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
該シーディング剤の16%粒径が70μm以下であり且つ84%粒径が11μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
該平均粒径が25μm以下であり、該シーディング剤の16%粒径が70μm以下であり且つ84%粒径が11μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
1,6−GPSと1,1−GPMとの混合物の粉砕微粉末である、ソフトキャンディーの製造の為のシーディング剤であって、該粉砕微粉末の平均粒径が30μm以下である前記シーディング剤。
【請求項9】
該シーディング剤の16%粒径が70μm以下であり且つ84%粒径が11μm以下である、請求項8に記載のシーディング剤。
【請求項10】
該平均粒径が25μm以下である、請求項8又は9に記載のシーディング剤。