説明

ソリッドケーブルの中間接続構造

【課題】接続部絶縁層から脱油し難いソリッドケーブルの中間接続構造を提供する。
【解決手段】ソリッドケーブル1のケーブルコア1cの端部と、導体10同士を接続する導体接続部20と、ケーブルコア1cの端部及び導体接続部20の外周に絶縁材を巻回して構成される接続部絶縁層21と、接続部絶縁層21の外周に形成される金属シース22と、金属シース22の外周に形成される防食層23とを具える。接続部絶縁層21には、絶縁油が含浸されている。接続部絶縁層21と金属シース22との間には、ケーブル絶縁油よりも動粘度が高い絶縁油からなる高粘度部を具える。高粘度部が存在することで、防食層23の形成時に加熱されても、接続部絶縁層21に含浸された絶縁油が外周側に移動し難く、脱油が生じ難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁油が含浸された絶縁層を有するソリッドケーブル同士を接続する中間接続構造に関する。特に、接続部絶縁層から絶縁油が抜け出ることを抑制することができるソリッドケーブルの中間接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長距離大容量の直流電力ケーブルとして、導体の外周にクラフト紙を巻回して、高粘度の絶縁油を含浸させた絶縁層を具えるソリッドケーブルが利用されている。また、使用温度の更なる高温化、大容量化を図ることが可能なソリッドケーブルとして、ポリプロピレンとクラフト紙との複合テープを巻回して、中粘度の絶縁油を含浸させた絶縁層を具えるソリッドケーブルが提案されている(特許文献1)。
【0003】
長距離の電力線路を形成する場合、ソリッドケーブル同士を接続する中間接続部が設けられる。この中間接続部には、予め工場で組み立てられるFJ(Factory joint)と呼ばれる接続部がある。FJの具体的な組立手順は、以下の通りである(図1参照)。(1)ソリッドケーブル1のケーブルコア1cの端部においてケーブル油浸絶縁層11を構成するテープ状の絶縁材の一部を除去したり巻き解して導体10の端部を露出させる→(2)露出させた導体10同士を溶接などで接続する→(3)ケーブル油浸絶縁層11において絶縁材が除去された箇所を埋めるように別のテープ状の絶縁材を巻回して、ケーブルコア1cの端部及び導体接続部20の外周を覆うと共に、ケーブル油浸絶縁層11の絶縁材を巻き戻して接続部絶縁層21を形成する→(4)接続部絶縁層21の外周に金属シース22を形成する→(5)金属シース22の外周にポリエチレン(PE)テープを巻回して溶融し、防食層23を形成する→(6)更に、補強層24、外装25などを設ける。
【0004】
接続部絶縁層21は、予めケーブル絶縁油と同じ絶縁油を含浸させた絶縁材を巻回して形成する。巻回は、例えば、ケーブル絶縁油よりも粘度が低い絶縁油をかけながら行う。また、金属シース22を形成した後、金属シース22の一部に孔をあけ、この孔から金属シース22内に絶縁油を注入し、金属シース22と接続部絶縁層21との間に絶縁油を満たしている。この注入する絶縁油には、ケーブル絶縁油と同じものを用いる。なお、上記絶縁油を注入した後、金属シース22に設けた孔を塞ぐ。
【0005】
【特許文献1】特開平11-224546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の中間接続構造では、その施工時に脱油箇所が生じる恐れがあり、この脱油箇所の存在により絶縁性能の低下を招く恐れがある。
【0007】
上述のように金属シースの外周に防食層を形成する際、ポリエチレンテープを溶融するために加熱する。この加熱により、金属シースの内周側に存在する接続部絶縁層に含浸させた絶縁油や、かけ油に用いた絶縁油、金属シースの形成後に注入した絶縁油などが膨張して移動し、中間接続部に脱油箇所が生じる恐れがある。例えば、重力によって、金属シースと接続部絶縁層との間において下方側に絶縁油が移動し、同上方側に脱油箇所が生じる恐れがある。また、接続部絶縁層に含浸された絶縁油などが金属シース側(外周側)に移動して、金属シースと接続部絶縁層との間の隙間に抜け出る恐れがある。脱油により絶縁油が存在しない箇所は、電気的な弱点部分となり、このような脱油箇所の存在により、ケーブルの絶縁特性の低下を招く恐れがある。
【0008】
そこで、本発明の目的の一つは、接続部絶縁層から絶縁油が抜け出し難いソリッドケーブルの中間接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属シースと接続部絶縁層との間に高粘度部を具えることで上記目的を達成する。本発明のソリッドケーブルの中間接続構造は、導体の外周にケーブル油浸絶縁層を具えるソリッドケーブル同士を接続する接続構造に係るものであり、導体と導体を覆うケーブル油浸絶縁層とが段階的に露出された一対のケーブルコアの端部と、導体接続部と、接続部絶縁層と、金属シースと、防食層とを具える。導体接続部は、上記ケーブル油浸絶縁層から露出された導体同士を接続している箇所である。接続部絶縁層は、上記ケーブルコアの端部及び上記導体接続部の外周にテープ状の絶縁材を巻回して構成され、絶縁油が含浸されている。金属シースは、上記接続部絶縁層の外周に形成されている。防食層は、上記金属シースの外周に形成されている。そして、この中間接続構造は、上記金属シースと上記接続部絶縁層との間に、上記ケーブル油浸絶縁層に含浸されているケーブル絶縁油よりも動粘度が高い材料からなる高粘度部を具える。
【0010】
中間接続構造における防食層の形成にあたり防食層の構成材料を加熱すると、金属シース及びその内周側に存在する構成部材も加熱される。特に、金属シースの直下に位置する高粘度部が加熱される。しかし、高粘度部は、動粘度が高い材料から構成されるため、上記加熱により移動し難い。また、金属シースと接続部絶縁層との間に上述の移動し難い高粘度部が存在することで、接続部絶縁層に含浸された絶縁油などが加熱されて外周側に移動しようとしても、高粘度部が障害壁として機能し、当該絶縁油を高粘度部よりも内側に極力留めようとする。従って、接続部絶縁層に含浸された絶縁油などが、金属シースと接続部絶縁層との隙間に移動することが抑制される。このように接続部絶縁層に含浸された絶縁油などの移動を低減できると共に、高粘度部自体が当該隙間内に存在する絶縁油の油流抵抗要素として機能するため、中間接続部に脱油箇所が生じることを抑制することができる。以下、本発明をより詳細に説明する。
【0011】
高粘度部の構成材料は、例えば、ケーブル絶縁油よりも動粘度が高い絶縁油が挙げられる。特に、ケーブル絶縁油を後述するように中粘度油とする場合、ケーブル絶縁油よりも動粘度が高い中粘度油を利用したり、60℃における動粘度が500mm2/s(500cst)以上である高粘度油を利用することができる。このような動粘度が高い絶縁油を用いる場合、金属シースを被せる前に塗布したり、金属シースに設けた孔から注入することで、高粘度部を簡単に形成することができる。即ち、金属シースの孔から注入する絶縁油として、従来よりも動粘度の高い絶縁油を利用する。注入する際、絶縁油を加熱して粘度を下げた状態とすると、注入し易い。
【0012】
或いは、高粘度部は、絶縁油を含有しており、この絶縁油として、ケーブル絶縁油と同一の絶縁油をベース油とし、このベース油に増粘剤が添加された構成が挙げられる。
【0013】
上記構成によれば、ベース油に対して増粘剤の含有量を調整したり、ベース油自体の動粘度を選択することで、所望の動粘度の絶縁油を容易に得ることができる。特に、ケーブル絶縁油が後述の中粘度油であり、このケーブル絶縁油と同じ絶縁油をベース油とすると、注入作業が行い易く好ましい。例えば、ベース油には、製品の粘度範囲が広いポリブデン油が挙げられる。増粘剤には、絶縁油と混じることにより絶縁油の粘性を高められる任意のものを利用することができ、例えば、ポリイソブチレンや後述するゴム系素材などが挙げられる。
【0014】
本発明の一形態として、ケーブル絶縁油が60℃における動粘度が10mm2/s(10cst)以上500mm2/s(500cst)未満である構成が挙げられる。また、接続部絶縁層を構成する絶縁材に含浸される絶縁油が上記ケーブル絶縁油と同一である構成が挙げられる。
【0015】
ケーブル絶縁油や接続部絶縁層に含浸される絶縁油として、上記中粘度油を用いると共に、後述するようにケーブルの油浸絶縁層や中間接続部の接続部絶縁層を複合テープにより構成することで、ケーブルの使用温度の高温化による大容量化が図れる。また、上記中粘度油を用いることで、従来の高粘度油と比較して、ケーブル油浸絶縁層や接続部絶縁層を構成する絶縁材に含浸させ易い。上記粘度を満たす絶縁油は、例えば、ポリスチレン系絶縁油、鉱油、アルキルベンゼン主体の合成油、及び重質アルキレートから選択される1種、或いは、これら2種以上の混合油などが利用できる。
【0016】
本発明の一形態として、ケーブル油浸絶縁層の少なくとも一部及び接続部絶縁層の少なくとも一部は、絶縁紙とプラスチック層とを有する複合テープを巻回してなる構成が挙げられる。
【0017】
ケーブル油浸絶縁層や接続部絶縁層はテープ状の絶縁材を巻回して構成する。この絶縁材として、絶縁紙の一面にプラスチック層を具えたり、二枚の絶縁紙の間にプラスチック層を具える複合テープを利用すると、絶縁特性が高く好ましい。複合テープは、プラスチック層の厚さの割合(k値)が高いものを利用すると、抵抗率ρが大きく、絶縁特性が高い。k値の高い複合テープは、例えばスーパーカレンダー加工を施すことで製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明ソリッドケーブルの中間接続構造は、脱油が生じ難く、金属シースの内周側に絶縁油が十分に存在することができ、絶縁特性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
[実施形態1]
図1は、本発明ソリッドケーブルの中間接続構造の部分断面模式図である。ソリッドケーブル1は、中心から順に、導体10、ケーブル油浸絶縁層11、金属シース12、防食層13、補強層14、外装15を具える。ケーブル油浸絶縁層11には、絶縁油(ケーブル絶縁油)が含浸されている。接続される一対のソリッドケーブル1は、その端部において上記各構成部材が段剥ぎされている。両ケーブル1を接続する中間接続構造2は、導体10と導体10を覆うケーブル油浸絶縁層11とが段階的に露出された一対のケーブルコア1cの端部と、この露出された導体10同士を接続する導体接続部20と、上記ケーブルコア1cの端部及び導体接続部20の外周に構成される接続部絶縁層21と、接続部絶縁層21の外周に形成される金属シース22と、金属シース22の外周に形成される防食層23とを具える。接続部絶縁層21にも絶縁油が含浸されている。この中間接続構造2の最も特徴とするところは、金属シース22と接続部絶縁層21と間に高粘度部(図示せず)を具える点にある。以下、高粘度部を中心に、各構成を説明する。
【0020】
<ソリッドケーブル>
《導体など》
導体10は、複数の銅素線を撚り合わせた、いわゆるキーストン導体が利用できる。金属シース12は、鉛により形成される。防食層13は、ポリエチレン(PE)といった樹脂により形成される。補強層14は、金属シース12にかかるフープストレスを分担する層であり、ステンレス鋼といった高抗張力材料などからなる帯状材を巻回して構成される。外装15は、鉄線が利用できる。
【0021】
《ケーブル油浸絶縁層》
ケーブル油浸絶縁層11は、導体10側から順に内部半導電層(図示せず)、主絶縁層、外部半導電層(図示せず)を具える。主絶縁層は、例えば、二枚の絶縁紙の間にプラスチック層を有する複合テープを螺旋状にギャップ巻きして構成される。複合テープは、二枚のクラフト紙の間にポリプロピレン(PP)層を有するPPLP(住友電気工業株式会社の登録商標)が利用できる。この複合テープは、PP層の厚さの割合(k値)が40〜90%である適宜なもの、例えば、スーパーカレンダー加工によりk値を高めたものを利用できる。
【0022】
なお、主絶縁層において内周側(導体直上)及び外周側(金属シースの直下)にクラフト紙を巻回してなる低ρ層を具える構成とすると、主絶縁層においてストレスが高く導体の影響を受け易い部分が受けるストレスを低減することができる。
【0023】
ケーブル油浸絶縁層11に含浸されるケーブル絶縁油として、例えば、60℃における動粘度が約200mm2/sである中粘度のポリブテン油(日本石油化学株式会社製商品名:HV-15)が利用できる。
【0024】
外部半導電層の外周には、外部半導電層と金属シース12との導通を確保するために銅線を織り込んだ布テープ(図示せず)を巻回する。
【0025】
<中間接続構造>
《導体接続部など》
導体接続部20は、各ケーブル1のケーブルコア1cの端部から露出された導体10同士を溶接したり、接続スリーブを用いて導体10同士を接続することで構成される。防食層23の外周には、ケーブル1と同様にステンレス鋼帯などにより構成される補強層24、鉄線などで構成される外装25を具える。
【0026】
《接続部絶縁層》
接続部絶縁層21は、導体接続部20及びケーブルコア1cの端部の外周に、ケーブル油浸絶縁層11と同様のテープ状の絶縁材(PPLP(登録商標))を螺旋状にギャップ巻きすると共に、ケーブル油浸絶縁層11を構成する絶縁材の一部を巻き戻して構成される。接続部絶縁層21の形成にあたり巻き足す絶縁材は、巻回前にケーブル絶縁油と同様の絶縁油(上述した中粘度油)を含浸させてから、巻回する。また、絶縁材間には、接続部絶縁層21を構成する際にかけ油として用いられた絶縁油が存在する。かけ油には、通常、ケーブル絶縁油よりも動粘度が低い絶縁油が用いられるが、ケーブル絶縁油と同じものを用いてもよい。
【0027】
ケーブル1と同様に、接続部絶縁層21の内周には内部半導電層、外周には外部半導電層、両半導電層の間に主絶縁層を具え、外部半導電層の外周には、外部半導電層と金属シース22との導通を確保するために銅線を織り込んだ布テープ(図示せず)を巻回する。
【0028】
《高粘度部》
接続部絶縁層21と後述する金属シース22との間に具える高粘度部は、ケーブル絶縁油よりも動粘度が高い絶縁油により構成される。具体的には、ケーブル絶縁油と同じ絶縁油(上述の中粘度のポリブデン油)をベース油とし、このベース油に増粘剤として、ポリイソブチレンを含有させた絶縁油が挙げられる。増粘剤の含有量は、所望の動粘度になるように適宜調整するとよい。その他、高粘度部の構成材料として、ケーブル絶縁油よりも動粘度が高い絶縁油(上述した60℃における動粘度が約200mm2/sよりも高いもの)を用いてもよい。
【0029】
《金属シース、防食層》
接続部絶縁層21の外周、より詳しくは外部半導電層の外周に設けられた上記布テープによる層の外周には、鉛管により形成された金属シース22を具える。また、この金属シース22の外周には、ポリエチレン(PE)からなる防食層23を具える。この防食層23は、PEテープを金属シース22の外周に巻回した後、加熱して溶融して形成されている。PEテープに加えて、PEチューブなどを用いて防食層を構成してもよい。
【0030】
なお、上述の高粘度部は、例えば、中間接続構造をケーブルの軸方向に直交するように切断し、この断面において、金属シースの直下に存在する絶縁油、又は上記布テープに含浸された絶縁油を抽出し、その分子量分布を調べることで特定することができる。
【0031】
<中間接続構造の組立手順>
上記構成を具える中間接続構造2は、以下のようにして形成することができる。
【0032】
接続する一対のソリッドケーブル1のケーブルコア1cの端部においてそれぞれ、各構成部材を段剥ぎして導体10を露出させる。ケーブル油浸絶縁層11の端部側を構成する絶縁材は、導体10の端部側が概ね細くなるようにテーパ状に剥ぎ取ったり、巻き解したりする。そして、露出された導体10を例えば、溶接により接合する。
【0033】
導体10同士を接続した導体接続部20の外周に、内部半導電層を形成した後、その外周に、予め絶縁油を含浸させた絶縁材を巻回すると共に、ケーブル油浸絶縁層11の巻き解した絶縁材を巻き戻して、主絶縁層を形成する。これら絶縁材の巻回中、適宜かけ油を行う。主絶縁層の外周に外部半導電層を形成して接続部絶縁層21が形成される。この外周に銅線を織り込んだ布テープを巻回する。
【0034】
上記接続部絶縁層21(布テープ)の外周に鉛管を配置し、鉛管の両端部をケーブル1の金属シース12に溶接して、金属シース22を形成する。金属シース22の一部にその表裏に貫通する孔(図示せず)を設けて、上述のケーブル絶縁油よりも動粘度が高い絶縁油(増粘剤を含有した絶縁油)を上記孔から注入する。このとき、絶縁油は、温度を高めた状態とすると、注入作業が行い易い。注入後、上記孔を塞ぐ。この注入工程により、高粘度部が形成される。次に、金属シース22の外周にポリエチレン(PE)テープを巻回する。PEテープを巻回した当該接続部分を加熱して、PEを溶融して防食層23を形成する。
【0035】
上述のように、中間接続構造(FJ)における防食層の形成にあたり、当該接続部分が加熱されても、FJにおける金属シースと接続部絶縁層との間に高粘度部が存在することで、この中間接続構造では、絶縁油の移動が生じ難い。また、この加熱により、FJにおける金属シースの内周側の構成部材、例えば、接続部絶縁層が温められ、接続部絶縁層に含浸されていた絶縁油が金属シース側に移動しようとしても、高粘度部によりその移動が規制される。そのため、FJにおける金属シースと接続部絶縁層との間の隙間に絶縁油が抜け出ることを効果的に防止することができる。例えば、FJの防食層を形成する際の加熱前において、接続部絶縁層に含浸されている絶縁油の量を100%とすると、従来例(金属シースの内周側に注入する絶縁油がケーブル絶縁油と同じ例)では、上記防食層を形成する際の加熱後において、接続部絶縁層の含浸油量が減る恐れがある。これに対して、本実施形態(上記高粘度部を具える例)では、同加熱後において、接続部絶縁層の含浸油量が加熱前と同レベル或いは若干少ない程度であると期待される。従って、この高粘度部を有する中間接続構造は、絶縁特性に優れ、このような中間接続構造を具えるソリッドケーブル線路は、所望の絶縁特性を十分に満たすと期待される。
【0036】
[実施形態2]
実施形態1では、高粘度部の構成材料に主として絶縁油を利用する構成を説明した。その他、高粘度部は、ゴムや樹脂系の有機固体材料により構成することができる。以下に、具体的な構成材料、及び形成方法を説明する。なお、上述した実施形態1の構成とこの実施形態2の構成とを組み合わせた構成としてもよいし、有機固体材料を増粘剤として利用してもよい。
【0037】
有機固体材料の形態は、例えば、粉体状、微粒状、テープ状、編組材などや、これら粉体などをテープ材に担持させたものでもよく、特に問わない。いずれの形態であっても、外部半導電層、又は銅線織込み布テープの上にこれらの素材をふりかけたり、巻回することにより、接続部絶縁層21の外周に高粘度部を設けることができる。或いは、繊維材として銅線織込み布テープの布素材の一部又は全部に代えて利用してもよい。この実施形態2では、高粘度部を形成した後、金属シース22を形成する。なお、有機固体材料で高粘度部を構成することにより、銅線織込み布テープによる外部半導電層と金属シース22との導通が難しい場合は、有機固体材料にカーボンや金属などの導電性フィラーを添加するなどして導電性を付与することが好ましい。
【0038】
(ゴム系素材)
ゴム系素材は、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリイソブチレンゴムなどの合成ゴムが挙げられる。これらの合成ゴムは、絶縁油に接すると膨潤(膨張)し、絶縁油の移動を効果的に抑制する。そのため、銅線織込み布テープ自体、又はこの布テープに近接してゴム系素材を配することで、膨潤したゴム系素材が銅線織込み布テープの隙間を圧縮したり、又は隙間に入り込んで、絶縁油の移動を抑制できる。
【0039】
(低融点樹脂)
接続部絶縁層21を構成する絶縁材の耐熱温度よりも融点が低く、この融点以上に加熱されると粘着性が増加するような材料で高粘度部を形成してもよい。例えば、上記PPLP(登録商標)を用いて接続部絶縁層21を構成する場合、PP(ポリプロピレン)の耐熱温度(約140℃)よりも融点、又は耐熱温度の低い材料として、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルアルコール(PVA)、天然ゴム(NR)、合成ゴム(イソプレンゴム)(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ウレタンゴム(U)などの高分子材料が挙げられる。
【0040】
(低ガラス転移点樹脂)
接続部絶縁層21を構成する絶縁材の耐熱温度よりもガラス転移点が低く、このガラス転移点以上に加熱されると粘着性が増加するような熱可塑性合成樹脂で高粘度部を形成してもよい。例えば、上記PPLP(登録商標)を用いて接続部絶縁層21を構成する場合、PPの耐熱温度(約140℃)よりもガラス転移点が低い樹脂は、ポリ酢酸ビニル(30℃)、ナイロン6(登録商標)(47℃)、ナイロン66(登録商標)(49℃)、ポリエチレンテレフタレート(80℃)、ポリ塩化ビニル(82℃)、ポリスチレン(100℃)などの高分子材料が挙げられる。なお、上記()内はガラス転移点(温度)を示す。
【0041】
(可塑剤含有樹脂)
可塑剤を含む素材であって、温度を上げることにより、可塑剤が滲み出て、粘着性が増加するような高分子材料で高粘度部を形成することもできる。可塑剤が添加されている熱可塑性合成樹脂や合成ゴムは、加熱されると可塑剤が滲み出て表面がねばねばした粘着性を帯びる。例えば、塩化ビニル樹脂(軟質)には可塑剤としてフタル酸エステルが添加されているため、この樹脂を加熱すると、可塑剤が表面に滲み出て粘着性を帯びてくる。従って、可塑剤を含む塩化ビニル樹脂をテープ状などとし、これを接続部絶縁層21の外周に巻回することにより高粘度部を形成することができる。その他、可塑剤を含む素材としてフタル酸ジエチルを可塑剤とするポリスチレン、ジメチルフタレートを可塑剤とするゴムなどが利用できる。
【0042】
上記低融点樹脂や低ガラス転移点樹脂、可塑剤含有樹脂を用いる場合、これらの樹脂を上述のように銅線織込み布テープ自体、又は同布テープに近接して配置した後、金属シース22、防食層23を形成する。この防食層23の形成にあたり、ポリエチレンテープの溶融温度(但し、複合テープの耐熱温度以下で、上記樹脂の融点以上の温度、又は上記樹脂のガラス転移点以上の温度、或いは上記可塑剤が滲出する温度)に加熱することで、高粘度部を構成する樹脂も加熱されて粘着性が増加し、この樹脂が銅線織込み布テープの隙間を圧縮したり、又は隙間に入り込み、上述のゴム系素材と同様に、絶縁油の移動を抑制できる。
【0043】
(流体素材)
有機固体材料以外の材料として、合成ゴム系ラテックス接着剤などの流体により高粘度部を形成してもよい。この場合、例えば、外部半導電層、又は銅線織込み布テープの外周に合成ゴム系ラテックス接着剤を直接塗布してもよい。
【0044】
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、ケーブル絶縁油や中間接続構造に利用する絶縁油の組成や動粘度、ケーブル油浸絶縁層や接続部絶縁層の構成材料などを適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明ソリッドケーブルの中間接続構造は、電力供給、特に、長距離大容量の電力供給線路を構築するにあたり、ソリッドケーブル同士を接続する箇所に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ソリッドケーブルの中間接続構造の一部を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ソリッドケーブル 1c ケーブルコア 2 中間接続構造
10 導体 11 ケーブル油浸絶縁層 12,22 金属シース 13,23 防食層
14,24 補強層 15,25 外装 20 導体接続部 21 接続部絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と導体を覆うケーブル油浸絶縁層とが段階的に露出された一対のケーブルコアの端部と、この露出された導体同士を接続する導体接続部と、これらケーブルコアの端部及び導体接続部の外周にテープ状の絶縁材を巻回して構成される接続部絶縁層と、前記接続部絶縁層の外周に形成される金属シースと、前記金属シースの外周に形成される防食層とを具えるソリッドケーブルの中間接続構造であって、
前記接続部絶縁層は、絶縁油が含浸されており、
前記金属シースと前記接続部絶縁層との間には、前記ケーブル油浸絶縁層に含浸されているケーブル絶縁油よりも動粘度が高い材料からなる高粘度部を具えることを特徴とするソリッドケーブルの中間接続構造。
【請求項2】
前記ケーブル絶縁油は、60℃における動粘度が10mm2/s以上500mm2/s未満であることを特徴とする請求項1に記載のソリッドケーブルの中間接続構造。
【請求項3】
前記高粘度部は、前記ケーブル絶縁油よりも動粘度が高い絶縁油を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のソリッドケーブルの中間接続構造。
【請求項4】
前記高粘度部は、絶縁油を含有しており、この絶縁油は、前記ケーブル絶縁油と同一のベース油と、増粘剤とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のソリッドケーブルの中間接続構造。
【請求項5】
前記ケーブル油浸絶縁層の少なくとも一部及び前記接続部絶縁層の少なくとも一部は、絶縁紙とプラスチック層とを有する複合テープを巻回して構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のソリッドケーブルの中間接続構造。

【図1】
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【公開番号】特開2010−97775(P2010−97775A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266674(P2008−266674)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)