説明

ソース、咀嚼・嚥下困難者用食品、及び咀嚼・嚥下困難者用食事の提供方法

【課題】
咀嚼・嚥下困難者にむせを誘発せずに、水分量が多い食品を食品本来の食感を損なわずに提供する。
【解決手段】
油脂を70%以上含有し、水相部を100部としたときのタマリンドシードガムの含有量が1〜7部であり、水相部中の全多糖類におけるタマリンドシードガムの割合が50%以上であり、粘度が250〜1000Pa・sの水中油型乳化物であるソースを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソース、咀嚼・嚥下困難者用食品、及び咀嚼・嚥下困難者用食事の提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
咀嚼(食物をよくかみくだすこと)や嚥下(食物を飲み込むこと)機能が低下した高齢者や、何らかの疾病から回復し、経管栄養摂取から経口栄養摂取へのリハビリが必要な人にとって、通常の食事をするのは困難であり、食事をすること自体も大変な労力である。特に、飲み込むときにむせてしまい、誤嚥を起こす心配があるような人は、食事として提供できる食品や調理方法が制限されるため、食事を十分に楽しむことは難しい。
【0003】
特に水分量が多い野菜類等の食品を、外観や風味を生かそうとして生のまま、あるいは塩揉みや茹でる程度の下処理後に裁断して咀嚼・嚥下機能低下者に供すると、大きすぎる・小さすぎる・角張っているといった食品の形状や、経時的に生じる離水によって、むせるなどして誤嚥や窒息を起こす危険がある。よって、咀嚼・嚥下機能低下者へのこれらの食品の提供は、ミキサー等でペースト状に潰し、固体状に再形成して行われる。再形成された食品は、瑞々しさや食感を失い、本来の食品とはかけ離れた単調な食味を呈する。そこでこのような水分量が多い食品を、再形成物とせずとも咀嚼・嚥下機能低下者にむせを起こさずに提供する方法が求められている。
【0004】
特許文献1には、食品本来の形や味を損ねず、かつ嚥下特性に優れる食品を提供する方法として、調味料とオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとが均一に混ぜ込まれ、加熱調理された、嚥下に障害がある人用の調味料が記載されている。上記調味料を生野菜と混合して提供したところ、むせ防止の効果は低く、またその効果を奏するのは食品調製直後のみのため、調製から提供まで少なくとも数十分を要する介護施設での給食や持ち帰り惣菜の販売には使用できないものだった。また、上記調味料はオクラ等を混ぜ込み、加熱調理されるために、調味料本来の風味や外観を失い、食事を十分に楽しむという消費者の要求を十分に満足するものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2008−228729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、咀嚼・嚥下困難者にむせを誘発せずに、水分量が多い食品を食品本来の食感を損なわずに提供することができるソース、前記ソースを用いた咀嚼・嚥下困難者用食品、及び前記ソースを用いた咀嚼・嚥下困難者用食事の提供方法、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定量の油脂を含有し、水相部に対して特定量のタマリンドシードガムを含有し、特定粘度の水中油型乳化物とすることで、意外にも、咀嚼・嚥下困難者にむせを誘発せずに、水分量が多い食品を食品本来の食感を損なわずに提供できるソースが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)油脂を70%以上含有し、水相部を100部としたときのタマリンドシードガムの含有量が1〜7部であり、水相部中の全多糖類におけるタマリンドシードガムの割合が50%以上であり、粘度が250〜1000Pa・sの水中油型乳化物であるソース、
(2)可食部の水分量80%以上の野菜類及び/又は海藻類に、油脂を70%以上含有し、水相部を100部としたときのタマリンドシードガムの含有量が1〜7部であり、水相部中の全多糖類におけるタマリンドシードガムの割合が50%以上であり、粘度が250〜1000Pa・sの水中油型乳化物が接触している咀嚼・嚥下困難者用食品、
(3)可食部の水分量80%以上の野菜類及び/又は海藻類に、油脂を70%以上含有し、水相部を100部としたときのタマリンドシードガムの含有量が1〜7部であり、水相部中の全多糖類におけるタマリンドシードガムの割合が50%以上であり、粘度が250〜1000Pa・sの水中油型乳化物を接触させる咀嚼・嚥下困難者用食事の提供方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、咀嚼・嚥下困難者に水分量が多い食品を食品本来の食感を損なわずに提供できるようになるため、咀嚼・嚥下困難者が食事をする際に食品や調理法の選択肢が広がる。これにより、咀嚼・嚥下困難者向けの食事提供ビジネスの活性化が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を表す。「部」は「質量部」を表す。
【0011】
本発明のソースは、特定量の油脂を含有し、水相部中に特定量及び特定割合のタマリンドシードガム及び多糖類を含有する、特定粘度の水中油型乳化物である。
【0012】
本発明のソースは油脂を70%以上含有する。油脂の含有量が上記範囲よりも少ない場合は、食品をスムーズに嚥下させることができない。なお、油脂の含有量が90%よりも多いと、保存中に油分離を起こす場合があるため、90%以下が好ましい。油脂の含有量は、五訂食品成分表記載の測定法に基づき、ジエチルエーテルによるソックスレー抽出法にて得られる。
【0013】
本発明のソースが含有する油脂は、食用のものであれば由来は特に限定されない。例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油、卵黄油、卵黄、バター等の動植物性油脂又はこれらの精製油(サラダ油)、あるいはMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的、酵素的処理等を施して得られる油脂、親油性乳化剤等が挙げられる。
【0014】
本発明において、タマリンドシードガムは、マメ科のタマリンドの種子から抽出される、D−グルコースがβ−1,4結合してできた直鎖に、D−キシロースとD−ガラクトースが結合した分岐構造を持つものであって、その5%水溶液の粘度が、B型粘度計を用いて品温25℃、ローター回転数2rpmで測定したときに1Pa・sを超えるものを意味する。タマリンドシードガム分解物等、上記粘度以下のタマリンドシードガムは、低粘度タマリンドシードガムと表記してタマリンドシードガムとは区別する。
【0015】
本発明のソースは、水相部を100部としたときのタマリンドシードガムの含有量が1〜7部であり、好ましくは1.2〜3部含有する。タマリンドシードガムの含有量が上記範囲よりも少ない場合、食品の経時的な離水をソースが吸収しないため、むせを抑制することができず、上記範囲よりも多い場合、ソースが唾液を吸収するため、食品をスムーズに嚥下させることができない。
【0016】
本発明において、水相とは清水及び水相原料の混合物を意味する。水相原料としては、親水性であって食用のものであれば特に限定されない。例えば、米酢、穀物酢、リンゴ酢等の食酢、果汁類、卵黄、卵白、乳タンパク、大豆タンパク等の蛋白質原料、ブドウ糖等の単糖類、スクロース、トレハロース等の二糖類、フラクトオリゴ糖等の少糖類、多糖類、小麦粉、米粉等の澱粉質原料、各種だし汁、醤油・食塩・砂糖等の調味料、クエン酸、乳酸等の有機酸類、酢酸ナトリウム、リン酸塩等の塩類、グルタミン酸ナトリウム等の呈味料、エキス類、香料、色素、親水性乳化剤等が挙げられる。
【0017】
本発明に用いる多糖類は、単糖が10個以上結合したものを意味し、食用のものであれば特に限定されない。例えば、澱粉、デキストリン、水飴、タマリンドシードガム、低粘度タマリンドシードガム、キサンタンガム等が挙げられる。
【0018】
本発明のソースの水相部中において、全多糖類におけるタマリンドシードガムの割合は50%以上であり、70%以上が好ましく、多糖類の全てがタマリンドシードガムであってもよい。上記範囲よりも少ない場合、高水分含量の食品が経時的に生じる離水をソースが吸収せずむせを抑制できなかったり、ソースの付着性が高くてむせを誘発したりする。
【0019】
本発明のソースの粘度は、250〜1000Pa・sであり、好ましくは400Pa・s以上である。上記範囲以下の粘度の場合、食品の経時的な離水をソースが吸収しないため、むせを抑制することができず、上記範囲以上の粘度の場合、ソースが口腔に残留して嚥下しにくいものとなる。なお、粘度は、200ml容量のビーカーにソースを200ml充填後、HELIPATH STAND付B型粘度計((株)東京計器製)でT−BAR SPINDLE Dのローターを用い、品温約25℃、回転数2rpmで測定開始2回転後の示度により得た。
【0020】
本発明のソースは、上記の油脂、タマリンドシードガム、多糖類、水相原料の他、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択し配合することができる。具体的には、例えば、ゴマやたらこ等の具材、コショウ等のスパイス類、ビタミン類、ミネラル類、親油性乳化剤等が挙げられる。
【0021】
本発明のソースの製造方法は、油脂を70%以上含有し、水相部を100部としたときのタマリンドシードガムの含有量が1〜7部であり、水相部中の全多糖類におけるタマリンドシードガムの割合が50%以上であり、粘度が250〜1000Pa・sの水中油型乳化物とする以外は、常法に則りソースを製造すればよい。例えば、清水にタマリンドシードガム、多糖類、及びその他の水相原料を分散・溶解して水相部を製し、水相部を攪拌しながら油脂を加えて乳化し、水中油型乳化物を製する方法が挙げられる。
【0022】
本発明の咀嚼・嚥下困難者用食品は、可食部の水分量80%以上の野菜類及び/又は海藻類に、前記ソースを接触させたものである。
【0023】
本発明の咀嚼・嚥下困難者用食事の提供方法は、可食部の水分量80%以上の野菜類及び/又は海藻類に、前記ソースを接触させ、咀嚼・嚥下困難者に食事として提供するものである。
【0024】
本発明に用いる、可食部の水分量80%以上の野菜類及び/又は海藻類は、特に限定されず、水戻しして用いるものであれば、水戻し後の可食部の水分量が80%以上であれば良く、茹でる等の下処理をして用いるものであれば、下処理後の可食部の水分量が80%以上であれば良い。例えば、野菜類としてはきゅうり、キャベツ、大根、たまねぎ、白菜、トマト、なす、ねぎ、ピーマン、もやし、ニンジン、長いも、おかひじき等及びその調理・加工品、海藻類としては、わかめ、もずく、昆布、ひじき等及びその調理・加工品が挙げられる。水分量が高い食品ほどむせを起こしやすく、本発明の効果を発揮しやすいことから、水分量85%以上であることが好ましく、水分量90%以上であることがより好ましい。
【0025】
本発明に用いる、可食部の水分量80%以上の野菜類及び/又は海藻類は、再形成物ではないものがより好ましい。再形成物でない食品を用いた咀嚼・嚥下困難者用食品は、再形成物を用いた場合に比べて、食品本来の風味や食感を保持して好ましい。また、再形成物でない水分量の高い食品は、むせを起こしやすいという問題を有するため、本発明の効果を発揮しやすい。
【0026】
本発明において、再形成物である食品とは、すりおろし、すり潰し、粉末化、液化等により均一化処理された後に、寒天、カラギナン等のゲル化剤やゼラチン、卵白等の蛋白質、澱粉等により固体状としたものをいう。例えば、ニンジンゼリーや豆腐、はんぺん、ソーセージ、ハンバーグ、茶碗蒸し、ケーキ、餅等が挙げられる。一方、再形成物ではない食品とは、千切りや微塵切り等の裁断処理又は前記の均一化を施された食品であって、前記裁断処理時又は均一化時以上の大きさの固体となっていないもの、若しくは裁断処理等を施されていない丸ごとの食品をいう。例えば、ニンジンの微塵切り、大根おろし、おにぎり、粥等が挙げられる。
【0027】
本発明に用いる可食部の水分量80%以上の野菜類及び/又は海藻類の大きさは、特に限定されないが、具材感や素材が持つ食感を感じやすいことから3mm以上が好ましく、咀嚼・嚥下がより容易になることから15mm以下であることが好ましい。
【0028】
本発明の咀嚼・嚥下困難者用食品における、可食部の水分量80%以上の野菜類及び/又は海藻類の含有量は、特に限定されないが40〜90%であることが好ましく、更に好ましくは60〜90%である。含有量が前記の範囲であると、むせを抑えながら、具材感や食品本来の食感を感じやすい。
【0029】
本発明の咀嚼・嚥下困難者用食品における、前記ソースの含有量は、特に限定されないが10〜60%であることが好ましく、更に好ましくは10〜40%である。含有量が前記の範囲であると、むせを抑えながら、具材感や食品本来の食感を感じやすい。
【0030】
本発明の咀嚼・嚥下困難者用食品において、前記の野菜類、海藻類及びソースの他、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択し配合することができる。具体的には、例えば、砂糖、食塩、醤油、みりん、グルタミン酸ナトリウム等の調味料、大豆油、菜種油等の油脂類、穀類、果物類、きのこ類、魚介類、畜肉類、卵類等の食品、枝豆等の可食部の水分量80%未満の野菜類や海藻類等が挙げられる。
【0031】
本発明において、可食部の水分量80%以上の野菜類及び/又は海藻類を前記ソースに接触させる方法としては、特に限定されないが、例えば、前記野菜類及び/又は海藻類と前記ソースとを略均一に混合する方法、皿に盛り付けた前記野菜類及び/又は海藻類の上に前記ソースをかけて接触させる方法、前記野菜類及び/又は海藻類の周囲に添えられた前記ソースを、スプーン等で前記野菜類及び/又は海藻類に接触させながら提供する方法等が挙げられる。前記野菜類及び/又は海藻類と前記ソースとを略均一に混合すると、両者の接触面が広いために本発明の効果が高く発揮されて好ましい。
【0032】
本発明の咀嚼・嚥下困難者用食品の製造方法は、野菜類及び/又は海藻類を、常法に則り下処理及び/又は調理・加工して可食部の水分量を80%以上とし、前記ソースと混合する、掛ける等の接触をさせて製造すればよい。
【実施例】
【0033】
以下に本発明について実施例及び試験例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0034】
[実施例1]
液卵黄700g、高酸度食酢(酸度10%)400g、砂糖150g、食塩170g、タマリンドシードガム40g、清水1090gをミキサーで均一とした後、菜種油7450gを注加して粗乳化させた。得られた粗乳化物をコロイドミルで仕上げ乳化を行い、本発明のソース1を製した。ソース1は、油脂を76.8%含有し、水相に多糖類としてタマリンドシードガムのみを含有し、水相部を100部としたときのタマリンドシードガムの含有量が1.6部、粘度が455Pa・sの水中油型乳化物だった。なお、用いたタマリンドシードガムの5%水溶液の粘度は10Pa・sを超えるものだった。
【0035】
[試験例1]
キャベツ1000gを茹で、一辺が3mmの微塵切りにし、水気を絞ってキャベツの微塵切り(水分量93%)を得た。キャベツの微塵切り60gに対してソース1を40g混合し、本発明の咀嚼・嚥下困難者用食品であるキャベツの和え物1を製した。キャベツの和え物1を調製から2時間静置したところ、離水もダレもみられなかった。静置後のキャベツの和え物1を咀嚼・嚥下困難者用食事として提供すると、キャベツの具材感及び本来の食感を十分に呈し、速やかにむせることなく嚥下されて好ましかった。
【0036】
[試験例2]
試験例1の咀嚼・嚥下困難者用食事の提供方法において、ソースにおける油脂の含有量、水相部に対するタマリンドシードガムの含有量、及び水相部の全多糖類におけるタマリンドシードガムの割合が及ぼす影響を調査した。実施例1において、原料及び配合量を表1の記載に変更した以外は、実施例1に準じてソースを得た。試験例1において、ソース1を試験例2で得られたソースに変更した以外は、試験例1に準じてキャベツの和え物を製した。キャベツの和え物を咀嚼・嚥下困難者用食事として提供した際の評価結果を、実施例1及び試験例1の結果と共に表1に示す。
【0037】
<離水の評価基準>
◎:離水もダレもみられない
○:離水はみられないが、ややダレて全体的に広がっている
×:激しい離水がみられ、ダレて全体的に広がっている
<嚥下適性の評価基準>
◎:速やかに、むせることなく嚥下される
○:やや時間は要するものの、むせることなく嚥下される
×:むせる。
【0038】
【表1】

【0039】
表1より、油脂を70%以上含有し、水相部を100部としたときのタマリンドシードガムの含有量が1〜7部の範囲であり、かつ水相部中の全多糖類におけるタマリンドシードガムの割合が50%以上であるソースの場合、これを用いたキャベツの和え物は調製から2時間後も離水もダレもみられず、咀嚼・嚥下困難者用食事として提供した際には、むせることなく嚥下されて好ましかった。また、これらのソースの粘度は250〜1000Pa・sの範囲であった(実施例1〜3)。一方、油脂含有量が70%未満のソースを用いたキャベツの和え物を咀嚼・嚥下困難者用食事として提供した際には、付着性が高くて口中から無くならず、嚥下しようとするとむせて好ましくなかった(比較例1)。油脂含有量が70%以上であり、かつ水相部中の全多糖類におけるタマリンドシードガムの割合が50%未満であるソースの場合、これを用いたキャベツの和え物は、調製から2時間後に激しい離水が見られ、咀嚼・嚥下困難者用食事として提供することができず好ましくなかった(比較例2)。また水相部を100部としたときのタマリンドシードガムの含有量が1部未満であるソースの粘度は低く、0.4%の場合はソースの粘度が250Pa・s未満であり、これを用いたキャベツの和え物は、調製から2時間後に激しい離水が見られ、咀嚼・嚥下困難者用食事として提供することができず好ましくなかった(比較例3)。
【0040】
[実施例4]
5mm角の微塵切りにした後、水さらしし、水を切った玉ねぎ(水分量93%)45部と、5mm角の微塵切りにしたゆで卵の卵黄10部に、実施例1で得られたソース1を45部加えて混合し、本発明の咀嚼・嚥下困難者用食品である玉ねぎサラダを得た。玉ねぎサラダを調製から5時間静置したところ、離水もダレもみられず、玉ねぎの具材感は弱いものの玉ねぎ本来の食感を呈して好ましかった。玉ねぎサラダを咀嚼・嚥下困難者用食事として提供すると、むせることなく嚥下されて好ましかった。
【0041】
[実施例5]
茹でたニンジン60部をだし汁29部と共にミキサーにかけた後、ゼラチン1部と混合してニンジンゼリーを製した。得られたゼリーを1.5cm角のサイコロ切りにし、実施例1で得られたソース1を10部加えて混合し、本発明の咀嚼・嚥下困難者用食品であるニンジンゼリーの和え物を得た。ニンジンゼリーの和え物を調製から3時間静置したところ、離水もダレもみられず好ましかった。静置後のニンジンゼリーの和え物を咀嚼・嚥下困難者用食事として提供すると、ニンジン本来の食感はないものの速やかにむせることなく嚥下されて好ましかった。
【0042】
[実施例6]
5mm角の微塵切りにした生わかめ(水分量89%)70部に、実施例1で得られたソース1を30部加えて混合し、本発明の咀嚼・嚥下困難者用食品であるわかめの和え物を得た。わかめの和え物を調製から2時間静置したところ、離水もダレもみられず好ましかった。静置後のわかめの和え物を咀嚼・嚥下困難者用食事として提供すると、速やかにむせることなく嚥下されて好ましかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂を70%以上含有し、水相部を100部としたときのタマリンドシードガムの含有量が1〜7部であり、水相部中の全多糖類におけるタマリンドシードガムの割合が50%以上であり、粘度が250〜1000Pa・sの水中油型乳化物であることを特徴とするソース。
【請求項2】
可食部の水分量80%以上の野菜類及び/又は海藻類に、油脂を70%以上含有し、水相部を100部としたときのタマリンドシードガムの含有量が1〜7部であり、水相部中の全多糖類におけるタマリンドシードガムの割合が50%以上であり、粘度が250〜1000Pa・sの水中油型乳化物が接触していることを特徴とする咀嚼・嚥下困難者用食品。
【請求項3】
可食部の水分量80%以上の野菜類及び/又は海藻類に、油脂を70%以上含有し、水相部を100部としたときのタマリンドシードガムの含有量が1〜7部であり、水相部中の全多糖類におけるタマリンドシードガムの割合が50%以上であり、粘度が250〜1000Pa・sの水中油型乳化物を接触させることを特徴とする咀嚼・嚥下困難者用食事の提供方法。

【公開番号】特開2012−34634(P2012−34634A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178138(P2010−178138)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】