説明

タイヤの耐摩耗性能を評価する方法

【課題】車両に装着されるタイヤの耐摩耗性能と相関性の高い試験結果を得ることができる。
【解決手段】タイヤのトレッド部2の耐摩耗性能を評価する方法である。評価対象のタイヤを製造するタイヤ製造工程K1と、前記タイヤのトレッド部2の接地面を含む領域から評価用のゴムシートGを切り出すゴムシート切り出し工程K2と、前記ゴムシートGを、室内摩耗試験機Mを用いて摩耗させる摩耗試験工程K3と、前記摩耗試験工程の摩耗状態に基づいて、耐摩耗性能を評価する摩耗評価工程K4とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの実車走行時の耐摩耗性能と相関性の高い試験結果を得ることができるタイヤの耐摩耗性能を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの耐摩耗性能を評価する方法として、タイヤのトレッドゴムと同一の配合を用いて摩耗試験用の加硫ゴムを作製し、この加硫ゴムを、例えば、ランボーン摩耗試験機などの室内摩耗試験機によって摩耗させて評価する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、上述の方法では、加硫条件の違いなどにより、摩耗試験用の加硫ゴムと、評価対象のタイヤのトレッドゴムとの特性が異なることがある。このため、従来の評価方法で予測した耐摩耗性能の結果と、評価対象のタイヤを実際に車両に装着して走行させた実車走行時の耐摩耗性能の結果とが一致しないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−279063号公報
【特許文献2】特開2009−198276号公報
【特許文献3】特開2006−1299号公報
【特許文献4】特開2005−308447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、室内摩耗試験機を用いて摩耗させる評価用のゴムとして、評価対象のタイヤのトレッド部の接地面を含む領域から切り出されたゴムシートを用いることを基本として、実車走行時の耐摩耗性能と相関性の高い試験結果を得ることができるタイヤの耐摩耗性能を評価する方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の発明は、タイヤのトレッド部の耐摩耗性能を評価する方法であって、評価対象のタイヤを製造するタイヤ製造工程と、前記タイヤのトレッド部の接地面を含む領域から評価用のゴムシートを切り出すゴムシート切り出し工程と、前記ゴムシートを、室内摩耗試験機を用いて摩耗させる摩耗試験工程と、前記摩耗試験工程の摩耗状態に基づいて、耐摩耗性能を評価する摩耗評価工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記ゴムシートは、厚さが0.5〜4mmである請求項1記載のタイヤの耐摩耗性能を評価する方法である。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記室内摩耗試験機は、任意の平面内を該平面と直交する軸周りに回転する砥石面と、前記平面と平行な軸で可回転に支持されたローラ体とを有し、前記ローラ体の外周面には、前記ゴムシートが配されるとともに、該ゴムシートを前記砥石面に接触させる請求項1又は2記載のタイヤの耐摩耗性能を評価する方法である。
【0009】
また請求項4記載の発明は、前記室内摩耗試験機は、前記砥石面の温度を変化させる温度制御装置を有し、前記摩耗試験工程は、実車走行時の路面温度が10℃以下の温度X1℃での低温耐摩耗特性の予測のための低温試験工程を含み、該低温試験工程では、前記砥石面の温度Y(℃)がX1(℃)の1.0〜5.0倍の温度で行われる請求項3に記載のタイヤの耐摩耗性能を評価する方法である。
【0010】
また請求項5記載の発明は、前記室内摩耗試験機は、前記砥石面の温度を変化させる温度制御装置を有し、前記摩耗試験工程は、実車走行時の路面温度が10℃を超える温度X2℃での高温耐摩耗特性の予測のための高温試験工程を含み、該高温試験工程では、前記砥石面の温度Y(℃)がX2(℃)の1.5〜3.0倍の温度で行われる請求項3又は4に記載のタイヤの耐摩耗性能を評価する方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤのトレッド部の耐摩耗性能を評価する方法では、評価対象のタイヤを製造するタイヤ製造工程と、前記タイヤのトレッド部の接地面を含む領域から評価用のゴムシートを切り出すゴムシート切り出し工程と、前記ゴムシートを、室内摩耗試験機を用いて摩耗させる摩耗試験工程と、前記摩耗試験工程の摩耗状態に基づいて、耐摩耗性を評価する摩耗評価工程とを含む。このような耐摩耗性能を評価する方法は、評価対象となるタイヤのトレッド部の接地面を含む評価用のゴムシートを、室内摩耗試験機で摩耗させて耐摩耗性を評価する。これにより、本発明の方法は、加硫条件等に左右されず、トレッド部のゴムの特性をそのまま室内で評価することができる。従って、室内摩耗試験機であっても、実車走行時のタイヤの耐摩耗性能と相関性の高い試験結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】シート切り出し工程を説明する概略図である。
【図2】本発明で使用される室内摩耗試験機の一例を示す斜視図である。
【図3】図2の砥石面近傍を拡大する斜視図である。
【図4】ローラ体を説明する拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態のタイヤの耐摩耗性能を評価する方法は、室内でタイヤの耐摩耗性能を評価する方法であって、評価対象のタイヤを製造するタイヤ製造工程K1と、前記タイヤから評価用のゴムシートを切り出すゴムシート切り出し工程K2と、前記ゴムシートを摩耗させる摩耗試験工程K3と、前記摩耗試験工程K3の摩耗状態に基づいて、耐摩耗性能を評価する摩耗評価工程K4とを含んで構成される。
【0014】
前記タイヤ製造工程K1では、例えば、加硫金型を用いた周知の製造方法によりタイヤが製造される。該タイヤとしては、例えば、乗用車用、トラック用又は自動二輪車用など種々のカテゴリーの空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1が含まれる。
【0015】
図1に示されるように、前記ゴムシート切り出し工程K2では、タイヤtのトレッド部2の接地面を含む領域から評価用のゴムシートGが切り出される。このようなゴムシート切り出し工程K2は、機械加工、又は、ナイフなどの切断具を用いて行われる。ゴムシートGの形状は、例えば矩形状等が好適である。
【0016】
前記摩耗試験工程K3では、周知の室内摩耗試験機Mが用いられる。本実施形態の室内摩耗試験機Mは、例えば、JIS K6263に規格化されている加硫ゴムの摩耗試験などを行うことが可能なものであれば種々のものを採用できる。本実施形態では、株式会社平泉洋行製のゴム摩耗試験機(型式:LAT100)に準じたものが採用される。
【0017】
図2及び図3に示されるように、室内摩耗試験機Mは、例えば、直方体状に形成され、前面のパネルpには、例えば、室内摩耗試験機Mを運転停止させるスイッチ類swや、試験状況を表示する表示部mなどが設けられている。
【0018】
図3に良く示されるように、本実施形態の室内摩耗試験機Mは、垂直面内を該垂直面と直交する軸ch1周りに回転する砥石面4と、垂直面と平行な軸7で可回転に支持されたローラ体5と、前記砥石面4の温度を変化させる温度制御装置6とを含んで構成され、これらの各種部材は、垂直なベースBの前面に配される。なお、前記砥石面4が回転する平面は、垂直面とされているが、水平面とされても良いのはいうまでもない。
【0019】
前記砥石面4は、例えば、前記軸ch1に固着された円盤状の回転テーブル12上に一定の幅を有する円環状で形成される。
【0020】
また、前記軸ch1には、例えば、ベースBの背面側に配された電動機(図示せず)が接続される。従って、該電動機の駆動により、回転テーブル12及び砥石面4が、前記軸ch1周りに回転する。従って、このような回転する砥石面4に、前記ゴムシートGを外周面5aに有するローラ体5を接触させることにより、連続して摩耗させることができる。
【0021】
また、砥石面4の粒度は、屋外で行う実車走行時の耐摩耗性能との相関性を高く確保するために、例えば40〜80(メッシュ)程度が望ましい。
【0022】
図4に示されるように、前記ローラ体5は、その中心に貫通孔5bを有する円筒状をなし、この貫通孔5bに、前記軸7(図3に示す)の一端7i側がベアリング8を介して固着される。これにより、ローラ体5は、軸7周りに回転可能となる。
【0023】
また、ローラ体5の外周面5aには、前記ゴムシートGが、例えば、接着剤等で強固に接着される。
【0024】
さらに、ローラ体5は、例えば、ゴムシートGとの強固な接着を確保すために、ゴム材料で形成されるのが望ましい。また、ローラ体5の大きさは、例えば、外径d1が70〜80mm、内径d2が25〜35mm、幅w1が15〜22mm程度のものが、室内摩耗試験機M内で効率よく回転できる点で望ましい。
【0025】
前記ゴムシートGは、例えば、その厚さt1が0.5〜4.0mmのものが望ましい。前記厚さt1が小さくなると、摩耗試験の最中にゴムシートGが摩耗で無くなり、精度良く摩耗試験できないおそれがある。逆に、厚さt1が大きくなると、ゴムシートGの曲げが困難になり、ローラ体5の外周面5aに沿わせて巻付けることができないおそれがある。とりわけ、前記厚さt1は、1.0〜3.0mmのものが特に望ましい。また、ゴムシートGの幅w2は、15〜22mmが望ましく、とりわけ、ローラ体5の幅w1と同じ幅であるのが望ましい。
【0026】
また、図3に示されるように、室内摩耗試験機Mには、ローラ体5を移動させるローラ体移動具9が設けられる。該ローラ体移動具9は、ローラ体5を砥石面4に対し垂直移動させるシリンダ機構10と、ローラ体5を砥石面4に対し平行に移動させる回転機構11とからなる。
【0027】
前記シリンダ機構10は、長手方向に伸縮するロッド10Aと、該ロッド10Aを支持するカバー体10Bとを含み、前記長手方向が砥石面4に対し垂直となる向きに設けられる。本実施形態の前記ロッド10Aの先端部10A1は、前記軸7の他端7e部と、例えば板状の固定部材Kを介して接続される。このようなシリンダ機構10は、ロッド10Aの伸縮を利用して、ローラ体5を砥石面4に接触させ、かつ、離間させるのに役立つ。なお、本実施形態の前記軸7の他端7e部には、固定部材Kとの固定を容易にする直方体状のアタッチメントピース15が設けられる。
【0028】
また、前記回転機構11は、例えば、シリンダ機構10を砥石面4に対して垂直な軸周りに回転可能に支持するベアリング体11rと、該ベアリング体11rの回転を保持する図示しないストッパーとを含んで構成される。前記ベアリング体11rは、前記ベースBに固着される。このようなベアリング体11rは、固定部材Kを介して前記軸7に接続されたローラ体5と砥石面4との接触部において、ローラ体5の円周の接線方向と、砥石面4の円周の接線方向とを異ならせることができ、ローラ体5にスリップ角αを付与するのに役立つ。ローラ体5にスリップ角αが付与されると、砥石面4とゴムシートGとの摩擦力が大きくなり、ゴムシートGを短時間で効率よく摩耗させることができる。
【0029】
また、前記温度制御装置6は、例えば、回転テーブル12上の砥石面4を加温冷却する伝熱器16と、該伝熱器16を加温冷却する例えば冷媒Rを利用するヒートポンプ式の熱源体Tとを含んで構成される。
【0030】
前記伝熱器16は、前記軸ch1周りかつ前記砥石面4よりも前方に凸設されるとともに円筒状をなす前側部16Aと、前記前側部16Aに接続され回転テーブル12の背面側に配される後側部(図示せず)とを含み、その内部は中空部(図示せず)を有する。
【0031】
前記前側部16Aは、本実施形態では、前側部16Aの外周面16A1上に前記熱源体Tから送り出される冷媒Rを注入する注入口(図3では上側)と、熱源体Tに還される冷媒Rを排出する排出口(図3では下側)とが設けられる。そして、注入口より注入された冷媒Rが、前記中空部を介して伝熱器16全体を加温冷却して排出口より排出される。そして、加温冷却された伝熱器16の伝熱作用を利用して、砥石面4が加温冷却される。また、伝熱器16は、回転テーブル12を介して砥石面4を加温冷却させる構造でも良い。このような伝熱器16は、砥石面4をスムーズに加温冷却させるために、金属材料からなるのが望ましい。なお、回転テーブル12と後側面との間には、該回転テーブル12の回転を妨げない微小隙間(図示しない)が確保されている。
【0032】
また、前記冷媒Rは、例えばフロンなどが好適であるが、本実施形態の室内摩耗試験機Mには、特に比熱の大きなオイルなどが好適に採用される。
【0033】
また、室内摩耗試験機Mには、砥石面4の温度を計測・制御するため、温度センサーHが設けられる。このような温度センサーHは、周知構造のものが採用されるが、例えば、可視光レーザによる非接触式の表面温度計が望ましい。そして、温度センサーHの信号hが熱源体Tに送信され、冷媒Rの温度が制御される。
【0034】
また、室内摩耗試験機Mには、砂状体をゴムシートGと砥石面4との間に噴射する噴射ノズル14を含む噴射装置(全体図示せず)が設けられる。このような噴射装置は、砥石面4とゴムシートGとの摩耗によって排出される削りかすがゴムシートGに付着するのを抑制するのに役立つ。砂状体としては、例えば、粒状の酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとの混合物からなるものが好適である。
【0035】
摩耗試験工程K3では、例えば、シリンダ機構10のロッド10Aを伸縮させて、外周面5aにゴムシートGが貼り付けられたローラ体5を砥石面4に接触させる。そして、砥石面4を回転させることにより、ローラ体5は、砥石面4と摩擦を生じつつ回転し、ゴムシートGに摩耗を生じさせる。このとき、ローラ体5には、上記スリップ角αを与えるのが望ましい。また、この工程K3では、砥石面4の温度が、前記温度制御装置6によって、一定の温度に設定される。なお、砥石面4の回転平均速度は、精度良くゴムシートGを摩耗させるため、15〜25km/h程度が望ましい。
【0036】
このような摩耗試験工程K3について、発明者らは、種々の実験により、実車走行路面温度が10℃以下の温度の場合と、10℃を超える温度の場合とに区分し、夫々の試験温度を規定することで、実車走行時のタイヤの耐摩耗性能と室内摩耗試験機Mによる耐摩耗性能とが更に高い相関性を示すことを知見した。
【0037】
即ち、発明者らは、実車走行時の路面温度と砥石面4の温度との相関性を確認するため、後記の表1の仕様に基づいてJIS K 6263に準拠した室内摩耗試験機(株式会社平泉洋行社製のゴム摩耗試験機(型式:LAT100))を用いた室内での摩耗試験、及び屋外での実車走行による摩耗試験を行ない、これらの試験結果から相関係数R2を算出した。表1に示すパラメータ以外はすべて同一である。各摩耗試験の詳細は以下の通りである。
【0038】
<室内摩耗試験機による摩耗試験>
下記の仕様のゴムシートGが接着されたローラ体5が準備され、荷重40N及びスリップ角6°の条件でローラ体に砥石面4を接触させて、6000m走行回転させた。このとき、走行1000m毎に、ゴムシートの摩耗質量(計6回)が測定された。
ローラ体5の寸法(d1×d2×w1):74×30×18mm
ゴムシートGの寸法(t1×w2):2.0×18mm
【0039】
<実車走行による摩耗試験>
前記ゴムシートGが取り出されたタイヤtと同じ仕様のタイヤが排気量2000ccの国産FF車の4輪に装着され、乾燥アスファルト路面のテストコースを下記の条件で6000km走行させた。また、1000km毎にタイヤのトレッド部の溝の摩耗量(計6回)が測定された。なお、本明細書において前記摩耗量は、タイヤ周方向に等ピッチで6箇所及びタイヤ周方向にのびる全ての周方向溝の一方側の溝縁において計測した平均値(mm)として定義される。
タイヤサイズ:195/65R15
リムサイズ:15×6
内圧:230kPa
荷重:4.21kN
速度:60km/h
【0040】
<相関係数の算出>
上記室内及び実車走行の摩耗試験結果のそれぞれ6回の結果を用いて、縦軸に摩耗質量、横軸に摩耗量をプロットして、相関係数R2が算出された。相関係数R2は、0.8以上を良とする。
テストの結果を表1に示す。
【0041】
【表1】




【0042】
上記テスト結果から明らかなように、本実施形態の摩耗試験工程K3は、実車走行時の路面温度が10℃以下、とりわけ5〜10℃の温度X1℃での低温耐摩耗特性の予測のための低温試験工程K3aでは、砥石面4の温度Y(℃)が前記温度X1(℃)の1.0〜5.0倍の温度で実車走行試験の結果との相関が非常に良いということが分かる。特に望ましくは、低温試験工程K3aでは、砥石面4の温度Y(℃)が10℃以下であって前記温度X1(℃)の−2.0〜−1.0及び1.0〜5.0倍の温度で行われるのが望ましい。
【0043】
同様に、実車走行時の路面温度が10℃を超え、とりわけ10℃を超えかつ50℃以下の温度X2℃での高温耐摩耗特性の予測のための高温試験工程K3bでは、砥石面4の温度Y(℃)が前記温度X2(℃)の1.5〜3.0倍の温度で行われた場合、実車走行試験の結果との相関が非常に良いということが分かる。
【0044】
なお、ゴムの配合や特性を変更して更に実験を行ったが、同様の傾向を示した。
【0045】
前記摩耗評価工程K4では、摩耗試験工程K3でのゴムシートGの摩耗状態(摩耗質量)に基づいて、実車走行時の任意の路面温度での耐摩耗性能が評価ないし予測される。即ち、摩耗質量に基づいて、実車走行時の摩耗量の良し悪しを評価出来る。
【0046】
このように、本実施形態の耐摩耗性能を評価する方法では、評価対象のタイヤtから切り出されたゴムシートGを用いて耐摩耗性能を評価するため、加硫条件等に左右されず、トレッド部2のゴムの特性をそのまま室内摩耗試験機Mによって評価することができる。従って、室内において、実車走行時のタイヤの耐摩耗性能と相関性の高い試験結果を得ることができる。とりわけ、摩耗試験工程K3を、実車走行時の路面温度が5〜10℃の低温試験工程K3aと、実車走行時の路面温度が10℃を超えかつ50℃以下の高温試験工程K3bとを含んで区分することにより、実車走行時の路面温度に対応した砥石面4の温度を設定することで、さらに相関性良く耐摩耗性能を評価することができる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【符号の説明】
【0048】
1 タイヤ
2 トレッド部
G ゴムシート
K1 タイヤ製造工程
K2 ゴムシート切り出し工程
K3 摩耗試験工程
K4 摩耗評価工程
M 室内摩耗試験機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッド部の耐摩耗性能を評価する方法であって、
評価対象のタイヤを製造するタイヤ製造工程と、
前記タイヤのトレッド部の接地面を含む領域から評価用のゴムシートを切り出すゴムシート切り出し工程と、
前記ゴムシートを、室内摩耗試験機を用いて摩耗させる摩耗試験工程と、
前記摩耗試験工程の摩耗状態に基づいて、耐摩耗性能を評価する摩耗評価工程とを含むことを特徴とするタイヤの耐摩耗性能を評価する方法。
【請求項2】
前記ゴムシートは、厚さが0.5〜4mmである請求項1記載のタイヤの耐摩耗性能を評価する方法。
【請求項3】
前記室内摩耗試験機は、任意の平面内を該平面と直交する軸周りに回転する砥石面と、前記平面と平行な軸で可回転に支持されたローラ体とを有し、
前記ローラ体の外周面には、前記ゴムシートが配されるとともに、該ゴムシートを前記砥石面に接触させる請求項1又は2記載のタイヤの耐摩耗性能を評価する方法。
【請求項4】
前記室内摩耗試験機は、前記砥石面の温度を変化させる温度制御装置を有し、
前記摩耗試験工程は、実車走行時の路面温度が10℃以下の温度X1℃での低温耐摩耗特性の予測のための低温試験工程を含み、
該低温試験工程では、前記砥石面の温度Y(℃)がX1(℃)の1.0〜5.0倍の温度で行われる請求項3に記載のタイヤの耐摩耗性能を評価する方法。
【請求項5】
前記室内摩耗試験機は、前記砥石面の温度を変化させる温度制御装置を有し、
前記摩耗試験工程は、実車走行時の路面温度が10℃を超える温度X2℃での高温耐摩耗特性の予測のための高温試験工程を含み、
該高温試験工程では、前記砥石面の温度Y(℃)がX2(℃)の1.5〜3.0倍の温度で行われる請求項3又は4に記載のタイヤの耐摩耗性能を評価する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36900(P2013−36900A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174176(P2011−174176)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)