説明

タイヤ情報更新システム

【課題】専用のスイッチを設けなくとも、受信機に設定されたタイヤ情報を更新することができるタイヤ情報更新システムを提供する。
【解決手段】タイヤ空気圧監視ECU13のメモリ15内のタイヤ情報19を更新するには、イグニッションスイッチ20をオフしたまま車両1を僅かに動かし、その後、イグニッションスイッチ20をオンする。このとき、イグニッションスイッチ20のオン/オフの前後で、タイヤ空気圧検出器4内の加速度センサ10の重力分力値が変化する。よって、イグニッションスイッチ20のオン/オフの前後で重力分力値が変化したときには、タイヤ情報19の更新操作があったと認識し、メモリ15内のタイヤ情報19を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ空気圧検出器から送信されたタイヤ空気圧信号を受信する受信機のタイヤ情報を更新するタイヤ情報更新システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には、走行車両の安全確保を目的として、走行中において各タイヤのタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システムが搭載される傾向にある。タイヤ空気圧監視システムは、各タイヤにタイヤ空気圧検出器を取り付け、このタイヤ空気圧検出器にて検出したタイヤ空気圧信号を車体に無線送信する。車体は、このタイヤ空気圧信号を受信機で受信すると、タイヤ空気圧信号を基にタイヤ空気圧を割り出し、タイヤ空気圧が低圧閾値未満となるタイヤが存在することを確認すると、低圧警報を運転者に通知する。
【0003】
この種のタイヤ空気圧監視システムでは、タイヤの低圧判定の閾値として、最初、受信機に初期値が入力される。初期値は、車種によって様々であるが、例えば200KPaや220KPa等に設定されている。ところで、タイヤの実際の空気圧は、ボイルシャルルの法則から分かるようにタイヤ温度に応じて変化するため、低圧判定の閾値も、その時々のタイヤ温度に応じた最適な値が存在する。このため、タイヤ空気圧検出器が車体にタイヤ空気圧信号を送信する際、タイヤ温度も同時に車体に送信し、このタイヤ温度を基に低圧判定閾値を切り換えて、タイヤ空気圧を監視する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−248879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えばタイヤを交換したときには、タイヤ空気圧の判定閾値を元の初期値に戻す必要がある(特許文献1等参照)。このため、これまでのタイヤ空気圧監視システムでは、車体のどこかに初期化スイッチを用意しておき、この初期化スイッチが操作された際に、受信機の低圧判定閾値が初期値に再設定される仕組みとなっていた。よって、この場合は、初期化スイッチが別途必要となるので、部品点数増加や部品コスト増などの問題に繋がっていた。
【0006】
本発明の目的は、専用のスイッチを設けなくとも、受信機に設定されたタイヤ情報を更新することができるタイヤ情報更新システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明では、タイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧検出器を各タイヤに取り付け、当該タイヤ空気圧検出器から無線によりタイヤ空気圧信号を車体に送信し、当該タイヤ空気圧信号を基にタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視機能のタイヤ情報更新システムであって、前記タイヤ空気圧検出器にかかる重力の分力を検出する重力情報取得手段と、前記重力情報取得手段が検出した重力情報を基に、車両電源のオン/オフの前後で当該重力情報が変化したか否かを判定する判定手段と、前記車両電源のオン/オフの前後で前記重力情報が変化していれば、タイヤ空気圧の監視で使用するタイヤ情報を更新する更新手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
本発明の構成によれば、タイヤ情報を更新する際には、車両電源をオフしたまま車両を僅かに動かす、またはタイヤを交換し、その後、車両電源を投入する操作を実施する。タイヤ交換時の場合は、タイヤに適正な空気圧が入っていることが大半であることを利用する。このとき、車両電源のオン/オフの前後でタイヤの回転角度が変化するので、車両電源がオフした際の重力情報と、車両電源がオンした際の重力情報とで変化が発生する。よって、タイヤ情報の更新操作があったとみなし、受信機に設定されたタイヤ情報を更新する。従って、タイヤ情報更新用のスイッチ類がなくてもタイヤ情報を更新することが可能となるので、システムの簡素化が可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記タイヤ空気圧検出器の重力検出手段は、前記重力情報として、前記タイヤ空気圧検出器の車軸方向における重力の分力を検出し、前記判定手段は、前記重力検出手段が検出した重力分力値を基に、前記車両電源のオン/オフの前後で前記タイヤに回転が生じたか否かを判定することを要旨とする。この構成によれば、重力検出センサとして、1軸を検出するのみの安価なセンサを使用することが可能となるので、センサにかかるコストを低く抑えることが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、前記判定手段は、前記重力情報に基づくタイヤ回転の有無の判定を全タイヤにて実施し、これらタイヤのうち少なくとも1つでタイヤ回転を検出すれば、前記タイヤ情報の更新を実施させることを要旨とする。この構成によれば、車両電源のオン/オフの前後で、仮に1つのタイヤで回転角度が同じとなってしまっても、他のタイヤにおいて発生している回転角度の差により、重力情報の変化を検出することが可能となる。このため、タイヤ情報更新の精度確保に効果が高くなる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記タイヤ空気圧検出器が内部の重力検出手段にてタイヤ回転を検出すると、当該重力検出手段によって検出される前記重力情報の送信動作を開始し、当該重力情報を自らが断続的に送信する方式であることを要旨とする。この構成によれば、タイヤ空気圧検出器に電波送信を指示するトリガ手段(例えばイニシエータ)が必要ないので、システムの構成簡素化に一層寄与する。
【0012】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記タイヤ空気圧検出器に電波送信を実行させるトリガ信号を無線送信するトリガ手段を備え、前記タイヤ空気圧検出器は、前記トリガ手段から送信された前記トリガ信号を受信すると、自身の重力検出センサが検出した前記重力情報を無線送信する方式であることを要旨とする。この構成によれば、タイヤ空気圧検出器の電波送信動作をトリガ手段によって指示することが可能となるので、車両電源が投入された後、車両が走行してしまう前に、タイヤ空気圧検出器に重力情報を送信させることが可能となる。よって、重力情報の変化有無の判定を、より確実に実施させることが可能となる。
【0013】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記タイヤ情報は、タイヤ空気圧の低圧判定に使用する低圧閾値であることを要旨とする。この構成によれば、タイヤ空気圧判定に使用する低圧閾値を簡素なシステムにて更新することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、専用のスイッチを設けなくとも、受信機に設定されたタイヤ情報を更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態のタイヤ空気圧監視システムの構成図。
【図2】重力分力値とタイヤ回転位置との関係を示す説明図。
【図3】(a)〜(d)はタイヤ情報の更新作業の流れを示す説明図。
【図4】別例におけるタイヤ空気圧監視システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化したタイヤ情報更新システムの一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、各タイヤ2(2a〜2d)のタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)3が設けられている。タイヤ空気圧監視システム3は、各タイヤ2a〜2dに取り付けられたタイヤ空気圧検出器4(4a〜4d)でタイヤ空気圧等を検出し、その検出結果をタイヤ空気圧信号Stpとして車体5に無線送信する。車体5は、各タイヤ空気圧検出器4a〜4dから送信されたタイヤ空気圧信号Stpを受信し、このタイヤ空気圧信号Stpを基に各タイヤ2a〜2dの空気圧を監視する。なお、タイヤ空気圧検出器4(4a〜4d)は、通称、タイヤバルブとも呼ばれる。
【0017】
タイヤ空気圧検出器4には、タイヤ空気圧検出器4を統括管理するコントローラ6が設けられている。コントローラ6のメモリ7には、各タイヤ空気圧検出器4a〜4dの固有IDとしてタイヤIDが登録されている。タイヤ空気圧検出器4には、タイヤ空気圧を検出する圧力センサ8、タイヤ温度を検出する温度センサ9、タイヤ2の回転を検出する加速度センサ10が設けられ、これらがコントローラ6に接続されている。コントローラ6には、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を送信可能な送信部11が接続されている。なお、加速度センサ10が重力情報取得手段及び重力検出手段を構成する。
【0018】
車体5には、タイヤ空気圧検出器4から受信したタイヤ空気圧信号Stpによってタイヤ2の空気圧を監視する受信機(以降、TPMS受信機12と記す)が設けられている。TPMS受信機12には、TPMS受信機12の動作を統括管理するタイヤ空気圧監視ECU(Electronic Control Unit)13と、UHF電波を受信可能な受信部14とが設けられている。タイヤ空気圧監視ECU13のメモリ15には、各タイヤ空気圧検出器4a〜4dのタイヤIDが登録されている。受信部14は、アンテナ16と、受信電波を復調及び増幅する受信回路17からなる。TPMS受信機12には、例えば車内インストルメントパネル等に設置された表示部18が接続されている。
【0019】
コントローラ6は、加速度センサ10から出力される加速度信号を基に、タイヤ2が回転状態(車両1が走行状態)に入ったことを検出すると、タイヤ空気圧信号Stpの送信を開始する。即ち、本例のタイヤ空気圧監視システム3は、車両走行中にタイヤ空気圧検出器4が自らタイヤ空気圧信号Stpを車体5に送信する直接式となっている。タイヤ空気圧信号Stpには、タイヤIDの他に、圧力センサ8から入力した圧力データや、温度センサ9から入力した温度データ等が含まれている。タイヤ空気圧検出器4は、他のタイヤ空気圧検出器4と電波送信が重ならないように、時間差をもって電波を送信する。
【0020】
タイヤ空気圧監視ECU13は、タイヤ空気圧信号Stpを受信部14で受信すると、タイヤ空気圧信号Stp内のタイヤIDを基にID照合を実行する。タイヤ空気圧監視ECU13は、ID照合が成立することを確認すると、同じ信号内に含まれる圧力データと低圧閾値とを比較することによりタイヤ空気圧を確認し、タイヤ空気圧が定圧閾値未満であれば、表示部18に低圧警報を表示する。
【0021】
本例のタイヤ空気圧監視ECU13は、タイヤ空気圧信号Stp内の温度データに基づき、低圧閾値を設定する。これは、仮にタイヤ温度が高くなると、ボイルシャルルの法則により、タイヤ空気圧が必然的に高くなることから、タイヤ温度に応じて最適な低圧閾値を設定するためである。
【0022】
タイヤ空気圧検出器4は、加速度センサ10から入力する加速度信号を基に、タイヤ空気圧信号Stpの送信間隔を切り換える。例えば、タイヤ空気圧検出器4は、タイヤ2の無回転時(車両駐停車時)、タイヤ空気圧信号Stpを1回/1分の間隔で送信し、タイヤ2の回転時(車両走行時)も、タイヤ空気圧信号Stpを1回/1分の間隔で送信する。
【0023】
本例のタイヤ空気圧監視システム3には、タイヤ空気圧検出器4から送信される加速度信号を基に、TPMS受信機12のメモリ15内のタイヤ情報19を更新するタイヤ情報更新機能(タイヤ情報更新システム)が設けられている。ところで、例えば車両1が駐車している際、車両1のイグニッションスイッチ20がオフ状態のまま車両1を僅かに動かした後、またはタイヤ交換を行った後、イグニッションスイッチ20をオンすれば、イグニッションスイッチ20のオン/オフの前後で、タイヤ空気圧検出器4内の加速度センサ10の値、つまり重力情報が変化するはずである。よって、この重力情報の変化を見れば、タイヤ2が意識的に回転操作されたこと、つまりタイヤ情報19を更新したいというユーザの意志が分かるはずであり、本例はこの原理を利用し、重力情報に変化が生じた際には、タイヤ情報19の更新意志があるとみなし、TPMS受信機12内のタイヤ情報19を更新する。なお、イグニッションスイッチ20が車両電源に相当する。
【0024】
図2に示すように、本例の加速度センサ10は、タイヤ空気圧検出器4の重力として、タイヤ2の車軸方向の分力(重力分力値Gx)を検出し、加速度信号として重力分力値データDgxを車体5に無線送信する。同図に示すように、重力分力値Gxは、タイヤ2の回転位置に応じて一義的に決まる値であり、これが分かれば、タイヤ2の回転角度θを求めることが可能である。ここで、タイヤ2の車軸21の中心から鉛直方向に延びる線を基準線Lkとし、タイヤ空気圧検出器4に発生する重力をGとすると、基準線Lkに対するタイヤ2の回転角度θ(0°≦θ≦180°)は、次式によって求まる。
【0025】
【数1】

即ち、この式に示されるように、重力分力値Gxが変化すれば、これはタイヤ2が回転したことと同義であることが分かる。よって、本例の場合、重力分力値Gxの変化を確認することにより、タイヤ2の回転有無を判定する。なお、重力分力値Gxが重力情報に相当する。
【0026】
タイヤ空気圧監視ECU13には、車両1のイグニッションスイッチ20の状態を判定するイグニッションスイッチ状態判定部22が設けられている。イグニッションスイッチ20は、車両1の電源状態に対応するスイッチ信号を出力し、例えばIGオフ位置に操作されたとき、IGオフ信号を出力し、ACCオン位置に操作されたとき、ACCオン信号を出力し、IGオン位置に操作されたとき、IGオン信号を出力し、スタータオン位置に操作されたとき、スタータオン信号を出力する。なお、イグニッションスイッチ状態判定部22が判定手段を構成する。
【0027】
イグニッションスイッチ状態判定部22は、イグニッションスイッチ20からIGオフ信号を入力すると、イグニッションスイッチ20がオフ状態であると判定する。一方、イグニッションスイッチ状態判定部22は、イグニッションスイッチ20からACCオン信号、IGオン信号又はスタータオン信号を入力すると、イグニッションスイッチ20がオン状態であると判定する。
【0028】
タイヤ空気圧監視ECU13には、車両1の駐車時に各タイヤ空気圧検出器4が検出した重力分力値Gxを取得する駐車時重力分力取得部23が設けられている。駐車時重力分力取得部23は、イグニッションスイッチ20がオフの際、TPMS受信機12がタイヤ空気圧信号Stpを受信すると、タイヤ空気圧信号Stpから重力分力値データDgxを読み出し、これをイグニッションスイッチ20がオフ状態下の重力分力値Gxとして、タイヤIDと対応付けて保持する。即ち、駐車時重力分力取得部23は、イグニッションスイッチ20がオフ状態の際、それぞれのタイヤ空気圧検出器4a〜4d(タイヤ2a〜2d)ごとに、駐車時における重力分力値Gxを保持する。なお、駐車時重力分力取得部23が重力情報取得手段を構成する。
【0029】
タイヤ空気圧監視ECU13には、車両電源のオン/オフの切り換え前後で、重力分力値Gxに変化があったか否かを判定する重力分力変化判定部24が設けられている。重力分力変化判定部24は、同じタイヤIDにおいて、イグニッションスイッチ20のオン/オフが切り換わる前後の重力分力値Gxを比較することにより、タイヤ2の回転角度θに変化が発生したこと、つまりタイヤ情報19の更新操作が行われたか否かを判定する。重力分力変化判定部24は、4つのタイヤ2a〜2dのうち、少なくとも1つでタイヤ回転を検出すると、タイヤ情報19の更新操作が行われたと判定する。なお、重力分力変化判定部24が判定手段を構成する。
【0030】
タイヤ空気圧監視ECU13には、重力分力変化判定部24の判定結果を基に、TPMS受信機12内のタイヤ情報19を更新するタイヤ情報更新部25が設けられている。タイヤ情報更新部25は、重力分力変化判定部24がタイヤ情報19の更新操作有りと判定すると、タイヤ情報19として、例えばタイヤ2の低圧判定の閾値を初期値に再設定する。なお、タイヤ情報更新部25が更新手段に相当する。
【0031】
次に、本例のタイヤ情報更新機能の動作を、図3を用いて説明する。
図3(a)に示すように、車両1が駐車されているとき、タイヤ2は所定の回転位置をとり、タイヤ空気圧検出器4は車軸21を中心にした円弧軌跡(0°≦θ≦180°)のいずれかの位置で停止する。よって、タイヤ空気圧検出器4においては、このときのタイヤ回転位置に応じた重力分力値Gxが決まることになる。なお、車両1が駐車中とは、イグニッションスイッチ20がIGオフ位置に操作されている状態を言う。
【0032】
図3(a)の場合、タイヤ空気圧検出器4内の加速度センサ10は、このときのタイヤ回転位置に応じた重力分力値GxとしてGx1を検出する。そして、タイヤ空気圧検出器4は、車体5にタイヤ空気圧信号Stpを送信する際、加速度信号として重力分力値データDgx1を送信する。本例の場合、それぞれのタイヤ2a〜2dに取り付けられた各タイヤ空気圧検出器4a〜4dは、定期的にタイヤ空気圧信号Stpを送信するので、各々の電波送信タイミングにおいて重力分力値データDgx1を車体5に無線で通知する。
【0033】
駐車時重力分力取得部23は、イグニッションスイッチ20がオフ状態の際、TPMS受信機12がタイヤ空気圧信号Stpを受信部14で受信すると、タイヤ空気圧信号Stp内に含まれる重力分力値データDgx1を読み出し、この重力分力値データDgx1をタイヤIDと紐付けして保持する。駐車時重力分力取得部23は、同一タイヤIDにおいて、新たな重力分力値データDgx1を取得すると、新値に上書きして保持する。
【0034】
図3(b)に示すように、TPMS受信機12のタイヤ情報19を更新したい場合には、車両1のイグニッションスイッチ20をオフにしたままの状態で、例えば駐車ブレーキ(サイドブレーキ)を解除しつつシフトレバーをニュートラル位置に位置し、車両1を故意に押して僅かに動かす。即ち、車両1のイグニッションスイッチ20がオフのままの状態で、タイヤ2を僅かに回転させる。
【0035】
このように、タイヤ2を故意に回転させた後は、図3(c)に示すように、タイヤ2が図3(a)の状態から所定量回った回転位置をとる。即ち、タイヤ空気圧検出器4は、車軸21を中心にした円弧軌跡において、図3(a)とは異なる位置で停止する。よって、タイヤ空気圧検出器4においては、このときのタイヤ回転位置に応じた重力分力値Gxが決まることになる。
【0036】
イグニッションスイッチ20がオフ状態のまま車両1を僅かに動かした後、図3(d)に示すように、ユーザは直ちに車内のエンジンスイッチ26を操作して、イグニッションスイッチ20をオン状態に切り換える。なお、イグニッションスイッチ20のオン状態への切り換え操作は、イグニッションスイッチ20をACCオン位置、IGオン位置、スタータオン位置のいずれかに切り換える操作を言う。
【0037】
図3(c)の場合、タイヤ空気圧検出器4内の加速度センサ10は、イグニッションスイッチ20のオン操作後、所定の電波送信タイミングで重力の分力検出を行い、このときのタイヤ回転位置に応じた重力分力値GxとしてGx2を検出する。そして、タイヤ空気圧検出器4は、車体5にタイヤ空気圧信号Stpを送信する際、加速度信号として重力分力値データDgx2を送信する。このときも、各タイヤ空気圧検出器4a〜4dは、タイヤ空気圧信号Stpの送信タイミングで無線通知する。
【0038】
重力分力変化判定部24は、イグニッションスイッチ20がオンに切り換わった後、TPMS受信機12でタイヤ空気圧信号Stpを受信すると、このタイヤ空気圧信号Stp内のタイヤIDにおいて、イグニッションスイッチ20のオン/オフの前後で、重力分力値Gxに変化が発生したか否かを判定する。このとき、重力分力変化判定部24は、イグニッションスイッチ20のオン/オフの前後で重力分力値Gxに変化が発生したことを確認すると、タイヤ2が回転したこと、つまりタイヤ情報19の更新操作があったと判定する。重力分力変化判定部24は、タイヤ情報19の更新操作があったことを確認すると、タイヤ情報更新要求をタイヤ情報更新部25に出力する。
【0039】
タイヤ情報更新部25は、重力分力変化判定部24からタイヤ情報更新要求を入力すると、タイヤ空気圧監視ECU13に書き込まれたタイヤ情報19を更新する。本例のタイヤ情報更新部25は、例えばタイヤ情報19の更新動作として、イグニッションスイッチ20がオンした後に受信したタイヤ空気圧信号Stp内に含まれる圧力データを、初期値としてTPMS受信機12のメモリ15に記憶する。
【0040】
一方、重力分力変化判定部24は、あるタイヤIDにおいて、イグニッションスイッチ20のオン/オフの前後で重力分力値Gxに変化が発生しなかったことを確認すると、別のタイヤ空気圧検出器4からのタイヤ空気圧信号Stpの受信に待機する。そして、重力分力変化判定部24は、別のタイヤ空気圧検出器4からタイヤ空気圧信号Stpを受信すると、このタイヤ空気圧検出器4にタイヤIDに関して、イグニッションスイッチ20のオン/オフの前後における重力分力値Gxの変化有無を確認し、重力分力値Gxに変化があれば、タイヤ情報19を更新させる。
【0041】
また、このときも重力分力値Gxに変化がなければ、重力分力変化判定部24は、別のタイヤ空気圧検出器4からのタイヤ空気圧信号Stpの受信に待機し、重力分力に変化を確認できるまで、この処理を繰り返す。なお、4輪の全てで重力分力値Gxに変化が発生しない可能性は極めて低いので、いずれかのタイヤ空気圧検出器4にて重力分力値Gxの変化が確認できるはずであり、その時点でタイヤ情報19が更新されることになる。
【0042】
以上により、本例においては、各タイヤ2a〜2dに取り付けたタイヤ空気圧検出器4a〜4d内の加速度センサ10にて重力分力値Gxを検出する。そして、車両1のイグニッションスイッチ20のオン/オフの切り換え前後で、重力分力値Gxに変化が発生した際には、タイヤ情報19の更新操作が行われたと判定し、タイヤ空気圧監視ECU13内のタイヤ情報19を更新する。このため、タイヤ情報19を更新するのに、更新用のスイッチ等を用いずに済むので、タイヤ情報更新機能のシステム構成の簡素化に寄与する。
【0043】
ところで、イグニッションスイッチ20をオンに切り換えた際、直ぐに車両1を走行させてしまうと、イグニッションスイッチ20がオンに切り換わった際の重力分力値GxをTPMS受信機12に通知することができない可能性がある。よって、これを回避するために、イグニッションスイッチ20がオンに切り換え操作された際、例えば所定時間において車両1を走行させない旨の通知を、車内インストルメントパネルのメータやナビゲーションシステムの画面等で実施すれば、タイヤ情報19の更新操作の有無を精度よく判定することが可能となる。
【0044】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)タイヤ情報19を更新する際には、イグニッションスイッチ20をオフしたまま車両1を僅かに動かし、その後、イグニッションスイッチ20をオンする。このとき、イグニッションスイッチ20のオン/オフの前後で、タイヤ2の回転角度θが変化するので、イグニッションスイッチ20がオフ時の重力分力値Gxと、イグニッションスイッチ20がオン時の重力分力値Gxとで、値が変化する。よって、タイヤ情報19の更新操作があったとみなされ、TPMS受信機12に設定されたタイヤ情報19が更新される。従って、更新用のスイッチ類がなくてもタイヤ情報19を更新することが可能となるので、タイヤ情報更新機能のシステム構成を簡素化することができる。
【0045】
(2)加速度センサ10として、1軸を検出するのみの安価なセンサを使用することが可能となるので、センサにかかるコストを低く抑えることができる。
(3)4輪のタイヤ2a〜2dのうち、少なくとも1つのタイヤ2で重力分力値Gxの変化を検出すれば、タイヤ情報19の更新操作があったとみなし、タイヤ情報19を更新する。このため、イグニッションスイッチ20のオン/オフの前後で、仮に1つのタイヤ2で重力分力値Gxが同じ値をとってしまっても、他のタイヤ2において発生しているタイヤ2の回転角度差により、重力分力値Gxの変化を検出することができる。このため、タイヤ情報19の更新の精度確保に効果が高くなる。
【0046】
(4)タイヤ空気圧検出器4を直接式としたので、タイヤ空気圧検出器4に電波送信を指示するイニシエータが必要とならない。このため、タイヤ情報更新機能の構成簡素化に一層寄与する。
【0047】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・図4に示すように、車体5にイニシエータ40を搭載して、タイヤ情報更新機能をトリガ式としてもよい。イニシエータ40は、タイヤ空気圧検出器4に電波送信を指示するトリガ信号Svcを送信する。また、タイヤ空気圧検出器4は、トリガ信号Svcを受信可能な受信部41が設けられる。本例の場合、駐車時重力分力取得部23は、イグニッションスイッチ20がオンに切り換わったことを確認すると、直ぐにイニシエータ40からトリガ信号Svcを送信し、タイヤ空気圧検出器4a〜4dにタイヤ空気圧信号Stp、つまり重力分力値データDgxを送信させる。こうすれば、イグニッションスイッチ20がオンした際の重力分力値Gxを、より確実にTPMS受信機12に受け取らせることが可能となるので、タイヤ更新操作の有無判定を、より精度よく実施することができる。なお、イニシエータ40がトリガ手段に相当する。
【0048】
・図4のトリガ式の場合、イニシエータ40は、全てのタイヤ空気圧検出器4a〜4dで共用可能な1つだけ設けられていてもよいし、タイヤ空気圧検出器4a〜4dごとに個別に設けられていてもよい。イニシエータ40が1つの場合、各タイヤ空気圧検出器4a〜4dは、イニシエータ40からトリガ信号Svcを受信した際、それぞれが時間差を持ってタイヤ空気圧信号Stpを送信するようにすれば、混信は生じない。
【0049】
・車両1をジャッキアップしてタイヤ2を付け替える場合には、取り付け前後で確実にタイヤの回転角度θが異なるように取り付けてもよい。
・タイヤ空気圧信号Stp内の圧力データは、検出した温度データによって補正された値でもよい。
【0050】
・タイヤ情報更新機能は、1つのタイヤ2でのみ重力情報の変化を監視するものでもよい。
・車両電源のオン/オフ判定は、イグニッションスイッチ20のスイッチ信号を基に判定されることに限定されず、他のスイッチやセンサからの信号を基に判定してもよい。
【0051】
・加速度センサ10は、分力を1軸のみ検出するセンサに限定されず、例えば分力を2軸方向で検出するセンサとしてもよい。
・加速度センサ10は、車軸方向の重力分力を検出するセンサに限定されず、例えば路面平行方向の分力を検出するセンサでもよい。
【0052】
・重力分力値データDgxは、タイヤ空気圧信号Stpに含まれて送信されることに限定されず、タイヤ空気圧信号Stpとは別の独立した信号として送信されてもよい。
・更新対象となるタイヤ情報19は、低圧判定の閾値に限定されず、空気圧判定のアプリケーションや、他の各種設定値でもよい。
【符号の説明】
【0053】
2(2a〜2d)…タイヤ、4(4a〜4d)…タイヤ空気圧検出器、5…車体、10…重力情報取得手段及び重力検出手段を構成する加速度センサ、19…タイヤ情報、20…車両電源としてのイグニッションスイッチ、21…車軸、22…判定手段を構成するイグニッションスイッチ状態判定部、23…重力情報取得手段を構成する駐車時重力分力取得部、24…判定手段を構成する重力分力変化判定部、25…更新手段としてのタイヤ情報更新部、40…トリガ手段としてのイニシエータ、Stp…タイヤ空気圧信号、Gx(Gx1,Gx2)…重力情報としての重力分力値、Svc…トリガ信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧検出器を各タイヤに取り付け、当該タイヤ空気圧検出器から無線によりタイヤ空気圧信号を車体に送信し、当該タイヤ空気圧信号を基にタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視機能のタイヤ情報更新システムであって、
前記タイヤ空気圧検出器にかかる重力の分力を検出する重力情報取得手段と、
前記重力情報取得手段が検出した重力情報を基に、車両電源のオン/オフの前後で当該重力情報が変化したか否かを判定する判定手段と、
前記車両電源のオン/オフの前後で前記重力情報が変化していれば、タイヤ空気圧の監視で使用するタイヤ情報を更新する更新手段と
を備えたことを特徴とするタイヤ情報更新システム。
【請求項2】
前記タイヤ空気圧検出器の重力検出手段は、前記重力情報として、前記タイヤ空気圧検出器の車軸方向における重力の分力を検出し、
前記判定手段は、前記重力検出手段が検出した重力分力値を基に、前記車両電源のオン/オフの前後で前記タイヤに回転が生じたか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報更新システム。
【請求項3】
前記判定手段は、前記重力情報に基づくタイヤ回転の有無の判定を全タイヤにて実施し、これらタイヤのうち少なくとも1つでタイヤ回転を検出すれば、前記タイヤ情報の更新を実施させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ情報更新システム。
【請求項4】
前記タイヤ空気圧検出器が内部の重力検出手段にてタイヤ回転を検出すると、当該重力検出手段によって検出される前記重力情報の送信動作を開始し、当該重力情報を自らが断続的に送信する方式をとる
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のタイヤ情報更新システム。
【請求項5】
前記タイヤ空気圧検出器に電波送信を実行させるトリガ信号を無線送信するトリガ手段を備え、
前記タイヤ空気圧検出器は、前記トリガ手段から送信された前記トリガ信号を受信すると、自身の重力検出センサが検出した前記重力情報を無線送信する方式をとる
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のタイヤ情報更新システム。
【請求項6】
前記タイヤ情報は、タイヤ空気圧の低圧判定に使用する低圧閾値である
ことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のタイヤ情報更新システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−71465(P2013−71465A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209510(P2011−209510)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)