説明

タイヤ用ゴム組成物の製造方法及び空気入りタイヤ

【課題】混練り加工性、転がり抵抗特性及び耐久性(特にゴム強度、耐屈曲疲労性)をバランス良く改善できるタイヤ用ゴム組成物の製造方法、タイヤ用ゴム組成物及びこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分、平均幅3〜35nm、平均長さ50nm〜5μmの棒状シリカ及びシランカップリング剤を混練する工程1と、上記工程1で得られた混練物1、シリカ及びシランカップリング剤を混練する工程2と、上記工程2で得られた混練物2及び加硫促進剤を混練する工程3とを含むタイヤ用ゴム組成物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物の製造方法、タイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの環境問題から、低燃費化に対する社会的要求が高まり、自動車の低燃費化に対応して、転がり抵抗を低減させた低燃費タイヤの開発が要求されている。タイヤの転がり抵抗を低減させる方法として、カーボンブラックをシリカで代替する手法、カーボンブラックやシリカなどの充填剤を減量する手法、ジエン系ゴムの高分子鎖を変性してシリカとゴム高分子鎖の相互作用を高める手法などが知られている。
【0003】
上記手法により、転がり抵抗特性を向上できるものの、シリカはカーボンブラックに比べて補強性、分散性に劣るため、耐久性(ゴム強度、耐屈曲疲労性など)、混練り加工性が悪化する傾向がある。
【0004】
一方特許文献1には、硫黄の吸着剤としてセピオライトを配合したゴム組成物が開示されているが、フィラーとしてのセピオライト配合の効果を効率的に発揮させるゴム組成物の製法などについては詳細に検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−61020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、混練り加工性、転がり抵抗特性及び耐久性(特にゴム強度、耐屈曲疲労性)をバランス良く改善できるタイヤ用ゴム組成物の製造方法、タイヤ用ゴム組成物及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題について検討した結果、予めゴム成分、セピオライトなどの棒状シリカ及びシランカップリング剤を混練してマスターバッチを調製することで、棒状シリカとゴム成分のカップリング反応を充分に進行させたゴム組成物を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、ゴム成分、平均幅3〜35nm、平均長さ50nm〜5μmの棒状シリカ及びシランカップリング剤を混練する工程1と、上記工程1で得られた混練物1、シリカ及びシランカップリング剤を混練する工程2と、上記工程2で得られた混練物2及び加硫促進剤を混練する工程3とを含むタイヤ用ゴム組成物の製造方法に関する。
【0009】
工程1におけるシランカップリング剤の配合量が、工程1で配合される棒状シリカ100質量部に対して、3〜15質量部であり、工程2におけるシランカップリング剤の配合量が、工程2で配合されるシリカ100質量部に対して、3〜15質量部であることが好ましい。
【0010】
上記ゴム成分が、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムを含むことが好ましい。
【0011】
工程1で更にシリカを混練し、ゴム組成物の製造に使用する全シリカ100質量%に対し、工程1におけるシリカの配合割合が、1〜30質量%であることが好ましい。
【0012】
ゴム成分が、下記式
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)で表される化合物により変性されたジエン系ゴムを含むことが好ましい。
【0013】
棒状シリカが、セピオライト鉱物を解繊して得られたものであることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、上記製造方法により得られたタイヤ用ゴム組成物に関する。ここで、ゴム成分100質量部に対して、棒状シリカの含有量が2〜50質量部であり、シリカの含有量が5〜100質量部であることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ゴム成分、特定の棒状シリカ及びシランカップリング剤を混練する工程1と、前記工程1で得られた混練物1、シリカ及びシランカップリング剤を混練する工程2と、前記工程2で得られた混練物2及び加硫促進剤を混練する工程3とを含むタイヤ用ゴム組成物の製造方法であるので、混練り加工性、転がり抵抗特性及び耐久性(特にゴム強度、耐屈曲疲労性)をバランス良く改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】棒状シリカ(セピオライト)の概略構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法は、ゴム成分、平均幅3〜35nm、平均長さ50nm〜5μmの棒状シリカ及びシランカップリング剤を混練する工程1と、前記工程1で得られた混練物1(マスターバッチ)、シリカ及びシランカップリング剤を混練する工程2と、前記工程2で得られた混練物2及び加硫促進剤を混練する工程3とを含む。
【0019】
セピオライトなどの棒状シリカのシラノール基量は通常のシリカより少ないため、棒状シリカとシリカを同時に混錬すると、シランカップリング剤がシリカと優先的に反応し、棒状シリカとの反応が不充分になる。これに対し、本発明は、ゴム成分、棒状シリカ及びシランカップリング剤を予め混練し、カップリング反応が充分に進行したマスターバッチを調製する製法であるため、ゴム成分と棒状シリカのカップリング率が高いゴム組成物が得られる。そのため、補強効果や低発熱効果が効果的に発揮され、転がり抵抗特性及び耐久性(特にゴム強度、耐屈曲疲労性)をバランス良く改善できる。また、混練り加工性にも優れている。
【0020】
(工程1)
工程1では、ゴム成分、平均幅3〜35nm、平均長さ50nm〜5μmの棒状シリカ及びシランカップリング剤が混練される。
【0021】
上記ゴム成分は、通常、天然ゴム(NR)及び/又はジエン系合成ゴムを含む。ジエン系合成ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、下記式(1)で表される化合物により変性されたジエン系ゴム(変性ジエン系ゴム)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、混練り加工性、転がり抵抗特性及び耐久性(特にゴム強度、耐屈曲疲労性)がバランス良く得られるという理由からNRが好ましく、耐屈曲疲労性が高いという理由からBRが好ましく、良好な加工性が得られるという理由からSBRが好ましい。また、上記棒状シリカの配合による効果が充分に得られるという理由から、下記式(1)で表される化合物により変性されたジエン系ゴム(変性ジエン系ゴム)が好ましい。
【化2】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。
【0022】
上記式(1)で表される化合物としては、特開2010−111753号公報で記載されたものが挙げられる。棒状シリカを良好に分散でき、優れた転がり抵抗特性、ゴム強度が得られるという点から、R、R及びRはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)が好ましく、また、R及びRはアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)が好ましい。nは、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3である。
【0023】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記式(1)で表される化合物により変性されるジエン系ゴムとしては、特に限定されず、上記ジエン系ゴムが挙げられる。なかでも、耐屈曲疲労性の向上という理由から、BRが好ましい。
【0025】
変性ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10万以上、より好ましくは20万以上である。10万未満であると、ゴム強度及び耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、該Mwは、好ましくは200万以下、より好ましくは100万以下である。200万を超えると、混練り加工性が悪化して棒状シリカなどの分散不良を引き起こし、ゴム強度が悪化する傾向がある。
なお、重量平均分子量(Mw)は、後述の実施例に記載の方法により測定した値である。
【0026】
ゴム組成物の製造に使用する全ゴム成分100質量%に対し、工程1におけるゴム成分の配合割合は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは100質量%である。これにより、棒状シリカのカップリング反応が効果的に進行する。
【0027】
本発明で使用される特定の棒状シリカは、球状の形状を有する通常のシリカとは異なり、棒状又は針状の形状を有し、その表面にシラノール基を有する無機材料(シリカ)である。棒状シリカとしては、例えば、セピオライト、パリゴルスカイト、アタパルジャイト、シロタイル、ラフリナイト、ファルコンドアイト、イモゴライトなどが挙げられる。なかでも、不純物が少なく、シラノール基が多いという理由から、セピオライト、アタパルジャイトが好ましい。なお、本明細書では、単にシリカと記載する場合には、特に言及しない限り、球状のシリカをいう。
【0028】
棒状シリカの表面には、シラノール基が存在している。そのため、シランカップリング剤を介してゴム分子と棒状シリカを結合させ、棒状シリカの配合による効果が充分に得られる。また、上記変性ジエン系ゴムを配合する場合、変性ジエン系ゴムと棒状シリカの間に直接強い相互作用を形成できるので、配合による効果がより発揮される。
【0029】
棒状シリカは、繊維状材料であるセピオライト鉱物[MgSi1230(OH)(HO)・8(HO)]を解繊して得られたものを好適に使用できる。セピオライト鉱物の構造は、Si−O四面体が3本連結して繊維方向に平行なSi−O四面体リボンを形成し、このリボンは八面体配位のマグネシウムイオンによって結び付けられ、タルク構造に似た2:1型を形成する。これらが互いに粘着して繊維束を形成しており、凝集物を形成し得る。
【0030】
上記凝集物は工業的工程、例えば微粉化(粉砕)または化学的修飾(例えば、欧州特許第170299号公報を参照)などで分裂(解繊)可能であり、それによって直径がナノメートルの繊維、即ち剥離(解繊)した棒状シリカ(セピオライト)が生じ得る。本発明では、セピオライト鉱物の解繊方法は特に限定されないが、棒状シリカ(セピオライト)の繊維としての形状を実質的に壊すことなく解繊することが好ましい。このような解繊方法としては、例えば、湿式粉砕法(例えば、欧州特許第170299号公報、特開平5−97488号公報、欧州特許第85200094−4号公報などに記載の方法)などが挙げられる。
【0031】
湿式粉砕法の一例を具体的に説明する。まず、水分を含んだ状態の棒状シリカ(セピオライト)を2mm以下の粒度になるまで粉砕後、懸濁液の固形分濃度が5〜25%となるように水を加えた後、分散剤(例えば、ヘキサメタリン酸アルカリ塩)を添加する。次に、高せん断力を有する撹拌機を使用して懸濁液を5〜15分間撹拌する。撹拌の際には、まず、低速回転で2〜7分間撹拌し、次に、高速回転で2〜8分間撹拌する。続いて、上澄みをデカンテーション又は遠心分離により分離することにより、繊維としての形状を実質的に壊すことなく解繊された棒状シリカ(セピオライト)を得ることができる。
【0032】
なお、本発明におけるセピオライトは、アタパルジャイト(パリゴルスカイトとしても知られる)も含む。アタパルジャイトは、アタパルジャイトが有する単位格子の方が若干小さい(繊維長が小さい)以外はセピオライトと構造的及び化学的にほとんど同一である。
【0033】
棒状シリカの平均幅は、3nm以上、好ましくは5nm以上である。3nm未満であると、表面積が大きくなり、ゴムへの分散が悪くなる傾向がある。棒状シリカの平均幅は、35nm以下、好ましくは30nm以下である。35nmを超えると、アスペクト比が小さくなり、充分な転がり抵抗特性が得られない傾向がある。
【0034】
棒状シリカの平均長さは、50nm以上、好ましくは100nm以上、より好ましくは300nm以上である。50nm未満であると、アスペクト比が小さくなり、充分な転がり抵抗特性が得られない傾向がある。棒状シリカの平均長さは、5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下である。5μmを超えると、破壊の起点になるため、ゴム強度が悪化する傾向がある。
【0035】
棒状シリカのアスペクト比(平均長さ/平均幅)は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上である。2未満であると、充分な転がり抵抗特性が得られない傾向がある。棒状シリカのアスペクト比の上限は特に限定されず、上記形状の範囲内で、大きいほど好ましい。
【0036】
図1は、棒状シリカ(セピオライト)の概略構造を示す模式図である。図1に示すように、棒状シリカ(セピオライト)は、針状又は長い繊維状(棒状)の形状を有している。セピオライトの幅、厚み、長さは、それぞれ図1のX、Y、Zに相当する。言い換えると、セピオライトの幅(X)とは、主面(平面視したときに面積が最大となる面)の短辺の長さであり、セピオライトの厚み(Y)とは、主面に対する法線方向の長さであり、セピオライトの長さ(Z)とは、主面の長辺の長さである。
【0037】
なお、本明細書において、棒状シリカの平均幅は、透過型電子顕微鏡により測定した棒状シリカのXの平均値(例えば、100個の棒状シリカのXを測定し、算出した平均値)である。また、本明細書において、棒状シリカの平均長さは、透過型電子顕微鏡により測定した棒状シリカのZの平均値(例えば、100個の棒状シリカのZを測定し、算出した平均値)である。
【0038】
ゴム組成物の製造に使用する全棒状シリカ100質量%に対し、工程1における棒状シリカの配合割合は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは100質量%である。これにより、棒状シリカのカップリング反応が効果的に進行する。
【0039】
工程1では、棒状シリカとともに、シリカ(球状のシリカ)を混練してもよい。シリカとしては特に限定されないが、工程2と同様のものを使用できる。ここで、ゴム組成物の製造に使用する全シリカ100質量%に対し、工程1におけるシリカの配合割合は、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは1〜15質量%である。30質量%を超えると、棒状シリカとシランカップリング剤の反応が進行しにくくなり、転がり抵抗特性の改善効果が低下する傾向がある。
【0040】
シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシランなどのメルカプト系シランカップリング剤などがあげられる。なかでも、加工性が良好で、かつ棒状シリカの分散性が高いという点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドや、メルカプト系シランカップリング剤が好ましい。
【0041】
転がり抵抗特性及び耐久性の改善効果が大きく、かつ良好な加工性も得られるという点から、メルカプト系シランカップリング剤としては、下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bとの合計量に対して、結合単位Bを1〜70モル%の割合で共重合したものが好ましい。
【化3】

【化4】

(式中、x、yはそれぞれ1以上の整数である。Rは水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基若しくはアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基若しくはアルキニレン基、又は該アルキル基若しくは該アルケニル基の末端が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。Rは水素、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基若しくはアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基若しくはアルケニル基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基若しくはアルキニル基を示す。RとRとで環構造を形成してもよい。)
【0042】
上記構造のシランカップリング剤は、結合単位Aと結合単位Bのモル比が上記条件を満たすため、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC−S−C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
【0043】
また、結合単位Aと結合単位Bのモル比が前記条件を満たす場合、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは、結合単位Bはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの−C15部分が結合単位Bの−SH基を覆うため、ポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
【0044】
のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などが挙げられる。
【0045】
、Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
【0046】
、Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などが挙げられる。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
【0047】
、Rの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基などが挙げられる。該アルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
【0048】
、Rの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基などが挙げられる。該アルケニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
【0049】
、Rの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基などが挙げられる。該アルキニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
【0050】
、Rの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などが挙げられる。該アルキニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
【0051】
上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3〜300の範囲が好ましい。この範囲内であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの−C15が覆うため、スコーチタイムが短くなることを抑制できるとともに、棒状シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
【0052】
上記構造のシランカップリング剤としては、例えば、Momentive社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60などを使用することができる。
【0053】
工程1におけるシランカップリング剤の配合量は、工程1で配合される棒状シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。また、該配合量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0054】
工程1でシリカを混練する場合、工程1におけるシランカップリング剤の配合量は、工程1で配合される棒状シリカ及びシリカの合計量100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。該配合量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0055】
これらシランカップリング剤の配合量に関し、下限未満では、ゴム成分に対する棒状シリカのカップリング率が低く、転がり抵抗特性やゴム強度の改善効果が充分に得られないおそれがある。上限を超えると、未反応のシランカップリング剤が残存し、混練り加工性が悪化するおそれがある。
【0056】
工程1の混練り方法としては、温度を制御しながら各成分を混練りできる方法であれば特に限定されないが、例えば、バンバリーミキサー、ニーダーなどの密閉式混練機やオープンロールなどを好適に用いることができる。
【0057】
工程1の混練り温度は130〜170℃が好ましい。130℃未満であると、カップリング反応の効率が悪く、転がり抵抗特性やゴム強度の改善効果が充分に発揮されない傾向がある。170℃を超えると、急激な粘度上昇により加工性が悪化する傾向がある。混練り時間は1〜10分であることが好ましい。
【0058】
なお、前記工程1では、本発明の効果を阻害しない範囲で前記成分以外の成分を適宜配合してもよく、前記成分のみを配合してもよい。
【0059】
(工程2)
工程2では、前記工程1で得られた混練物1(マスターバッチ)、シリカ及びシランカップリング剤が混練される。
【0060】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。シリカは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは80m/g以上である。50m/g未満では、補強効果が小さく、耐久性が低下する傾向がある。該NSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下である。300m/gを超えると、分散性が悪く、ヒステリシスロスが増大し、転がり抵抗特性が低下する傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0062】
ゴム組成物の製造に使用する全シリカ100質量%に対し、工程2におけるシリカの配合割合は、40質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。該配合量が上記範囲であると、混練り加工性、転がり抵抗特性及び耐久性が良好に得られる。
【0063】
工程2で配合されるシランカップリング剤としては、工程1で配合されるシランカップリング剤と同様のものが挙げられる。なかでも、加工性が良好で、高いシリカ分散性が得られるという点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドや、メルカプト系シランカップリング剤が好ましい。
【0064】
本発明では、混練り加工性の点から、異種のシランカップリング剤を併用することが好ましく、例えば、工程1で上記メルカプト系シランカップリング剤を配合し、工程2でビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤を配合することが好ましい。
【0065】
工程2におけるシランカップリング剤の配合量は、工程2で配合されるシリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。3質量部未満では、転がり抵抗特性やゴム強度が悪化するおそれがある。また、該配合量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。15質量部を超えると、未反応のシランカップリング剤が残存し、混練り加工性が悪化するおそれがある。
【0066】
工程2では、カーボンブラックが配合されることが好ましい。該カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは30m/g以上、より好ましくは60m/g以上である。30m/g未満では、充分な補強性能が得られず、ゴム強度が低下する傾向がある。カーボンブラックのNSAは、好ましくは150m/g以下、より好ましくは100m/g以下である。150m/gを超えると、分散性に劣り、転がり抵抗特性が低下する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0067】
工程2の混練り方法としては、工程1と同様の方法が好適であり、混練り温度、混練り時間としても工程1と同様の条件が好適である。
【0068】
なお、前記工程2では、前記成分以外にも、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、オイルなどを適宜配合できる。
【0069】
(工程3)
工程3では、前記工程2で得られた混練物2及び加硫促進剤が混練される。加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなどのチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系加硫促進剤をあげることができ、その配合量は、調製されるゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3質量部である。
【0070】
工程3では、通常、硫黄が配合される。硫黄の配合量は適宜選択できる。
【0071】
工程3の混練り方法としては、公知の仕上げ練り方法が挙げられる。混練り温度、混練り時間は適宜選択できる。
【0072】
(工程4)
次いで、前記工程3で得られた混練物3を加硫する工程4が通常行なわれる。これにより、加硫ゴム組成物が得られる。
【0073】
前述の製造法により得られたゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。10質量%未満であると、転がり抵抗特性、ゴム強度や混練り加工性が悪化する傾向がある。該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。90質量%を超えると、ゴム強度が悪化する傾向がある。
【0074】
上記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。10質量%未満であると、充分な耐屈曲疲労性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。90質量%を超えると、混練り加工性が悪化する傾向がある。
【0075】
上記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中の変性ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。15質量%未満であると、変性ジエン系ゴムの配合による効果が小さくなる傾向がある。該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。90質量%を超えると、ゴム強度、混練り加工性が低下する傾向がある。
【0076】
上記ゴム組成物において、棒状シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。2質量部未満では、棒状シリカを配合した効果が充分に得られないおそれがある。また、該棒状シリカの含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。50質量部を超えると、混練り加工性が悪化する傾向がある。
【0077】
上記ゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。5質量部未満であると、充分な耐久性が得られない傾向がある。シリカの含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。100質量部を超えると、混練り加工性が悪化する傾向がある。
【0078】
上記ゴム組成物において、棒状シリカ及びシリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは40質量部以上である。10質量部未満であると、充分な耐久性が得られない傾向がある。該合計含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。150質量部を超えると、混練り加工性が悪化する傾向がある。
【0079】
上記ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、棒状シリカ及びシリカの合計含有量100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。3質量部未満では、カップリング効果が不充分で、良好なフィラー分散性が得られない傾向がある。また、該シランカップリング剤の含有量は、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。15質量部を超えると、未反応のシランカップリング剤が残存し、得られるゴム組成物の加工性及び破壊特性の低下を招くおそれがある。
【0080】
上記ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。2質量部未満では、良好な補強効果が発揮されない傾向がある。カーボンブラックの含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。50質量部を超えると、混練り加工性が悪化する傾向がある。また、ヒステリシスロスが増大し、転がり抵抗特性が低下する傾向がある。
【0081】
上記ゴム組成物は、タイヤの各部材に使用でき、なかでも、ベルト、カーカスなど、タイヤコードを備える部材のタイヤコード被覆用ゴム組成物として好適に使用できる。
【0082】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、前記成分を配合した未加硫のゴム組成物でタイヤコードを被覆してベルト、カーカスに使用するプライを形成した後、該プライと他のタイヤ部材とを貼りあわせて未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0083】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤなどとして好適に用いられ、特に乗用車用タイヤとしてより好適に用いられる。
【実施例】
【0084】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0085】
以下、製造例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
シクロヘキサン:関東化学(株)製のシクロヘキサン
1,3−ブタジエン:東京化成工業(株)製の1,3−ブタジエン
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製のテトラメチルエチレンジアミン
n−ブチルリチウム:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
変性剤:アヅマックス社製の3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(式(1)において、R、R及びR=メトキシ基、R及びR=メチル基、n=3)
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
【0086】
製造例により得られた重合体の分析は以下の手法で行った。
【0087】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGELSUPERMALTPORE HZ−M)を用い、標準ポリスチレンにより換算して測定した。
【0088】
(製造例1)
充分に窒素置換した耐圧容器にシクロヘキサン1500ml、1,3−ブタジエン900mmol、テトラメチルエチレンジアミン0.2mmol、n−ブチルリチウム0.12mmolを加えて、40℃で48時間撹拌した。その後、変性剤0.12mmolを加えて反応を止め、反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、再沈殿精製により重合体(変性BR)を得た。重合体1のMwは460000であった。
【0089】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のBR150B
重合体(変性BR):上記製造例1
シリカ:デグッサ社製のULTRASIL VN3(窒素吸着比表面積:175m/g)
棒状シリカ1:TOLSA社製のPANGEL AD(長さ:200〜2000nm、幅:5〜30nm、セピオライト鉱物の湿式粉砕品)
棒状シリカ2:TOLSA社製のPANSIL(長さ:200〜5000nm、幅:5〜30nm、セピオライト鉱物の乾式粉砕品)
シランカップリング剤1:デグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤2:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のNXT−Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体、結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN330(窒素吸着比表面積:75m/g)
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
老化防止剤:フレキシス社製のサントフレックス13
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラ−NS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0090】
実施例及び比較例
(ゴム組成物の製造)
工程1:表1の工程1に示す成分を配合し、(株)神戸製鋼製のバンバリーミキサーを用いて150℃で4分間混練し、混練物1を得た。
工程2:混練物1に、更に工程2に示す成分を添加し、同様に150℃で4分間混練し、混練物2を得た。
工程3:混練物2に、更に工程3に示す成分を添加し、90℃の条件下で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
工程4:得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫し、加硫ゴムシートを作製した。
【0091】
上記未加硫ゴム組成物、加硫ゴムシートを用いて以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0092】
(混練り加工性指数)
JIS K6300に準じて、130℃で上記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度を測定し、測定結果を下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど、ムーニー粘度が低く、混練り加工性に優れることを示す。
(混練り加工性指数)=(比較例1のムーニー粘度)/(各配合のムーニー粘度)×100
【0093】
(低発熱性能指数)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、周波数10Hz、初期歪み10%及び動歪2%の条件下で、70℃における上記加硫ゴムシートの損失正接tanδを測定し、測定結果を下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど、発熱しにくく、転がり抵抗特性に優れることを示す。
(低発熱性能指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0094】
(ゴム強度指数)
JIS K6251に準じて引張試験を行って上記加硫ゴムシートの破断伸びを測定し、測定結果を下記計算式により指数表示した。指数が大きい程、ゴム強度が高く、耐久性に優れることを示す。
(ゴム強度指数)=(各配合の破断伸び)/(比較例1の破断伸び)×100
【0095】
(耐屈曲疲労性指数)
上記加硫ゴムシートの耐屈曲疲労性の評価は、(株)上島製作所製の定応力/定歪み疲労試験機(FT−3100)を用い、ISO6943の方法に準拠して行った。上記加硫ゴムシートからなるダンベル3号の試験片に対して、1Hz、30%の歪みを繰り返し与え続け、試験片が破断するまでの回数を測定し、測定結果を下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど、耐屈曲疲労性が高く、耐久性に優れることを示す。
(耐屈曲疲労性指数)=(各配合の回数)/(比較例1の回数)×100
【0096】
【表1】

【0097】
表1より、棒状シリカ、シリカ及びゴム成分の全量を同時に工程1で混練した比較例に比べて、予めゴム成分、特定の棒状シリカ及びシランカップリング剤のマスターバッチを作製して調製した実施例では、良好な性能が得られた。例えば、比較例3及び実施例4の結果から、マスターバッチの作製によって混練り加工性、転がり抵抗特性、ゴム強度及び耐屈曲疲労性の全性能が改善されることが明らかとなった。特にBRや変性BRを配合した場合に、耐屈曲疲労性が顕著に改善された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、平均幅3〜35nm、平均長さ50nm〜5μmの棒状シリカ及びシランカップリング剤を混練する工程1と、
前記工程1で得られた混練物1、シリカ及びシランカップリング剤を混練する工程2と、
前記工程2で得られた混練物2及び加硫促進剤を混練する工程3とを含むタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
工程1におけるシランカップリング剤の配合量が、工程1で配合される棒状シリカ100質量部に対して、3〜15質量部であり、
工程2におけるシランカップリング剤の配合量が、工程2で配合されるシリカ100質量部に対して、3〜15質量部である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記ゴム成分が、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムを含む請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
工程1で更にシリカを混練し、
ゴム組成物の製造に使用する全シリカ100質量%に対し、工程1におけるシリカの配合割合が、1〜30質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
ゴム成分が、下記式
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)で表される化合物により変性されたジエン系ゴムを含む請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項6】
棒状シリカが、セピオライト鉱物を解繊して得られたものである請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られたタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
ゴム成分100質量部に対して、棒状シリカの含有量が2〜50質量部であり、シリカの含有量が5〜100質量部である請求項7に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−144619(P2012−144619A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3142(P2011−3142)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】