説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】良好な耐摩耗性能を有しつつ、低燃費性能と耐劣化性能を両立できるタイヤ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴム及び溶液重合で合成されたジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカと、平均一次粒子径が200nm以下の酸化亜鉛とを含み、前記ゴム成分100質量部に対して、前記酸化亜鉛の含有量が0.3〜5質量部であるタイヤ用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
輸送業界では、石油の高騰に伴う経費の増大を理由として、低燃費性能に優れたタイヤが望まれている。低燃費性能(低発熱性能)を向上させる観点から、天然ゴムやシリカが配合されることが多い。
【0003】
しかし、天然ゴムには不飽和結合が含まれるため、非ジエン系ゴムに比べて耐熱性(耐劣化性能)が劣る傾向がある。また、シリカ配合では低燃費性を改善できる反面、補強性が低く耐摩耗性能が低下する傾向がある。従って、従来のシリカ配合では、良好な耐摩耗性能を得ながら、低燃費性能と耐劣化性能を両立することは困難であった。
【0004】
特許文献1には、石油外資源の含有比率を高めるために、天然ゴム及びエポキシ化天然ゴムを用いたゴム組成物が開示されている。しかし、良好な耐摩耗性能を得ながら、低燃費性能と耐劣化性能を両立するという点で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−169431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、良好な耐摩耗性能を有しつつ、低燃費性能と耐劣化性能を両立できるタイヤ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴム及び溶液重合で合成されたジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカと、平均一次粒子径が200nm以下の酸化亜鉛とを含み、上記ゴム成分100質量部に対して、上記酸化亜鉛の含有量が0.3〜5質量部であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0008】
上記改質天然ゴムは、トルエン不溶分として測定されるゲル含有率が20質量%以下であることが好ましい。
上記改質天然ゴムは、クロロホルム抽出物の31P NMR測定において、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークが存在せず、実質的にリン脂質が存在しないことが好ましい。
上記改質天然ゴムは、窒素含有量が0.3質量%以下であることが好ましい。
上記ゴム成分100質量部に対して、上記酸化亜鉛の含有量が0.3〜3質量部であることが好ましい。
【0009】
上記ジエン系ゴムが、下記式(1)で表される化合物又は分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性されたものであることが好ましい。
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基又は環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)
【0010】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記改質天然ゴム及び溶液重合で合成されたジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカと、特定量の上記酸化亜鉛とを含むので、良好な耐摩耗性能を有しつつ、優れた低燃費性能と高い耐劣化性能を有し、これらの性能をバランス良く改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴム及び溶液重合で合成されたジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカと、平均一次粒子径が200nm以下の酸化亜鉛とを含み、上記ゴム成分100質量部に対して、上記酸化亜鉛の含有量が0.3〜5質量部である。
以下、改質天然ゴムをHPNR、溶液重合で合成されたジエン系ゴムを溶液重合ジエン系ゴムともいう。
【0013】
本発明によれば、天然ゴム(NR)中に含まれるタンパク質やゲル分、リン脂質を低減、除去した改質天然ゴム(HPNR)を用いることでNRの使用に比べて、更なる低燃費化を図ることができる。一方、HPNRをNRのケン化処理などによって合成する際、その合成時にNR中の劣化防止成分も除去されるため、HPNRをタイヤ用ゴム組成物に配合すると、NRを配合する場合に比べて耐久性が低下し、耐劣化性能が劣ってしまう傾向がある。本発明では、特定の平均一次粒子径を持つ微粒子酸化亜鉛が配合され、比表面積が大きいことから、加硫促進助剤として効果的に機能し、ゴムをより均一に加硫できる。従って、シリカ配合にHPNR、ジエン系ゴム及び特定量の微粒子酸化亜鉛を配合することで、本発明の効果が得られる。
【0014】
上記改質天然ゴム(HPNR)は、リン含有量が200ppm以下である。200ppmを超えると、貯蔵中にゲル量が増加し、加硫ゴムのtanδが上昇する傾向がある。該リン含有量は、150ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。ここで、リン含有量は、たとえばICP発光分析等、従来の方法で測定することができる。リンは、リン脂質(リン化合物)に由来するものである。
【0015】
改質天然ゴム中のゲル含有率は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましい。20質量%を超えると、ムーニー粘度が高くなるなど、加工性が低下する傾向がある。ゲル含有率とは、非極性溶媒であるトルエンに対する不溶分として測定した値を意味し、以下においては単に「ゲル含有率」または「ゲル分」と称することがある。ゲル分の含有率の測定方法は次のとおりである。まず、天然ゴム試料を脱水トルエンに浸し、暗所に遮光して1週間放置後、トルエン溶液を1.3×105rpmで30分間遠心分離して、不溶のゲル分とトルエン可溶分とを分離する。不溶のゲル分にメタノールを加えて固形化した後、乾燥し、ゲル分の質量と試料の元の質量との比からゲル含有率が求められる。
【0016】
改質天然ゴムは、実質的にリン脂質が存在しないことが好ましい。「実質的にリン脂質が存在しない」とは、天然ゴム試料をクロロホルムで抽出し、抽出物の31P NMR測定において、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークが存在しない状態を表す。−3ppm〜1ppmに存在するリンのピークとは、リン脂質におけるリンのリン酸エステル構造に由来するピークである。
【0017】
改質天然ゴムにおいて、窒素含有量は0.3質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましい。窒素含有量が0.3質量%を超えると、貯蔵中にムーニー粘度が上昇する傾向がある。窒素はタンパク質に由来する。窒素含有量は、例えばケルダール法等、従来の方法で測定することができる。
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中の改質天然ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。10質量%未満であると、十分な低燃費効果が得られない傾向にある。該改質天然ゴムの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。90質量%を超えると、十分なウェットスキッド性能を確保できない場合がある。
【0019】
改質天然ゴムの製造方法としては、例えば、天然ゴムラテックスをアルカリによりケン化し、ケン化後凝集させたゴムを洗浄し、その後乾燥することにより製造する方法が挙げられる。ケン化処理は、天然ゴムラテックスに、アルカリと、必要に応じて界面活性剤を添加して所定温度で一定時間、静置することにより行う。なお、必要に応じて撹拌等を行っても良い。上記製造方法によれば、ケン化により分離したリン化合物が洗浄除去されるので、天然ゴムのリン含有量を抑えることができる。また、ケン化処理により、天然ゴム中の蛋白質が分解されるので、天然ゴムの窒素含有量を抑えることができる。本発明では、天然ゴムラテックスにアルカリを添加してケン化できるが、天然ゴムラテックスに添加することにより、効率的にケン化処理を行えるという効果がある。
【0020】
天然ゴムラテックスはヘビア樹の樹液として採取され、ゴム分のほか水、蛋白質、脂質、無機塩類などを含み、ゴム中のゲル分は種々の不純物の複合的な存在に基づくものと考えられている。本発明では、ヘビア樹をタッピングして出てくる生ラテックス、あるいは遠心分離法によって濃縮した精製ラテックスを使用できる。さらに、生ゴムラテックス中に存在するバクテリアによる腐敗の進行を防止し、ラテックスの凝固を避けるために、常法によりアンモニアを添加したハイアンモニアラテックスであってもよい。
【0021】
ケン化処理に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アミン化合物等が挙げられ、ケン化処理の効果や天然ゴムラテックスの安定性への影響の観点から、特に水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いることが好ましい。
【0022】
アルカリの添加量は特に限定されないが、天然ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、下限は0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、上限は12質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、7質量部以下がさらに好ましく、5質量部以下が特に好ましい。アルカリの添加量が0.1質量部未満では、ケン化処理に時間がかかってしまうおそれがある。また逆にアルカリの添加量が12質量部を超えると天然ゴムラテックスが不安定化するおそれがある。
【0023】
界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が使用可能である。陰イオン性界面活性剤としては、例えばカルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、リン酸エステル系等の陰イオン性界面活性剤があげられる。非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンエーテル系、ポリオキシアルキレンエステル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、糖脂肪酸エステル系、アルキルポリグリコシド系等の非イオン性界面活性剤があげられる。両性界面活性剤としては、例えばアミノ酸型、ベタイン型、アミンオキサイド型等の両性界面活性剤があげられる。なかでも、陰イオン性界面活性剤が好ましく、スルホン酸系の陰イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0024】
界面活性剤の添加量は、天然ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、下限は0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、1.1質量部以上が更に好ましく、2.0質量部以上が特に好ましく、上限は6質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3.5質量部以下がさらに好ましく、3質量部以下が特に好ましい。界面活性剤の添加量が0.01質量部未満では、ケン化処理時に天然ゴムラテックスが不安定化するおそれがある。また逆に界面活性剤の添加量が6質量部を超えると天然ゴムラテックスが安定化しすぎて凝固が困難になるおそれがある。また、1.1質量部以上である場合には、天然ゴム中のリン含有量、窒素含有量、ゲル含有率をより低減することができる。
【0025】
ケン化処理の温度は、アルカリによるケン化反応が十分な反応速度で進行しうる範囲、および天然ゴムラテックスが凝固等の変質を起こさない範囲で適宜、設定できるが、通常は20〜70℃が好ましく、30〜70℃がより好ましい。また処理の時間は、天然ゴムラテックスを静置して処理を行う場合、処理の温度にもよるが、十分な処理を行うことと、生産性を向上することとを併せ考慮すると3〜48時間が好ましく、3〜24時間がより好ましい。
【0026】
ケン化反応終了後、凝集させたゴムを破砕し、洗浄処理を行う。凝集方法としては、例えば、ギ酸等の酸を添加し、pHを調整する方法が挙げられる。また、洗浄処理としては、例えばゴム分を水で希釈して洗浄後、遠心分離処理を行い、ゴム分を取り出す方法が挙げられる。遠心分離する際は、まず天然ゴムラテックスのゴム分が5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるように水で希釈する。次いで、5000〜10000rpmで1〜60分間遠心分離すればよく、所望のリン含有量になるまで洗浄を繰り返せばよい。洗浄処理終了後、ケン化処理天然ゴムラテックスが得られる。ケン化処理天然ゴムラテックスを乾燥することにより、本発明における改質天然ゴムが得られる。
【0027】
上記製造方法では、天然ゴムラテックス採取後15日以内にケン化、洗浄及び乾燥の工程を終了することが好ましい。より好ましくは10日以内、更に好ましくは5日以内である。採取後固形化せずに15日を超えて放置しておくとゲル分が増大していくためである。
【0028】
本発明では、ゴム成分として溶液重合で合成されたジエン系ゴムが使用される。HPNRとともに、溶液重合ジエン系ゴムを使用することにより、十分なウェットスキッド性能を確保できる。
【0029】
溶液重合で合成されたジエン系ゴムとしては、溶液重合で合成されたスチレンブタジエンゴム(S−SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)等及びこれらの混合物を使用することができる。また、変性剤で変性した変性ジエン系ゴムも使用できる。なかでも、十分な耐摩耗性とウェットスキッド性能を確保するという理由から、変性ジエン系ゴムが好ましく、変性S−SBRがより好ましい。
【0030】
溶液重合ジエン系ゴムの変性に使用する変性剤としては、ポリマーとの結合性がよく、かつフィラーとの親和性が高いという点から、上記式(1)で表される化合物、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物が好ましく、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物がより好ましい。なお、変性溶液重合ジエン系ゴムは、溶液重合ジエン系ゴムの末端に変性剤を反応させたものが好ましい。
【0031】
上記式(1)のR、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)等が挙げられる。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等の炭素数5〜8のシクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等の炭素数6〜8のアリールオキシ基等)も含まれる。
【0032】
上記シリルオキシ基としては、例えば、炭素数1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、ジエチルイソプロピルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、t−ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基等)等が挙げられる。
【0033】
上記アセタール基としては、例えば、−C(RR′)−OR″、−O−C(RR′)−OR″で表される基を挙げることができる。前者としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、t−ブトキシメチル基、ネオペンチルオキシメチル基等が挙げられ、後者としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、i−プロポキシメトキシ基、n−ブトキシメトキシ基、t−ブトキシメトキシ基、n−ペンチルオキシメトキシ基、n−ヘキシルオキシメトキシ基、シクロペンチルオキシメトキシ基、シクロヘキシルオキシメトキシ基等を挙げることができる。R、R及びRとしては、アルコキシ基が望ましい。これにより、優れた低発熱性(低燃費性)を得ることができる。
【0034】
上記式(1)で表される化合物において、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基又は環状エーテル基を表す。
【0035】
上記式(1)のR及びRのアルキル基としては、例えば、上記アルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0036】
及びRの環状エーテル基としては、例えば、オキシラン基、オキセタン基、オキソラン基、オキサン基、オキセパン基、オキソカン基、オキソナン基、オキセカン基、オキセト基、オキソール基などのエーテル結合を1つ有する環状エーテル基、ジオキソラン基、ジオキサン基、ジオキセパン基、ジオキセカン基などのエーテル結合を2つ有する環状エーテル基、トリオキサン基などのエーテル結合を3つ有する環状エーテル基などが挙げられる。なかでも、エーテル結合を1つ有する炭素数2〜7の環状エーテル基が好ましく、エーテル結合を1つ有する炭素数3〜5の環状エーテル基がより好ましい。また、環状エーテル基は環骨格内に不飽和結合を有していないことが好ましい。
【0037】
上記式(1)のn(整数)としては、1〜5が好ましい。これにより、優れた低発熱性(低燃費性)を得ることができる。更には、nは2〜4がより好ましく、3が最も好ましい。nが0であるとケイ素原子と窒素原子との結合が困難であり、nが6以上であると変性剤としての効果が薄れる。
【0038】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルブトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、ジメチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジメチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジメチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジメチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジエトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジエチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジエトキシメチルシラン、下記式(3)〜(10)で表される化合物等が挙げられる。なかでも、ポリマーとの結合性がよく、かつフィラーとの親和性が高いという点から、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、下記式(3)で表される化合物が好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
【化2】

【0040】
溶液重合ジエン系ゴムの変性に使用する変性剤としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物が好適である。
【0041】
分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル、1,4−ジグリシジルベンゼン、1,3,5−トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物、4,4’−ジグリシジル−ジフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジル−ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等のポリグリシジルアミノ化合物があげられる。なかでも、分子中に2個以上のエポキシ基および1個以上の窒素含有基を有する多官能化合物が好ましく、下記式(2)で示される多官能化合物がより好ましい。
【0042】
【化3】

式(2)中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R10は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、及びハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。zは1〜6(好ましくは1〜4)の整数を表す。
【0043】
上記多官能化合物は、ジグリシジルアミノ基を有する多官能化合物であることが更に好ましい。また、多官能化合物の分子内のエポキシ基の数は2個以上、より好ましくは3個以上、さらに好ましくは4個以上である。
【0044】
変性剤によるジエン系重合体の変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報等に記載されている方法等、従来公知の手法を用いることができる。例えば、ジエン系重合体と変性剤とを接触させればよく、ジエン系重合体溶液中に変性剤を添加して反応させる方法等が挙げられる。
【0045】
溶液重合ジエン系ゴムのスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。5質量%未満の場合、ウェットスキッド性能が悪化する傾向がある。また、該スチレン含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。45質量%を超えると、低発熱性能が悪化する傾向がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、H−NMR測定によって算出される。
【0046】
ゴム成分100質量%中の溶液重合ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。10質量%未満であると、十分なウェットスキッド性能を確保できない場合がある。該溶液重合ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。90質量%を超えると、低発熱性能を十分に改善することができないおそれがある。
【0047】
改質天然ゴム及び溶液重合ジエン系ゴム以外に本発明で使用できるゴム成分としては、特に限定されず、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)等のジエン系ゴム等が挙げられる。
【0048】
本発明では、シリカが使用される。上記ゴム成分とともに、シリカを配合することにより、低燃費性が改善される。また、シリカ配合では耐摩耗性が低いという問題があるが、ゴム成分としてHPNR及び溶液重合ジエン系ゴムを使用することでこの問題が改善され、本発明の効果が良好に得られる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0049】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、100m/g以上が好ましく、130m/g以上がより好ましく、160m/g以上が更に好ましい。100m/g未満では、本発明の効果を十分に得られないおそれがある。また、シリカのNSAは、220m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましい。220m/gを超えると、低発熱性が低下する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0050】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、特に好ましくは50質量部以上である。10質量部未満であると、シリカ配合による充分な効果が得られない傾向がある。上記シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。150質量部を超えると、シリカのゴムへの分散が困難になり、ゴムの加工性が悪化する傾向がある。
【0051】
本発明では、シリカとともに、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、スルフィド系、メルカプト系ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが特に好ましい。
【0052】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して5質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましい。5質量部未満では、破壊強度が低下し、耐摩耗性などの性能が低下するおそれがある。
また、該シランカップリング剤の含有量は、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。15質量部を超えると、シランカップリング剤を配合することによる破壊強度の増加や低発熱化などの効果が得られない傾向がある。
【0053】
本発明では、特定の平均一次粒子径の酸化亜鉛が使用される。このような微粒子酸化亜鉛の配合により、均一に加硫できる。また、NR(非改質)、乳化重合ジエン系ゴムに比べて、HPNR、溶液重合ジエン系ゴムは酸化亜鉛を必要以上にトラップしにくく、少量であっても加硫促進助剤としての効果が発揮されるので、酸化亜鉛の配合量を減少させることができる。これにより、破壊核が減少し、良好な耐摩耗性能を得ることができる。また、低発熱化できる。
【0054】
上記酸化亜鉛の平均一次粒子径は、15nm以上、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは60nm以上である。15nm未満であると、ゴム組成物中での酸化亜鉛の均一分散が困難となり、耐久性能の向上効果が得られない傾向にある。酸化亜鉛の平均一次粒子径は、200nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは70nm以下である。200nmを超えると、本発明の効果が十分に得られないおそれがある。
【0055】
本発明において、酸化亜鉛の平均一次粒子径は、BET法により測定した比表面積から真球状粒子モデルへ換算したときの一次粒子径である。
ここで、比表面積から真球状粒子モデルへ換算したときの一次粒子径は、以下の関係式により算出することができる。一次粒子を理想的な球と見立てると、粒子1個の表面積S及び体積V、密度ρと比表面積SSAとの間には、下記式で表される関係が成立する。
SSA=1/(V・ρ)×S
ここで、V及びSは粒子径によって一義的に決定される物理量なので、比表面積と密度により粒子径を求めることができる。密度は、例えば、市販のピクノメーターにより簡便に求めることができる。
【0056】
上記酸化亜鉛(特定の平均一次粒子径の酸化亜鉛)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.7質量部以上、特に好ましくは0.9質量部以上である。0.3質量部未満では、加硫促進効果が得られないおそれがある。また、該酸化亜鉛の含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下、特に好ましくは1.0質量部以下である。5質量部を超えると、破壊核が増加し、耐摩耗性能が悪化する傾向がある。
【0057】
本発明のゴム組成物は、上記充填剤として、カーボンブラックを含有することが好ましい。これにより、補強性を高め、耐摩耗性能をより改善することができる。
【0058】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上である。50m/g未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましい。200m/gを超えると、カーボンブラックのゴムへの分散が困難になり、加工性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0059】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。2質量部未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックの含有量はゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。15質量部を超えると、低発熱性の改善効果が低下する傾向がある。
【0060】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、ステアリン酸、各種老化防止剤、オゾン劣化防止剤、オイル、ワックス、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0061】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0062】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に好適に使用できる。特に、耐摩耗性能、低燃費性能及び耐劣化性能が要求されるトレッド(キャップトレッド)に使用することが好ましい。
【0063】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【実施例】
【0064】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0065】
以下に、実施例で用いた各種薬品について説明する。
天然ゴム:TSR20
改質天然ゴム1:下記製造例1より得られた固形ゴム
改質天然ゴム2:下記製造例2より得られた固形ゴム
HPR355(溶液重合ジエン系ゴム1):JSR(株)製のHPR355(上記式(1)で表される3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いて変性したS−SBR、スチレン含有量:27質量%)
E15(溶液重合ジエン系ゴム2):旭化成ケミカルズ(株)製のアサプレン E15(分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物(上記式(2)で表される多官能化合物)により変性(カップリング)したS−SBR、スチレン含量:23質量%、ビニル含量:63質量%)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN220(NSA:111m2/g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のシランカップリング剤Si266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
老化防止剤:FLEXSYS(株)製老化防止剤6C(SANTOFLEX 6PPD)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種(平均一次粒子径:400nm)
F−2微粒子亜鉛華:ハクスイテック(株)製、商品名:微粒子酸化亜鉛F−2(平均一次粒子径:65nm)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
ノクセラーNS(加硫促進剤):大内新興化学工業(株)製のノクセラ−NS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
天然ゴムラテックス:タイテックス社から入手したフィールドラテックスを使用
界面活性剤:花王(株)製のEmal−E
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
【0066】
(アルカリによるケン化処理天然ゴムの作製)
製造例1
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal−E10gとNaOH20gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。このラテックスに水を添加してDRC15%(w/v)となるまで希釈した後、ゆっくり攪拌しながらギ酸を添加しpHを4.0〜4.5に調整し、凝集させた。凝集したゴムを粉砕し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して固形ゴム(改質天然ゴム1)を得た。
製造例2
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal−E10gとNaOH15gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。このラテックスに水を添加してDRC15%(w/v)となるまで希釈した後、ゆっくり攪拌しながらギ酸を添加しpHを4.0〜4.5に調整し、凝集させた。凝集したゴムを粉砕し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して固形ゴム(改質天然ゴム2)を得た。
【0067】
製造例1〜2により得られた固形ゴム及びTSRについて以下に示す方法により、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
(窒素含有量の測定)
窒素含有量は、CHN CORDER MT−5(ヤナコ分析工業社製)を用いて測定した。測定には、まずアンチピリンを標準物質として、窒素含有量を求めるための検量線を作製した。次いで、各製造例で得られた改質天然ゴム又はTSR約10mgを秤量し、3回の測定結果から平均値を求めて、試料の窒素含有量とした。
【0069】
(リン含有量の測定)
ICP発光分析装置(ICPS−8100、島津製作所(株)製)を使用してリン含有量を求めた。
また、リンの31P−NMR測定は、NMR分析装置(400MHz、AV400M、日本ブルカー社製)を使用し、80%リン酸水溶液のP原子の測定ピークを基準点(0ppm)として、クロロホルムにより生ゴムより抽出した成分を精製し、CDClに溶解して測定した。
【0070】
(ゲル含有率の測定)
1mm×1mmに切断した生ゴムのサンプル70.00mgを計り取り、これに35mLのトルエンを加え1週間冷暗所に静置した。次いで、遠心分離に付してトルエンに不溶のゲル分を沈殿させ上澄みの可溶分を除去し、ゲル分のみをメタノールで固めた後、乾燥し質量を測定した。次の式によりゲル含有率(%)を求めた。
ゲル含有率(質量%)=[乾燥後の質量mg/最初のサンプル質量mg]×100
【0071】
【表1】

【0072】
表1に示すように、改質天然ゴム1及び2は、TSRに比べて、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率が低減していた。
また、改質天然ゴム1及び2から抽出した抽出物の31P NMR測定において、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークを検出しなかった。
【0073】
<実施例及び比較例>
(ゴム試験片の作製)
表2に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りした。得られた混練り物にロールを用いて、硫黄と加硫促進剤を練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。これを、170℃で12分間、2mm厚の金型でプレスし、加硫ゴム組成物(加硫ゴムシート)を得た。
得られた加硫ゴムシートを、下記の通り評価した。
【0074】
(ゴム発熱性能指数)
加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で各配合のtanδを測定し、比較例1のtanδを100として、下記計算式により指数表示した。指数が低いほど低発熱となる。
(ゴム発熱性能指数)=(各配合のtanδ)/(比較例1のtanδ)×100
【0075】
(摩耗性能指数)
(株)岩本製作所製のランボーン摩耗試験機を用い、表面回転速度50m/min、負荷荷重3.0kg、落砂量15g/min、スリップ率20%の条件で試験片(加硫ゴムシート)のランボーン摩耗量を測定した。測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例1の容積損失量を100として、下記計算式により、各配合の容積損失量を指数表示した。数値が大きいほど、耐摩耗性能に優れることを示す。
(摩耗性能指数)=(比較例1の容積損失量)/(各配合の容積損失量)×100
【0076】
(耐劣化性能指数)
加硫ゴムシート(新品)を、80℃のオーブンで7日間熱劣化させ、これを劣化品とした。新品及び劣化品をJIS K6251に準じて引張試験を行い、破断伸びを測定した。測定結果を、下記計算式により、各配合の耐劣化性能として指数表示した。指数が小さいほど劣化度が大きいことを示す。
(耐劣化性能指数)=(劣化品の破断伸び)/(新品の破断伸び)×100
【0077】
【表2】

【0078】
シリカ配合において、ゴム成分としてHPNR及び溶液重合変性ジエン系ゴム、加硫促進助剤として微粒子酸化亜鉛を配合した実施例では、耐摩耗性能、低燃費性能及び耐劣化性能をバランス良く改善できた。一方、比較例は、低燃費性能と耐劣化性能とがバランスよく改善されなかった。また、比較例は、実施例に比べ、耐摩耗性能が劣る傾向があった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴム及び溶液重合で合成されたジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカと、平均一次粒子径が200nm以下の酸化亜鉛とを含み、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記酸化亜鉛の含有量が0.3〜5質量部であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記改質天然ゴムは、トルエン不溶分として測定されるゲル含有率が20質量%以下である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記改質天然ゴムは、クロロホルム抽出物の31P NMR測定において、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークが存在せず、実質的にリン脂質が存在しない請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記改質天然ゴムは、窒素含有量が0.3質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分100質量部に対して、前記酸化亜鉛の含有量が0.3〜3質量部である請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記ジエン系ゴムが、下記式(1)で表される化合物又は分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性されたものである請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基又は環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−225681(P2011−225681A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95361(P2010−95361)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】