説明

タイヤ用ゴム組成物

【課題】低転がり抵抗性及び耐摩耗性を共に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴムA及びシリカ用末端変性ジエン系ゴムBの合計を65〜99重量%とブロックコポリマーA′−B′を1〜35重量%含むゴム成分100重量部に対しシリカを10重量部以上配合し、ジエン系ゴムAとシリカ用末端変性ジエン系ゴムBとが互いに非相溶であり、ブロックコポリマーA′−B′がブロックセグメントA′とブロックセグメントB′とからなり、ブロックセグメントA′がジエン系ゴムAと相溶し且つシリカ用末端変性ジエン系ゴムBと非相溶であり、ブロックセグメントB′がシリカ用末端変性ジエン系ゴムBと相溶し且つジエン系ゴムAと非相溶であり、このブロックコポリマーA′−B′の数平均分子量が30万〜60万であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物に関し、更に詳しくは低転がり抵抗性及び耐摩耗性を共に向上にするようにしたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球環境負担低減のための取り組みの中で、自動車用空気入りタイヤの燃費性能を向上すること及び長寿命にすることに対する要求が高まっている。空気入りタイヤの燃費性能を向上するためには転がり抵抗を低減すること、長寿命にするためには耐摩耗性を改良することが必要である。
【0003】
転がり抵抗に大きな影響を与えるタイヤトレッド用ゴム組成物において、転がり抵抗の指標となる60℃のtanδを小さくするように、各種ゴム成分やシリカ等の補強性充填剤を配合することが行われている。ここで各ゴム成分が期待される機能を発現するためにはそれぞれが独立相(相分離構造)を形成する非相溶系であることが望ましい。しかし相分離構造の界面での強度が低いと全体のゴム強度が低下し耐摩耗性が悪化するという問題がある。同様にゴム成分と補強性充填剤との界面でもその強度が低いと耐摩耗性が悪化する。
【0004】
このため特許文献1は、少なくとも二種類のゴム成分からなり、ポリマー相A及びポリマー相Bを形成する非相溶ポリマーブレンドに対し、ポリマー相Aを形成する単量体単位と同一の単量体単位からなるブロックaとポリマー相Bを形成する単量体単位と同一の単量体単位からなるブロックbとからなるブロックココポリマーを配合してなり、前記ゴム成分の少なくとも一種が、少なくとも一つの官能基を有するゴム成分を含むゴム組成物を提案している。しかし、このゴム組成物では、耐摩耗性及びtanδの改良効果が認められるものの、それらは必ずしも十分なレベルには達しておらず、一層の改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/151103号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低転がり抵抗性及び耐摩耗性を共に向上にするようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムA及びシリカ用末端変性ジエン系ゴムBの合計を65〜99重量%とブロックコポリマーA′−B′を1〜35重量%含むゴム成分100重量部に対しシリカを10重量部以上配合したゴム組成物であって、前記ジエン系ゴムAとシリカ用末端変性ジエン系ゴムBとが互いに非相溶であり、前記ブロックコポリマーA′−B′がブロックセグメントA′とブロックセグメントB′とからなり、前記ブロックセグメントA′が前記ジエン系ゴムAと相溶し且つシリカ用末端変性ジエン系ゴムBと非相溶であり、前記ブロックセグメントB′が前記シリカ用末端変性ジエン系ゴムBと相溶し且つジエン系ゴムAと非相溶であり、前記ブロックコポリマーA′−B′の数平均分子量が30万〜60万であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物によれば、ブロックコポリマーA′−B′のブロックセグメントA′がジエン系ゴムAと相溶し且つシリカ用末端変性ジエン系ゴムBと非相溶、ブロックセグメントB′がシリカ用末端変性ジエン系ゴムBと相溶し且つジエン系ゴムAと非相溶の関係にすると共に、ブロックコポリマーA′−B′の数平均分子量を30万〜60万にしたので、低転がり抵抗性及び耐摩耗性を共に向上にすることができる。
【0009】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、前記ブロックコポリマーA′−B′を形成するブロックセグメントA′のガラス転移温度のブロックセグメントB′に対する高低関係を、前記ジエン系ゴムAのガラス転移温度のシリカ用末端変性ジエン系ゴムBに対する高低関係と同じにすることが好ましい。例えば前記ジエン系ゴムAのガラス転移温度がシリカ用末端変性ジエン系ゴムBよりも高く、且つ前記ブロックコポリマーA′−B′を構成する前記ブロックセグメントA′のガラス転移温度がブロックセグメントB′よりも高いことが好ましい。或いは前記シリカ用末端変性ジエン系ゴムBのガラス転移温度がジエン系ゴムAよりも高く、且つ前記ブロックコポリマーA′−B′を構成する前記ブロックセグメントB′のガラス転移温度がブロックセグメントA′よりも高いことが好ましい。このようにジエン系ゴムA及びシリカ用末端変性ジエン系ゴムBのガラス転移温度並びにブロックセグメントA′及びブロックセグメントB′のガラス転移温度の高低関係を調整することにより、低転がり抵抗性及び耐摩耗性のバランスをより高くすることができる。
【0010】
このタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッド部を構成するのに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分としてジエン系ゴムA、シリカ用末端変性ジエン系ゴムB及びブロックコポリマーA′−B′を含む。ジエン系ゴムAとしては、例えば天然ゴム、ポリイソプレンゴム、各種スチレンブタジエン共重合体ゴム、各種ポリブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム等を例示することができる。なかでも天然ゴム、ポリイソプレンゴム、各種スチレンブタジエン共重合体ゴム、各種ポリブタジエンゴムが好ましい。これらのジエン系ゴムAは、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0012】
シリカ用末端変性ジエン系ゴムBは、上述したジエン系ゴムAと非相溶のジエン系ゴムを、シリカと親和性が高い化合物で末端変性した変性ゴムである。ジエン系ゴムAと非相溶のジエン系ゴムとは、任意に選択されたジエン系ゴムAに対し非相溶であればよく、ジエン系ゴムAとの間で相分離構造を形成することにより、それぞれのジエン系ゴムの特性を効率的に発現することができる。ここで相分離構造とは、ジエン系ゴムのブレンド物の切断面を顕微鏡観察したとき、一方のジエン系ゴムが連続相、他方のジエン系ゴムが分散相を形成するか、或いは両方のジエン系ゴムが共に連続相を形成することをいう。ジエン系ゴムAと非相溶のジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、ポリイソプレンゴム、各種スチレンブタジエン共重合体ゴム、各種ポリブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム等を例示することができる。すなわちジエン系ゴムA及びこれと非相溶のジエン系ゴムは、同じジエン系ゴムの群から非相溶の組み合わせを選択することができる。
【0013】
またシリカと親和性が高い化合物としては、例えばアルコキシシリル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシル基含有ポリオルガノシロキサン構造、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、アミド基、チオール基、エーテル基等から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物を例示することができる。なかでもアルコキシル基、ヒドロキシル基を含むオルガノシロキサン構造、ヒドロキシル基、カルボキシル基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物が好ましい。このように末端変性基がシリカとの相互作用を有する官能基を含むことにより、シリカ用末端変性ジエン系ゴムBは、シリカとの親和性をより高くし、シリカの分散性を大幅に改良することができる。シリカ用末端変性ジエン系ゴムBは、通常用いられる方法で調整することができる。
【0014】
ジエン系ゴムA及びシリカ用末端変性ジエン系ゴムBの配合量の合計は、ゴム成分100重量%中65〜99重量%、好ましくは66〜97重量%にする。ジエン系ゴムA及びシリカ用末端変性ジエン系ゴムBの合計が65重量%未満であると、低転がり抵抗性及び耐摩耗性を改良する効果が十分に得られない。またジエン系ゴムA及びシリカ用末端変性ジエン系ゴムBの合計が99重量%と超えると、ブロックコポリマーA′−B′の配合量が少なくなり、低転がり抵抗性及び耐摩耗性を改良する効果が十分に得られない。
【0015】
またジエン系ゴムAとシリカ用末端変性ジエン系ゴムBとの重量比(A/B)は、好ましくは90/10〜10/90、より好ましくは80/20〜20/80にするとよい。重量比(A/B)をこのような範囲内にすることにより、ジエン系ゴムA及びシリカ用末端変性ジエン系ゴムBの両方の特徴を両立させることができる。
【0016】
本発明において、ブロックコポリマーA′−B′を配合することにより、低転がり抵抗性及び耐摩耗性を共に向上することができる。ブロックコポリマーA′−B′の配合量は、ゴム成分100重量%中1〜35重量%、好ましくは3〜34重量%にする。ブロックコポリマーA′−B′の配合量が1重量%未満であると、低転がり抵抗性及び耐摩耗性を改良する効果が十分に得られない。またブロックコポリマーA′−B′の配合量が35重量%を超えると、低転がり抵抗性及び耐摩耗性を改良する効果が十分に得られない。
【0017】
ブロックコポリマーA′−B′の数平均分子量は30万〜60万、好ましくは35万〜55万にする。数平均分子量が30万未満或いは60万を超えると、転がり抵抗を低減することができない。また耐摩耗性を改良することができない。ブロックコポリマーA′−B′の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0018】
ブロックコポリマーA′−B′は、ブロックセグメントA′とブロックセグメントB′とから構成される。このうちブロックセグメントA′はジエン系ゴムAと相溶し且つシリカ用末端変性ジエン系ゴムBと非相溶である。またブロックセグメントB′はシリカ用末端変性ジエン系ゴムBと相溶し且つジエン系ゴムAと非相溶である。ここで非相溶とは、上述した通り、両者のブレンド物が相分離構造を形成することをいう。また相溶とは、両者のブレンド物が相分離構造を形成することなく、一つの相を形成することをいう。ブレンド物が相分離構造を形成するか否かは、5000倍の電子顕微鏡観察により確認することができる。
【0019】
ブロックセグメントA′及びブロックセグメントB′は、上述したジエン系ゴムの群の中から適宜選択することができる。ブロックセグメントA′はジエン系ゴムAと同じポリマー種にしてもよい。ブロックセグメントB′は、シリカ用末端変性ジエン系ゴムBのベースとなるジエン系ゴムと同じポリマー種にしてもよい。またブロックコポリマーA′−B′は、通常用いられる方法で調整することができる。
【0020】
ブロックセグメントA′及びブロックセグメントB′の重合比は、特に限定されるものではないが、ブロックセグメントA′とブロックセグメントB′との重量比(A′/B′)で、好ましくは80/20〜20/80、より好ましくは70/30〜30/70にするとよい。重量比(A′/B′)をこのような範囲内にすることにより、ジエン系ゴムAの分散相とシリカ用末端変性ジエン系ゴムBの分散相との界面の強度を改良することができる。
【0021】
本発明において、ブロックセグメントA′のガラス転移温度のブロックセグメントB′に対する高低関係を、ジエン系ゴムAのガラス転移温度のシリカ用末端変性ジエン系ゴムBに対する高低関係と同じにすることが好ましい。例えばジエン系ゴムAのガラス転移温度がシリカ用末端変性ジエン系ゴムBよりも高いとき、ブロックセグメントA′のガラス転移温度をブロックセグメントB′よりも高くするとよい。また、シリカ用末端変性ジエン系ゴムBのガラス転移温度がジエン系ゴムAよりも高いとき、ブロックセグメントB′のガラス転移温度をブロックセグメントA′よりも高くするとよい。とりわけ、ジエン系ゴムAのガラス転移温度をシリカ用末端変性ジエン系ゴムBよりも高くし、かつブロックセグメントA′のガラス転移温度をブロックセグメントB′よりも高くするとよい。このようにブロックセグメントA′のガラス転移温度のブロックセグメントB′に対する高低関係を、ジエン系ゴムAのガラス転移温度のシリカ用末端変性ジエン系ゴムBに対する高低関係と同じにすることにより、ジエン系ゴムA及びシリカ用末端変性ジエン系ゴムBの界面の強度を改良し、低転がり抵抗性及び耐摩耗性をより高いレベルで両立することができる。ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度とする。またジエン系ゴム及びブロックセグメントが油展品であるときは、油展成分(オイル)を含まない状態におけるガラス転移温度とする。
【0022】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカを配合することにより、ゴム組成物の低転がり抵抗性を改良することができる。シリカの配合量はジエン系ゴム100重量部に対し10重量部以上、好ましくは30〜150重量部にする。シリカの配合量が10重量部未満であると、低転がり抵抗性を改良する効果が十分に得られない。
【0023】
本発明において、シリカと共にシランカップリング剤を配合することにより、ジエン系ゴムに対するシリカの分散性を改良することができる。シランカップリング剤としては、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0024】
シランカップリング剤の配合量は、シリカ重量に対し好ましくは3〜15重量%、より好ましくは5〜10重量%にするとよい。シランカップリング剤が、シリカ配合量の3重量%より少ないと、シリカの分散性が低下する虞がある。また、シランカップリング剤が、シリカ配合量の15重量%を超えると、ゴムのモジュラスが過大になり耐摩耗性が悪化する虞がある。
【0025】
本発明では、シリカ以外の補強性充填剤を配合することができる。シリカ以外の補強性充填剤としては、例えばカーボンブラック、クレイ、タルク、アルミナ、二酸化チタン、シリケート等を例示することができる。なかでもカーボンブラック、クレイが好ましい。カーボンブラックを配合することにより、ゴム組成物の補強性を高くして耐摩耗性を改良することができる。
【0026】
タイヤ用ゴム組成物には、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤を配合することができる。このような配合剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。タイヤ用ゴム組成物は、通常用いられるゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0027】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッド部を構成するのに好適に使用することができる。このゴム組成物をトレッド部に使用した空気入りタイヤは、転がり抵抗が低く燃費性能が優れると共に、耐摩耗性を改良しタイヤ寿命を従来レベル以上に向上することができる。
【0028】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
表1,2に示す配合からなる16種類のゴム組成物(実施例1〜5、比較例1〜11)を、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く配合成分を秤量し、1.7リットル密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、温度150℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを1.7リットル密閉式バンバリーミキサーで、硫黄及び加硫促進剤を加え混合し、タイヤ用ゴム組成物を調製した。得られた16種類のゴム組成物を所定形状の金型を使用して、160℃で20分間プレス加硫を行い、シート状ゴム試験片を作成した。このシート状ゴム試験片を用い下記の方法により転がり抵抗性(tanδ(60℃))及び耐摩耗性を評価した。
【0030】
転がり抵抗性
得られた各シート状ゴム試験片の転がり抵抗を、転がり抵抗の指標であることが知られている損失正接tanδ(60℃)により評価した。tanδ(60℃)は、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件下で測定した。得られた結果は、表1では比較例1を100、表2では比較例6を100とする指数で表わし表1,2に「転がり抵抗性」として示した。この指数が小さいほど60℃のtanδが小さく、転がり抵抗性が小さくタイヤにしたときに燃費性能が優れることを意味する。
【0031】
耐摩耗性
得られた各シート状ゴム試験片を用いJIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を使用して、温度20℃、荷重15N、スリップ率50%、時間10分の条件で摩耗量を測定した。得られた結果は、表1では比較例1の摩耗量の逆数を100、表2では比較例6の摩耗量の逆数を100とする指数で表わし表1,2に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを意味する。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
表1,2において使用した原材料を下記に示す。
・変性SBR:シリカ用末端変性スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol NS620、スチレン単位含有量22重量%、ビニル含有量60重量%、ガラス転移温度(Tg)が−30℃
・SBR−1:日本ゼオン社製Nipol NS120、スチレン単位含有量22重量%、ビニル含有量60重量%、Tgが−30℃
・SBR−2:日本ゼオン社製Nipol NS522、スチレン単位含有量39重量%、ビニル含有量41重量%、Tgが−23℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分37.5重量部を含む油展品
・IR:ポリイソプレンゴム、日本ゼオン社製Nipol IR2200、Tgが−67℃
【0035】
・変性BR:シリカ用末端変性ブタジエンゴム、Tgが−95℃、以下の製造方法により調製した。
変性BRの調製方法
先ずケチミンシラン縮合物を調製する。γ−アミノプロピルトリメトキシシラン20.0g(0.112mol)ならびにメチルイソプロピルケトン10.7g(0.123 mol)を窒素雰囲気下、室温にて2日間攪拌した。反応溶液からメタノールならびに未反応のメチルイソプピルケトンを真空下除去することにより、平均縮合度2.4のケチミンシラン縮合物を得た。
【0036】
次に窒素置換された内容量10リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン3147g、ブタジエン498.4g(9.215mol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム3.054ml(4.856mmol)を添加した。重合転化率が100%に到達した後、上記で得られたケチミンシラン縮合物の10.3wt%トルエン溶液6.809gを添加し、1時間攪拌した。さらに、メタノール0.5mlを添加して30分間攪拌した。得られたポリマー溶液に老化防止剤(イルガノックス1520)を少量添加し、減圧濃縮して溶媒を取り除いた。メタノール中でポリマーを凝固、洗浄した後に、乾燥することにより固形状のポリマー(変性BR)を得た。
【0037】
・BR−1:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1250、Tgが−94℃
【0038】
・ブロックコポリマー1:ブロックセグメントA′がイソプレン重合体セグメントでそのTgが−60℃、ブロックセグメントB′がスチレン−ブタジエン共重合体セグメントでそのTgが−30℃であるブロックコポリマーA′−B′、数平均分子量がMn=500000、以下の製造方法により調製した。
ブロックコポリマー1の調製方法
攪拌器とジャケット付きの20リットルのオートクレーブに、シクロヘキサン8000g、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)0.1mmol、及びイソプレン600gを入れて、70℃に昇温してから、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.65mmol/ml)を1.8ml添加して重合を開始した。約15分間の後、転化率が約100%になったところで、TMEDAを4.3mmol添加し、次いで、スチレン280gと1,3―ブタジエン1120gの混合モノマー〔スチレン:ブタジエン=20:80(重量比)〕を約50分間にわたって連続的に添加した。添加終了後、約10分間を経過してから10mmolの1,3―ブタジエンを添加して、さらに10分間反応させた。重合転化率は約100%であった。イソプロピルアルコールを10mmol添加して重合を停止し、次いで、フェノール系老化防止剤(チバガイギー社製イルガノックス1520)を2g添加してからスチームストリッピング法により脱溶媒した後、真空乾燥してブロックコポリマー1を得た。得られたブロックコポリマー1の数平均分子量はMn=500000であった。
【0039】
・ブロックコポリマー2:ブロックセグメントA′がスチレン−ブタジエン共重合体セグメントでそのTgが−25℃、ブロックセグメントB′がブタジエン重合体セグメントでそのTgが−95℃であるブロックコポリマーA′−B′、数平均分子量がMn=350000、以下の製造方法により調製した。
ブロックコポリマー2の調製方法
窒素置換された内容量10リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4601g、ブタジエン398.0gを仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム1.86mlを添加した。重合転化率が100%に到達した後、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)1.0mmolを添加し、スチレン160.5gと1,3−ブタジエン240.8gの混合モノマー〔スチレン:ブタジエン=40:60(重量比)〕を添加した。追加したモノマーの重合転化率が約100%に到達したところで、イソプロピルアルコールを10mmol添加して重合を停止し、次いで、フェノール系老化防止剤(チバガイギー社製イルガノックス1520)を2g添加してからスチームストリッピング法により脱溶媒した後、真空乾燥してブロックコポリマー2を得た。得られたブロックコポリマー2の数平均分子量はMn=350000であった。
【0040】
・ブロックコポリマー3:ブロックセグメントA′がスチレン−ブタジエン共重合体セグメントでそのTgが−25℃、ブロックセグメントB′がブタジエン重合体セグメントでそのTgが−95℃であるブロックコポリマーA′−B′、数平均分子量がMn=20万、以下の製造方法により調製した。
ブロックコポリマー3の調製方法
窒素置換された内容量20リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4551g、ブタジエン401.0gを仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム2.25mlを添加した。重合転化率が100%に到達した後、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)1.8mmolを添加し、スチレン161.0gと1,3−ブタジエン241.5gの混合モノマー〔スチレン:ブタジエン=40:60(重量比)〕を添加した。追加したモノマーの重合転化率が約100%に到達したところで、イソプロピルアルコールを10mmol添加して重合を停止し、次いで、フェノール系老化防止剤(チバガイギー社製イルガノックス1520)を2g添加してからスチームストリッピング法により脱溶媒した後、真空乾燥してブロックコポリマー3を得た。得られたブロックコポリマー3の数平均分子量はMn=200000であった。
【0041】
・ブロックコポリマー4:ブロックセグメントA′がスチレン−ブタジエン共重合体セグメントでそのTgが−25℃、ブロックセグメントB′がブタジエン重合体セグメントでそのTgが−95℃であるブロックコポリマーA′−B′、数平均分子量がMn=65万、以下の製造方法により調製した。
ブロックコポリマー4の調製方法
窒素置換された内容量20リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4500g、ブタジエン400.5gを仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム1.05mlを添加した。重合転化率が100%に到達した後、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)0.6mmolを添加し、スチレン160.0gと1,3―ブタジエン240.0gの混合モノマー〔スチレン:ブタジエン=40:60(重量比)〕を添加した。追加したモノマーの重合転化率が約100%に到達したところで、イソプロピルアルコールを10mmol添加して重合を停止し、次いで、フェノール系老化防止剤(チバガイギー社製、イルガノックス1520)を2g添加してからスチームストリッピング法により脱溶媒した後、真空乾燥してブロックコポリマー4を得た。得られたブロックコポリマー4の数平均分子量はMn=650000であった。
【0042】
・シリカ:日本シリカ社製Nipsil AQ
・カーボンブラック:キャボットジャパン社製ショウブラックN339
・シランカップリング剤:エボニックデグサ社製Si69
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・老化防止剤:フレキシス社製サントフレックス 6PPD
・オイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
・加硫促進剤1:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
・加硫促進剤2:三新化学工業社製サンセラーD−G
【0043】
表1,2の結果から明らかなように、実施例1〜5のタイヤ用ゴム組成物は、低転がり抵抗性(60℃のtanδ)と耐摩耗性を共に向上することが確認された。
【0044】
表1の比較例2は、比較例1の変性SBRの代わりに未変性のSBR−1を配合したので、転がり抵抗が悪化した。比較例3及び4は、実施例1及び2の変性SBRの代わりに未変性のSBR−1を配合したので、転がり抵抗が悪化した。また耐摩耗性を十分に改良することができない。比較例5は、ブロックコポリマー1の配合量が35重量部を超えるので、転がり抵抗の低減効果及び耐摩耗性の改良効果が不十分になる。
【0045】
表2の比較例7は、比較例6の変性BRの代わりに未変性のBRを配合したので、転がり抵抗が悪化した。比較例8及び9は、実施例3及び4の変性BRの代わりに未変性のBRを配合したので、転がり抵抗が悪化した。また耐摩耗性を改良することができない。比比較例10はブロックコポリマー3の数平均分子量が30万未満、比較例11はブロックコポリマー4の数平均分子量が60万を超えるので、いずれも転がり抵抗の低減効果及び耐摩耗性の改良効果が不十分になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムA及びシリカ用末端変性ジエン系ゴムBの合計を65〜99重量%とブロックコポリマーA′−B′を1〜35重量%含むゴム成分100重量部に対しシリカを10重量部以上配合したゴム組成物であって、前記ジエン系ゴムAとシリカ用末端変性ジエン系ゴムBとが互いに非相溶であり、前記ブロックコポリマーA′−B′がブロックセグメントA′とブロックセグメントB′とからなり、前記ブロックセグメントA′が前記ジエン系ゴムAと相溶し且つシリカ用末端変性ジエン系ゴムBと非相溶であり、前記ブロックセグメントB′が前記シリカ用末端変性ジエン系ゴムBと相溶し且つジエン系ゴムAと非相溶であり、前記ブロックコポリマーA′−B′の数平均分子量が30万〜60万であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ブロックコポリマーA′−B′を形成するブロックセグメントA′のガラス転移温度のブロックセグメントB′に対する高低関係を、前記ジエン系ゴムAのガラス転移温度のシリカ用末端変性ジエン系ゴムBに対する高低関係と同じにしたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴムAのガラス転移温度がシリカ用末端変性ジエン系ゴムBよりも高く、且つ前記ブロックコポリマーA′−B′を構成する前記ブロックセグメントA′のガラス転移温度がブロックセグメントB′よりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記シリカ用末端変性ジエン系ゴムBのガラス転移温度がジエン系ゴムAよりも高く、且つ前記ブロックコポリマーA′−B′を構成する前記ブロックセグメントB′のガラス転移温度がブロックセグメントA′よりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物でトレッド部を構成したことを特徴とする空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−172000(P2012−172000A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33115(P2011−33115)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】