説明

タイヤ用ゴム組成物

【課題】コロイダル特性を制御したカーボンブラックを配合し発熱性を小さくしながら、耐久性を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ブタジエンゴム30〜80重量%を含むジエン系ゴム100重量部に対し、窒素吸着比表面積N2SAが55〜95m2/g、DBP吸収量が110〜160ml/100gのカーボンブラックを5重量部以上含む補強性充てん剤を30〜60重量部配合すると共に、前記カーボンブラックの凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dst(nm)と、前記N2SAとを、Dst=α(N2SA)-0.61の関係式で表わしたときの係数αが1979以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイダル特性を制御したカーボンブラックを配合し発熱性を低減しながら、耐久性を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤに対する要求性能として、耐久性が優れタイヤ寿命が長いことと共に、燃費性能が優れることが求められている。特に燃費性能を向上することは、地球環境問題への関心の高まりに伴いますます重要になっている。燃費性能を向上するためにはタイヤの転がり抵抗を低減することが必要であり、タイヤを構成するゴム組成物の発熱を抑えることが行われている。ゴム組成物の発熱性の指標としては一般に動的粘弾性測定による60℃のtanδが用いられ、ゴム組成物のtanδ(60℃)が小さいほど発熱性が小さくなる。
【0003】
ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくする方法として、例えばカーボンブラックの配合量を少なくしたり、カーボンブラックの粒径を大きくしたりすることが挙げられる。しかし、このような方法では、ゴム硬度や強度が低下し、タイヤにしたとき耐久性が低下するという問題がある。
【0004】
特許文献1は、大粒径のカーボンラックを配合したタイヤサイドトレッド用ゴム組成物のゴム成分に特定の変性ブタジエンゴムを使用することにより、高弾性で低発熱性にすることを提案している。しかし、このゴム組成物は、低発熱性にする効果が認められるものの、タイヤ耐久性を改良する効果が必ずしも十分ではなく更なる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−53269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、コロイダル特性を制御したカーボンブラックを配合し発熱性を小さくしながら、耐久性を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴム30〜80重量%を含むジエン系ゴム100重量部に対し、窒素吸着比表面積N2SAが55〜95m2/g、DBP吸収量が110〜160ml/100gのカーボンブラックを5重量部以上含む補強性充てん剤を30〜60重量部配合すると共に、前記カーボンブラックの凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dst(nm)と、前記N2SAとの関係を下記の式(1)
Dst=α(N2SA)-0.61 (1)
(ただし、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/g)、αは係数である。)
で表わしたとき、係数αが1979以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴム30〜80重量%を含むジエン系ゴム100重量部に対し、窒素吸着比表面積N2SAが55〜95m2/g、DBP吸収量が110〜160ml/100g、かつ前記式(1)の関係で表わしたときの係数αが1979以上であるカーボンブラックを5重量部以上含む補強性充てん剤を30〜60重量部配合するようにしたので、ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくし低発熱性にしながら、ゴム硬度及び強度を確保したため、タイヤにしたときの耐久性を従来レベル以上に向上することができる。
【0009】
前記係数αとしては、1979≦α≦2450の範囲であることが好ましく、上述した優れた特性を確保しながら生産コストを抑制することができる。
【0010】
前記補強性充てん剤としては、シリカが好ましく、転がり抵抗をより小さくし燃費性能を一層改良することができる。
【0011】
本発明のタイヤ用ゴム組成物でサイドウォール部を構成した空気入りタイヤは、転がり抵抗を小さくし燃費性能を改良しながら、耐久性を従来レベル以上に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のタイヤ用ゴム組成物で使用するカーボンブラックのDstとN2SAの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ジエン系ゴムは、ブタジエンゴムを必須成分にする。ブタジエンゴムの含有量は、ゴム成分100重量%中、30〜80重量%、好ましくは40〜70重量%である。ブタジエンゴムの含有量が30重量%未満である、とタイヤ耐久性を十分に改良することができない。また、ブタジエンゴムの含有量が80重量%を超えると、タイヤ用ゴム組成物として必要なゴム硬度や強度が低下する虞がある。
【0014】
ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常用いられるものであればよく、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。なかでも天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。これらジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0015】
本発明のタイヤ用ゴム組成物では、特定の窒素吸着比表面積N2SA及びDBP吸収量を有し、かつN2SAと凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dstとの関係を限定した新規のカーボンブラックを配合することにより、ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくしながら、引張り強度、引張り破断伸び、ゴム硬度、耐摩耗性などの機械的特性を悪化させることがない。新規なカーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し5重量部以上、好ましくは10〜60重量部にする。カーボンブラックの配合量が5重量部未満であると、ゴム組成物のゴム硬度及び弾性率が悪化する。またカーボンブラックの配合量が60重量部を超えると、tanδ(60℃)が大きくなると共に、引張り破断伸びが低下する。
【0016】
本発明で使用するカーボンブラックは、窒素吸着比表面積N2SAが55〜95m2/g、好ましくは55〜85m2/gである。N2SAが55m2/g未満であると、ゴム組成物のゴム硬度、動的弾性率などの機械的特性が低下する。N2SAが95m2/gを超えると、tanδ(60℃)が大きくなる。N2SAは、JIS K6217−2に準拠して、測定するものとする。
【0017】
また、カーボンブラックのDBP吸収量は、110〜160ml/100gであり、好ましくは120〜150ml/100gである。DBP吸収量が110ml/100g未満であるとtanδ(60℃)が大きくなる。またゴム組成物の成形加工性が低下しカーボンブラックの分散性が悪化するのでカーボンブラックの補強性能が十分に得られない。DBP吸収量が160ml/100gを超えると、ゴム組成物の硬さが大きくなり過ぎて、引張り破断伸びが低下する。また粘度の上昇により加工性が悪化する。DBP吸収量は、JIS K6217−4吸油量A法に準拠して、測定するものとする。
【0018】
本発明で使用するカーボンブラックは、上述したコロイダル特性を有すると共に、凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dstと窒素吸着比表面積N2SAとを下記の式(1)の関係式で表わしたとき、係数αが1979以上、好ましくは1979〜2450である。
Dst=α(N2SA)-0.61 (1)
(ただし、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/g)、αは係数である。)
【0019】
カーボンブラックが上述したN2SA及びDBP吸収量を有し、かつ係数αを1979以上にすることにより、ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくしながら、ゴム硬度、動的弾性率などを維持・向上することができる。また係数αの上限は特に限定されるものではないが、カーボンブラックの収率やコストなどの生産性の観点から2450以下にするとよい。本発明において、凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dstとは、カーボンブラックを遠心沈降させ、光学的に得た凝集体のストークス径の質量分布曲線における最大頻度のモード径をいう。本発明において、DstはJIS K6217−6ディスク遠心光沈降法による凝集体分布の求め方に準拠して、測定するものとする。
【0020】
図1は、本発明で使用するカーボンブラックのDstとN2SAの関係を示すグラフである。図1において、横軸はN2SA(m2/g)、縦軸はDst(nm)である。ASTM規格番号を有する代表的なカーボンブラックを四角印でプロットし、試作により得られたカーボンブラックを丸印及び三角印でプロットした。ここで各プロットに、後述する実施例及び比較例で使用したカーボンブラックCB1〜CB13をそれぞれ参照する数字1〜13を付している。図1に示す通り、従来の規格化されたカーボンブラックブラックのDstとN2SAは、概ね下記式(2)の関係を満たす。
Dst=1650×(N2SA)-0.61 (2)
(ただし、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/g)を表わす。)
図1では、上記式(2)の関係を点線の曲線で表わした。
【0021】
これに対し、本発明で使用するカーボンブラックでは、Dst及びN2SAは、下記式(3)の曲線(実線)より右上にプロットされる。
Dst=1979×(N2SA)-0.61 (3)
(ただし、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/g)を表わす。)
【0022】
すなわち本発明では、N2SAが55〜95m2/gの範囲において、Dstが従来のカーボンブラックのDstより大きくした新規のカーボンブラックを使用する。このようなカーボンブラックは、従来のカーボンブラックと比べ、N2SAが同レベルであっても、凝集体のストークス径が大きく、凝集体の形態が球形に近いことを意味する。これにより、ゴムに対する補強性能を高くするため、ゴム組成物のゴム硬度や動的弾性率などの機械的特性を従来レベル以上に向上することができる。
【0023】
上述したコロイダル特性を有するカーボンブラックは、例えば、カーボンブラック製造炉における原料油導入条件、燃料油及び原料油の供給量、燃料油燃焼率、反応時間(最終原料油導入位置から反応停止までの燃焼ガスの滞留時間)などの製造条件を調整して製造することができる。
【0024】
本発明において、上述した特定のコロイダル特性を有するカーボンブラックを含む補強性充てん剤を配合する。上述したカーボンブラックを含む補強性充てん剤を配合することにより、ゴム組成物のtanδとゴム硬度や強度などの機械的特性とのバランスを調整することができる。補強性充てん剤としては、例えば上述したカーボンブラック以外のその他のカーボンブラック、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等を例示することができる。とりわけ補強性充てん剤としてシリカを配合することが好ましい。上述した特定のコロイダル特性を有するカーボンブラックと共に、シリカを配合することにより、ゴム組成物の発熱性を一層小さくしタイヤにしたときの転がり抵抗をさらに低減することができる。
【0025】
本発明で好適に使用するシリカとしては、CTAB比表面積が好ましくは80〜220m2/gにするとよい。シリカのCTABが80m2/g未満であると、ゴム組成物に対する補強性が不十分となり耐摩耗性及び操縦安定性が不足する。またシリカのCTABが220m2/gを超えると、転がり抵抗が大きくなる。なおシリカのCTAB比表面積は、ASTM D1993−03に準拠して求めるものとする。
【0026】
本発明で使用するシリカは、上述した特性を有するシリカであればよく、製品化されたもののなかから適宜選択してもよいし、通常の方法で上述した特性を有するように製造してもよい。シリカの種類としては、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは表面処理シリカなどを使用することができる。
【0027】
上述したカーボンブラックを含む補強性充てん剤の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し30〜60重量部にする。補強性充てん剤の配合量が30重量部未満であると、ゴム組成物に対する補強効果が十分に得られずゴム硬度、強度、耐摩耗性が不足する。また補強性充てん剤の配合量が60重量部を超えると、ゴム組成物の発熱性が大きくなる。
【0028】
本発明のゴム組成物において、シリカを使用するときは、シリカと共にシランカップリング剤を配合してもよく、シリカの分散性を向上しゴム成分との補強性をより高くすることができる。シランカップリング剤を配合する場合は、シリカ配合量に対して好ましくは3〜15重量%、より好ましくは5〜12重量%配合するとよい。シランカップリング剤の配合量がシリカ重量の3重量%未満の場合、シリカの分散性を向上する効果が十分に得られない。また、シランカップリング剤の配合量が15重量%を超えると、シランカップリング剤同士が縮合してしまい、所望の効果を得ることができなくなる。
【0029】
シランカップリング剤としては、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましく、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0030】
タイヤ用ゴム組成物には、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0031】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのサイドウォール部を構成するのに好適に使用される。本発明のタイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤは、走行時の発熱性が小さいので、転がり抵抗を小さくし燃費性能を改良することができる。同時に、タイヤ耐久性が優れ、タイヤの寿命を従来レベル以上に長くすることができる。
【0032】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
13種類のカーボンブラック(CB1〜CB13)を使用して15種類のゴム組成物(実施例1〜6、比較例1〜9)を調製した。このうち8種類のカーボンブラック(CB1,CB2,CB8〜CB13)は市販グレード、5種類のカーボンブラック(CB3〜CB7)は試作品であり、それぞれのコロイダル特性を表1,2に示した。また図1において、各カーボンブラックCB1〜CB13のDstとN2SAの関係をプロットすると共に、それぞれのカーボンブラックを参照する番号を付した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
表1,2において、各略号はそれぞれ下記のコロイダル特性を表わす。
・N2SA:JIS K6217−2に基づいて測定された窒素吸着比表面積
・IA:JIS K6217−1に基づいて測定されたよう素吸着量
・CTAB:JIS K6217−3に基づいて測定されたCTAB吸着比表面積
・DBP:JIS K6217−4(非圧縮試料)に基づいて測定されたDBP吸収量
・24M4:JIS K6217−4(圧縮試料)に基づいて測定された24M4−DBP吸収量
・TINT:JIS K6217−5に基づいて測定された比着色力
・Dst:JIS K6217−6に基づいて測定されたディスク遠心光沈降法による凝集体のストークス径の質量分布曲線の最大値であるモード径
・△D50:JIS K6217−6に基づいて測定されたディスク遠心光沈降法による凝集体のストークス径の質量分布曲線において、その質量頻度が最大点の半分の高さのときの分布の幅(半値幅)
・α:Dst及びN2SAを上述した式(1)の関係に当てはめたときの係数α
【0037】
また表1,2において、カーボンブラックCB1,CB2,CB8〜CB13は、それぞれ以下の市販グレードを表わす。
・CB1:東海カーボン社製シーストKHP
・CB2:東海カーボン社製シーストKH
・CB8:東海カーボン社製シースト300
・CB9:キャボットジャパン社製ショウブラック330T
・CB10:新日化カーボン社製ニテロン#10N
・CB11:東海カーボン社製シースト3
・CB12:東海カーボン社製シーストNH
・CB13:東海カーボン社製シースト6
【0038】
カーボンブラックCB3〜CB7の製造
円筒反応炉を使用して、表3に示すように全空気供給量、燃料油導入量、燃料油燃焼率、原料油導入量、反応時間を変えて、カーボンブラックCB3〜CB7を製造した。
【0039】
【表3】

【0040】
タイヤ用ゴム組成物の調製及び評価
上述した13種類のカーボンブラック(CB1〜CB13)を用いて、表4,5に示す配合からなる15種類のゴム組成物(実施例1〜6、比較例1〜9)を調製するに当たり、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く成分を秤量し、55Lのニーダーで15分間混練した後、そのマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを55Lのニーダーに供し硫黄及び加硫促進剤を加え混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。
【0041】
得られたタイヤ用ゴム組成物でタイヤサイドウォール部を構成したタイヤサイズが195/65R15の空気入りタイヤを加硫成形した。得られた15種類の空気入りタイヤの転がり抵抗及び耐久性を下記に示す方法により評価した。
【0042】
転がり抵抗
得られた空気入りタイヤを標準リム(サイズ15×6Jのホイール)に組み付け、空気圧200kPaの空気を充填して、JIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)に取り付け、JIS D4230の「6.4高速性能試験A」に準拠し走行試験を実施し、試験荷重2.94kN、速度50km/hの抵抗力を測定し、転がり抵抗とした。得られた結果は、それぞれ転がり抵抗の逆数を求め、比較例1を100とし、表4,5の「転がり抵抗」の欄に示した。この指数が大きいほど転がり抵抗が小さく燃費性能が優れていることを意味する。
【0043】
耐久性
得られた空気入りタイヤを標準リム(サイズ15×6Jのホイール)に組み付け、空気圧200kPaの空気を充填して、JIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)に取り付け、JIS D4230の「6.4高速性能試験A」に記載される高速耐久性の試験に準拠して、荷重3600Nを負荷し、速度80km/hで2時間走行させた後、速度を120km/hに上げて24時間走行させた。その後、24時間走行する毎に速度を10km/hずつ上げ、タイヤ故障を起こすまでの走行距離を測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として表4,5の「耐久性」に示した。この指数が大きいほど耐久性が優れることを意味する。
【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
なお、表4,5において使用した原材料の種類を下記に示す。
NR:天然ゴム、RSS#3
BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220
CB1〜CB13:上述した表1,2に示したカーボンブラック
シリカ:エボニックデグサ社製Ultrasil7000GR
カップリング剤:シランカップリング剤、エボニックデグサ社製Si69
アロマオイル:ジャパンエナジー社製プロセスX−140
亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
ワックス:大内新興化学工業社製サンノック
老化防止剤:フレキシス社製SANTOFLEX6PPD
加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーNS−P
硫黄:鶴見化学工業社製油処理硫黄
【0047】
表4から明らかなように実施例1〜6の空気入りタイヤは、転がり抵抗が小さく、耐久性が従来レベル以上に向上することが確認された。
【0048】
表4から明らかなように、比較例1の空気入りタイヤは、カーボンブラックCB9のDBP吸収量が110ml/100g未満かつ式(1)の係数αが1979未満であるため、実施例1〜4の空気入りタイヤに比べ転がり抵抗が大きく、耐久性が劣る。比較例2の空気入りタイヤは、カーボンブラックCB3のDBP吸収量が160ml/100gを超え、式(1)の係数αが1979未満であるため、耐久性が劣る。
【0049】
表5から明らかなように、比較例3の空気入りタイヤは、カーボンブラックCB10のN2SAが55m2/g未満かつ式(1)の係数αが1979未満であるため、転がり抵抗は小さくなるが耐久性が大幅に悪化する。比較例4,5,8の空気入りタイヤは、カーボンブラックCB1,CB2,CB12の式(1)の係数αが1979未満であるため、転がり抵抗性と耐久性とを両立することが出来ない。
【0050】
比較例6,7の空気入りタイヤは、カーボンブラックCB8,CB11のDBP吸収量が110ml/100g未満かつ式(1)の係数αが1979未満であるため、転がり抵抗性と耐久性とを両立することが出来ない。比較例9の空気入りタイヤは、カーボンブラックCB13のN2SAが95m2/gを超えかつ係数αが1979未満であるため、転がり抵抗性と耐久性とが両方とも劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタジエンゴム30〜80重量%を含むジエン系ゴム100重量部に対し、窒素吸着比表面積N2SAが55〜95m2/g、DBP吸収量が110〜160ml/100gのカーボンブラックを5重量部以上含む補強性充てん剤を30〜60重量部配合すると共に、前記カーボンブラックの凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dst(nm)と、前記N2SAとの関係を下記の式(1)
Dst=α(N2SA)-0.61 (1)
(ただし、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/g)、αは係数である。)
で表わしたとき、係数αが1979以上であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記係数αが、1979≦α≦2450であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記補強性充てん剤がシリカを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載のタイヤ用ゴム組成物で、サイドウォール部を構成したことを特徴とする空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−251020(P2012−251020A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122658(P2011−122658)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】