説明

タイヤ用垂直搬送装置

【課題】本発明は、廃タイヤを安定した状態で上方の投入口に搬送することができ設置スペースを小さくすることが可能なタイヤ用垂直搬送装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】垂直搬送装置は、ほぼ垂直に立設された基体フレーム1と、基体フレーム1の下端側及び上端側に設けられた一対のスプロケットホイール20及び21と、スプロケットホイール20及び21に巻回された無端状のコンベヤチェーン22と、コンベヤチェーン22に所定間隔を置いて取り付けられるとともにコンベヤチェーン22の搬送方向に傾斜して固定された複数のリフトバー27とを備えている。そして、廃タイヤTをリフトバー27に引っ掛けて保持しながら垂直搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃タイヤ処理装置等のタイヤ搬送機構に用いられるタイヤ用垂直搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年自動車の台数増加に伴いその廃棄処理が世界的な環境問題となっている。そのため、廃車のリサイクルが進められており、中古部品として再利用したり、金属等の材料は再生処理されている。廃タイヤについては、主にゴム材料からなっているため細分化してボイラ等の燃料として利用されている。
【0003】
こうした廃タイヤの機械的な処理は、例えば特許文献1に記載されているように、廃タイヤの破砕、切削、選別といった工程により所定の大きさのゴムチップに細分化される。特許文献1では、ベルトコンベヤを用いて廃タイヤの搬送を行っているが、コンベヤ搬送装置としては、例えば特許文献2に記載されているように、チェーンコンベヤにプレートリフタを取り付けたもの、特許文献3に記載されているようチェーンコンベヤにパケットを取り付けたものがある。
【特許文献1】特開2003−320533号公報
【特許文献2】特開2003−13467号公報
【特許文献3】特開2000−335717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、廃タイヤをベルトコンベヤに載置して搬送する場合、破砕装置の上部投入口に廃タイヤを搬送するためにベルトコンベヤを地上から上方に傾斜した状態で設置する必要があるため、設置スペースを広く取らなければならなくなり、廃タイヤ処理設備を設置可能な場所が限られてしまう。また、ベルトコンベヤを傾斜して設置するためにその分搬送距離が長くなり、また様々な大きさの廃タイヤを搬送するためにベルトの幅を最大の廃タイヤの大きさに合わせなければならず、設置費用負担が大きくなる。
【0005】
特許文献2及び3ではチェーンコンベヤによる垂直方向の搬送装置が記載されているが、土砂等の運搬に使用するもので、廃タイヤの運搬には不適である。
【0006】
そこで、本発明は、廃タイヤを安定した状態で上方の投入口に搬送することができ設置スペースを小さくすることが可能なタイヤ用垂直搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るタイヤ用垂直搬送装置は、ほぼ垂直に立設された基体フレームと、前記基体フレームの下端側及び上端側に設けられた一対のスプロケットホイールと、前記スプロケットホイールに巻回された無端状のコンベヤチェーンと、前記コンベヤチェーンに所定間隔を置いて取り付けられるとともに当該コンベヤチェーンの搬送方向に傾斜して固定された複数のリフトバーとを備えていることを特徴とする。さらに、前記コンベヤチェーンの内側に当接するように前記基体フレームに配設されたガイドレールと、前記コンベヤチェーンの両側に沿って前記基体フレームに配設されたサイドレールとを備えていることを特徴とする。さらに、前記基体フレームの上端側に設けられた前記スプロケットホイールの両側には、当該スプロケットホイールの回転軸と同軸で回転可能な回転体が前記基体フレームから外方に突設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のような構成を有することで、コンベヤチェーンに取り付けられたリフトバーに廃タイヤを引っ掛けて上方に搬送することができ、リフトバーがコンベヤチェーンの搬送方向に傾斜して固定されているため垂直方向でも廃タイヤを安定して搬送することができる。また、廃タイヤをリフトバーに引っ掛けるので、様々な大きさの廃タイヤを区別なく搬送することが可能となる。そして、基体フレームをほぼ垂直に立設してコンベヤチェーンで搬送するため、設置スペースは小さくて済む。
【0009】
また、コンベヤチェーンの内側に当接するように基体フレームにガイドレールを設けることでコンベヤチェーンが搬送中に揺動することが防止され、コンベヤチェーンの両側に沿って基体フレームにサイドレールを設けることで廃タイヤが搬送中に揺動することが防止される。コンベヤチェーンに取り付けたリフトバーで廃タイヤを搬送するため搬送中に廃タイヤが揺動しやすくなるが、ガイドレール及びサイドレールを設けることで、安定した状態で廃タイヤを搬送することができる。
【0010】
また、基体フレームの上端側に設けられたスプロケットホイールの両側に、当該スプロケットホイールの回転軸と同軸で回転可能な回転体を基体フレームから外方に突設することで、上端側のスプロケットホイールの回りを廃タイヤが回動してリフトバーから外れ投入口に落下する際に、回転体が廃タイヤをガイドして投入口から外れないように確実に落下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明に係る実施形態に関する外観斜視図であり、図2及び図3は、それぞれその側面図及び正面図である。また、図4は、図2のA−A断面図である。
【0013】
タイヤ用垂直搬送装置の基体フレーム1は、断面略H形で柱状の搬送部10、基台部11及び連結部12からなり、地面に固定された基台部11に固定された連結部12の上部に搬送部10がほぼ垂直に立設するように固定されている。
【0014】
搬送部10は、図3の正面図からみて左右両側に長手方向に沿って一対のサイドレール部13a及び13bが形成されている。サイドレール部13a及び13bは、所定幅の板状に形成され、搬送部10の左右両側に互いに平行となるように立設しており、両者の間には、図4に示すように、連結板部14が一体形成されている。そして、連結板部14の両側には、ガイドレール部15及び16が一体形成されている。ガイドレール部15及び16は、サイドレール部13a及び13bの間のほぼ中間位置に連結部10の長手方向に沿って設けられており、連結板部14を基準に見た場合サイドレール部13a及び13bの高さよりも低くなるようにその幅が設定されている。
【0015】
連結部12は、開口部が形成された一対の板状体12a及び12bからなり、板状体12aがサイドレール部13aの下端部と基台部11との間を連結固定し、板状体12bがサイドレール部13bと基台部11との間を連結固定している。
【0016】
チェーンコンベヤ機構2は、基体フレーム1の上端側及び下端側にそれぞれ配設されたスプロケットホイール20及び21と、スプロケットホイール20及び21に巻回された無端状のコンベヤチェーン22を備えている。
【0017】
サイドレール部13a及び13bの上端側には、それぞれ一対の支持板17a及び17bが固定されており、支持板17a及び17bにそれぞれ取り付けられた軸受部23a及び23bに回転自在に回転軸体24が装着されている。そして、回転軸体24にスプロケットホイール20が固定されており、スプロケットホイール20は、ガイドレール部15及び16とほぼ面一の位置関係となるように設定されている。
【0018】
一方、板状体12a及び12bの外面には支持板18a及び18bが設けられている。支持板18a及び18bには、図2に示すように、上下方向に穿設された位置調整用の長孔が形成されており、調節ネジを用いた位置調整機構19a及び19bにより支持板18a及び18bの上下方向の位置調整が行われて長孔に貫設された固定ネジにより支持板18a及び18bが板状体12a及び12bにそれぞれ固定される。支持板18a及び18bには、それぞれ軸受部25a及び25bが取り付けられており、軸受部25a及び25bに回転自在に回転軸体26が装着されている。そして、回転軸体26にスプロケットホイール21が固定されており、スプロケットホイール21は、ガイドレール部15及び16とほぼ面一の位置関係となるように設定されている。
【0019】
コンベヤチェーン22は、連結板部14を周回するようにスプロケットホイール20及び21の間に張架されている。そして、コンベヤチェーン22の内周側にガイドレール部15及び16が当接するように設定されている。また、スプロケットホイール21を支持する支持板18a及び18bを上下方向に位置調整することで、コンベヤチェーン22の張力を調整することができる。
【0020】
コンベヤチェーン22には、所定間隔を空けて複数のリフトバー27が固定されている。リフトバー27は、タイヤの幅よりも長く設定された棒状体でコンベヤチェーン22から外方に向かって突設されており、コンベヤチェーン22の搬送方向に向かって所定角度傾斜するように設定されている。図5は、リフトバー27が固定された部分のコンベヤチェーン22に関する拡大図である。コンベヤチェーン22は、チェーン22a及び22bを交互に連結して構成されており、図4に示すように、連結部分にローラ22cが回転自在に装着されている。ガイドレール部15及び16には、コンベヤチェーン22の各ローラ22cが当接して転動するようになる。そして、一部のチェーン22aには、両側に張り出すように取付部22d及び22eが形成されており、リフトバー27の取付台部27aが取付部22d及び22eにネジ止めされて固定される。
【0021】
スプロケットホイール20が固定された回転軸体24は、軸受部25a及び25bを貫通して両側に突出しており、両側の突出部分にはそれぞれ複数の案内板からなる回転体30a及び30bが設けられている。回転体30a及び30bを構成する案内板は、スプロケットホイールとほぼ同形状で、その外周には歯車状の突起が形成されている。したがって、回転軸体24が回転すると、スプロケットホイール20と同期して回転体30a及び30bが回転するようになる。
【0022】
スプロケットホイール21が固定された回転軸体26は、支持板18aに固定された軸受部25aから突出しており、その突出部分にスプロケットホイール40が固定されている。そして、スプロケットホイール40は、地面に設置された駆動モータ41の駆動軸に固定されたスプロケットホイール42との間に駆動チェーン43が巻回されている。
【0023】
上述した装置に隣接してタイヤ破砕装置100が設置されており、タイヤ破砕装置100の上部にタイヤ投入口101が設けられている。タイヤ破砕装置100は、支持台102により所定の高さに設置されており、支持台102の上面に連結部10の中間部分が支持固定体103を介して固定されている。
【0024】
次に、以上説明した装置の動作について説明する。まず、駆動モータ41が駆動回転すると、駆動チェーン43を介して回転軸体26が回転し、それに伴いスプロケットホイール21が回転するようになる。そのため、スプロケットホイール20及び21に巻回されたコンベヤチェーン22が搬送部10の長手方向に沿って移動し搬送動作する。コンベヤチェーン22は、ガイドレール部15及び16が内周側に当接しているため、ぶれることなく連結板部14を周回する。
【0025】
そして、図1に示すように、周回移動するコンベヤチェーン22に固定された複数のリフトバー27に順次廃タイヤTを引っ掛けるように保持させる。コンベヤチェーン22は、上方に搬送移動するように設定されているため、リフトバー27は上向きに傾斜して設定されている。そのため、リフトバー27に保持された廃タイヤTはリフトバー27の根元部分まで移動し、図2に示すように傾斜した状態で保持されるようになり、廃タイヤTの上部が自重によりサイドレール部13a及び13bやコンベヤチェーン22に圧接されるようになる。
【0026】
この状態では、コンベヤチェーン22にも廃タイヤTから負荷が加わるが、ガイドレール部15がコンベヤチェーン22の内周側に当接しているため搬送動作に影響を受けることはない。また、コンベヤチェーン22の両側にサイドレール部13a及び13bが設けられているので、搬送中に廃タイヤTが揺動することがない。そして、搬送中は摩擦により廃タイヤTの上部だけがサイドレール部13a及び13bに摺接して下部が浮き上がるので、廃タイヤTの摺接による影響も少なくて済む。
【0027】
こうして廃タイヤTはリフトバー27により安定した状態で保持されて垂直方向に搬送されていき、搬送部10の上端側のスプロケットホイール20まで搬送されると、リフトバー27がスプロケットホイール20の周囲に沿って回動するに従い、投入口101に接近していく。そして、図2に点線で示すように、リフトバー27が回動して下向きに傾斜した状態になると、廃タイヤTはリフトバー27から外れて投入口101に落下するようになる。その際に、回転体30a及び30bがスプロケットホイール20の両側で同期して回転しているため、廃タイヤTは回転体30a及び30bに当接して回動するようになる。回転体30a及び30bが廃タイヤTに当接すると、回転体30a及び30bを構成する案内板の外周に形成された突起が廃タイヤTに食い込んで引っ掛かるようになり、廃タイヤTは安定した状態でリフトバー27に引きづられて回動するようになる。そのため、廃タイヤTを確実に投入口101に落下させることができる。
【0028】
なお、以上の例では、回転体30a及び30bを回転軸体24に設けているが、別に設けられた回転軸に回転自在に設けるようにしてもよい。また、回転体を複数の案内板で構成するようにしているが、例えば、円柱状のように、廃タイヤを安定して保持しながら回転するものであればよく、特に限定されない。
【0029】
以上説明したように、廃タイヤを垂直搬送により上方に搬送することができるので、狭いスペースでも設置することができる。そして、コンベヤチェーンにリフトバーを固定した搬送機構であるので、種々の大きさの廃タイヤを搬送することができ、また、細長い構造に構成されて装置自体をコンパクトにすることが可能である。従来のベルトコンベヤでは傾斜した構造となるため搬送距離が長くなるが、本発明の垂直搬送装置では、廃タイヤの投入口までの搬送距離を最短距離とすることができ、装置にかかるコスト負担を大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る実施形態に関する外観斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の正面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】リフトバーの固定部分のコンベヤチェーンに関する拡大図である。
【符号の説明】
【0031】
1 基体フレーム
10 搬送部
11 基台部
12 連結部
13 サイドレール部
14 連結板部
15 ガイドレール部
16 ガイドレール部
17 支持板
18 支持板
20 スプロケットホイール
21 スプロケットホイール
22 コンベヤチェーン
27 リフトバー
30 回転体
40 スプロケットホイール
41 駆動モータ
42 スプロケットホイール
43 駆動チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ垂直に立設された基体フレームと、前記基体フレームの下端側及び上端側に設けられた一対のスプロケットホイールと、前記スプロケットホイールに巻回された無端状のコンベヤチェーンと、前記コンベヤチェーンに所定間隔を置いて取り付けられるとともに当該コンベヤチェーンの搬送方向に傾斜して固定された複数のリフトバーとを備えていることを特徴とするタイヤ用垂直搬送装置。
【請求項2】
前記コンベヤチェーンの内側に当接するように前記基体フレームに配設されたガイドレールと、前記コンベヤチェーンの両側に沿って前記基体フレームに配設されたサイドレールとを備えていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用垂直搬送装置。
【請求項3】
前記基体フレームの上端側に設けられた前記スプロケットホイールの両側には、当該スプロケットホイールの回転軸と同軸で回転可能な回転体が前記基体フレームから外方に突設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ用垂直搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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