説明

タイルの設置構造及びトイレルーム

【課題】床面上にタイルを設置し、このタイルの周縁部に段差解消部材を設置した構造において、タイル上を歩行する歩行者がつまづくおそれがないタイルの設置構造と、このタイルの設置構造を採用したトイレルームとを提供する。
【解決手段】段差解消部材10は、縦断面形状が略三角形であり、下面が床面3に重なり、上面が斜面となっている本体部11と、該本体部11の上部から張り出し、タイル1の斜面1aに重なる上片部12と、本体部11の下部から張り出し、タイル1の裏面の周縁部に重なる下片部13と、本体部11の底面に設けられた浅溝よりなる凹条部14とを有している。本体部11の側面15と、タイル1の側面とが接着剤20によって接着される。また、凹条部14と床面3とが両面粘着テープ21によって付着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイルを床面に設置した構造と、この構造を採用したトイレルームとに関する。
【背景技術】
【0002】
板状の床仕上げ材の周縁部に縁取りレール(縁条片)を装着した構造が特許文献1(特開2010−174614)に記載されている。この縁取りレールの上面は、床仕上げ材から離隔するほど低位となる傾斜面となっている。この縁取りレールは、上面側のカバー脚片と下面側のベース脚片とを有したV字形断面形状のものである。
【0003】
該カバー脚片が床仕上げ材の周縁部の上面に重なり、ベース脚片が床仕上げ材の周縁部の裏面に重なり、該カバー脚片とベース脚片とによって床仕上げ材の周縁部を挟み付けることにより縁取りレールが床仕上げ材に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−174614
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、縁取りレールのカバー脚片が、その厚み分だけ床仕上げ材の上面よりも盛り上っている。そのため、床仕上げ材上を歩行する歩行者が該カバー脚片につまづくおそれがある。
【0006】
本発明は、床面上にタイルを設置し、このタイルの周縁部に段差解消部材を設置した構造において、タイル上を歩行する歩行者がつまづくおそれがないタイルの設置構造と、このタイルの設置構造を採用したトイレルームとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のタイルの設置構造は、裏打ち材が裏面に付着されたタイルを床面上に設置した構造において、該裏打ち材の周縁部は該タイルの周縁部から後退しており、該タイルの上面の周縁部は、該タイルの縁部に向って下り勾配の斜面となっており、該タイルを取り囲むように床面上に段差解消部材が配置されており、該段差解消部材は、該タイルの周囲に配置された本体部と、該本体部から該タイルの該斜面の上側に張り出した上片部と、該本体部からタイル裏面に張り出した下片部とを有しており、該本体部の上面は、該タイルから離隔するほど低位となる斜面となっており、該上片部は、該タイルの周縁部よりも中央側の上面と面一か又はそれよりも低位となっていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2のタイルの設置構造は、請求項1において、前記段差解消部材の前記上片部と下片部との間の側面は、前記タイルの端面から離隔しており、段差解消部材の該側面とタイルの該端面とが接着剤によって付着されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3のタイルの設置構造は、請求項1又は2において、該本体部の底面に凹条部が設けられており、該凹条部と床面とが両面テープによって付着されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4のトイレルームは、トイレルームの床面に請求項1ないし3のいずれか1項のタイルの設置構造によって1枚のタイル及び該タイルを取り囲む段差解消部材が設置されており、該タイル上に便器が設置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイルの設置構造及びトイレルームでは、段差解消部材の上片部がタイル周縁部の上面に重なっているが、このタイル上面の周縁部は外方に向って下り勾配となる斜面となっており、該上片部は該斜面に重なり、該周縁部よりも中央側のタイル上面と面一か又はそれよりも低位となっている。そのため、タイル中央側からタイル側方に歩行する歩行者が上片部につまづくことがない。
【0012】
請求項2の構造によれば、接着剤によって段差解消部材とタイルとがしっかりと接着される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係るタイルの設置構造を示す断面図である。
【図2】段差解消部材の斜視図である。
【図3】実施の形態に係るトイレルームにおけるタイルの設置構造を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0015】
図1に示す通り、タイル1の裏面に裏打ち材2が貼着されている。タイル1は長辺が400〜1800mm、特に600〜1100mmであり、短辺が300〜900mm、特に400〜600mm、厚みが3〜9mm、特に4〜5mm程度の長方形状の施釉された陶磁器製である。タイル1の周縁部の上面は、外方に向って下り勾配の斜面1aとなっている。この斜面1aの幅Wは、1〜10mm、特に2〜4mm程度が好適であり、傾斜角度θは8〜56°、特に20〜37°程度が好適である。
【0016】
裏打ち材2は、ガルバリウム鋼板、ステンレス鋼板、アルミ板などの金属板のほか、合板、珪カル板、セメント板、ハニカム板、合成樹脂板などの薄板や、樹脂ネットなども用いることができる。この裏打ち材2の周縁部は厚さは0.1〜5mm、特に0.2〜0.5mm程度が好ましい。この裏打ち材2の周縁部は、タイル1の周縁部から所定距離dだけタイル1の中央側に後退している。この距離dは1〜15mm、特に5〜10mm程度が好適である。dはWとほぼ等しいことが好ましく、Wとdの差は5mm以下、特に3mm以下程度であることが好ましい。
【0017】
この裏打ち材2は、接着剤、粘着剤、両面テープなどによってタイル1の裏面に貼り付けられている。
【0018】
この裏打ち材2付きのタイル1を床面3上に設置し、このタイル1の周縁部に段差解消部材10を装着する。なお、段差解消部材10を予めタイル1に装着しておき、段差解消部材10付きのタイル1を床面3上に設置してもよい。
【0019】
段差解消部材10は、縦断面形状が略三角形であり、下面が床面3に重なり、上面が斜面となっている本体部11と、該本体部11の上部から張り出し、タイル1の斜面1aに重なる上片部12と、本体部11の下部から張り出し、タイル1の裏面の周縁部に重なる下片部13と、本体部11の底面に設けられた浅溝よりなる凹条部14とを有している。
【0020】
本体部11の底面を水平な床面に当てた状態において、本体部11の上面の傾斜角度は8〜56°特に20〜37°程度が好適である。また、この状態において、上片部12の上面は水平であることが好ましいが、張り出し方向先端側(タイル1の中央側)ほど上位となるように若干傾斜していてもよい。
【0021】
段差解消部材10の材料としては、合成樹脂、ゴム、アルミ、真鍮などが好適である。
【0022】
上片部12と下片部13との間における本体部11の側面15と、タイル1の側面(端面)とが接着剤20によって接着される。また、凹条部14と床面3とが両面粘着テープ21によって付着される。
【0023】
タイル1を床面3上に設置し、タイル1の周縁部に段差解消部材10を装着した状態において、上片部12の上面は斜面1aよりも中央側のタイル1の上面1bと面一か、それよりも下位となっている。このため、タイル1上を歩く歩行者が段差解消部材10につまづくことがない。
【0024】
この実施の形態では、段差解消部材10の側面15がタイル1の側面から若干離隔しており、この側面同士の間に接着剤20が存在しているので、接着剤20を十分な量だけ介在させ、段差解消部材10とタイル1とをしっかりと接着することができる。
【0025】
また、接着剤20を側面15に付着させておき、段差解消部材10をタイル1の周縁部に嵌合させるようにして側面15とタイル1の側面とを接着することができる。この場合、接着剤20は上片部12と下片部13との間の側面15に付着されるので、接着剤20が垂れたりすることがなく、作業効率が良い。
【0026】
段差解消部材10は両面粘着テープ21によって床面3に貼り付けられているので、ずれ動くことがなく、また、床面3から容易に剥してリフォームすることができる。
【0027】
この両面粘着テープ21が凹条部14に配置されているので、両面粘着テープ21の厚みで段差解消部材10が床面3から浮くことが防止され、段差解消部材10を床面に密着させることができる。これにより、見栄えがよくなると共に段差解消部材10と床面3との間にゴミや水が入り込むことが防止される。
【0028】
このタイルの設置構造を採用したトイレルームの構成例を図3に示す。図3の場合、排水接続用の開口1cのほか、便器固定用ボルト又はビスの挿通孔(図示略)をタイル1に予め設けておく。裏打ち材2付きのタイル1を床面3上に設置し、タイル1の周縁部に段差解消部材10を装着する。なお、前述の通り、段差解消部材10を先にタイル1に装着しておいてもよい。その後、このタイル1上に洋風便器30を載置し、ボルト又はビスによって床に固定する。
【0029】
このトイレルームにあっては、便器30が1枚のタイル1の上に載っているので、便器周囲の清掃が容易である。また、タイル目地が存在せず目地に汚れが付着することもない。
【0030】
上記実施の形態では、タイル1の全周縁部に段差解消部材10を装着しているが、人が通過する辺にのみ段差解消部材10を装着してもよい。
【0031】
本発明では、段差解消部材10に抗菌剤を含有させたり、段差解消部材10の上面に抗菌剤を付着させてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 タイル
2 裏打ち材
3 床面
10 段差解消部材
11 本体部
12 上片部
13 下片部
14 凹条部
15 側面
20 接着剤
21 両面粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏打ち材が裏面に付着されたタイルを床面上に設置した構造において、
該裏打ち材の周縁部は該タイルの周縁部から後退しており、
該タイルの上面の周縁部は、該タイルの縁部に向って下り勾配の斜面となっており、
該タイルを取り囲むように床面上に段差解消部材が配置されており、
該段差解消部材は、該タイルの周囲に配置された本体部と、該本体部から該タイルの該斜面の上側に張り出した上片部と、該本体部からタイル裏面に張り出した下片部とを有しており、
該本体部の上面は、該タイルから離隔するほど低位となる斜面となっており、
該上片部は、該タイルの周縁部よりも中央側の上面と面一か又はそれよりも低位となっていることを特徴とするタイルの設置構造。
【請求項2】
請求項1において、前記段差解消部材の前記上片部と下片部との間の側面は、前記タイルの端面から離隔しており、段差解消部材の該側面とタイルの該端面とが接着剤によって接着されていることを特徴とするタイルの設置構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、該本体部の底面に凹条部が設けられており、該凹条部と床面とが両面テープによって付着されていることを特徴とするタイルの設置構造。
【請求項4】
トイレルームの床面に請求項1ないし3のいずれか1項のタイルの設置構造によって1枚のタイル及び該タイルを取り囲む段差解消部材が設置されており、
該タイル上に便器が設置されていることを特徴とするトイレルーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−132237(P2012−132237A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286179(P2010−286179)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】