説明

タイルユニット、その製造方法及びタイル壁の施工方法

【課題】生産性を向上しうる。
【解決手段】複数のタイル3が目地4の間隔W1をあけて連結されたタイルユニットの製造方法である。作業台5上に載置された離型シート6に、湿気硬化型の接着剤7を塗布する接着剤塗布工程と、離型シート6の上に、目地4の間隔W1をあけて複数のタイル3を並べ、各タイル3を接着剤7を介して互いに連結させたタイル配列体11を離型シート6上に形成するタイル配置工程と、接着剤7の完全硬化に先立ち、タイル配列体11を離型シート6とともに持ち上げ、作業台5から取り出す取出工程と含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性を向上しうるタイルユニット、その製造方法及びタイル壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の外壁にタイルを接着施工する場合、例えば、複数のタイルの前面又は裏面を、例えば、紙等のシート材によって連結したタイルユニットが用いられる(例えば、下記特許文献1参照)。このようなタイルユニットは、複数枚のタイルが予め目地間隙をあけて配列されているため、タイルを1枚ずつ貼りつける場合に比べて施工性を向上させる。
【0003】
しかしながら、このようなタイルユニットは、接着施工後、例えば、シート材等を剥離する必要があるため、施工性のさらなる向上が望まれていた。そこで、タイル壁の施工性を高めるために、接着剤等の硬化物で連結したタイルユニットが提案されている。このようなタイルユニットは、接着施工後、シート材等を剥離する必要がないため、施工性を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−332568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなタイルユニットの製造方法としては、まず、図14(a)に示されるように、所定の目地間隔w1でタイルbを位置決めして保持しうる上解放のトレーcにタイルbが敷き詰められる。
【0006】
そして、図14(b)に示されるように、隣り合うタイルb、bの目地eに熱硬化型の接着剤dを塗布し、トレーcごと高温加熱炉(図示省略)に投入して接着剤dを硬化させる。これらの工程は、一つの作業台(製造ライン)で行われる。
【0007】
このような製造方法では、接着剤dが完全硬化するまで、作業台からタイルユニットを取り出すことができず、仕掛品が作業台に滞留し、生産性が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、離型シート上に湿気硬化型の接着剤を塗布し、その上に目地の間隔をあけて複数のタイルを並べてタイル配列体を離型シート上に形成し、しかも接着剤の完全硬化に先立ち、タイル配列体を離型シートとともに持ち上げ、作業台から取り出すことを基本として、タイル配列体が作業台に滞留するのを抑制しつつ、生産性を向上しうるタイルユニットの製造方法等を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のうち請求項1記載の発明は、複数のタイルが目地の間隔をあけて連結されたタイルユニットの製造方法であって、作業台上に載置された離型シートに、湿気硬化型の接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記離型シートの上に、前記目地の間隔をあけて前記複数のタイルを並べ、各タイルを前記接着剤を介して互いに連結させたタイル配列体を前記離型シート上に形成するタイル配置工程と、前記接着剤の完全硬化に先立ち、前記タイル配列体を前記離型シートとともに持ち上げ、作業台から取り出す取出工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、前記作業台から取り出された前記タイル配列体を、前記離型シートを下に向けた略水平状態で梱包箱に収容する梱包工程を含み、前記梱包箱内で前記接着剤を完全硬化させる請求項1に記載のタイルユニットの製造方法である。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、前記作業台から取り出された前記タイル配列体を、前記離型シートを下に向けた略水平状態で前記作業台を含む製造ラインから離れた養生領域に移動して前記接着剤を完全硬化させる養生工程とを含み、前記接着剤が完全に硬化した後に、前記離型シートを剥がして梱包箱内に収容する請求項1に記載のタイルユニットの製造方法である。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、前記接着剤塗布工程は、前記目地に沿ってのびるとともに前記目地の間隔よりも幅広の複数の開口を有したマスキング材を前記離型シートの上に載置する工程と、前記開口を通して、前記離型シート上に前記接着剤を塗布する工程とを含む請求項1乃至3の何れかに記載のタイルユニットの製造方法である。
【0013】
また、請求項5記載の発明は、前記タイル配置工程は、前記離型シート上に塗布された接着剤に対して各タイルを位置決めしうる複数の開口部を具えた位置決め枠を、前記離型シートから浮かせて配置する工程と、前記各開口部に前記タイルを嵌め込んでタイル裏面を離型シート上の接着剤に付着させる工程と、前記各タイルを嵌め込んだ後、位置決め枠のみを取り外す工程とを含む請求項1乃至4の何れかに記載のタイルユニットの製造方法である。
【0014】
また、請求項6記載の発明は、前記開口部は、前記タイルの外側面を実質的に連続して保持する請求項5記載のタイルユニットの製造方法である。
【0015】
また、請求項7記載の発明は、前記開口部は、前記タイルの外側面を間欠的に保持する請求項5記載のタイルユニットの製造方法である。
【0016】
また、請求項8記載の発明は、前記作業台は、略水平かつ平らな基面と、この基面から突出するとともに前記各タイルの外側面に当接することにより各タイルを位置決めしうる複数のピンとを含み、前記離型シートは、前記ピンに対応して複数の透孔が形成されている請求項1乃至4の何れかに記載のタイルユニットの製造方法である。
【0017】
また、請求項9記載の発明は、請求項1乃至8のいずれかの方法により製造されたタイルユニットを現場に搬送する工程と、建物の壁下地に、タイルユニットの前記接着剤と同一色調かつ同一の主剤を含む湿気硬化型の接着剤を塗布する工程と、前記タイルユニットを前記接着剤が塗布された壁下地に貼り付ける工程とを含むことを特徴とするタイル壁の施工方法である。
【0018】
また、請求項10記載の発明は、目地の間隔をあけて配列された複数のタイルと、前記目地に跨って配されることにより各タイルを連結する接着剤の硬化物と、前記タイルの裏面側にて前記接着剤の硬化物に剥離可能に付着する離型シートとを含むことを特徴とするタイルユニットである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載のタイルユニットの製造方法は、離型シートで下から支えることで接着剤が完全硬化していないタイル配列体を、その配列を崩さずに持ち上げかつ移動させることができる。従って、接着剤が未硬化の状態のタイル配列体を離型シートとともに作業台から取り出すことができる。従って、仕掛品が作業台に滞留しないため、生産性を向上しうる。
【0020】
また、請求項9のタイル壁の施工方法では、上記タイルユニットを現場に搬送する工程と、建物の壁下地に、タイルユニットの前記接着剤と同一色調かつ同一の主剤を含む湿気硬化型の接着剤を塗布する工程と、前記タイルユニットから離型シートを取り外して前記接着剤が塗布された壁下地に貼り付ける工程とを含む。このような施工方法によれば、現場到着時には、接着剤が完全硬化しているため、タイル配列体から離型シートを剥がすことにより、遅延することなく施工を開始できる。さらに、施工方法では、タイルユニットが、タイルユニットの接着剤と同一色調かつ同一の主剤を含む湿気硬化型の接着剤によって貼り付けられるので、各接着剤が一体化した後はタイルの目地から両者を区別し難く、かつそれぞれの劣化の進行に差がないため、長期に亘って、タイル壁の美観を向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態のタイルユニットの一形態を示す斜視図である。
【図2】接着剤塗布工程を説明する斜視図である。
【図3】図2のマスキング材が持ち上げられた状態を示す斜視図である。
【図4】タイル配置工程を説明する斜視図である。
【図5】取出工程を説明する斜視図である。
【図6】梱包工程を説明する斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態のタイルユニットの製造方法を示し、タイル配置工程を説明する斜視図である。
【図8】図7の位置決め枠のみを取り外す工程を説明する斜視図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態の位置決め枠を示す斜視図である。
【図10】図9の位置決め枠のみを取り外す工程を説明する斜視図である。
【図11】本発明のさらに他の実施形態のタイルユニットの製造方法を示し、タイル配置工程を説明する斜視図である。
【図12】図11の製造方法の取出工程を説明する斜視図である。
【図13】本実施形態のタイル壁の施工方法を示し、(a)は接着剤塗布工程、(b)、(c)は貼付工程を示す各断面図である。
【図14】従来のタイルユニットの製造方法を示し、(a)はトレーにタイルを敷き詰めた状態、(b)は隣り合うタイルの目地間に熱硬化型の接着剤を塗布した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態のタイルユニットの製造方法では、複数のタイル3が目地4の間隔W1をあけて連結されたタイルユニット2が製造される。このようなタイルユニット2は、例えば、家屋等の建物の外壁に、ユニット毎に貼り付けられることにより、タイル壁を能率良く施工するのに役立つ。
【0023】
本実施形態の製造方法は、接着剤塗布工程、タイル配置工程及び取出工程を含む。以下、順に各工程を説明する。
【0024】
[接着剤塗布工程]
接着剤塗布工程では、図2に示されるように、作業台5の上に略水平に載置された離型シート6に、接着剤7が塗布される。本実施形態では、後に離型シート6上に配置されるタイル3の目地4に沿って、接着剤7を正確に塗布するために、目地4に沿ってのびる複数の開口8を有するマスキング材9を離型シート6の上に載置する工程と、該開口8を通して、離型シート6上に接着剤7を塗布する工程とを含む。そして、接着剤7の塗布後には、図3に示されるように、マスキング材9のみが上方へ持ち上げられて、作業台5から取り外される。
【0025】
本実施形態の作業台5は、図2に示されるように、略水平かつ平らな基面5aを具え、平面視略矩形状に形成される。この作業台5は、タイルユニット2が製造ライン等で製造される場合、例えば、ベルトコンベア等の上に設けられてもよい。
【0026】
前記離型シート6は、例えば、少なくとも一方の面に離型面6aを有する平面視略矩形のシートに形成され、離型面6aを上にして作業台5の上に載置される。また、離型シート6の離型面6aには、例えば、マスキング材9の四隅の位置を示す略L字状の第1の印M1が付されても良い。このような第1の印M1は、離型シート6に対するマスキング材9の位置を一意に定めるのに役立つ。
【0027】
また、離型シート6としては、特に限定されないが、一般的に使用される合成紙などの紙類や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックシート等が適宜採用できる。
【0028】
前記接着剤7は、常温かつ空気中の水蒸気と反応して硬化する湿気硬化型の接着剤からなる。接着剤7の主剤としては適宜選択できるが、例えば、硬化時の体積収縮が少なく、優れた接着力を有するエポキシ樹脂からなるのが好ましい。これにより、タイル3を安定して連結しつつ、精度の高いタイルユニット2が形成される。また、エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、良好な弾力性を有する変成シリコンエポキシやウレタンエポキシが好ましい。このような接着剤7は、その硬化物7A(図1に示す)が弾力性を有するため、柔軟に変形して外部からの衝撃を吸収し、破断等の損傷が抑制される。
【0029】
また、接着剤7には、耐アルカリ性や凝集力を向上させるために、炭酸カルシウムが充填されるのが好ましい。また、硬化後の接着剤7の破断強度は、1.7N/mm2以上が望ましい。これにより、接着剤の硬化物7Aは、耐久性が大幅に向上しうるとともに、タイル3を安定して連結しうる。
【0030】
本実施形態のマスキング材9は、離型シート6よりもやや小さい面積を有する1枚の薄板状に形成され、目地4に沿ってかつ目地4の間隔W1(図1に示す)よりも幅広の幅L3を有する開口8が複数設けられる。また、マスキング材9の厚さW2は、塗布する接着剤7の高さH1(図1に示す)と略同一に形成されるのが望ましい。
【0031】
前記マスキング材9としては、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス鋼又はアルミニウム合金などの金属材料や、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのプラスチック材料により形成できる。また、マスキング材9の表面には、接着剤7塗布時に付着した該接着剤の硬化物7A(図1に示す)を容易に取り除くため、例えば、フッ素系やシリコーン系等の離型剤(図示省略)でコーティングされるのが好ましい。
【0032】
このようなマスキング材9は、開口8に、例えば、コーキングガン14や、ローラ(図示省略)等を使用して接着剤7が塗布される。この開口8は、目地4(図1に示す)に沿ってのびるため、熟練を必要とすることなく、目地4に沿った所定の位置に接着剤7を正確に塗布できる。さらに、本実施形態のように、離型シート6の離型面6aにマスキング材9の四隅の位置を示す第1の印M1が付されている場合には、離型シート6とマスキング材9との位置合わせも容易に行なうことができる。
【0033】
[タイル配置工程]
タイル配置工程では、図4に示されるように、離型シート6に塗布された接着剤7の上に、目地4の間隔W1をあけて複数のタイル3が並べられる。
【0034】
前記タイル3は、例えば、装飾面となる前面3a、この前面3aの反対側かつ壁側を向いて接着面をなす裏面3b、及び前面3aと裏面3bとの間を継ぐ外側面3cを有する平面視横長矩形状である。そして、本実施形態では、タイル3の裏面3bが離型シート6側に配される。これにより、各タイル3は、接着剤7によってタイル3の外側面3cが接着され、互いに連結されたタイル配列体11(図5に示す)が離型シート6上に形成される。本実施形態の接着剤7は、目地4の間隔W1よりも幅広の幅L3(図4に示す)を有するため、接着剤7の一部がタイル3の裏面3bに回り込み、タイル3をより強固に連結しうる。
【0035】
前記タイル3としては、各種サイズのものが適宜採用でき、例えば、長手方向の長さL1が40〜250mm程度、小口寸法L2が10〜100mm程度、厚さW3が5〜40mm程度のものが好ましい。また、タイル3の材質も特に限定されないが、例えば、陶器質、せっ器質、又は磁器質等の陶磁器製が好ましい。
【0036】
[取出工程]
取出工程では、図5に示されるように、接着剤7の完全硬化に先立ち、タイル配列体11を離型シート6とともに持ち上げ、作業台5から取り出される。このとき、離型シート6の撓みにより、タイル3の配列が崩れないよう、例えば離型シート6の両側縁部6e、6eから離型シート6に張力を与えながら、持ち上げることが望ましい。このような配列の崩れを効果的に抑制するために、離型シート6の下面に、例えば、該離型シート6と略同一又はやや大きい表面積をもつダンボール等の薄板状の支持板(図示省略)を予め配置しておき、これで支えながら持ち上げてもよい。
【0037】
このように、本実施形態の製造方法では、離型シート6で下から支えることで接着剤7が完全硬化していないタイル配列体11を、その配列を崩さずに持ち上げかつ移動させ、離型シート6とともに作業台5から取り出すことができる。従って、本実施形態の製造方法は、作業台5で接着剤7を硬化させていた従来の製造方法と比べて、仕掛品が作業台5に滞留しないため、生産性を向上しうる。しかも、本実施形態の製造方法では、熟練を必要とすることなく、タイルユニット2を、迅速かつ安価に製造できる。
【0038】
本実施形態の製造方法では、前記取出工程において作業台5から取り出されたタイル配列体11を、梱包箱12に収容する梱包工程を含む。
【0039】
[梱包工程]
梱包工程では、図6に示されるように、前記取出工程において取り出されたタイル配列体11を、離型シート6を下に向けた略水平状態で梱包箱12に収容し、該梱包箱12内で接着剤7を完全硬化させる。接着剤7は、湿気硬化型であるため、梱包箱12内部の空気の水蒸気と反応して、保管中及び/又は現場搬送中に完全硬化する。これにより、複数のタイル3と、該タイル3を連結する接着剤の硬化物7Aと、タイル3の裏面3b側に配される離型シート6とを含んだタイルユニット2(図1に示す)が製造される。
【0040】
本実施形態の梱包箱12は、一方の長さL4及び他方の長さL5が、タイル配列体11の配列を崩さないように設定される。また、梱包箱12の内部には、タイル配列体11の配列の崩れを抑制するために、例えば、仕切板13や充填材(図示省略)が配されるのが好ましい。
【0041】
このような製造方法では、接着剤7が完全硬化していないタイル配列体11を、離型シート6とともに箱詰め梱包して施工現場に搬送できるので、保管又は搬送時間を利用して、接着剤7を完全硬化させることができる。従って、本実施形態の製造方法では、工場内で接着剤7を硬化させていた従来の製造方法と比べて、タイルユニット2の製造期間を短縮できる。
【0042】
他の実施形態の製造方法としては、前記取出工程において作業台5から取り出されたタイル配列体11を、作業台5から離れた養生領域(図示省略)に移動して、接着剤7を硬化させる養生工程が含まれてもよい。
【0043】
[養生工程]
養生工程では、取り出されたタイル配列体11を、離型シート6を下に向けた略水平状態で養生領域に移動させる。接着剤7は、湿気硬化型であるため、従来の製造方法のように高熱加熱炉に投入して硬化させる必要がない。従って、この製造方法では、製造ラインから独立した養生領域において、仕掛品を作業台5に滞留させることなく、タイル配列体11の接着剤7を完全に硬化させることができる。
【0044】
さらに、養生工程では、接着剤7が完全に硬化した後に、離型シート6を剥がして、タイルユニット2を梱包箱12内に収容する。このとき、タイルユニット2の接着剤7は完全に硬化しているため、離型シート6を取り外しても、各タイル3の配列が崩れる事はない。従って、タイルユニット2は、離型シート6が剥がされた状態で梱包箱12に収容されるため、施工現場において、該離型シート6を剥がす作業が省けるとともに、離型シート6を廃棄する必要がないため、施工性を向上できる。
【0045】
図7には、本発明のタイルユニットの製造方法を、さらに能率化させる実施形態が示される。
この製造方法では、前記タイル配置工程において、離型シート6上に塗布された接着剤7に対して各タイル3を位置決めしうる複数の開口部18を具えた位置決め枠17を、離型シート6から浮かせて配置する工程と、各開口部18にタイル3を嵌め込んでタイル3の裏面3bを離型シート6上の接着剤7に付着させる工程と、各タイル3を嵌め込んだ後、図8に示されるように、位置決め枠17のみを取り外す工程とを含む。
【0046】
前記位置決め枠17は、例えば、離型シート6を覆う板状に形成され、かつ、開口部18が複数形成された基板部17aと、その四隅で該基板部17aを離型シート6から浮かせて支持する脚部17bとを含んで構成される。
【0047】
前記の基板部17aの開口部18は、予め定められた目地4の間隔W1を隔てて、タイルユニット2のタイル3の配置に合わせて、本実施形態では、馬踏目地状に配置される。また、各開口部18は、タイル3の外側面3cを実質的に連続して保持する。
【0048】
前記脚部17bは、断面略矩形状の角柱からなり、基板部17aの下面が接着剤7に接することがないように、基板部17aを離型シート6から浮かせて支持する。
【0049】
また、前記作業台5には、例えば、離型シート6の四隅の位置を示す略L字状の第2の印M2、及び位置決め枠17の脚部17bの四隅の位置を示す第3の印M3が付される。これらの第2、第3の印M2、M3により、離型シート6と位置決め枠17との位置を、相対的に定めることができる。なお、このような第2、第3の印M2、M3に代えて、離型シート6や脚部17bの一部を嵌め込みうる凹部(図示省略)が設けられても良い。
【0050】
このような位置決め枠17を用いてタイル配置工程を行なうことにより、タイル3を目地4の間隔W1を隔てて、容易かつ正確に配することができ、タイルユニット2の生産性をより向上しうる。さらに、本実施形態では、位置決め枠17及び離型シート6が、作業台5と正確に位置合わせされるため、タイル3を接着剤7に対して正確に配置しうる。
【0051】
また、図9には、さらに他の実施形態の位置決め枠17が示される。
この実施形態の位置決め枠17は、タイル3の外側面3cを間欠的に保持する複数の把持部26と、該把持部26を連結する連結部27と、該把持部26と該連結部27を離型シート6から浮かせて配置する脚部28とを含んで構成される。
【0052】
本実施形態の把持部26は、その直径L9が、目地4の間隔W1(図7に示す)と略同一の円柱状に形成され、その上端が先細状に形成される。これは、タイル3を位置決め枠17の上から挿入する際に抵抗を無くし、作業性を向上させる。また、把持部26は、1つのタイル3について、複数個(この例では6個)配され、該タイル3の外側面3cを保持する。さらに、把持部26の下端は、離型シート6及び接着剤7よりも上方に位置している。
【0053】
前記連結部27は、目地4の間隔W1よりも小さな厚さを有するリブ材からなり、目地4及び位置決め枠17の外側をのび、隣り合う把持部26を互いに連結している。
【0054】
このような位置決め枠17も、タイル3を目地4の間隔W1を隔てて、容易かつ正確に配することができ、タイルユニット2の生産性をさらに向上しうる。また、本実施形態の位置決め枠17は、把持部26の上端が先細状に形成されるため、タイル3を位置決め枠17に上部からの嵌め込みを容易にしうる。さらに、把持部26は、タイル3の外側面3cを間欠的に保持するため、各タイル3と把持部26との摩擦を最小限にでき、図10に示されるように、位置決め枠17のみをスムーズにタイル3から離脱させて上方へと取り外しうる。
【0055】
図11には、本発明のさらに他の実施形態のタイルユニットの製造方法が示される。
この実施形態の作業台5は、略水平かつ平らな基面5aと、この基面5aから突出するとともに各タイル3の外側面3cに当接することにより各タイル3を位置決めしうる複数のピン31とを含む。また、離型シート6は、ピン31に対応して複数の透孔6b(図12に示す)が形成されている。
【0056】
本実施形態のピン31は、その直径D1が目地4の間隔W1と略同一に形成される。また、ピン31は、例えばその高さH2がタイル3の厚さW3よりも低く設定され、作業台5の基面5aに固着されている。また、ピン31は、目地4に沿って配されているため、タイル3の位置決めだけでなく、接着剤7を塗布する際の位置決め部材としても利用できる。
【0057】
本実施形態の製造方法では、前記接着剤塗布工程において、透孔6bにピン31を挿通させて作業台5上に離型シート6が載置される。次に、目地4に沿って隣り合うピン31間に、接着剤7が塗布される。しかる後、前記タイル配置工程において、ピン31に当接させてタイル3を配置することによりタイル配列体11(図12に示す)が形成される。取出工程において、図12に示されるように、透孔6bからピン31を抜きながら、タイル配列体11を離型シート6で支えて持ち上げ、作業台5から取り出すことができる。
【0058】
このように、本実施形態の製造方法では、マスキング材9(図2に示す)及び位置決め枠17(図7に示す)を用いることなく、ピン31のみによって、接着剤7の塗布位置、及びタイル3の配置位置が一意に決めることが可能なため、生産性をさらに向上しうる。なお、接着剤7の塗布には、図2に示すマスキング材9の開口8にピン31を嵌め込んで塗布されてもよい。
【0059】
次に、以上のような製造方法により形成されたタイルユニット2を建物の壁に施工するタイル壁の施工方法について説明する。この施工方法では、搬送工程と、接着剤塗布工程と、貼付工程とを含む。以下、順に各工程を説明する。
【0060】
[搬送工程]
搬送工程では、タイルユニット2が収容された梱包箱12が、例えば、トラック等で現場へ搬送される。前記梱包工程を経て製造されるタイルユニット2の場合には、接着剤7の硬化、養生の大部分が、この搬送工程で行なわれる。これにより、アイドルタイムを無くし、現場到着時には、接着剤7が完全硬化しているため、遅延することなく施工を開始できる。なお、接着剤7は、塗装と同時に硬化が進行するが、塗装後、工場内で特に養生させることなく、直ちに搬送工程に付すことが望ましい。また、搬送工程では、工場から現場までの概算搬送時間を予め推測し、少なくとも現場到着時には完全硬化するように、搬送開始時間を予定することもできる。
【0061】
[接着剤塗布工程]
接着剤塗布工程では、図13(a)に示されるように、建物の壁下地37に、タイルユニット2の接着剤7(図13(b)に示す)と同一色調かつ同一の主剤を含む湿気硬化型の接着剤38を塗布する。本実施形態の接着剤38は、例えば、1.5〜2.0mm程度の厚さW5で塗布される。
【0062】
[貼付工程]
貼付工程では、前記梱包工程を経て製造されるタイルユニット2の場合、離型シート6(図1)を取り外す。このとき、タイルユニット2の接着剤7は完全に硬化しているため、離型シート6を取り外しても、各タイル3の配列が崩れる事はない。
【0063】
図13(b)に示されるように、タイルユニット2を、接着剤38が塗布された壁下地37に貼り付ける。そして、図13(c)に示されるように、所定時間の養生後、接着剤38が硬化することにより、タイル壁40が形成される。
【0064】
このような施工方法によれば、タイルユニット2が、タイルユニット2の接着剤7と同一色調かつ同一の主剤を含む湿気硬化型の接着剤38によって貼り付けられるので、各接着剤7、38が一体化した後は、タイル3の目地4から両者を区別し難く、かつそれぞれの劣化の進行に差がないため、長期に亘って、タイル壁40の美観を向上しうる。
【0065】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0066】
次に、本発明をより具現化した実施例について説明する。
本実施形態では、図2に示されるように、作業台上に載置された離型シートに、マスキング材を介して、湿気硬化型の接着剤Aを、幅9mm、厚さ0.5mmで塗布した。その後、接着剤Aの上に、目地の間隔5mmをあけて、材質が陶器質のタイル(45×145mm)を並べ、各タイルを接着剤Aを介して互いに連結させたタイル配列体を離型シート上に形成した。接着剤Aの完全硬化に先立ち、タイル配列体を離型シートで支えて持ち上げ作業台から取り出し、離型シートを下に向けた略水平状態で梱包箱に収容した。
【0067】
そして、接着剤Aが完全に硬化する8時間のうち、タイルユニットを現場に搬送する12時間を使用して、梱包箱内で接着剤を常温で硬化させた。施工現場に到着後、離型シートを剥離しても、タイルの配列は崩れなかった。そして、パルプ混入セメントけい酸カルシウム板からなる壁下地に、接着剤Bを厚さ1.5mmで塗布し、上記タイルユニットを貼り付けた。接着剤Bが完全に硬化するまで48時間養生し、タイル壁が形成された。なお、接着剤A及び接着剤Bの配合、並びにこれらの硬化後の破断強度については、表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例のタイルユニットの製造方法では、タイル配列体が作業台に滞留するのを抑制しつつ、生産性を向上できることが確認できた。また、タイルユニットの製造方法では、タイルユニットの製造期間を短縮できることも確認できた。さらに、タイル壁の施工方法では、タイル壁の美観を向上しうることが確認できた。
【符号の説明】
【0070】
3 タイル
4 目地
5 作業台
6 離型シート
7 接着剤
11 タイル配列体
12 梱包箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタイルが目地の間隔をあけて連結されたタイルユニットの製造方法であって、
作業台上に載置された離型シートに、湿気硬化型の接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記離型シートの上に、前記目地の間隔をあけて前記複数のタイルを並べ、各タイルを前記接着剤を介して互いに連結させたタイル配列体を前記離型シート上に形成するタイル配置工程と、
前記接着剤の完全硬化に先立ち、前記タイル配列体を前記離型シートとともに持ち上げ、作業台から取り出す取出工程とを含むことを特徴とするタイルユニットの製造方法。
【請求項2】
前記作業台から取り出された前記タイル配列体を、前記離型シートを下に向けた略水平状態で梱包箱に収容する梱包工程を含み、
前記梱包箱内で前記接着剤を完全硬化させる請求項1に記載のタイルユニットの製造方法。
【請求項3】
前記作業台から取り出された前記タイル配列体を、前記離型シートを下に向けた略水平状態で前記作業台を含む製造ラインから離れた養生領域に移動して前記接着剤を完全硬化させる養生工程とを含み、
前記接着剤が完全に硬化した後に、前記離型シートを剥がして梱包箱内に収容する請求項1に記載のタイルユニットの製造方法。
【請求項4】
前記接着剤塗布工程は、前記目地に沿ってのびるとともに前記目地の間隔よりも幅広の複数の開口を有したマスキング材を前記離型シートの上に載置する工程と、
前記開口を通して、前記離型シート上に前記接着剤を塗布する工程とを含む請求項1乃至3の何れかに記載のタイルユニットの製造方法。
【請求項5】
前記タイル配置工程は、前記離型シート上に塗布された接着剤に対して各タイルを位置決めしうる複数の開口部を具えた位置決め枠を、前記離型シートから浮かせて配置する工程と、
前記各開口部に前記タイルを嵌め込んでタイル裏面を離型シート上の接着剤に付着させる工程と、
前記各タイルを嵌め込んだ後、位置決め枠のみを取り外す工程とを含む請求項1乃至4の何れかに記載のタイルユニットの製造方法。
【請求項6】
前記開口部は、前記タイルの外側面を実質的に連続して保持する請求項5記載のタイルユニットの製造方法。
【請求項7】
前記開口部は、前記タイルの外側面を間欠的に保持する請求項5記載のタイルユニットの製造方法。
【請求項8】
前記作業台は、略水平かつ平らな基面と、この基面から突出するとともに前記各タイルの外側面に当接することにより各タイルを位置決めしうる複数のピンとを含み、
前記離型シートは、前記ピンに対応して複数の透孔が形成されている請求項1乃至4の何れかに記載のタイルユニットの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの方法により製造されたタイルユニットを現場に搬送する工程と、
建物の壁下地に、タイルユニットの前記接着剤と同一色調かつ同一の主剤を含む湿気硬化型の接着剤を塗布する工程と、
前記タイルユニットを前記接着剤が塗布された壁下地に貼り付ける工程とを含むことを特徴とするタイル壁の施工方法。
【請求項10】
目地の間隔をあけて配列された複数のタイルと、前記目地に跨って配されることにより各タイルを連結する接着剤の硬化物と、前記タイルの裏面側にて前記接着剤の硬化物に剥離可能に付着する離型シートとを含むことを特徴とするタイルユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−153464(P2011−153464A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15725(P2010−15725)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】