説明

タイル壁の施工方法

【課題】壁下地への密着性、及び耐久性能を向上しうる。
【解決手段】壁下地3に接着剤4を塗布する工程と、予め複数枚のタイル2がタイル連結手段5により目地間隔Sを維持した状態で連結されたタイルユニット1を接着剤4が塗布された壁下地3に貼り付ける工程とを含むタイル壁10の施工方法である。タイル2は、装飾面をなす前面2a、前面2aの反対側かつ壁下地3と実質的に平行に貼り付けられる裏面2b、及び前面2aと裏面2bとの間をタイル厚さ方向に継ぐ側面2cを有する。タイル連結手段5は、壁下地3に塗布された接着剤4と同一色調かつ接着剤4の主剤と同一の主剤を含む接着剤7の硬化物からなる。しかも、タイル連結手段5は、隣り合うタイル2、2の側面2c、2c間を跨る基部11と、裏面2bの少なくとも一部を覆うはみ出し部12とを含む。基部11及びはみ出し部12は、裏面2bからの最大厚さW3が0.1mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁下地への密着性、及び耐久性能を向上しうるタイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の外壁にタイルを接着施工する場合、例えば、複数のタイルの前面を、例えば、紙等のシート材によって連結したタイルユニットが用いられる(例えば、下記特許文献1参照)。このようなタイルユニットは、複数枚のタイルが予め目地間隔をあけて配列されているため、タイルを1枚ずつ貼りつける場合に比べて施工性を向上させる。
【0003】
しかしながら、このようなタイルユニットは、壁下地への接着施工後、シート材等を剥離する必要があるため、施工性のさらなる向上が望まれていた。
【0004】
そこで、図10(a)に示されるように、目地間隔をあけて配された複数のタイルc、cを、接着剤等の硬化物からなるタイル連結手段bで連結したタイルユニットaが提案されている。このようなタイルユニットaは、接着施工後、シート材等を剥離する必要がないため、タイル壁の施工性を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−332568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなタイル連結手段bは、壁下地eと実質的に平行に貼り付けられる裏面a2から大きくはみ出しているため、図10(b)に示されるように、タイルユニットaを接着剤dが塗布された壁下地eに貼り付ける際に、タイル連結手段bが接着剤dを押し下げ、タイルcと接着剤dとの間に隙間fが形成されやすい。この隙間fは、タイルcと壁下地eとの密着性を低下させるとともに、雨水や結露が浸入して、タイル壁の耐久性能を低下させるという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、タイル連結手段を、壁下地に塗布された接着剤と同一色調かつ接着剤の主剤と同一の主剤を含む接着剤の硬化物から形成し、しかも、該タイル連結手段を、隣り合うタイルの側面間を跨る基部と、タイルの裏面の少なくとも一部を覆うはみ出し部とを含めるとともに、はみ出し部のタイルの裏面からの最大厚さを所定の範囲内に設定することを基本として、壁下地への密着性、及び耐久性能を向上しうるタイル壁の施工方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のうち請求項1記載の発明は、壁下地に接着剤を塗布する工程と、予め複数枚のタイルがタイル連結手段により目地間隔を維持した状態で連結されたタイルユニットを前記接着剤が塗布された壁下地に貼り付ける工程とを含むタイル壁の施工方法であって、前記タイルは、装飾面をなす前面、前記前面の反対側かつ壁下地と実質的に平行に貼り付けられる裏面、及び前記前面と前記裏面との間をタイル厚さ方向に継ぐ側面を有し、前記タイル連結手段は、前記壁下地に塗布された接着剤と同一色調かつ前記接着剤の主剤と同一の主剤を含む接着剤の硬化物からなり、しかも、該タイル連結手段は、隣り合う前記タイルの前記側面間を跨る基部と、前記裏面の少なくとも一部を覆うはみ出し部とを含むとともに、前記基部及び前記はみ出し部は、前記裏面からの最大厚さが0.1mm以下であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、前記はみ出し部は、前記タイルの前記裏面において、目地幅方向の最大幅が1mm以下である請求項1に記載のタイル壁の施工方法である。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、前記タイルの前記側面は、前記裏面とのコーナ部を斜めに切り欠いた面取部を有し、前記タイル連結手段の少なくとも一部が前記面取部を跨って複数のタイルを連結する請求項1又は2に記載のタイル壁の施工方法である。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、前記面取部は、前記タイル厚さ方向の最大面取り高さが0.5〜2.0mm、目地幅方向の最大面取り幅が0.5〜2.0mmである請求項3に記載のタイル壁の施工方法である。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、前記基部は、前記タイルの前記前面側から前記裏面までの最大厚さが、0.5〜2.0mmである請求項1乃至4のいずれかに記載のタイル壁の施工方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のタイル壁の施工方法は、壁下地に接着剤を塗布する工程と、予め複数枚のタイルがタイル連結手段により目地間隔を維持した状態で連結されたタイルユニットを前記接着剤が塗布された壁下地に貼り付ける工程とを含む。タイルは、装飾面をなす前面、前面の反対側かつ壁下地と実質的に平行に貼り付けられる裏面、及び前面と裏面との間をタイル厚さ方向に継ぐ側面を有する。
【0014】
タイル連結手段は、壁下地に塗布された接着剤と同一色調かつ接着剤の主剤と同一の主剤を含む接着剤の硬化物からなる。このようなタイル連結手段は、壁下地の接着剤と同化して接着強度を高めることができ、壁下地への接着性を向上しうる。しかも、それらが一体化した後は、タイルの目地から両者を区別し難く、かつそれぞれの劣化の進行に差がないため、長期に亘って、タイル壁の美観を向上しうる。
【0015】
また、タイル連結手段は、隣り合うタイルの側面間を跨る基部と、タイルの裏面の少なくとも一部を覆うはみ出し部とを含む。このようなはみ出し部は、タイルとタイル連結手段との接着面積を高めて、隣り合うタイルを強固に連結しうる。
【0016】
さらに、基部及びはみ出し部は、裏面からの最大厚さが0.1mm以下に限定される。これにより、タイル連結手段は、タイルの裏面において実質的に面一に形成されるため、壁下地に貼り付ける際に接着剤を局部的に押し下げることなく、ひいては、タイルと接着剤との間に隙間が形成されるのを抑制できる。従って、タイルユニットは、タイル及びタイル連結手段を接着剤に隙間なく当接させることができ、密着性を向上しうる。さらに、タイルユニットは、上記のような隙間に結露が滞留してタイル壁が劣化するのを防ぐことができ、耐久性能を向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態のタイル壁の一形態を例示する正面図である。
【図2】タイルユニットを示す斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】タイル及び枠体を示す斜視図である。
【図5】タイル連結手段が形成される工程を説明する斜視図である。
【図6】タイル壁の施工方法を示し、(a)は接着剤が塗布された壁下地を示す断面図、(b)はタイルユニットを壁下地に貼り付けル状態を示す断面図である。
【図7】タイルユニット及び壁下地を拡大して示す断面図である。
【図8】他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図9】平板状の補強材を有するタイル連結手段を示す部分斜視図である。
【図10】(a)は従来のタイルユニットを拡大して示す断面図、(b)は(a)のタイルユニットを壁下地に貼り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態のタイル壁10の施工方法は、例えば、住宅、ビル等の構造体の壁下地3に接着剤4を塗布する工程(以下、「接着剤塗布工程」ということがある。)と、予め複数枚のタイル2が連結されたタイルユニット1を接着剤4が塗布された壁下地3に貼り付ける工程(以下、「貼付工程」ということがある。)とを含んでいる。
【0019】
前記タイルユニット1は、図1、図2に示されるように、複数枚のタイル2と、これら複数枚のタイル2を目地間隔Sを維持した状態で連結するタイル連結手段5とを具える。本実施形態では、左右に隣り合うタイル2、2間を上下にのびる縦目地6A、及び縦目地6Aを含んで上下に隣り合うタイル群2G、2Gの間を左右にのびる横目地6Bを含む目地6を隔てて、12個のタイル2が馬踏み目地状に配置されている。なお、タイル2の連結個数や目地形状は、種々変更してもよい。
【0020】
前記タイル2は、装飾面をなす前面2a、前面2aの反対側かつ壁下地3と実質的に平行に貼り付けられる裏面2b、及び前面2aと裏面2bとの間をタイル厚さ方向に継ぐとともに目地6を形成する側面2cを有し、本実施形態では、正面視横長の略矩形状に形成される。
【0021】
また、タイル2としては、各種サイズのものが適宜採用できるが、例えば、長手方向の長さL1が40〜250mm程度、小口寸法L2が10〜100mm程度、厚さW1(図3に示す)が5〜40mm程度のものが好ましい。また、タイルの材質も特に限定されないが、例えば、陶器質、せっ器質、磁器質等の陶磁器製が好ましい。
【0022】
本実施形態のタイル連結手段5は、壁下地3に塗布された接着剤4と同一色調かつ接着剤の主剤と同一の主剤を含む接着剤7の硬化物からなる。なお、「同一色調」とは、硬化後の各接着剤4、7を肉眼で視認した際に、区別し難い程度であればよい。
【0023】
また、本実施形態のタイル連結手段5は、縦目地6Aのうち最も上側に位置する上の縦目地6Au、最も下側に位置する下の縦目地6Ad、及び全ての横目地6Bに沿って配され、合計7本設けられる。タイル連結手段5は、各目地6Au、6Ad、6Bの目地長さの略全範囲に配されて長尺状に形成されているので、隣り合うタイル2、2を強固に連結でき、タイルユニット1の耐久性能を向上しうる。
【0024】
ここで、「目地長さの略全範囲に配される」とは、接着剤7の硬化前後の誤差を考慮し、タイル連結手段5の目地に沿った長さL3が、目地長さL4の90〜110%の範囲に配されることを示している。
【0025】
図2及び図3に示されるように、本実施形態のタイル連結手段5は、隣り合うタイル2の側面2c、2c間を跨る基部11と、タイル2の裏面2bの少なくとも一部を覆うはみ出し部12とを含んで構成される。
【0026】
本実施形態の基部11は、タイル2の裏面2b側で、隣り合うタイル2、2の側面2cを跨って配置される。また、基部11の最大厚さW2は、タイル2の厚さW1よりも小に形成される。これにより、基部11は、タイル2の前面2a側に空間14が形成される。前記はみ出し部12は、基部11から目地幅方向に実質的に一定の厚さでのび、裏面2bの一部を覆って該基部11と一体に形成される。
【0027】
本実施形態のタイル連結手段5は、基部11及びはみ出し部12のタイル2の裏面2bからの最大厚さW3が0.1mm以下に限定される。これにより、タイル連結手段5は、基部11及びはみ出し部12が、タイル2の裏面2bにおいて実質的に面一に形成される。
【0028】
上述のような、タイルユニット1の形成方法の一例について説明する。
本実施形態では、図4に示されるように、目地間隔Sを維持した状態で複数のタイル2を配列しうるトレー16が使用される。
【0029】
このトレー16は、タイル2の前面2aを受ける板部18と、該板部18から突出しかつ目地間隔Sで隣り合うタイル2を位置決めしうる凸状の枠部17とから構成される。枠部17の高さD1は、タイル2の厚さW1から基部11の最大厚さW2(図3に示す)を差し引いた厚さ(W1−W2)に設定される。また、トレー16を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス鋼又はアルミニウム合金などの金属材料や、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのプラスチック材料により形成できる。
【0030】
また、トレー16には、タイル2の前面2aを下に向けて、複数のタイル2が配される。これにより、複数のタイル2が正しい目地間隔Sで位置決めされて配列される。また、枠部17の高さD1がタイル2の厚さW1よりも小さいため、図5に示されるように、タイル2を配置した際、目地6には、接着剤7を配しうる溝部21が形成される。
【0031】
しかる後、溝部21に、タイル2間を跨って接着剤7が帯状に塗布される。接着剤7の塗布には、本実施形態のように、コーキングガン22を用いる他、ローラー(図示省略)等を使用することにより、接着剤7を効率良く塗布できる。接着剤7を塗布後、そのタイル2の裏面2b側をローラー等でならして、接着剤7とタイル2の裏面2bとを実質的に面一にし、さらに、接着剤7の両側を整えることにより、はみ出し部12(図2に示す)が形成される。
【0032】
そして、接着剤7が硬化したのちに、複数のタイル2及びタイル連結手段5が一体となってトレー16から取り外されることにより、タイルユニット1が形成される。この取り外し作業を能率化するために、枠部17の上面17aには、接着剤7との接着を防ぐ、例えば、フッ素系やシリコーン系等の離型剤(図示省略)が塗布されるのが好ましい。
【0033】
このようなトレー16を用いてタイルユニット1を形成することにより、接着剤7をタイル2の側面2c、2c間に跨って正確かつ容易に配しうるとともに、接着剤7がタイル2の前面2a側へ液垂れするのを防ぎうる。従って、タイルユニット1を精度よく、かつ見映えを損ねることなしに容易に形成できる。
【0034】
次に、タイル壁10の施工方法の一例について説明する。
【0035】
前記接着剤塗布工程では、図6(a)に示されるように、例えば、1.5〜2.0mm程度の厚さW5で、接着剤4が壁下地3に塗布される。この接着剤4には、接着剤4と同様の観点により、炭酸カルシウムが充填されてもよい。
【0036】
次に、前記貼付工程では、図6(b)に示されるように、タイル2の裏面2b及びタイル連結手段5を、壁下地3に塗布される接着剤4に当接させて、タイルユニット1が壁下地3に貼り付けられる。
【0037】
基部11及びはみ出し部12は、タイル2の裏面2bにおいて実質的に面一に形成されるため、図10(b)に示される従来のように、裏面2b側から大きくはみ出したタイル連結手段bにより、接着剤dを局部的に押し下げることがない。従って、図7に拡大して示されるように、タイルユニット1は、タイル2及びタイル連結手段5を、接着剤4に隙間なく当接させることができる。
【0038】
このように、本発明では、タイル2と接着剤4との間に、隙間f(図10(b)に示す)が形成されるのを抑制できるので、タイルユニット1の密着性を向上しうるとともに、該隙間fに雨水や結露が滞留してタイル2やタイル連結手段5を劣化させることが抑制されるので、耐久性能を向上しうる。
【0039】
また、タイル連結手段5は、はみ出し部12が、タイル2とタイル連結手段5との接着面積を高めて、隣り合うタイル2、2を強固に連結できる。これにより、タイルユニット1は、その面剛性が高められてその形状が安定するため、施工性を向上しうる。
【0040】
さらに、タイル連結手段5は、壁下地3の接着剤4と同一色調かつ接着剤4の主剤と同一の主剤を含む接着剤7の硬化物からなるため、接着剤4と同化して接着強度を高めることができる。従って、タイルユニット1は、壁下地3への接着性を向上しうる。しかも、それらが一体化した後は、タイル2の目地から両者を区別し難く、かつそれぞれの劣化の進行に差がないため、長期に亘って、タイル壁10(図1に示す)の美観を向上しうる。
【0041】
上記のような作用を効果的に発揮させるために、基部11及びはみ出し部12の前記最大厚さW3(図3に示す)は、より好ましくは0.1mm以下、さらに好ましくは0.08mm以下が望ましい。
【0042】
また、輸送中や施工中の衝撃や負荷によるタイル連結手段5の破断防止性を高めるために、基部11の前記最大厚さW2(図3に示す)は、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1mm以上が望ましい。逆に、前記最大厚さW2が過度に大きくなると、タイル壁10(図1にしめす)の正面において、タイル2と目地6との凹凸が小さくなり、立体感や重厚感が低下して、美観が悪化するとともに、タイルユニット1の質量が大幅に増大するおそれがある。このような観点より、前記最大厚さW2は、好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下が望ましい。
【0043】
さらに、はみ出し部12は、タイル2の裏面2bにおいて、目地幅方向の最大幅L5が過度に大きくなると、タイル2の裏面2bと壁下地3に塗布される接着剤4との接着面が小さくなり、タイルユニット1の接着強度を十分に発揮できないおそれがある。逆に、前記最大幅L5が過度に小さくなると、隣り合うタイル2、2を強固に連結できないおそれがある。このような観点より、前記最大幅L5は、好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下が望ましい。
【0044】
また、前記接着剤7の主剤としては、適宜選択できるが、例えば、硬化時の体積収縮が少なく、優れた接着力を有するエポキシ樹脂からなるのが好ましい。これにより、タイル連結手段5は、タイル2を安定して連結しつつ、精度の高いタイルユニット1を形成できる。
【0045】
さらに、前記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、良好な弾力性を有する変成シリコンエポキシやウレタンエポキシが好ましい。このような接着剤7からなるタイル連結手段5は、弾力性を有するため、柔軟に変形して外部からの衝撃を吸収し、破断等の損傷を抑制しうる。
【0046】
また、前記接着剤7には、耐アルカリ性や凝集力を向上させるために、炭酸カルシウムが充填されるのが好ましい。また、タイル連結手段5の破断強度は、1.7N/mm2以上が望ましい。これにより、タイル連結手段5は、その破断防止性がさらに向上し、タイル2を安定して連結しうる。
【0047】
図3に示されるように、タイル2の側面2cは、前面2aと直角で裏面2bにのびる主側面26と、該主側面26と裏面2bとのコーナ部を斜めに切り欠いた面取部27とから形成されるのが好ましい。この面取部27には、タイル連結手段5の少なくとも一部を跨らせることにより、タイル2とタイル連結手段5との接着面積を高めることができ、隣り合うタイル2、2をより強固に連結しうる。
【0048】
なお、面取部27のタイル厚さ方向の最大面取高さH1が小さすぎると、タイル2とタイル連結手段5との接着面積を高めることができないおそれがある。逆に、最大面取高さH1が過度に大きくなると、タイル2の強度が小さくなり、タイルユニット1の耐久性能が低下するおそれがある。このような観点より、前記最大面取高さH1は、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上が望ましく、また、好ましくは2.0mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下が望ましい。
【0049】
同様の観点より、面取部27の目地幅方向の最大面取り幅W6は、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上が望ましく、また、好ましくは2.0mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下が望ましい。
【0050】
タイル連結手段5は、図1及び図2に示されるような、タイル2の目地6に沿ってのびる長尺状に形成されるものに限定されるわけではない。本発明のタイル連結手段5は、上述のように、基部11及びはみ出し部12により、隣り合うタイル2、2を強固に連結しうるため、例えば、図8に示されるように、上下左右に隣り合うタイル2、2を部分連結するものでもよい。このようなタイル連結手段5は、タイル2を安定して連結しつつ、接着剤7の量を減らすことができる。なお、タイル連結手段5には、このような部分連結するものと、長尺状のものとを混在させてもよいのは言うまでもない。
【0051】
さらに、タイル連結手段5は、接着剤7の硬化物のみからなるものを示したが、例えば、図9(a)に示されるように、その強度を向上させる補強材28を含むものでもよい。
【0052】
本実施形態の補強材28は、基部11の前記最大厚さW2よりも小さな厚さW7を有する薄板状に形成され、基部11の壁下地3(図7に示す)側に配される。また、補強材28は、接着剤7が硬化する前に、接着剤7と補強材28とを例えばローラー等でならすことにより、補強材28を基部11にめり込ませて、タイル2の裏面2b側において実質的に面一に形成される。
【0053】
このような補強材28は、タイル連結手段5の強度を向上させ、破断等の損傷を抑制しうる。従って、タイルユニット1の耐久性能が向上する。また、タイル連結手段5は、補強材28を含んでも、タイル2の裏面2b側において実質的に面一に形成されるので、壁下地3との密着性を低下させることもない。さらに、補強材28は、基部11に目隠しされるため、タイル壁10(図1に示す)の美観性を損ねることもない。
【0054】
なお、補強材28の厚さW7が小さくなると、タイル連結手段5の強度を十分に向上できないおそれがある。逆に、前記厚さW7が大きくなると、基部11へのめり込み量が大きくなって、該基部11が大きく変形するおそれがある。このような観点より、前記厚さW7は、好ましくは基部11の前記最大厚さW2の30%以上、さらに好ましくは35%以上が望ましく、また、好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下が望ましい。
【0055】
また、補強材28には、このような薄板状に限定されるものではなく、例えば、有機繊維をコード状に形成した繊維(図示省略)から形成されるものでもよい。このような補強材28は、タイル連結手段5の強度を向上させるとともに、金属からなる薄板状のものと比べて、タイルユニット1の質量を増大させることがない。さらに、このような補強材28は、基部11へのめり込み量が少ないため、該基部11やはみ出し部12の変形を抑制しうる。なお、繊維としては、特に限定されないが、例えば、アラミドやナイロン等の有機繊維等が適宜選択されるのが望ましい。
【0056】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0057】
次に、本発明をより具現化した実施例について説明する。本実施例では、図4に示されるように、目地間隔5mmを維持した状態でタイルを配列しうるトレーを用いて、材質が陶器質のタイルを裏面を上にして配列した。しかる後、図5に示されるように、接着剤Aを塗布した。この接着剤が完全に硬化するまで8時間養生した。トレーから取り外すことにより、表1に示すタイル及びタイル連結手段を有するタイルユニットを製造した。なお、共通仕様は以下のとおりである。
タイル:
長さL1:145mm
小口寸法L2:45mm
厚さW1:11mm
【0058】
次に、タイル壁の施工方法として、厚さ1.5mmで、接着剤Bをパルプ混入セメントけい酸カルシウム板からなる壁下地に塗布し、該壁下地に上記タイルユニットを貼り付けた。そして、各タイル壁の性能がそれぞれ評価された。なお、タイル連結手段を形成する接着剤A及び壁下地に塗布する接着剤Bの配合、並びにこれらの硬化後の破断強度については、表2に示した。
テスト方法は次のとおりである。
【0059】
<密着性>
接着剤Bが硬化する前に、壁下地に貼り付けたタイルユニットを剥がし取り、タイルの裏面に付着した接着剤Bの面積を測定した。結果は、比較例の面積を100とする指数で表示した。数値が大きいほど、隙間が少なく密着性に優れる。
【0060】
<タイル連結手段の接着強度、及びタイルの割れ強度>
各供試タイルユニットのタイル連結手段の密着強度、及びタイルの割れ強度を測定し、比較例が100となる指数で表示した。数値が大きいほど、耐久性能に優れる。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
実施例のタイル壁の施工方法では、壁下地への密着性、及び耐久性能を向上しうることが確認できた。
【符号の説明】
【0064】
1 タイルユニット
2 タイル
3 壁下地
4 接着剤
5 タイル連結手段
6 目地
7 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁下地に接着剤を塗布する工程と、予め複数枚のタイルがタイル連結手段により目地間隔を維持した状態で連結されたタイルユニットを前記接着剤が塗布された壁下地に貼り付ける工程とを含むタイル壁の施工方法であって、
前記タイルは、装飾面をなす前面、前記前面の反対側かつ壁下地と実質的に平行に貼り付けられる裏面、及び前記前面と前記裏面との間をタイル厚さ方向に継ぐ側面を有し、
前記タイル連結手段は、前記壁下地に塗布された接着剤と同一色調かつ前記接着剤の主剤と同一の主剤を含む接着剤の硬化物からなり、
しかも、該タイル連結手段は、隣り合う前記タイルの前記側面間を跨る基部と、前記裏面の少なくとも一部を覆うはみ出し部とを含むとともに、
前記基部及び前記はみ出し部は、前記裏面からの最大厚さが0.1mm以下であることを特徴とするタイル壁の施工方法。
【請求項2】
前記はみ出し部は、前記タイルの前記裏面において、目地幅方向の最大幅が1mm以下である請求項1に記載のタイル壁の施工方法。
【請求項3】
前記タイルの前記側面は、前記裏面とのコーナ部を斜めに切り欠いた面取部を有し、
前記タイル連結手段の少なくとも一部が前記面取部を跨って複数のタイルを連結する請求項1又は2に記載のタイル壁の施工方法。
【請求項4】
前記面取部は、前記タイル厚さ方向の最大面取り高さが0.5〜2.0mm、目地幅方向の最大面取り幅が0.5〜2.0mmである請求項3に記載のタイル壁の施工方法。
【請求項5】
前記基部は、前記タイルの前記前面側から前記裏面までの最大厚さが、0.5〜2.0mmである請求項1乃至4のいずれかに記載のタイル壁の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−149446(P2012−149446A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9087(P2011−9087)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】