説明

タグボートにおけるロープ案内装置

【課題】タグボートにおける曳航用ロープの繰り出し作業を確実に行うことができ、しかも作業の省人化を図りつつ2本のロープのそれぞれを制御して海上作業を安定的かつ安全に行うこともできるロープ案内装置を提供する。
【解決手段】上部軸17及び下部軸18にそれぞれ設けられた上部左右ローラ及び下部左右ローラをそれぞれ独立に回転駆動させるとともに、上部軸及び下部軸間を相互に上下方向へ移動可能として、1本又は2本の曳航用ロープ14、14aをローラで挟持して繰り出すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タグボート等の船舶から牽引、曳航用ロープを繰り出したり、引き込んだりする際にこのロープをガイドするためのロープ案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タグボート等で他の船を牽引する際には一般に曳航用ロープが使用されている。このような曳航用ロープはタグボート上に配置されたウインチに巻回されて保持されており、ウインチ前方に配置されたロープ案内装置を介してその引き出し、引き込みの操作がなされている。また、曳航作業を行う前にはウインチから繰り出されたロープの一端を曳航される船舶に渡して固定する準備作業がなされる。ウインチから繰り出されたロープは、ウインチとロープ案内装置との間で垂れ下がるため、ロープ案内装置の船首側から引き出さなければならないが、引き出されたロープの重量が大きくなるので、この作業は極めて重労働であった。このようなロープ案内装置のロープ案内機構の改良技術に関して、例えば、特許文献1には、船上に固定される架台に設けられ、ロープを案内する縦長の挿通孔の下半分に突出してロープを左右両側から挟持する対となる駆動ローラと、それぞれの駆動ローラの上部に設けられ挿通孔の上部を通過するロープを乗せる開閉式のロープ載置台などを設けたロープ案内装置が記載されている。
【特許文献1】特開平10−120299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1記載のロープ案内装置においては、ロープを鋏持する駆動ローラが船舶の架台上に立設された垂直軸を回転軸として回転するので、ロープ案内装置と被牽引船舶との高さ方向のロープ牽引角度が深くなった場合などに駆動ローラに付加される摩擦力が小さくなり、ロープの送り出し操作を効果的に行えない場合があるという問題があった。
【0004】
さらに、前記公報記載の装置では、曳航用ロープ2本をロープ案内装置から同時に繰り出して曳航作業を行おうとする場合に、それぞれのロープの動きを独立に制御することが困難であるため手作業で各ロープの1本ずつを繰り出す作業を行っていたので危険であり、省人化対策になっていなかった。また、気象条件などに左右されがちで微妙なロープコントロールを要求されるような曳航作業を安定的かつ安全にコントロールして行うには問題があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、曳航用ロープの繰り出し作業を確実に行うことができ、しかも2本のロープのそれぞれを制御して省人化を図りつつ海上作業を安定的かつ安全に行うこともできるロープ案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のタグボートにおけるロープ案内装置は上記課題を解決することを目的としてなされたもので、船体の甲板上に固定される左右一対の支柱間にハウジングを形成し、前記ハウジングに設けた曳航用ロープを挿通する案内口にローラを臨ませて前記曳航用ロープを挟持し、当該曳航用ロープを一方向へ繰り出すローラ機構を前記ハウジング内に収納配設したタグボートにおけるロープ案内装置において、前記ローラ機構は、水平方向に配置される上下一対の上部軸及び下部軸と、前記上部軸にそれぞれ回転自在に取り付けられた上部左右ローラと、前記下部軸にそれぞれ回転自在に取り付けられた下部左右ローラと、前記上部左右ローラ及び前記下部左右ローラをそれぞれ独立して回転駆動させるローラ駆動部と、互いに上下方向に所定間隔をあけて配設された前記上部軸及び下部軸に連結して前記上部軸及び下部軸間を相互に上下近接方向及び離隔方向へ移動させる支持軸間移動部と、を具備し、前記上部左ローラ及び前記下部左ローラを第1のローラ組とし、前記上部右ローラ及び前記下部右ローラを第2のローラ組として、1本又は2本の前記曳航用ロープを前記第1、第2のローラ組を介して上下方向から挟持して繰り出し可能とするように構成される。
(2)本発明のタグボートにおけるロープ案内装置は、前記(1)において、前記ハウジングの上面を開閉自在に構成したことにも特徴を有している。
(3)本発明のタグボートにおけるロープ案内装置は、前記(1)又は(2)において、前記下部左右ローラはそれぞれ下部軸の中央側に向かって漸次拡径しており、前記曳航用ロープを挟持する面がテーパ状となっていることにも特徴を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水平配置される上下一対の上部軸及び下部軸にそれぞれ上部左右ローラと下部左右ローラとを設け、前記上部左右ローラ及び前記下部左右ローラをそれぞれ独立に回転駆動可能とするとともに、前記上部軸及び下部軸間を相互に上下方向へ移動可能として1本又は2本の曳航用ロープを挟持して繰り出すようにしているので、曳航作業における微妙なロープ操作を確実に行うことができ、しかも2本のロープのそれぞれを独立に制御して作業を安定かつ安全に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本実施形態に係るタグボートにおけるロープ案内装置は、船体の甲板上に固定される左右一対の支柱間にハウジングを形成し、前記ハウジングに設けた曳航用ロープを挿通する案内口にローラを臨ませて前記曳航用ロープを挟持し、当該曳航用ロープを一方向へ繰り出すローラ機構を前記ハウジング内に収納配設したタグボートにおけるロープ案内装置において、前記ローラ機構は、前記支柱によりその左右両端側を支持される上下一対の上部軸及び下部軸と、前記上部軸にそれぞれ回転自在に取り付けられた上部左右ローラと、前記下部軸にそれぞれ回転自在に取り付けられた下部左右ローラと、前記上部左右ローラ及び前記下部左右ローラをそれぞれ独立して回転駆動させるローラ駆動部と、互いに上下方向に所定間隔をあけて配設された前記上部軸及び下部軸に連結して前記上部軸及び下部軸間を相互に上下近接方向及び離隔方向へ移動させる支持軸間移動部と、を具備し、前記上部左ローラ及び前記下部左ローラを第1のローラ組とし、前記上部右ローラ及び前記下部右ローラを第2のローラ組として、1本又は2本の前記曳航用ロープを前記第1、第2のローラ組を介して上下方向から挟持して繰り出し可能とするように構成されている。
【0009】
かかる構成によって、曳航用ロープを上部ローラ及び下部ローラにより上下方向から鋏持してロープの繰り出し作業を確実に行うことができ、しかも2本のロープのそれぞれを制御して曳航作業を安定的かつ安全に行うことができる。すなわち、ロープ案内装置は、そのハウジング中央などに形成された曳航用ロープの案内口に、上下方向から移動して曳航用ロープに突出可能に設けられた対となる駆動用ローラを備えており、この駆動用ローラによりロープを挟持した状態でローラを回転させる。これによって、曳航作業時にタグボートと被曳航船とのによる高さ方向のロープ送り角度が深くなったり、大きく変動したりしたとしても駆動用ローラとロープとの摩擦力を保持させてロープを確実に操作することができる。
【0010】
また、船体の甲板上に設けられたウインチによって曳航作業及び曳航用ロープを巻き取る場合には、上下対となるローラを支持軸間移動部によりその中心位置を維持させながら上下のロール間隔を広げて退避させることによって、ロープを自由に操作できる状態に設定することができる。さらに、左右2本の曳航用ロープの送り出し操作をそれぞれ独立に制御することのできる第1、第2のロール組を備えているので、作業形態や気象条件などの変動に対応させた複雑かつ微妙なロープコントロールを必要とする曳航作業を安全かつ確実に実現することが可能となる。
【0011】
タグボートは他の船舶や水上の構造物などを曳航用ロープを介して牽引したり、古タイヤなどの防舷物を介して船体同士を接触させて押圧したりして所定位置に移動させる機能を有した作業船であり、船舶が桟橋に着岸、離岸するのを補助するために使われる数十トン級の小型のものから、外洋作業に従事する数万トン級の大型のものまでが含まれる。このタグボートには通常、スピードが重視されないためにトルク重視型で同サイズの船舶よりも強力なエンジンが搭載されている。
【0012】
タグボートの甲板上には、左右一対の支柱間に設けられロープ案内装置の本体枠となるハウジングと、このロープ案内装置の背部側に曳航用ロープを巻き取るためのウインチ装置が配置されている。このハウジングの中央には曳航用ロープを挿通するための案内口が設けられて、曳航作業に際して所定長さ分の曳航用ロープが案内口から予め引き出された状態で船首側に設けた係止部材などに巻き止められるようになっている。
【0013】
ローラ機構はロープ案内装置のハウジングに内蔵された曳航用ロープの引き出し機能及び案内支持機能を備えたものであって、甲板上に設けた支柱間やハウジングを介してその左右両端側を支持される上部軸及び下部軸と、この上部軸、下部軸に回転自在に取り付けられる上部左右ローラ及び下部左右ローラと、これら4基のローラをそれぞれ独立に駆動させるためのローラ駆動部と、上部軸及び下部軸間を相互に近接離隔させる支持軸間移動部と、を有している。なお、ハウジング内に配置されるローラ機構を一体化したユニット部材として構成して、このユニットを吊り下げ部材やフックなどの係止部材によりハウジング内に取り付けることで、このローラ機構を着脱可能な構成のものとすることもでき、これによって曳航作業の省人化、省力化を図りつつロープ案内装置のメンテナンス性をさらに向上させることができる。
【0014】
上部軸及び下部軸は、それぞれが水平方向に配置される軸部材であり、その両端側が甲板上に立設された左右一対の支柱間やハウジング内の支持部材などにより支持され、これらの軸部にそれぞれ一対の上部左右ローラ及び下部左右ローラが回転自在に取り付けられている。
【0015】
ローラ駆動部は、前記上部左右ローラ及び下部左右ローラにチェーンやギアを介して連接してこれらを独立に回転させるための駆動系とこれらを駆動させる油圧モータなどを有している。
【0016】
こうして、上部左右ローラ及び、下部左右ローラをそれぞれに対応したローラ駆動部を介して所定の回転速度で回転させることによって、ハウジング中央に設けた案内口から挿入される曳航用ロープを船外に向けて送り出すことができるようになっている。
【0017】
支持軸間移動部は、上部軸と下部軸との間隙を相互に近接離隔させるためのリンク機構とそのリンク機構を駆動させる油圧シリンダーや電動モータなどを備えた装置であって、前記ローラ駆動部と同様にハウジング内に配置されている。
【0018】
また、本実施形態のタグボートにおけるロープ案内装置では、前記ハウジングの上面及び前後面を開閉自在に構成することもできる。これによって、日常及び定期的になされるハウジング内のローラ駆動部や支持軸間移動部に係るメンテナンス作業を容易にして、ロープ案内装置を常時支障なく健全な状態に保持することができるとともに、予期しないトラブルを未然に予防して長期的にみたメンテナンス費用の軽減を図ることができる。
【0019】
ハウジングの上面を開閉自在にするものとしては、例えば鋼鉄製のハウジングに矩形状などの開口部を設け、その一辺側にヒンジを介して開閉扉を取り付けるものや、ボルトやナット、フックなどの係止部材を介して開閉蓋を開口部に取り付けるものなどが含まれる。
【0020】
さらに本実施形態のタグボートにおけるロープ案内装置は、前記下部左右ローラはそれぞれ下部軸の中央側に向かって漸次拡径しており、前記曳航用ロープを挟持する面をテーパ状とすることもできる。これによって、上下方向に対向して配置されたローラ組によって鋏持された曳航用ロープをそのロール回転に伴って軸中央に向けて移動させることができるので、曳航用ロープを安定的に操作することができるとともに、軸中央部における上下ローラ間の間隙が狭められているので左右2本のロープ同士が接触して絡み合うのを防止することもできる。
【0021】
続いて、本発明を具体化した実施の形態につき添付した図面を参照して説明する。ここに、図1は本発明の一実施の形態に係るタグボートにおけるロープ案内装置がその甲板上に配置されたタグボートの正面図及び平面図であり、図2はロープ案内装置におけるロープ挟持状態を示す正面図であり、図3はそのロープ開放状態を示す正面図である。
【0022】
図1に示すように本発明の一実施の形態に係るタグボートにおけるロープ案内装置10は、タグボート11の船首側の甲板上に立設された左右一対の支柱12、12aとの間に配置されたハウジング10aに設けられている。このロープ案内装置10の後方には所定間隔をおいて左右一対のロープ巻き取り用のウインチ13、13aが設けられ、ロープ案内装置10及びウインチ13、13aを操作することによって曳航用ロープ14の送り出し、巻き込み操作がなされるようになっている。なお、ロープ案内装置10とロープ巻き取り用のウインチ13との間にはロープガイド15が配置されており同時に操作される2本の曳航用ロープ14同士が絡み合うのを防止している。
【0023】
図2及び図3に示すようにロープ案内装置10のローラ機構は、タグボート11の甲板上に立設された支柱12、12a間のハウジング10a内に収納されている。このローラ機構は後述するように、曳航用ロープ14を上下方向に鋏持して回転するローラ対をそれぞれ独立して回転駆動させるためのローラ駆動部と、これらローラ対の上下間隔を縮小拡大させる支持軸間移動部とを備えている。
【0024】
門型状に形成された支柱12、12a間又は、ハウジング10a内に配置された左右の支持枠間などには上部軸17及び下部軸18が渡設されてその両端側が直接的又は間接的に支持されるとともに、後述する支持軸間移動部を介して上部軸17及び下部軸18の上下間隔が設定できるようになっている。そして、上部軸17には上部左ローラ17a、上部右ローラ17bが、下部軸18には下部左ローラ18a、下部右ローラ18bがそれぞれ回転自在に取り付けられている。
【0025】
なお、図5に示すように2本の上部軸17、17'を水平方向に2本平行に並べて支柱12、12a間に配置して、それぞれに上部左ローラ17a、上部右ローラ17bを取り付けることで曳航用ロープ14とローラとが接触する支持点を増やすことでロープワークをさらに安定して行えるようにしている。また、ウィンチに巻き取られたロープの食い込みを従来型のものより少なくしてロープを容易に巻き取ることが可能になった。
【0026】
なお、本実施例では2本の上部軸17、17’を並列配置しているが、下部軸18の場合と同様に1本の上部軸のみで構成することも可能である。ここで上部軸17、17’の機能、構成は略同じなので、以下の説明においては上部軸17について説明して他方の上部軸17'に係わる説明は省略している。
【0027】
上部左ローラ17a、上部右ローラ17b、下部左ローラ17a、下部右ローラ17bの各ローラはそのローラ面が耐磨耗ゴムなどのシート状素材で被覆されている。なお、上部左ローラ17a、上部右ローラ17bは、それぞれ外径が一様フラットとなる円筒状に形成されている。
【0028】
一方、上部左ローラ17a、上部右ローラ17bに対向して配置される下部左ローラ18a、下部右ローラ18bの曳航用ロープ14、14aを挟持するローラ面は、それぞれ下部軸18の中央側に向かって漸次拡径したテーパ状としている。このように下部左ローラ18a、下部右ローラ18bにテーパ面を形成することによって、各上下ローラ間で挟持される曳航用ロープ14、14aをローラ回転中に軸中央よりに保持させることができる。
【0029】
上部左ローラ17a、上部右ローラ17b、下部左ローラ18a、下部右ローラ18bのそれぞれにはこれらを左右独立に駆動させるためのローラ駆動部としてのモータ17c、17d、18c、18dが配置されており、図5に示すようにチェーンやギアなどを介して所定の回転速度で各ローラを回転させることが可能となっている。なお、本実施例では、上部左ローラ17aと下部左ローラ18aとが同じ機械ライン構成により同期して駆動され、上部右ローラ17bと下部右ローラ18bが同じラインで同時駆動されるようになっている。
【0030】
支持軸間移動部は、その駆動源となる油圧シリンダー及びそのシリンダーの上下伸縮運動を水平方向の動きに変換するリンク機構などを含んで構成されるものである。例えば、上部軸17、下部軸18はそれぞれの両端に設けられた左右2本の連接ピン19を介して支持され、この連接ピン19がリンク部材19aの一端側に連結されている。2本のリンク部材19aの他端側は連結ピン19bで開脚自在に結合されるとともに、支持部材19cのスライド孔に連結ピン19bが左右水平方向にスライド自在に嵌挿されている。なお、支持部材19cはその一端側をハウジング10a内の左右に対として設けたスライド板21、21aに固定して支持されている。
【0031】
こうして、支持架台12c上に固定されたシリンダー20を伸縮させることでその上下方向の運動を左右方向の運動にリンク機構により変換する。すなわち、スライド板21、21a上を移動するカラー22がガイドとなって支持部材19cのスライド孔に嵌挿された連結ピン19bをスライドさせる。こうして、上部軸17と下部軸18との間隔を自在に設定するようにしている。このような上部軸17と下部軸18との開閉動作によっても、その上下間隔の中心位置はリンク機構によって一定に保持されるため、ロープワークにおける操作性などが阻害されるようなことがない。このため、曳航用ロープ14、14aを確実かつ安定して操作することができ、省人化性にも優れたものとすることができる。
【0032】
なお、上記したローラ機構を収納するハウジング10aには、図示するように、その上面及び側面には平板蓋状の開閉部10c、10dがボルト10eやフックなどの係止部材を介して取り付けられ、タグボート11に配置されたロープ案内装置10の日常的なメンテナンス作業などが容易に行えるようしている。これによって、曳航作業における省人化や省力化を可能としている。さらに、ローラ機構をハウジング10aから着脱可能な構造とした場合には、ハウジング10a上面に設けた開閉部10cなどを取り外すことによってローラ機構の交換などを容易に行うことも可能になっている。また、日常的な点検などを行う場合には、開閉部10cに設けた容易に開閉できるメンテナンス用蓋10hを開放することで行うこともできる。なお、開閉部10dはシリンダー20関連のメンテナンス用の開閉部材である。また、リンク機構を構成する連結ピン19bや支持部材19cのメンテナンスを行うために、リンクメンテ部10f、10gがハウジング10a前面中央及び後面中中央にそれぞれ形成された案内口10bの左右両側にそれぞれ開閉可能に設けられている。すなわち、リンクメンテ部10f、1gは、ハウジング10aの前面及び後面のそれぞれに配置されている。
【0033】
図4に示すように曳航用ロープ14、14aはハウジング10aの中央に設けられた案内口10bから挿入されて、ローラ機構を介して船体外へのロープ送り出し、引き込みがなされるので、このようなローラ機構のメンテナンス作業が欠かせない重要なものとなっている。こうして、常時安全快適な曳航作業を実施できるとともに、メンテナンスに係る長期的なトータルコストの低減を図るようにしている。
【0034】
以上のように構成されたロープ案内装置10を使用する場合には、図3、図5(b)に示すように上部軸17と下部軸18とを支持軸間移動部のシリンダー20を縮小駆動させてその上下間隔を広げた状態にして、曳航用ロープ14、14aをハウジング10a中央の案内口10bから挿通させる。
【0035】
次に、シリンダー20を伸長駆動させることによって、図2、図5(a)に示すように各上下ローラを曳航用ロープ14、14aに当接させる。これによって、曳航用ロープ14、14aはゴム膜を有する各ローラに挟持されるので、それぞれのモータ17c、17d、18c、18dを所定方向に回転させ、曳航用ロープ14、14aをタグボート11の船首側から繰り出すことができる。
【0036】
こうして、曳航用ロープ14、14aを所定長まで繰り出した後は、支持軸移動部のシリンダー20を駆動させて各上下ローラ間を開いて、曳航用ロープ14、14aを図1に示すようにウインチ13で引き込んで操作する。これによって、2本のロープを同一のロープ案内装置10によって繰り出すことができる。この場合、上下対となるローラ組は曳航用ロープ14、14aに対してその垂直方向に作用するので、被曳航船とタグボート11と間に張られる垂直方向のロープ曳航角度が変化してもロープの逃げがなく、変化に対応することができる。
【0037】
以上説明したように本発明のタグボートにおけるロープ案内装置は、上部軸及び下部軸にそれぞれ設けられた上部左右ローラ及び下部左右ローラをそれぞれ独立に回転駆動させるとともに、前記上部軸及び下部軸間を相互に上下方向へ移動可能とすることによって1本又は2本の曳航用ロープを挟持して繰り出すことをその要旨としたものである。これによって曳航作業におけるロープワークを確実に行うことができ、2本のロープのそれぞれを独立に制御して作業を安定かつ安全に行うことができるとともに、省人化性にも優れたロープ案内装置とすることができる。
【0038】
本発明は上記した具体的な構成のものに限定されることなく適用できる。例えば、本実施の形態では、曳航用ロープ2本を操作する場合について詳述したが、左右対となるローラ組のいずれか片側のみを用いて1本の曳航用ロープを操作することもできる。また、ローラ駆動部となる4機のモータ17c、17d、18c、18dをそれぞれコンピュータ制御により連携操作して微妙なロープワークを実現したり、上ローラ群及び下ローラ群のそれぞれを機械的リンクを介して同期して回転操作したりすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係るタグボートにおけるロープ案内装置が配置されたタグボートの正面図及び平面図である。
【図2】同ロープ案内装置のロープ挟持状態を示す正面図である。
【図3】同ロープ案内装置のロープ開放状態を示す正面図である。
【図4】同ロープ案内装置のハウジングを示す斜視図である。
【図5】同ロープ案内装置の動作状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 タグボートにおけるロープ案内装置
10a ハウジング
10c、10d 開閉部
10b 案内口
10e ボルト
10f、10g リンクメンテ用蓋
10h メンテナンス用蓋
11 タグボート
12、12a 支柱
12c 支持架台
13、13a ウインチ
14,14a 曳航用ロープ
15 ロープガイド
17、17' 上部軸
17a 上部左ローラ
17b 上部右ローラ
17c、17d モータ
18 下部軸
18a 下部左ローラ
18b 下部右ローラ
18c、18d モータ
19 連接ピン
19a リンク部材
19b 連結ピン
19c 支持部材
20 シリンダー
21、21a スライド板
22 カラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の甲板上に固定される左右一対の支柱間にハウジングを形成し、前記ハウジングに設けた曳航用ロープを挿通する案内口にローラを臨ませて前記曳航用ロープを挟持し、当該曳航用ロープを一方向へ繰り出すローラ機構を前記ハウジング内に収納配設したタグボートにおけるロープ案内装置において、
前記ローラ機構は、
水平方向に配置される上下一対の上部軸及び下部軸と、
前記上部軸にそれぞれ回転自在に取り付けられた上部左右ローラと、
前記下部軸にそれぞれ回転自在に取り付けられた下部左右ローラと、
前記上部左右ローラ及び前記下部左右ローラをそれぞれ独立して回転駆動させるローラ駆動部と、
互いに上下方向に所定間隔をあけて配設された前記上部軸及び下部軸に連結して前記上部軸及び下部軸間を相互に上下近接方向及び離隔方向へ移動させる支持軸間移動部と、を具備し、
前記上部左ローラ及び前記下部左ローラを第1のローラ組とし、前記上部右ローラ及び前記下部右ローラを第2のローラ組として、1本又は2本の前記曳航用ロープを前記第1、第2のローラ組を介して上下方向から挟持して繰り出し可能としたことを特徴とするタグボートにおけるロープ案内装置。
【請求項2】
前記ハウジングの上面を開閉自在に構成したことを特徴とする請求項1記載のタグボートにおけるロープ案内装置。
【請求項3】
前記下部左右ローラは、それぞれ下部軸の中央側に向かって漸次拡径しており、前記曳航用ロープを挟持する面がテーパ状となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタグボートにおけるロープ案内装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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