説明

タグ装置

【課題】特別なユーザ操作によらなくても、タグ装置を所持したユーザが、入場の意図なく、タグリーダ等の質問信号の送信元の付近を単に通り過ぎたに過ぎない場合に、扉が不測に解錠するのを効果的に抑制可能なタグ装置を提供する。
【解決手段】受信した質問信号のレベルを減衰する減衰器201と、減衰後の質問信号を復調する復調器202と、復調器202による復調が正常に行われたか否かを判定し、正常に行われた場合には、自装置の識別情報を含ませた応答信号を送信し、正常に行われなかった場合には、前記応答信号を送信しないよう制御する制御部209とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タグリーダからの質問信号に呼応して応答信号を送信するタグ装置(アクティブタグ)に関し、応答信号の送信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
タグリーダとタグ装置とを利用し、以下のようにして、入場者の管理を行う入場管理システムが知られている。
タグリーダは、入場を行うための扉の付近に設置されており、質問信号を繰り返し送信する。タグ装置を所持したユーザがタグリーダからの質問信号を受信可能なエリアに入ると、このタグ装置は、質問信号を受信して自装置の識別情報(以下、「タグID」という)を含む応答信号を送信する。
【0003】
タグリーダは、この応答信号を受信すると、応答信号に含まれるタグIDを、入場の認証を行うゲートユニットに送信する。ゲートユニットは、入場を許可されたユーザが所持するタグ装置のタグIDのリストを記憶しており、このリストと受信したタグIDとに基づいて認証を行い、認証結果に応じて上記扉の解錠を制御する。
【0004】
このように、タグ装置を所持したユーザが質問信号を受信可能なエリアに入ると、このタグ装置は、質問信号に呼応して自動的に応答信号を送信するので、ユーザの入場の意思によらず、扉の解錠が行われてしまう場合がある。
【0005】
つまり、ユーザが、入場しようと扉に向かって移動し、質問信号を受信可能なエリアに入った場合のみならず、単に扉の付近を通り過ぎようとして、質問信号を受信可能なエリアに入ってしまった場合にも、扉の解錠が行われることになる。この結果、解錠された扉から、誰でも入場できてしまうというセキュリティ上好ましくない事態が発生し得る。
【0006】
これに対しては、通信を行うか否かを制限する技術(例えば、特許文献1)を上記タグ装置に適用することが考えられる。
特許文献1の技術は、電子マネー等を利用するためのIC(Integrated Circuit)カード機能を有する携帯端末装置において、ICカード機能の有効、無効を制御するものである。具体的には、通常は、カードリーダとの通信ができないロック状態に制御しておき、ユーザから所定の操作を受け付けたときにだけ、カードリーダとの通信が可能なロック解除状態に制御するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−148670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の技術をタグ装置に適用した場合、ユーザは、入場を行う際に、いちいち所定の操作を行う必要があり、面倒である。
そこで、本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、特別なユーザ操作によらなくても、タグ装置を所持したユーザが、入場の意図なく、タグリーダ等の質問信号の送信元の付近を単に通り過ぎたに過ぎない場合に、扉が不測に解錠するのを効果的に抑制可能なタグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係るタグ装置は、受信した質問信号のレベルを減衰する減衰手段と、減衰後の質問信号を復調する第1復調手段と、前記第1復調手段による復調結果に応じて、自装置の識別情報を含ませた応答信号を送信するか否かを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記制御手段は、前記第1復調手段による復調が正常に行われたか否かを判定し、正常に行われた場合には、前記応答信号を送信し、正常に行われなかった場合には、前記応答信号を送信しないよう制御することとしてもよい。
【0011】
また、前記質問信号を復調したデータには、誤り検出用の情報が含まれており、前記制御手段は、前記第1復調手段による復調により得られたデータに含まれている誤り検出用の情報を用いた検査の結果、当該データに誤りが発生している場合に、前記第1復調手段による復調が正常に行われなかったと判定することとしてもよい。
【0012】
また、前記質問信号を復調したデータには、通信距離を制限するか否かを示す情報が含まれており、前記タグ装置は、更に前記減衰手段による減衰前の質問信号を復調する第2復調手段を備え、前記制御手段は、前記第1復調手段による復調が正常に行われなかった場合において、前記第2復調手段による復調により得られたデータに含まれる情報が、通信距離を制限することを示すときに限って、前記応答信号を送信しないよう制御することとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述の構成を備える本発明に係るタグ装置は、特別なユーザ操作によらずとも、タグ装置を所持したユーザが、入場の意図なく、タグリーダ等の質問信号の送信元の付近を単に通り過ぎたに過ぎない場合に、扉が不測に解錠するのを効果的に抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係る入場管理システム1000が利用される施設の見取り図
【図2】実施の形態に係る入場管理システム1000のシステム構成図
【図3】実施の形態に係る質問信号10及び応答信号20のデータ構成を示す図
【図4】実施の形態に係るタグリーダ100Aの処理を示すフローチャート
【図5】実施の形態に係るタグ装置200の処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るタグ装置を用いた入場管理システムを、図面を参照しながら説明する。
≪実施の形態≫
<概要>
図1は、実施の形態に係る入場管理システム1000が利用される施設の見取り図である。
【0016】
同図に示すように建物1は、入口となるエントランスホール2、オフィス3、サーバルーム5等に区画されており、オフィス3及びサーバルーム5への入場が入場管理システム1000により管理されている。
【0017】
以下、オフィス3は、ある会社の全従業員が入場可能な区画であり、サーバルーム5は、その会社のシステム管理者であるタグ装置200のユーザのみが入場可能なセキュリティレベルの高い区画であるとする。また、オフィス3及びサーバルーム5のことを、「管理区画」ともいう。
【0018】
ゲートユニット8は、各タグリーダから繰り返し送信される質問信号に呼応してタグ装置200から送信された応答信号に含まれているタグ装置200のタグID等に基づいて認証を行い、管理区画の扉4、6の電気錠7A、7Bの解錠を制御するものである。
【0019】
タグ装置200は、各タグリーダからの質問信号を受信した場合に、一定条件下で応答信号を送信するものである。一定条件とは、受信した質問信号を減衰させた減衰後の質問信号を正常に復調できること、又は、正常に復調できなかった場合において、減衰前の質問信号を復調し得られたデータに通信距離を制限しないことを示す情報が含まれていることである。以下、この情報を「モード情報」という。
【0020】
ここで、タグ装置200と質問信号の送信元のタグリーダとの間の距離が離れている場合には、減衰後の質問信号を正常に復調できないと考えられる。
即ち、減衰後の質問信号を正常に復調できたということは、正常に復調できる程度に、タグ装置200とその質問信号の送信元のタグリーダとが接近していることを表している。
【0021】
従って、例えば、セキュリティレベルの高い管理区画(この例ではサーバルーム5)に設置されているタグリーダ100Aが送信する質問信号に、通信距離を制限することを示すモード情報を含ませるようにする。このようにすることで、タグリーダ100Aとタグ装置200との間の距離が離れている場合に、タグ装置200がタグリーダ100Aからの質問信号を受信しても応答信号を送信しないようにすることができる。即ち、タグリーダ100Aとタグ装置200と通信距離を近距離に制限できる。
【0022】
その結果、例えば、サーバルーム5の前を通り過ぎただけのユーザのタグ装置200が、タグリーダ100Aからの質問信号に呼応して応答信号を送信してしまうことで、扉6が解錠され、このユーザとは異なる者が入場可能になるという事態の発生を防止できる。
【0023】
<構成>
<入場管理システム1000>
以下、入場管理システム1000の構成について説明する。
【0024】
図2は、実施の形態に係る入場管理システム1000のシステム構成図である。
同図に示すように、入場管理システム1000は、タグリーダ100A、100B、タグ装置200、ゲートユニット(GU)8を備える。
【0025】
ここで、各タグリーダとGU8とは、ケーブル(例えば、RS−485規格に準拠したもの)により接続されている。また、建物1内に備えられた1台の管理サーバ9と、GU8とは、LAN(Local Area Network)を介して接続されている。
【0026】
なお、同図では、入場管理システム1000が、2台のタグリーダ100A、100Bと1台のGU8とを備える例を示しているが、これは一例であり、各装置の数はこれに限られない。入場管理システム1000は、例えば、図1に示す以外の各区画への入場を管理するために、図2に示す各装置とは別に備えるタグリーダと、管理サーバ9とLANを介して接続するゲートユニットとを含んでもよい。
【0027】
また、同図では、1台のタグ装置200のみを示しているが、入場管理システム1000のユーザそれぞれがタグ装置を保持しており、入場管理システム1000は複数のタグ装置を備える。
【0028】
ここで、電気錠7A、7Bは、扉6、4に取り付けられており、通常はその扉を施錠しており、GU8からの指示を受けて、扉を解錠するものである。
GU8は、各タグリーダから受信したそのタグリーダの識別情報及びタグ装置200のタグIDと、管理サーバ9から予め受信し記憶している管理領域に対する入場許可者リストとに基づいて認証を行い、認証ログを管理サーバ9に送信するものである。
【0029】
なお、以下、タグリーダの識別情報を、「リーダID」という。また、認証ログは、認証に用いたリーダID、タグID、及び認証結果を含むデータである。
また、GU8は、特に認証が成功した場合に、認証に用いたリーダIDが示すタグリーダが設置されている管理区画の扉に取り付けられている電気錠に解錠を指示する。
【0030】
管理サーバ9は、入場管理システム1000の管理者等(以下、単に「システム管理者等」という)により予め登録され必要に応じて更新された入場許可者リスト及びGU8から受信した認証ログを管理するものである。
【0031】
この入場許可者リストは、入場を行う扉毎に、その扉の付近に設置されているタグリーダのリーダIDと、その扉からの入場を許可されたユーザが所持するタグ装置のタグIDとを対応付けたデータである。
【0032】
なお、この入場許可者リストでは、タグリーダ100A及び100Bの各リーダIDと、タグ装置200のタグIDとが対応付けられているものとする。つまり、タグ装置200のユーザは、オフィス3及びサーバルーム5に入場可能である。
【0033】
また、管理サーバ9は、入場許可者リストがシステム管理者等により更新される毎に、更新されたデータをGU8に送信する。これにより、管理サーバ9上の入場許可者リストと、GU8上の入場許可者リストとの整合が図られる。
【0034】
タグリーダ100A、100Bは、扉6、4の付近に設置され、自装置のリーダID及びモード情報を含む質問信号をLF帯(30〜300kHz)にて繰り返し送信するものである。
【0035】
なお、質問信号はLF帯にて送信されるため、この質問信号を受信可能なエリア(以下、「受信エリア」ともいう)の範囲は比較的狭い範囲に限られ、本実施の形態では、障害物がない状態で各タグリーダから1.5m程度以内の範囲であるものとする。
【0036】
また、各タグリーダは、タグ装置200からの応答信号に含まれるタグID及び自装置のリーダIDをGU8に送信する。
タグ装置200は、いわゆるアクティブタグであり、ユーザに所持され、各タグリーダからの質問信号を受信可能な各受信エリアに入ると、この質問信号を受信し、受信した質問信号を減衰させた減衰後の質問信号の復調結果及びこの質問信号に含まれているモード情報の内容に応じた処理を行う。
【0037】
即ち、タグ装置200は、受信した質問信号を減衰させた減衰後の質問信号を正常に復調できた場合、又は正常に復調できなかった場合において、減衰前の質問信号を復調し得られたデータに、通信距離を制限しないことを示すモード情報が含まれているときに、応答信号を送信する。
【0038】
つまり、タグ装置200は、受信した質問信号を減衰させた減衰後の質問信号を正常に復調できず、かつ減衰前の質問信号を復調し得られたデータに通信距離を制限することを示すモード情報が含まれている場合には、応答信号を送信しない。
【0039】
この応答信号は、自装置(タグ装置200)のタグIDを含み、UHF帯(300MHz〜3GHz)にて送信される。従って、この応答信号を受信可能なエリアは比較的広い範囲となり、本実施の形態では、障害物がない状態でタグ装置から20m程度の範囲であるものとする。
【0040】
以下、各タグリーダ及びタグ装置の構成について更に詳しく説明するが、タグリーダ100Aと100Bの構成は同様であるため、以下では、タグリーダ100Aを例に説明する。
【0041】
<タグリーダ>
まず、タグリーダ100Aの構成について説明する。
タグリーダ100Aは、同図に示すとおり、RS−485インタフェース101、LF信号送信回路102、RF信号受信回路103、記憶部104、制御部105を備える。
【0042】
なお、タグリーダ100Aは、メモリ及びプロセッサを備え、メモリに記憶されているプログラムをプロセッサが実行することにより、制御部105の機能が実現される。
ここで、RS−485インタフェース101は、GU8とRS−485規格に準拠したデータのやり取りを行う機能を有する。
【0043】
LF信号送信回路102は、LFアンテナの他、フィルタやアンプ等(不図示)を含み、制御部105の指示に従って伝達された質問信号をLF帯の無線信号として送信する機能を有する。
【0044】
RF信号受信回路103は、RFアンテナの他、フィルタやアンプ等(不図示)を含み、タグ装置200により送信された応答信号を受信し制御部105へ伝達する機能を有する。
【0045】
記憶部104は、不揮発性メモリ等の記憶媒体により実現され、システム管理者等により予め設定されたモード情報及び自装置のリーダIDを記憶する機能を有する。
なお、タグリーダ100Aと100Bとは同様の構成を有するものであるが、勿論リーダIDの設定値は異なり、また、この例では、モード情報の設定値も異なる。
【0046】
以下では、タグリーダ100Aが記憶するモード情報は、通信距離を制限することを示すものとして「1」が設定されており、タグリーダ100Bが記憶するモード情報は、通信距離を制限しないことを示すものとして「0」が設定されているものとする。
【0047】
制御部105は、装置全体を制御する機能の他、記憶部104に記憶されている自装置のリーダIDを含む質問信号を生成し、生成した質問信号をLF信号送信回路102に送信させる機能を有する。
【0048】
また、制御部105は、自装置のリーダIDが含まれた応答信号をRF信号受信回路103を介して受信した際に、そのリーダID及びその応答信号に含まれているタグIDをRS−485インタフェース101を介してGU8に送出する機能を有する。
【0049】
<タグ装置>
次に、タグ装置200の構成について説明する。
タグ装置200は、同図に示すとおり、減衰器201、復調器202、LF信号受信回路203、RF信号送信回路206、記憶部207、内蔵電池208、制御部209を備える。
【0050】
なお、タグ装置200は、メモリ及びプロセッサを備え、メモリに記憶されているプログラムをプロセッサが実行することにより、制御部209の機能が実現される。
減衰器201は、LFアンテナを介して受信した質問信号のレベルを所定の減衰率で減衰させ、出力する機能を有する。
【0051】
ここで、質問信号を受信した際のタグ装置200とその質問信号の送信元のタグリーダとの距離が短い程、受信した質問信号のレベルは高くなる。
従って、セキュリティレベルの高い管理区画に設置されているタグリーダとタグ装置200との間で許可してもよい通信距離をシステム管理者等が定めることにより、上記減衰率を、例えば、以下のようにして決定することが可能である。
【0052】
即ち、例えば、タグ装置200とタグリーダとの間の距離が許可してもよい通信距離(例えば数センチ程度)になるように、タグ装置200をそのタグリーダに近づけた状態で質問信号を受信する。この受信した質問信号を減衰させた減衰後の質問信号を正常に復調できるように、上記減衰率を決定する。
【0053】
復調器202は、フィルタ(不図示)を含み、減衰器201から出力された減衰後の質問信号を復調し、得られたデータを制御部209に送出する機能を有する。なお、復調器202は、減衰器201から出力された減衰後の質問信号からフレーム同期信号(後述する図3のUW(Unique Word)12)が認識できず、復調できない場合には、特に制御部209へのデータの送出は行わない。
【0054】
LF信号受信回路203は、LFアンテナの他、増幅器204、復調器205を含む。
ここで、増幅器204は、LFアンテナを介して受信した質問信号のレベルを増幅させて出力する機能を有する。
【0055】
また、復調器205は、フィルタ(不図示)を含み、増幅器204から出力された増幅後の質問信号を復調し、得られたデータを制御部209に送出する機能を有する。
RF信号送信回路206は、RFアンテナの他、フィルタ、アンプ等(不図示)を含み、制御部209から伝達された応答信号をRF帯の無線信号として送信する機能を有する。
【0056】
記憶部207は、不揮発性メモリ等の記憶媒体により実現され、自装置のタグIDを記憶する機能を有する。
内蔵電池208は、タグ装置200の各部に対し電力供給を行う機能を有する。
【0057】
制御部209は、装置全体を制御する機能の他、LF信号受信回路203から復調されたデータを受領した際に、このデータに含まれているモード情報の内容及び復調器202による復調結果に応じて、応答信号を送信するか否かを制御する機能を有する。
【0058】
制御部209は、復調器202による復調が正常に行われず、かつLF信号受信回路203から受領した復調されたデータに含まれているモード情報が通信距離を制限することを示す場合を除き、RF信号送信回路206を介して応答信号を送信する。
【0059】
なお、制御部209は、この応答信号に、記憶部207に記憶されている自装置のタグID及び受信した質問信号に含まれているリーダIDを含ませて送信する。
制御部209は、復調器202による復調が正常に行われたか否かを、以下のようにして判定する。
【0060】
即ち、制御部209は、復調器202からデータを受領しなかった場合には、復調器202による復調が正常に行われなかったと判定する。また、制御部209は、LF信号受信回路203から受領したデータに含まれている(後述する図3のCRC(Cyclic Redundancy Check)15)を用いた検査により誤りが発生している場合に、復調器202による復調が正常に行われなかったと判定する。
【0061】
<データ>
以下、入場管理システム1000において、使用されるデータについて説明する。
<質問信号>
まず、タグリーダ100Aが生成し送信する質問信号について説明する。
【0062】
図3(a)は、実施の形態に係る質問信号10のデータ構成を示す図である。
質問信号10は、同図に示すように、PR(PReamble)11、UW12、モード情報13、リーダID14、及びCRC15から構成される。
【0063】
ここで、PR11は、質問信号のデータの始まりを示すビット列(同期符号)であり、UW12は、いわゆるフレーム同期信号である。
モード情報13は、質問信号10の送信元のタグリーダ100Aとタグ装置200との間の通信距離を制限するか否かを示す情報である。なお、タグリーダ100Aが送信する質問信号のモード情報13は必ず「1」に設定される。
【0064】
リーダID14は、質問信号の送信元であるタグリーダ100Aの識別情報であり、CRC15は、質問信号を受信したタグ装置200が質問信号に誤りが発生しているか否かを検出するためのデータである。
【0065】
なお、ここでは、タグリーダ100Aが生成し送信する質問信号について説明したが、タグリーダ100Bが生成し送信する質問信号のデータ構造も同様である。但し、タグリーダ100Bが生成する質問信号のモード情報13は必ず「0」に設定される。
【0066】
<応答信号>
次に、タグ装置200が生成し送信する応答信号について説明する。
図3(b)は、実施の形態に係る応答信号20のデータ構成を示す図である。
【0067】
応答信号20は、同図に示すように、PR21、UW22、リーダID23、タグID24、CRC25から構成される。
ここで、PR21は、応答信号のデータの始まりを示すビット列(同期符号)であり、UW22は、いわゆるフレーム同期信号である。
【0068】
また、リーダID23は、受信した質問信号に含まれていたリーダID(識別情報)であり、タグID24は、自装置のタグID(識別情報)である。
また、CRC25は、応答信号を受信したタグリーダが応答信号に誤りが発生しているか否かを検出するためのデータである。
【0069】
<動作>
次に、上記構成を備え、上記データを取り扱う入場管理システム1000の動作を説明する。
【0070】
<タグリーダ>
まず、タグリーダ100Aの動作について説明する。
図4は、実施の形態に係るタグリーダ100Aの処理を示すフローチャートである。
【0071】
タグリーダ100Aの電源がONにされると、制御部105は、記憶部104に記憶されているモード情報とリーダIDとをモード情報13とリーダID14とに設定した質問信号を、LF信号送信回路102を介して送信する(ステップS1)。
【0072】
なお、上述のとおり、タグリーダ100Aの記憶部104に記憶されているモード情報は「1」に設定されており、タグリーダ100Bの記憶部104に記憶されているモード情報は「0」に設定されている。
【0073】
続いて、制御部105は、RF信号受信回路103を介して応答信号を受信したか否かを判定し(ステップS2)、応答信号を受信した場合には(ステップS2:YES)、その応答信号に自装置のリーダIDが含まれているか否かを判定する(ステップS3)。
【0074】
具体的には、制御部105は、応答信号に含まれているリーダID23が、記憶部104に記憶されているリーダIDと一致する場合に、受信した応答信号に自装置のリーダIDが含まれていると判定する(ステップS3:YES)。
【0075】
応答信号に自装置のリーダIDが含まれている場合に(ステップS3:YES)、制御部105は、自装置のリーダID及び応答信号に含まれているタグIDを、RS−485インタフェース101を介してGU8に送信する(ステップS4)。
【0076】
なお、GU8は、受信したリーダID及びタグIDを用いて、リーダIDが示すタグリーダ(この例ではタグリーダ100A)が設置されている管理領域への、そのタグIDが示すタグ装置(この例ではタグ装置200)を所持するユーザの入場に係る認証を行う。特に、認証が成功した場合に、GU8は、その管理領域の扉(この例では扉6)に取り付けられている電気錠(この例では7A)に解錠を指示し、認証ログを管理サーバ9に送信する。
【0077】
ステップS4の処理を完了した場合、応答信号を受信しなかった場合(ステップS2:NO)、又は受信した応答信号に自装置のリーダIDが含まれていなかった場合(ステップS3:NO)には、制御部105は、再び、ステップS1から処理を行う。なお、制御部105は、一定周期(例えば、300ms毎)になるように、ステップS1における質問信号の送信を行う。
【0078】
<タグ装置>
次に、タグ装置200の動作について説明する。
図5は、実施の形態に係るタグ装置200の処理を示すフローチャートである。
【0079】
タグ装置200の制御部209は、LF信号受信回路203を介して質問信号を受信したか否かを判定し(ステップS11)、受信していない場合には(ステップS11:NO)、再びステップS11の処理を行う。なお、制御部209は、一定周期(例えば、300ms未満)になるように、ステップS11の処理を行う。
【0080】
質問信号を受信した場合に(ステップS11:YES)、復調器202は、減衰器201から出力された、所定の減衰率で減衰された質問信号を復調し、得られたデータを制御部209に送出する(ステップS12)。なお、復調器202は、減衰器201から出力された減衰後の質問信号からUW12が認識できず、復調できない場合には、特に、制御部209へのデータの出力は行わない。
【0081】
制御部209は、復調器202による復調が正常に行われたか否かを判定する(ステップS13)。
制御部209は、復調器202から復調により得られたデータを受領し、かつこのデータに含まれているCRC15を用いた検査を行い、誤りが発生していない場合には、復調器202による復調が正常に行われたと判定する(ステップS13:YES)。
【0082】
一方、制御部209は、復調器202からデータを受領しなかった場合、及び復調器202から受領したデータのCRC15を用いた検査で、誤りが発生している場合には、復調器202による復調が正常に行われなかったと判定する(ステップS13:NO)。
【0083】
復調器202による復調が正常に行われた場合に(ステップS13:YES)、制御部209は、質問信号に含まれていたリーダIDをリーダID23に、記憶部207に記憶されているタグIDをタグID24に設定した応答信号を送信する(ステップS14)。ステップS14の処理を完了すると、制御部209は、再びステップS1から処理を行う。
【0084】
一方、復調器202による復調が正常に行われなかった場合に(ステップS13:NO)、制御部209は、ステップS11で受信した質問信号に含まれているモード情報13の値が「0」であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0085】
制御部209は、モード情報13が「0」である場合には(ステップS15:YES)、上記同様、応答信号を送信し(ステップS14)、再びステップS1から処理を行う。
一方、モード情報13の値が「1」である場合(ステップS15:NO)、応答信号を送信することなく、再びステップS11から処理を行う。
【0086】
上述したように、タグリーダ100Aからの質問信号に含まれているモード情報13の値は「1」であり、タグリーダ100Bからの質問信号に含まれているモード情報13の値は「0」である。
【0087】
従って、タグリーダ100Bから質問信号を受信した場合には、タグ装置200は、復調器202による復調が正常に行われたか否かによらず質問信号を送信することになる(ステップS13:YES、ステップS15:YES)。一方、タグリーダ100Aから質問信号を受信した場合には、タグ装置200は、復調器202による復調が正常に行われたときに限って質問信号を送信することになる(ステップS13:YES、ステップS15:NO)。
【0088】
つまり、図1に示すオフィス3に入場したい場合に、タグ装置200を所持するユーザは、タグリーダ100Bからの質問信号を受信できる程度(障害物がない状態でタグリーダ100Bから1.5m程度以内)までタグリーダ100Bに近づければ足りる。
【0089】
一方、サーバルーム5に入場したい場合に、タグ装置200を所持するユーザは、減衰後の質問信号を正常に復調できる程度(例えば数センチ程度)の距離まで、タグ装置200をタグリーダ100Aに近づける必要がある。
【0090】
従って、ユーザが、オフィス3のような比較的セキュリティレベルの低い区画に入場したい場合には、比較的遠距離(この例では、障害物がない状態でタグリーダ100Bから1.5m程度以内)から扉4を解錠でき、ユーザの利便性を優先できる。
【0091】
また、サーバルーム5のようなセキュリティレベルの高い区画の前を通り過ぎた際に、このユーザが保持するタグ装置200が、タグリーダ100Aからの質問信号に呼応して応答信号を送信し、扉6が解錠されてしまうことを防止できる。
【0092】
つまり、タグ装置200は、タグリーダ100Aとの通信距離を近距離に制限することができるので、入場の意図なく解錠された扉から誰でも入場が可能になってしまうといった事態の発生を適切に防止できる。
【0093】
<補足>
以上、本発明に係るタグ装置を実施の形態に基づいて説明したが、以下のように変形することも可能であり、本発明は上述した実施の形態で示したとおりのタグ装置に限られないことは勿論である。
【0094】
(1)実施の形態に係るタグ装置200の制御部209は、質問信号を受信した場合に、減衰後の質問信号の復調結果及び質問信号に含まれているモード情報の内容に基づいて、応答信号を送信するか否かを制御するものとして説明した。しかしながら、モード情報によらず、受信した質問信号を減衰させた減衰後の質問信号の復調が正常に行われたか否かのみに基づいて、応答信号を送信するか否かを制御するよう制御部209を変形してもよい。
【0095】
この変形は、例えば、入場管理システム内の全てのタグリーダについて、この変形に係るタグ装置との間の通信距離を一律に制限したい場合に、特に有効である。
また、実施の形態では、タグ装置200とタグリーダ100Aとの間の許可してもよい通信距離として、数センチ程度を例にして説明した。しかしながら、この許可してもよい通信距離は、入場の意思がないユーザが、タグリーダ100Aの前を通り過ぎた際に、解錠してしまうことを防止するという目的を達成できる距離(例えば、50cm以下)であればよい。
【0096】
このようにして、決定された許可してもよい通信距離に基づいて、実施の形態において説明したようにして減衰器201における減衰率を決定することができる。
(2)実施の形態では、モード情報が「1」である場合には、通信距離を制限することを示し、モード情報が「0」である場合には、通信距離を制限しないことを示すものとして説明した。しかしながら、これは一例であり、モード情報は、通信距離を制限するか否かを示す情報であれば、どのようなものであってもよい。
【0097】
(3)実施の形態に係るタグ装置200の減衰器201は、既定の1種類の減衰率で受信した質問信号のレベルを減衰させるものとして説明した。しかしながら、例えば、減衰器の内部抵抗値を変更させるためのスイッチ等の切替手段を備えるようにタグ装置200を変形し、このスイッチを切り替えることで、減衰率を切り替えられるようにしてもよい。これにより、上述の許可してもよい通信距離を容易に変更することができるようになる。
【0098】
また、このスイッチは、運用開始時に一度だけ切り替えられるような構造にしてもよい。これにより、ユーザが勝手に許可してもよい通信距離を変更できないようにすることができる。
【0099】
(4)実施の形態で示したタグ装置200の処理(図5参照)をプロセッサに実行させるためのプログラムを、記録媒体に記録し又は各種通信路等を介して、流通させ頒布することもできる。このような記録媒体には、ICカード、光ディスク、フレキシブルディスク、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等がある。流通、頒布されたプログラムは、機器におけるプロセッサで読み取り可能なメモリ等に格納されることにより利用に供され、そのプロセッサがそのプログラムを実行することにより実施の形態で示したタグ装置200の各機能が実現される。
【0100】
(5)実施の形態に係るタグ装置200の各構成要素は、その全部又は一部を1チップ又は複数チップの集積回路として実現されてもよいし、コンピュータのプログラムで実現してもよいし、その他どのような形態で実現してもよい。
【0101】
(6)以下、更に本発明の一実施形態に係るタグ装置の構成及びその変形例と各効果について説明する。
(a)本発明の実施の形態に係るタグ装置は、受信した質問信号のレベルを減衰する減衰手段と、減衰後の質問信号を復調する第1復調手段と、前記第1復調手段による復調結果に応じて、自装置の識別情報を含ませた応答信号を送信するか否かを制御する制御手段とを備える。
【0102】
このタグ装置によれば、受信した質問信号を減衰させた減衰後の質問信号が正常に復調できなくなる程度に、質問信号の送信元(タグリーダ等)とタグ装置との距離が離れている場合に、応答信号を送信しないよう制御し得る。
【0103】
従って、このタグ装置によれば、減衰手段における減衰率を適切に設定することにより、特別なユーザ操作によらずとも、タグ装置を所持したユーザが、タグリーダ等の付近を通り過ぎたに過ぎない場合に、扉が不測に解錠するのを効果的に抑制し得る。
【0104】
(b)また、前記制御手段は、前記第1復調手段による復調が正常に行われたか否かを判定し、正常に行われた場合には、前記応答信号を送信し、正常に行われなかった場合には、前記応答信号を送信しないよう制御することとしてもよい。
【0105】
このタグ装置は、受信した質問信号を減衰させた減衰後の質問信号が正常に復調できなくなる程度に、質問信号の送信元とタグ装置との距離が離れている場合に、応答信号を送信しないよう制御する。
【0106】
従って、このタグ装置によれば、減衰手段における減衰率を適切に設定することにより、特別なユーザ操作によらずとも、タグ装置を所持したユーザが、タグリーダ等の付近を通り過ぎたに過ぎない場合に、扉が不測に解錠するのを効果的に抑制し得る。
【0107】
(c)また、前記質問信号を復調したデータには、誤り検出用の情報が含まれており、前記制御手段は、前記第1復調手段による復調により得られたデータに含まれている誤り検出用の情報を用いた検査の結果、当該データに誤りが発生している場合に、前記第1復調手段による復調が正常に行われなかったと判定することとしてもよい。
【0108】
このタグ装置は、受信した質問信号を減衰させた減衰後の質問信号を正常に復調できたか否かを、そのデータに含まれている、例えば、パリティ符号、チェックサム、CRC等の誤り検出用の情報を用いた検査結果により判定でき、容易に実装できる。
【0109】
(d)また、前記質問信号を復調したデータには、通信距離を制限するか否かを示す情報が含まれており、前記タグ装置は、更に前記減衰手段による減衰前の質問信号を復調する第2復調手段を備え、前記制御手段は、前記第1復調手段による復調が正常に行われなかった場合において、前記第2復調手段による復調により得られたデータに含まれる情報が、通信距離を制限することを示すときに限って、前記応答信号を送信しないよう制御することとしてもよい。
【0110】
このタグ装置は、受信した質問信号を減衰させた減衰後の質問信号が正常に復調できなくなる程度に、質問信号の送信元とタグ装置との距離が離れている場合において、質問信号に通信距離を制限しない旨の情報が含まれているときには、応答信号を送信する。
【0111】
例えば、比較的セキュリティレベルの低い部屋の付近に設置されているタグリーダ等に、通信距離を制限しない旨の情報を含ませた質問信号を送信させるようにした場合、この質問信号を受信したタグ装置は、応答信号を送信することになる。
【0112】
つまり、タグリーダ等が設置される部屋のセキュリティレベルに応じて、そのタグリーダ等が送信する質問信号に含ませる情報の内容を変更することで、部屋のセキュリティレベルに応じて、タグリーダとタグ装置と間の通信距離を簡単に変更できる。
【0113】
(7)実施の形態に係るタグ装置200に、上記(1)〜(6)の変形例の一部又は全部の変形を組み合わせて適用してもよい。
(8)本発明に係るタグ装置が備える減衰手段、制御手段は、実施の形態に係るタグ装置200が備える減衰器201、制御部209に相当し、本発明に係るタグ装置が備える第1復調手段は、実施の形態に係るタグ装置200が備える復調器202に相当し、本発明に係るタグ装置が備える第2復調手段は、実施の形態に係るタグ装置200が備える復調器205に相当する。
【符号の説明】
【0114】
200 タグ装置
201 減衰器
202、205 復調器
203 LF信号受信回路
204 増幅器
206 RF信号送信回路
207 記憶部
208 内蔵電池
209 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した質問信号のレベルを減衰する減衰手段と、
減衰後の質問信号を復調する第1復調手段と、
前記第1復調手段による復調結果に応じて、自装置の識別情報を含ませた応答信号を送信するか否かを制御する制御手段とを備える
ことを特徴とするタグ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記第1復調手段による復調が正常に行われたか否かを判定し、
正常に行われた場合には、前記応答信号を送信し、
正常に行われなかった場合には、前記応答信号を送信しないよう制御する
ことを特徴とする請求項1記載のタグ装置。
【請求項3】
前記質問信号を復調したデータには、誤り検出用の情報が含まれており、
前記制御手段は、
前記第1復調手段による復調により得られたデータに含まれている誤り検出用の情報を用いた検査の結果、当該データに誤りが発生している場合に、前記第1復調手段による復調が正常に行われなかったと判定する
ことを特徴とする請求項2記載のタグ装置。
【請求項4】
前記質問信号を復調したデータには、
通信距離を制限するか否かを示す情報が含まれており、
前記タグ装置は、更に
前記減衰手段による減衰前の質問信号を復調する第2復調手段を備え、
前記制御手段は、
前記第1復調手段による復調が正常に行われなかった場合において、前記第2復調手段による復調により得られたデータに含まれる情報が、通信距離を制限することを示すときに限って、前記応答信号を送信しないよう制御する
ことを特徴とする請求項2記載のタグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−134631(P2012−134631A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283198(P2010−283198)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】