説明

タスクスケジュール方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はタスクスケジュール方法に関し、特にタスクの動作を優先順位により管理するリアルタイム・オペレーティングシステム(以下、RTOSと云う)に適用されるタスクスケジュール方法に関する。
【0002】
【従来の技術】まず、最初に、RTOSについて説明する。制御用システム上におけるマルチタスクシステム導入の大きな意義の一つに、仕事の分担がある。制御用システムをシングルタスクで構築する場合には、システム機能の大きさ、または入出力の複雑さにもよるが、性能が上らなかったり、難解な保守性の悪いプログラムが形成されるという結果となる。これに対応する策として、システム全体の機能を小さな仕事の単位であるタスクとして細分化し、制御系システムのリアルタイム性を損なうことなく容易に実現することができれば、生産性ならびに保守性の向上を期待することができる。複数のタスクが同時に(或るタイミングでCPUの実行権またはシステム資源を分配しながら)動いているシステムをマルチタスクシステムと云い、その制御機構をマルチタスクOSと云う。マルチタスクシステムにおける各タスクは、それぞれ独立したプログラムとして考えられる。前記マルチタスクシステムにリアルタイム性が備えられて、タスク間またはシステム外部との同期をリアルタイムにとることができるシステムがリアルタイムシステムであり、また、その制御機構自体がRTOSである。
【0003】以下に、RTOSとユーザプログラムとの関係について、図6のRTOSとアプリケーションの関係図を参照して説明する。図6には、従来のタスクスケジュール方法における記憶部内のデータが示されているが、図6において、ユーザプログラム群601においては、提供されているシステムコール群604の中から、必要なシステムコールが選択され、付随するインタフェースライブラリ602を呼び出すことにより、RTOS603の機能を使用することが可能となる。RTOS機能によっては、RTOSにより管理されるRTOS管理データ606の内容を変更することになることもあり、またタスクの実行権を異なるタスクに遷移させるために、タスクスケジューラ605を呼び出すことになることもある。システムコール群604には、タスク管理関連、タスク間同期通信関連および割り込み管理関連などのシステムコールがある。RTOS管理データには、各タスクを管理するためにタスクと1対1に対応した管理領域(TCB:タスクコントロールブロック)607などがあり、これを識別するためにタスク識別子が存在している。システムコールを用いてタスクに対して操作を行う際には、どのタスクに操作するかを指定するためにタスク識別子を指定する。
【0004】次に、RTOSにおいてタスクが取り得る状態および状態遷移について、図7のタスク遷移図を参照して説明する。この場合、タスクの取り得る状態としては、次に挙げる四つの状態に分類することができる。
(1)実行(RUN)状態701CPU利用権が与えられて、現在実行中の状態であり、システム中に常に一つのタスクしか存在することができない。
(2)実行可能(READY)状態702実行状態になるための要素が全て揃っているが、そのタスクよりも優先順位が高い(同じ場合もあり)タスクが実行中であるために実行することができないでいる状態。即ち、CPUが使用可能になれば、いつでも実行することができる状態。
(3)待ち(WAIT)状態703そのタスクを実行することができる条件が整わないために実行することができない状態。例えば、入出力動作の完了またはタスク間の同期確立などを待っている状態。
(4)休止(DORMANT)状態704タスクが未だ起動されていない状態、または終了後の状態。タスクを新しく生成すると、まずこの状態になる。
【0005】これらの、各状態遷移は、次のような意味を有している。
(1)起動[S71]
DORMANT状態のタスクをREADY状態にする。
(2)終了[S72]
RUN状態のタスクがDORMANT状態にすることを云う。
(3)DISPATCH[S73]
READY状態のタスクの中で、次にRUN状態に移行させるべきタスクを呼び出し、RUN状態にすることを云う。RUN状態のタスクは、REDAY状態のタスクの中で最高の優先順位を持つ。通常、この処理をスケジューリング(またはディスパッチ)と呼び、この処理部をスケジューラ(またはディスパッチャ)と呼ぶ。
(4)PREEMPT[S74]
現在進行中のタスクよりも優先順位の高いタスクがRUN状態に遷移すると、現在実行中のタスクは一度中断されてREADY状態に戻る。一度READY状態に移ったタスクは、再度スケジューラにより選び出されるまでRUN状態に移ることはできない。
(5)待ち条件[S75]
事象発生待ちの必要が生じると、タスクはRUN状態からWAIT状態に移行する。
(6)待ち解除[S76]
システムからの、待ちが引き起された要因を解除する事象の発生により、WAIT状態のタスクをREADY状態にすることを云う。
(7)強制終了[S77]
RUN状態以外のタスクをDORMANT状態(強制終了)にすることを云う。RTOSの重要な性能指標の一つに即時性があり、従来のRTOSにおける即時性のネックになっているのが割り込み禁止時間である。
【0006】RTOSのタスクスケジュール時に割り込みが入り、割り込み処理からRTOSの機能が呼び出されてしまうと、スケジューラにより選択されたタスクよりも優先順位の高いタスクが実行可能状態になってしまう場合がある。即ち、実行状態のタスクよりも優先順位の高いタスクが実行可能状態で存在してしまうことになる。これにより、RTOSにとって優先順位の高い(緊急度の高い)タスクが実行されないという致命的な不都合が生じる事態となる。このような状態を防ぐために、タスクスケジューラにより割り込み禁止状態において処理が行われる。
【0007】ここで、タスクスケジュールの一連の流れを、図5の従来例のシステム構成図、図6の記憶部内のデータ構成図、および図8の従来例のタスクスケジューラにおけるフローチャートを参照して説明する。
【0008】図5は、従来例のシステム構成図であり、データ書き込み手段501、データ読み込み手段502およびデータ比較手段503を含む制御部500と、記憶部504とを備えて構成される。図5において、記憶部504には、図6に示されるユーザプログラム群601、インタフェースライブラリ602、システムコール群604およびタスクスケジューラ605を含むRTOS603、タスク優先順位記憶領域608およびタスク状態記憶領域609を含むTCB607を包含するRTOS管理データ606が格納されている。ここのタスクは処理の違いにより優先順位が割り振られており、遷移可能な状態に休止・待ち・実行可能・実行状態があることについては、既に上述したとうりである。ここにおける説明においては、8レベルの優先順位が存在するものと仮定する。個々のタスクの優先順位およびタスクの状態は、そのタスクに対応しているTCB607内のタスク優先順位記憶領域608およびタスク状態記憶領域609にそれぞれ記憶されている。
【0009】タスクスケジューラにおいては、その処理手順が図8のフローチャートに示されるように、タスクを選択する処理ステップ801においては、実行可能なタスクの中から次に実行状態にするタスクを選択される。その際、処理ステップ804、処理ステップ805、…………、処理ステップ806および処理ステップ807においては、それぞれ優先順位1、2、……、7および8のタスクが実行可能であるか否かが判定され、実行可能である場合には処理ステップ802に移行し、可能でない場合には、最終的に処理ステップ808に移行して、割り込み許可の処理が行われ、処理ステップ809においてHALT処理が行われて、再度処理ステップ801の冒頭に戻る。即ち、優先順位の高いタスクから、順次実行可能であるか否かが判定されてゆき、このタスクを探索してゆく過程において最初に捜し出されたタスクが選択タスクとなる。実行タスクが選択されると、当該選択タスクを実行状態にするために、選択タスク状態変更処理ステップ802において、記憶部504に格納されているTCB607内のタスク優先順位またはタスク状態等を、制御部500のデータ書き込み手段501により変更し、次いで選択タスクレジスタ復帰処理ステップ803において、選択タスクを実行するのに必要なレジスタ情報等が、記憶部504よりデータ読み込み手段502を用いて、制御部500内に存在するレジスタに対する復帰処理が行われて、選択タスクに制御が渡される。
【0010】上記のスケジュール処理においては、割り込み禁止状態において処理が行われるために、割り込み処理は一切受け付けられない。この割り込み処理要求がスケジュール処理中に入ってきても、その処理が行われるのは、スケジュール処理の終了後において、割り込み禁止状態が解除された時点である。このように、割り込み禁止状態にすることにより、割り込み処理要求に対する即時性という点においては劣るが、前述のRTOSのタスクスケジュール時に割り込みが入り、実行状態のタスクよりも優先順位の高いタスクが実行可能状態となり、RTOSにとって優先順位の高いタスクが実行されないという致命的な不都合が防止されている。
【0011】以上、RTOSについての説明を行ったが、このRTOSの一例が特開平1−316831号公報に記載されている。この特開平1−316831号公報において提案されているRTOSは、中央処理装置(CPU)と、入力及び出力プロセッサ(IOP)と、算術処理装置(APU)を統合し、優先順位を基にして、機能実行の優先順位を選択する方式である。システムコールまたはインタフェースライブラリおよびタスク状態などの細かい違いはあるが、RTOSに対する基本的な考え方は本件記載のRTOSと同じてある。しかし、前記特開平1−316831号公報においては、タスクスケジューラの割り込み禁止状態については触れておらず、タスクスケジューラに着目したシステムの即時性向上についての考慮が為されていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来のタスクスケジュール方法においては、タスクスケジューラによりタスクの選択が行われてから、当該タスクに対して制御を渡すまでの間において、割り込み禁止状態で処理が行われているために、この処理に時間がかかればかかる程、システムの即時性が失われてしまうという欠点がある。
【0013】本発明の目的は、上記のタスクスケジュールにおける割り込み禁止時間が、RTOSの最大割り込み禁止時間となる事態に対応して、この割り込み禁止時間を短縮することにより、上記の欠点を改善したタスクスケジュール方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明のタスクスケジュール方法は、複数のタスクの動作を優先順位により管理するリアルタイム・オペレーテイングシステムに適用されるタスクスケジュール方法であって、タスクの優先順位に関する情報を保持するタスク優先順位記憶領域タスク識別子に関する情報を保持するタスク識別子記憶領域待ち解除タスク優先順位に関する情報を保持する待ち解除タスク優先順位記憶領域およびタスクスケジューラ処理状態表示に関する情報を保持するタスクスケジューラ処理状態表示記憶領域とを少なくとも含む記憶部と、タスク優先順位記憶領域ならびに待ち解除タスク優先順位記憶領域に保持される情報を変更する手段タスク識別子記憶領域に保持される情報を変更する手段タスクスケジューラ処理状態表示記憶領域に保持される情報を変更する手段およびタスク優先順位比較手段とを少なくとも含む制御部とを備えるシステムに対応して、タスクスケジューラ処理時において、タスクスケジューラ処理状態表示記憶領域変更手段により、タスクスケジューラ処理状態表示記憶領域に、タスクスケジューラが処理中であることを示す情報を格納し、タスク優先順位記憶領域変更手段ならびに前記タスク識別子記憶領域変更手段により、タスク優先順位記憶領域ならびにタスク識別子記憶領域に、実行状態に遷移させるタスクの優先順位ならびに識別子を保持し、その後割り込み許可状態し、当該割り込み許可状態において割り込み要求が発生してタスクの待ちを解除するシステムコールが呼び出された場合には、このシステムコールの処理中において当該待ちを解除するタスクの優先順位を待ちタスク優先順位記憶領域に保持し、タスクスケジューラ処理状態表示記憶領域の情報が処理中であることを示している場合には、タスク優先順位記憶領域の優先順位と待ちタスク優先順位記憶領域の優先順位とをタスク優先順位比較手段を用いて比較し、待ちタスク優先順位記憶領域の保持されている優先順位の方が高い場合には、タスク識別子変更手段を用いてタスク識別子記憶領域に保持されている識別子を待ちを解除するタスクの識別子に変更し、割り込み処理から前記タスクスケジューラ処理に戻った際に、割り込み禁止状態に設定して、タスク識別子記憶領域に保持されているタスクに処理実行権を遷移させることを特徴としている。
【0015】なお、前述のタスクスケジューラ処理は、複数のタスクの優先順位および状態を調べて実行状態に遷移させるタスクを選択する処理と、複数のタスクの中に実行状態に遷移させるタスクが存在しない場合に割り込み許可状態とする処理を含む
【0016】
【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明する。
【0017】図1は本発明の一実施例に適用されるシステム構成図である。図1に示されるように、本実施例は、少なくともタスク優先順位記憶領域101、タスク識別子記憶領域102、待ち解除タスク優先順位記憶領域103およびタスクスケジューラ処理状態表示領域104を含む記憶部11と、少なくともデータ比較手段105、データ書き込み手段106およびデータ読み込み手段107を含む制御部12とを備えて構成されており、データ比較手段105には、少なくともタスク優先順位比較手段108が含まれており、データ書き込み手段106には、少なくともタスク優先順位記憶領域変更手段109、タスク識別子記憶領域変更手段110およびタスクスケジューラ処理状態表示領域変更手段111が含まれている。
【0018】なお、図2は、本実施例のタスクスケジューラの処理手順を示すフローチャートであり、図3は、当該タスクスケジューラ処理において、割り込み許可状態とした際に新たに割り込み要求が発生し、当該割り込み処理から呼び出されて実行されるシステムコールの処理手順を示すフローチャートである。また図4はタスクレディーキューを示す図である。以下、図1、図2、図3R>3および図4を参照して、本実施例のタスクスケジューラとシステムコールの具体的な処理手順について説明する。なお、図1に示される記憶部11には、図6に示されている各要素が含まれている。また、本実施例においては、タスクとして三つの場合を考えるものとする。それぞれのタスクの状態は、図4に示されるようになっており、優先順位1のタスクA402は、何らかの事象待ちのために、待ちキュー401につながっており、また優先順位2のタスクB412とタスクC413は、実行可能状態にあるために、優先順位2のキューにつながっているものとする。
【0019】図2において、タスクスケジューラの処理が開始されると、まず、処理ステップ201において、タスクスケジューラ処理状態表示領域変更手段111により、記憶部11内に存在しているタスクスケジューラ処理状態表示領域104内の情報が、タスクスケジューラ処理中であることを示す情報に変更される。次いでは、処理ステップ202において、実行可能状態のタスクの中で、一番優先順位の高いタスクが選択される。このタスクを選択する処理ステップ202において、処理ステップ210、処理ステップ211、…………、処理ステップ212および処理ステップ213においては、それぞれ優先順位1、2、……、7および8のタスクが実行可能であるか否かが判定され、実行可能である場合には処理ステップ203に移行する。また、実行可能でない場合には、最終的に処理ステップ214に移行して、当該処理ステップ214においては割り込み許可の処理が行われ、処理ステップ21においてHALT処理が行われて、再度処理ステップ201に戻る。即ち、優先順位の高いタスクから、順次実行可能であるか否かが判定されてゆき、このタスクを探索してゆく過程において最初に捜し出されたタスクが選択タスクとなる。本実施例においては、例としてタスクスケジューラ処理により、実行可能状態のタスクの中で一番優先順位の高いタスクBが選択されるものとする。
【0020】このように実行タスクが選択されると、当該選択タスクを実行状態にするために、処理ステップ203において、データ書き込み手段106に含まれるタスク優先順位記憶領域変更手段109により、記憶部11内のタスク優先順位記憶領域101に保持されているタスク優先順位が、前記処理ステップ202において選択されたタスクの優先度に変更される。また、同時に、タスク識別子記憶領域変更手段110により、タスク識別子記憶領域102に保持されているタスク識別子が、前記処理ステップ202において選択されたタスクの識別子に変更される。なお、本実施例においては、当該選択タスクがタスクBであるため、タスクBの優先度と識別子とがそれぞれ変更の対象となり退避する状態となる。次いで、処理ステップ204においては割り込み処理が許可される。この処理ステップ204において割り込み許可の状態になり、次の処理ステップ20に移行する前のタイミングにおいて割り込み要求が発生した場合、または処理ステップ204において割り込み許可状態になる以前の処理中において割り込みが発生した場合には、当該割り込み処理が行われる。
【0021】ここで、前記割り込み要求が発生して割り込み処理が行われ、当該割り込み処理の中で、現在待ち状態にあるタスクの待ち状態を解除するシステムコールが発行された場合について説明する。
【0022】前記割り込み処理においては、システムコール処理(図3のフローチャート参照)が呼び出され、待ち状態にあるタスクAの待ちが解除される。そして前記システムコール処理においては、図3の処理ステップ301において指定されたタスクの優先順位が、タスク優先順位記憶領域変更手段109を用いて、待ち解除タスク優先順位記憶領域103に格納保持される。そして、処理ステップ302において指定されたタスクAの待ちが解除された後に、処理ステップ303において、割り込み処理発生前にタスクスケジューラにより処理中であったか否かが判定される。なお、本実施例においては、タスクスケジューラ処理状態表示領域に記憶される情報により、割り込み処理の発生前にタスクスケジューラが処理中であったことが示されているので、処理手順は図3の処理ステップ304に移行する。なお、処理ステップ303において、処理中でない場合には処理は終了となる。次いで処理ステップ304においては、タスク優先順位比較手段108により、記憶部11内に存在するタスク優先順位記憶領域101に保持されているタスク優先順位と、待ち解除タスク優先順位記憶領域103に保持されているタスク優先順位が比較される。この場合、タスク優先順位記憶領域101に保持されているタスク優先順位とは、図2における処理ステップ202において選択されたタスクの優先順位であり、待ち解除タスク優先順位記憶領域103に保持されているタスク優先順位とは、システムコール処理において指定されたタスク優先順位である。待ち解除タスク優先順位記憶領域103に保持されているタスク優先順位の方が、タスク優先順位記憶領域101に保持されているタスク優先順位よりも高い場合には、処理ステップ305に移行し、そうでない場合には処理は全て終了となる。
【0023】仮に、図4に示されるように、既にスケジューラにより選択されたタスクより、システムコールで待ちを解除されたタスクの優先順位の方が高い場合には(本実施例においては、タスクスケジューラにより選択されたタスクが優先順位2のタスクBであり、割り込み処理から呼び出されたシステムコールにおいて待ちを解除されたタスクが、優先順位1のタスクAである)、図3R>3の処理ステップ305において、タスク識別子記憶領域変更手段110により、記憶部11内に存在するタスク識別子記憶領域102に保持されているタスク識別子が、上記システムコールにより指定されて待ちを解除されたタスクの識別子に変更される(本実施例においては、タスク識別子記憶領域のタスク識別子が、タスクBからタスクAに変更される)。そして、システムコールの処理は終了する。なお、この場合に、スケジューラにおいて選択されたタスクよりも、システムコールにおいて待ちを解除されたタスクの優先順位の方が低い場合には、記憶部11内に存在しているタスク識別子記憶領域102に対する保持内容の変更を行うことなく、システムコール処理は終了する。
【0024】上記のシステムコール処理が終了すると、その後において割り込み処理が終了して、タスクスケジューラの処理に戻る。タスクスケジューラ処理においては、図2の処理ステップ205において割り込み処理禁止状態が設定され、次いで処理ステップ206において、タスク識別子記憶領域に保持されているタスク識別子(本実施例においては、タスクAの識別子)で表わされているタスクを選択タスクとして、当該選択タスクに対して実行状態にする際に必要となる情報が設定される。そして、処理ステップ207において、選択タスクの状態がREADY状態からRUN状態に変更され、処理ステップ208においては、タスクスケジューラ処理状態表示領域変更手段111により、記憶部11内に存在するタスクスケジューラ処理状態表示領域104内の情報が、タスクスケジューラ処理中でないことを示す情報に変更される。次いで、処理ステップ209において、選択タスクが動作するために必要なレジスタの情報が復帰し、タスクスケジューラの処理が終了して、選択タスクの実行処理に移行してゆく。
【0025】なお、タスクスケジュール処理中でなく、通常のタスク処理を行っている最中に、上述した割り込み要求と同じ割り込み要求が発生し、当該同じ割り込み処理が行われる場合には、同じく割り込み処理中においてシステムコール(図3のフローチャートを参照)が呼び出されて、処理ステップ301において、待ちを解除されたタスクの優先順位が、前述の説明と同様にタスク優先順位記憶領域変更手段109により変更され、処理ステップ302において待ち解除が行われた後に、処理ステップ303において、割り込み処理発生前にタスクスケジューラが処理中であったか否かが判定される。この場合に、タスクスケジューラ処理状態表示領域104は、スケジューラの処理中以外においては、スケジューラ処理中てはないことを示す情報源となっているので、割り込み処理の発生前に、タスクスケジューラが処理中でなかったことが分かる。割り込み処理の発生前にタスクスケジューラーが処理中でない場合には、システムコール処理は終了となる。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、実行可能状態にあるタスクの中から、一番優先順位の高いタスクを選択する処理と、実行状態に遷移させるタスクに対して情報の設定を行う処理とを分離することにより、タスクスケジューラ処理中において、一時的に割り込み処理を許可することができ、これにより、RTOSの重要な性能指標である、即時性のネックとなっているタスクスケジューリング時における割り込み禁止時間を短縮することが可能となり、ユーザシステムにおける即時性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すシステム構成図である。
【図2】本実施例のタスクスケジューラ処理のフローチャートを示す図である。
【図3】本実施例のシステムコール処理のフローチャートを示す図である。
【図4】タスクレディーキューを示す図である。
【図5】従来例を示すシステム構成図である。
【図6】記憶部内の構成を示す図である。
【図7】タスク遷移図である。
【図8】従来例のタスクスケジューラ処理のフローチャートを示す図である。
【図9】従来例のシステムコール処理のフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
11、504 記憶部
12、500 制御部
101 タスク優先順位記憶領域
102 タスク識別子記憶領域
103 待ち解除タスク優先順位記憶領域
104 タスクスケジューラ処理状態表示領域
105、503 データ比較手段
106、501 データ書き込み手段
107、502 データ読み込み手段
108 タスク優先順位比較手段
109 タスク優先順位記憶領域変更手段
110 タスク識別子記憶領域変更手段
111 タスクスケジューラ処理状態表示領域変更手段
201〜215、301〜305、801〜809、901 処理ステップ
401 待ちキュー
402 タスクA優先順位1
411 優先順位2のキュー
412 タスクB優先順位2
413 タスクC優先順位2
601 ユーザプログラム群
602 インタフェースライブラリ
603 RTOS
604 システムコール群
605 タスクスケジューラ
606 RTOS管理データ
607 TCB
608 タスク優先順位記憶領域
609 タスク状態記憶領域
701 実行状態
702 実行可能状態
703 待ち状態
704 休止状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】複数のタスクの動作を優先順位により管理するリアルタイム・オペレーテイングシステムに適用されるタスクスケジュール方法であって、タスクの優先順位に関する情報を保持するタスク優先順位記憶領域タスク識別子に関する情報を保持するタスク識別子記憶領域待ち解除タスク優先順位に関する情報を保持する待ち解除タスク優先順位記憶領域およびタスクスケジューラ処理状態表示に関する情報を保持するタスクスケジューラ処理状態表示記憶領域とを少なくとも含む記憶部と、前記タスク優先順位記憶領域ならびに前記待ち解除タスク優先順位記憶領域に保持される情報を変更する手段,前記タスク識別子記憶領域に保持される情報を変更する手段前記タスクスケジューラ処理状態表示記憶領域に保持される情報を変更する手段およびタスク優先順位比較手段とを少なくとも含む制御部とを備えるシステムに対応して、タスクスケジューラ処理時において、前記タスクスケジューラ処理状態表示記憶領域変更手段により、前記タスクスケジューラ処理状態表示記憶領域に、タスクスケジューラが処理中であることを示す情報を格納し、前記タスク優先順位記憶領域変更手段ならびに前記タスク識別子記憶領域変更手段により、前記タスク優先順位記憶領域ならびに前記タスク識別子記憶領域に、実行状態に遷移させるタスクの優先順位ならびに識別子を保持し、その後割り込み許可状態し、当該割り込み許可状態において割り込み要求が発生してタスクの待ちを解除するシステムコールが呼び出された場合には、このシステムコールの処理中において当該待ちを解除するタスクの優先順位を前記待ちタスク優先順位記憶領域に保持し、前記タスクスケジューラ処理状態表示記憶領域の情報が処理中であることを示している場合には、前記タスク優先順位記憶領域の優先順位と前記待ちタスク優先順位記憶領域の優先順位とを前記タスク優先順位比較手段を用いて比較し、前記待ちタスク優先順位記憶領域の保持されている優先順位の方が高い場合には、前記タスク識別子変更手段を用いて前記タスク識別子記憶領域に保持されている識別子を前記待ちを解除するタスクの識別子に変更し、割り込み処理から前記タスクスケジューラ処理に戻った際に、割り込み禁止状態に設定して、前記タスク識別子記憶領域に保持されているタスクに処理実行権を遷移させることを特徴とするタスクスケジュール方法。
【請求項2】前記タスクスケジューラ処理は、前記複数のタスクの優先順位および状態を調べて前記実行状態に遷移させるタスクを選択する処理と、前記複数のタスクの中に前記実行状態に遷移させるタスクが存在しない場合に割り込み許可状態とする処理を含むことを特徴とす請求項1記載のタスクスケジュール方法。

【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図1】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【特許番号】第2693916号
【登録日】平成9年(1997)9月5日
【発行日】平成9年(1997)12月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−227811
【出願日】平成6年(1994)9月22日
【公開番号】特開平8−95803
【公開日】平成8年(1996)4月12日
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000240617)米沢日本電気株式会社 (6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 平1−220040(JP,A)
【文献】特開 平3−28933(JP,A)