説明

タッチスイッチ

【課題】スイッチ内部からスイッチ機能を表示するマークを透過照明する場合に、マークに落ちる不透明電極の影を目立たなくしたタッチスイッチを提供する。
【解決手段】本発明に係るタッチスイッチ10は、電極18に対する誘電体の接触あるいは近接を、静電容量の変化で検出し、負荷に電流を供給するタッチスイッチであり、負荷に電流を供給するとき、電極18の背面に配置した光源12が点灯制御される。電極18は、非透光性かつ導電性の材料で構成されるが、電極18の形状を細線状とし、かつ、柵状に配列した開口を形成するように配置することにより、光源12からの光を通す開口部を設ける。マーク14を透過照明する場合、マーク直下の電極18が細線状なので、マーク14を点灯表示した際に生じる非透光性の電極18の影を目立たなくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチスイッチに係り、特に電極に対する誘電体の接触あるいは近接を、静電容量の変化で検出し、負荷に電流を供給するタッチスイッチの電極構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両やエレベーターの操作パネル等に、タッチスイッチが使用されている。タッチスイッチは、タッチスイッチの電極に対する使用者等の誘電体の接触あるいは近接を、静電容量の変化で検出し、負荷に電流を供給するスイッチである。このようなタッチスイッチは、使用者にスイッチが動作したことを知らせるために、一般に、点灯表示が行なわれている。例えば特許文献1には、同一基板上に光源と電極を設け、スイッチ表面を照明するタッチスイッチが記載されている。これは、スイッチ表面における照明を均一に、かつ表示品位を向上させるために、スイッチ内部で奥行きをとり、光路用の空間を確保した構造となっている。
【0003】
これに対し、電極の背面に配置した光源を点灯し、光源からの光を電極を通すことにより表示する構造が知られている。こうした構造では、電極は、導電性と透光性とを必要とし、透明導電性材料が使用される(例えば特許文献2)。一般に、こうした透明導電性材料としてITO膜等の透明導電性膜が用いられる。そして、このようなタッチスイッチの電極としては通常、透明絶縁性シートと、透明絶縁性シートに被覆された透明導電性膜の電極と、から構成される合成樹脂シートが使われる。
【0004】
この透明導電性膜を使用した従来のタッチスイッチについて、図6及び図7に従って説明する。図6は、透明導電性膜を使用した従来のタッチスイッチの構成を示す断面図である。図7は、図6のB−B線方向における従来のタッチスイッチの平面図である。
【0005】
図6及び図7に示すとおり、従来のタッチスイッチは、例えば、透明絶縁性シート26、透明導電性膜28、表示シート30及び保護パネル32とで積層された構造を有し、光源12が透明絶縁性シート26の下方に配置される。透明導電性膜28は、表示シート30と接する側の透明絶縁性シート26の表面に配置される。光源12から放射された光は、透明絶縁性シート26と透明導電性膜28を透過し、表示シート30に形成されたスイッチ機能を表示する文字、図形等のマーク、例えば「ON」のようなマーク14を透過して透光性の保護パネル32の表面に「ON」の文字を浮び上がらせる。これにより、外部の使用者等に対してスイッチが動作したことを認識させる。透明導電性膜28は光源12からの光を透過するので、マーク14に透明導電性膜32の影を落とさない。これにより、使用者等に「ON」表示を鮮明に認識させることができる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−35297号公報
【特許文献2】特開平5−298979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この透明導電性膜は、伸びが小さくて、硬い性質を有する。そのため、タッチスイッチの製造時に、合成樹脂シートを屈曲させると、透明導電性膜に大きなストレスが生じ、透明導電性膜が損傷破壊し、導通不良が発生する可能性がある。また、透明導電性膜は不透明な導電材料よりも一般に高価な材料であるので、透明導電性膜を使用したタッチスイッチ製品の製造コストは、不透明な導電材料を使用したタッチスイッチ製品の製造コストよりも一般に高い。そこで、透明導電性膜よりも安価な不透明導電材料を使用したタッチスイッチを点灯表示をする場合において、スイッチの厚さを増大しない構造であって、かつスイッチ表面に電極の影を形成しない、あるいは電極の影を目立たなくするような構造の開発が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、不透明電極の背面に配置した光源からの光によりスイッチ表面にマークを点灯表示する場合において、スイッチ表面に浮かび上がるマークに生じる電極の影が目立たないようにしたタッチスイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るタッチスイッチは、電極に対する誘電体の接触あるいは近接を、静電容量の変化で検出し、負荷に電流を供給し、負荷に電流を供給するとき点灯制御される光源と、この光源からの光によって照明されるマーク部と、を含むタッチスイッチにおいて、電極は、光源の前面に配置され、非透光性でかつ導電性の材料で構成され、光源からの光を通す柵状又は網の目状の複数の開口を有し、マーク部は、電極の前面に配置された表示シートに形成され、前記複数の開口からの光を通すことを特徴とする。なお、本発明に係るタッチスイッチは、開口を形成する電極の線幅が約0.1mmであることが好ましい。
【0010】
本発明に係る他のタッチスイッチは、電極が透光性の基板の背面に配置されるのが好ましい。また、本発明に係る他のタッチスイッチは、表面シートの前面に透光性の保護パネルを含むことが好ましい。さらに、本発明に係る他のタッチスイッチは、マーク部を包囲する一の開口を含み、前記一の開口はマーク部に光を通すことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、本発明に係るタッチスイッチは、点灯表示の際にスイッチ表面に生じる不透明電極のパターンの影を目立たなくすることができ、さらに、透明導電性膜のような高価な透明電極を使用しないので、透明電極を使用したタッチスイッチよりも安価なタッチスイッチを提供することができる。
【0012】
さらに、本発明に係るタッチスイッチは、不透明電極とマーク部との間に透光性の基板が配置されていることから、透光性の基板内に入射した光が基板内部で拡散して不透明電極の背後に回りこむ等、いわゆる光の拡散効果を期待できるので、スイッチ表面に生じる電極パターンの影を目立たなくすることができる。
【0013】
また、電極形状を、開口を形成するように細線状とすることにより、細線の一部が破損しても、破損部を回り込んで導通するため、電極としての機能が完全に損なわれることはない。さらに、電極の上に設けられた保護パネルにより、使用者等の誘電体が接触することによる傷つき防止等の耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1は、本発明に係る実施形態のタッチスイッチ10の斜視図であり、図2は、本発明に係る実施形態のタッチスイッチ10の断面図である。
【0015】
タッチスイッチ10は、図1に示すように、光源12と回路基板16と電極18と表示シート20と保護パネル22とを含み、車両等に取り付けられる。
【0016】
光源12は、回路基板16の下方に配置される。光源12は、一般的にLEDやバルブランプ等が使用されるが、発光するものであれば特に限定されない。また、光源12の数は一つでもよいし複数でもよい。
【0017】
電極18は、光源12の点灯制御や、負荷に電流を供給する等のための回路基板16と図示しないリード線等で接続される。回路基板16には、図示しない配線回路が形成されており、電極18と大地間の静電容量の変化を検出するための検出回路と、光源12を点灯制御したり、負荷に電流を供給するための制御回路とを有している。回路基板16は、一般的にエポキシ樹脂等でつくられるが、光源12からの光を透過する材料であればセラミックス等の無機材料でもよい。
【0018】
電極18は、接続端子を有しており、図示しないリード線とコネクタ等で接続される。かかる電極18は、銅合金などの金属材料、導電性セラミックス等の無機材料、導電性の合成樹脂等の不透明な導電材料を加工して得ることができる。これらの材料は、製造時や使用時の取り扱い性において十分な機械強度を有するように成形される。
【0019】
電極18は、図3に示すように、光源12からの光を通す開口部24を有している。この開口部24の開口形状は、柵状に配列した開口であることが好ましい。こうすることで、電極18に穴が数箇所存在している場合と比較して、電極18の広い範囲を透光可能とすることができる。例えば、図4Aには、柵状に配列した開口を有する電極18が示されている。電極18の開口部24の後方(紙面の奥側)には、表示シート20に描かれたスイッチ機能を表示する文字、図形等のマーク、例えば「ON」のようなマーク14が、反転した状態で観察される。この場合、光源12より放射された光は、開口部24を通り抜けて回路基板16を透過し、表示シート20に描かれた「ON」のようなマーク14を透過して透光性の保護パネル22の表面に「ON」の文字を浮び上がらせる。この実施形態によれば、電極18は複数の矩形の開口を形成するように簾状又はストライプ状の細い線で形成されるので、マーク14に落ちる電極18の影を目立たなくすることができる。これにより、使用者等に「ON」表示を鮮明に認識させることができる。
【0020】
また、図4Bに示すように、電極18の開口部24を網の目状の開口とすることもできる。この場合、柵状に配列した開口に比べて、電極18の線の密度を増すことができるとともに、電極18の線が格子状を呈するように縦横方向に交差して配置されることから、電極としての強度が増し、外力を受けても変形し難く、より耐久性と感度を高めた構造とすることができる。
【0021】
開口部24の形状は、上記の他、円形、三角形、四角形、その他の多角形などを使用してもよいし、その他の任意の形状であってもよい。開口部24の成形は、板状の材料に穴あけ加工をしてもよいし、線状の材料を編んで加工してもよい。
【0022】
さらに、図4Cに示すように、「ON」のようなマーク14に電極18の線が重ならないようにすることもできる。この場合、電極18の線は、「O」と「N」とをそれぞれ包囲するように配置され、開口部24を形成する。これにより、光源12から放射された光は、「O」と「N」とをそれぞれ包囲するように形成された開口を透過するので、マーク14に電極18の影を作らない。
【0023】
電極18の開口率は、電極18の機械強度と透光性等から決定される。開口率が大きくなると電極18の機械強度が低下し、開口率が小さくなると電極18の透光性が低下するからである。開口率10%以上であれば使用可能であるが、好ましくは50%以上、特に90%以上であることが好ましい。
【0024】
ここでは図示しないが、電極18は、回路基板16と図示しないリード線により接続される。リード線は、一般的に銅合金等の金属線を合成樹脂等で被覆したものが使用される。リード線は、電極18と回路基板16の端子又はコネクタに接続される。
【0025】
電極18の上に配置される表示シート20は、使用者に認識させるための文字や図形等が印刷されたシートである。文字や図形等は、例えば、車載用エアコンのオン機能を表示する「ON」のようなマーク14が使用される。表示シート20と電極18とは、接着剤等により接着されていてもよいし、ネジ等で締結されていてもよい。表示シート20は、一般的には合成樹脂が使用されるが、セラミックス等の無機材料のシートを使用してもよい。表示シート20は、文字や図形等を使用者に認識させるために透明なシートが好ましいが、半透明なシートでもよく、透光性を有するシートであればこれらに限られない。また、表示シート20の他の部分と区別して、顕著に使用者に認識させるために、文字や図形等の部分を着色してもよい。また、細線化した電極18の形状の影を目立たなくするために、表示シート20の文字や図形等以外の部分を着色してもよい。また、表示シート20を使用しないで、保護パネル22に文字や図形等を印刷してもよい。
【0026】
表示シート20の上に配置される保護パネル22は、表示シート20及び電極18の傷つき防止や腐食防止等の耐久性向上のために用いられるパネルである。保護パネル22と表示シート20とは、接着剤等により接着されていてもよいし、ネジ等で締結されていてもよい。また、表示シート20を使用しない場合には、電極18の上に同様な方法で、保護パネル22が配置される。保護パネル22は、透明であることが好ましいが、半透明でもよく、光源12からの光を透光できれば、これらに限られず、意匠を施した保護パネル22を用いてもよい。また、保護パネル22は、一般的には合成樹脂が好ましいが、セラミックス等の無機材料を使用してもよい。
【0027】
つぎに、図5を参照しながら、上記構成の作用について説明する。タッチスイッチ10の電極100に使用者等の誘電体が接触又は近接すると、電極100と大地間の静電容量が変化する。その静電容量の変化を回路基板16の、例えばタッチセンス用IC等の検出回路110で検出し、検出信号を制御回路120に伝送する。制御回路120は、負荷に電流を供給し、LEDなどの光源12を点灯させる。光源12からの光は電極18の柵状に配列した開口等により形成される開口部24を通って、回路基板16を透過し、表示シート20を照明することにより、表示シート20に描かれた文字や図形等のマーク14を表示する。そして、使用者がその表示を見ることで、スイッチが動作したことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態であるタッチスイッチの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態であるタッチスイッチの断面図である。
【図3】電極の開口部が柵状に配列した電極形状を示す平面図である。
【図4A】本発明に係る実施形態であるタッチスイッチの図2のA−A線方向の平面図であり、電極の開口部が柵状に構成された図である。
【図4B】本発明に係る他の実施形態であるタッチスイッチの図2のA−A線方向の平面図であり、電極の開口部が網の目状に構成された図である。
【図4C】本発明に係る他の実施形態であるタッチスイッチの図2のA−A線方向の平面図であり、電極の開口部がマーク部を包囲する一の開口及び網の目状の開口とで構成された図である。
【図5】本発明に係る実施形態であるタッチスイッチの作用を示したブロック図である。
【図6】従来のタッチスイッチの断面図である。
【図7】従来のタッチスイッチの図6のB−B線方向の平面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 タッチスイッチ、12 光源、14 マーク、16 回路基板、18,100 電極、20,30 表示シート、22,32 保護パネル、24 開口部、26 透明絶縁性シート、28 透明導電性膜、110 検出回路、120 制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極に対する誘電体の接触あるいは近接を、静電容量の変化で検出し、負荷に電流を供給し、負荷に電流を供給するとき点灯制御される光源と、この光源からの光によって照明されるマーク部と、を含むタッチスイッチにおいて、
電極は、光源の前面に配置され、非透光性でかつ導電性の材料で構成され、光源からの光を通す柵状又は網の目状の複数の開口を有し、
マーク部は、電極の前面に配置された表示シートに形成され、前記複数の開口からの光を通すことを特徴とするタッチスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のタッチスイッチにおいて、開口を形成する電極の線幅は約0.1mmであることを特徴とするタッチスイッチ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタッチスイッチにおいて、電極は透光性の基板の背面に配置されることを特徴とするタッチスイッチ。
【請求項4】
請求項3に記載のタッチスイッチにおいて、表面シートの前面に透光性の保護パネルを含むことを特徴とするタッチスイッチ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一つに記載のタッチスイッチにおいて、マーク部を包囲する一の開口を含み、前記一の開口はマーク部に光を通すことを特徴とするタッチスイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−200608(P2007−200608A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15184(P2006−15184)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】