説明

タバコ臭気消臭用香料組成物、シガレットおよびタバコパッケージ

【課題】タバコ臭気と混合しても、全体の臭いの強さを有意に増加させることなく、タバコ臭気を効果的に消臭し得るタバコ臭気消臭用香料組成物を提供する。
【解決手段】次の4つの成分群(I)〜(IV):(I)脂肪族エステル化合物、(II)(a)芳香族アルデヒド化合物、および/または(b)ラクトン化合物、(III)脂肪族ケトン化合物、(IV)テルペンアルコールのうち、少なくとも2つの成分群の成分を含むことを特徴とするタバコ臭気消臭用香料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タバコ臭気消臭用香料組成物、並びにこのタバコ臭気消臭用組成物を含むシガレットおよびタバコパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シガレット等のタバコ喫煙物品から放出される副流煙等のタバコ臭気は、特に非喫煙者にとって好ましいとはいえないものである。特に、喫煙中に周囲に放出される副流煙臭気の対策は大きな問題となっている。
【0003】
このような悪臭や異臭を消す方法としては、非常に強い芳香を有する物質を消臭剤として用い、その強い芳香を悪臭に混合させることにより、悪臭を隠蔽する方法が主として採られてきている(非特許文献1)。また、シガレットの自然燃焼時に周囲に放出されるタバコ副流煙の臭気を改善するために、不快な臭いを隠蔽する上記消臭剤をシガレット巻紙に添加することが提案されている。
【0004】
タバコ臭気消臭剤としては、(A)アルデヒド的な香気又はグリーン的な香気を有する脂肪族アルデヒド化合物、(B)果実的な香気又はグリーン的な香気を有するベンゼン環を含むアルデヒド化合物、(C)果実的な香気又はグリーン的な香気を有するケトン化合物、(D)果実的な香気又はグリーン的な香気を有する脂肪族エステル化合物、(E)グリーン的な香気、バルサミックな香気、果実的な香気、アンバー的な香気又はスパイシーな香気を有する精油類のうち、少なくとも3種以上の群の組合せからなるタバコ臭気消臭剤(特許文献1)、クラスIの香料アルデヒドおよびクラスIIの香料アルデヒドにより煙の悪臭を中和する方法(特許文献2)などが挙げられる。
【0005】
しかしながら、このような従来の消臭剤は、通常、悪臭の強度より強い芳香を使用するものであるため、悪臭との混合後の全体としての臭いの強さが、混合前の悪臭の強さよりもかなり強くなり、結果的に不快に感じられることが多い。また、混合前の隠蔽はできても、混合後の臭いが新たな別の不快な臭いを感じさせる場合も多い。さらに従来の消臭剤は、確かにタバコの副流煙等の臭気を低減させる効果もあるが、タバコ主流煙として味わうタバコ香気をも低減させる傾向にあり、また、隠蔽効果を得るために比較的多くの量を用いる必要があるため、タバコ本来の香喫味への影響が大きくなる傾向がある。このように、従来の消臭剤では臭いの不快さを根本的に改善するには十分には至っておらず、またこのような消臭剤を担持する副流煙臭気を低減させたシガレットの香喫味は満足なものではない。
【0006】
一方、本発明者らは、タバコ臭気消臭剤として、マンダリンオレンジ精油またはテルペン炭化水素を実質的に除去したマンダリン精油画分によるタバコ臭気消臭剤(特許文献3、特許文献4)、(I)オクタナール、ノナナールおよび/またはデカナール、(II)リナロール、(III)カルボン、(IV)アントラニル酸メチルおよび/またはN−メチルアントラニル酸メチル、(V)シネンサールおよび/またはオレンジピール精油シネンサール画分のうち、少なくとも2つの成分群の成分を含有するタバコ臭気消臭剤(特許文献5、特許文献6)で、上記問題であった混合後の匂いが新たな別の不快な臭いを感じさせることなく、柑橘系の爽やかな香気を有する消臭剤を提案した。
【0007】
ただし、柑橘系の香気を好まない人からの別の香気の消臭剤への要望や、現在の生活様式の多様化にともないさらなるバリエーションを求める要望があり、これらの要望に対しては、十分に満たすものには至っていない。
【特許文献1】特開2002−275495号公報
【特許文献2】特表平9−505500号公報
【特許文献3】特開2002−143285号公報
【特許文献4】特開2002−146385号公報
【特許文献5】特開2002−143284号公報
【特許文献6】特開2002−146386号公報
【非特許文献1】周知・慣用技術集(香料)第I部 香料一般 平成11年1月29日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明は、喫煙中に周囲に放出される副流煙の臭気との混合後、全体の臭いを不快なレベルまで強くすることなく、更には、混合後の臭いが新たな別の不快臭となることなくタバコ臭気を隠蔽(マスク)することができるタバコ臭気消臭用香料組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、シガレットの自然燃焼時に発生する臭気全体の強さを大幅に増加することなく副流煙臭気が低減され、さらにタバコ本来の香喫味が損なわれないシガレットを提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、シガレットの自然燃焼時に発生する臭気全体の強さを大幅に増加することなく副流煙臭気が低減され、さらにタバコ本来の香喫味が損なわれないシガレットを提供し得るタバコパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の側面によれば、次の4つの成分群(I)〜(IV):
(I)脂肪酸エステル化合物;
(II)(a)芳香族アルデヒド化合物、および/または(b)ラクトン化合物;
(III)脂肪族ケトン化合物;
(IV)テルペンアルコール
のうち、少なくとも2つの成分群の成分を含むことを特徴とするタバコ臭気消臭用香料組成物が提供される。
【0012】
具体的には、上記4つの成分群はそれぞれ以下の香調を有する成分群である:
(I)果実的な香気またはグリーン的な香気を有する脂肪族エステル化合物:
(II)(a)花様の香気、グリーンな香気または果実的な香気を有する芳香族アルデヒド化合物:
(II)(b)花様の香気、ハーブ様の香気、スパイシーな香気または果実的な香気を有するラクトン化合物:
(III)果実様の香気、花様の香気またはスパイシーな香気を有する脂肪族ケトン化合物:
(IV)花様の香気、グリーンな香気またはスパイシーな香気を有するテルペンアルコール。
【0013】
本発明の第2の側面によれば、タバコ充填材と該タバコ充填材の周囲を巻装するシガレット巻紙を含むタバコロッドを備え、上記第1の側面のタバコ臭気消臭用香料組成物を担持することを特徴とするシガレットが提供される。
【0014】
本発明の第3の側面によれば、シガレットを収容するパッケージであって、前記パッケージ内に上記第1の側面のタバコ臭気消臭用香料組成物を収容したことを特徴とするタバコパッケージが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、タバコ臭気と混合しても、全体の臭いの強さを有意に増加することなく、タバコ臭気を効果的に消臭し得るタバコ臭気消臭用香料組成物が提供される。また、自然燃焼時に発生する臭気全体の強さを大幅に増加することなく副流煙臭気が低減されたシガレットおよびシガレットを収容するタバコパッケージを提供することができる。本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物は少量で上記効果を奏するためにタバコ香喫味への影響が少なく、タバコ本来の香喫味を損なわない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0017】
本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物は、天然物から精製もしくは分取により獲得される精製もしくは分取香料に対して、いわゆる調合香料というべきものである。
【0018】
本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物は、次の4つの成分群(I)〜(IV):(I)脂肪族エステル化合物;(II)(a)芳香族アルデヒド化合物、および/または(b)ラクトン化合物;(III)脂肪族ケトン化合物;および(IV)テルペンアルコールのうち、少なくとも2つの成分群の成分を含む。これら4つの成分群の成分のいずれも、カモミール精油のうちカモミールブルーの成分分析結果に基づき選択された成分である。
【0019】
脂肪族エステル化合物(I)は、一般式(I)で示すことができる
【化1】

【0020】
(式中、R1は、炭素数1〜5個の直鎖または分枝のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜4の直鎖または分枝のアルキル基である)。
【0021】
このような脂肪族エステル化合物(I)の具体例としては、メタン酸メチル、メタン酸エチル、メタン酸n−プロピル、メタン酸イソプロピル、メタン酸n−ブチル、メタン酸イソブチル、メタン酸sec−ブチル、エタン酸メチル、エタン酸エチル、エタン酸n−プロピル、エタン酸イソプロピル、エタン酸n−ブチル、エタン酸イソブチル、エタン酸sec−ブチル、プロパン酸メチル、プロパン酸エチル、プロパン酸n−プロピル、プロパン酸イソプロピル、プロパン酸n−ブチル、プロパン酸イソブチル、プロパン酸sec−ブチル、プロパン酸tert−ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸n−プロピル、ブタン酸イソプロピル、ブタン酸n−ブチル、ブタン酸イソブチル、ブタン酸sec−ブチル、2−メチルプロパン酸メチル、2−メチルプロパン酸エチル、2−メチルプロパン酸n−プロピル、2−メチルプロパン酸イソプロピル、2−メチルプロパン酸n−ブチル、2−メチルプロパン酸イソブチル、2−メチルプロパン酸sec−ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸n−プロピル、ペンタン酸イソプロピル、ペンタン酸n−ブチル、ペンタン酸イソブチル、ペンタン酸sec−ブチル、2−メチルブタン酸メチル、2−メチルブタン酸エチル、2−メチルブタン酸n−プロピル、2−メチルブタン酸イソプロピル、2−メチルブタン酸n−ブチル、2−メチルブタン酸イソブチル、2−メチルブタン酸sec−ブチル、3−メチルブタン酸メチル、3−メチルブタン酸エチル、3−メチルブタン酸n−プロピル、3−メチルブタン酸イソプロピル、3−メチルブタン酸n−ブチル、3−メチルブタン酸イソブチル、3−メチルブタン酸sec−ブチル等の炭素数1〜9アルキルエステルを挙げることができる。
【0022】
これらは、R−体、S−体またはラセミ体のいずれでもよいが、好ましくはS−体である。
【0023】
芳香族アルデヒド化合物(II)(a)は、一般式(II)で示すことができる
【化2】

【0024】
(式中、R3は、水素、炭素数1〜3個のアルキル基、水酸基、または鎖状若しくは環状のアルコキシ基であり、R4は、炭素数0〜9個の直鎖若しくは分枝状の飽和又は不飽和アルキル基である)。
【0025】
このような芳香族アルデヒド化合物(II)(a)の具体例としては、α−アミルシンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、クミンアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ジヒドロシンナムアルデヒド、エチルバニリン、α−ヘキシルシンナムアルデヒド、ハイドラトロプアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、ピペロナール、バニリン等を挙げることができる。
【0026】
ラクトン化合物(II)(b)は、一般式(III)で示すことができる
【化3】

【0027】
(式中、R5、R6、R7は、水素、または置換または無置換の炭素数1〜6の直鎖状、分枝状若しくは脂環式の飽和若しくは不飽和炭化水素基であり、R5とR6、またはR6とR7は互いに結合して置換基を共有していてもよいし、または芳香族若しくは脂肪族の、飽和若しくは不飽和結合を含む環を形成していてもよく、nは1または2を示す)。ここで、一般式(III)で示すラクトン環は飽和又は不飽和結合により形成される。
【0028】
このようなラクトン化合物(II)(b)の具体例としては、α−アンゲリカラクトン、3−ブチリデンフタリド、γ−ブチロラクトン、クマリン、δ−デカラクトン、γ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン、γ−ドデカラクトン、δ−ヘプタラクトン、γ−ヘプタラクトン、δ−ヘキサラクトン、γ−ヘキサラクトン、ジャスモラクトン、β−メチル−γ−オクタラクトン、ミントラクトン、δ−ノナラクトン、γ−ノナラクトン、δ−オクタラクトン、γ−オクタラクトン、3−プロピリデンフタリド、δ−ウンデカラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン等を挙げることができる。ラクトン化合物(II)(b)については、R−体、S−体またはラセミ体のいずれでもよいが、好ましくはR−体である。
【0029】
脂肪族ケトン化合物(III)は、一般式(IV)で示すことができる
【化4】

【0030】
(式中、R8およびR9は、置換または無置換の炭素数1〜12個の直鎖状、分枝状若しくは脂環式の飽和または不飽和炭化水素基であり、R8およびR9は互いに結合して置換基を共有していてもよいし、または環を形成していてもよい)。
【0031】
このような脂肪族ケトン化合物(III)の具体例としては、カンファー、カルボン、カルボンオキシド、α−ダマセノン、β−ダマセノン、α−ダマスコン、β−ダマスコン、δ−ダマスコン、デヒドロヌートカトン、ジヒドロ−α−ヨノン、ジヒドロ−β−ヨノン、ジヒドロカルボン、ジヒドロジャスモン、1,10−ジヒドロヌートカトン、エチルアミルケトン、エチルマルトール、フラネオール、α−ヨノン、β−ヨノン、α−イロン、イソジャスモン、α−イソメチルヨノン、cis−ジャスモン、trans−ジャスモン、マルトール、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メチル−α−ヨノン、ピペリトン、プレゴン、ベルベノン等の化合物が挙げられる。
【0032】
テルペンアルコール(IV)の具体例としては、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ジメチルオクタノール、ヒドロキシシトロネロール、テトラヒドロリナロール、ラバンデュロール、ミルセノール、テルピネオール、アルテミシアアルコール、ヨモギアルコール、ボルネオール、イソプレゴール、ノポール、メントール、ビサボロール、ファルネソール、ネロリドール、ジヒドロファルネソール、セドロール、パチュリアルコール、ベチベロール、サンタロール、ビサボロールオキシドA、ビサボロールオキシドB、カジノール、スパチュレノール、グロブロール等を挙げることができる。
【0033】
成分群(I)〜(IV)を構成する成分を以下、特定成分ということがある。
【0034】
本発明の臭気消臭用香料組成物は、(I)〜(IV)の成分群の少なくとも2以上の組み合わせからなるのが通常である。
【0035】
成分群(I)〜(IV)における成分が混合物の形態で臭気消臭用香料組成物に含まれる場合、その混合物を1成分とみなすとき、本発明の臭気消臭用香料組成物は、以下の2特定成分系〜4特定成分系を含む。
【0036】
<2特定成分系>
(I)と、(II)、(III)または(IV)との組み合わせ;
(II)と、(III)または(IV)との組み合わせ;
(III)と、(IV)との組み合わせ。
【0037】
<3特定成分系>
(I)と、(II)と、(III)または(IV)との組み合わせ;
(I)と、(III)と、(IV)との組み合わせ;
(II)と、(III)と、(IV)との組み合わせ。
【0038】
<4特定成分系>
(I)と、(II)と、(III)と、(IV)との組み合わせ。
【0039】
本発明において、臭気消臭用香料組成物は、その特定成分数が多くなるほど、所期の効果がより一層顕著なものとなる。すなわち、2特定成分系の香料組成物よりも3特定成分系の香料組成物の方が好ましく、3特定成分系の香料組成物よりも4特定成分系の香料組成物の方が好ましい。
【0040】
本発明の臭気消臭用香料組成物を構成する4特定成分は、好ましくは、(I):(II):(III):(IV)=0.5〜8:0.1〜3:0.01〜0.3:1〜30の質量比で配合される。ここで、2特定成分系における2つの特定成分の質量比、3特定成分系における3つの特定成分の質量比、4特定成分系における4つの特定成分の質量比は、ここで述べた質量比における数値がそのまま適用される(以下、特定成分の比について同じ)。すなわち、今、(I):(II):(III):(IV)の上記質量比を、簡便のために、A:B:C:Dで表すと、例えば、(II)と(III)の2成分系における(II)と(III)の比は、B:Cが好ましく、(I)と(IV)との2成分系における(I)と(IV)の比は、A:Dが好ましい。同様に、例えば、(I)と(II)と(III)の3成分系における(I)と(II)と(III)の比は、A:B:Cが好ましい。また、例えば、(I)と(II)と(III)と(IV)の4成分系における(I)と(II)と(III)と(IV)の比は、A:B:C:Dが好ましい。
【0041】
特に好ましい臭気消臭用香料組成物における特定成分の質量比(I):(II):(III):(IV)は、1.0〜3.0:0.1〜0.5:0.02〜0.05:1〜20である。
【0042】
本発明の臭気消臭用香料組成物は、上記特定成分以外に他の成分を含むことができる。そのような他の成分としては、上記特定成分以外のカモミールブルー精油成分を好ましく例示することができる。本発明の臭気消臭用香料組成物に含有され得る他のカモミールブルー精油成分の例を挙げると、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、サビネン、ミルセン、p−サイメン、カリオフィレン、カジネン、イソアミルアルコール、オイゲノール、シネオール、テーピネン、酢酸ヘキシル、ミルテナール等である。本発明の臭気消臭用香料組成物は、特定成分を合計で、0.1質量%以上の割合で含有することが好ましく、5質量%以上の割合で含有することがより好ましく、30質量%以上の割合で含有することがさらに好ましい。
【0043】
本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物は、そのまま適切な容器に収容してタバコ消臭剤として室内に設置することができる。
【0044】
また、本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物は、シガレットに担持される。シガレットは、タバコ充填材カラムとこのタバコ充填材カラムの周囲を巻装するシガレット巻紙を含むタバコロッドを備える。タバコ充填材は、タバコ刻みを含み、このタバコ刻みは膨化されたものであってもよい。タバコ刻みの膨化方法としては、それ自体既知のものを採用することができる。シガレット巻紙としては、タバコ充填材の周囲を巻装してシガレットを提供するために好適ないずれの巻紙をも使用することができる。なお、本発明のシガレットは、そのタバコロッドの一端にフィルタープラグを有することができる。シガレットは、例えば、シガレット巻紙で巻装された長さ45mm〜75mm、周囲長15mm〜30mmのタバコ充填材カラムを有し、タバコ充填材は450mg〜1100mgの重量を有することができる。
【0045】
本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物は、種々の形態でシガレットに担持させることができる。例えば、本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物は、タバコ充填材に添加することにより、シガレット巻紙に糊に混ぜて塗布することにより、またシガレット巻紙を接着するシーム糊に添加することによりシガレットに担持させることができる。タバコ臭気消臭用香料組成物の香りは移行するため、いずれの場所に担持させてもよい。副流煙臭気低減効果は、本発明の適用部位(タバコ刻み、巻紙、シーム糊等)に特に依存しない。しかも、本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物は、通常のタバコ刻み賦香技術によりタバコ充填材に添加することができるので好都合である。いずれの場合にも、本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物が適用部位に均一に適用されることが好ましい。なお、本発明のシガレットがタバコロッドの一端にフィルタープラグを有するとき、一般にフィルタープラグはいわゆるチップペーパーによりタバコロッドに接続されるが、このチップペーパーに本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物を塗布することもできるし、フィルター巻取り紙に塗布することもできる。
【0046】
本発明のシガレットは、1本当たり、特定成分の合計量が、好ましくは少なくとも0.01mgとなるように、より好ましくは0.02mg〜0.2mgとなるように本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物を担持する。
【0047】
さらに、本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物は、タバコパッケージ内に収容させることもできる。このタバコパッケージは、タバコ充填材とこのタバコ充填材の周囲を巻装するシガレット巻紙を含むタバコロッドを備えるシガレットを複数本、例えば20本収容するとともに、本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物を収容する。本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物のパッケージ内への収容は、例えば、アルミ箔に添着された紙に含浸させて加香することにより行うことができる。パッケージ内に収容された本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物は、パッケージ開封までの間にシガレットに移行し、喫煙時に副流煙臭気を低減することができる。
【実施例】
【0048】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0049】
以下の例で使用した副流煙臭気についての官能評価方法(部屋法)は次の通りである。
【0050】
部屋法
人の出入りのためのドアを1つ有する以外は、密閉された部屋(容量80m3)を2つ(A室、B室とする)準備する。ドアを閉めた状態で、AおよびB室内で通常のシガレット7本を自然燃焼させ、副流煙で充満させる。B室内には、副流煙で充満させた後、各香料のエタノール溶液を空気スプレーにより噴霧した。パネルを2グループに分け、一方のグループは全員が同時にA室から入り、A室を出た後、B室に入り、B室を出て、再びA室に入り、A室を出て、以下の項目について結果を報告する。他方のグループは、全員が同時にB室から入り、B室を出た後、A室に入り、A室を出て、再びB室に入り、B室を出て、以下の評価項目について結果を報告する。部屋の移動に際しては、次の部屋に入るまでに、それぞれ30秒のインターバルをとる。なお、初期の過敏な感覚を排除するために、最初の入室時の感覚は評価対象とせず、2回目と3回目の入室時の感覚を比較することで評価を行う。
【0051】
1.臭い全体の強さが強い部屋はどちらの部屋か、
2.臭いのよい部屋はどちらの部屋か、
3.タバコ臭の強い部屋はどちらの部屋か。
【0052】
その結果、評価項目1〜3それぞれにおいて、B室(香料を噴霧した部屋)と答えたパネルの数のパネルの総数に対するパーセンテージを求め、評価結果とする。従って、臭気全体の強さ(全体強度)とタバコ臭(タバコ臭強度)については、数値が小さいほど好ましく、臭いの良さについては、数値が大きいほど好ましい。パネルは、任意に抽出した成人(25〜50歳、男女、喫煙者であるか否かの区別なし)であり、タバコ臭についての専門の訓練を受けていない普通人であった。
【0053】
実施例1〜7
下記表1に示す成分を同表に示す量で調合して実施例1〜7の調合香料(本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物)を調製した。
【表1】

【0054】
こうして調製した調合香料について、副流煙臭気を上記部屋法により評価した。評価結果を表2に示す。表2には、噴霧した香料組成物の量も示されている。
【表2】

【0055】
本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物は、全体臭の強さを大幅に増加させることなく、臭いを改善し、タバコ臭の強さを低減させることが確認された。
【0056】
実施例8〜19
下記表3に示す成分を同表に示す量で調合した実施例8〜19の調合香料をシガレットに担持させた。
【表3】

【0057】
タバコ刻みを巻紙でシガレットに巻き上げた後、表3の実施例8〜19の調合香料をマイクロシリンジを用いて同表に示す量でタバコ刻みに注入することにより、それぞれの調合香料について所要本数のシガレットを作製した。また、上記調合香料を添加しなかったこと以外は全く同様にして所要数の対照シガレットを作製した。
【0058】
こうして作製したシガレットについて、副流煙臭気を上記部屋法により評価した。
【0059】
ここで、上記部屋法を行うに際し、A室内で対照シガレット7本を自然燃焼させ、B室内で本発明のシガレット7本を自然燃焼させた。他の条件・評価方法は同様である。評価結果を表4に示す。
【表4】

【0060】
本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物を担持するシガレットは、対照のシガレットと比べた際に、全体臭の強さを大幅に増加させることなく、臭いを改善し、タバコ臭の強さを低減させることが確認された。また、本発明のシガレットは、少ない添加量で上記効果が得られることがわかった。
【0061】
以上詳述したように、本発明によれば、タバコ臭気と混合しても、全体の臭いの強さを有意に増加することなく、タバコ臭気を効果的に消臭し得るタバコ臭気消臭用香料組成物が提供される。また、シガレットの自然燃焼時に発生する臭気全体の強さを大幅に増加することなく副流煙臭気が低減されたシガレットが提供される。さらに、このようなシガレットを与えるタバコパッケージが提供される。本発明のタバコ臭気消臭用香料組成物は少量で上記効果を奏するためにタバコの香喫味への影響が少なく、タバコ本来の香喫味を損なわない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の4つの成分群(I)〜(IV):
(I)脂肪族エステル化合物;
(II)(a)芳香族アルデヒド化合物、および/または(b)ラクトン化合物;
(III)脂肪族ケトン化合物;
(IV)テルペンアルコール
のうち、少なくとも2つの成分群の成分を含むことを特徴とするタバコ臭気消臭用香料組成物。
【請求項2】
前記臭気消臭用香料組成物が、前記成分群(I):(II):(III):(IV)の成分を、質量比で、0.5〜8:0.1〜3:0.01〜0.3:1〜30の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載のタバコ臭気消臭用香料組成物。
【請求項3】
タバコ充填材と該タバコ充填材の周囲を巻装するシガレット巻紙を含むタバコロッドを備え、請求項1または2に記載のタバコ臭気消臭用香料組成物を担持することを特徴とするシガレット。
【請求項4】
請求項1または2に記載のタバコ臭気消臭用香料組成物を前記タバコ充填材に担持することを特徴とする請求項3に記載のシガレット。
【請求項5】
前記タバコ臭気消臭用香料組成物を前記シガレット巻紙に担持することを特徴とする請求項3または4に記載のシガレット。
【請求項6】
前記シガレット巻紙がシーム糊により接着されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のシガレット。
【請求項7】
前記タバコ臭気消臭用香料組成物を前記シーム糊に担持することを特徴とする請求項6に記載のシガレット。
【請求項8】
シガレットを収容するパッケージであって、前記パッケージ内に請求項1または2に記載のタバコ臭気消臭用香料組成物を収容したことを特徴とするタバコパッケージ。

【公開番号】特開2009−179708(P2009−179708A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19478(P2008−19478)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】