説明

タフテッドカーペット

【課題】 本発明は、ステッチ面を表側にして使用されるタフテッドカーペットにおいて、適度な柔軟性及び腰を有し、施工面に敷設した後、位置ずれや捲れなどの不具合を防止できるタフテッドカーペットを提供する。
【課題手段】 本発明のタフテッドカーペット1は、基布2の一面にステッチ面4aが形成され且つ前記基布2の他面に複数のパイルが起立したパイル基布を有し、前記ステッチ面4aを表側にして使用される。前記起立したパイル3bの下端部には、接着剤層5を介して下地層7が接着されており、前記基布2と下地層7との間には、前記起立したパイル3bに接着剤が含浸していないパイル柔軟層6を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッチ面を表側にして使用されるタフテッドカーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
タフテッドカーペットは、基布にパイル糸がタフトされたパイル基布を有する床材である。該パイル基布は、基布の一面にステッチ面が形成され、且つ基布の他面にパイルが起立した起立パイル面が形成されている。
上記タフテッドカーペットは、一般には、起立パイル面を表側(使用面)にして使用される。
一方、ステッチ面を表側にして使用されるタフテッドカーペットが知られている(特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
特許文献1のタフテッドカーペットは、基布と、基布にパイル糸を起立形成したパイルを有する第1の面と、該パイル糸によって、基布面に沿って一定方向に平行配置されたステッチパイルを有する第2の面と、を有し、該第1の面にパイル糸を基布に固着させるための接着剤層を設け、該第2の面を表側(使用面)としている。
特許文献2のタフテッドカーペットは、基布と、基布にパイル糸を起立形成したパイルを有する第1の面と、前記パイル糸によって、基布面に沿って一定方向に平行配置されたステッチパイルを有する第2の面と、を有し、該第2の面を被覆する表面被覆層とを一体に設け、該第2の面を表側(使用面)としている。
【特許文献1】特開平11−299629号公報
【特許文献2】特許第3553913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のタフテッドカーペットは、第1の面の、起立したパイル全体に接着剤が含浸している。そのため、カーペットそのものが、恰も樹脂タイルのように硬く、柔軟性を有しない。
一方、上記特許文献2のタフテッドカーペットは、第1の面の、起立したパイルがそのまま露出しているので、該第1の面を裏側にして施工面に敷設した後、位置ずれや捲れなどの不具合が起き易い。また、起立したパイルが、施工面に直接当たるため、パイルが摩耗し易く、さらに、経年使用により、起立したパイルが扁平化するという問題点もある。
【0005】
本発明の目的は、ステッチ面を表側にして使用されるタフテッドカーペットにおいて、適度な柔軟性及び腰を有し、施工面に敷設した後、位置ずれや捲れなどの不具合を防止できるタフテッドカーペットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタフテッドカーペットは、基布にパイル糸をタフトすることにより形成されたパイル基布であって、前記基布の一面にステッチ面が形成され且つ前記基布の他面に複数のパイルが起立したパイル基布を有し、前記ステッチ面を表側にして使用される。
前記起立したパイルの下端部には、接着剤層を介して下地層が接着されており、前記基布と下地層との間には、前記起立したパイルに接着剤が含浸していないパイル柔軟層を有する。
【0007】
上記タフテッドカーペットは、起立したパイルの下端部に下地層が設けられているので、施工面に敷設した後、位置ずれや捲れが生じ難い。また、下地層が設けられているので、起立したパイルが、摩耗することはなく、更に、該パイルの扁平化も防止できる。
さらに、上記タフテッドカーペットは、基布と下地層の間に、パイルに接着剤が含浸していないパイル柔軟層が設けられているので、適度な柔軟性及び腰を有する。
【0008】
本発明の好ましい態様において、上記パイル柔軟層の厚みは、1mm〜15mmである。
また、好ましい態様において、上記パイル基布のステッチ数は、1/5〜1/25である。
さらに、好ましい態様において、上記パイル基布のゲージ数は、1/3〜1/20である。
また、好ましい態様において、上記パイル基布のタフト密度は、15本/in〜500本/inである。
これらの好ましい態様のタフテッドカーペットは、より適度な柔軟性及び腰を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタフテッドカーペットは、下地層を有するので、位置ずれや捲れが生じ難く、更に、パイルの耐久性にも優れている。
本発明のタフテッドカーペットは、使用時、ステッチ面の組織模様が表側に表れるので、一般的なカーペットに比して、ユニークな外観を呈する上、カーペットの性能として重要な、適度な柔軟性及び腰を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のタフテッドカーペットは、基布にパイル糸をタフトすることにより形成されたパイル基布を有する。該パイル基布は、基布の一面にステッチ面が形成され且つ基布の他面に複数のパイルが起立されている。この起立したパイル(以下、起立したパイルを「起立パイル」という場合がある)の下端部には、接着剤層を介して下地層が接着されている。この下地層と基布の間には、起立パイルに接着剤が含浸していない、パイル柔軟層を有する。本発明のタフテッドカーペットは、ステッチ面を表側にして使用される。
【0011】
上記構成のタフテッドカーペットは、適度な柔軟性及び腰を有し、捲れ難く且つ耐久性に優れている。なお、本明細書において「柔軟性」とは、加圧変形し易さをいい、「腰」とは、加圧変形に対する抵抗(強度)をいう。
以下、本発明のタフテッドカーペットの構成について適宜図面を参酌しながら詳述する。
【0012】
図1は、本発明のタフテッドカーペットの1つ実施形態を示す一部省略断面図である。
図1において、タフテッドカーペット1は、基布2と、パイル糸3と、を含むパイル基布4を有する。該パイル基布4は、基布2にパイル糸3をタフトすることにより形成されている。
パイル糸3は、その一部分が基布2の一面に一定方向に平行配置されたステッチパイル3aと、その一部分が基布2の他面に対し下方側へ起立形成された起立パイル3bと、を有する。
以下、パイル基布において、ステッチパイルを有する基布の一面側を「ステッチ面」といい、起立パイルを有する基布の他面側を「起立パイル面」という場合がある。
【0013】
上記起立パイル3bの下端部(基布2の他面から最も遠い、突出端部)には、接着剤層5が接着されている。
この接着剤層5を構成する接着剤は、起立パイル3bの下端部のみに実質的に含浸されている。換言すると、該接着剤は、起立パイル3bの中途部分に実質的に含浸されていない。従って、タフテッドカーペット1は、基布2の他面から接着剤層5の一面5aの間に、起立パイル3b(ただしその下端部を除く)に接着剤が含浸されていないパイル柔軟層6を有する。このパイル柔軟層6は、複数のパイル糸の集合体からなるので、弾力性を有している。
【0014】
上記接着剤層5は、起立パイル3bの下端部を含むパイル接着層5cと、起立パイル3bを含まない(接着剤成分のみからなる)接着剤単層5dと、から構成されている。
上記接着剤層5(厳密には、接着剤単層5d)の他面5bには、下地層7が接着されている。
本実施形態においては、下地層7は、二次基布7aと、バッキング層7bと、を有する。該二次基布7aは、接着剤層5の他面5bに接着されており、この二次基布7aの他面に、バッキング層7bが積層されている。
従って、タフテッドカーペット1の裏側は、バッキング層7bで構成されている。
【0015】
図2は、本発明のタフテッドカーペットの他の実施形態を示す一部省略断面図である。
該タフテッドカーペット1は、ステッチ面4aの上に、保護層8が設けられている。それ以外の構成は、図1のタフテッドカーペットと同様である。他の実施形態のタフテッドカーペット1においては、図1と同様の構成についての説明を省略し、その図番を図2に援用している。
なお、図1及び図2において、Xは、パイル柔軟層6の厚みを示し、Yは、パイル接着層5cの厚みを示し、Zは、接着剤単層5dの厚みを示す。
以下、各構成要素毎に分説する。
【0016】
<基布>
本発明のタフテッドカーペットに用いられる基布は、パイル糸をタフトできれば特に限定されず、任意の織物又は不織布等を使用することができる。
織物としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維等の合成繊維、天然繊維、又はこれらの複合繊維からなる織物が挙げられる。
不織布としては、カーボン繊維、ガラス繊維、羊毛、綿などの天然繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維などの合成樹脂繊維、鉱物繊維、金属繊維等の繊維、及びそれらの混合物を主成分とし、それらをバインダーを使用するか、又は自己融着或いは繊維のからみを利用してシート状に成形したものなどが挙げられる。
基布は、寸法安定性の観点から、ポリエステル繊維からなる織物又は不織布であることが好ましい。
また、織物を使用する場合、その織り方は、特に限定されず、平織り、綾織り、絡み織り等、汎用的な織り方のものを採用できる。
【0017】
基布の厚みは、特に限定されないが、好ましくは20μm〜1000μmであり、より好ましくは100μm〜500μmである。基布の厚みが上記範囲を下回る場合、パイル糸を保持し難くなり、一方、上記範囲を超える場合、基布内に埋没するパイル糸の量が多くなるためコスト的に不利である。
【0018】
なお、基布には、必要に応じて、適宜適切な添加剤が添加されていてもよい。該添加剤としては、静電気防止剤、消臭剤、防炎剤、防虫剤、抗菌剤、芳香剤、ホルマリン捕捉剤等が挙げられる。
【0019】
<パイル糸>
本発明のタフテッドカーペットに用いられるパイル糸は、特に限定されず、短繊維の撚り糸、又は長繊維等を使用することができる。
繊維の材質としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ビニロン繊維等の合成繊維、ウール、絹、麻、綿等の天然繊維などが挙げられる。
【0020】
長繊維のパイル糸を使用する場合、一本の長繊維から構成されたモノフィラメントであってもよく、複数本の長繊維を撚ってなるマルチフィラメントであってもよい。
パイル糸は、好ましくはポリエステル繊維が用いられ、より好ましくはポリエステル繊維製のマルチフィラメントである。
ポリエステル繊維製のマルチフィラメントからなるパイル糸は、耐汚性と耐久性に優れている。
【0021】
また、パイル糸の太さは、特に限定されず、通常50〜2500texの範囲である。好ましくは、該パイル糸の太さは、50〜1500texであり、より好ましくは50〜1000texである。比較的細いパイル糸を用いることによって、容易にタフト密度等を調整できる。
【0022】
なお、パイル糸には、必要に応じて、適宜適切な添加剤が添加されていてもよい。該添加剤としては、静電気防止剤、消臭剤、防炎剤、防虫剤、抗菌剤、芳香剤、ホルマリン捕捉剤、撥水剤、防汚剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0023】
<パイル基布>
本発明のタフテッドカーペットに用いられるパイル基布は、上記パイル糸と、上記基布と、を有する層である。
該パイル基布は、基布の一面にパイル糸が一方向に平行配置したステッチパイルを有するステッチ面と、基布の他面にパイル糸が起立した起立パイルを有する起立パイル面と、を有する。
【0024】
起立パイルの形状は、特に限定されずカット状、ループ状の何れでもよい。また、起立パイルの形状は、カット状又はループ状単独だけでなく、カット状とループ状が混在したカットアンドループ状であってもよい。
好ましくは、起立パイルの形状は、ループ状又はカットアンドループ状であり、より好ましくはループ状である。起立パイルの形状がループ状を含んでいれば、より柔軟性及び腰に富んだタフテッドカーペットを得ることができる。なお、カットアンドループ状は、起立パイルの総本数に対し、ループ状の起立パイルの占める割合が40%以上である場合を含み、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。また、カットアンドループ状において、ループ状の起立パイルの占める割合は、100%未満であり、好ましくは80%以下である。
【0025】
本発明のタフテッドカーペットの柔軟性及び腰は、基布にタフトされるパイル糸のゲージ数、ステッチ数などによって適宜調整することができる。
なお、本明細書において「ステッチ数」とは、タフト方向と同方向における、1インチ当たりのパイル糸の打ち込み本数を意味する。例えば、ステッチ数が1/αとは、パイル基布のタフト方向1インチ当たりにα本のパイル糸がタフトされていることを表す。
また、本明細書において「ゲージ数」とは、タフト方向と直交する方向における、1インチ当たりのパイル糸の打ち込み本数(ニードルの本数)を意味する。例えば、ゲージ数が1/βとは、パイル基布のタフト方向と直交する方向1インチ当たりにβ本のパイル糸がタフトされていることを表す。
【0026】
パイル基布のステッチ数は、特に限定されないが、好ましくは1/5〜1/25であり、より好ましくは1/8〜1/20であり、特に好ましくは1/10〜1/20である。
また、パイル基布のゲージ数は、特に限定されないが、好ましくは1/3〜1/20であり、より好ましくは1/4〜1/16であり、特に好ましくは1/8〜1/15である。
パイル基布のステッチ数及びゲージ数を上記範囲とすることにより、適度な柔軟性及び腰を有するタフテッドカーペットを得ることができる。
【0027】
パイル基布のタフト密度は、好ましくは15本/in〜500本/inであり、より好ましくは32本/in〜320本/inであり、特に好ましくは80本/in〜300本/inである。
パイル基布のタフト密度とは、パイル基布の1平方インチ(in)当たりのパイル糸の打ち込み本数を意味する。例えば、ステッチ数が1/αで且つゲージ数が1/βの場合、タフト密度は、(α×β)本/inで表される。
【0028】
<接着剤層>
本発明のタフテッドカーペットは、上記起立パイルの下端部に接着された接着剤層を有する。該接着剤層は、起立パイルの下端部と下地層とを接着させるための層である。
接着剤層は、起立パイルの下端部に接着剤が含浸されたパイル接着層と、起立パイルの下端部を含まない、接着剤成分のみからなる接着剤単層と、を有する。
【0029】
パイル接着層の厚み(図1の符号Yを参照)は、特に限定されないが、比較的薄いことが好ましい。パイル接着層の厚みは、好ましくは0.25mm〜3.0mmであり、より好ましくは0.5mm〜2.5mmであり、特に好ましくは1.0〜2.0mmである。
パイル接着層の厚みが上記範囲よりも薄い場合、接着剤層が起立パイルに十分に接着しないおそれがある。また、パイル接着層の厚みが上記範囲よりも厚い場合、相対的にパイル柔軟層の厚みが薄くなるため、所定厚のパイル柔軟層を構成するために起立パイルを長く形成しなければならない。
また、接着剤単層の厚み(図1の符号Zを参照)は、特に限定されないが、好ましくは0mm〜3.0mmであり、より好ましくは0.25mm〜2.0mmであり、特に好ましくは0.5mm〜1.0mmである。
【0030】
接着剤層を形成する接着剤は、パイルの下端部を下地層に十分な強度で固定できる機能を有していれば特に限定されない。
接着剤としては、例えば、樹脂ペースト、水系エマルション型接着剤、溶剤型接着剤、感熱型接着剤、紫外線硬化型接着剤などが挙げられる。好ましくは、樹脂ペースト、水系エマルション型接着剤、又は、溶剤型接着剤が用いられる。
接着剤の主たる樹脂成分としては、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニルアセテート共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体などの合成樹脂、スチレン−ブタジエン系ゴム、ニトリル−ブタジエン系ゴム、クロロプレン系ゴムなどの合成ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
更に、該接着剤には、必要に応じて、適宜適切な添加剤が添加されていてもよい。該添加剤としては、架橋剤、カップリング剤、レベリング剤、増粘剤、充填剤、発泡剤等が挙げられる。
【0031】
また、接着剤の粘度は、特に限定されず、適宜適切な値に設定することができる。該粘度は、通常0.1〜50Pa・sであり、好ましくは1.0〜50Pa・sであり、より好ましくは 1.0〜20Pa・sである。
粘度が比較的小さい接着剤を用いることによって、薄膜状の接着剤層を形成することができる。
【0032】
上記接着剤が含浸された起立パイルの下端部は、接着剤層の一面に固定されるため、起立パイルが倒れて扁平化することを防止できる。そのため、パイル柔軟層の柔軟性及び腰を長期間において担保できる。
【0033】
<パイル柔軟層>
本発明のタフテッドカーペットは、基布と下地層との間に、起立パイルの中途部に接着剤が含浸していない部分(パイル柔軟層)が設けられている。
【0034】
パイル柔軟層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1mm〜15mmであり、より好ましくは2mm〜12mmであり、さらに好ましくは4mm〜9mmであり、特に好ましくは6mm〜9mmである。パイル柔軟層の厚みが上記範囲であれば、より適度な柔軟性及び腰を有するタフテッドカーペットを得ることができる。
適度な柔軟性を有するタフテッドカーペットは、歩行者の疲労低減に寄与し、歩行者に高級感を与え得る。また、適度な腰を有するタフテッドカーペットは、歩行者のカーペットに対する抵抗感を低減し、十分な復元性を担保できる。
なお、本明細書において、「パイル柔軟層の厚み」とは、基布の他面から接着剤層の一面(下地層が接着された面とは反対側の面)までの距離をいう(図1の符号Xを参照)。
【0035】
更に、パイル柔軟層には、接着剤が含浸されていないので、パイル柔軟層内に、基布の他面と平行な方向に空気が通過し得る。このため、本発明のタフテッドカーペットは、空気の流通がよく、その内部に適当な空気流を生じ得る。従って、前記タフテッドカーペットは、急激な温度変化を抑制する、温度調節作用を有する。かかる空気流を生じる場合、パイル柔軟層が比較的厚いタフテッドカーペットの方が、パイル柔軟層に多量の空気が通過し、より良好な温度調節作用を有するので好ましい。
【0036】
<下地層>
上記接着剤層の他面には、下地層が接着されている。下地層は、タフテッドカーペットに防滑性等を付与するために設けられる。また、下地層は、タフテッドカーペットの機械的強度を補強するために設けられる。
該下地層は、単層であってもよいし、或いは多層構造であってもよい。
【0037】
下地層は、好ましくは二次基布を有する。該二次基布は、タフテッドカーペットの機械的強度補強や寸法精度の向上を目的として付与される層である。該二次基布は、下地層の表面又は裏面(施工面側)に設けられていてもよい。なお、製造時において、二次基布が、下地層の内部に沈み込んで埋没していてもよい。また、下地層が2層以上の積層体である場合、二次基布は、その層間に設けられていてもよい。
二次基布は、特に限定されないが、機械的強度補強や寸法精度を確保するために適した織物や不織布を用いることが好ましく、例えば、ガラスマットなどが好適に用いられる。
二次基布を有する下地層を用いることにより、カーペットの引張強度、破断強度、及び寸法安定性を向上させることができる。そのため、より効率的にカーペットを施工でき、且つカーペットの耐久性を向上させることができる。
【0038】
また、下地層は、好ましくはバッキング層を有する。該バッキング層は、タフテッドカーペットに適度な重量及び防滑性を付与するために設けられる。バッキング層は、施工面と接するように、例えば、下地層の最下層(タフテッドカーペットの最下層)に設けられる。
バッキング層は、特に限定されず、適宜適切な素材から形成することができる。バッキング層の素材としては、天然ゴム、ニトリル−ブタジエン系ゴムなどの合成ゴム、塩化ビニル、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン等の合成樹脂等を用いることができる。耐久性とコスト性に優れることから、軟質塩化ビニル樹脂が特に好ましく用いられる。
【0039】
また、該バッキング層は、発泡されていてもよい。バッキング層が発泡されていることにより、タフテッドカーペットに防音性を付与することができる上、タフテッドカーペットの重量を減らすことができる。従って、ハンドリング性に優れ、輸送コストの低いタフテッドカーペットを提供できる。
【0040】
更に、該バッキング層には、必要に応じて適宜適切な添加剤が添加されていてもよい。該添加剤としては、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤、充填剤、分散剤等が挙げられる。
【0041】
バッキング層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1mm〜5mmであり、より好ましくは1mm〜3mmである。
バッキング層の厚みが上記範囲よりも薄い場合、タフテッドカーペットに十分な重量及び防滑性を与えられないおそれがある。また、バッキング層の厚みが上記範囲よりも厚い場合、タフテッドカーペット全体の重量が増し、施工性が損なわれるだけでなく、コスト的にも不利となる。
【0042】
好ましくは、下地層は、上記二次基布と、バッキング層と、を有する多層構造である。該多層構造の下地層を有するタフテッドカーペットは、機械的強度に優れ、適度な重量と防滑性を有する。
また、下地層は、二次基布及びバッキング層の他にも、任意の層が積層されていてもよい。該任意の層としては、吸音層、滑り止層、断熱層などを例示できる。該吸音層としては、不織布、フェルト、発泡樹脂シート等が挙げられる。該滑り止層としては、吸着樹脂、フェルト、メカニカルエンボス付き樹脂等が挙げられる。該断熱層としては、高発泡樹脂、フェルト、ガラス繊維断熱材等が挙げられる。
フェルトとしては、ガラス繊維、羊毛、綿などの天然繊維、ポリエステル繊維などの合成樹脂繊維を加圧下で揉み固めてシート状に成形したものなどが挙げられる。
【0043】
<保護層>
本発明のタフテッドカーペットは、ステッチ面の上に保護層が積層されていてもよい。保護層は、ステッチ面を保護するために積層される。
保護層は、特に限定されないが、透明樹脂等を用いることが好ましい。該透明樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。保護層は、例えば、樹脂コーティング液をパイル基布のステッチ面に塗布し、これを硬化させることにより形成できる。
【0044】
保護層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm〜2mm、より好ましくは0.2mm〜1mmである。
このような保護層を形成することにより、ステッチ面を汚損や摩耗から保護することができる。また、かかる保護層を有するタフテッドカーペットは、ステッチパイル及び起立パイルが外部に露出しないため、強度や耐摩耗性が高いパイル糸を必ずしも使用する必要がない。従って、低廉でありながら、耐久性の高いタフテッドカーペットを得ることができる。
【0045】
<タフテッドカーペットの製造方法>
本発明のタフテッドカーペットは、タフティングマシンにより作製されたパイル基布に下地層を接着することによって得ることができる。
【0046】
パイル基布は、任意のタフティングマシンを用いて、基布にパイル糸をタフトすることで作製できる。タフティングマシンは、タフト方向と直交する方向に並んだニードルにパイル糸が通されている。そのため、基布にニードルを刺し通すことによって、基布の一面にステッチパイルが形成され、基布の他面にループ状の起立パイルが形成される。
【0047】
パイル糸のタフトは、ニードルシフト法、ジュートムーバー法などの従来公知のタフト方法を採用することができる。
【0048】
起立パイルの長さは、特に限定されないが、好ましくは2mm〜16mmであり、より好ましくは3mm〜13mmであり、さらに好ましくは5mm〜10mmであり、特に好ましくは7mm〜10mmである。起立パイルの下端部には、接着剤層の接着剤が含浸するが、起立パイルの長さが上記範囲であれば、所定厚みのパイル柔軟層を形成できる。
【0049】
次に、下地層の一面に、接着剤を塗布する。下地層が多層構造からなる場合、予め各層を積層し終えた下地層を用いることが好ましい。
接着剤の塗布方法は、特に限定されず、例えば、ローラーコーティング法、ナイフコーティング法、スピンコーティング法等が挙げられる。ナイフコーティング法によれば、より薄厚の接着剤層を作製できる。
【0050】
上記パイル基布の起立パイルの下端部に、下地層の接着剤側を貼り合わせる。
具体的には、接着剤が塗布された下地層の一面を上側にして下地層を置き、その上から起立パイル面を下側にしたパイル基布を、下地層の一面に重ね合わせる。このように貼り合わせることにより、接着剤が起立パイルの中途部にまで含浸することを抑制しつつ、パイル基布と下地層を接着剤層を介して接着することができる。
その後、パイル基布と下地層の積層体を、押圧ローラ間に通して圧着させながら、接着剤層を硬化させることにより、本発明のタフテッドカーペットを得ることができる。
【0051】
本発明のタフテッドカーペットは、ステッチ面を表側にして使用されるので、ステッチパイルの組織模様によってユニークな外観を看者に見せることができる。
また、上記タフテッドカーペットは、接着剤が含浸していないパイル柔軟層を有するので、適度な柔軟性及び腰を有する。
また、起立パイルの下端部が、接着剤によって固定されているため、経年使用による起立パイルの扁平化を防止することができる。
また、上記タフテッドカーペットは、下地層を有するため、施工後、位置ずれや捲れなどの不具合が起きにくくなる。
さらに、下地層を有することによって、起立パイルが施工面に直接当たらないので、起立パイルが摩耗せず、耐久性に優れたタフテッドカーペットを提供できる。
【実施例】
【0052】
本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。本実施例で用いた評価方法及びタフテッドカーペットは、下記の通りである。
【0053】
<柔軟性及び腰の評価方法>
各実施例及び比較例において作製されたタフテッドカーペットを、ステッチ面を表側にして、平坦面上に載置した。このカーペットのステッチ面の複数箇所を指圧し、指に加わる抵抗及び反発力を基準にして、これら複数の箇所での柔軟性、及び腰を総合的に評価した。
【0054】
柔軟性の評価基準は、下記の4段階で行った。
A…柔らかく、適度な弾性がある。
B…比較的硬いが、適度な弾性がある。
C…硬く、弾性は小さいが、実用上問題がない。
D…硬く、弾性がない。
また、腰の評価基準は、下記の4段階で行った。
A…沈み込ませた際に反発が大きく、沈み込みがほとんどない。
B…沈み込ませた際に反発が適度にあり、沈み込みも少ない。
C…沈み込ませた際に反発が小さく、沈み込みが大きいが、実用上問題がない。
D…指圧しても戻りがない。
【0055】
[実施例1−1]
太さ2770dtexのナイロン繊維からなるパイル糸[インビスタジャパン株式会社製]を、厚み470μm、坪量100g/mのポリエステル繊維の不織布からなる基布[日本ルトラビル株式会社製]に、タフティングマシンを用いてタフトした。これによりステッチ面と起立パイル面とを有するパイル基布を作製した。
タフト条件は、ゲージ数を1/4とし、ステッチ数を1/8とし、起立パイルの長さを3mmとした。
なお、起立パイルは、下端部をカットすることなく、ループ状のまま用いた。
【0056】
他方、厚み225μm、坪量30g/mのガラス繊維の不織布からなる基布[オリベスト株式会社製]に、塩化ビニル樹脂ペーストを塗布し、厚み1.3mmの塩化ビニル樹脂バッキング層を形成することにより、2層構造の下地層を作製した。
この下地層の表面(基布の表面)に、粘度が6.5Pa・sである塩化ビニル樹脂ペーストを坪量3000g/m(塗布厚:約2mm)となるように塗布した。
【0057】
この下地層の表面上の塩化ビニル樹脂ペースト(接着剤に相当する)の上に、上記パイル基布の起立パイルの下端部を載せ、パイル基布の上から押圧した。このペーストを硬化させることによって、実施例1−1のタフテッドカーペットを得た。
なお、硬化後の塩化ビニル樹脂ペースト層は、起立パイルの下端部に約1mm含浸していた。従って、起立パイルに接着剤が含浸していない部分の厚みは約2mmであった(パイル柔軟層=約2mm)。
実施例1−1のタフテッドカーペットを、上記柔軟性及び腰の評価方法に則り、評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
[実施例1−2〜1−5]
ステッチ数をそれぞれ1/10、1/15、1/20又は1/22としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にしてタフテッドカーペットを作製し、その柔軟性及び腰を評価した。実施例1−2〜1−5の各カーペットのタフト条件及びその評価結果を表1に示す。
【0059】
[実施例1−6〜1−20]
起立パイルの長さを5mm、7mm又は10mm(従って、パイル柔軟層の厚みは約4mm、6mm又は9mm)とし、ステッチ数をそれぞれ1/8、1/10、1/15、1/20又は1/22としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にしてタフテッドカーペットを作製し、その柔軟性及び腰を評価した。実施例1−6〜1−20の各カーペットのタフト条件及びその評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
[実施例2−1〜2−20]
ゲージ数を1/6としたこと以外は上記実施例1−1〜1−20と同様にしてタフテッドカーペットを作製し、その柔軟性及び腰を評価した。実施例2−1〜2−20の各カーペットのタフト条件及びその評価結果を表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
[実施例3−1〜3−16]
ゲージ数を1/10としたこと以外は上記実施例1−1〜1−4、1−6〜1−9、1−11〜1−14及び1−16〜1−19と同様にして、タフテッドカーペットを作製し、その柔軟性及び腰を評価した。実施例3−1〜3−16の各カーペットのタフト条件及びその評価結果を表3に示す。
【0064】
【表3】

【0065】
[実施例4−1〜4−20]
ゲージ数を1/16としたこと以外は上記実施例1−1〜1−20と同様にしてタフテッドカーペットを作製し、その柔軟性及び腰を評価した。実施例4−1〜4−20の各カーペットのタフト条件及びその評価結果を表4に示す。
【0066】
【表4】

【0067】
[比較例]
接着剤を起立パイル全体に含浸させたこと以外は上記実施例3−10と同様にしてタフテッドカーペットを作製し、その柔軟性及び腰を評価した。その結果、比較例のタフテッドカーペットの柔軟性及び腰の評価は、いずれもDであった。
なお、比較例のパイル基布のタフト条件は、ゲージ数1/10、ステッチ数1/10、起立パイルの長さ7mmである。比較例のタフテッドカーペットは、起立パイル全体に接着剤が含浸しているので、パイル柔軟層の厚みは0mmである。
【0068】
[評価]
比較例のタフテッドカーペットは、パイル柔軟層が設けられていないので、柔軟性及び腰を有しない。
一方、各実施例を検討すると、タフト密度が約80本/in〜250本/inで、且つ、パイル柔軟層の厚みが4mm〜9mmであるタフテッドカーペットは、より適度な柔軟性及び腰を有することが判る。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のタフテッドカーペットの1つの実施形態を示す一部省略断面図。
【図2】本発明のタフテッドカーペットの他の実施形態を示す一部省略断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布にパイル糸をタフトすることにより形成されたパイル基布であって、前記基布の一面にステッチ面が形成され且つ前記基布の他面に複数のパイルが起立したパイル基布を有し、前記ステッチ面を表側にして使用されるタフテッドカーペットにおいて、
前記起立したパイルの下端部に、接着剤層を介して下地層が接着されており、
前記基布と下地層との間には、前記起立したパイルに接着剤が含浸していないパイル柔軟層を有することを特徴とするタフテッドカーペット。
【請求項2】
前記パイル柔軟層の厚みが、1mm〜15mmである請求項1に記載のタフテッドカーペット。
【請求項3】
前記パイル基布のステッチ数が、1/5〜1/25である請求項1又は2に記載のタフテッドカーペット。
【請求項4】
前記パイル基布のゲージ数が、1/3〜1/20である請求項1〜3のいずれかに記載のタフテッドカーペット。
【請求項5】
前記パイル基布のタフト密度が、15本/in〜500本/inである請求項1〜4のいずれかに記載のタフテッドカーペット。

【図1】
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【図2】
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