説明

タムホルダ

【課題】タムの位置を調節可能な範囲を広げることのできるタムホルダを提供することにある。
【解決手段】タムホルダ10は、ホルダ本体11と、ホルダ本体11に対し回動可能に支持される回動部材12と、回動部材12から突出する共にタムTが固定されるロッド14とを備えている。タムホルダ10は、互いに対向する位置に一対の開口を有している。タムホルダ10は、第1の開口からロッド14を突出させた第1の形態と、第2の開口からロッド14を突出させた第2の形態とを取り得るように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器用スタンド等にタムを取り付けるために用いられるタムホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドラムセットでは、バスドラム、スネアドラム、タム及びシンバル等の打楽器が、一人の演奏者によって演奏されるように配置されている。これら打楽器のうちタムは、クランプとタムアダプタとを用いて、シンバルスタンドに支持されることがある。しかしながら、このような支持方法によれば、タムをシンバルスタンドに支持するのに複数の部品を必要とする。このため、費用がかさむといった問題がある。
【0003】
例えば、クランプ及びタムアダプタの機能を兼ね備えたタムホルダが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示のタムホルダ100は、図11に示すように、スリーブ101に一体化されたホルダ102と、ホルダ102により支持されたボール103と、ボール103に固定されてL字状に延びるロッド104とを備えている。ホルダ102は、一対のクランプ片102a,102bにより構成されたクランプ構造を有している。ボール103は、両クランプ片102a,102bによって回動自在に支持されている。ロッド104は、ホルダ102の前面に設けられた開口105から突出されている。タムTは、固定具TAを介して、ロッド104の上方に延びる部分に固定される。この種のタムホルダ100は、スリーブ101を介して、バスドラムB上の支持パイプBPに直接取り付けられる。また、ホルダ102内のボール103を回動させることで、ロッド104に固定されたタムTの位置を調節することもできる。タムホルダ100は、図11に示す使用方法以外に、タムTをシンバルスタンドやタムスタンドの支持パイプに取り付けるために用いることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6346665号明細書
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のタムホルダ100によれば、開口105がホルダ102の前面に一箇所しか設けられていない。また、ロッド104の移動範囲を規定する開口部105の面積は、比較的小さく設定されている。このため、ロッド104の移動範囲が狭く、タムTの位置を調節可能な範囲も狭くなっている。よって、タムTの位置を調節可能な範囲を広げるには、バスドラムやシンバルスタンド等を動かさなければならない。このような作業は、演奏者にとって、手間のかかる面倒な作業である。また、シンバルスタンドを動かした場合、シンバルの位置を再び設定する必要もあり、余分な作業を伴う。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、タムの位置を調節可能な範囲を広げることのできるタムホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、支持パイプにタムを取り付けるために用いられるタムホルダであって、ホルダ本体と、ホルダ本体に対し回動可能に支持される回動部材と、回動部材から突出する共にタムが固定されるロッドとを備え、ホルダ本体には一対の開口が設けられ、一対の開口のそれぞれは対向する位置に一つずつ設けられ、タムホルダは、第1の開口からロッドを突出させた第1の形態と、第2の開口からロッドを突出させた第2の形態とを取り得るように構成されていることを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、開口がクランプの前面に一箇所しか設けられていない従来構成と比較して、ホルダ本体の対向する位置の両方にロッドの移動範囲を確保することができる。即ち、第1の開口からロッドを突出させた第1の形態と、第2の開口からロッドを突出させた第2の形態とを取り得るため、ロッドの移動範囲を広げることができ、タムの位置を調節可能な範囲を広げることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、ホルダ本体は、回動部材を第1締結部材により締め付けて挟持する第1クランプ構造を有し、回動部材は球状に形成され、ホルダ本体は球面に沿って広がる凹部を有し、ホルダ本体の凹部により回動部材が挟持されることを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、ホルダ本体の凹部により回動部材が回転自在に支持されるため、ロッドの移動範囲を一層広げることができ、タムの位置を調節可能な範囲を一層広げることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の発明において、ホルダ本体の回動部材を挟持する部分は開閉可能であり、第1締結部材は、第1ボルトと、第1ボルトの先端に螺合される第1ナットとからなり、第1ボルトは、ホルダ本体の回動部材を挟持する部分の先端に対し回動可能に連結されていることを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、第1ボルトをホルダ本体に対し回動させることで、ホルダ本体の回動部材を挟持する部分を開くことができる。これにより、回動部材をホルダ本体内に取り付けたり、ホルダ本体から回動部材を取り外したりすることが容易に行える。また、ホルダ本体には予めボルトが連結されているため、第1ボルトや第1ナットの紛失を防止することもできる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の発明において、ホルダ本体には、ホルダ本体に対する第1ボルトの回動を規制するための規制手段が設けられていることを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、規制手段により、ホルダ本体に対するボルトの回動が規制されるため、ホルダ本体の回動部材を挟持する部分が勝手に開かないようにすることができる。つまり、第1ボルトに螺合された第1ナットを緩めたときに、回動部材を挟持するホルダ本体の端部が開き、タムが落下してしまうことを防止できる。一方、第1ボルトに螺合された第1ナットを所定量以上緩めることによって、タムホルダの第1の形態から第2の形態への切り替えを容易に行うことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のうちいずれか一項に記載の発明において、ホルダ本体は、更に、支持パイプを第2締結部材により締め付けて挟持する第2クランプ構造を有し、ホルダ本体の支持パイプを挟持する部分は開閉可能であり、第2締結部材は、第2ボルトと、第2ボルトの先端に螺合される第2ナットとからなり、第2ボルトは、ホルダ本体の支持パイプを挟持する部分の先端に対し回動可能に連結されていることを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、タムホルダを、第2ボルト及び第2ナットを用いて、タムスタンドやシンバルスタンド等の支持パイプに取り付けることができる。また、第2ボルトをホルダ本体に対し回動させることにより、ホルダ本体の支持パイプを挟持する部分を開くこともできる。これにより、タムホルダを支持パイプに取り付けたり、支持パイプからタムホルダを取り外したりすることが容易に行える。また、タムホルダを上下反転させてから支持パイプに取り付け直すことを伴う第1の形態から第2の形態への切り替えを容易に行うこともできる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の発明において、ホルダ本体は、回動部材を側方から挟持するように構成され、第1及び第2の開口はホルダ本体の上面又は下面に設けられ、ロッドはU字状に形成され、回動部材は、ロッドを第1及び第2の開口のうちホルダ本体の下面に位置する開口より突出させると共に、ロッドの先端を上方に突出させるように挟持されていることを要旨とする。
【0018】
この構成によれば、ロッドの移動範囲を更に広げることができ、タムの位置を調節できる範囲を更に広げることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の発明において、ロッドは、ホルダ本体に対して第1ナットと反対側に配置されていることを要旨とする。
【0019】
この構成によれば、ロッドがホルダ本体に対して第1ナットと同じ側に配置されている場合とは異なり、第1ナットを緩めたり締め付けたりする際の操作にタムが邪魔にならない。このため、タムの位置を容易に調節することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の発明において、ホルダ本体は、回動部材を上方及び下方から挟持するように構成され、第1及び第2の開口はホルダ本体の左面又は右面に設けられ、ロッドはL字状に形成され、回動部材は、ロッドを第1及び第2の開口のうち一方より突出させると共に、ロッドの先端を上方に突出させるように挟持されていることを要旨とする。
【0021】
この構成によれば、タムスタンドやシンバルスタンド等の支持パイプにタムホルダを取り付けたままの状態で、第1の形態から第2の形態に切り替えることができる。つまり、タムホルダを第1の形態から第2の形態へと切り替えるため、支持パイプからタムホルダを取り外すための作業を省略することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、タムの位置を調節可能な範囲を広げることのできるタムホルダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係るタムホルダの斜視図。
【図2】タムホルダの分解斜視図。
【図3】タムホルダの上断面図。
【図4】タムホルダの第1クランプ構造を拡大して示す部分斜視図。
【図5】(a)はタムホルダの第1の形態を示す斜視図、(b)はタムホルダの第1の形態を示す模式正面図。
【図6】(a)はタムホルダの第2の形態を示す斜視図、(b)はタムホルダの第2の形態を示す模式正面図。
【図7】本発明の第2実施形態に係るタムホルダの斜視図。
【図8】(a)はタムホルダの第1の形態を示す模式正面図、(b)はタムホルダの第2の形態を示す模式正面図。
【図9】別例のロッド及び回動部材を示す模式図。
【図10】(a),(b)は別例の回動部材を示す模式図。
【図11】従来のタムホルダの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明のタムホルダを具体化した第1実施形態について、図1〜図6(b)を参照して説明する。
【0025】
図1に示すように、タムホルダ10は、ホルダ本体11と、ホルダ本体11に対し回動可能に支持される回動部材12と、タムTが固定されるロッド14とを備えている。タムホルダ10は、タムTをシンバルスタンドSの支持パイプSPに取り付けるために用いられる。
【0026】
図2及び図3に示すように、回動部材12は合成樹脂からなり、球状に形成されている。ロッド14は金属からなり、U字状に形成されている。ロッド14は、回動部材12から突出すると共に回動部材12に対し固定されている。ロッド14及び回動部材12は、一部品として構成されると共に、ホルダ本体11に対し組み付けられている。
【0027】
ホルダ本体11は、回動部材12を第1締結部材16により締め付けて挟持する第1クランプ構造と、支持パイプSPを第2締結部材18により締め付けて挟持する第2クランプ構造とを有している。ホルダ本体11は、長尺状のクランプ本体19と、クランプ本体19と共に第1クランプ構造を構成する第1クランプ片20と、クランプ本体19と共に第2クランプ構造を構成する第2クランプ片21とを備えている。
【0028】
クランプ本体19の中央には、ボルト22がその先端を側方に向けて支持されている。ボルト22の先端は、第2クランプ片21の中央を貫通している。ボルト22の先端には、ナット23が螺合されている。ボルト22の軸部には、コイルバネ24が装着されている。第2クランプ片21と対向するクランプ本体19の内面には、断面三角形状の凹部25aが形成されている。第1クランプ片20と対向するクランプ本体19の内面には、球面に沿って広がる凹部26aが形成されている。
【0029】
クランプ本体19の第1端部19aには、支持ピン27を介して、第2ボルト28の基端が回動可能に連結されている。第2ボルト28の先端には、第2ナットとしての蝶ナット29が螺合されている。第2ボルト28の軸部にも、コイルバネ24やワッシャ30等が装着されている。第2ボルト28及び蝶ナット29により、第2締結部材18が構成されている。
【0030】
第2クランプ片21は、クランプ本体19に対し離間可能に取り付けられている。第2クランプ片21は、クランプ本体19と共に、支持パイプSPを側方から支持する。このため、第2クランプ片21の内面には、クランプ本体19と同じく断面三角形状の凹部25bが形成されている。第2クランプ片21の凹部25bとクランプ本体19の凹部25aとの間には、支持パイプSPを配置するための空間が形成される。また、第2クランプ片21の先端には、第2ボルト28の軸部が支持される支持凹部21aが形成されている。
【0031】
クランプ本体19の第2端部19bには、第1締結部材16により、第1クランプ片20が締め付けられる。第1クランプ片20は、クランプ本体19に対し離間可能に取り付けられている。第1クランプ片20は、クランプ本体19と共に、回動部材12を側方から支持する。このため、第1クランプ片20の内面には、クランプ本体19と同じく球面に沿って広がる凹部26bが形成されている。第1クランプ片20の凹部26bとクランプ本体19の凹部26aとの間には、回動部材12を配置するための空間が形成される。
【0032】
第1クランプ片20は、支持ピン31を介して、クランプ本体19に対し回動可能に連結されている。第1クランプ片20の先端には、支持ピン32を介して、第1ボルト33の基端が回動可能に連結されている。第1ボルト33の先端には、第1ナットとしての蝶ナット35が螺合されている。第1ボルト33の軸部には、コイルバネ24やワッシャ30等が装着されている。第1ボルト33及び蝶ナット35により、第1締結部材16が構成されている。
【0033】
図3及び図4に示すように、クランプ本体19の第2端部19bには、第1ボルト33の軸部が支持される支持凹部36が形成されている。また、クランプ本体19の先端には、ワッシャ30と同形状を有する溝37が形成されている。溝37は、支持凹部36と隣接するように形成されている。クランプ本体19の溝37は、蝶ナット35の締め付けによりワッシャ30が嵌入される大きさ及び形状に形成されている。クランプ本体19の溝37及びワッシャ30は、ホルダ本体11に対する第1ボルト33の回動を規制するための規制手段である。即ち、クランプ本体19の溝37及びワッシャ30は、蝶ナット35を緩めたとしても所定量以下であれば、ホルダ本体11に対して第1ボルト33を回動させないように保持することができる。
【0034】
上記のタムホルダ10の作用について図5〜図6(b)を参照して説明する。
図5〜図6(b)に示すように、タムホルダ10は、互いに対向する位置に配置される一対の開口41,42を有している。図5(a),(b)は、第1の開口41をホルダ本体11の下面に配置し、かつ第2の開口42をホルダ本体11の上面に配置した第1の形態のタムホルダ10を示している。第1の開口41は、第1クランプ片20の凹部26bとクランプ本体19の凹部26aとの間の空間において図5(a),(b)に示す下方に開口した部分である。また、第2の開口42は、第1クランプ片20の凹部26bとクランプ本体19の凹部26aとの間の空間において図5(a),(b)に示す上方に開口した部分である。第1の形態では、回動部材12が、ロッド14を第1の開口41より突出させると共にロッド14の先端を上方に突出させた状態で、クランプ本体19と第1クランプ片20とによって挟持されている。また、この場合、ロッド14は、ホルダ本体11に対して蝶ナット35と反対側に配置されている。
【0035】
シンバルスタンドSの支持パイプSPからタムホルダ10を取り外す場合、まず、第2ボルト28に螺合された蝶ナット29を緩めてから、クランプ本体19に対し第2ボルト28を図5(a)に示すA方向に回動させる。次に、第2クランプ片21の基端部を図5(a)に示すP方向に押圧する。これにより、図5(a)の二点鎖線で示すように、第2クランプ片21の先端がクランプ本体19から離間するため、支持パイプSPを締め付けているホルダ本体11の端部が開放される。こうした一連の操作によって、シンバルスタンドSの支持パイプSPからタムホルダ10を取り外すことができる。
【0036】
続いて、タムホルダ10を第1の形態から第2の形態へと切り替える。ここでは、まず、第1ボルト33に螺合された蝶ナット35を緩めてから、第1クランプ片20に対し第1ボルト33を図5(a)に示すB方向に回動させる。次に、図5(a)の二点鎖線で示すように、第1クランプ片20をクランプ本体19に対し回動させて、第1クランプ片20の先端をクランプ本体19から離間させる。これにより、回動部材12を締め付けているホルダ本体11の端部が開放される。そして、ホルダ本体11内で回動部材12を回動させたり、或いは、ホルダ本体11から回動部材12を一旦取り外し、向きを変えてからホルダ本体11内に装着したりすることによって、図5(a)の二点差線で示すように、ロッド14を第2の開口42より突出させると共にロッド14の先端を下方に突出させる。こうして回動部材12の向きを変えた後、開放されたホルダ本体11の端部を閉じ、更に、第1ボルト33をクランプ本体19の支持凹部36に配置してから、第1ボルト33に対し蝶ナット35を締め付ける。これにより、回動部材12は、図5(a)の二点差線に示す状態で、クランプ本体19と第1クランプ片20とによって挟持される。
【0037】
そして、更に、図6(a),(b)に示すように、タムホルダ10を上下反転させてから、シンバルスタンドSの支持パイプSPにタムホルダ10を取り付ける。図6(a),(b)は、第2の開口42をホルダ本体11の下面に配置し、かつ第1の開口41をホルダ本体11の上面に配置した第2の形態のタムホルダ10を示している。また、この場合も、ロッド14は、ホルダ本体11に対して蝶ナット35と反対側に配置されている。尚、支持パイプSPにタムホルダ10を取り付ける際は、支持パイプSPからタムホルダ10を取り外すときと逆の手順が行われる。
【0038】
第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)タムホルダ10は、互いに対向する位置に配置される一対の開口41,42を有している。この構成によれば、ホルダ本体11の対向する位置の両方にロッド14の移動範囲を確保することができる。即ち、第1の開口41からロッド14を突出させた第1の形態と、第2の開口42からロッド14を突出させた第2の形態とを取り得る。このため、開口がクランプの前面に一箇所しか設けられていない従来構成と比較して、ロッド14の移動範囲を広げることができ、タムTの位置を調節可能な範囲を広げることができる。
【0039】
(2)回動部材12は、球状に形成されている。第1クランプ片20と対向するクランプ本体19の内面には、球面に沿って広がる凹部26aが形成されている。また、第1クランプ片20の内面には、球面に沿って広がる凹部26bが形成されている。この構成によれば、クランプ本体19の凹部26aと第1クランプ片20の凹部26bとにより、回動部材12を回転自在に挟持することができる。このため、ロッド14の移動範囲を一層広げることができ、タムTの位置を調節できる範囲を一層広げることができる。
【0040】
(3)ホルダ本体11は、回動部材12を第1締結部材16により締め付けて挟持する第1クランプ構造を有している。第1クランプ片20の先端には、第1締結部材16を構成する第1ボルト33の基端が回動可能に連結されている。この構成によれば、第1ボルト33を第1クランプ片20に対し回動させることで、ホルダ本体11の回動部材12を挟持する部分を開くことができる。これにより、回動部材12をホルダ本体11内に取り付けたり、ホルダ本体11から回動部材12を取り外したりすることが容易に行える。また、ホルダ本体11には予め第1ボルト33が連結されているため、第1ボルト33や蝶ナット35の紛失を防止することもできる。
【0041】
(4)例えば、タムTの位置を調節すべくホルダ本体11内で回動部材12を回動させるために、第1ボルト33に螺合された蝶ナット35を少しだけ緩めることがある。このとき、第1ボルト33がクランプ本体19の支持凹部36から外れて、回動部材12を挟持するホルダ本体11の端部が開いてしまい、タムTの落下を招く虞がある。その点、本発明によれば、クランプ本体19の溝37及びワッシャ30が、ホルダ本体11に対する第1ボルト33の回動を規制するための規制手段として設けられている。この規制手段により、蝶ナット35を緩めたとしても所定量以下であれば、ホルダ本体11に対する第1ボルト33の回動を規制することができる。このため、ホルダ本体11の回動部材12を挟持する部分が勝手に開かないようにすることができる。よって、第1ボルト33に螺合された蝶ナット35を緩めたときに、回動部材12を挟持するホルダ本体11の端部が開き、タムTが落下してしまうことを防止できる。
【0042】
一方、第1ボルト33に螺合された蝶ナット35を所定量以上緩めることによって、ホルダ本体11内で回動部材12をスムーズに回動させたり、或いは、ホルダ本体11から回動部材12を取り外したりすることができる。よって、タムホルダ10を第1の形態から第2の形態へと切り替えるための操作を容易に行うことができる。
【0043】
(5)クランプ本体19の第1端部19aには、第2ボルト28の基端が回動可能に連結されている。ホルダ本体11は、支持パイプSPを第2締結部材18により締め付けて挟持する第2クランプ構造を有している。この構成によれば、タムホルダ10を、第2ボルト28及び蝶ナット29を用いて、シンバルスタンドSの支持パイプSPに取り付けることができる。また、第2ボルト28をホルダ本体11に対し回動させることにより、ホルダ本体11の支持パイプSPを挟持する部分を開くことができる。これにより、タムホルダ10を支持パイプSPに取り付けたり、支持パイプSPからタムホルダ10を取り外したりすることが容易に行える。また、タムホルダ10を上下反転させてから支持パイプSPに取り付け直すことを伴う第1の形態から第2の形態への切り替えを容易に行うこともできる。
【0044】
(6)回動部材12は、ロッド14を第1の開口41より突出させると共にロッド14の先端を上方に突出させた状態で、クランプ本体19と第1クランプ片20とによって挟持されている。この構成によれば、ロッド14の移動範囲を更に広げることができる。よって、タムTの位置を調節できる範囲を更に広げることができる。
【0045】
(7)ロッド14は、ホルダ本体11に対して蝶ナット35と反対側に配置されている。この構成によれば、ロッド14がホルダ本体11に対して蝶ナット35と同じ側に配置されている場合とは異なり、蝶ナット35を緩めたり締め付けたりする際の操作にタムTが邪魔にならない。このため、タムTの位置を容易に調節することができる。
【0046】
(第2実施形態)
以下、本発明のタムホルダ50を具体化して第2実施形態について、図7〜図8(b)を参照して説明する。なお、第2実施形態における第1実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0047】
図7に示すように、ロッド51は、L字状に形成されている。ホルダ本体52は、長尺状のクランプ本体53と、クランプ本体53と共に第1クランプ構造を構成する第1クランプ片54と、クランプ本体53と共に第2クランプ構造を構成する第2クランプ片55とを備えている。第1クランプ片54は、クランプ本体53と共に、回動部材12を上方と下方とから支持する。第1クランプ片54は、支持ピン56を介して、クランプ本体53に対し回動可能に連結されている。
【0048】
上記のタムホルダ50の作用について図7〜図8(b)を参照して説明する。
図8(a),(b)に示すように、タムホルダ50は、互いに対向する位置に配置される一対の開口61,62を有している。図7及び図8(a)は、第1の開口61をホルダ本体52の左面に配置し、かつ第2の開口62をホルダ本体52の右面に配置した第1の形態のタムホルダ50を示している。この場合、回動部材12は、ロッド51を第1の開口61より突出させると共にロッド51の先端を上方に突出させた状態で、クランプ本体53と第1クランプ片54とによって挟持されている。
【0049】
タムホルダ50を第1の形態から第2の形態へと切り替える際、まず、第1ボルト65に螺合された蝶ナット60を緩めてから、クランプ本体53に対し第1ボルト65を図7に示すA方向に回動させる。次に、図7の二点鎖線で示すように、第1クランプ片54をクランプ本体53に対し上方へ回動させることで、第1クランプ構造を有するホルダ本体52の端部が開放される。続いて、図7の二点差線及び図8(b)に示すように、ロッド51を第2の開口62より突出させるため、ロッド51の先端を上方に向けたまま、ホルダ本体52内で回動部材12を回動させる。
【0050】
そして、開放されたホルダ本体52の端部を閉じ、第1ボルト65を第1クランプ片54の支持凹部66に配置してから、第1ボルト65に対し蝶ナット60を締め付ける。これにより、回動部材12は、ロッド51を第2の開口62より突出させると共にロッド51の先端を上方に突出させた状態で、クランプ本体53と第1クランプ片54とによって挟持される。上記の一連の操作によって、タムホルダ50が第1の形態から第2の形態へと切り替えられる。
【0051】
第2実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(8)タムホルダ50は、互いに対向する位置に配置される一対の開口61,62を有している。この構成によれば、第1実施形態と同様に、ホルダ本体52の対向する位置の両方にロッド51の移動範囲を確保することができる。即ち、第1の開口61からロッド51を突出させた第1の形態と、第2の開口62からロッド51を突出させた第2の形態とを取り得る。このため、開口がクランプの前面に一箇所しか設けられていない従来構成と比較して、ロッド51の移動範囲を広げることができ、タムTの位置を調節可能な範囲を広げることができる。また、この構成によれば、支持パイプSPからタムホルダ50を取り外すことなく、タムホルダ50を第1の形態から第2の形態へと切り替えることができる。
【0052】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態において、ロッドは、回動部材に固定されていたが、回動部材に対し抜き差し可能に形成されてもよい。例えば、図9に示すように、ロッド70は、L字状の軸部71と、断面六角形の基端部72とを有している。回動部材73は、第1部材73aと第2部材73bとに分割されている。第1及び第2部材73a,73bのそれぞれには、第1及び第2部材73a,73bの各軸線に沿って延びる溝73cが形成されている。第1及び第2部材73a,73bの各溝73cが対向して配置されることにより、ロッド70の基端部72を挿入可能な断面六角形の孔が形成される。回動部材73は、クランプ構造を有するホルダ本体によって回動可能に保持される。この構成によれば、タムの種類や演奏者の好みに応じて、ロッド70を交換することができる。
【0053】
・上記各実施形態において、球体以外に、図10(a),(b)に示すように、球体の一部を切断した回動部材75,76を用いてもよい。
・第1実施形態において、ロッド14は、ホルダ本体11に対して蝶ナット35と同じ側に配置してもよい。
【0054】
・第2実施形態において、第1ボルト65の回動を規制するための規制手段を、第1クランプ片54の上面に設けてもよい。規制手段は、例えば、第1実施形態と同様に、蝶ナット60と第1クランプ片54との間に介装されるワッシャと、第1クランプ片54の上面に形成されると共にワッシャが嵌入される溝とから構成してもよい。
【0055】
・第1及び第2実施形態において、タムホルダ10,50は、シンバルスタンド以外にも、タムスタンドや、バスドラムの支持パイプ等にタムTを取り付けるために用いてもよい。
【符号の説明】
【0056】
SP…支持パイプ、T…タム、10…タムホルダ、11…ホルダ本体、12…回動部材、14…ロッド、16…第1締結部材、18…第2締結部材、26a,26b…凹部、28…第2ボルト、29…蝶ナット(第2ナット)、30…ワッシャ(規制手段)、33…第1ボルト、35…蝶ナット(第1ナット)、37…溝(規制手段)、41…第1の開口、42…第2の開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持パイプにタムを取り付けるために用いられるタムホルダであって、
ホルダ本体と、
前記ホルダ本体に対し回動可能に支持される回動部材と、
前記回動部材から突出する共に前記タムが固定されるロッドとを備え、
前記ホルダ本体には一対の開口が設けられ、前記一対の開口のそれぞれは対向する位置に一つずつ設けられ、前記タムホルダは、第1の開口から前記ロッドを突出させた第1の形態と、第2の開口から前記ロッドを突出させた第2の形態とを取り得るように構成されていることを特徴とするタムホルダ。
【請求項2】
請求項1記載のタムホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、前記回動部材を第1締結部材により締め付けて挟持する第1クランプ構造を有し、前記回動部材は球状に形成され、前記ホルダ本体は球面に沿って広がる凹部を有し、前記ホルダ本体の凹部により前記回動部材が挟持されることを特徴とするタムホルダ。
【請求項3】
請求項2記載のタムホルダにおいて、
前記ホルダ本体の回動部材を挟持する部分は開閉可能であり、前記第1締結部材は、第1ボルトと、前記第1ボルトの先端に螺合される第1ナットとからなり、前記第1ボルトは、前記ホルダ本体の回動部材を挟持する部分の先端に対し回動可能に連結されていることを特徴とするタムホルダ。
【請求項4】
請求項3記載のタムホルダにおいて、
前記ホルダ本体には、前記ホルダ本体に対する前記第1ボルトの回動を規制するための規制手段が設けられていることを特徴とするタムホルダ。
【請求項5】
請求項2〜4のうちいずれか一項に記載のタムホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、更に、前記支持パイプを第2締結部材により締め付けて挟持する第2クランプ構造を有し、前記ホルダ本体の支持パイプを挟持する部分は開閉可能であり、前記第2締結部材は、第2ボルトと、前記第2ボルトの先端に螺合される第2ナットとからなり、前記第2ボルトは、前記ホルダ本体の支持パイプを挟持する部分の先端に対し回動可能に連結されていることを特徴とするタムホルダ。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のタムホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、前記回動部材を側方から挟持するように構成され、前記第1及び第2の開口は前記ホルダ本体の上面又は下面に設けられ、前記ロッドはU字状に形成され、前記回動部材は、前記ロッドを前記第1及び第2の開口のうち前記ホルダ本体の下面に位置する開口より突出させると共に、前記ロッドの先端を上方に突出させるように挟持されていることを特徴とするタムホルダ。
【請求項7】
請求項6記載のタムホルダにおいて、
前記ロッドは、前記ホルダ本体に対して前記第1ナットと反対側に配置されていることを特徴とするタムホルダ。
【請求項8】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のタムホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、前記回動部材を上方及び下方から挟持するように構成され、前記第1及び第2の開口は前記ホルダ本体の左面又は右面に設けられ、前記ロッドはL字状に形成され、前記回動部材は、前記ロッドを前記第1及び第2の開口のうち一方より突出させると共に、前記ロッドの先端を上方に突出させるように挟持されていることを特徴とするタムホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−108228(P2012−108228A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255663(P2010−255663)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000195018)星野楽器株式会社 (13)
【Fターム(参考)】