説明

タンクの殺菌構造、及び空調給湯システム

【課題】液体を所定の沸き上げ温度に維持しながら貯液できるタンクに組み込まれ、紫外線を利用して確実に殺菌できるタンクの殺菌構造、及び空調給湯システムを提供することを課題とする。
【解決手段】貯湯タンク9の内部に、上部から下部に向かって伸びるように備わる長尺の紫外線殺菌灯92と、湯水を紫外線殺菌灯92を中心に旋回させながら紫外線殺菌灯92の側面92aに沿って流すための流路93aと、紫外線殺菌灯92の先端部92bより下部に形成されて流路93aと連通する滞留領域9Cとを有する。そして、流路93aを流れる湯水が、紫外線殺菌灯92の側面92aから照射される紫外線に露光し、滞留領域9Cにある湯水が、紫外線殺菌灯92の先端部92bから照射される紫外線に露光するタンクの殺菌構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱した湯水を貯湯する貯湯タンクの殺菌構造と、その殺菌構造が組み込まれた貯湯タンクを備える空調給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、利用者の居住空間を冷暖房する機能及び利用者に湯水を給湯する機能を有する空調給湯システムに備わって熱源によって加熱された湯水を貯湯する貯湯タンクに、摂氏45〜60℃の湯水が貯湯されると、レジオネラ菌や大腸菌などの雑菌が繁殖しやすくなる。
そのため、貯湯タンクに殺菌構造を備えて、繁殖する雑菌を殺菌することは広く実施されている。そして、貯湯タンクに備わる殺菌構造としては、加熱器によって湯水を加熱殺菌する殺菌構造が主流になっている。
しかしながら、加熱殺菌する殺菌構造には、加熱器として電気ヒータが用いられることから、消費電力が大きい、貯湯タンク全体の殺菌に時間がかかる、という問題がある。
【0003】
一方、冷水の殺菌には、紫外線を利用した殺菌が広く実施されている。そこで、貯湯タンクに貯湯される湯水を紫外線で殺菌する殺菌構造が考えられている。
例えば、湯水に繁殖する代表的な雑菌のレジオネラ菌を紫外線で殺菌する場合、99.9%のレジオネラ菌を殺菌するためには、1平方センチメートルあたり3.0mW・sec以上の紫外線照射量が必要になることがわかっている。
【0004】
したがって、大量の湯水が貯湯される貯湯タンクを紫外線で殺菌する場合、大出力の紫外線灯が必要になり、消費電力の増大、殺菌装置の大型化、紫外線の発熱や防爆管理の困難さ、などの問題が発生する。
【0005】
この問題を解決するため、例えば、特許文献1には、紫外線を液体の殺菌処理に有効に照射できる殺菌装置が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示される技術を貯湯タンクの殺菌に利用する場合、貯湯タンクと殺菌装置の接続部での放熱によって、接続部で湯水の温度が低下するという問題がある。
また、殺菌装置の内部に滞留する湯水の温度維持ができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−242286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、液体を所定の沸き上げ温度に維持しながら貯液できるタンクに組み込まれ、紫外線を利用して確実に殺菌できるタンクの殺菌構造、及び空調給湯システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、液体がタンクから取り出されるときに流れる流路及び流路を流れる前に液体が滞留する領域で、液体が紫外線に露光するタンクの殺菌構造とする。
また、そのタンクの殺菌構造が組み込まれたタンクを備える空調給湯システムとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、液体を所定の沸き上げ温度に維持しながら貯液できるタンクに組み込まれ、紫外線を利用して確実に殺菌できるタンクの殺菌構造、及び空調給湯システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】空調給湯システムの一構成例を示す図である。
【図2】貯湯タンクの内部構造を示す断面図である。
【図3】(a)は、湯水が流路を流れる状態を示す断面図、(b)は、湯水が滞留領域で対流する状態を示す断面図である。
【図4】(a)、(b)は、流路の別の形態を示す図である。
【図5】流路の入口部に備わる流量調節弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係るタンクの殺菌構造は、例えば図1に示す空調給湯システム100に備わる貯湯タンク9に組み込まれている。
空調給湯システム100は、湯水(液体)を沸き上げる熱源としてのヒートポンプユニット30、沸き上がった高温の湯水を貯湯(貯液)する貯湯ユニット40(貯液ユニット)、利用者の居住空間を冷暖房する空調ユニット60、及び運転制御装置50を備えて構成される。
以下の説明において、「高温」は沸き上げ温度を示し、「低温」は沸き上げ温度より低温を示す。そして、沸き上げ温度は、例えば、空調給湯システム100の仕様として予め設定されている温度とする。
なお、空調給湯システム100は、水道水などの水をヒートポンプユニット30等の熱源で沸き上げたお湯(湯水)を貯湯ユニット40の貯湯タンク9に貯湯する装置であるが、水以外の液体を熱源で沸き上げてタンクにためる装置にも本実施形態を適用できる。
すなわち、湯水は液体の一例であり、貯湯ユニット40及び貯湯タンク9は、それぞれ貯液ユニット及び貯液タンクの一例である。
【0012】
ヒートポンプユニット30は、圧縮機1、加熱冷媒熱交換器10、冷暖房用熱交換器61、膨張弁3(膨張機構)、及び空気熱交換器2(蒸発器ともいう)が冷媒管30aで接続されて備わり、封入された冷媒(二酸化炭素など)が循環するように構成される第1ユニットと、圧縮機201、冷暖房用熱交換器61、膨張弁203(膨張機構)、及び空気熱交換器202が冷媒管30bで接続されて備わり、封入された冷媒が循環するように構成される第2ユニットを含んでいる。
加熱冷媒熱交換器10は貯湯ユニット40の貯湯タンク9内に備わり、冷媒管10aを流れる高温の冷媒と、貯湯タンク9内に滞留している低温の水との間で熱交換が行われるように構成されている。
冷暖房用熱交換器61は加熱冷媒熱交換器10と並列に配置されて空調ユニット60に備わり、冷媒管61aを流れる冷媒と、冷暖房機63に供給される水(以下、冷暖房用水と称する)との間で熱交換が行われるように構成されている。
なお、第1ユニットには、加熱冷媒熱交換器10の冷媒管10aの冷媒の流れを遮断する遮断弁66が備わっている。
遮断弁66は運転制御装置50によって開閉が制御され、遮断弁66が閉弁すると、冷媒管10aの冷媒の流れが遮断される。
【0013】
また、第1ユニットには、空気熱交換器2を流通する冷媒を冷却する外気を取り込む送風ファン4a、及び送風ファン4aを駆動するファンモータ4が備わり、第2ユニットには、空気熱交換器202を流通する冷媒を冷却する外気を取り込む送風ファン204a、及び送風ファン204aを駆動するファンモータ204が備わっている。
空気熱交換器2は、ファンモータ4で回転駆動する送風ファン4aで外気を取り込み、外気と冷媒の間で熱交換する。
同様に、空気熱交換器202は、ファンモータ204で回転駆動する送風ファン204aで外気を取り込み、外気と冷媒の間で熱交換する。
【0014】
第1ユニットに備わる圧縮機1は容量制御が可能であり、例えば、多量の湯水を沸き上げる場合には大きな容量で運転される。
圧縮機1は、PWM(Pulse Width Modulation)制御、電圧制御(例えば、PAM(Pulse Amplitude Modulation)制御)、及びこれらの組み合わせによる制御によって、低速(例えば、700rpm)から高速(例えば、7000rpm)の間で回転速度が制御できるように構成されている。
【0015】
また、圧縮機1で圧縮された冷媒は、四方弁5によって流れる方向が切り替えられる。
四方弁5は運転制御装置50によって制御され、圧縮機1で圧縮された冷媒が加熱冷媒熱交換器10または冷暖房用熱交換器61に流れるとともに、空気熱交換器2で冷却された冷媒が圧縮機1に流れる状態(以下、第1状態と称する)と、圧縮機1で圧縮された冷媒が空気熱交換器2に流れるとともに、冷暖房用熱交換器61で気化した冷媒が圧縮機1に流れる状態(以下、第2状態と称する)が選択的に切り替わる。
【0016】
同様に、第2ユニットに備わる圧縮機201は容量制御が可能であり、例えば、冷暖房機63を高い冷暖房能力で運転するときには、大きな容量で運転される。
そして、第2ユニットの圧縮機201で圧縮された冷媒は、四方弁205によって流れる方向が切り替えられる。
第2ユニットの四方弁205は運転制御装置50によって制御され、圧縮機201で圧縮された冷媒が冷暖房用熱交換器61に流れるとともに、空気熱交換器202で冷却された冷媒が圧縮機201に流れる第1状態と、圧縮機201で圧縮された冷媒が空気熱交換器202に流れるとともに、冷暖房用熱交換器61で気化した冷媒が圧縮機201に流れる第2状態が選択的に切り替わる。
因みに、図1の四方弁5は第1状態を示し、四方弁205は第2状態を示している。
【0017】
第1ユニットの膨張弁3には、開度調整の応答速度が速い電動膨張弁が使用され、加熱冷媒熱交換器10から導入される冷媒を減圧して蒸発しやすい状態にする。
また、膨張弁3は、弁開度の調節によって、冷媒管30aを流れる冷媒の流量を調節できる。
例えば、空気熱交換器2に着霜した場合に膨張弁3の弁開度が大きくなると、中温冷媒を大量に空気熱交換器2へ送り込むことができ、空気熱交換器2を除霜できる。
同様に、第2ユニットの膨張弁203にも開度調整の応答速度が速い電動膨張弁が使用され、冷媒管30bを流れる冷媒の流量を調節できる。
膨張弁3、及び膨張弁203の弁開度は、運転制御装置50によってそれぞれ単独に制御される。
【0018】
貯湯ユニット40には、給水金具6、減圧弁7、給水水量センサ8、貯湯タンク9(タンク)、湯水混合弁11、及び出湯金具12が、この順に水配管40aを介して接続されている。
【0019】
貯湯タンク9は、貯湯運転によって加熱された高温の湯水(液体)を貯湯するためのタンクであり、上部には、水配管40a、湯水混合弁11、及び出湯金具12を介して台所蛇口等の給湯栓13が給湯端末として接続される。
なお、給湯端末は給湯栓13のほか、例えば浴室に備わる図示しない蛇口や図示しないシャワーヘッドであってもよい。
【0020】
また、貯湯タンク9の下部には、水配管40a、給水金具6、減圧弁7、給水水量センサ8を介して図示しない水道などの給水源が接続される。給水金具6は、図示しない給水源に接続され、低温の水が図示しない給水源から貯湯タンク9の下部に給水される。
さらに、貯湯タンク9には、貯湯される湯水の温度を計測するための複数のタンクサーミスタ9aが備わっている。
【0021】
なお、貯湯運転は、低温の湯水をヒートポンプユニット30で沸き上げ、高温の湯水として貯湯タンク9に貯湯する運転を示す。
そして、貯湯運転していないときに利用者に湯水を給湯する運転を給湯運転と称する。
【0022】
減圧弁7は、図示しない給水源から供給される低温の水を減圧して、貯湯ユニット40に流通させる機能を有し、給水水量センサ8は、図示しない給水源から供給される低温の水の流量を検出する機能を有する。
【0023】
湯水混合弁11は、貯湯タンク9から取り出された高温の湯水に、図示しない給水源から供給される低温の水を混合する機能を有する。
湯水混合弁11は、弁開度の調節によって、貯湯タンク9から取り出された高温の湯水に混合する低温の水の流量を調節し、給湯栓13から利用者に供給される湯水の温度(以下、給湯温度と称する)を調節する。
湯水混合弁11の弁開度は、運転制御装置50によって制御される。
【0024】
空調ユニット60は、利用者の居住空間に備わる冷暖房機63に供給される冷暖房用水と冷媒が熱交換する冷暖房用熱交換器61、冷暖房用水が循環するための冷暖房水管60a、及び冷暖房用水を冷暖房水管60aに循環させるためのポンプ62を含んで構成される。
冷暖房用熱交換器61には、冷媒が流れる冷媒管61aと冷暖房用水が流れる水配管61bが備わり、冷媒管61aを流れる冷媒と水配管61bを流れる冷暖房用水の間で熱交換が行われる。
【0025】
冷暖房用熱交換器61に高温の冷媒が流れると、冷暖房機63には加熱された冷暖房用水が供給されて居住空間を暖房することができ、冷暖房用熱交換器61に低温の冷媒が流れると、冷暖房機63には冷却された冷暖房用水が供給されて冷暖房機63は居住空間を暖房できる。
冷暖房用熱交換器61に高温の冷媒が流れて冷暖房機63が居住空間を暖房する空調給湯システム100の運転を暖房運転と称し、冷暖房用熱交換器61に低温の冷媒が流れて冷暖房機63が居住空間を冷房する空調給湯システム100の運転を冷房運転と称する。
【0026】
なお、冷暖房用熱交換器61には2系統の冷媒管61aが備わり、1つの系統の冷媒管61aは第1ユニットと冷媒管30aを介して接続され、他の1つの系統の冷媒管61aは第2ユニットと冷媒管30bを介して接続される。
また、第1ユニットと接続される冷媒管61aには、遮断弁65が備わっている。
遮断弁65は運転制御装置50によって開閉が制御され、遮断弁65が閉弁すると、第1ユニットに接続される冷媒管61aの冷媒の流れが遮断される。
【0027】
運転制御装置50は、圧縮機1,201の回転速度、膨張弁3,203の弁開度、ファンモータ4,204の運転・停止、四方弁5,205の状態、湯水混合弁11の弁開度、遮断弁65の開閉、及び遮断弁66の開閉をそれぞれ制御して、空調給湯システム100の冷房運転、暖房運転、貯湯運転、及び給湯運転を制御する。
また、運転制御装置50には、利用者が給湯温度を設定するための図示しない温度調節機能が備わり、利用者が給湯温度を設定可能に構成される。
【0028】
以上のように構成される空調給湯システム100を給湯運転する場合、運転制御装置50は、予め設定される給湯温度に応じて湯水混合弁11の弁開度を調節する。
利用者が給湯栓13を開くと、図示しない給水源の水圧によって、貯湯タンク9の上部に滞留している高温の湯水が貯湯タンク9の上部から湯水混合弁11に向かって押し出される。
貯湯タンク9から押し出された高温の湯水は湯水混合弁11に流れ込み、図示しない給水源から供給される低温の水と混合する。
【0029】
湯水混合弁11の弁開度は給湯温度に応じて設定されていることから、湯水混合弁11で低温の水と混合した高温の湯水は、給湯温度の湯水となって給湯栓13から利用者に給湯される。
【0030】
一方、貯湯タンク9の下部には、押し出された高温の湯水の量に相当する量の低温の水が、図示しない給水源から給水(補給)される。
貯湯タンク9の上部に滞留する高温の湯水と貯湯タンク9の下部に補給される低温の水の間には境界層が形成され、高温の湯水と低温の水は混合することなく分離した状態になる。そして、貯湯タンク9の内部は境界層より上部が高温で下部が低温の状態になる。
このように、給湯栓13から給湯温度の湯水が利用者に給湯されるように、運転制御装置50は空調給湯システム100を給湯運転する。
【0031】
また、空調給湯システム100を貯湯運転する場合、運転制御装置50は、開始時には徐々に第1ユニットの圧縮機1の回転速度を上昇させ、加熱立ち上げ時間を早めるために所定の高速回転速度(例えば、7000rpm)で運転する。そして、運転制御装置50は、加熱安定後に圧縮機1の回転速度を下げて中速回転速度で運転するとともに、熱負荷に応じて加熱温度に見合った回転速度で圧縮機1を運転する。
【0032】
貯湯タンク9の下部に滞留している低温の水は、加熱冷媒熱交換器10の冷媒管10aを流通する高温の冷媒によって沸き上げ温度まで加熱され、対流によって上部に向かって移動し、貯湯タンク9の上部に貯湯される。
【0033】
前記したように、貯湯タンク9には、貯湯される湯水の温度を計測してその計測信号(湯水温計測信号)を運転制御装置50に入力する複数(図1には5つを例示)のタンクサーミスタ9aが備えられている。
複数のタンクサーミスタ9aは、例えば、貯湯タンク9の上部から下部に向かって上下に配設され、貯湯タンク9の上部に高温の湯水が溜まり下部に低温の水が溜まっている状態のとき、高温の湯水と低温の水の境界層より上部に配置されるタンクサーミスタ9aは高温の湯水の温度を計測し、境界層より下部に配置されるタンクサーミスタ9aは低温の水の温度を計測する。
【0034】
例えば、図1に示すように、5台のタンクサーミスタ9a1〜9a5がこの順に貯湯タンク9の上部から配設され、高温の湯水と低温の水の境界層が、タンクサーミスタ9a3とタンクサーミスタ9a4の間に形成される場合、タンクサーミスタ9a1〜9a3は高温の湯水の温度を計測し、タンクサーミスタ9a4,9a5は低温の水の温度を計測する。
【0035】
したがって、運転制御装置50は、タンクサーミスタ9a1〜9a3が計測する温度が所定の沸き上げ温度であり、タンクサーミスタ9a4,9a5が計測する温度が所定の沸き上げ温度より低温の場合、タンクサーミスタ9a1〜9a3が配設される位置に高温の湯水が滞留し、タンクサーミスタ9a4,9a5が配設される位置に低温の水が滞留していることを検知できる。
このようにして、運転制御装置50は、貯湯タンク9に溜まる高温の湯水の量、すなわち貯湯量を検知できる。
なお、タンクサーミスタ9aの数は5台に限定されるものではない。
【0036】
そして、空調給湯システム100の運転制御装置50は、23時から翌朝7時など安価な夜間割引電気料金が適用される時間帯(以下、指定時間帯と称する)に貯湯運転するように予め設定され、指定時間帯になると空調給湯システム100を貯湯運転して、高温の湯水を貯湯タンク9に貯湯する。
なお、23時から翌朝7時は指定時間帯の一例であり、指定時間帯をこの時間帯に限定するものではない。
【0037】
運転制御装置50は、空調給湯システム100を貯湯運転するとき、第1ユニットの四方弁5を第1状態に切換え、遮断弁66を開弁するとともに遮断弁65を閉弁する。
そして、圧縮機1を駆動して冷媒を高温高圧の状態にし、加熱冷媒熱交換器10の冷媒管10aに流通させる。
冷媒管10aを流れ、貯湯タンク9内の湯水と熱交換して温度が低下した冷媒は、膨張弁3で減圧した後、空気熱交換器2を流れるときに送風ファン4aによって取り込まれる外気によって冷却され、圧縮機1で圧縮される。
このように、空調給湯システム100が貯湯運転するとき、冷媒は圧縮膨張を繰り返しながらヒートポンプユニット30の第1ユニットの冷媒管30aを循環する。
【0038】
そして冷媒は、加熱冷媒熱交換器10の冷媒管10aを流れるときに貯湯タンク9内の湯水と熱交換して貯湯タンク9内の湯水を加熱する。
冷媒との熱交換によって加熱された高温の湯水は、対流によって貯湯タンク9の上部に移動して滞留するため、運転制御装置50は、最も下部に配置されるタンクサーミスタ9a5が計測する温度が所定の沸き上げ温度になったときに貯湯タンク9に高温の湯水が満たされたと判定できる。
したがって、運転制御装置50は、最も下部に配置されるタンクサーミスタ9a5が計測する温度が所定の沸き上げ温度になったときに貯湯運転を停止するように構成される。
このように、指定時間帯になると、運転制御装置50は貯湯タンク9が高温の湯水で満たされるように空調給湯システム100を貯湯運転する。
【0039】
空調給湯システム100の貯湯運転と冷房運転を同時にする場合、運転制御装置50は、第1ユニットで貯湯運転をするとともに、第2ユニットの四方弁205を第2状態に切り替え、第2ユニットの圧縮機201を駆動する。
圧縮機201で圧縮されて高温となった冷媒は、空気熱交換器202を流れるときに送風ファン204aで取り込まれる外気で冷却されて凝縮し、膨張弁203で断熱膨張して低温になる。そして、低温になった冷媒が冷暖房用熱交換器61の冷媒管61aを流れるときに気化しながら水配管61bを流れる冷暖房用水を冷却して、冷暖房機63に冷却された冷暖房用水が供給される。
この場合、冷媒は、空気熱交換器202で凝縮し冷暖房用熱交換器61で気化(蒸発)する。したがって、空気熱交換器202は凝縮器として機能し、冷暖房用熱交換器61は蒸発器として機能する。
【0040】
空調給湯システム100の貯湯運転と暖房運転を同時にする場合、運転制御装置50は、第1ユニットで貯湯運転をするとともに、第2ユニットの四方弁205を第1状態に切り替え、第2ユニットの圧縮機201を駆動する。
圧縮機201で圧縮されて高温となった冷媒は、冷暖房用熱交換器61の冷媒管61aを流れるときに水配管61bを流れる冷暖房用水を加熱して、冷暖房機63に加熱された冷暖房用水が供給される。
この場合、冷媒は、冷暖房用熱交換器61で凝縮し空気熱交換器202で気化(蒸発)する。したがって、冷暖房用熱交換器61は凝縮器として機能し、空気熱交換器202は蒸発器として機能する。
【0041】
また、空調給湯システム100を冷房運転のみする場合(給湯運転と冷房運転を同時にする場合)、運転制御装置50は、遮断弁66を閉弁するとともに遮断弁65を開弁する。そして、運転制御装置50は、第1ユニットの四方弁5と第2ユニットの四方弁205をともに第2状態に切り替え、第1ユニットの圧縮機1と第2ユニットの圧縮機201を駆動する。
冷暖房用熱交換器61の水配管61bを流れる冷暖房用水は、第1ユニット及び第2ユニットで低温になって冷媒管61aを流れる冷媒で冷却され、冷暖房機63に冷却された冷暖房用水が供給される。
【0042】
さらに、空調給湯システム100を暖房運転のみする場合(給湯運転と暖房運転を同時にする場合)、運転制御装置50は、遮断弁66を閉弁するとともに遮断弁65を開弁する。そして、運転制御装置50は、第1ユニットの四方弁5と第2ユニットの四方弁205をともに第1状態に切り替え、第1ユニットの圧縮機1と第2ユニットの圧縮機201を駆動する。
冷暖房用熱交換器61の水配管61bを流れる冷暖房用水は、第1ユニット及び第2ユニットで高温になって冷媒管61aを流れる冷媒で加熱され、冷暖房機63に加熱された冷暖房用水が供給される。
【0043】
このように構成される空調給湯システム100で利用者が設定できる給湯温度の範囲は摂氏45〜60℃程度であり、図示しない給水源から供給される低温の水と貯湯タンク9から取り出される高温の湯水が湯水混合弁11で混合して利用者が設定する給湯温度に調節される。
このため、貯湯タンク9には、例えば60℃など、給湯温度の上限値に近い温度の湯水が貯湯されることになり、レジオネラ菌や大腸菌などの雑菌が繁殖しやすい環境となっている。
そこで、レジオネラ菌などの雑菌を殺菌することが必要になり、貯湯タンク9には殺菌構造が必要になる。
そして、本実施形態に係る空調給湯システム100の貯湯タンク9には、紫外線を利用した殺菌構造が組み込まれる。
【0044】
図2に示すように、貯湯タンク9の下部には、低温の水を取り込むための入水口90と加熱冷媒熱交換器10が備わり、入水口90を介して貯湯タンク9に給水される低温の水は、加熱冷媒熱交換器10の冷媒管10aを流通する冷媒と熱交換して加熱される。
また、貯湯タンク9の上部には貯湯される湯水を取り出すための出湯口91が備わっている。
【0045】
そして、貯湯タンク9の上部を閉塞する上蓋部9Tには、貯湯タンク9の下部を閉塞する底床部9Bに向かって伸びるように、長尺の紫外線殺菌灯92(紫外線照射手段)が配設されている。
例えば、貯湯タンク9が円筒形状の場合、紫外線殺菌灯92は、貯湯タンク9の上蓋部9T(円形状)の中心に備わることが好適である。
【0046】
紫外線殺菌灯92は、長尺の側面92a及び先端部92bが紫外線を照射する照射面を形成し、先端部92bから貯湯タンク9の底床部9Bに向かって紫外線を照射し、側面92aから側壁面9Sに向かって紫外線を照射するように構成される。
【0047】
また、紫外線殺菌灯92の側面92aの周囲には、貯湯タンク9の側壁面9Sに向かって広がる螺旋板93が備わっている。
螺旋板93は、紫外線殺菌灯92を中心とする径方向に側面92aから広がり、紫外線殺菌灯92の軸方向に沿って螺旋状にねじれて形成され、紫外線殺菌灯92の側面92aに沿って貯湯タンク9の下部から上部に向かう螺旋状の流路93aを形成する。そして、流路93aは上部で出湯口91と連通する。
【0048】
このように形成される流路93aを流れる湯水は、紫外線殺菌灯92を中心に旋回しながら紫外線殺菌灯92の側面92aに沿って上部に向かって流れ、紫外線殺菌灯92の側面92aから照射される紫外線に露光して、湯水に含まれるレジオネラ菌等の雑菌が紫外線によって殺菌される。
流路93aは紫外線殺菌灯92の周囲に螺旋状に形成され、湯水が出湯口91まで流れる経路の長さ(経路長)を、螺旋板93が備わらない場合に比べて長くできる。
そして、湯水が出湯口91まで流れる経路長が長くなると、紫外線殺菌灯92の側面92aから照射される紫外線に湯水が露光する時間が長くなり、紫外線による湯水の殺菌効果が向上する。
【0049】
前記したように、レジオネラ菌を紫外線で殺菌する場合、1平方センチメートル当たり3.0mW・sec以上の紫外線照射量が必要になる。
そこで、紫外線殺菌灯92の側面92aから照射される紫外線の照射量で、流路93aを流れる湯水のレジオネラ菌を殺菌できるように流路93aの形状を設定することが好適である。
【0050】
例えば、図示しない給水源の水圧、入水口90及び出湯口91の径などから、流路93aを流れる湯水の流速が決定できる。
流路93aを流れる湯水の流速が速い場合、流路93aの経路長を長くして湯水が紫外線に露光する時間を長くすることが好適である。
そこで、流路93aを流れる湯水の流速が速い場合は、例えば螺旋板93の螺旋の傾斜を小さくして流路93aの経路長を長くする。
また、流路93aを流れる湯水の流速が遅い場合、流路93aの経路長が短く湯水が紫外線に露光する時間が短くても好適な殺菌効果を得ることができる。
そこで、流路93aを流れる湯水の流速が遅い場合は、例えば螺旋板93の螺旋の傾斜を大きくして流路93aの経路長を短くする。
【0051】
また、流路93aを流れる湯水の紫外線の露光量は、紫外線殺菌灯92から離れるほど減少する。
そこで、最も紫外線殺菌灯92から離れた位置を流れる湯水に、所定量の紫外線が露光するように紫外線殺菌灯92の紫外線の照射量を設定することが好適である。
このような、螺旋板93の傾斜及び紫外線殺菌灯92の照射量は、実験等に基づいて設定することができる。
そして、紫外線殺菌灯92及び螺旋板93を含んで殺菌構造が構成される。
【0052】
また、紫外線殺菌灯92の先端部92bの下部、すなわち、先端部92bと底床部9Bの間には、湯水を滞留させるための滞留領域9Cが形成される。
滞留領域9Cと流路93aの境界には入口部93bが開口し、滞留領域9Cと流路93aは連通する。この構成によって、滞留領域9Cに滞留する湯水は、必要に応じて流路93aを流れて出湯口91から貯湯タンク9の外部に取り出される。
さらに、滞留領域9Cには加熱冷媒熱交換器10の冷媒管10aが配設され、冷媒管10aを流れる高温の冷媒で湯水が加熱されると対流が発生する。
そして、紫外線殺菌灯92の先端部92bが滞留領域9Cに突出している構成が好適である。
【0053】
図2に示す紫外線殺菌灯92及び螺旋板93を含んで構成される殺菌構造は、紫外線殺菌灯92の周囲に螺旋状の流路93aを形成することによって、湯水が出湯口91まで流れる経路長を長くすることができ、湯水が紫外線に露光する露光量を多くすることができる。
また、湯水が流路93aを流れる前に滞留領域9Cにあるとき、紫外線殺菌灯92の先端部92bから照射される紫外線に湯水が露光することで湯水に含まれる雑菌の一部を殺菌することができ、流路93aを流れる湯水に含まれる雑菌の数を減らすことができる。
このように、湯水が滞留領域9Cにあるときに、紫外線殺菌灯92の先端部92bから照射される紫外線に露光することによる殺菌を予備殺菌と称する。
【0054】
なお、貯湯される湯水を加熱殺菌するための補助加熱器20が、殺菌構造として貯湯タンク9に備わる構成であってもよい。補助加熱器20は例えば電気ヒータであり、運転制御装置50(図1参照)からの制御信号によって運転が制御される。
運転制御装置50は、例えば、定期的に補助加熱器20を運転して貯湯タンク9に貯湯される湯水の温度を、雑菌が死滅する温度(約70℃)まで上昇させ、湯水に含まれる雑菌を加熱殺菌する。
しかしながら、補助加熱器20による殺菌は消費電力が大きく、空調給湯システム100の運用コストが高くなる。
そこで、図2に示す紫外線殺菌灯92及び螺旋板93を含んで構成される殺菌構造を併用することで、運用コストが高くなることを抑えながら湯水に対する殺菌効果を向上できる。
【0055】
給湯栓13(図1参照)から湯水が給湯される場合、図3の(a)に示すように、貯湯タンク9に貯湯される湯水HWは、図示しない給水源から入水口90を介して給水される低温の水の圧力によって上部に向かって押され、螺旋状の流路93aを流れて出湯口91から水配管40aに押し出される。
このとき湯水HWは、紫外線殺菌灯92の側面92a(図2参照)に沿って流路93aを流れるため、側面92aから照射される紫外線UVに露光し、湯水HWに含まれるレジオネラ菌などの雑菌が殺菌される。
【0056】
また、紫外線殺菌灯92の先端部92b(図2参照)が滞留領域9Cに突出していることから、滞留領域9Cにある湯水HWは、先端部92bから照射される紫外線に露光する。
したがって湯水HWは、流路93aを流れる前に滞留領域9Cにあるときに、先端部92bから下部に向かって照射される紫外線UVで予備殺菌される。この構成によって、流路93aを流れる前にレジオネラ菌等の雑菌の一部が殺菌され、湯水WHに含まれる雑菌の量が減少する。
【0057】
このように、湯水HWが給湯栓13(図1参照)から利用者に給湯される場合、貯湯タンク9内の湯水HWは、流路93aを流れる前に滞留領域9Cにあるときに、紫外線殺菌灯92の先端部92bから下部に向かって照射される紫外線UVによって雑菌の一部が殺菌され(予備殺菌)、さらに、流路93aを流れるときに、長時間に亘って紫外線殺菌灯92の側面92aから照射される紫外線UVに露光することになる。
つまり、本実施形態に係る殺菌構造は、予備殺菌によって雑菌の数が減った状態の湯水HWを流路93aに流し、長時間に亘って紫外線UVに露光させることができる。
したがって、大出力の紫外線殺菌灯92を必要とすることなく、湯水HWに含まれるレジオネラ菌等の雑菌を紫外線UVで殺菌できる。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る空調給湯システム100(図1参照)は、湯水HWが利用者に給湯されるときに、湯水HWに含まれるレジオネラ菌等の雑菌を、貯湯タンク9に組み込まれる殺菌構造によって効果的に殺菌することができる。
【0059】
さらに、本実施形態に係る空調給湯システム100(図1参照)は、貯湯運転のときにも湯水に含まれる雑菌の一部を殺菌できる。
運転制御装置50(図1参照)が空調給湯システム100を貯湯運転する場合、図3の(b)に示すように、貯湯タンク9の滞留領域9Cに滞留する低温の水は、加熱冷媒熱交換器10の冷媒管10aを流れる高温の冷媒によって加熱されて高温の湯水HWになり、滞留領域9Cに対流が発生する。このとき、紫外線殺菌灯92の先端部92b(図2参照)から紫外線UVが滞留領域9Cに向かって照射されると、対流によって上昇した湯水HWが紫外線UVに露光する。
そして、湯水HWが紫外線UVに露光することで、湯水HWに含まれるレジオネラ菌等の雑菌の一部が殺菌される。したがって、貯湯タンク9内に貯湯される湯水HWに含まれる雑菌の数を減らすことができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る空調給湯システム100(図1参照)の貯湯タンク9(図1参照)に組み込まれる殺菌構造は、紫外線殺菌灯92(図2参照)から照射される紫外線UVによって、湯水HWに含まれるレジオネラ菌などの雑菌を殺菌する構成である。
そして、螺旋板93(図2参照)によって、紫外線殺菌灯92の側面92a(図2参照)に軸方向に沿った螺旋状の流路93a(図2参照)を形成し、流路93aを湯水HWが上部に向かって流れるように構成する。
この構成によって、湯水HWが、紫外線殺菌灯92から照射される紫外線UVに露光する時間を長くすることができ、紫外線UVによる湯水HWに対する殺菌効果を向上できる。
【0061】
さらに、本実施形態に係る空調給湯システム100(図1参照)は、螺旋板93(図2参照)の下部に形成される滞留領域9C(図2参照)にも紫外線UVを照射できる構成とすることで、流路93aを流れる前に滞留領域9Cにある湯水HWを予備殺菌できる。
したがって、湯水HWに含まれる雑菌の一部を流路93aを流れる前に殺菌することができ、湯水HWが流路93aを流れるときの殺菌効果をさらに向上できる。
【0062】
つまり、螺旋状の流路93a(図2参照)の形成及び予備殺菌によって、湯水HWの紫外線UVの露光量を増やすことができ、大出力の紫外線殺菌灯92(図2参照)を備えた場合と同様の効果を得ることができる。
換言すると、本実施形態に係る空調給湯システム100(図1参照)は、大出力の紫外線殺菌灯92を使用することなく湯水HWに対する殺菌効果を向上できるという優れた効果を奏する。
そして、消費電力の増大、殺菌装置の大型化、紫外線の発熱や防爆管理の困難さ、などの問題を解決できる。
【0063】
なお、本実施形態は、発明の趣旨を変更しない範囲において適宜設計変更可能である。
例えば、図2に示す螺旋板93の替わりに、図4の(a)に示すように、紫外線殺菌灯92の周囲に側壁面9Sに向かって広がる複数(図4の(a)には3つを例示)の整流板94が備わる構成としてもよい。
つまり、整流板94は、紫外線殺菌灯92を中心とする径方向に側面92aから広がる。
また、整流板94は、上蓋部9T及び底床部9Bに平行に、互いに平行に上下方向に備わり、貯湯タンク9の内部を複数の領域に区分する。
【0064】
例えば、図4の(a)に示すように3つの整流板94a〜94cが備わる場合、整流板94は貯湯タンク9の内部を4つの領域に区分する。
整流板94aは最も上部の側に備わり、整流板94cは最も下部の側に備わる。そして、整流板94aと整流板94cの間に整流板94bが配設される。
また、最も下部に備わる整流板94cの下部には滞留領域9Cが形成され、紫外線殺菌灯92の先端部92bが滞留領域9Cに突出している。
【0065】
そして、整流板94aと上蓋部9Tの間に上部領域94Uが形成され、整流板94aと整流板94bの間に中間領域94Mが形成され、整流板94bと整流板94cの間に下部領域94Lが形成される。
上部領域94U、中間領域94M、及び下部領域94Lは、紫外線殺菌灯92の周囲に形成される領域であり、上部領域94Uは出湯口91と連通している。
【0066】
さらに、上部領域94U、中間領域94M、及び下部領域94Lは、各整流板94に垂直な仕切板95によって、整流板94と垂直な方向に1箇所で仕切られている。
【0067】
また、整流板94には、平面を貫通する貫通孔96が形成され、整流板94で区分される隣接する領域は貫通孔96を介して連通する。
そして、隣り合う2つの整流板94(例えば、整流板94cと整流板94b)の貫通孔96(例えば、貫通孔96cと貫通孔96b)は、当該2つの整流板94の間によって形成される領域(例えば、下部領域94L)を仕切る仕切板95を、紫外線殺菌灯92を中心とした周方向に挟んだ位置に形成されることが好適である。
貫通孔96の形状は限定されるものではなく、図示するように1つの孔で形成されていてもよいし、図示はしないが複数の小孔の集まりであってもよい。また、整流板94の一部を切り欠いて形成される構成であってもよい。
【0068】
図4の(a)に示すように構成される貯湯タンク9においては、滞留領域9Cに滞留する湯水HWが、貫通孔96c、下部領域94L、貫通孔96b、中間領域94M、貫通孔96a、上部領域94Uの順に出湯口91まで流れる流路97が形成される。
流路97は整流板94cに形成される貫通孔96cを介して滞留領域9Cと連通し、滞留領域9Cに滞留する湯水HWは、必要に応じて流路97を出湯口91まで流れる。
そして、湯水HWは、流路97を流れるときに、紫外線殺菌灯92の側面92aから照射される紫外線UVに露光してレジオネラ菌等の雑菌が殺菌される。
【0069】
そして、隣り合う2つの整流板94の貫通孔96を、当該2つの整流板94の間に備わる仕切板95を紫外線殺菌灯92を中心とした周方向に挟んだ位置に形成することで、流路97の経路長を長くすることができ、流路97を流れる湯水HWに、長時間に亘って紫外線UVを露光することができる。この構成によって、湯水HWに対する殺菌効果を向上できる。
【0070】
さらに、整流板94cより下部の湯水HWは、流路97を流れる前に滞留領域9Cで紫外線殺菌灯92の先端部92bから照射される紫外線UVに露光し、湯水HWに含まれる雑菌の一部が殺菌される。
したがって、流路97を流れる前に湯水HWに含まれる雑菌の数を減らすことができ、湯水HWが流路97を流れるときの殺菌効果を向上できる。
【0071】
なお、例えば、図4の(b)に示すように、全ての仕切板95が、紫外線殺菌灯92を中心とする周方向の同じ位置に備わっていてもよい。この場合、貫通孔96を、整流板94の順に、紫外線殺菌灯92を中心とする周方向に交互に仕切板95を挟んで形成すれば、湯水HWが出湯口91まで流れる流路97の経路長を長くすることができる。
【0072】
また、貯湯タンク9(図2参照)は、利用者が、流路93a(図2参照)を流れる湯水の流量を調節可能に構成されていてもよい。
そのため、図5に示すように、滞留領域9Cと流路93aの境界に形成される入口部93bの開度を調節する開度調節手段として流量調節弁93cを備え、入口部93bの開度を調節することで流路93aを流れる湯水の流量を調節する。
【0073】
流量調節弁93cは、例えば、紫外線殺菌灯92を中心とする径方向に伸びるように、入口部93bの位置に備わる回転軸93c1と、回転軸93c1の回りに回転する弁体93c2とを含んで構成される。
そして、弁体93c2が螺旋板93と略垂直になると入口部93bを閉鎖し、その状態から回転軸93c1の回りに回転すると、入口部93bの開度が大きくなるように構成される。
【0074】
そして、利用者が、貯湯タンク9の外部から図示しないハンドル等の操作によって弁体93c2を回転可能に構成すれば、利用者は流量調節弁93cで流路93aの入口部93bの開度を任意に調節でき、流路93aを流れる湯水の流量を調節できる。
【0075】
または、図示しないモータ等の駆動装置で弁体93c2を回転するように構成してもよい。この構成の場合、利用者は、貯湯タンク9の外部からのスイッチ操作等によって図示しない駆動装置を駆動して弁体93c2を回転し、入口部93bの開度を任意に調節する。
【0076】
入口部93bの開度が小さくなると、流路93aにおける湯水の流量が少なくなる。そして、紫外線による湯水に対する殺菌効果をより向上できる。
一方、入口部93bの開度が大きくなると、流路93aにおける湯水の流量が多くなり、利用者に大量の湯水を給湯可能になる。
【0077】
すなわち、利用者は、大量の給湯を必要とするか、より確実な殺菌を必要とするかに応じて入口部93bの開度を調節することができる。
【0078】
また、図4の(a)、(b)に示すように、複数の整流板94と貫通孔96とで流路97が形成されている貯湯タンク9の場合、最も下部に配置される整流板94(図4の(a)、(b)では整流板94c)の貫通孔96(図4の(a)、(b)では貫通孔96c)が流路97の入口部になる。したがって、最も下部に配置される整流板94の貫通孔96の開度を調節可能な構成とすれば、図5に示す流量調節弁93cを備える構成と同等の効果を得ることができる。
【0079】
なお、図2に示す紫外線殺菌灯92及び螺旋板93を含んで構成される殺菌構造が組み込まれる貯湯タンク9は、図1に示す空調給湯システム100の他、空調ユニット60が備わらない給湯システムに備えることも可能である。
【符号の説明】
【0080】
9 貯湯タンク(タンク)
13 給湯栓(給湯端末)
20 補助加熱器
30 ヒートポンプユニット(熱源)
30a、30b 冷媒管
40 貯湯ユニット(貯液ユニット)
60 空調ユニット
61 冷暖房用熱交換器(凝縮器、蒸発器)
92 紫外線殺菌灯(紫外線照射手段)
92a 側面
92b 先端部
93 螺旋板
93a、97 流路
93b 入口部
93c 流量調節弁(開度調節手段)
94 整流板
95 仕切板
96 貫通孔
9C 滞留領域
100 空調給湯システム
201 圧縮機
202 空気熱交換器(凝縮器、蒸発器)
203 膨張弁(膨張機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯液するタンクの内部に、
上部から下部に向かって伸びるように配設される長尺の紫外線照射手段と、
前記液体を、前記紫外線照射手段を中心に旋回させながら当該紫外線照射手段の側面に沿って流すための流路と、
前記紫外線照射手段の先端部より下部に前記流路と連通して形成されて前記液体が滞留する滞留領域と、を備え、
前記先端部は前記滞留領域に突出し、
前記流路を流れる前記液体は前記側面から照射される紫外線に露光し、
前記滞留領域にある前記液体は前記先端部から照射される紫外線に露光することを特徴とするタンクの殺菌構造。
【請求項2】
前記流路は、
前記紫外線照射手段を中心とする径方向に前記側面から広がるとともに当該紫外線照射手段の軸方向に沿って螺旋状にねじれた螺旋板によって形成されることを特徴とする請求項1に記載のタンクの殺菌構造。
【請求項3】
前記流路は、
前記紫外線照射手段を中心とする径方向に前記側面から広がる複数の平行な整流板と、
前記整流板によって前記紫外線照射手段の周囲に形成される領域のそれぞれを当該整流板と垂直方向に一箇所で仕切る仕切板と、
前記整流板を貫通する貫通孔と、を含んで構成され、
隣り合う2つの前記整流板の前記貫通孔は、当該2つの前記整流板によって形成される前記領域を仕切る前記仕切板を、前記紫外線照射手段を中心とする周方向に挟んだ位置に形成されることを特徴とする請求項1に記載のタンクの殺菌構造。
【請求項4】
前記滞留領域と前記流路の境界に形成される前記流路の入口部の開度を調節する開度調節手段が備わることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のタンクの殺菌構造。
【請求項5】
前記タンクに貯液される前記液体を加熱殺菌するための補助加熱器が備わることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のタンクの殺菌構造。
【請求項6】
液体を所定の沸き上げ温度に沸き上げる熱源と、
前記沸き上げ温度の前記液体をタンクに貯液する貯液ユニットと、
少なくとも、圧縮機、凝縮器、膨張機構、蒸発器を冷媒管で接続した冷凍サイクルを備える空調ユニットと、を含んで構成され、
前記タンクに貯液される前記液体を、給湯端末を介して利用者に給湯する空調給湯システムであって、
前記タンクには、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のタンクの殺菌構造が組み込まれていることを特徴とする空調給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−112308(P2011−112308A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270580(P2009−270580)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】