説明

タンク排出機構及びこれを装備する農作物収穫機

【課題】 タンク排出機構が安価であり、排出時の農作物の損傷が回避でき、迅速、安定な排出作業を可能にする。
【解決手段】 農作物収穫機は、機体10に搭載されて農作物を収容するタンク20を備える。タンク20はタンク排出機構30によって支持される。タンク排出機構30はタンク20の前後に配設され、タンク20を支持する支持アーム40とこの移動を案内する案内レール31を有する。支持アーム40は、アーム部45が移動部41に対して屈曲して上方へ延び、移動部41に案内レール31内を転動する一対のローラ43を設ける。移動部41が案内レール31に沿って移動すると、アーム部45が起伏して、タンク20は昇降して機体10が転倒する虞のない移動可能範囲内で移動する。アーム部45はタンク側面に固着された回動アーム53の先端部に枢結され、回動シリンダ57の伸縮によってタンク20を傾動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに収容された農作物等の収容物を排出する機構を備えたタンク排出機構及びこのタンク排出機構を装備する農作物収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
イモやビート等を収穫する農作物収穫機は、農作物を収容する大型のタンクを装備しており、このタンクに収容された農作物を排出する際には、タンクを高い位置に持ち上げて傾けてタンク上部に設けられた開口部から農作物を排出することが一般的に行われている。このような排出作業は、圃場に農作物を山積みにしたり、大型のトラックの荷台に農作物を直接に搬入するために行われる。
【0003】
このように、高い位置に持ち上げられたタンクから農作物を排出すると、農作物の落差が大きくなる。そこで、農作物への衝撃をより小さくするために、タンクの排出動作と連動して展開・退避する流し部材を装備して、タンクの開口部から流し部材の傾斜面を介して下方に落下させる機構が一般に採用されている。
【0004】
また、下記特許文献1には、排出装置付きのタンクが記載されている。このタンクは、上面が開口した四角形枠体の側面を開放して、この側面に両側面が金網張りで底面に格子を設けた排出エレベータを起倒自在に設けられたものであり、複動形油圧シリンダの伸縮によって排出エレベータを起倒させ、排出エレベータを側方に倒した時に、単動形油圧シリンダを伸張させて水平に設置されているタンクの底面を開放側が上昇するように傾動させるものである。
【0005】
【特許文献1】特開平11−225526号公報(図13参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来技術において、タンクの排出動作と連動して展開・退避する流し部材を装備したものでは、流し部材の傾斜面が緩衝作用を有することで農作物への緩衝を若干低減することは可能になるが、農作物を高い位置から落下させることには変わりがなく、農作物の損傷を回避するための根本的な解決策にはなっていない。
【0007】
また、特許文献1に記載のもののように、排出エレベータを装備すると、動力伝達機構や排出エレベータを起倒する機構を追加する必要があるので、構造が複雑になってコストアップを招く問題がある。
【0008】
また、タンクを低い位置で回転させて、排出の最終段階でタンクを高い位置に揚上させるように徐々にタンク位置を高くする機構も考えられるが、タンクを支持する支持アームを伸縮自在にすると構造が複雑になってコストアップの問題があり、タンクを高い位置で支持できる支持アームを可倒する機構にすると、収容物が満載のタンクが機体側方の離れた位置に支持されることになるので、機体に作用する転倒方向モーメントが増大して機体が転倒する虞が生じることになる。このような転倒を回避するためには、機体にアウトリガーを追加することも考えられるが、アウトリガーの出し入れは手間が掛かる作業であり、迅速なタンク排出作業を妨げる問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に対処することを課題とするものであって、安価な装備が可能であり、タンク収容物の損傷を回避することが可能であり、迅速且つ安定な排出作業を行うことができるタンク排出機構及びこのタンク排出機構を装備する農作物収穫機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するため、本発明は、機体に装備され、上部に設けられた開口部から入れられた収容物を収容するタンクを傾けて開口部から収容物を排出するタンク排出機構において、機体に設けられる案内レールと、タンクを支持して案内レールに沿って移動する支持アームとを備え、該支持アームは、移動アクチュエータ(例えば、実施形態における移動シリンダ50)からの動力を受けて案内レールに沿って移動する移動部及び該移動部の一端側に繋がって移動部に対して所定角度を有して延びるアーム部を有し、アーム部がタンクの側面に取り付けられて該タンクを支持し、移動部が案内レールに沿って移動すると、アーム部が上下方向に回動してタンクを昇降させるとともに、機体が転倒する虞のない移動可能領域内でタンクを移動させることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、タンク排出機構は案内レールとこれに沿って移動する支持アームとを備え、支持アームは移動部が案内レールに沿って移動すると、タンクを昇降させるとともに、移動可能領域内でタンクを移動させることにより、支持アームの移動部が案内レールに沿って移動するだけで、機体が安定に支持された状態で、タンクを所望の上下位置に移動させることができる。このため、農作物の排出場所に応じてタンクの高さ調整が可能となり、農作物をタンクから排出する際の農作物の落差が小さくなって、農作物の損傷を回避することができる。また、農作物の排出作業の際に、機体の支持は安定しているので、機体にアウトリガー等の支持手段を設ける必要がなく、アウトリガーの張り出し操作が不要となり、迅速に農作物の排出作業を行うことができる。
【0012】
また本発明の支持アームは、移動部に対してアーム部が鈍角を有して延び、案内レールは、支持アームの移動部を横方向に案内する横レール部と、該横レール部の機体内側端部に繋がって上方へ延びる縦レール部とを有してなることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、支持アームは、移動部に対してアーム部が鈍角を有して延び、案内レールは、横レール部と縦レール部とを有してなることにより、支持アームの移動部が横レール部から縦レール部に移動すると、支持アームのアーム部は倒伏し、移動部が縦レール部から横レール部に移動すると、支持アームのアーム部は起仰する。つまり、支持アームが案内レールに沿って移動するだけで、支持アームのアーム部を起伏動させることができ、タンクを昇降させることができる。また支持アームのアーム部は移動部に対して鈍角を有して延びるので、支持アームのアーム部が起仰した際にタンクが機体外側に大きな距離を有して移動することはなく、機体支持が不安定になる虞はない。またタンク排出機構は案内レール及び支持アームを有した簡易な構成であるので、タンク排出機構を安価な装備にすることができる。
【0014】
また本発明は、支持アームの移動部の移動方向の両端部に、案内レールを転動する一対のローラを設けたことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、支持アームの移動部の移動方向の両端部に一対のローラを設けることにより、支持アームの移動がスムースになり、タンクを所望の位置に容易に昇降させることができる。
【0016】
さらに本発明は、支持アームのアーム部をタンクの側面に固着された回動アームの先端部に回動自在に取り付け、回動アームを支持アームのアーム部に対して回動させてタンクを傾動させる回動アクチュエータ(例えば、実施形態における回動シリンダ57)を有したことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、支持アームのアーム部をタンクの側面に固着された回動アームの先端部に回動自在に取り付け、この回動アームを回動アクチュエータによって回動させることにより、回動アクチュエータが駆動すると、回動アームは支持アームとの回動支点を回動中心として回動し、これと同時にタンクは支持アームと回動アームとの回動支点を回動中心として傾動する。このため、タンクは大きな傾き角度で傾動して、タンクから収容物を容易に排出することができる。
【0018】
また本発明に係わる回動アクチュエータは、機体に対するタンクの位置に応じて該機体に作用する転倒方向モーメントが許容モーメント値を超えずに移動可能となる移動可能領域をタンクが超える動作が規制されることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、回動アクチュエータは、タンクが移動可能領域を超えると、回動アクチュエータ動作が規制されるので、車体支持が不安定になる虞を未然に防止することができる。
【0020】
さらに本発明の農作物収穫機は、農作物を跨ぐようにして走行する機体と、該機体に設けられ、機体の進行にともなって農作物を掘り起こす掘起手段(例えば、実施形態における堀上げコンベア12)と、該掘起手段により掘り起こされた農作物を搬送する搬送手段(例えば、実施形態における堀上げコンベア12,揚上押えコンベア13,かご形エレベータ14,前送りコンベア15)と、搬送手段によって搬送された農作物を上部に設けられた開口部から入れて収容するタンクと、該タンクに装備される請求項1から5のいずれかに記載のタンク排出機構とを備えることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、機体と掘起手段と搬送手段とタンクとタンク排出機構とを具備することにより、安価なタンク排出機構を備え、農作物の損傷を回避でき、迅速且つ安定した農作物の排出作業が可能な農作物収穫機を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係わるタンク排出機構及び農作物収穫機によれば、タンク排出機構は、機体に設けられた案内レールと、これに沿って移動する支持アームとを備え、支持アームは、移動アクチュエータからの動力を受けて案内レールに沿って移動する移動部とこの一端側に繋がって延びるアーム部とを有して、移動部が案内レールに沿って移動すると、アーム部が上下方向に回動してタンクを昇降させるとともに、機体が転倒する虞のない移動可能領域内でタンクを移動させ、案内レールは、横レール部と縦レール部とを有してなることにより、タンク排出機構が安価であり、農作物等の収容物の損傷を回避することができ、迅速且つ安定な排出作業を行うことができるタンク排出機構及びこのタンク排出機構を装備した農作物収穫機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係わるタンク排出機構及びこれを装備する農作物収穫機の好ましい実施の形態を図1から図9に基づいて説明する。本実施の形態は、イモやビート等の農作物を収穫する農作物収穫機を例にして、以下説明する。なお、説明の都合上、図1(側面図)及び図2(斜視図)に示す矢印の方向を前後方向及び左右方向として以下説明する。
【0024】
農作物収穫機1は、図1に示すように、トラクタ等の走行機体の後部に連結されて、走行機体の前進走行に伴って進行しながら農作物の収穫作業を行うものである。この農作物収穫機1は、左右に一対の車輪3を有して走行可能な機体10と、機体前側の下方位置から後方斜め上側に延びて配設されて農作物を掘り上げて後方側へ搬送する堀上げコンベア12と、堀上げコンベア12の上方位置に対向して並設されて堀上げられた農作物を堀上げコンベア12と協働して後方側へ搬送する揚上押えコンベア13と、機体後部に配設されてコンベアによって搬送された農作物を上方へ搬送するかご形エレベータ14と、かご形エレベータ14の上部内側から前方に延びてかご形エレベータ14によって搬送された農作物を機体前側に搬送する前送りコンベア15と、前送りコンベア15によって搬送された農作物を収容するタンク20とを有してなる。
【0025】
タンク20は、図2に示すように、上部に開口部20aを有して有底容器状に形成されており、複数の骨格部材22によって形成された枠体21と、枠体21の側面及び底面に取り付けられた網目状の板部材(図示せず)とを有して構成されている。なお、板部材は、図面上においては、タンク構造の理解を容易にするため、省略した。タンク20の前側面、後側面及び左側面は上方へ延び、右側面は斜め上方に延びてタンク20内に収容された農作物の排出を容易にしている。
【0026】
タンク20は、機体10上に設けられたタンク排出機構30によって昇降且つ回動可能に支持されている。タンク排出機構30は、タンク20の前側と後側に配設されており、機体10上に取り付けられて機体内側方向に延びる案内レール31と、タンク20を支持しながら案内レール31に沿って移動する支持アーム40とを有してなる。なお、タンク20の前後に配設された一対のタンク排出機構30は同一構成であるので、前側に配設されたタンク排出機構30についてのみ説明する。
【0027】
案内レール31は、図3(b)(正面図)に示すように、横方向に延びる横レール部32と、横レール部32の機体内側端部に繋がって上方へ延びる縦レール部33とを有してなる。横レール部32は略水平方向に延びる。縦レール部33は、横レール部32の端部に繋がって湾曲して上方へ延びる。これら横レール部32及び縦レール部33は、図3(a)(側面図)に示すように、側面視においてコ字状に形成されて後述する支持アームに設けられたローラの移動を案内する案内溝32a,33aを形成している。横レール部32及び縦レール部33の各案内溝32a,33aは略同じ大きさを有して連通している。このため、ローラは横レール部32及び縦レール部33の案内溝32a,33a内を自由に移動することができる。ローラの詳細については、後述する。
【0028】
支持アーム40は、図4(正面図)に示すように、前述した案内レールに沿って移動する移動部41とこの一端側に繋がって移動部41に対して所定角度θ(図面上では鈍角)を有して延びるアーム部45とを備えて形成されている。支持アーム40の移動部41の側面41aの左右両端部(移動方向の両端部)には前述した一対のローラ42,43が回転自在に取り付けられている。ローラ42,43の外径φは前述した図3(a)に示す案内溝32a,33aの高さHより若干小さな大きさを有する。ローラ42,43が案内溝32a,33aに係合している状態において、支持アーム40の移動部41の側面41aは、図3(b)に示す案内レール31のタンク側端部31aに接触しない位置に配置されている。このため、図5(a)(正面図)及び図5(b)(正面図)に示すように、ローラ42,43が案内溝32a,33aに係合した状態において、支持アーム40は案内レール31の延びる方向に沿った移動が可能である。このため、案内レール31に沿って移動部41が移動すると、アーム部45を起伏動させることができる。なお、支持アーム40の移動部41の上部には、上方へ延びて後述する回動シリンダを枢結するフランジ部41bが設けられている。
【0029】
図6(a)(正面図)に示すように、支持アーム40の移動部41の右側端部には移動シリンダ50のシリンダロッド50aの先端部が枢結されている。また移動シリンダ50のシリンダチューブ50bの基端部は、案内レール31の延長線上に配置されて機体10に取り付けられた支持部材11の端部に枢結されている。このため、移動シリンダ50が伸縮すると、支持アーム40の移動部41を案内レール31に沿って移動させることができる。
【0030】
支持アーム40のアーム部45の先端部は、基端側がタンク20の前側面の上部に配設された骨格部材22に固着されて斜め下方に延びる回動アーム53の先端部に回動自在に取り付けられている。そして、回動アーム53の基端部と前述した案内レール31に設けられたフランジ41bとの間に回動シリンダ57が枢結されている。このため、回動シリンダ57が伸縮すると、回動アーム53と支持アーム40の枢結点Pを回動支点として回動アーム53が左右方向に回動してタンク20を傾動させることができる。なお、移動シリンダ50及び回動シリンダ57は、油圧式及び電動式いずれのものでもよい。
【0031】
このように構成されたタンク排出機構30は、移動シリンダ50が所定長さを有して伸長するとともに、回動シリンダ57が略全縮状態になると、タンク20を機体10に格納する格納位置Kに配置するように構成されている。このとき、タンク20の重心位置Gは機体10の左右方向の略中央に位置している。このため、機体10は安定に支持されるので、タンク20を格納位置Kに移動させた状態で農作物を収容しながら農作物の収穫作業を行っても機体10が転倒する虞はない。
【0032】
ここで、格納位置Kにあるタンク20を右側に傾けると低い位置から農作物を排出することができる。この場合には、先ず、図6(b)(正面図)に示すように、移動シリンダ50を縮小させる。従って、支持アーム40の移動部41が機体左方向に引っ張られてローラ42,43が案内レール31の案内溝内を転動し、一対のローラ42,43のうちの左側に配置されたローラ43が縦レール部33内を移動する。このため、支持アーム40の移動部41は斜め上方に傾いた状態になり、支持アーム40のアーム部45は倒伏する。その結果、タンク20は回動アーム53を介して右側に傾く。タンク20の重心位置Gは格納位置Kのそれよりやや右側に移動し、機体10は安定に支持された状態が維持される。
【0033】
そして、さらに移動シリンダ50が縮小すると、図7(c)(正面図)に示すように、ローラ43が縦レール部33の上端部まで移動する。これと同時に支持アーム40のアーム部45がさらに倒伏して略水平状態になる。その結果、タンク20はさらに右側に傾く。タンク20の重心位置Gは格納位置Kのそれよりやや右側に移動し、機体10は安定に支持される。
【0034】
そして、図7(d)(正面図)に示すように、回動シリンダ57を伸長させて、タンク20がさらに傾くと、タンク20内に収容された農作物は開口部20aから排出される。このとき、タンク20の傾き角度αが所定値(図面では約40度)より大きくなると、図8(正面図)に示すように、タンク20の重心位置Gが、機体10に対するタンク20の位置に応じて機体10に作用する転倒方向モーメントが許容モーメント値を超えずに移動可能となる移動可能領域Tを超えて、機体10が転倒する虞が生じる。
【0035】
そこで、回動シリンダ57は、タンク20(図面ではタンクの重心位置G)が移動可能領域Tを超えようとすると、回動シリンダ57の伸長動が規制されるようになっている。このため、機体10が転倒する虞を未然に防止することができる。なお、回動シリンダ57の伸長規制は、移動シリンダ50と回動シリンダ57の伸長量をそれぞれ検出するセンサを設け、これらのセンサから検出される検出値からタンク20の位置を算出し、算出されたタンク位置が予め設定された移動可能領域Tを超えようとするときに回動シリンダ57の伸長動を規制するようにしたり(作業範囲規制)、タンク20の位置に応じて機体10に作用する転倒方向モーメントを検出するセンサを設け、このセンサから検出された検出値が許容モーメント値を超えるときに回動シリンダ57の伸長動を規制するようにしてもよい(モーメント規制)。
【0036】
一方、タンク20を高い位置に移動させた状態で農作物の排出作業を行う場合には、図9(正面図)に示すように、移動シリンダ50を伸長させて支持アーム40の移動部41を案内レール31の横レール部32に移動させて、支持アーム40のアーム部45を起仰させる。そして、回動シリンダ57を伸長させてタンク20を大きな回動角度を有して傾ける。なお、この場合も、回動シリンダ57の伸長量が過大になると、タンク20の重心位置Gが前述した移動可能領域Tを超えて、機体10が転倒する虞が生じるので、前述したのと同様に、タンク20の重心位置Gが移動可能領域Tを超える回動シリンダ57の伸長動を規制する。これによって、タンク20を高所位置に移動した状態で農作物の排出作業を行っている際に、機体10が転倒する虞を未然に防止することができる。
【0037】
このように、支持アーム40はアーム部45が移動部41に対して上方に屈曲して延びるとともに、機体内側方向に延びる案内レール31に沿って移動可能であるので、支持アーム40を案内レール31に沿って移動させるだけで、タンク20を所望の上下位置に移動させることができ、またタンク20の重心位置Gが機体外側に大きな移動量を有して移動することもない。従って、農作物の排出場所に応じてタンク20の高さ調整が可能となり、農作物をタンク20から排出する際の農作物の落差が小さくなって、農作物の損傷を回避することができる。また農作物の排出作業の際に、機体10の支持は安定しているので、機体10にアウトリガー等の支持手段を設ける必要がなく、アウトリガーの張り出し操作が不要となり、迅速に農作物の排出作業を行うことができる。
【0038】
またタンク排出機構30は、案内レール31と支持アーム40とを有した簡易な構成であるので、タンク排出機構30を安価な装備にすることができ、農作物収穫機1のコストの増大を抑制することができる。
【0039】
なお、前述した実施例では、タンク20が機体10に対して左右方向に移動可能な構成を示したが、タンク20が機体10の後側に移動可能にしてもよい。また、支持アーム40の移動部41に設けた一対のローラ42,43は、移動部41の移動方向の両端部が好ましいが、移動部41の延びる方向に所定間隔を有して配置されていれば両端部に限るものではない。また前述した実施例では、収容物として農作物を例に示したが、収容物は、液体(例えば、水、溶融金属)、固体・粉体(例えば、土砂)等でもよい。また前述した実施例ではタンク排出機構を装備した農作物収穫機を例に示したが、土木作業を行う車両等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態に係わるタンク排出機構を装備した農作物収穫機の右側面図を示す。
【図2】この農作物収穫機に搭載されたタンク及びタンク排出機構の斜視図を示す。
【図3】タンクの移動を案内する案内レールを示し、同図(a)は案内レールの側面図であり、同図(b)は案内レールの正面図である。
【図4】支持アームの正面図を示す。
【図5】支持アームの動作を説明するための正面図を示す。
【図6】タンクの移動を説明するための農作物収穫機の正面図を示す。
【図7】タンクの移動を説明するための農作物収穫機の正面図を示す。
【図8】タンクの移動を説明するための農作物収穫機の正面図を示す。
【図9】タンクの移動を説明するための農作物収穫機の正面図を示す。
【符号の説明】
【0041】
1 農作物収穫機
10 機体
12 堀上げコンベア(掘起手段、搬送手段)
13 揚上押えコンベア(搬送手段)
14 かご形エレベータ(搬送手段)
15 前送りコンベア(搬送手段)
20 タンク
20a 開口部
30 タンク排出機構
31 案内レール
32 横レール部
33 縦レール部
40 支持アーム
41 移動部
42,43 ローラ
45 アーム部
50 移動シリンダ(移動アクチュエータ)
53 回動アーム
57 回動シリンダ(回動アクチュエータ)
T 移動可能領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に装備され、上部に設けられた開口部から入れられた収容物を収容するタンクを傾けて前記開口部から前記収容物を排出するタンク排出機構において、
前記機体に設けられる案内レールと、
前記タンクを支持して前記案内レールに沿って移動する支持アームとを備え、
該支持アームは、移動アクチュエータからの動力を受けて前記案内レールに沿って移動する移動部及び該移動部の一端側に繋がって前記移動部に対して所定角度を有して延びるアーム部を有し、前記アーム部が前記タンクの側面に取り付けられて該タンクを支持し、前記移動部が前記案内レールに沿って移動すると、前記アーム部が上下方向に回動して前記タンクを昇降させるとともに、前記機体が転倒する虞のない移動可能領域内で前記タンクを移動させることを特徴とするタンク排出機構。
【請求項2】
前記支持アームは、前記移動部に対して前記アーム部が鈍角を有して延び、
前記案内レールは、前記支持アームの前記移動部を横方向に案内する横レール部と、該横レール部の機体内側端部に繋がって上方へ延びる縦レール部とを有してなることを特徴とする請求項1に記載のタンク排出機構。
【請求項3】
前記支持アームの前記移動部の移動方向の両端部に、前記案内レールを転動する一対のローラを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンク排出機構。
【請求項4】
前記支持アームの前記アーム部を前記タンクの側面に固着された回動アームの先端部に回動自在に取り付け、
前記回動アームを前記支持アームの前記アーム部に対して回動させて前記タンクを傾動させる回動アクチュエータを有したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のタンク排出機構。
【請求項5】
前記回動アクチュエータは、前記機体に対する前記タンクの位置に応じて該機体に作用する転倒方向モーメントが許容モーメント値を超えずに移動可能となる移動可能領域を前記タンクが超える動作が規制されることを特徴とする請求項4に記載のタンク排出機構。
【請求項6】
農作物を跨ぐようにして走行する機体と、
該機体に設けられ、前記機体の進行にともなって農作物を掘り起こす掘起手段と、
該掘起手段により掘り起こされた農作物を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された農作物を上部に設けられた開口部から入れて収容するタンクと、
該タンクに装備される前記請求項1から5のいずれかに記載のタンク排出機構と
を備えることを特徴とする農作物収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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