説明

タンパク質を精製する方法

本発明は、組換えタンパク質を精製するための方法に関し、該方法は好熱性細菌からの高度に塩基性のタンパク質を陽イオン交換クロマトグラフィー精製工程に使用する精製タグとして用いる。前記塩基性のタンパク質は、リボソームタンパク質であってもよい。組換えタンパク質は、真核生物または原核生物の宿主細胞で発現される。前記精製タグは、典型的に約9以上のpIを有し、約 15〜約 250のアミノ酸残基を具備する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、組換えタンパク質を、好熱性細菌に由来する特定のグループの陽性に荷電したタグを用いることによって精製する方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
細菌又は真核生物からの天然の又は非天然の組換えタンパク質の精製は、しばしば幾つかの工程を必要とする。標的蛋白質の精製において工程数を減らした方法は、組換えタンパク質の安価で効率的な産生に有利である。小さな高度に塩基性のドメインに融合した標的蛋白質の精製は、Graslund等およびGraslund等〔Graslund et al., Protein Eng. 2000 ,13(10):703-709, Graslund et al., J Chromatogr A. 2002, 942(1-2):157-166およびGraslund et al., Journal of Biotechnology, 2002, 96: 93-102〕によって開示されている。これらの文献は、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて大腸菌で発現された異なる標的タンパク質を精製するための、S.aureusのプロテインAのZドメインの小さく高度に塩基性で安定な変異体の合理的なデザインを記載している。Zドメインの高度に塩基性の誘導体を融合タグとして使用することは、WO00/6343に開示されている。
【0003】
本発明は、組換え技術によって発現されたタンパク質を非常に高い精製度で数回の工程で精製することに使用できる、新規のグループの陽性に荷電したタグを提供する。
【0004】
[発明の概要]
一側面において、本発明は、組換えタンパク質を精製するための方法に関し、該方法は好熱性細菌からの高度に塩基性のタンパク質を精製タグとして、陽イオン交換クロマトグラフィーの精製工程に使用することを備える。
【0005】
一態様において、精製タグは、約9を超えるpIを有する。
【0006】
別の態様において、精製タグは、約10を超えるpIを有する。
【0007】
別の態様において、精製タグのpIは、約9および約12.5の間であり。更なる側面において、pIは、約10である。
【0008】
一態様において、好熱性細菌からの高度に塩基性のタンパク質は、リボソームタンパク質である。
【0009】
一態様において、精製タグは、システイン残基を含有しない。
【0010】
更なる態様において、精製タグは、約15〜約250、約15〜約225、15〜約200、約15〜約175、約15〜約150、15〜約75、または約15〜約50のアミノ酸残基を含む。
【0011】
更なる態様において、精製タグは、約20〜約120、約20〜約100、約20〜約90、約20〜約75のアミノ酸残基または約20〜約50のアミノ酸残基を含む。
【0012】
精製タグは、典型的には少なくとも約15%の塩基性アミノ酸残基を含有する。精製タグは、約20〜約50%、約35%〜約50%、約20〜30%または約40%〜約60%の塩基性アミノ酸残基, LysおよびArgを含有してもよい。
【0013】
別の側面において、好熱性細菌は、約50゜Cより高い成長至適温度を有している古細菌または真正細菌から選択される。
【0014】
一態様において、タグは、標的タンパク質に与えられる精製タグのインビトロ切断のための切断部位を含むリンカー配列を具備する。
【0015】
別の態様において、タグは、精製後に前記タンパク質に残る。
【0016】
前記リンカーは、1〜30、1〜25、1〜20、または1〜15のアミノ酸残基を有してもよい。一態様において、リンカーは、アルファヘリックス形成を増加させるLeu、Pro、およびAlaなどのアミノ酸残基又は構造上の強剛性(rigidity)を生じる他の特性を含んでいてもよい。
【0017】
前記リンカーは、標的タンパク質のC端またはN端の末端の何れに付着させてもよい。
【0018】
切断部位は、標的タンパク質からの精製タグのインビトロ切断が可能な任意の切断部位であってよい。
【0019】
切断部位の限定されない例は、エンテロキナーゼ切断部位、Xa因子切断部位、トロンビン切断部位、Tobacco etc ウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位、またはHRV14 3Cプロテアーゼ切断部位である。
【0020】
一態様において、前記リンカーは、RRGGSDDDDK(配列番号6); SSSDDDDK(配列番号7); SSSSTSSSSTDDDDK(配列番号8); SSSSTLAAPFDDDDK(配列番号9) ALAAPFDDDDK(配列番号15) ,SSSSDDDDK(配列番号16), SSSSSLEVLFQ(配列番号17), SSSALAAPADDDDK(配列番号18), SSSSENLYFQ(配列番号19)からなる群から選択されるペプチド配列を有してもよい。
【0021】
別の側面において、本発明は組換え型のタンパク質を作出する方法に関し、該方法はi)好熱性細菌からの高度に塩基性のタンパク質に由来するN末端またはC末端の精製タグを含んでいるタンパク質を発現させること、ii)前記タンパク質を、陽イオン交換カラムに適用すること、及びiii)前記タンパク質を、適切な溶出液で溶出することを備える。
【0022】
一態様において、高度に塩基性のタンパク質は、リボソームタンパク質である。
【0023】
更なる側面において、本発明の方法は、精製タグが切断(cleaved off)されて標的タンパク質を生じる切断工程iv)を備える。
【0024】
一態様において、切断工程iv)は酵素切断である。
【0025】
なお更なる側面において、本発明の方法は、陽イオン交換カラム工程の前に又は後の工程(例えば、精製タグの酵素切断後に、切断酵素で沈殿させる)で宿主細胞の夾雑物を沈殿させるための熱沈殿工程(a heat precipitation step)を備える。
【0026】
一態様において、約30〜約200mMのNaClが、熱沈殿工程の前に添加される。
【0027】
別の態様において、約30〜約100mMのNaClが、熱沈殿工程の前に添加される。
【0028】
別の態様において、約30〜約50 mMのNaClが、熱沈殿工程の前に添加される。
【0029】
一態様において、発現させる宿主は、細菌および真菌類、例えば、Eschericiaの種、Bacillus の種、Saccharomycesの種およびAspergillusの種、特にEschericiaの種およびBacillusの種から選択される。
【0030】
本発明の別の側面において、精製タグは以下の配列からなるペプチド配列の群から選択される:
MSKTIVRKNESIDDALRRFKRAVSKTGTLQEVRKREFYEKPSVRRKKKSEAARKRK(配列番号1);
MGKKTVGVKKRLAKAYKQNRRAPVWITVKTKRSVFGSPKRRHWRRSKLKV(配列番号2);
MKRTYQPSRRKRKRTHGFLARKRTPGGRRVLKNRRRKGRWRLTV(配列番号3);
MGKGDRRTRRGKIWRGTYGKYRPRKKK(配列番号4)および
MAKVKMKTNRSAAKRFKVTAKGKIKRWKSGGAHYNTKKSSKRKRHLRKHTYVKDNMLKHVKALLKEF(配列番号5)。
【0031】
本発明の別の側面において、精製タグは以下の配列からなるペプチド配列の群から選択される:
MPKHSKRYLEARKLVDRTKYYDLDEAIELVKKTATAKFDETIELHIQTGIDYRKPEQHIRGTIVLPHGTGKEVKVLVFAKGEKAKEALEAGADYVGAEDLVEKIEKEGFLDFDVAIATPDMMRIIGRLGKILGPRGLMPSPKSGTVTQEVAEAVKEFKKGRIEVRTDKTGNIHIPVGKRSFDNEKLKENIIAAIKQIMQMKPAGVKGQFIKKVVLASTMGPGIKLNLQSLLKE(配列番号20),
MAQVDLLNVKGEKVGTLEISDFVFNIDPNYDVMWRYVDMQLSNRRAGTASTKTRGEVSGGGRKPWPQKHTGRARHGSIRSPIWRHGGVVHGPKPRDWSKKLNKKMKKLALRSALSVKYRENKLLVLDDLKLERPKTKSLKEILQNLQLSDKKTLIVLPWKEEGYMNVKLSGRNLPDVKVIIADNPNNSKNGEKAVRIDGLNVFDMLKYDYLVLTRDMVSKIEEVLGNEAGKALTA(配列番号21),
MRYEYVPLKDQYEKEIVPALMKEFNYKNIHQVPKLVKIVINMGIGEGSRNYDLIERHANELAKITGQKPIVTRARKSISNFKIRKGMPIGLKVTLRGARMYNFLYKLINIVLPKVRDFRGLDPNSFDGRGNYSFGLSEQLVFPELNPDEVRRIQGMDITIVTTAKTDQEARRLLELFGMPFKRG(配列番号22),
MSRLAKKPIVLPQGVTVEIKDNVVKVKGPKGELSQEFLPYVKIEVEGNEV WVRPNEEQIIRKSDWRKVKMFQGTYWSLIRNMVVGVTEGYKKELEIVGIGYRAQLQGNTLVMNLGYAHPVVYEIPSDVKIEVPAPNRIIVSGIDKQRVGQVAAEIRAFRPPNVYTGKGIRYVGEVVRQKEGKKA(配列番号23),
MKVILLRDVPKIGKKGEIKEVSDGYARNYLIPRGFAKEYTEGLERAIKHEKEIEKRKKEREREESEKILKELKKRTHVVKVKAGEGGKIFGAVTAATVAEEISKTTGLKLDKRWFKLDKPIKELGEYSLEVSLPGGVKDTIKIRVEREE(配列番号24),
MLTRQQKELIVKEMSEIFKKTSLILFADFLGFTVADLTELRSRLREKYGDGARFRVVKNTLLNLALKNAEYEGYEEFLKGPTAVLYVTEGDPVEAVKIIYNFYKDKKADLSRLKGGFLEGKKFTAEEVENIAKLPSKEELYAMLVGRVKA PITGLVFALS GILRNLVYVLNAIKEKKSE(配列番号25),
MARYFPVQKTTMIKPEEVERKWYVVDASGKVLGRLATRIAKILMGKHKPN YTPHVDTGDYVIVVNADKVVLTGKKLDQKVYYWHSGYPGGLKSLTARQML EKHPERLIWLAVKRMLPKNRKGRKMLKRLKVYASPEHPHQAQKPEPIEL(配列番号26),
MRLEDLRPTPGAMKKRKRVGRGPGSGHGKTSGRGHKGQKARGSGKVHIWFEGGQTPLQRRLPKRGFKNINKKVYAVVNVKVLEERFEANEEVTPEKLIERKIIKDLKDGVKILGDGELTKPLVVKAHAFSKSAVEKIESAGGKAEVI(配列番号27),
MRHRVKRHKLGRYGSHRKSLLRNLSREIVEHGSIVTTTAKAKALKTFMDKLVSKAIEAATTDDRARSVHLRRQINAVLGDRRLTNKLVDEIAKNYVGRRGGYVRVLRIGFRRGDAAEMSLVQLVEASSQEG(配列番号28),
MDHLVKIIEKKYEKKEIPDFRPGDTVRVHVKVIEGDRERTQVFEGIVIAKRGSGINKTFTVRRIGSHGVGVERIFPVHSPVVEKIEVVRKGKVRRAKLYYLRNVRGKIRIKERRD(配列番号29),
MRVKRAVHAKKKRKKYLKAAKGYRGALSRRYKLAKQMYVRSKWYSYVGRKQKKRDMRKLWITRINIAARNEGLKYSELIHGLKLAGVSINRKMLSELAVNDPEAFKEYVKIAKEALAS(配列番号30),
MLYAIVETAGRQYRVEEGKILYTEKQKDYSPGDEIVFDRVVFVRKDGEVLVGKPYVEGAKVVGKVLEHAKARKVKTVKYRPRKNSKVEKGHRQWYTAIKIEKIEL(配列番号31),
MKQEKLSLHDVLIRPIITEKALILREQRKYVFEVNPLANKNLVKEAVEKLFNVKVEKVNILNMKPKPKRRGIFEGKTRSWKKAVVTLKEGYTIKELEGEH(配列番号32),
MAHKKSGGVAKNGRDSLPKYLGVKVGDGQIVKAGNILVRQRGTRFYPGKNVGMGRDFTLFALKDGRVKFETKNNKKYVSVYEE(配列番号33),
MKASELRNYTDEELKNLLEEKKRQLMELRFQLAMGQLKNTSLIKLTKRDI ARIKTILRERELGIRR(配列番号34),
MPKKLKIKLVKSPIGYSWDQKDTVKRLGLKKLNQVVIKDDLPQIRGMIRK VKHLVEVEEIEEGGSNA(配列番号35),
MKRTYQPSRRKRKRTHGFLARKRTPGGRRVLKNRRRKGRWRLTV(配列番号36),
MPKVKTNRSAAKRFRITKNGKIMRNHAYRSHKTGKKRRNALRALRKKDVVSSADKNRVLRLLGKK(配列番号37),
MGQKVHPRGFRLGLSADWQAKWFNEKNYKEWLLEDEEIRKIIKNKYYHAGISEIYVERPDAERINITVKTARPGIIIGRKGSEITSLREELERKFNRRVVINIEEIKTPELDAQLVAESIASRIEKRASYKVAMKRAIMNAMRKGAQGIKVMVAGRLGGAEIARREWYLRGRLPLQKIKAIIDYGTATAWTKYGTIGIKVWIYKGDADI(配列番号38),
METQGVMKEIQYEEFEEKIIEIRRTSKVTKGGKNLSFRVVAIVGNKNGKVGLGIGKAREVPEAIRKAISAAKRNIVEVPVINGTIPHEVIGRQDASKVLLKPAAPGTGIIAGGTVRAVVELAGIQNILTKSLGSTNPLNLALATMNGLKNLLDPRKVAKLRDISVEEVFKGVRRENNA(配列番号39),
MVSLDPEKKNEIIKEFQIHENDTGSVEVQIALLTARIKHLTEHLRKHPKDFHSRRGLMKMIGRRRKMLKYLRHKKPEVYRELIAKLGIRK(配列番号40),
MGRSRKKGPYVDRKLLEKIRKLNETGEKKVIKTWSRASMIIPEMVGHTIAVYNGMKHIPVYITENMIGHRLGEFAPTRRFGGHADKKAKKGELKK(配列番号41)および
MPNIKSAKKRVRVSEKRRLRNKAYKTFFKNRIKEVLKAIENKEPKEVVLELTRKAQAAIDKAVSKGVIHKNQGARRKARLFEKVNEYLRTLETTQE(配列番号42)。
【0032】
別の態様において、前記精製タグは、MKQEKLSLHDVLIRPIITEKALILREQRKYVFEVNPLANKNLVKEAVEKLFNVKVEKVNILNMKPKPKRRGIFEGKTRSWKKAVVTLKEGYTIKELEGEH(配列番号32)およびMAHKKSGGVAKNGRDSLPKYLGVKVGDGQIVKAGNILVRQRGTRFYPGKNVGMGRDFTLFALKDGRVKFETKNNKKYVSVYEE(配列番号33)からなる群から選択される。
【0033】
標的タンパク質は、典型的には約20 〜約400 アミノ酸残基, より典型的には約30〜約400 アミノ酸残基または約30 〜約400 アミノ酸残基のサイズである。
【0034】
本発明の更なる側面において、標的タンパク質は、ヒトのタンパク質及びそれらのアナログから選択され、例えば、アプロチニン、組織因子経路インヒビターまたは他のプロテアーゼインヒビター、インシュリンまたはインシュリンアナログ、ヒトまたはウシ成長ホルモン、インターロイキン、グルカゴン、GLP-1、GLP-2、IGF-I、IGF-II、組織プラスミノゲンアクチベーター、トランスフォーミング成長因子αまたはβ、血小板由来成長因子、GRF(成長ホルモン放出因子)、免疫グロブリン、EPO、組織プラスミノゲン活性化因子、プロテインC、血液凝固因子、例えば、FVII、FVIII、FIV、および FXIII、exendin-3、exentidin-4、および酵素又はその機能的なアナログである。
【0035】
[発明の記載]
好熱性細菌の株は、~50゜Cから水の沸点以上にわたる至適温度で同定されてきた。極度に高い温度で生存する株は、超好熱菌(hyperthermophiles)または好熱菌(thermophiles)と呼ばれ、80゜C(176゜F)以上の至適温度を有する。好熱性細菌は、温泉、温かい土壌(hot soils)、地熱の噴出孔(geothermal vents)および高温が存在する他の場所で発生する。RS21_BACST(配列番号1)がクローン化され、タグとして使用された細菌(Bacillus stearothermophillus)は、例えば、多くの土壌で65゜C以上で成長する。高温で生存するために、これらの生物体は中温菌(mesophiles)のものと比較してより安定なタンパク質を進化させてきた。
【0036】
本発明の精製タグは、好熱性細菌に由来し、一般的に可溶性で、高度に安定であり、アミノ酸配列中に存在するArgおよびLys残基が大量であることから非常に塩基性のpIを有している。溶解性は、一般に高い表面電荷のタンパク質から引き出されることが信じられている。本発明の精製タグは、高いパーセンテージの陽性に荷電したアミノ酸残基LysおよびArgを含む。
【0037】
好熱菌を含む種の代表的な例は、Acetomicrobium sp.,Acidianus sp.; Acremonium sp.; Actinopolyspora sp.; Aeropyrum sp.; ,Alicyclobacillus sp., Ammonifex sp.; Amycolatopsis sp.; Anaerobaculum sp.; Anaerobranca sp.; Anaerocellum sp.; Aneurinibacillus sp.; Anoxybacillus sp.; Aquifex sp.; Archaeoglobus sp.; Bacillus sp.; Brevibacillus sp.; Caldicellulosiruptor sp.; Caldithrix sp.; Caldivirga sp.; Caloramator sp.; Caloranaerobacter sp.; Caminibacter sp.; Carboxydothermus sp.; Chaetomium sp.; Chlorobaculum sp.; Chloroflexus sp.; Clostridium sp.; Coprothermobacter sp.; Deferribacter sp.; Deinococcus sp.; Desulfacinum sp.; Desulfotomaculum sp.; Desulfurella sp.; Desulfurococcus sp.; Dictyoglomus sp.; Ferroglobus sp.; Fervidobacterium sp.; Gelria sp.; Geobacillus sp.; Halorhodospira sp.; Halothermothrix sp.; Heliobacterium sp.; Hippea sp.; Hydrogenobacter sp.; Hydrogenophilus sp.; Hyperthermus sp.; Malbranchea sp.;Marinitoga sp.; Meiothermus sp.; Metallosphaera sp.; Methanobacterium sp.; Methanocaldococcus sp.; Methanoculleus sp.; Methanohalobium sp.; Methanopyrus sp.; Methanosarcina sp.; Methanothermobacter sp.; Methanothermococcus sp.; Methanothermus sp.;Methanothrix sp.; Methanotorris sp.; Microbispora sp.; Moorella sp.; Myceliophthora sp.; Nautilia sp.; Palaeococcus sp.; Pelotomaculum sp.;Persephonella sp.; Petrotoga sp.; Picrophilus sp.; Pseudomonas sp.; Pseudonocardia sp.; Pyrobaculum sp.; Pyrococcus sp.; Pyrodictium sp.; Rhizomucor sp.; Rhizomucor sp.; Rhodothermus sp.; Roseiflexus sp.; Rubrobacter sp.; Saccharococcus sp.; Saccharomonospora sp.; Saccharopolyspora sp.; Scytalidium sp.; Spirochaeta sp.; Stetteria sp.; Streptomyces sp.; Stygiolobus sp.; Sulfobacillus sp.; Sulfolobus sp.; Sulfophobococcus sp.; Sulfurihydrogenibium sp.; Syntrophothermus sp.; Tepidimonas sp.; Thermacetogenium sp.; Thermaerobacter sp.; Thermanaerovibrio sp.; Thermicanus sp.; Thermoactinomyces sp.; Thermoanaerobacter sp.; Thermoanaero-bacterium sp.; Thermoanaerobium sp.; Thermoanaeromonas sp.; Thermoascus sp.; Thermo-bifida sp.; Thermobrachium sp.; Thermochromatium sp.; Thermococcus sp.; Thermodesulfo-vibrio sp.; Thermodesulfobacterium sp.; Thermodesulforhabdus sp.; Thermo-filum sp.; Thermohydrogenium sp.; Thermomonospora sp.; Thermonema sp.; Therm-oplasma sp.; Thermoproteus sp.; Thermosipho sp.; Thermosphaera sp.; Thermo-syntropha sp.; Thermo-terrabacterium sp.; Thermotoga sp.; Thermovenabulum sp.; Thermo-vibrio sp.; Thermus sp. およびUreibacillus sp.である。
【0038】
本発明の精製法を使用することによって、組換え遺伝子技術によって産生される多数のタンパク質を精製することができる。標的タンパク質は、典型的には低サイズから中等度サイズであり、約400アミノ酸残基までを有してもよい。標的タンパク質は、約30〜約400アミノ酸残基, 約40 〜約400アミノ酸残基, 約50 〜約400アミノ酸残基, 約60 〜約400アミノ酸残基, 約70 〜約400アミノ酸残基, 約80 〜約400アミノ酸残基, 約90 〜約400アミノ酸残基 または約100 〜約400アミノ酸残基のサイズであってもよい。
【0039】
さらに、標的タンパク質は、約30〜約300アミノ酸残基, 約40 〜約300アミノ酸残基, 約50 〜約300アミノ酸残基, 約60 〜約300アミノ酸残基, 約70 〜約300アミノ酸残基, 約80 〜約300アミノ酸残基, 約90 〜約300アミノ酸残基 または約100 〜約300アミノ酸残基であってもよい。
【0040】
さらに、標的タンパク質は、約30〜約200アミノ酸残基, 約40 〜約200アミノ酸残基, 約50 〜約200アミノ酸残基, 約60 〜約200アミノ酸残基, 約70 〜約200アミノ酸残基, 約80 〜約200アミノ酸残基, 約90 〜約200アミノ酸残基 または約100 〜約200アミノ酸残基であってもよい。
【0041】
さらに、標的タンパク質は、約30〜約100アミノ酸残基, 約40 〜約100アミノ酸残基, 約50 〜約100アミノ酸残基, 約60 〜約100アミノ酸残基, 約70 〜約100アミノ酸残基, 約80 〜約100アミノ酸残基, または約90 〜約100アミノ酸残基であってもよい。
【0042】
係るタンパク質の限定されることのない例は:アプロチニン、組織因子経路インヒビターまたは他のプロテアーゼインヒビター、インシュリンまたはインシュリン前駆体、ヒトまたはウシ成長ホルモン、インターロイキン、グルカゴン、GLP-1、GLP-2、IGF-I、IGF-II、組織プラスミノゲンアクチベーター、トランスフォーミング成長因子αまたはβ、血小板由来成長因子、GRF(成長ホルモン放出因子)、免疫グロブリン、EPO、組織プラスミノゲン活性化因子、プロテインC、血液凝固因子、例えば、FVII、FVIII、FIV、およびFXIII、exendin-3、exentidin-4、および酵素又はその機能的なアナログである。
【0043】
標的タンパク質の他の例は、トランスフォーミング成長因子α(TGF-α), トランスフォーミング成長因子β(TGF-β), 上皮成長因子(EGF), 血管内皮成長因子(VEGF), トロンボポエチン(TPO), インターフェロン, プロウロキナーゼ, ウロキナーゼ, プラスミノゲン活性化因子インヒビター1, プラスミノゲン活性化因子 インヒビター2, von Willebrandt因子, サイトカイン, 例えば、インターロイキン、例えば、インターロイキン(IL)1, IL-1Ra, IL-2, IL-4, IL-5, IL-6, IL-9, IL-11, IL-12, IL-13, IL-15, IL-16, IL-17, IL-18, IL-20 またはIL-21, コロニー刺激因子(CFS)、例えば、GM-CSF, 幹細胞刺激因子(stem cell factor), 腫瘍壊死因子、例えば、TNF-α, リンホトキシン-α, リンホトキシン-β, CD40L, またはCD30L, プロテアーゼインヒビター、例えば、アプロチニン, 酵素、例えば、スーパーオキシドジスムターゼ, アスパラギナーゼ, アルギナーゼ, アルギニン デアミナーゼ, アデノシンデアミナーゼ, リボヌクレアーゼ, カタラーゼ, ウリカーゼ, ビリルビン酸化酵素, トリプシン, パパイン, アルカリホスファターゼ, β-グルクロニダーゼ, プリン ヌクレオシド ホスホリラーゼ またはバトロキソビン, オピオイド、例えば、エンドルフィン, エンケファリンまたは非天然のオピオイド, ホルモンまたはニューロペプチド、例えば、カルシトニン, グルカゴン, ガストリン, 副腎皮質刺激ホルモン(副腎皮質刺激ホルモン), コレシストキニン, 黄体形成ホルモン, 性腺刺激ホルモン放出ホルモン, 絨毛性性腺刺激ホルモン, コルチコトロピン放出因子, バソプレッシン, オキシトシン, 抗利尿ホルモン, 甲状腺刺激ホルモン, 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン, レラキシン, プロラクチン, ペプチドYY, ニューロペプチドY, 膵臓性ポリペプチド(pancreastic polypeptide), レプチン, CART (コカインおよびアンフェタミン制御性転写物), a CART制御性ペプチド, ペリピピン(perilipin), メラノコルチン(メラノサイト刺激性的ホルモン)、例えば、MC-4, メラニン濃縮ホルモン(melanin-concentrating hormones), ナトリウム利尿性ペプチド, アドレノメデュリン, エンドセリン, セクレチン, アミリン, 血管作用性小腸ペプチド(VIP), 下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP), ボンベシン, ボンベシン様ペプチド, サイモシン, ヘパリン結合タンパク質, 可溶性CD4, 視床下部放出因子およびメラトニンである。
【0044】
本発明の別の態様において、標的蛋白質は、インシュリンレセプターアゴニストまたはアンタゴニストペプチドまたは他の細胞膜レセプターと相互作用するために設計された他のペプチドであってもよい。
【0045】
本発明の別の態様において、標的蛋白質は、プロセシング酵素、例えば、プロテアーゼ(eg エンテロキナーゼ, カスパーゼトリプシン様セリンプロテアーゼ), リパーゼ, ホスファターゼ, グリコシル ヒドロラーゼ(eg. マンノシダーゼ, キシロシダーゼ, フコシダーゼ), キナーゼ, モノまたはジオキシダーゼ, ペルオキシダーゼ, トランスアミナーゼ, カルボキシペプチダーゼ, アミダーゼ, エステラーゼ, およびホスファターゼであってもよい。
【0046】
耐熱性のタンパク質は、しばしば水素結合数の増加での塩橋及び疎水性コア(hydrophobic core)の非常に緻密なパッキングをつうじて安定化される。従って、好熱性細菌のタンパク質の構造上の統合性は、システイン残基を有さないタンパク質においてさえも、分子内相互作用を介して媒介されると信じられている。精製タグにシステイン残基が存在しないことは、有利である;というのも、これによって、精製タグ中のシステイン残基が標的タンパク質中のジスルフィドブリッジと干渉する危険性を減少させ、タンパク質発現の間の不溶性のジスルフィド連結した凝集物の形成を減少させるからである。精製タグの高い荷電も、融合タンパク質の溶解度に寄与するだろう。ペプチド結合のプロテアーゼでの切断の感受性は、局在している領域のタンパク質鎖の可動性、前記結合が暴露される程度、及び如何に局所性の相互作用がその隣接する残基の側鎖によって形成されるかによって決定される。これらのパラメータの各々は、前記タンパク質の全体の構造上の安定性によって影響される。従って、本発明の精製タグの構造上の統合性は、融合タンパク質の産生に使用される宿主細胞のトリプシン様プロテアーゼによるタグの潜在的なデグラデーションを限定する。
【0047】
幾つかのタグ化タンパク質(tagged proteins)を、クローン化し、大腸菌で発現させた。前記タグ化タンパク質は、精製タグが有意にデグラデーションすることなく発現された。また、非常に少数の夾雑ペプチドが、トリプシンでの切断後に見出された。従って、前記タグは、トリプシン様プロテアーゼに対し高い抵抗性を有し、発現されたタグ化タンパク質の効果的な切断を保証する。さらにまた、精製タグが、標的タンパク質における正しいジスルフィドブリッジの達成に干渉しないことが認められた。
【0048】
大腸菌において、大多数の豊富なタンパク質(abundant proteins)はpI4-7および8-10の範囲のpIクラスターに認められ、この条件において大多数のタンパク質および殆どの豊富なタンパク質はpI4-7の範囲に認められる。本発明の精製タグは、高度にアルカリ性であり、標的タンパク質に融合された際に、融合タンパク質の全体の正荷電およびpIが有意に増加し、宿主細胞の夾雑物の主要なバルクと明らかに区別される。これによって、宿主細胞の夾雑物が所与の陽イオン交換マトリックスに結合することができない塩濃度で又はpIで、融合タンパク質を溶出することが許容される。
【0049】
任意の適切な陽イオン交換マトリックスを、本発明の方法に使用することができる。適切な陽イオン交換カラム材料の非限定のリストは:SP-Sepharose XL(Amersham cat no 17-5073-01); Streamline SP XL (Amersham cat no 17-5076-01); Streamline Direct CST(Amersham cat no 17-5266-03); Obelix SP (Amersham cat no 11-0010-86); S-Support Unosphere, (BioRad cat no 156-0113); SP-Sepharose High Performance (Amersham cat no 17-1087-03); Source30S (Amersham cat no 17-1273-02)およびToyopearl SP650S(TosoHaas cat no 08437)である。
【0050】
本発明の精製タグは、選択した精製タグのpIおよび電荷に依存して、特定の標的蛋白質の全体の電荷に異なる様式で寄与する。従って、特定の標的蛋白質の精製は、精製タグを選択することによって至適化することができ、これによって最低限の量の宿主細胞の夾雑物のみが共溶出される塩濃度またはpHで、融合タンパク質の溶出が可能となる。
【0051】
リンカー中のアミノ酸残基は、タグ化タンパク質に可動性の低い構造を供給するアミノ酸残基から選択することができる。これによって、標的蛋白質および精製タグの間の干渉を、最小化させえる。一態様において、リンカーは、構造的な要素(例えば、αヘリックス構造)を具備してもよい。
【0052】
細胞によって産生される発現されたタグ化された又は融合のタンパク質は、従来の方法で培養培地から回収しえる。この方法には、宿主細胞を培地から遠心分離または濾過で分離すること、融合タンパク質を機械的な細胞破砕(例えば、超音波処理または圧力)によって放出させること、上清のタンパク性成分(proteinaqueous components)を沈殿させる又は塩(例えば、硫酸アンモニウム)の手段で濾過することが含まれる。本発明の精製タグの熱安定性に依存して、宿主細胞の夾雑物を熱沈殿させることを備えるプレクロマトグラフィー工程も可能である〔特に、標的蛋白質が、融合タグ(fusion tag)と比較して小さい場合〕。超音波処理の後、適切な濃度のNaClを、さらに宿主細胞の夾雑物が陽イオン交換マトリックスに結合する能力を減少させるために添加することができる。陽イオン交換クロマトグラフィーの後、融合タンパク質を、塩グラジエントで溶出しえる。そして、融合タンパク質を含んでいる溶出液のフラクションが収集された。
【0053】
融合タンパク質の純度は、クマシー染色したPAGEゲルをゲルイメージ分析ソフトウェアを用いて分析することによって評価された。
【0054】
第1の精製工程の後、精製タグを、直接的に適切なプロセシング酵素(例えば、EK)で切断することができる。塩濃度が高すぎる場合、融合タンパク質を、切断前に脱塩してもよい。切断部位は、精製した融合タンパク質を単離した後に、効率的なインビトロ切断が可能な任意の切断部位であってもよい。最も一般的に使用されるエンテロキナーゼ切断部位は、配列DDDDK(配列番号10)を有し、この配列において切断はKの後で発生する。他の限定されないプロセシング酵素切断部位には、次のものが含まれる:Xa因子切断部位、最も一般的にはIEGR(配列番号11)であり、この配列においてRの後に切断が発生する;トロンビン切断部位、最も一般的にはLVPRG(配列番号12)またはLVPRGS(配列番号13)であり、この配列においてRの後に切断が発生する;タバコ etcs ウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位、最も一般的にはENLYFQG/S(配列番号14)であり、この配列においてQの後に切断が発生する;およびHRV14 3Cプロテアーゼ切断部位、最も一般的にはLEVLFQ/GPであり、この配列においてQの後に切断が発生する。
【0055】
切断に続く工程は、さらに陽イオン交換カラム精製を第1の工程として備えてもよい。このようなシナリオにおいて、プロセシング酵素により放出される精製タグは極度に高いpIを有し、陽イオン交換マトリックスへの非常に効率的な結合が導かれる。切断されたタンパク質は、この時点で、カラムのフロースルーに収集することができる。他方で、切断された精製タグと生産細胞株(production cell line)からの残存している高度に荷電した夾雑物とは、陽イオン交換カラムに保持される。
【0056】
切断に続く精製工程は、他の精製手段(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー, 疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびゲル濾過クロマトグラフィー)を備えてもよい(例えば、Scopes, R., Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y., 1982を参照されたい)。
【0057】
治療上の目的のために、標的蛋白質は、最後の精製工程の後に実質的に純粋でなければならない。従って、本発明の好適な態様において、標的蛋白質は、少なくとも約90〜95%均質(homogeneity)、好ましくは少なくとも約98%均質にまで精製される。純度は、例えば、ゲル電気泳動、アミノ酸分析、または他のHPLCに基づく方法により評価しえる。
【0058】
融合タンパク質をコード化している核酸構築物は、適切なゲノム又はcDNA起源のものでよく、例えば、ゲノム又はcDNAライブラリを調製すること、および前記融合タンパク質の全部または部分をコード化しているDNA配列を、合成オリゴヌクレオチド プローブを用いたハイブリダイゼーションによりスクリーニングすることにより取得される、これらは標準の技術(cf. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd. Ed. Cold Spring Harbor Labora-tory, Cold Spring Harbor, New York, 1989)にしたがって実施される。
【0059】
また、融合タンパク質をコード化している核酸構築物は、確立された標準方法、例えば、文献〔Beaucage and Caruthers, Tetrahedron Letters 22 (1981), 1859 - 1869〕に記載された亜リン酸アミダイト法(phosphoamidite method)、または文献〔Matthes et al., EMBO Journal 3 (1984), 801 - 805〕に記載された方法により合成的に調製してもよい。亜リン酸アミダイト法にしたがって、オリゴヌクレオチドが合成され(例えば、自動のDNA合成機において)、精製され、アニールされ(annealed)、連結され(ligated)、そして適切なベクターにクローン化される。融合タンパク質をコード化しているDNA配列は、オーバーラップ伸長PCR(overlap extension PCR)によるスプライシングなどのポリメラーゼ連鎖反応法により調製しえる〔例えば、US 4,683,202, Saiki et al., Science 239 (1988), 487 - 491, or Sambrook et al.,(上記)に記載のように〕。
【0060】
さらに、核酸構築物は、合成およびゲノムの混合性のもの、合成およびcDNAの混合性のもの又はゲノムおよびcDNA起源の混合性のものであってもよく、合成、ゲノム、またはcDNA起源のフラグメント(必要に応じて)、全体の核酸構築物(the entire nucleic acid construct)の様々な部分に対応するフラグメントを、標準技術に基づいて連結することにより調製される。
【0061】
融合タンパク質をコード化しているDNA配列は、通常は組換え型ベクターに挿入される(これは、組換えDNA処置に都合よく供される、任意のベクターでよい);また、ベクターの選択は、それが導入される宿主細胞にしばしば依存する。以上のようなことから、前記ベクターは自律的に複製するベクター、即ち、染色体外の実体(extrachromosomal entity)として存在し、その複製が染色体複製に非依存性であるベクター(例えば、プラスミド)であってもよい。或いは、前記ベクターは、宿主細胞に導入された際に、前記宿主細胞ゲノムに統合され、それが統合された染色体と共に複製されるベクターであってもよい。
【0062】
前記ベクターは、好ましくは発現ベクター中の融合タンパク質をコード化しているDNA配列が前記DNAの転写に必要とされる付加的なセグメントに動作可能に連結される発現ベクターである。通常は、前記発現ベクターは、プラスミドまたはウイルスのDNAに由来するものである、或いは両方のエレメントを含有していてもよい。「動作可能に連結(operably linked)」の用語は、前記セグメントが、それらがそれらの意図する目的に関して協調して機能するように配置されることを示す(例えば、転写は、プロモーターで開始され、そして融合タンパク質をコード化しているDNA配列を通して進行する)。
【0063】
融合タンパク質の発現に使用するための発現ベクターは、クローン化された遺伝子またはcDNAの転写を方向付ける能力を有するプロモーターを具備する。前記プロモーターは、選択された宿主細胞において転写活性を呈する任意のDNA配列でよく、前記宿主細胞に対して同種性の又は異種性のタンパク質をコード化している遺伝子に由来するものであってもよい。
哺乳類細胞におけるDNAの転写を方向付けるための適切なプロモーターの例は、SV40プロモーター(Subramani et al., Mol. Cell Biol. 1 (1981), 854 -864)、MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター(Palmiter et al., Science 222 (1983), 809 - 814)、CMVプロモーター(Boshart et al., Cell 41:521-530, 1985)、またはアデノウイルス2主要後期プロモーター(Kaufman and Sharp, Mol. Cell. Biol, 2:1304-1319, 1982)である。
【0064】
酵母宿主細胞における使用に関して適切なプロモーターの例には、酵母の解糖遺伝子(glycolytic genes)からのプロモーター(Hitzeman et al., J. Biol. Chem. 255 (1980), 12073 - 12080; Alber and Kawasaki, J. Mol. Appl. Gen. 1 (1982), 419 - 434)またはアルコール脱水素酵素遺伝子(Young et al., in Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals (Hollaender et al, eds.), Plenum Press, New York, 1982)、またはTPI1(US 4,599,311)またはADH2-4c (Russell et al., Nature 304 (1983), 652 - 654)プロモーターが含まれる。
【0065】
糸状菌(filamentous fungus)宿主細胞における使用に関して適切なプロモーターの例は、例えば、ADH3プロモーター(McKnight et al., The EMBO J. 4 (1985), 2093 - 2099)またはtpiAプロモーターである。他の有用なプロモーターの例は、A.oryzae TAKAアミラーゼ、Rhizomucor mieheiアスパラギン酸プロテイナーゼ、A.niger中性アルファ-アミラーゼ、A.niger酸安定性アルファ-アミラーゼ(acid stable alpha-amylase)、A.niger、またはA.awamoriグルコアミラーゼ(gluA)、Rhizomucor mieheiリパーゼ、A.oryzaeアルカリ性プロテアーゼ、A.oryzae三炭糖リン酸塩イソメラーゼ、またはA.nidulansアセトアミダーゼをコード化している遺伝子に由来するものである。好適なものは、TAKA-アミラーゼおよびgluAプロモーターである。適切なプロモーターは、例えば、EP 238023およびEP 383779に記載されている。
【0066】
細菌の宿主細胞における使用に適切なプロモータの例には、Bacillus stearothermophilusのマルトース産生性アミラーゼ遺伝子、Bacillus licheniformisのアルファ-アミラーゼ遺伝子、Bacillus amyloliquefaciensのBANアミラーゼ遺伝子、Bacillus subtilisのアルカリ性プロテアーゼ遺伝子、又はBacillus pumilus キシロシダーゼ遺伝子のプロモータ、又はファージのLambda PRもしくはPLプロモータ又は大腸菌における発現に使用するためのlac, trp, phoA, araBAD, tac, バクテリオファージT7およびcspAなどのプロモータが含まれる。
【0067】
また、前記ベクターは、宿主細胞における欠陥を相補(complements)する遺伝子産物などの選択マーカーを具備してもよく、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードしている遺伝子またはSchizosaccharomyces pombeのTPI遺伝子(P.R. Russell, Gene 40, 1985, pp. 125-130によって記載)、又はアンピシリン, カナマイシン, テトラサイクリン, クロラムフェニコール, ネオマイシン, ハイグロマイシンまたはメトトレキセートなどの薬物に対する耐性を付与するマーカー遺伝子などである。糸状菌類に関する、選択可能なマーカーには、amdS, pyrG, argB, niaDおよびsCが含まれる。
【0068】
また、融合タンパク質をコード化しているDNA配列は、必要な場合には、適切なターミネーター〔例えば、ヒト成長ホルモンターミネーター(Palmiter et al., Science 222, 1983, pp. 809-814)またはTPI1(Alber and Kawasaki, J. Mol. Appl. Gen. 1, 1982, pp. 419-434)またはADH3 (McKnight et al., The EMBO J. 4, 1985, pp. 2093-2099)ターミネーター〕に動作可能に連結されてもよい。また、発現ベクターは、前記プロモーターから下流で且つ融合ポリペプチド配列自身に関する挿入部位から上流に位置するRNAスプライス部位のセットを含んでいてもよい。好適なRNAスプライス部位は、アデノウイルスおよび/または免疫グロブリン遺伝子から取得し得る。発現ベクターに含まれるものは、挿入部位の下流に位置するポリアデニル化シグナルである。特に好適なポリアデニル化シグナルには、SV40の早期の若しくは遅発型のポリアデニル化シグナル(Kaufman and Sharp, ibid.)、アデノウイルス5Elb領域、ヒト成長ホルモン遺伝子ターミネーターのポリアデニル化シグナル(DeNoto et al. Nucl. Acids Res. 9:3719-3730, 1981)が含まれる。また、発現ベクターは、非コードの(noncoding)ウイルス性のリーダー配列〔例えば、アデノウイルス2 トリパタイト(tripartite)リーダー(前記プロモーターおよびRNAスプライス部位の間に位置する〕;およびエンハンサー配列(例えばSV40エンハンサー)を含む。
【0069】
融合タンパク質を宿主細胞の分泌経路(secretory pathway)へと方向付ける(direct)ために、分泌性シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列、またはプレ配列としても知られる)を組換えベクターに提供してもよい。分泌性シグナル配列は、正しい読み枠で、融合タンパク質をコード化しているDNA配列と連結される。分泌性シグナル配列は、通常前記ペプチドをコード化しているDNA配列に対して、5'に配置される。分泌性シグナル配列は、前記タンパク質と通常関連するものであってもよい又は別の分泌タンパク質をコード化している遺伝子からのものであってもよい。
【0070】
酵母細胞からの分泌に関して、分泌性シグナル配列は、発現したポリペプチドの前記細胞の分泌経路への効率的な方向付けを保証する任意のシグナルペプチドをコード化してもよい。前記シグナルペプチドは、自然発生的な(naturally occurring)シグナルペプチド、又はその機能的な部分であってもよい、又は合成ペプチドであってもよい。適切なシグナルペプチドは、α-因子シグナルペプチド(cf. US 4,870,008)、マウス唾液アミラーゼのシグナルペプチド(cf. O. Hagenbuchle et al., Nature 289, 1981, pp. 643-646)、修飾したカルボキシペプチダーゼシグナルペプチド(cf. L.A. Valls et al., Cell 48, 1987, pp. 887-897)、酵母BAR1シグナルペプチド(cf. WO 87/02670)、または酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3(YAP3)シグナルペプチド(cf. M. Egel-Mitani et al., Yeast 6, 1990, pp. 127-137)であることが見出されている。
【0071】
酵母における効率的な分泌に関して、リーダーペプチドをコード化している配列が、シグナル配列の下流およびポリペプチドをコード化しているDNA配列の上流に挿入されてもよい。リーダーペプチドの機能は、発現されたペプチドを小胞体からゴルジ体へと、更に培養培地への分泌に関連する分泌小胞(secretory vesicle)へと方向付けることを可能にすることである(即ち、ポリペプチドの、細胞壁を横切った輸送又は少なくとも細胞膜を介した酵母細胞の細胞膜周辺腔への輸送)。前記リーダーペプチドは、酵母α-因子リーダーであってもよい(その使用は、例えば、US 4,546,082、US 4,870,008、EP 16 201、EP 123 294、EP 123 544およびEP 163 529に記載されている)。或いは、前記リーダーペプチドは合成プロペプチドであってもよく、つまり自然界でみつけることができないリーダーペプチドであってもよい。合成リーダーペプチドは、例えば、WO 89/02463またはWO 92/11378に記載されたように構築し得る。
【0072】
糸状菌における使用に関して、前記シグナルペプチドは、コウジカビ属の種(Aspergillus sp)のアミラーゼまたはグルコアミラーゼをコード化している遺伝子、Rhizomucor mieheiのリパーゼまたはプロテアーゼまたはHumicola lanuginosaのリパーゼをコード化している遺伝子から由来するものであってもよい。前記シグナルペプチドは、好ましくはA.oryzae TAKAアミラーゼ、A.niger中性アルファ-アミラーゼ、A.niger酸安定性アミラーゼ、またはA.nigerグルコアミラーゼをコード化している遺伝子から由来するものである。適切なシグナルペプチドは、例えば、EP 238023およびEP 215594に開示されている。
【0073】
融合タンパク質をコード化しているDNA構築物が導入された宿主細胞は、本発明の融合タンパク質を産生する能力がある任意の細胞であってもよく、細菌、酵母、真菌、および高等真核細胞が含まれる。
【0074】
培養に際して本発明のポリペプチドを産生する能力がある細菌性の宿主細胞の例は、例えばBacillus(例えば、B. subtilis, B. licheniformis, B. lentus, B. brevis, B. stearothermophilus, B. alkalophilus, B. amyloliquefaciens, B. coagulans, B. circulans, B. lautus, B. megatherium またはB. thuringiensisの株)の株、又はStreptomyces(例えば、S. lividansまたはS. murinus)の株などのグラム陽性細菌、またはグラム陰性細菌(例えば、Echerichia coliの株)である。細菌の形質転換は、既知の様式のプロトプラスト形質転換により又はコンピテント細胞を用いることにより達成されてもよい(cf. Sambrook et al., supra)。
【0075】
タンパク質を細菌(例えば、E. coli)中で発現させた場合、タンパク質は細胞質に保持されるか〔典型的には、不溶性の顆粒として(封入体として知られる)〕又は細胞膜周辺腔へと細菌性の分泌配列によって方向付けられえる。前者のケースにおいて、細胞は溶解される。そして、顆粒が、回収され、変性され、ポリペプチドが変性剤を希釈することによってリフォールドされる。後者のケースにおいて、標的タンパク質は、強いシグナルペプチド配列〔例えば、phoA, degQ, degS, degP, OmpA, OmpF, OmpH, OmpP, OmpT, lamb またはpelB(Erwania carotovoraから)〕と共にクローン化しえる。ポリペプチドは、細胞膜周辺腔から、細胞膜周辺腔の内容物を放出させるために細胞を破壊すること(例えば、超音波処理または浸透圧ショックによって)、およびポリペプチドを回収することによって回収されえる。
【0076】
適切な酵母細胞の例には、Saccharomyces spp.またはSchizosaccharomyces spp.の細胞が、特にSaccharomyces cerevisiaeまたはSaccharomyces kluyveriの株が含まれる。酵母細胞を異種性のDNAで形質転換する及びそれからの異種性のポリペプチドを産生させるための方法は、例えば、US 4,599,311、US 4,931,373、US 4,870,008、5,037,743、および US 4,845,075に記載され、これら全ては参照によって援用される。形質転換された細胞は、選択可能なマーカー(一般に薬剤抵抗性または特定の栄養分(例えば、ロイシン)の非存在下で成長する能力)により決定される表現型により選択される。酵母における使用に関して好適なベクターは、US 4,931,373に開示されるPOT1ベクターである。ヒトのポリペプチドをコード化しているDNA配列は、シグナル配列および任意でリーダー配列(例えば、上記のような)により先行されていてもよい。適切な酵母細胞の更なる例は、Kluyveromyces(例えば、K.lactis)、hansenula(例えば、H.polymorpha、またはPichia(例えば、P.pastoris)の株である(cf. Gleeson et al., J. Gen. Microbiol. 132, 1986, pp. 3459-3465; US 4,882,279)。
【0077】
他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えば、コウジカビ属 spp.(Aspergillus spp.)、パンカビ属 spp.(Neurospora spp.)、フザリウム spp.(Fusarium spp.)、またはトリコデルマ属 spp.(Trichoderma spp.)の細胞、特にA.oryzae、A.nidulans、またはA.nigerの株である。コウジカビ属 spp.のタンパク質の発現に関する使用は、例えば、EP 272 277、EP 238 023、EP 184 438に記載されている。F.oxysporumの形質転換は、例えば、文献(Malardier et al., 1989, Gene 78: 147-156)に記載のとおり実施し得る。トリコデルマ属 spp.の形質転換は、例えば、EP 244 234に記載のとおり実施し得る。
【0078】
糸状菌が宿主細胞として使用される場合、それを本発明のDNA構築物で形質転換でき、この形質転換は前記DNA構築物を宿主染色体に統合させて組換え宿主細胞(recombinant host cell)を得ることによって都合よくなされる。この統合は一般的には有利であると考えられる。というのも、前記DNA配列が前記細胞において安定的に維持される可能性が高いからである。前記DNA配列の宿主染色体への統合は、従来の方法(例えば、相同性の又は非相同性の組換えによる方法)にしたがって実施し得る。
【0079】
形質転換された又はトランスフェクションされた宿主細胞は、次に適切な栄養培地中で、融合タンパク質の発現を許容する条件下で培養され、その後、生じたペプチドの全部または一部を培養物から回収し得る。前記細胞を培養するために使用される培地は、前記宿主細胞を成長させるために適切な任意の従来の培地、例えば、適切なサプリメントを含有する最小の又は複合的(complex)な培地であってもよい。適切な培地は、商業上の供給者から購入される又は公開されたレシピ(例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログ中の)にしたがって調製し得る。
【0080】
[定 義]
本発明において、「好熱性微生物(Thermophilic microorganisms)」は、約 50゜C〜約 100゜Cで至適に成長する生物を意味し、通常、30〜37 ゜Cの温度で至適に成長する中温菌(mesophiles)と対照される。「好熱性細菌(thermophilic bacteria)」の用語は、同様に超好熱性細菌を包含する。
【0081】
「リボソームタンパク質(Ribosomal proteins)」は、全ての生物においてmRNA特異的タンパク質合成(mRNA-directed protein synthesis)を触媒する粒子であるリボソームのペプチドまたはポリペプチドのサブユニットである。リボソームタンパク質は、ドメインデータベース(例えば、InterProおよびProsite)に報告されたリボソームサイン(ribosomal signatures)による彼らの配列に基づいて規定される。
【0082】
「組換えタンパク質(Recombinant protein)」は、組換え体の製造技術によって製造されたタンパク質である。
【0083】
発現「精製タグ」は、標的蛋白質のNまたはC末端の何れかで標的蛋白質に融合され、本発明の精製に使用されるペプチド配列を意味する。
【0084】
発現「標的タンパク質(Target protein)」は、最終的な所望のタンパク質を意味する。従って、標的タンパク質は、発現した融合タンパク質であってもよい又はより典型的には精製タグが切断された後に単離されたタンパク質である。
【0085】
発現「融合タンパク質(Fusion protein)」または「タグ化タンパク質(tagged protein)」は、標的タンパク質のCまたはN末端の何れかに付着させた精製タグを有しているタンパク質を意味する。
【0086】
「hGH」は、ヒト成長ホルモンにおける1〜191 アミノ酸からなる成熟ヒト成長ホルモン(mature human growth hormone)を意味する。
【0087】
「hGH-Leu-Ala」は、C末端のLeu-Ala伸長を有する成熟ヒト成長ホルモンを意味する。
【0088】
発現「高度に塩基性のタンパク質(a highly basic protein)」は、高いパーセントの塩基性アミノ酸残基LysおよびArg(例えば、タンパク質中のアミノ酸残基の全体数の少なくとも約 15%)を有しているタンパク質を意味する。
【0089】
「適用物(Application)」は、精製カラムに負荷(loaded)される、融合タンパク質を含んでいるサンプルを意味する。
【0090】
「フロースルー(Flow through)」は、精製カラムに結合しない宿主細胞のタンパク質および夾雑物を含んでいる適用物の一部を意味する。
【0091】
「主なピーク(Main peak)」は、最高のUV強度を有し且つ融合タンパク質を含む、精製クロマトグラム中のピークを意味する。
【0092】
「mAU」は、ミリ吸光単位(milli absorbance units)である。
【0093】
「UV280強度(UV 280 intensity)」は、タンパク質が吸収する280nmの波長でミリ吸光単位で測定された吸光度である。
【0094】
IPTGは、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドである。
【0095】
EKは、エンテロキナーゼである。
【0096】
TICは、全イオン数(Total Ion Count)である。
【0097】
発現「リンカー(linker)」は、精製タグおよび標的タンパク質を共に連結しているアミノ酸配列を意味する。リンカー配列は、標的タンパク質の良好な折りたたみを促進する配列および/または精製タグを切断するための切断部位を具備しえる。
【0098】
「ヘリックス構造(helix structure)」は、鎖間の水素結合によって安定化されたコイル構造を生じるアミノ酸配列を有していることによって特徴付けられる。
【0099】
発現「タンパク質」は、ペプチドおよびポリペプチドの双方を含む。
【0100】
「%溶解度(% Solubility)」は次のように規定される: 宿主の細胞溶解産物からの可溶性の融合タンパク質の量/宿主の細胞溶解産物からの可溶性+不溶性の融合タンパク質の量X100。
【0101】
「%純度(% Purity)」は次のように規定される: 所望のタンパク質の量/所望のタンパク質の量+宿主細胞の夾雑物の量X100。
【0102】
SOE PCRは、オーバーラップ伸長PCRによるスプライシングを意味する。
【0103】
LC-MSは、液体クロマトグラフィー質量分析を意味する。
【0104】
本発明において、「機能的なアナログ(functional analogue)」の用語は、融合タンパク質の天然のタンパク質(native protein)と類似の機能を有するタンパク質を意味する。前記タンパク質は、天然のタンパク質と構造的に類似してもよい及び天然のタンパク質のCおよびN端の末端の何れか又は両方への1以上のアミノ酸の付加、天然のアミノ酸配列における1又は幾つか(a number of)の異なる部位での1以上のアミノ酸の置換、天然のタンパク質の何れか又は両方の端での又は前記アミノ酸配列における1又はいくつか(several)の部位での1以上のアミノ酸の欠失、又は天然のアミノ酸配列における1以上の部位での1以上のアミノ酸の付加によって天然のタンパク質から由来してもよい。従って、インスリンアナログは、ヒトインスリン分子と比較して、Aおよび/またはBアミノ酸鎖の1以上の変異(mutations)、置換、欠失および/または付加を有しているインスリン分子である。前記インスリンアナログは好ましくは次のようなものである、つまり1以上の天然のアミノ酸残基のなかの好ましくは1、2、または3つが、別のコード可能な(codable)アミノ酸残基によって置換されているものである。従って、B鎖のポジション28は、天然のPro残基からAsp、Lys、またはIleのうちの1つに修飾されえる。別の態様において、ポジションB29でのLysはProに修飾される;また、ポジションA21でのAsnはAla, Gln, Glu, Gly, His, Ile, Leu, Met, Ser, Thr, Trp, Tyr またはValに、特にGly, Ala, Ser, またはThrに及び好ましくはGlyに修飾しえる。さらにまた、ポジションB3でのAsnは、Lysに修飾しえる。インスリンアナログの更なる例は、des(B30)ヒトインスリン、PheB1を欠失したインスリンアナログ、A鎖および/またはB鎖がN末端拡張(N-terminal extension)を有するインスリンアナログ、並びにA鎖および/またはB鎖がC末端拡張を有するインスリンアナログである。たとえば、1または2つのArgを、ポジションB1に付加しえる。
【0105】
また、他のタンパク質に関する前駆体または中間体は、本発明の方法によって精製されえる。係る前駆体の例は、アミノ酸配列B(1-29)-Ala Ala Lys-A(1-21)を含むインスリン前駆体であり、ここで、A(1-21)はヒトインスリンのA鎖であり、B(1-29)はヒトインスリンのB鎖(ここでThr(B30)は欠落している)である。
【0106】
ヒト成長ホルモンアナログは、Ser-hGHまたはhGH-Leu-Alaであってもよい。GLP1アナログはK34R-GLP-1(9-37)であってもよく、GLP2アナログはGly2-GLP-2(1-33)またはLys17Arg30-GLP-2(1-33)であってもよい。
【0107】
本発明において、アミノ酸の三文字または一文字の表示は、表1に示したとおり、これらの通常の意味で使用される。明示的に示されない限り、本明細書において言及されるアミノ酸は、Lアミノ酸である。更に、ペプチドのアミノ酸配列の左及び右の端は、それぞれ、他に特定されない限り、N-およびC-末端である。
【表1】

本明細書中に記載される、文献(publications)、特許出願(patent applications)、および特許(patents)を含む全ての文献は、その全体が並びに各文献が参照によって援用されると個別に具体的に指摘され且つその全体が本願発明に記載されているのと同程度にまで(法が許容する最大程度にまで)参照によって援用される。
【0108】
全ての見出し(heading)および小見出し(sub-headings)は、便宜上の目的でのみ本明細書中に使用され、これらは本発明を如何なる様式においても限定するように解釈されない。
【0109】
本明細書中で記載される、任意の及び全ての例又は例示的な用語(「例えば」など)は、単に本発明をよりよく説明することを意図しており、他で請求しない限り本発明の範囲を限定しない。明細書における用語は、任意の非請求の要素(any non-claimed element)を、本発明の実施に必須のものと指摘していると解釈されるべきではない。
【0110】
本明細書での特許文書(patent documents)の引用(citation)および援用(incorporation)は、便宜上の目的でのみなされ、係る特許文書の有効性(validity)、特許可能性(patentability)、および/または権利行使可能性(enforceability)の如何なる見解(view)をも反映するものではない。
【0111】
本発明は、適用される法律が許可する、本願の特許請求の範囲に記載される対象(subject matter)の全ての修飾物(modifications)および均等物(equivalents)を含む。
【例】
【0112】
[例1]
精製タグ 配列番号1および異なるリンカーに融合された大腸菌におけるhGHのクローニングおよび発現
1. クローニング
配列番号1は、好熱菌(Bacillus stearothermophillus)のシークエンスされたゲノムに由来する30Sリボソームタンパク質S21である。タグの分子量は6.7 kDaと計算され、タグのpIは11.3と計算された。ヒトhGHに融合された場合に、配列番号6を有するリンカーを含んでいる融合タンパク質(NNC20)は、29.9 kDaの分子量および9.2のpIを有するだろう。
【0113】
精製タグをコード化しているrpsU遺伝子を、大腸菌での発現にコドンを至適化した。タグを、オーバーラップ伸長によるスプライシング(SOE;splicing by overlap extension)を用いて、全体の遺伝子配列をカバーしている6つの異なるプライマーから組み立てた。2回の連続的なPCRを行なった。
【0114】
最初の反応において、全ての6つのプライマーを、15サイクルで50゜Cの低アニーリング温度を用いる標準的なPCR反応で集合させた。PCR条件は、以下のとおりであり、Pyrobestポリメラーゼシステム(Takara)を用いた:
95゜C: 3 min.(変性)
94゜C: 45 sec(変性)
50゜C: 45 sec(アニーリング)
72゜C: 45 sec(伸長)
15サイクル
72゜C: 10min
第2のPCR反応に関して、第1反応からのPCR産物の1/50希釈物を鋳型として使用した。また、前記遺伝子の5’および3’-端を含んでいるプライマーを使用して、完全長のタグを増幅した。第2のPCR反応に関するPCR条件は、最初のものと同じであった(但し、アニーリング温度は54゜Cに、サイクル数は25に増加された)。
【0115】
rspU遺伝子の5’-端にマッチング(matching)している末端5’端のフォワードプライマーは、NdeI制限酵素切断部位で設計され、末端の3’-リバースプライマーには、SacII部位を具備させた。NdeIおよびSacII部位が選択されたのは、それらをエンテロキナーゼ切断部位DDDDK(配列番号10)の前にN末端ユビキチンタグとSacII部位を含んでいるリンカーとを有している配列をコード化しているヒト成長ホルモンを既に含んでいるpET11a発現ベクター(Novagen)に、精製タグ配列のライゲーションのためのクローニング部位として使用することができるからである。
【0116】
第二のPCR産物を、アガロースゲル上の明瞭なバンドから精製し、NdeIおよびSacII制限酵素で切断した。pET11a発現ベクターも、NdeIおよびSacIIで切断した。直線化したベクターへのRS21_BACST挿入物のライゲーションをT4リガーゼを用いて行なうことによって、成熟hGHに連結されたRS21_BACSTタグに介在性のRRGGSDDDDK(配列番号6)リンカーを伴うものをコード化している構築物が得られる。ライゲーション産物を、LB―アンピシリンプレート上で大腸菌JM109に形質転換した。プレート上のコロニーを一晩増殖させ、これらのプラスミドを標準のミニプレップ法で単離し、精製タグ挿入物の存在をNdeIおよびSacIIでの制限酵素切断の手段で評価した。正しい切断パターンを有するプラスミドを、DNAシークエンスした。正しいDNA配列を有するプラスミドを、大腸菌発現株BL21に形質転換し、それぞれLB/アンピシリンプレート上で一晩静置した。
【0117】
異なるリンカー領域を有しているhGH融合タンパク質のバリアントをコード化している他のpET11a発現ベクターを作出した。通常、これは、リンカー配列番号6領域を適切な制限切断酵素で除去し、新たなリンカー領域をコード化している二本鎖オリゴにライゲーションすることによって達成された。前記オリゴは、新しいリンカーをコード化している2つの相補的なオリゴをアニーリングさせることによって得られ、直線化したベクターにおける粘着末端と適合する粘着末端を有している。以下の融合hGH構築物を、クローン化した、即ち:
【表2】

2. 大腸菌BL21における発現
hGHの融合構築物をコード化しているプラスミドで形質転換した大腸菌BL21細胞を、37゜CでOD600を~0.6にまで成長させた。温度を、次に25゜Cに約30min低下させた。0.5または1mMのIPTGを、培養物に3時間添加した。細胞を、次に遠心分離で収穫した。SDS-PAGE分析によって、正しいサイズのhGH融合タンパク質が大腸菌中に誘導されることが可視化された。IPTGでの誘導後に得られた完全長の融合タンパク質の量に差を示す異なる構築物間の比較。このようにNNC20.3を、NNC20、NN20.1、NN20.2およびNN20.2に関して観察されたよりも高収量で発現させた。
【0118】
NNC20およびNNC20.3は、3時間25゜Cで誘導した際に>80%が可溶性であり、アミノ酸配列から計算されたとおり~30 kDaのMWを有していた。
【0119】
3. NNC20の精製
最初に、異なる塩濃度およびpHを有している異なる緩衝液中に溶解したペレットを用いる結合アッセイによって、次の事項が示された;その事項とは、前記融合タンパク質が、9までのpHと0.3 MのNaClまでの塩濃度とでSPセファロースFFマトリックス(アマシャムファルマシア)に効率的に結合することである。このことは、配列番号1-hGHタンパク質を、非常に少ない他のタンパク質のみが前記マトリックスに結合できるはずであろう条件で精製できることを指摘している。
【0120】
NNC20を発現している大腸菌BL21の80mlの培養物からのペレットを25mMのリン酸ナトリウム、5mMのEDTA(pH8)の中で超音波処理し、細胞破壊片を遠心分離で除去した。超音波処理後、NaClを終濃度0.3Mで添加し、大腸菌の夾雑物が陽イオン交換マトリックスに結合する能力を減少させた。そして、適用物(application)を濾過滅菌した。精製を、AKTAエキスプロラ(アマシャム ファルマシア)で流速0.5ml/minで行なった。以下の緩衝液を使用した:
緩衝液A: 25mM リン酸ナトリウム, 5mM EDTA, pH8, 0.3M NaCl
緩衝液B: 25mM リン酸ナトリウム, 5mM EDTA, pH8,1M NaCl,
緩衝液C: 2M NaCl
事前に充填されたSP FF(HR5/5)カラム(アマシャムファルマシア)を、緩衝液Aを5カラム容量(CV;column volumes)適用することによって平衡化した。NNC20を含有している適用物を、前記カラムに適用し、非結合のサンプルを緩衝液Aで20CVで洗浄した。0-50%緩衝液Bのグラジエントを、20CVで使用した。最終的に、緩衝液Cを10CV用いた定組成ステップ(isocratic step)を、標的タンパク質を前記カラムから溶出させるために使用した。
【0121】
溶出した融合タンパク質を含有しているフラクションを、収集した。そして、クロマトグラムのNNC20の主たるピーク中に存在する融合タンパク質の純度を、SDS-PAGE画像解析で評価した。NNC20の主たるピークの範囲のフラクションのクマシー染色したSDS-PAGEゲルによって、>90%のタンパク質純度であると評価された。図2は、NNC20の主たるピークから収集されたフラクションを示し、これには非還元性の条件下でSDS-PAGEゲルで泳動した融合タンパク質が含まれる。
【0122】
4. NNC20.3の精製
NNC20.3を、pNNC20に関して記載したとおり大腸菌(BL21)中で発現させた(但し、僅か0.5 mMのIPTGを融合タンパク質を誘導するために使用した)。40mlの培養物からのペレットを、OD600を5まで、25 mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7に溶解し、細胞片を遠心分離で除去した。生じた上清を、濾過滅菌し、以下の緩衝液を用いたAKTAエキスプロラ(流速 0.5ml/min)で精製した、使用した該緩衝液を以下に示す:
緩衝液 A: 25mM リン酸ナトリウム pH7
緩衝液 B: 25mM リン酸ナトリウム pH7および1M NaCl
SP FFマトリックス(アマシャムファルマシア)を手で充填した1 mlカラムを、緩衝液Aで5カラム容量(CV)で平衡化した。NNC20.3を含有している適用物を、前記カラムに適用し、非結合のサンプルを緩衝液Aを7CV適用することで洗浄した。0-100%の緩衝液Bのグラジエントを、融合タンパク質が約0.5Mの濃度のNaClで溶出される間に20CV使用した。主なピークに存在する融合タンパク質の純度は、ImageJ分析ソフトウェア(Rasband, W.S., ImageJ, U. S. National Institutes of Health, Bethesda, Maryland, USA, http://rsb.info.nih.gov/ij/, 1997-2005)を用いて約90%であると見積もられた。図3Aは、およそ最大半減(half maximal)の伝導率でNNC20.3の溶出を示しているクロマトグラムを示す。
【0123】
~3 mlの容量を示しているフラクション13および14を、プールし、0.01 U/mlの組換え型のウシ エンテロキナーゼ軽鎖で6時間室温で消化した。SDS PAGEは、次の事項を示している;その事項とは、~30kDaの融合タンパク質バンドが殆ど消えかかっており、精製タグを有さない成熟hGHに対応している~22kDaのバンドが放出された精製タグを示している~6kDaのバンドと同様に出現していることである。消化されたサンプルを、次に25mM リン酸ナトリウムpH 7, 10mM PMSF緩衝液で~5倍に希釈した(PMSFを、以前に記載したhGH配列中の非特異的なEK切断を最小化するために添加した)。これは、第1の実施において融合タンパク質と共溶出している高度に塩基性のタンパク質およびEKによって放出された精製タグが、第2の実施において陽イオン交換カラムに効率的に結合するように塩濃度を低下させるために行った。希釈されたサンプルを、SP FFカラムを用いて、上記で記載した同じパラメーターで実施した。フロースルーを収集し、Vivaspin15限外濾過カラム(Vivascience)を用いて、3000 rpmで容量が~1/5に減少するまで濃縮(up-concentrated)した。濃縮されたフロースルーのサンプルのSDS-PAGE分析は、次の結果を示していた;その結果とは、そのサンプルが基本的に純粋な成熟hGHを含有し、EKによる非特異的な切断から生じている少量のhGH断片のみが夾雑していたことである。第1工程において、放出されたタグ、残存している未切断の融合タンパク質およびNNC20.3と共溶出されてきた夾雑物は、第2の精製工程において陽イオン交換カラム上に保持される。
【0124】
他のデータによって次の事項が証明された;その事項とは、融合タンパク質を、クマシー染色したPAGEゲルによって又はウエスタンブロッティングによって示されたように測定された精製タグの有意なデグラデーションをおこすことなく発現させることができることである。配列番号1-hGH構築物のMALDI質量分析を用いたペプチド質量マッピングの際に、非常に少ないペプチドがトリプシンでの切断後に見出され、これらのことからトリプシン様プロテアーゼに対してタグの耐性が高いことが指摘される。また、配列番号1-hGH(NNC20.3)におけるジスルフィドブリッジのMALDI分析は、配列番号1-タグが、hGH標的タンパク質における正しいジスルフィドブリッジの達成に干渉しないことも指摘した。
【0125】
大腸菌において発現させたNNC20のSPセファロース・ファーストフロー・マトリックスへの異なる塩濃度および緩衝液での結合を評価する結合アッセイにおいて、融合タンパク質がpH9まで及び0.3M NaClまでの塩濃度で効率的に結合することが観察された。
【0126】
[例2]
大腸菌における配列番号2、配列番号15およびhGHの融合構築物のクローニングおよび発現
配列番号2は、好熱菌(Archaeoglobus fulgidus)のシークエンスされたゲノムに由来する30Sリボソームタンパク質L39である。
【0127】
精製タグの分子量は5.9kDaと計算され、前記タグのpIは12.5と計算された。ヒトhGHに融合された際に、融合タンパク質は、29.2kDaの分子量を有し、9.5のpIを有する。前記タグをコード化しているrpl39e遺伝子は、大腸菌での発現に至適化されたコドンであった。前記タグは、全体の遺伝子配列にわたる6つの異なるプライマーをオーバーラップエクステンション(SOE)PCRでスプライシングすることによって組み立てられた。2回の連続的なPCRを、基本的に例1のpNNC20に関する記載のとおり使用した。rpl39e遺伝子の5’-端にマッチングしている5-端プライマーをNdeI制限酵素切断部位で設計し、末端リバースプライマーにはrpl39e遺伝子の3’-端およびNheI部位を含んでいるオーバーハングを具備させた。PCR産物を、製造者(インビトロゲン)の指示にしたがってpCR2.1 TOPOベクターにサブクローニングし、配列をDNAシークエンシングで確認した。精製タグ部分を、TOPOベクターから切除し、Rapid ligation Kit(Roche)を用いてNdeIおよびNheIで直線化した精製したpNNC20.3ベクターと共に連結した。ライゲーション産物を、大腸菌TOP10に形質転換し、新たなプラスミドをLB/アンピシリンプレート上にプレーティングして一晩増幅させた。一晩培養したコロニーからプラスミドを取得し、制限酵素切断の手段で評価し、DNAシークエンシングした。配列番号2 ,配列番号15およびhGHからなる正しい融合産物を含んでいるクローンを、単離し、大腸菌発現株BL21に形質転換し、例1で記載したとおり0.5 mM IPTGをもちいて25゜Cで3時間で発現させた。SDS-PAGEによって、前記構築物が、~30 kDaの正しいサイズの融合タンパク質を産生し、これが約80%可溶性であることが示された。
【0128】
40 mlの培養物からの配列番号2, 配列番号15およびhGHの発現させた融合産物のペレットを、20mM KPO4 pH 7, 0.1% Triton X-100中で超音波処理した。そして、細胞片を、遠心分離で除去した。生じた上清を、濾過滅菌し、以下の緩衝液でAKTAエキスプロラ(流速1ml/min)を用いて精製した:
緩衝液A: 20mM リン酸カリウム pH7
緩衝液B: 20mM リン酸カリウム pH7 および 1M NaCl
SP FFマトリックス(アマシャムファルマシア)を手で充填した1 mlカラムを、緩衝液Aで5カラム容量(CV)で平衡化した。タグを付けたhGHを含んでいる適用物を前記カラムに適用し、未結合のサンプルを緩衝液Aを5CVで適用することによって洗浄した。0-100%緩衝液Bのグラジエントを20CVで使用し、その間に標的タンパク質を溶出した。主なピークに存在する標的タンパク質の純度は、約90%であると見積もられた。図3Bは、配列番号2、配列番号15、およびhGHの融合産物の約 0.8M NaClでの溶出を示しているクロマトグラムである。
【0129】
[例3]
hGH_Leu-Alaバリアントのクローニング。
【0130】
例1に記載の融合タンパク質におけるhGHのC末端(NNC20.3)を、Leu-Alaで伸展させた。要約すると、PCR増幅を、pNNC20.3のhGHコード配列における停止コドンから300bpのBsu36I部位を含むフォワードプライマーで実施した。リバースプライマーは、2つの付加的なコドンを、成熟hGH配列を停止させる停止コドンおよび5’-端 BamHIクローニング部位の前に有する。使用した鋳型は、pNNC20.3であった。このPCR産物を、GFX精製キット(アマシャムファルマシア)を用いて精製し、pCRIITOPOベクター(インビトロゲン)にクローン化し、シークエンシングした。正しい配列を有する挿入物を、Bsu36IおよびBamHIで切除し、Bsu36IおよびBamHIで切断したpNNC20.3へ連結した。この産物によって、配列番号1-配列番号9-hGH-Leu-Ala構築物pACSH74が産生される。
【0131】
幾つかの精製タグ(配列番号20から42)を、発現レベル、可溶性、および精製の可能性に関して試験された。これらのタグは、23の異なる高度に塩基性のリボソームタンパク質をコード化している遺伝子に由来し、これらはThermotoga maritima (American Type Culture Collection, ATCC 43589から取得された)のゲノムDNAからPCR増幅された。
【0132】
要約すると、NdeIクローニング部位を、リボソームタンパク質コード配列の開始コドンの直ぐ上流のフォワードプライマーに含ませた。XhoIクローニング部位を、リボソームタンパク質コード配列の最後のaaをコード化しているコドンの後ろのリバースプライマーに含ませた。PCR産物を、アガロースゲルから精製し、pCRII TOPOベクターにクローン化した。正しい配列を有するNdeI/XhoIの挿入物を、TOPOクローンから切除し、pACSH74に連結し、配列番号1を置換した。全ての構築物は、リンカー SSSSTLAAPFDDDDK(配列番号9)をN末端タグとhGH-Leu-Ala配列の開始フェニルアラニンとの間に有する。
【表3】

hGH-Leu-Ala構築物の大腸菌での発現および結合実験:
Thermotoga maritimaから増幅された精製タグを有する23のhGH-Leu-Ala構築物を、Rosetta(DE3)系統に形質転換した。細胞を、~0.4〜0.6のOD600に37゜Cで成長させた。次に温度を、30゜Cに約30min低下させた。0.5 IPTGを、培養物に3時間添加した。全ての構築物は、予想されたサイズの明瞭なタンパク質バンドを呈した。発現レベルは、構築物の間で幾らか異なっていた。それら全ては、10mMリン酸緩衝液中で超音波処理後に約50%から80%以上の間の可溶性を示した。
【0133】
6つの候補を、0.75mlのSP FFマトリックスで充填された小さいカラム上でSP FFへの結合に対する親和性に関して試験した。使用した方法は、以下の通りである:
緩衝液 A: 25 mM Na2HPO4 NaH2PO4 pH7
緩衝液 B1:25 mM Na2HPO4 NaH2PO4 pH7 0.5M NaCl
緩衝液 B2: 25 mM Na2HPO4 NaH2PO4 pH7 1M NaCl
1) カラムを5mlの水, 2mlの緩衝液A, 3mlの緩衝液B2で洗浄する
2) 6mlの緩衝液Aで平衡化する
3) 細胞上清を適用し、フロースルー(FT)を収集する
4) 3mlの緩衝液Aで洗浄し、FTを収集する
5) 2mlの緩衝液B1で溶出し、FTを収集する
6) 2mlの緩衝液B2を溶出し、FTを収集する
ACSH122およびACSH200は、0.5MのNaClで殆ど完全に溶出された。また、ACSH198, ACSH199およびACSH74は、0.5および1MのNaClの両方で溶出され、前記カラムとの強い相互作用が指摘された。融合タンパク質はACSH74に関するフロースルー中に全く観察されなかったが、残りのものは結合の効率性に差を示した。
【0134】
ACSH74, ACSH130およびACSH131のAKTA精製:
ACSH74の精製
ACSH74を、BL21(DE3)で発現させ、例1のNN20.3に関して記載のとおり精製した。結果は、NN20.3に関して得られた結果と殆ど同じであり、C末端におけるLeu-Ala伸展部が前記タグと前記SP FFとの結合に影響しなかったことを指摘している。
【0135】
ACSH130およびACSH131の精製:
40mlの培養物からのペレットを、例1のNN20.3に関して記載のとおり25 mMのNaPO4(pH7)中で超音波処理した。精製を、AKTAエキスプロラ(アマシャムファルマシア)で、流速5 ml/minでHiTrap5ml SP FFカラム(アマシャムファルマシア)と以下に記す緩衝液とを用いて行った:
緩衝液 A: 25mM リン酸ナトリウム, pH 7
緩衝液 B: 25mM リン酸ナトリウム, pH 7 + 1M NaCl
前記カラムを、緩衝液Aを5カラム容量(CV)適用することで平衡化した。ACSH131またはACSH130を含有している適用物を、前記カラムに適用し、未結合のサンプルを緩衝液Aを7カラム容量を適用することで洗浄した。0-100%の緩衝液Bのグラジエントを、20CVで使用した。ACSH131およびACSH130を、前記カラムから約50%の緩衝液B(0.5 NaCl)で溶出した。ACSH131およびACS130の双方に関して、SP FFへの結合は、NN20,NN20.3およびACSH74に関して観察されたものよりも効率が低いが、純度は同様に高いレベルであった。
【0136】
[例4]
インスリンアンタゴニストS661融合タンパク質のクローニング
S661は、インシュリンレセプターアンタゴニストである。前記ペプチドは、1つのジスルフィドブリッジ(disulphide bridge)を具備し、以下に記す配列を有する:
配列番号43: GSLDESFYDWFERQLGGGSGGSSLEEEWAQIQCEVWGRGCPSY。
【0137】
S661配列のヌクレオチド配列は、大腸菌中での至適な発現に関して至適なコドンであった。XhoI部位およびBamHIクローニング部位を、S661配列の5’端および3’端に含ませて、存在しているhGH-Leu-Ala構築物への容易なクローニングを可能とした(例3)。S661配列を、以前に記載したオーバーラップ伸長PCR(overlap extension PCR)によるスプライシングで合成した。要約すると、~50 bp長の3フォワードプライマーおよび3リバースプライマーを、約20bpのオーバーラップを有し、XhoI/BamHIクローニング部位を有するS661配列をカバーして設計された。SSSSDDDDK(配列番号16をコード化しているリンカーを、精製タグとS661との間に付加した。
【0138】
2回のPCRを、Phusion PCRキット(Finnzymes)を用いて製造者の推奨する条件で行なった。
【0139】
第1のPCR反応は、以下の条件であった:
98゜C 30 sec,
98゜C 10sec(変性)
50゜C 30 sec(アニーリング)
72゜C 15 sec(伸長)
10 サイクル
72゜C 5 min
第1のPCR産物を、2%アガロースゲルから切り出し、GFXキット(GE Health care)で精製し、1/50に希釈し、最終のPCR反応のために鋳型として使用した。第2のPCR反応を、XhoIおよびBamHIクローニング部位を含んでいる最も末端の2つのプライマーで、同じ条件を用いて行なった(但し、最初の反応に関して、アニーリング温度として55゜Cが使用され、15サイクルが使用された)。予想されたサイズのバンドを、2%アガロースゲルから切り出し、GFXキット(GE Health care)で精製し、製造者によって記載されたとおりpCRIITOPOベクター(インビトロゲン)へと連結した。正しい配列を有するクローンを、単離した。S661挿入物を、XhoIおよびBamHIで放出させ、hGH-Leu-AlaがXhoI/BamHIで切り出される異なるhGH-Leu-Ala構築物のベクター部に連結した。これによって、異なるリンカーを有するS661配列のN末端に連結された異なる精製タグを有する以下の構築物が作出された、つまり:
【表4】

ACSH197-ACSH200の発現
pACSH197-ACSH201を、Rosetta(DE3)(Novagen)に形質転換した。これらを、製造者の記載にしたがってアンピシリンおよびクロラムフェニコールの存在下で培養した。細胞を、~0.4〜0.6のOD600まで37゜Cで成長させた。温度を、次に30゜Cに約30min低下させた。次に、タンパク質合成を、0.5mMのIPTGで3時間30゜Cで誘導した。誘導したタンパク質を有する細胞を、遠心分離で収穫した。SDSでの評価によって、全ての構築物が、発現レベルおよび可溶性が若干の差異を伴うが、予想されたサイズのタンパク質を発現したことが示された。
【0140】
ACSH200の精製
ACSH200を200mlの培地で30゜Cで3時間発現させた大腸菌Rosetta(DE3)の40ml培養物(最終的なOD600=1.6)からの細胞を、10 mlの25mMリン酸ナトリウムpH8.5で超音波処理した。細胞片を、遠心分離で除去した。そして、適用物を、濾過滅菌し、20mlまで25mMリン酸ナトリウム緩衝液で希釈した。溶解度は、この融合タンパク質に関して>80%であった。精製を、AKTA エキスプロラ(アマシャム ファルマシア)でHiTrap SP-FF, 5mlカラムを用いて5ml/minの流速で行なった。以下の緩衝液を使用した、即ち:
緩衝液 A: 50mM リン酸ナトリウム, pH 8.5
緩衝液 B: 50 mM リン酸ナトリウム, pH 8.5 + 1 M NaCl
5mlのSP FF(HR5/5)カラム(アマシャムファルマシア)を、緩衝液Aを5カラム容量(CV)適用することによって平衡化した。ACSH200を含有している適用物を、前記カラムに適用し、非結合のサンプルを緩衝液Aで5CVで洗浄した。0-100%の緩衝液Bのグラジエントを、20CVで使用した。ACSH200を、約 30 %の緩衝液B(0.3 M NaCl)で溶出した(図3A)。溶出した融合タンパク質を含有しているフラクションを、収集した。クロマトグラムの主なピークに存在する融合タンパク質の純度を、SDS-PAGE(図3B)およびソフトウェア分析で評価した。タンパク質はフロースルー中で検出されず、全てのタンパク質がSP FFカラムに結合したことを指摘している。ACSH200の主なピークの範囲のフラクションのクマシー染色したSDS PAGEゲルによって、タンパク質の純度は~90%であると評価された。類似する精製をpH7で行い、同じmAUシグナルが得られた(しかしながら、幾分低い純度である)、このことは精製されたタンパク質の回収が緩衝液のpH 8.5で影響されなかったことを指摘している。このことは有利である。というのも、より少ない夾雑タンパク質が、pH 8.5で前記カラムに結合できるからである。
【0141】
ACSH200の精製からのフラクション25のLC-MS分析
精製で得たフラクション25を、リン酸ナトリウム緩衝液で1:1で希釈し、20uLをLC-MSD_TOF(Agilent technologies)機器で、分析用のPoroshell 300SB-C8, Micro Bore 1.0 x 75 mm, 5 micron(Agilent Technologies)カラムを用い、流速0.3 ml/minおよびカラム温度70゜Cの標準的なHPLC条件で分析した:グラジエント溶出は20minで形成され、8.8 mMのギ酸アンモニウムを0.1%ギ酸水中に含有するもの(緩衝液A)およびアセトニトリル(緩衝液B)を用いて以下の通り実施した:
【表5】

MSの設定は、製造者の推奨のとおりである
LC-MS分析でえられたTIC(全イオン数)クロマトグラムは、主に1つのピークを示した。このピークの抽出されたデコンボリューションスペクトラム(extracted deconvoluted spectrum)は、14810.41 Daの質量を有するピークを示した;これはN末端メチオニン(これは大腸菌のメチオニンアミノペプチダーゼによって除去される)がないACSH200の予想された質量14810.45 Daに非常に近い(図4C)。融合タンパク質の分子量は、50mM DTTで1時間処理することによって~2Da変化した。全体として、これによって次の事項が示唆される;その事項とは、ジスルフィドブリッジが、前記タンパク質において正しく樹立され、これによってRL27_THEMA(配列番号33)タグがジスルフィドブリッジの正しい樹立に干渉しないことが示されることである。
【0142】
ACSH199およびACSH198の精製
ACSH199およびACSH198の精製を、ACSH200に関する記載のとおり実施した。
【0143】
ACSH199およびACSH198を、約50%緩衝液B(0.5M NaCl)で溶出したところ、前記カラムにへの低い効率の結合が示された(というのも、タンパク質はフロースルー中に観察されたので)。しかしながら、両方の構築物に関して、溶出されたフラクション中の融合タンパク質の純度は、ACSH200のものに匹敵した。
【0144】
[例5]
大腸菌の夾雑物の熱沈降
モデルタンパク質としてのACSH200に関して、タグの熱安定性により融合タンパク質を溶液中に保持しえる間に、大腸菌夾雑物を高温で熱沈殿できるかどうかが調査された。
【0145】
ACSH200を、例4に記載のとおり発現させた。ペレットを、25mMのリン酸ナトリウムpH7に溶解し、上記のとおり超音波処理した。10mM ― 1MのNaClを上清に添加した。サンプルを、70゜Cで30min熱し、即座に氷上で10min冷却した。サンプルを、次に15.000Gで10min.遠心分離した。そして、上清を、非熱処理の対照とSDS PAGEを用いて比較した。顕著な量の特に高度に豊富な大腸菌夾雑物を、NaCl濃度を増加させることで除去できた(図5)。熱沈殿によって、標的タンパク質の回収は非熱処理対照と比較して影響されず、このことは問題の精製タグによって、熱沈降(thermo precipitation)でのプレカラム精製工程が促進されることを指摘している。同じ効率の沈殿は、緩衝液にpH 8.5を用いるこの戦略で得られ、高いpHを熱沈降と組み合わせることができることが示唆されており、陽イオン交換精製のための開始材料が改善される。
【0146】
[例6]
精製タグに融合させたヒトアミリンのクローニング:
ヒトアミリンは、次の37aaを含んでいる小さいペプチドホルモンである:
配列番号44: KCNTATCATQRLANFLVHSSNNFGAILSSTNVGSNTY
ヒトアミリン配列のヌクレオチド配列は、大腸菌中での至適な発現に至適化されたコドンである。コード配列は、~50bp長の6プライマーと全体のヒトアミリン配列にわたる~20bpのオーバーラップとを用いるSOE PCRで産生された。同じ一般的な方法論およびクローニング部位(XhoI/BamHI)を、例4のS661に関して記載されたとおり使用した。次の構築物をクローン化した:
【表6】

ACSH202-205の発現:
発現を、例4のS661構築物に関して記載されたとおり実施した。正しいサイズのタンパク質バンドを、全ての構築物に関して取得した。二重のバンドがACSH202,ACSH203に関して観察され、LC-MS分析は未知の大腸菌プロテアーゼによるアミリン配列の切断を指摘した。
【0147】
ACSH204の精製およびACSH204のエンテロキナーゼ消化:
ACSH204の精製を、例4に記載のとおり緩衝液Aおよび緩衝液B(但し、pH7)を用いて、上記のとおり実施した。フラクションを収集し、分析した。
【0148】
EKがヒトアミリンを精製タグから放出できるかどうかを評価するために、主なピークを代表しているRL23_AMYの2mlの最大純度(purest)のフラクションを、Vivaspin 2, CTA 5000 Da MWCO(Vivascience, Satorius)中で1mlまで濃縮(upconc.)し、500mM Tris HCl pH 7, 10mM CaCl2で1:1で希釈した。0.003U/uLのEKを、400uLの反応容量に添加し、1h、37゜Cでインキュベーションした。サンプルを、LC-MSで例4に簡単に記載したとおり分析した。TICクロマトグラムは、4つの区別されるピークを示した(図6A)。ピーク1の抽出スペクトルは、3(1309.56 X 3-22Da(Na 付加物)-3H+=3903.7,4(982.42Da X 4-22 Da(Na 付加物)- 4H+=3903.7)または5荷電状態(781.74Da X 5-5H+)=3903.7のヒトアミリンの質量(mass)を示した(図6b)。3903.7Daの質量は、本来(intact)のジスルフィドブリッジを有するヒトアミリンの理論上の平均の同位体質量(isotopic mass)(即ち、3904.3 Da)に近接するものであった。
【0149】
TICクロマトグラムにおけるピーク2は明らかに最も豊富であり、抽出されたデコンボリューションスペクトラムは放出された精製タグに対応している質量の優勢なピークを示した(配列番号32-配列番号16.,12764,84 Da, 平均同位体質量, 計算上)(図6c)。ピーク3の抽出されたデコンボリューションスペクトラムは、本来の未プロセスのACSH204融合タンパク質の質量(16561,1Da 平均同位体質量, 計算上)を示した。TICクロマトグラム上のアミリンペプチドのピークサイズは、放出された配列番号32-配列番号16のタグのサイズに対応しない;これは前記ペプチドのC8カラムへの低結合、イオン化の効率における差異、又はタグから放出後の放出されたアミリンの凝集による可能性がある。
【0150】
我々のデータは、ヒトアミリンを、塩基性で耐熱性の精製タグを用いて精製し、EKでプロセスされえる可溶性の形態で作出することが可能であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】図1は、次に示す因子を含んでいる発現ベクターpNNC20を開示する;lacIコード配列, アンピシリン(bla)コード配列, pBR322複製開始点, T7プロモーター領域, T7ターミネーター領域, 配列番号1 精製タグ, RRGGSDDDDK(配列番号6)リンカー領域および成熟ヒトhGH配列;
【図2】図2は、例1に記載されるAKTAエキスプロラでの精製からの主なNNC20のピークから収集されたフラクション23〜47の2つの非還元性のSDS-PAGEゲルイメージを開示する(図中のMはタンパク質マーカーであり, Appl.はNNC20適用物であり、Ftはフロースルーである)。矢印は、溶出された融合タンパク質の位置を示す。
【図3A】図3は、NNC20のクロマトグラムを開示する。図3Aは、例1に記載される精製を示す。矢印は、溶出された融合タンパク質を含有している主なピークを示す。点状の曲線(Stippled curves)は、NaClを添加することによって形成されたグラジエントの間に測定された伝導度(milli Siemens/cm)を示す。実線は、精製の間に測定されたUV280を示す。
【図3B】図3は、NNC20のクロマトグラムを開示する。図3Bは、例2に記載されるhGH融合タンパク質精製のクロマトグラムを示す。矢印は、溶出された融合タンパク質を含有している主なピークを示す。点状の曲線(Stippled curves)は、NaClを添加することによって形成されたグラジエントの間に測定された伝導度(milli Siemens/cm)を示す。実線は、精製の間に測定されたUV280を示す。
【図4A】図4は、次の事項を開示する;例4に記載されたACSH200精製のクロマトグラム(4A)、収集したフラクションに対応しているSDS PAGEゲル(4B)(矢印は、溶出されたACSH200融合タンパク質を示す)、及びフラクション25の分析からの抽出されたデコンボリューションMSスペクトラム(4C)(例4に記載の本来のACSH200融合タンパク質の質量を示している)。
【図4B】図4は、次の事項を開示する;例4に記載されたACSH200精製のクロマトグラム(4A)、収集したフラクションに対応しているSDS PAGEゲル(4B)(矢印は、溶出されたACSH200融合タンパク質を示す)、及びフラクション25の分析からの抽出されたデコンボリューションMSスペクトラム(4C)(例4に記載の本来のACSH200融合タンパク質の質量を示している)。
【図4C】図4は、次の事項を開示する;例4に記載されたACSH200精製のクロマトグラム(4A)、収集したフラクションに対応しているSDS PAGEゲル(4B)(矢印は、溶出されたACSH200融合タンパク質を示す)、及びフラクション25の分析からの抽出されたデコンボリューションMSスペクトラム(4C)(例4に記載の本来のACSH200融合タンパク質の質量を示している)。
【図5】図5は、例5に記載されたプレカラム精製工程において熱処理された異なるNaCl濃度を有する上清のSDS PAGEゲルを開示する(図中のMはタンパク質マーカーを示す)。矢印は、ACSH200融合タンパク質を示す。M: マーカー, サンプルに添加された0-1000 mMのNaCl, Ctrlは非熱処理の対照である。
【図6A】図6は、精製され、EK消化されたACSH204融合タンパク質のLC-MS分析を開示する。図6Aは、pACSH204の酵素切断のTICクロマトグラムを開示する;Poroshell SB300 C8(Agilent Technologies)カラムから溶出された全体のイオンを示している。 ピーク1: ヒトアミリン, ピーク2: EKで放出された精製タグ, ピーク3: 本来の融合タンパク質, ピーク4: アミリン中の6アミノ酸残基の後を切断する未知の大腸菌プロテアーゼによる断片。
【図6B】図6は、精製され、EK消化されたACSH204融合タンパク質のLC-MS分析を開示する。図6Bは、放出されたヒトアミリンペプチドを含んでいるピーク1の抽出されたスペクトラムを開示する。
【図6C】図6は、精製され、EK消化されたACSH204融合タンパク質のLC-MS分析を開示する。図6Cは、放出された精製タグを含んでいるピーク2の抽出され(extracted)、デコンボリューションされたスペクトラムを開示する。
【図6D】図6は、精製され、EK消化されたACSH204融合タンパク質のLC-MS分析を開示する。図6Dは、本来の未切断型のACSH204を含んでいるピーク4の抽出され、デコンボリューションされたスペクトラムを開示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核生物または原核生物の宿主細胞において発現された組換えタンパク質を精製するための方法であって、好熱性細菌からの高度に塩基性のタンパク質を前記組換えタンパク質の精製タグとして、陽イオン交換クロマトグラフィーの精製工程に使用することを備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記精製タグは、約9を超えるpIを有する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記精製タグは、約10を超えるpIを有する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記精製タグは、約9および約12.5の間のpIを有する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、好熱性細菌からのタンパク質がリボソームタンパク質である方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記精製タグは、システイン残基を含まない方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記精製タグは、約15〜約250のアミノ酸残基を含む方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記精製タグは、約15〜約200のアミノ酸残基を含む方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記精製タグは、約15〜約150のアミノ酸残基を含む方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記精製タグは、約20〜約75のアミノ酸残基を含む方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記精製タグ中のアミノ酸残基の少なくとも約 15%が塩基性アミノ酸残基LysおよびArgである方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記精製タグ中のアミノ酸残基の約20%〜約30%が塩基性アミノ酸残基LysおよびArgである方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、前記精製タグ中のアミノ酸残基の約35%〜約50%が塩基性アミノ酸残基LysおよびArgである方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記精製タグが、MSKTIVRKNESIDDALRRFKRAVSKTGTLQEVRKREFYEKPSVRRKKKSEAARKRK(配列番号1);MGKKTVGVKKRLAKAYKQNRRAPVWITVKTKRSVFGSPKRRHWRRSKLKV(配列番号2);MKRTYQPSRRKRKRTHGFLARKRTPGGRRVLKNRRRKGRWRLTV(配列番号3);MGKGDRRTRRGKIWRGTYGKYRPRKKK(配列番号4);およびMAKVKMKTNRSAAKRFKVTAKGKIKRWKSGGAHYNTKKSSKRKRHLRKHTYVKDNMLKHVKALLKEF(配列番号5)からなるペプチド配列の群から選択される方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記好熱性細菌は、約50゜Cより高い成長至適温度を有している古細菌または真正細菌である方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記好熱性細菌は、約 50゜C〜約 100゜Cの成長至適温度を有する方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記精製タグは、標的タンパク質に与えられる精製タグのインビトロ切断のための切断部位を含むリンカー配列を具備する方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記リンカーは、1〜約30のアミノ酸残基を有する方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、前記リンカーは、1〜約15のアミノ酸残基を有する方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法であって、前記リンカーは、Pro, Leu および Alaからなる群から選択されるアミノ酸残基を含む方法。
【請求項21】
請求項17に記載の方法であって、前記リンカーは、エンテロキナーゼ切断部位、Xa因子切断部位、トロンビン切断部位、Tobacco etc ウイルスプロテアーゼ切断部位、およびHRV14 3Cプロテアーゼ切断部位からなる群から選択される切断部位を含む方法。
【請求項22】
請求項17に記載の方法であって、前記リンカーが、RRGGSDDDDK(配列番号6);SSSDDDDK(配列番号7);SSSSTSSSSTDDDDK(配列番号8);SSSSTLAAPFDDDDK(配列番号9) ALAAPFDDDDK(配列番号15)からなる群から選択されるペプチド配列を有する方法。
【請求項23】
組換え型のタンパク質を作出するための方法であって、i)好熱性細菌からの高度に塩基性のタンパク質に由来するN末端またはC末端の精製タグを含んでいるタンパク質を発現させること、ii)発現したタンパク質を、陽イオン交換カラムに適用すること、及びiii)前記タンパク質を、適切な溶出液で溶出することを備える方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、好熱性細菌からのタンパク質がリボソームタンパク質である方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法であって、iv)引き続き前記精製タグを適切な切断剤(cleaving agent)で切断するための切断部位を切断して、標的タンパク質を生じさせることを備える方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法であって、前記精製タグは、約15〜約250、約15〜約200、または約15〜約150のアミノ酸残基を含む方法。
【請求項27】
請求項23に記載の方法であって、前記精製タグは、約20〜約75のアミノ酸残基を含む方法。
【請求項28】
請求項23に記載の方法であって、前記精製タグ中のアミノ酸残基の少なくとも約15%〜約30%が塩基性アミノ酸残基LysおよびArgである方法。
【請求項29】
請求項23に記載の方法であって、前記精製タグ中のアミノ酸残基の少なくとも約35%〜約50%が塩基性アミノ酸残基LysおよびArgである方法。
【請求項30】
請求項23に記載の方法であって、前記好熱性細菌は、約50゜Cより高い成長至適温度を有している古細菌または真正細菌である方法。
【請求項31】
請求項23に記載の方法であって、前記宿主が、Eschericia sp., Bacillus sp., Saccharomyces sp.,およびAspergillus sp.などの細菌および真菌類から選択される方法。
【請求項32】
請求項23に記載の方法であって、前記タグは、標的タンパク質に与えられる精製タグのインビトロ切断のための切断部位を含むリンカー配列を具備する方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記リンカーは、1〜約30のアミノ酸残基を有する方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法であって、前記リンカーは、1〜約15のアミノ酸残基を有する方法。
【請求項35】
請求項32に記載の方法であって、前記リンカーは、Pro, Leu および Alaからなる群から選択されるアミノ酸残基を含む方法。
【請求項36】
請求項32に記載の方法であって、前記切断部位は、エンテロキナーゼ切断部位、Xa因子切断部位、トロンビン切断部位、およびTobacco etc ウイルスプロテアーゼ切断部位 Hrv14からなる群から選択される方法。
【請求項37】
請求項23に記載の方法であって、さらに工程ii)の陽イオン交換カラム工程の前に、熱不安定(thermolable)な宿主細胞の夾雑物を沈殿させるための熱沈殿工程を備える方法。
【請求項38】
請求項1〜37の何れか1項に記載の方法であって、前記標的タンパク質が、ヒトhGH又はそのアナログである方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、前記標的タンパク質が、hGH-Leu-AlaまたはSer-hGHである方法。
【請求項40】
請求項37に記載の方法であって、約30〜約200mMのNaClが、熱沈殿工程の前に添加される方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate


【公表番号】特表2008−537884(P2008−537884A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505880(P2008−505880)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061493
【国際公開番号】WO2006/108826
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(391032071)ノボ ノルディスク アクティーゼルスカブ (148)
【氏名又は名称原語表記】NOVO NORDISK AKTIE SELSXAB
【Fターム(参考)】