説明

タンパク質を精製する方法

【課題】タンパク質を精製する方法を提供すること。
【解決手段】本出願において、可溶性または膜結合性の細胞内の目的タンパク質(POI)を放出するための方法が、記載される。この本発明の方法は、以下の工程:可溶性または膜結合性の細胞内の目的タンパク質を含む細胞を提供する工程;この細胞を膜抽出組成物と接触させる工程;およびこの目的タンパク質(POI)の特異的放出に十分な条件下でかつ可溶性形態でこの目的タンパク質(POI)がこの細胞から放出されるのを引き起こす工程、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、目的の細胞内タンパク質(POI)を放出するための方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、目的の細胞内タンパク質(POI)の放出を補助する膜抽出組成物を使用して、可溶性かまたは膜に結合したPOIを放出するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
細胞内POI(例えば、酵素)を回収するための伝統的な方法は、ビーズミルまたはフレンチプレス原理で作動する細胞ホモジナイザーのような、機械的破壊方法(Naglakら、1990)を使用することであった。しかし、これらの機械的破壊方法は、これらが低い能力でエネルギーを消費する方法であるという欠点、および機械的破壊のために必要とされる細胞ホモジナイザーまたは類似の設備が、購入に高価であるという欠点に、悩まされている。さらに、機械的方法は、細胞、および従って抽出されたPOIを、非常に厳しい条件に曝露する。特に、大部分のタンパク質は、機械的デバイスおよび/またはホモジネートが効率的に冷却されない限り発生する熱によって、変性するからである。さらに、酵母細胞(例えば、Hansenula由来の細胞)のようないくつかの細胞は、機械的に破壊することが困難であり、そして細胞ホモジナイザーに1回より多く通過させることを必要とする。細胞ホモジネートはまた、細胞壁フラグメントおよびDNAを含み得、これは、高い粘度を生じる。このことは、POIからの細胞の破片の分離が、困難な操作を示し得ることを意味する。さらに、得られる無細胞ホモジネートは、細胞内POIのみでなく、一般的な細胞代謝に関連する多数(時々数千)の異なる細胞内タンパク質および酵素をもまた含み得る。このことは、得られる無細胞ホモジネートが、限外濾過によって濃縮することが困難であり得るのみでなく、所定のPOIの正しい市販の濃度を得ることに関する問題を提供し得ることをもまた意味する。
【0004】
いくつかの機械的破壊方法の潜在的な有害な効果を最小にするために、酵母細胞を透過性にするための、例えば界面活性剤を使用する、化学的方法が開発された。例示として、非イオン性界面活性剤であるポリエトキシ化オクチルフェノール(Triton X−100として市販されている)が、単独でかまたは凍結解凍サイクルとの組み合わせかのいずれかで使用された(Naglakら、1990で参照される)。さらに、米国特許第5124256号(Crahayら、1992)は、Saccharomyces酵母を水性培地中で、中性の水溶性無機塩および非イオン性水溶性ポリエトキシ化アルキルフェノール界面活性剤(8と15との間の親水性親油性バランス(Hydrophilic Lipophilic Balance)(HLB)を有する)で処理することによる、この酵母からタンパク質が抽出された方法を開示する。しかし、これらの非イオン性水溶性ポリエトキシ化アルキルフェノール界面活性剤(これには、ポリエトキシ化オクチルフェノール、ノニルフェノールおよびトリブチルフェノール(特に、TritonX−100、Nonidet P−40およびSapogenat T−080の商品名で市販されているもの)が挙げられる)は、以下の欠点に悩まされる:(i)これらは、単独で使用される場合に有意な抽出効果を有さないかもしれない;および(ii)これらの界面活性剤は、引き続くPOIの酵素活性の測定を妨害し得る。
【0005】
いくつかの有機溶媒もまた、インサイチュ酵素アッセイにおいて酵素細胞を透過性にするためと、酵素細胞からタンパク質を除去するためとの両方に、使用されてきた。このような溶媒の例としては、トルエン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、およびグリセロールと混合されたベンゼンが挙げられるが、これらに限定されない(Naglakら、1990)。しかし、これらの溶媒は、200m3までの醗酵槽容量が必要とされる場合に、産業規模での製造における使用に対して魅力的ではない。
【0006】
ジギトニンおよび天然に存在する他のサポニンもまた、多数の真核生物細胞を透過性にすることが示された(Joshiら、1989を参照のこと)。ジギトニン透過性化の正確な機構は未知であるが、ジギトニンが、細胞膜に存在するコレステロールと複合体を形成し、そしてその膜を漏出性にすると考えられる。酵母細胞のジギトニン透過性化もまた、酵母膜のエルゴステロールの複合体化に起因し得る。Josiら(1989)は、ジギトニン(0.1%)を使用して、酵母Kluyveromycesを透過性化し、これは、ラクトースのグルコースおよびガラクトースへの細胞内触媒を容易にした。非イオン性界面活性剤であるサポニン(Quillaja Barkから)は、別のコレステロール複合体化剤であり、これは、少なくとも哺乳動物細胞を透過性化することが公知である(Naglakら、1990)。再度、上で概説したような非イオン性界面活性剤と同様に、ジギトニンおよび天然に存在する他のサポニンの使用は、単独で使用される場合に有意な抽出効果を有さないかもしれないという欠点に悩まされ得る。
【0007】
カオトロピック剤もまた、細胞内酵素の抽出を容易にするために、使用されてきた。例示として、米国特許第3801461号(MiyakeおよびShiosaka、1974)は、尿素溶液のようなカオトロピック溶液を使用して、真菌または細菌の菌糸体または細胞において産生される細胞内酵素を抽出するための、プロセスを開示する。米国特許第4683293号(Craig、1987)はまた、チオシアン酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、臭化リチウム、グアニジン塩酸塩および尿素のような、カオトロピック塩の存在下での細胞溶解による、Pichia属の形質転換された細胞からの親油性タンパク質の選択的な抽出のための方法を、開示する。しかし、カオトロピック剤は、尿素のようなカオトロピック剤へのPOIの曝露が、POIの変性を介して酵素活性の実際の損失を生じ得るという欠点に悩まされる。
【0008】
上記で引用した欠点に加えて、上記で引用した従来技術は、宿主細胞の低分子量分子への透過性化のみに関連し、一方でPOIは、細胞内で変化しないままである。特に、上記で引用した従来技術のいずれも、POIの性質および/または活性に影響を与えない条件下での、膜結合細胞内POIの抽出に関連しない。さらに具体的には、上記で引用される従来技術のいずれも、トラップされて宿主細胞から分泌され得ない、膜結合細胞内POIの放出を補助するための方法に関しない。
【0009】
従って、本発明は、従来技術の抽出方法に関連する問題を克服することを追求する。
【0010】
従って、本発明は、可溶性かまたは膜に結合した、目的の細胞内タンパク質(POI)を、宿主生物から放出するための方法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、トラップされそして/または宿主細胞から分泌され得ない、可溶性かまたは膜に結合した細胞内POIの放出において、補助するための方法に関する。本発明の方法を使用する、細胞内POIの抽出を、従来の細胞破壊方法、ならびに他のイオン性/非イオン性の界面活性剤および乳化剤を使用する抽出手順と、比較した。プロテアーゼおよび塩との界面活性剤の組み合わせもまた、調査した。本発明の結果は、本発明の方法を使用する、可溶性かまたは膜に結合した細胞内POIの抽出が、以下の理由により有利であることを示す:
(i)伝統的な細胞破壊技術が回避され得る;
(ii)細胞内POIがDNAおよび細胞壁フラグメントを含まずに回収され得る;
(iii)細胞内POIが、グリコシル化が起こる前に、酵母のような真核生物宿主生物から回収され得る。分泌タンパク質の過剰のグリコシル化は、酵母のような真核生物宿主生物において特に、周知の問題である。酵母発現系に関するこの欠点は、酵母発現ベクターが、多量のバイオマスで高い発現レベルでタンパク質を産生し得、そしてさらに、酵母が食物において認可された用途を有するとしても、酵母を産生系として使用することの嫌悪をもたらした。POIを細胞内で発現させ、次いでこのPOIを本発明の方法で抽出することによって、このPOIはグリコシル化されない。なぜなら、このPOIは、グリコシル化が起こる分泌経路を通らなかったからである;
(iv)本発明の方法を進行させる醗酵手順が、宿主細胞のために適切な任意のpHにおいて実施され得る。分泌POIがその細胞外培養培地のpHによって影響を受け得ることは、当該分野において周知である。現在まで、宿主生物増殖培地のpHを、おおよそ中性のpHに維持することがしばしば必要であった。なぜなら、このようなpHが細菌夾雑の危険性を通常増加させるとしても、このようなpHにおける醗酵が、分泌POIの安定性を維持するために必要であると考えられたからである。本発明の方法を用いると、POIは分泌されない。従って、宿主生物増殖培地のpHは、無関係である。なぜなら、培地pHにかかわらず、細胞内pHが一定に保たれるからである。従って、本発明は、より低いpH(例えば、pH4.0)における宿主生物(例えば、酵母)の増殖を可能にし、このことは、バイオマスにもPOI産生のいずれにも影響を与えることなく、細菌夾雑の危険を低下させる;
(v)本発明の方法を使用して、細胞内POIの、細胞外増殖培地との接触を防止し得る。このことは、POIが、例えばプロテアーゼ感受性に起因して細胞外培地中において不安定である場合に、有利である。このタンパク質を細胞内で発現させ、次いで本発明の方法を用いて抽出することによって、細胞外培地との接触が回避される。
【0012】
(発明の簡単な要旨)
1つの広い局面において、本発明は、細胞から目的のタンパク質(POI)を放出するための方法に関する。この方法は、以下の工程を包含する:可溶性であるかまたは膜に結合した細胞内POIを含む細胞を提供する工程;この細胞を膜抽出組成物と接触させる工程;ならびにこのPOIを、POIの放出に十分な条件下で、かつ可溶性形態で、細胞から放出させる工程。ここで、POIは、目的の細胞内タンパク質であり得、そして/またはPOIは、ヘキソースオキシダーゼ(D−ヘキソース:O2−オキシドレダクターゼ、EC 1.1.3.5)であり得る。
【0013】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) 細胞から可溶性または膜結合性の細胞内の目的タンパク質(POI)を放出するための方法であって、以下の工程:
可溶性または膜結合性の細胞内のPOIを含む細胞を提供する工程;
該細胞を膜抽出組成物と接触させる工程;および
該POIの特異的放出に十分な条件下でかつ可溶性形態で、該POIを該細胞から放出させる工程、
を包含する、方法。
(項目2) 項目1に記載の方法であって、前記細胞が形質転換された細胞である、方法。
(項目3) 形質転換細胞からPOIを放出させるための項目1または項目2に記載の方法であって、該POIがHOX酵素であり、該方法は、以下の工程:
HOX酵素を含む形質転換細胞を提供する工程;
該形質転換細胞を膜抽出組成物と接触させる工程;および
該HOX酵素の特異的放出に十分な条件下でかつ可溶性形態で、該HOX酵素を該形質転換細胞から放出させる工程、
を包含する、方法。
(項目4) 形質転換細胞からPOIを放出させるための方法であって、該POIがインターロイキン1レセプターアンタゴニスト(IL−1ra)であり、該方法は、以下の工程:
IL−1raを含む形質転換細胞を提供する工程;
該形質転換細胞を膜抽出組成物と接触させる工程;および
該IL−1raの特異的放出に十分な条件下でかつ可溶性形態で、該IL−1raが該形質転換細胞から放出させる工程、
を包含する、方法。
(項目5) 項目1〜4のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記細胞が、酵母細胞、真菌細胞および細菌細胞からなる群より選択され、好ましくは酵母細胞および真菌細胞から選択される、方法。
(項目6) 項目1〜5のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記細胞内POIが、組換えDNA技術によって産生される、方法。
(項目7) 項目1〜6のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記膜抽出組成物が、四級アンモニウム化合物を含む、方法。
(項目8) 項目1〜7のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記四級アンモニウム化合物が、ラウロイルトリメチルアンモニウムブロミド(LTAB)、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド(MTAC)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、セトリミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ステアロイルトリメチルアンモニウムクロリド(STAC)、ステアロイルトリメチルアンモニウムブロミド(STAB)、塩化ベンザルコニウム(アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド)、N−セチルピリジニウムブロミド(N−ヘキサデシルピリジニウムブロミド)、N−セチルピリジニウムクロリド(N−ヘキサデシルピリジニウムクロリド)、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリドおよびこれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせからなる群より選択される、方法。
(項目9) 項目1〜8のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記膜抽出組成物が、約0.05重量%〜約0.6重量%の前記四級アンモニウム化合物を含み、好ましくは約0.1重量%〜約0.5重量%の前記四級アンモニウム化合物を含み、好ましくは約0.2重量%〜約0.45重量%の前記四級アンモニウム化合物を含み、より好ましくは約0.4重量%の前記四級アンモニウム化合物を含む、方法。
(項目10) 項目1〜9のいずれか1項に記載の方法であって、前記細胞が、温度約4℃〜40℃、好ましくは約20℃〜約30℃、より好ましくは約25℃で、前記膜抽出組成物と接触される、方法。
(項目11) 項目1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記細胞が、pH約2.0〜約11.0(より特には約5.0〜約7.0、より特には約6.3)で、前記膜抽出組成物と接触される、方法。
(項目12) 上昇したレベルの可溶性または膜結合性の細胞内POIを産生する変異細胞または形質転換細胞についてスクリーニングするための方法であって、以下の工程:
(a)該変異細胞を30℃で増殖させる工程;
(b)該変異細胞または形質転換細胞を、項目7または項目8に規定されるような膜抽出組成物とともにインキュベートする工程;
(c)前記細胞フリー培地を回収する工程;
(d)上昇したレベルの該細胞内POIについて該細胞フリー培地をスクリーニングする工程;
を包含し、該細胞フリー培地中の該細胞内POIの存在が、該細胞内POIが放出されたことを示す、方法。
(項目13) 可溶性または膜結合性の細胞内POIを特異的に放出するために適切な、膜抽出組成物であって、該組成物は、以下の条件:
(a)四級アンモニウム化合物の重量パーセンテージ約0.05%〜約0.6%(より特には約0.1%〜約0.5%、より特には約0.2%〜約0.45%、より特には約0.4%);
(b)最適pH約2.0〜約11.0(より特には約5.0〜約7.0、より特には約6.3);
(c)最適温度約4℃〜40℃(より特には約20℃〜約30℃、より特には約25℃);
の下で、細胞と接触させられ、混入タンパク質を実質的に含まない細胞内POIが得られる、組成物。
(項目14) 可溶性または膜結合性の細胞内POIを選択的に放出するための、四級アンモニウム化合物を含む膜抽出組成物の使用。
(項目15) 項目1〜14のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記POIがHOX酵素である、方法。
(項目16) 項目15に記載の方法であって、前記HOX酵素が、配列番号22に示されるアミノ酸配列、あるいはその改変体、ホモログ、誘導体またはフラグメントを含む、方法。
(項目17) 項目15または項目16に記載の方法であって、前記HOX酵素が、配列番号22に示されるヌクレオチド配列、あるいはその改変体、ホモログ、誘導体またはフラグメントによりコードされる、方法。
(項目18) 項目15または項目16または項目17に記載の方法であって、前記HOX酵素が、配列番号22に示されるヌクレオチド配列、あるいはその改変体、ホモログ、誘導体またはフラグメントにハイブリダイズし得るヌクレオチド配列によってか、あるいは該ハイブリダイズし得る配列と相補的な配列によってコードされる、方法。
(項目19) 項目1〜18のいずれか1項に記載の方法によって生成可能なHOX酵素であって、該HOX酵素は、項目16〜18のうちのいずれか1項にて規定されるようなヌクレオチド配列によりコードされ、そして該ヌクレオチド配列は、配列番号2〜22に示されるようなオリゴヌクレオチドによって合成される、HOX酵素。
(項目20) 項目1またはそれに従属する任意の項目にて規定されるようなPOIであって、該POIが、真核生物宿主生物から実質的に非グリコシル化形態で放出される、POI。
(項目21) 真核生物宿主生物から放出された、実質的に非グリコシル化されたPOI。
(項目22) 項目21に記載の実質的に非グリコシル化されたPOIであって、該POIは、項目1〜21のうちのいずれか1項に記載の方法によって放出される、POI。
(項目23) 実質的には、本明細書中および添付の図面を参照して記載されるような、方法および組成物。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、遺伝子構築物を提供する。
【図2A】図2Aは、遺伝子構築物を提供する。
【図2B】図2Bは、写真図を提供する。
【図3】図3Aおよび3Bは、写真図提供する。
【図4】図4は、グラフを提供する。
【図5−1】図5は、配列表を提供する。
【図5−2】図5は、配列表を提供する。
【図6−1】図6は、配列表を提供する。
【図6−2】図6は、配列表を提供する。
【図7】図7A−Dは、写真図を提供する。
【図8】図8は、グラフを提供する。
【図9】図9は、グラフを提供する。
【図10】図10A−Bは、写真図を提供する。
【図11】図11A−Bは、写真図を提供する。
【図12】図12A−Bは、写真図を提供する。
【図13】図13A−Bは、写真図を提供する。
【図14】図14A−Bは、写真図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な局面)
本発明の1つの局面に従って、可溶性または膜結合性の細胞内の目的タンパク質(protein of interest)(POI)を、形質転換細胞から放出するための方法が提供され、この方法は、以下の工程:可溶性または膜結合性細胞内POIを含む形質転換細胞を提供する工程;この形質転換細胞を膜抽出組成物と接触させる工程;およびPOIの特異的放出およびPOIの可溶性形態に十分な条件下で、形質転換細胞からPOIを放出させる工程、を包含する。
【0016】
本発明の別の局面に従って、形質転換細胞からHOX酵素を放出するための方法が提供され、この方法は、以下の工程:HOX酵素を含む形質転換細胞を提供する工程;この形質転換細胞を膜抽出組成物と接触させる工程;ならびにHOX酵素の特異的放出およびHOX酵素の可溶性形態に十分な条件下で、形質転換細胞からHOX酵素を放出させる工程、を包含する。
【0017】
本発明の別の局面に従って、インターロイキン1レセプターアンタゴニスト(IL−1ra)を形質転換細胞から放出するための方法が提供され、この方法は、以下の工程:IL−1raを含む形質転換細胞を提供する工程;この形質転換細胞を膜抽出組成物と接触させる工程;ならびにIL−1raの特異的放出およびIL−1raの可溶性形態に十分な条件下で、形質転換細胞からIL−1raを放出させる工程、を包含する。
【0018】
本発明の別の局面に従って、上昇したレベルの、可溶性または膜結合性の細胞内POIを産生する変異体についてスクリーニングするための方法であって、この方法は、以下の工程:変異した細胞を30℃で成長させる工程;この変異した細胞を膜抽出組成物と共にインキュベートする工程;無細胞培地を回収する工程;この無細胞培地を上昇したレベルの細胞内POIについてスクリーニングする工程;を包含し、その結果、無細胞培地内の細胞内POIの存在が、細胞内POIが放出されたことを示す。
【0019】
本発明の別の局面に従って、可溶性または膜結合性の細胞内POIを放出するために適切な膜抽出組成物が提供され、ここでこの組成物は、以下の条件下で細胞と接触される:約0.05%〜約0.6%(より特に約0.1%〜約0.5%、より特に約0.2%〜約0.45%、より特に約0.4%)の重量%の4級アンモニウム化合物;および約2.0〜約11.0(より特に約5.0〜約7.0、より特に約6.3)の最適pH;約4℃〜約40℃、(より特に約20℃〜約30℃、より特に約25℃)の最適温度。
【0020】
本発明の別の局面に従って、可溶性または膜結合性細胞内POIの放出に適切な4級アンモニウム化合物を含む膜抽出組成物が提供される。
【0021】
本発明の別の局面に従って、真核生物宿主生物から放出される実質的にグリコシル化されていないPOIが提供される。
【0022】
本発明の1つの局面および利点は、添付の特許請求の範囲ならびに以下の説明および議論に提示される。これらの局面は、別々の節の見出しの下に提示される。しかし、各説の見出しの下の教示は、特定の節の見出しに限定される必要はない。

(発明の詳細な説明)
本発明は、4級アンモニウム化合物を含む膜抽出組成物を使用して、伝統的細胞破壊技術の使用にたよらずに、可溶性または膜結合性の細胞内POIの高速、特異的かつ経済的に効率の良い抽出が得られ得るという、非常に驚くべき発見を実証する。有利に、かつ予期されず、得られた細胞抽出物は、非常に少ない混入細胞内DNAを含有し、そして細胞壁断片を比較的含まず、それにより、POIがかけられ得る任意のさらなる精製工程を単純化する。これは、従来技術の機械的抽出方法と対比される。
【0023】
(細胞内タンパク質)
本明細書中で使用される場合、用語「細胞内」POIは、細胞(単数または複数)内または細胞の内側で見出されるPOIを意味する。細胞内POIは、シグナル分泌機構を有するが、細胞内に(例えば細胞の細胞質中に)局在化され得る。この点において、細胞内POIは、細胞から活発に分泌されないか、またはシグナル配列分泌機構を有していても細胞により分泌されることができないPOIであり得る。あるいは、細胞内POIは、細胞からのその分泌を防ぐように操作された、天然に分泌されたPOIであり得る。あるいは、POIは、膜結合ドメインを含むキメラタンパク質であり得る。
【0024】
本発明の方法は、AhlstromおよびEdebo((1994)FEMS
Microbiology Letters 119 7−12)に記載される方法と対照的であり、これは、テトラデシルベタイナートを用いるE.coliからのペリプラズムβラクタマーゼの放出について報告する。ペリプラズムは、細胞膜と細胞壁との間の細菌細胞中の領域である。従って、E.coli由来のペリプラズムβラクタマーゼは、細胞膜の外側に局在化し、細胞質酵素ではない。対照的に、本発明のPOIは、細胞(単数または複数)内または細胞の内側に見出される細胞内POIである。
【0025】
(膜結合性(associated)POI)
本明細書で使用される場合、用語「膜結合性POI」は、細胞膜または形質膜の近傍に局在化し得るが、実質的に細胞膜または形質膜と結合していなくてもよいPOIを意味する。従って、膜結合性酵素は、実質的に膜結合タンパク質ではなく、膜結合性酵素は、実質的に細胞膜に結合していない。膜結合性POIは、細胞ホモジェナイザーを用いる機械的処理により可溶化され得る。
【0026】
(膜結合(bound)POI)
本明細書で使用される場合、用語「膜結合POI」は、細胞ホモジェナイザーを茂市イル機械的処理では可溶性にされないタンパク質を意味する。
【0027】
(特異的放出)
用語「特異的放出」は、POIの特異的活性が、POIが機械的手段(例えば、ビードミルの使用またはフレンチプレスの原理で操作するセルホモジェナイザーによる)により抽出された場合よりも高いことを意味する。
【0028】
(形質転換細胞)
用語「形質転換細胞」は、組換えDNA技術の使用により形質転換された細胞を含む。形質転換は、代表的には1つ以上のヌクレオチド配列を、形質転換されるべき細胞中に挿入することにより起こる。挿入されたヌクレオチド配列は、異種ヌクレオチド配列(すなわち、形質転換されるべき細胞に対して天然ではない配列)であり得る。さらに、またあるいは、挿入されたヌクレオチド配列は、相同ヌクレオチド配列(すなわち、形質転換されるべき細胞に天然である配列)であり得、その結果、この細胞は、既に細胞中に存在するヌクレオチド配列の1以上の余分のコピーを受容する。
【0029】
(膜抽出組成物)
本明細書中で使用される場合、用語「膜抽出組成物」は、細胞膜における成分に影響し得、その結果、膜結合細胞内POIおよび/または膜結合性細胞内POIが、この膜成分から十分に解離されるかおよび/または放出され、そしてPOIがこの膜抽出組成物から容易に回収されるかおよび/または採取される組成物を意味する。POIはまた、可溶性POIであり得る。非常に好ましい実施形態において、本発明の膜抽出組成物は、1つ以上の4級アンモニウム化合物またはその組合せを含む。
【0030】
(四級アンモニウム化合物)
本明細書中で使用する「四級アンモニウム化合物」とは、そのNH4+イオンの4個の水素原子の全部を有機基(これらは、同一または異なり得る)で置換することにより水酸化アンモニウムまたはアンモニウム塩から誘導できる化合物を意味する。典型的には、これらの有機基の1個は、長鎖(C8〜C18)アルキル基であり、そして他の3個は、短鎖アルキル基または他の基である。
【0031】
好ましい実施態様では、これらの化合物は、以下の構造を有する:
CH3−(CH2n−N(CH3+3
ここで、nは、その鎖内のメチレン基の数であり、ここで、その対イオンは、ハロゲン(例えば、塩素または臭素)イオンであり得る。これらの化合物は、カチオン洗浄剤の特性を有し、強力な抗菌剤である。
【0032】
これらの四級アンモニウム化合物の例には、ラウロイルトリメチル臭化アンモニウム(LTAB)、ミリスチルトリメチル塩化アンモニウム(MTAC)、セチルトリメチル塩化アンモニウム(CTAC)、セチルトリメチル臭化アンモニウム(CTAB)、セトリミド(またはセトリミダム(Cetrmidum)(これは、アルキル臭化アンモニウム(主に、CTAB)の混合物を含有する))、ステアロイルトリメチル塩化アンモニウム(STAC)、ステアロイルトリメチル臭化アンモニウム(STAB)、塩化ベンズアルコニウム(塩化アルキルジメチルベンズアルコニウム)、臭化N−セチルピリジニウム(臭化N−ヘキサデシルピリジニウム)、ベンジルジメチルテトラデシル塩化アンモニウム、およびベンジルジメチルヘキサデシル塩化アンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
一例として、これらの化合物の一部の構造は、以下のように図示される。これらの化合物は、メチレン基が多い順に列挙されている:
LTABは、H3C−C(CH211−N(CH33Brである。
【0034】
MTACは、H3C−C(CH213−N(CH33Clである。
【0035】
CTACは、H3C−C(CH215−N(CH33Clである。
【0036】
CTABは、H3C−C(CH215−N(CH33Brである。
【0037】
STACは、H3C−C(CH217−N(CH33Clである。
【0038】
STABは、H3C−C(CH217−N(CH33Brである。
【0039】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、塩化セチルピリジニウム(CPC、C2138NCl)である。CPCの構造は、以下のように図示される:
【0040】
【化1】

【0041】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、臭化セチルピリジニウム(CPB、C2138NBr)である。CPBの構造は、以下のように図示される:
【0042】
【化2】

【0043】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、ベンジルジメチルテトラデシル塩化アンモニウム(BDTAC、C2342NCl)である。BDTACの構造は、以下のように図示される:
【0044】
【化3】

【0045】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、ベンジルジメチルヘキサデシル塩化アンモニウム(BDHAC、C2546NCl)である。BDHACの構造は、以下のように図示される:
【0046】
【化4】

【0047】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、塩化ベンズアルコニウム(塩化アルキルジメチルベンズアルコニウム)である。
【0048】
塩化ベンズアルコニウムの構造は、以下のように図示される:
1225N(CH3277Cl
CTABと塩化ベンズアルコニウム(これはまた、塩化アルキルジメチルベンズアルコニウムとしても知られている−本明細書中では、Rodalonの登録商標権名で呼ぶ)の構造の比較は、以下のように図示される:
【0049】
【化5】

【0050】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、ラウロイルテトラメチル臭化アンモニウム(LTAB)である。
【0051】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、セチルトリメチル塩化アンモニウム(CTAC)である。
【0052】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、セチルトリメチル臭化アンモニウム(CTAB)である。
【0053】
カチオン洗浄剤CTABは、おそらく、膜間細孔を形成することにより、イースト菌の浸透性を変えることができることが明らかとなっており、これは、他の2種の非イオン性洗浄剤(例えば、Pluronic F−68およびTriton X−100)について提案された機構と類似している(Kingら、1991)。CTABのような洗浄剤を使用する細胞浸透性の変化は、全細胞での細胞内酵素活性の測定を容易にした(Sekharら、1999)。さらに、CTAB浸透化細胞の開発は、例えば、イースト菌株(例えば、Saccharomyces cerevisiae(Gowdaら、1991)およびKluyveromyces fragilis(Joshiら、1987))に由来の細胞での細胞内酵素触媒作用に有用であることが判明している。これらの研究では、洗浄剤CTABは、細胞内酵素および他のPOI類を細胞内で未変化のままにしつつ、イースト細胞を低分子量分子(例えば、基質、生成物、補助因子)に対して浸透性にしたことを述べておくことは重要である。本発明とは対照区別して、上記研究のいずれも、ホスト細胞からの溶解性または膜結合した細胞内POIの放出を助けるのに、洗浄剤CTAB(または関連した四級アンモニウム化合物(例えば、LTABまたはCTAC))が使用され得ることを開示または示唆していない。
【0054】
カチオン性洗浄剤CTABはまた、通例、DNA/RNA分子を単離する方法で、使用されている。一例として、DNA分子は、DNA−CTAB沈殿物が形成され容易に回収されるように、高温(約65℃)および低塩濃度(0.6M未満のNaCl)で細胞をCTABで処理することにより、単離され得る。CTAB洗浄剤はまた、エタノールまたはイソプロパノールのいずれかによる中性多糖類の共沈が重大な問題を引き起こし得る場合、植物から核酸を抽出するのに頻繁に使用される。CTABはまた、繊維状ファージで感染したE.Coli培養物の上澄み液からのDNAの直接的な溶解および沈殿で使用されている(Ishaqら、1990 Biotechniques 9(l):19〜20,22,24;Kambourisら、1999:FEMS Immunol Med Microbiol 25(3):255〜64;Kuipersら、1999
Ann Rheum Dis 58(2):103〜8;Velegrakiら、1999 Med Mycol 37(l) 69〜73;Whiteら、1998 Med Mycol 36(5):299〜303;Woodheadら、1998 Mol Biotechnol 9(3):243−6;Mito and Detschart 1998 Parasitol Res 84(7) 596〜7;Zhangら、191998) J Virol Methods 71(l) 45〜50;Reinekeら、(1998) Insect Mol Biol 7(l) 95−9を参照)。DNA分子を単離するこれらのCTABベース方法の全ては、残りのタンパク質および中性多糖類を溶液中で維持しつつ、CTABが核酸および酸多糖類を沈殿する特性を活用することに頼っている。驚くべきことに、また、予想外に、本発明の方法は、この沈殿を促進するだけでなく、細胞内DNAの保持を促進する。結果的に、本発明の方法は、細胞内POLの選択的な放出を促進する。
【0055】
(放出)
本発明の方法によれば、この溶解性または膜結合した細胞内POIは、細胞内POIの放出に十分な条件下にてホスト細胞を膜抽出組成物と接触させることにより、この細胞から放出される。
【0056】
(POIを放出するのに十分な好ましい条件)
(I)四級アンモニウム化合物の%
好ましくは、この膜抽出組成物は、約0.05重量%〜約0.6重量%の四級アンモニウム化合物、好ましくは、約0.1重量%〜約0.5重量%の四級アンモニウム化合物、好ましくは、約0.2重量%〜約0.45重量%の四級アンモニウム化合物、さらに好ましくは、約0.4重量%の四級アンモニウム化合物を含有する。
【0057】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、LTABである。
【0058】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、CTACである。
【0059】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、CTABである。
【0060】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、塩化ベンズアルコニウム(C12H25N(CH2)3C7H7Cl)である。
【0061】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、塩化セチルピリジニウム(CPC、C21H38NCl)である。
【0062】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、臭化セチルピリジニウム(CPC、C21H38NBr)である。
【0063】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、ベンジルジメチルテトラデシル塩化アンモニウム(BDTAC:C23H42NCl)である。
【0064】
好ましくは、この四級アンモニウム化合物は、ベンジルジメチルヘキサデシル塩化アンモニウム(BDTAC:C25H46NCl)である。
(II)温度
好ましくは、このホスト細胞は、約4℃〜約40℃の温度で、この膜抽出組成物と接触される。
【0065】
好ましくは、このホスト細胞は、約20℃〜約30℃の温度で、この膜抽出組成物と接触される。
【0066】
好ましくは、このホスト細胞は、約25℃の温度で、この膜抽出組成物と接触される。
【0067】
好ましくは、上記温度は、もしPOIが熱安定性POLであるなら、さらに高くなる。
(III)pH
好ましくは、このホスト細胞は、約2.0〜約11.0のpHで、この膜抽出組成物と接触される。
【0068】
好ましくは、このホスト細胞は、約5.0〜約7.0のpHで、この膜抽出組成物と接触される。
【0069】
好ましくは、このホスト細胞は、約6.3のpHで、この膜抽出組成物と接触される。
【0070】
本発明の方法に先立つ発酵操作がこのホスト細胞に適当な任意のpHで行うことができるは、非常に有利である。分泌されたPOIがその細胞外成長培地のpHで影響され得ることは、当該技術分野で周知である。今まで、ホスト有機体成長培地のpHを適当な中性pHで維持する必要があった。その理由は、このようなpHでの発酵は、通常、細菌汚染の危険を高めたとしても、分泌されたPOIの安定性を維持するのに必要であると思われたからである。本発明の方法を使うと、このPOIは、分泌されない。それゆえ、このホスト有機体成長培地のpHは、細胞外pHが培地pHとは無関係に一定のままであるので、無関係である。従って、本発明は、生物量またはPOI生成のいずれかに影響を与えることにく、細菌汚染の危険を減らす低いpH(例えば、pH4.0)で、ホスト有機体(例えば、イースト菌)の成長を可能にする。
【0071】
本発明のさらに他の利点は、細胞内POIが細胞外成長培地と接触するのを防止するのに使用できることにある。このことは、もし、このPOIが、例えば、プロテアーゼ感受性があるために、この細胞外培地で不安定であるなら、有利である。このタンパク質を細胞内で発現させることに次いで、本発明の方法で抽出することにより、この細胞外培地との接触は、回避される。
【0072】
(POI回収)
本発明の方法に従って抽出された細胞内POIは、そのPOLをさらに濃縮し精製するために、当業者に公知の方法を使用することによりさらに処理される。それゆえ、抽出した細胞内POIは、例えば、限外濾過、逆相樹脂への通過に続いて、最小容量の溶媒での溶出、沈殿、限外濾過および凍結乾燥により、濃縮され得る。このPOLをさらに精製するのに利用できる技術には、サイズ排除樹脂を使用するサイズ分別、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換および疎水性クロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
(POI)
本明細書中で使用する「POI」との用語には、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド(これらには、構造タンパク質が挙げられるが、これに限定されない)、酵素、サイトカイン(例えば、インターフェロンおよび/またはインターロイキン)、インターロイキンレセプタアンタゴニスト(例えば、IL−1ra)、抗生物質、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、またはその有効部分(例えば、Fv断片(この抗体またはその一部は、天然、合成またはヒト化され得る))、ペプチドホルモン、抗原(例えば、細菌/ウイルス/原生動物/寄生抗原)、腫瘍抗原、レセプタ、配位子、制御因子、情報伝達分子、神経伝達物質、凝固因子、または任意の他のタンパク質(これらには、膜結合タンパク質および/または膜結合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
本発明の方法では、このPOIは、細胞内で発現され、すなわち、それは、細胞内POIである。
【0075】
このPOIは、関心ヌクレオチド配列(NOI)を使用して、組換えDNA技術により、産生され得る。
【0076】
(NOI)
本明細書中で使用する「NOI」との用語は、合成起源および天然起源の両方のDNAおよびRNAを包含するように規定され、これらのDNAまたはRNAは、変性または未変性のデオキシ−またはジデオキシ−ヌクレオチドまたはリボヌクレオチドまたはそれらの類似物を含有し得る。この核酸は、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNA、RNA/DNAヘテロ二重鎖またはRNA/DNA共重合体として存在し得、ここで、「共重合体」との用語は、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの両方を含有する単一の核酸鎖を意味する。このNOIは、発現をさらに高めるために最適化されたコドンでさえあり得る。
【0077】
(合成)
本明細書中で使用する「合成」との用語は、インビトロ化学合成または酵素合成により生成したものとして規定される。それには、ホスト有機体(例えば、メチロトローフイースト菌であるPichiaおよびHansenula)に最適なコドン用法で製造したNOI類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
(構築物)
このNOIは、目的の宿主細胞において活性である、転写および翻訳の調節エレメントに対して作動可能に連結され得る。このNOIはまた、たとえば、Schwanniomyces occidentalis由来のグルコアミラーゼ遺伝子、Saccharomyces cerevisiae由来のα因子接合型遺伝子、およびAspergillus oryzae由来のTAKA−アミラーゼに由来するもののような、シグナル配列を含む融合タンパク質をコードし得る。あるいは、このNOIは、膜結合ドメインを含む融合タンパク質をコードし得る。
【0079】
(発現ベクター)
このNOIは、発現ベクターを用いて宿主生物において所望のレベルで発現され得る。
【0080】
本発明に従うNOIを含む発現ベクターは、選択された宿主生物におけるNOIをコードする遺伝子を発現し得る任意のベクターであり得、そしてベクターの選択は、それが導入されるべき宿主細胞に依存する。従って、そのベクターは、自律複製ベクター、すなわち、エピソーム存在物として存在するベクター(このベクターの複製は、染色体複製とは独立しており、たとえば、プラスミド、バクテリオファージまたはエピソームエレメント、ミニ染色体または人工染色体など)であり得る。あるいは、本発明に従うベクターは、宿主細胞に導入されるとき、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、そして染色体とともに複製されるものである。
【0081】
(発現ベクターの成分)
発現ベクターは代表的に、クローニングベクターの成分(たとえば、選択された宿主生物においてベクターの自律複製を許容するエレメントおよび選択目的で1つ以上の表現型で検出可能なマーカーを含む。発現ベクターは、通常、プロモーター、オペレーター、リボソーム結合部位、翻訳開始シグナルおよび必要に応じてリプレッサー遺伝子または1つ以上のアクチベーター遺伝子をコードする制御ヌクレオチド配列を含む。さらに、この発現ベクターは、POIを宿主細胞オルガネラ(たとえば、ペルオキシソーム)または特定の宿主細胞区画へと標的かし得るアミノ酸配列をコードする配列を含み得る。そのような標的化配列としては、配列SKLが挙げられるがそれに限定されない。本発明の状況において、用語「発現シグナル」とは、上記制御配列、リプレッサー配列またはアクチベーター配列のいずれかを包含する。制御配列の指示のもとでの発現のために、POIをコードするNOIは、発現に関して適切な様式で制御配列と作動可能に連結される。
【0082】
(プロモーター)
ベクターにおいて、POIをコードするNOIは、適切なプロモータ配列と作動可能にあわせられる。このプロモーターは、選択した宿主細胞における転写活性を有する任意のDNA配列であり得、そしてその宿主生物と同種または異種である遺伝子に由来し得る。
【0083】
(細菌プロモーター)
細菌宿主における本発明の改変されたヌクレオチド配列の転写を指向するための適切なプロモーターの例としては、E.coliのlacオペロンのプロモーター、Streptomyces coelicolorアガラーゼ遺伝子dagAプロモーター、Bacillus licheniformisアミラーゼ遺伝子(amyL)のプロモーター、Bacillus stearothermophilus maltogenicアミラーゼ遺伝子(amyM)のプロモーター、Bacillus amyloliquefaciensαアミラーゼ遺伝子(amyQ)のプロモーター、Bacillus subtilis xylAおよびxylBの遺伝子のプロモーター、およびLactococcus sp.由来のプロモーターに由来するプロモーター(p170プロモーターを含む)が挙げられる。本発明のPOIをコードする遺伝子は、E.coliのような細菌種において発現され、適切なプロモーターは、たとえば、T7プロモーターおよびファージλプロモーターを含むバクテリオファージプロモーターから選択され得る。
【0084】
(真菌プロモーター)
真菌種における転写のために、有用なプロモーターの例は、Aspergillus oryzae TAKAアミラーゼ、Rhizomucor mieheiアスパラギン酸プロテイナーゼ、Aspergillus niger中性αアミラーゼ、A.niger酸安定性αアミラーゼ、A.nigerグルコアミラーゼ、Rhizomucor mieheiリパーゼ、Aspergillus oryzaeアルカリプロテアーゼ、Aspergillus oryzaeトリオースホスフェートイソメラーゼまたはAspergillus nidulansアセトアミダーゼに由来するプロモーターである。
【0085】
(酵母プロモーター)
酵母種における発現のために適切なプロモーターの例は、以下が挙げられるがそれらに限定されない:Saccharomyces cerevisiae のGal 1プロモーターおよびGal 10プロモーターならびにPichia pastoris AOX1またはAOX2プロモーター。
【0086】
(宿主生物)
(I:細菌宿主生物)
適切な細菌宿主生物の例は、グラム陽性細菌種(たとえば、Bacillaceae including Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Bacillus lentus,Bacillus brevis、Bacillus stearothermophilus、Bacillus alkalophilus、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus coagulans、Bacillus lautus、Bacillus megateriumおよびBacillus thuringiensis、Streptomyces種(たとえば、Streptomyces murinus),乳酸細菌種(Lactococcus spp.(たとえば、Lactococcus
lactis)、Lactobacillus spp.(Lactobacillus reuteriを含む)、Leuconostoc spp.、Pediococcus spp.およびStreptococcus spp))である。あるいは、Enterobacteriaceae(E.coli)を含むまたはPseudomonadaceaeに属するグラム陰性細菌種は、宿主生物として選択され得る。
【0087】
(II:酵母宿主生物)
適切な酵母宿主生物は、以下のような酵母種などであるがそれらに限定されない生物工学的に関連する酵母から選択され得る:Pichia sp.,Hansenula spまたはKluyveromyces,Yarrowinia種またはSaccharomyces種(Saccharomyces cerevisiaeを含む)またはSchizosaccharomyceに属する種(たとえば、S.Pombe種など)。
【0088】
好ましくは、メチル栄養性酵母種であるPichia pastorisの株が宿主生物として使用される。
【0089】
好ましくは、宿主生物は、Hansenula種である。
【0090】
グリコシル化が起こる前に、本発明の方法を使用することは、酵母のような真核生物宿主細胞から細胞内POIを回収するために非常に有利である。分泌されたタンパク質のオリゴグリコシル化は、酵母のような真核生物宿主生物において特に周知の問題である。酵母発現系に関連するこの欠点は、酵母発現ベクターが、大量のバイオマスの高レベルの発現を行い、そしてさらに、酵母は、食品における使用が承認されているにもかかわらず、生産系として酵母を使用することをためらわせている。本発明の方法を用いてPOIを細胞内で発現させ、そしてそのPOIを抽出することによって、そのPOIは、グリコシル化されない。なぜなら、POIは、グリコシル化部位が行われる分泌経路を通らないからである。
【0091】
(III.真菌宿主生物)
糸状真菌のなかで適切な宿主生物としては、以下のAspergillus種が挙げられる:たとえば、Aspergillus niger,Aspergillus oryzae,Aspergillus tubigensis,Aspergillus awamoriまたはAspergillus nidulans。あるいは、Fusarium種の株(たとえば、Fusarium oxysporum)またはRhizomucor種の株(たとえば、Rhizomucor miehei)は、宿主生物として使用され得る。他の適切な株としては、ThermomycesおよびMucor種が挙げられる。
【0092】
(大規模適用)
本発明の好ましい実施形態において、POIは、大規模適用のために使用される。
【0093】
好ましくは、このPOIは、宿主生物の培養の後、1g/Lから約2g/Lの総細胞培養物容量の質量で生産される。
【0094】
好ましくは、このPOIは、宿主生物の培養の後、100mg/Lから約900mg/Lの総細胞培養物容量の質量で生産される。
【0095】
好ましくは、このPOIは、宿主生物の培養の後、250mg/Lから約500mg/Lの総細胞培養物容量の質量で生産される。
【0096】
(食品適用)
1つの好ましい実施形態において、本発明の方法は、飲料のような食品の製造において使用するためにPOIを放出するために用いられる。
【0097】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法は、界面活性剤の調製において使用するためにPOIを放出するために用いられる。
【0098】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法は、製パンにおいて使用するために使用するために適切なPOIを放出するために用いられる。
【0099】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法は、生地改善剤において使用するために適切なPOIを放出するために用いられる。
【0100】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法は、粉生地、粉生地改善組成物および改善された食品の特性を改善するためにPOIを放出するために用いられる(以下を参照のこと:WO 96/39851およびEP−B−0 833 563)。
【0101】
好ましい実施形態において、放出されたPOIは、ヘキソースオキシダーゼ(D−ヘキソース:O2オキシドレダクターゼ、 EC 1.1.3.5)である。
【0102】
(HOX酵素)
ヘキソースオキシダーゼ(D−ヘキソース:O2−オキシドレダクターゼ、EC 1.1.3.5)(これはまた、HOXとも称する)は、D−グルコースおよび他のいくつかの還元糖(マルトース、ラクトースおよびセロビオースを含む)を、それらの対応するラクトンへと酸化し得、その後、これを加水分解してそれぞれのアルドービオン酸(aldobionic acid)へと変換し得る。従って、HOXは、別のオキシドレダクターゼであるグルコースオキシダーゼ(これは、D−グルコースのみを変換し得る)とは、その酵素がより広い範囲の糖基質を利用し得るという点において異なる。HOXによって触媒される酸化は、以下に例示され得る:
D−グルコース+O2−−−−−>γ−D−グルクノラクトン+H22、または
D−ガラクトース+O2−−−−>γ−D−ガラクトノラクトン+H22
【0103】
HOXは、いくつかの海草種により天然で生産される。そのような種は、とりわけ、Gigartinaceae科において見出される。本命最初において使用される用語「HOX」とは、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、マルトース、ラクトースおよびセロビオースからなる群より選択される基質を酸化し得る酵素をいう。
【0104】
(HOX産生)
HOX酵素をコードする遺伝子は、海草Chondrus crispusからクローニングされた(Stougaard and Hansen 1996,Hansen and Stougaard,1997)。メチル栄養性酵母Hansenula polymorpha(異種タンパク質のための発現系としてRhein Biotech,Dusseldorf/Germanyで開発)もまた、HOX酵素(天然のタンパク質は、海草から精製された(Poulsen and Hstrup,1998))を生産するために用いられてきた。WO 96/40935およびWO 98/13478もっまた、HOX活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の組み換え宿主生物におけるクローニングおよび発現を開示する。
【0105】
1つの好ましい実施形態において、HOX酵素は、配列番号22において示される配列を含む。
【0106】
1つの好ましい実施形態において、HOX酵素は、配列番号22において示される配列、またはその改変体、ホモログ、誘導体もしくはフラグメントを包含する。
【0107】
(改変体/ホモログ/誘導体(アミノ酸配列))
本発明の好ましいアミノ酸配列は、配列番号22に示される。か、または本発明のHOX酵素から入手可能な配列であるが、任意の供給源(例えば、関連するウイルス/細菌タンパク質、細胞ホモログおよび合成ペプチドならびにそれらの改変体または誘導体)から得られたホモログ配列を包含する。
【0108】
従って、本発明は、本命最初において提示されるアミノ酸配列の改変体、ホモログまたは誘導体、ならびにそれらのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の改変体、ホモログまたは誘導体を包含する。
【0109】
本発明の文脈において、ホモログ配列は、少なくとも、例えば、本明細書において列挙される配列の配列番号22において示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも75、85、90%同一、好ましくは少なくとも95%または98%同一であるアミノ酸配列を包含すると解釈される。特に、相同性は、代表的に、必須ではない隣接する配列ではなく、酵素活性について必須であることが知られる配列のそれらの領域に関して考慮されるべきである。これらの領域としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:SGGH79C、LGGH146lおよびLGGH320AのようなHOXにおけるFAD推定結合ドメイン。相同性はまた、類似性(すなわち、類似の化学特性/官能基を有するアミノ酸残基)に関して考慮され得るが、本発明の文脈において、配列同一性の観点で相同性を表現することが好ましい。
【0110】
相同性比較は、目またはより通常には、利用可能な配列比較プログラムを用いて実施され得る。これらの市販のコンピュータプログラムは、2つ以上の配列の間の相同性%を算出し得る。
【0111】
%相同性は、連続配列にわたって算出され得る(すなわち、1つの配列は、他の配列と整列され、そして一方の配列におけるのおののアミノ酸は、他の配列における対応するアミノ酸と、1回に1残基ごと直接比較される)。これは、「ギャップされた」配列と呼ばれる。代表的には、そのようなギャップのない整列は、比較的短い数の残基にわたってのみ行われる。
【0112】
このことは、非常に単純かつ一貫した方法であるが、例えば、そうでなければ同一の対の配列において、1つの挿入または欠失が、次のアミノ酸残基が整列から追い出され、従って、全体の整列が行われるとき、相同性%における大きな減少を潜在的に生じ得ることを考慮していない。結果として、ほとんどの配列比較方法は、相同性全体のスコアを不当にペナルティ付与せずに、可能な挿入および欠失を考慮する最適な整列を生成するように設計される。このことは、局所的相同性を最大限にするように試みる配列整列において「ギャップ」を挿入することによって達成される。
【0113】
しかし、これらのより複雑な方法は、整列において生じるおのおののギャップに対して「ギャップペナルティ」を割り当て、その結果、同じ数の同一アミノ酸について、可能な限り少ないギャップを伴う配列整列(すなわち、比較される2つの配列の間の最大限の関連性を反映する)は、多くのギャップを用いて1を超える高いスコアを達成する。「アフィンギャップコスト」が代表的に使用される。これは、ギャップの存在について比較的高いコストを、およびギャップにおけるおのおのの次の残基についてのより少ないペナルティーを付与する。これは最も一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティーは、当然、より少ないギャップを伴う、最適化された整列を生じる。ほとんどの整列プログラムは、そのギャップペナルティーが改変されることを可能にする。しかし、配列比較のためのそのようなソフトウェアを使用するときは、デフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin
Bestfit package(以下を参照)を用いるとき、アミノ酸配列のためのそのデフォルトギャップペナルティーは、ギャップについて−12であり、そして各々の伸長(extension)について−4である。
【0114】
従って、最大%相同性の算出は、まず、ギャップペナルティーを考慮した、最適の整列の生成を必要とする。そのような整列を行うための適切なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfit package(University of Wisconsin,U.S.A.;Devereux et al.,1984,Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を行い得る他のソフトウェアの例としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:BLAST package(以下を参照:Ausubel et al.,1999 ibid−Chapter 18)、FASTA(Atschul et al.,1990,J.Mol.Biol.,403−410)およびGENEWORKSの比較ツールスイート。BLASTおよびFASTAは両方とも、オフラインおよびオンラインの検索について利用可能である(以下を参照:Ausubel et al.,1999 同上,7−58〜7−60頁)。しかし、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。
【0115】
最終的な%相同性は、同一性の観点で測定され得るが、その整列プロセス自体は、代表的には、オールオアナッシングの対比較に基づかない。代わりに、化学的類似性または進化的距離に基づいて各々対での比較に対してスコアを割り当てる、スケール調節した類似性スコア行列が一般的に使用される。一般的に使用されるそのような行列の例は、BLOSUM62行列(BLASTプログラムスイートについてのデフォルト行列)である。GCG Wisconsinプログラムは、一般的に、公のデフォルト値または供給される場合カスタムのシンボル比較表のいずれかを使用する(さらなる詳細についてユーザーマニュアルを参照)。GCGパッケージのための公のデフォルト値あるいは、他のソフトウェアの場合、デフォルト行列(例えば、BLOSUM62)を使用することが好ましい。
【0116】
一旦ソフトウェアが最適整列を生成すると、%相同性、好ましくは$配列同一性を算出することが可能である。このソフトウェアは、代表的には、その配列比較の部分としてこのことを行い、数的な結果を生成する。
【0117】
本発明のアミノ酸配列に関して、用語「改変体」または「誘導体」は、得られるアミノ酸配列が、酵素活性を有し、好ましくは、配列番号22に示されるアミノ酸配列と少なくともひとつの同じ酵素活性を有する限り、その配列からまたはそれに対して、1(またはそれを超える)アミノ酸の任意の置換、変更、改変、置き換え、欠失、または付加を包含する。
【0118】
配列番号22は、本発明における使用のために改変され得る。代表的には、配列の酵素活性を維持する改変が行われる。アミノ酸置換は、改変された配列が要求される酵素活性を保持する限り、例えば、1、2または3〜10または20の置換がなされ得る。アミノ酸置換は、天然に存在しないアナログの使用を包含し得る。
【0119】
本発明の配列番号22はまた、サイレントな変化を生成し、そして機能的に等価な酵素を生じる、アミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有し得る。故意のアミノ酸置換は、HOX酵素の酵素活性が保持される限り、その残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性および/または両親媒性の特性における類似性に基づいて行われ得る。例えば、負に荷電されたアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ;正に荷電されたアミノ酸としては、リジンおよびアルギニンが挙げられ;および荷電されておらず、極性基を有志、類似の親水性値を有するアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンが挙げられる。
【0120】
保存的な置換は、例えば、以下の表に従って作成され得る。第二列における同じブロックにおけるアミノ酸、および好ましくは第三列における同じ線上のアミノ酸は、互いに置換され得る。
【0121】
【表1】

【0122】
(改変体/ホモログ/誘導体(ヌクレオチド配列))
当業者は、遺伝コードの縮重性の結果、多数の異なるヌクレオチド配列が同じHOX酵素をコードし得ることを理解する。さらに、当業者は、慣用技術を用いて、本発明のHOX酵素が発現されるべき任意の特定の宿主生物のコドン使用を反映させるように、本発明のヌクレオチド配列によってコードされるHOX酵素に影響させずにぬくれ土地度配列を行い得ることが理解されるべきである。
【0123】
本発明の配列番号22において示されるヌクレオチド配列に関して用語「改変体」、「ホモログ」または「誘導体」には、酵素活性を有し、好ましくは配列表の配列番号22に示されるヌクレオチド配列と同じ活性を少なくとも有する、HOX酵素をコードする得られたヌクレオチド配列を提供する配列からまたはそれに対して、任意の置換、変更、改変、置き換え、欠失または付加を包含する。
【0124】
配列相同性に関して上記のように、本明細書における配列表に示される配列に対して、好ましくは、少なくとも75%の、より好ましくは85%の、より好ましくは90%の、相同性が存在する。より好ましくは、少なくとも95%の、より好ましくは98%の、相同性が存在する。ヌクレオチド相同性比較は、上記に記載されるように行われ得る。好ましい配列比較プログラムは、上記のGCG Wisconsin Bestfitプログラムである。 デフォルトスコアリングマトリクスは、各々の同一ヌクレオチドについて10のマッチ値を有志、ミスマッチについて−9を有する。デフォルトギャップ作成ペナルティーは、−50であり、そしてそのデフォルトギャップ伸長(extension)ペナルティーは、各々のヌクレオチドについて−3である。
【0125】
本発明はまた、本明細書に置いて提示される配列に選択的にハイブリダイズし得るヌクレオチド配列、またはその任意の改変対、フラグメントもしくは誘導体、あるいは上記のいずれかに対する相補体を包含する。ヌクレオチド配列は好ましくは、少なくとも15ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも20、30、40または50ヌクレオチド長である。
【0126】
(ハイブリダイゼーション)
本明細書において使用される用語「ハイブリダイゼーション」とは、核酸の鎖が塩基対合を通じて相補鎖と結合するプロセス、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術において行われるような増幅プロセスを包含する。
【0127】
本発明のヌクレオチド配列は、本明細書ににおいて提示されるヌクレオチド配列またはその相補体に対して選択的にハイブリダイズし得、本明細書において提示された対応するヌクレオチド配列に対して、少なくとも20、好ましくは少なくとも25もしくは30、例えば、少なくとも40、60もしくは100またはそれを超える連続するヌクレオチドにわたって、一般的に少なくとも75%、好ましくは少なくとも85もしくは90%、および依り好ましくは少なくとも95%もしくは98%相同である。本発明の好ましいヌクレオチド配列は、配列番号22に示されるヌクレオチド配列に対して相同な領域を含み、配列番号22に示されるヌクレオチド配列に対して、好ましくは80または90%相同であり、そして依り好ましくは少なくとも95%相同である。
【0128】
用語「選択的にハイブリダイズ可能」とは、プローブとして使用されるヌクレオチド配列が、本発明の標的ヌクレオチド配列がバックグラウンドを超えて有意なレベルでプローブにハイブリダイズすることが見出される条件下で使用されることを意味する。バックグラウンドハイブリダイゼーションは、他のヌクレオチド配列が存在する(例えば、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーがスクリーニングされる場合)。この事象において、バックグラウンドは、プローブとそのライブラリーの非特異的なDNAメンバーとの間の相互作用によって生成されるシグナルのレベルを意味する。このレベルは、標的DNAで観察された特異的相互作用の10倍未満、好ましくは100倍未満の強度である。相互作用の強度は、例えば、32Pを用いて、プローブを例えば放射標識することによって、測定され得る。
【0129】
ハイブリダイゼーション条件は、Berger and Kimmel(1987,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology,Vol 152,Academic Press,San Diego CA)に教示されるように、核酸結合複合体の融解温度(Tm)に基づき、そして以下に説明するような規定された「ストリンジェンシー」を与える。
【0130】
最大のストリンジェンシーは代表的に、約Tm−5℃(プローブのTmの5℃下)で生じ;高度のストリンジェンシーは、Tmの約5℃から10℃下で商事;中程度のストリンジェンシーは、Tmの約10℃〜20度下で生じ;そして低ストリンジェンシーは、Tmの約20℃〜25℃で生じる。
【0131】
当業者によって理解されるように、最大のストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、同一のヌクレオチド配列を同定または検出するために使用され得るが、中程度(または低)ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、類似または関連するポリヌクレオチド配列を同定または検出するために用いられ得る。
【0132】
好ましい局面において、本発明は、ストリンジェントな条件下で本発明のヌクレオチド配列に対してハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を包含する(例えば、65℃および0.1×SSC(1×SSC=0.15 M NaCl、0.015 M クエン酸ナトリウム、pH 7.0)である。本発明のヌクレオチド配列が、二本鎖である場合、その二重鎖の両方の鎖は、個々または組み合わせてかのいずれかで、本発明により包含される。ヌクレオチド配列が一本鎖のとき、そのヌクレオチド配列の相補鎖もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解されるべきである。
【0133】
本発明の配列に対して100%相同ではないが、本発明の範囲内に入るヌクレオチド配列は、多数の方法で入手することができる。本明細書において記載される他の改変体は、ある範囲の供給源から作製されたDNAライブラリーをプローブ検査することによって例えば得られ得る。さらに、他のウイルス/細菌、または細胞ホモログ(特に、哺乳動物細胞(たとえば、ラット、マウス、ウシおよび霊長類細胞)から見出された細胞ホモログ)が得られ得、そしてそのようなホモログおよびそのフラグメントは、一般に、本明細書におけるは入れうt表に示される配列に選択的にハイブリダイズし得る。そのような配列は、他の動物種から作製されたcDNAライブラリーまたはそれからのゲノムDNAライブラリーをプローブ検査すること、およびそのようなライブラリーを、配列番号22に示すヌクレオチド配列のすべてまたは部分を含むプローブで、中程度から高度のストリンジェンシーの条件下でプローブ検査することによって得られ得る。類似の考慮条件は、本発明のアミノ酸および/またはヌクレオチドの配列の種ホモログおよび対立遺伝子変異体を得ることに適用される。改変体および株/種ホモログはまた、本発明の配列内の保存されたアミノ酸配列をコードする改変体およびホモログ内の標的配列に対して設計されたプライマーを使用する縮重PCRを用いて得られ得る。
【0134】
保存された配列は、例えば、いくつかの改変体/ホモログからのアミノ酸配列を整列することによって予測され得る。配列整列は、当該分野において耕地のコンピュータソフトウェアを用いて行われ得る。例えば、GCG Wisconsin PileUpプログラムは、広汎に使用されている。縮重PCRにおいて使用されるプライマーは、1つ以上の縮重位置を含み、そして公知の配列に対して単一の配列プライマーを用いて配列をクローニングするために使用されるものよりも低いストリンジェント条件下で使用される。
【0135】
あるいは、そのようなヌクレオチド配列は、特徴付けられた配列(例えば、配列番号22に示されるヌクレオチド配列)の部位特異的変異誘発によって得られ得る。このことは、そのヌクレオチド配列が発現される特定の宿主細胞にとってコドン優先度を最適化するための配列にとって必要である。他の配列変化は、制限酵素認識部位を導入するため、またはヌクレオチド配列によってコードされるHOX酵素の酵素活性を変更するために所望され得る。
【0136】
本発明のヌクレオチド配列は、プライマー(例えば、PCRプライマー、代替増幅反応のためのプライマー)、プローブ(例えば、放射標識または非放射方式を用いて従来の手段により表示標識によって標識されている)を生成するために用いられ得、あるいはそのヌクレオチド配列は、ベクター中にクローニングされ得る。そのようなプライマー、プローブおよび他のフラグメントは、少なくとも15、好ましくは少なくとも20、例えば、少なくとも25、30または40のヌクレオチド長であり、そしてまた、本明細書において使用される本発明の用語ヌクレオチド配列によって包含される。
【0137】
本発明に従ったヌクレオチド配列(例えば、DNAポリヌクレオチド)およびプローブは、組み換え的に、合成的に、または当業者に利用可能な任意の手段で生成され得る。これらはまた、標準的な技術によってクローニングされ得る。
【0138】
一般に、プライマーは、合成的手段によって生成され得、これには、一度に1ヌクレオチドという所望の核酸配列の段階的製造が包含される。自動化技術を用いてこれを達成するための技術は、当該分野において容易に利用可能である。
【0139】
より長いヌクレオチド配列は、一般的に、組み換え手段(例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術)を用いて生産される。これは、クローニングすることが所望される標的配列の領域に隣接する、一対のプライマー(例えば、15〜30ヌクレオチド長)を作製する工程、そのプライマーを、mRNAまたはcDNAに接触させる工程、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を所望の領域の増幅をもたらす条件下で行う工程、増幅したフラグメントを例えば、アガロースゲルにおいて反応混合物を精製することによる)およびその増幅したDNAを回収する工程を包含する。このプライマーは、増幅したDNAが適切なクローニングベクター中にクローニングされ得るように、適切な制限酵素認識部位を含むように設計され得る。
【0140】
遺伝コードの固有の縮重に起因して、実質的に同じまたは機能的に等価なアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を使用してHOX酵素をクローニングおよび発現し得る。当業者に明らかなように、天然に存在しないコドンを含むHOX酵素コードヌクレオチド配列を生成することが有利であり得る。特定の原核生物または真核生物宿主によって好まれるコドン(Murray E et al(1989)Nuc Acids Res 17:477−508)が選択され得、例えば、これにより、HOX酵素発現率を増加させ得、または所望の特性(例えば、天然に存在する配列から生産される転写物より長い半減期)を有する組み換えDNA転写物を生産し得る。
【0141】
(スクリーニング)
本発明の方法は、変異した宿主細胞生物における細胞内POIのレベル上昇についてスクリーニングするために使用され得る。このようなスクリーニングにおいて使用される細胞は、固体支持体または固体基材に固定され得る(例えば、プラスチックピンまたは他のいくらかの表面)。その細胞は、本発明の膜抽出組成物に接触され得、そして放出されたPOIレベルは、当該分野において公知の方法を用いて測定され得る。
【0142】
(高処理能力スクリーニング(HTS))
本発明の方法は、高処理能力スクリーニング(HTS)系において使用され得る。ここで、標的細胞は、マイクロタイタープレート(10000変異体/日)でロボットにより増殖およびスクリーニングされる。例示の目的で、新たな組み換え生産株を作製する場合、生産性を増加するために伝統的な変異誘発を1回または数回行うことが通常必要である。これは、変異された細胞のHTSを用いて最も効率的に行われる。
【0143】
本発明の方法は、非常に有利である。なぜなら、これは、細胞内POIのレベルの増加を高処理能力スクリーニング(HTS)に可能とするからである。これまでは、これらの系は、分泌されたPOIのより高いレベルについてスクリーニングのみを行うことができた。
【0144】
(実施例節および図面への導入)
わずかにより詳細には、
図1は、Hansenula polymorphiaにおけるHOX産生のための発現ベクターの物理的マップを提供する。任意のシグナル配列に融合された合成HOX遺伝子のコード領域を有する、EcoRI/NotI平滑フラグメントを、標準的なHansenula発現ベクターの多重クローニング部位中にクローニングした。この発現ベクターは、蟻酸デヒドロゲナーゼ(FMD)遺伝子のプロモーターおよびメタノールオキシダーゼ遺伝子のターミネーター(MOX−T)を、フラグメント部位についての複数クローニング部位によって分離されて、ならびにE.coliにおける増殖および選択のためのoriおよびbla(ampR)、H.polymorphaにおける複製のためのARS(HARS)配列、選択のためのURA3遺伝子を包含する。
【0145】
図2Aは、1.4kbの純正のFMD遺伝子(上スキーム)およびクローニングされた異種DNAを有するFMDプロモーター(下スキーム)の図を示す。制限部位は、Asp718、NcoIである。
【0146】
図2Bは、組み込まれた遺伝子の遺伝子コピーを示す。レーン1−12は、異なる組み換え単離体およびその対応するDNA希釈を示す。レーン13は、形質転換されていない宿主株を示し、そしてレーン14は、サイズマーカー(M)を示す。
【0147】
図3Aおよび3Bは、HOX発現のSDS−PAGE分析を提供する。図3Aは、変異誘発した株DK8−27KanII3−mut25のグリセロール醗酵からの培養物濾液のSDS−PAGE分析を提供する。レーン1は、マーカータンパク質を示す。レーン2は、HOX標準(0.03U/ml;18μl)を示す。レーン3は、プローブ3(18μl)からの上清を示す。レーン4は、プローブ4(18μl)からの上清を示す。レーン5は、プローブ5(18μl)からの上清を示す。レーン6は、プローブ6(18μl)からの上清を示す。レーン7は、プローブ7(18μl)からの上清を示す。レーン8は、プローブ8(18μl)からの上清を示す。レーン9は、プローブ9(18μl)からの上清を示す。レーン10は、プローブ10(18μl)からの上清を示す。レーン7は、プローブ7(18μl)からの上清を示す。
【0148】
図3Bは、HOXを発現する組み換え株のウェスタンブロット分析を提供する。レーンに適用されたサンプルは、図3Aについてと同様である。膜は、ポリクローナルHOX抗体でプローブ検査した。
【0149】
図4は、分泌株DK8−27KanII3−mut25の10リットルの醗酵培養物の増殖および生産性を示す。この醗酵は、25℃およびpH5.0で、グリセロールおよびpO2制御のもとで行った。
【0150】
図5は、コドン最適化を伴うHOX遺伝子を合成するために使用される個々のオリゴヌクレオチドを提供する。
【0151】
図6は、合成HOX遺伝子のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列を提供する。
【0152】
図7A−7Dは、免疫蛍光により決定されるようなH.polymorphaにおけるHOX酵素の局在化を示す。HOX酵素(緑色シグナル)の局在化の、核局在(青色シグナル)との重ね合わせを示す。以下を参照:A)HOX遺伝子なしのRB 11 株、B)DK8−27、C)DK8−27 mut25、D)DK2II−I。
【0153】
図8は、細胞ホモジナイザーを通じたサイクルの数の関数としてのHOX活性を示すグラフを提供する。
【0154】
図9は、CTABおよびTriton X−100の異なる濃度で抽出されたHansenula polymorpha細胞を示すグラフを提供する。
【0155】
図10Aは、CTAB処理後の細胞上清(レーン7−10)およびペレット(レーン2−5)におけるにおけるHOX酵素レベルのSDS−PAGEを示す。HOX酵素は、機械的抽出によりペレットから放出された。そのサンプルは、MES,Novexからの4−12%NuPAGEゲルの上で分析し、そして10μlのサンプルを以下の順で各々のレーンにロードした:レーン2−5:細胞ペレットにおける残りのHOX;レーン7−10:上清における放出されたHOX;レーン1および6:Novex See Blue標準物;レーン2:コントロール;レーン3:0.1% CTAB;レーン4:0.2%CTAB;レーン5:0.4%CTAB;レーン7:コントロール;レーン8:0.1% CTAB;レーン9:0.2% CTABおよびレーン10:0.4% CTAB。
【0156】
図10Bは、細胞上清(レーン7−10)およびペレット(レーン2−5)におけるHOX酵素レベルのウェスタンブロット分析を示す。HOX酵素は、機械的抽出によりペレットから放出された。このサンプルを、MES,Novexからの4−12% NuPAGEゲルにおいて分析し、そして5μlのサンプルを各々のレーンに以下の順序でロードした:レーン1 および6:Novex See Blue 標準物,レーン2:コントロール,レーン3:0.1% CTAB;レーン4:0.2% CTAB;レーン5:0.4% CTAB;レーン7:コントロール,レーン8:0.1% CTAB;レーン9:0.2% CTABおよびレーン10:0.4% CTAB。
【0157】
図11Aは、CTAB抽出されたHOXについての溶出プロファイルを示す。
【0158】
図11Bは、機械的に抽出されたHOXについての溶出プロファイルを示す。
【0159】
(実施例)
(材料および方法)
(化学物質)
使用したすべての化学物質は、分析試薬等級のものであった。レシチン(3−sn−ホスファチジルコリン)は、Stem(Germany)からSternpur PMとして市販されている。プロナーゼE(エキソペプチダーゼおよびエンドペプチダーゼの混合物についての専用名称であって、Streptomyces griseus から得られ、実質的に任意のタンパク質を加水分解してほとんど完全にアミノ酸を遊離させ得るもの)。リゾレシチン(リゾホスファチジルコリン)、D−グルコース、o−ジアニシジン、ペルオキシダーゼ(P−8125)、カプロン酸(デカン酸)、サポニン(植物において広く分布するグリコシドの大群のいずれかのメンバーであって、強力な界面活性剤である)およびCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドとしても知られる)(H−5882)はすべて、Sigma Chemical Co.,USAから購入した。メタノール(HPLC)は、Lab−Scan Ltdからであった。過酸化水素およびTriton X100(ポリエトキシル化オクチルフェノールについての専用名称)は、Merck,Germanyから購入した。Palsgaard 4445としても市販される乳化剤YNは、Palsgaard,Denmarkからであった。四級アンモニウム化合物(例えば、LTAB(ラウロイルトリメチルアンモニウムブロミド)、Cetrimide−40(cetrimidumとしても知られる)(これは、アルキルアンモニウムブロミド、主にCTABからなる界面活性剤殺菌剤である)、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)、STAB(ステアロイルトリメチルアンモニウムブロミド)、MTAC(ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド)、CTAC(セチルトリメチルアンモニウムクロリド),STAC(ステアロイルトリメチルアンモニウムクロリド)は、すべて、FeF,Denmarkからであった。Rodalonは、約9.5%(95g/l)のアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(Cl225N(CH3277Cl)を含み、これは、Superfos Biosector,2950 Vedbaek,Denmarkから得た。アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドはまた、塩化ベンザルコニウムとしても知られる。乳化剤ラウロイルラクチレートナトリウム(SLL)は、Danisco Cultor,Grindsted,Denmarkからであった。
【0160】
(酵母醗酵)
酵母の培養は、10LスケールについてのRhein Biotech醗酵マニュアルに従って6Lまたは100Lの醗酵槽において行った。
【0161】
(実施例1)
(合成の、コドン最適化HOX遺伝子のアセンブリ)
(遺伝子設計)
ネイティブのHOX遺伝子のヌクレオチド配列を改変し、合成遺伝子を生成した。この合成HOX遺伝子(図6)は、コドン使用法を、Pichia sp.、Hansenula sp.、Kluyveromyces、Yarrowinia、S.Pombeのような生物工学的に関係ある酵母の既知のコドン優先度と正確に一致するように、これら生物における高レベル生産を容易にするため設計した。遺伝子は、3つの別個のアセンブルおよび/またはクローン化されたフラグメントに分割した。5’基部半分と称したサブアセンブリは、相補的なペアとして図5に提示されるような以下のオリゴヌクレオチドから構成された:HOX1a/HOX2b、HOX3a/HOX4b、HOX5a/HOX6b、HOX7a/HOX8b、HOX9a/HOX10b;プライマー1−6を用いる3’遠位部半分およびプライマー6−10を用いる3’遠位部半分。
【0162】
(5’基部合成HOX遺伝子)
合成HOX遺伝子の5’基部半分は、10のオリゴヌクレオチドHOX1A〜HOX10Bを用いて合成した。100μLのホットスタートPCR反応(熱安定性DNAポリメラーゼPwo(Boehringer)を用いる)において、100−120塩基対の範囲の長さを有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いた(濃度=各々0.1μM)。ホットスタートは、dNTP(250μM)およびPwoポリメラーゼ(2.5単位)を添加する前に、オリゴヌクレオチド、緩衝液、MgSO4の混合物を、90℃まで加熱することにより実施した。40サイクルのPCRは、94℃30秒、57℃1分および72℃1分のPCRプロフィールを用いた。72℃における10分の伸長ステップを、40サイクルの終わりに含めた。アガロースゲル電気泳動におけるこのPCRからの産物の分析は、サイズが100〜850塩基対の範囲のDNAバンドのスメアを示した。最初のPCRを、上記反応からの2μlをテンプレートとして、および隣接プライマーHOX1AおよびHOX1B(各々1μM)用いて再増幅した。この反応は、200μM dNTP、2.5mM MgCl2および2単位のAmpliTaq(登録商標)(Perkin−Elmer Cetus)を含んだ。PCR条件は:94℃2分間、次いで94℃30秒間、60℃1分間および72℃45秒間のプロフィールをもつPCRの30サイクルであった。72℃における10分の伸長ステップを、40サイクルの終わりに含めた。アガロースゲル電気泳動による第2のPCR産物の分析は、次いでゲルから精製され、そしてベクターpCR(登録商標)(Invitrogen)中にクローン化された、850bpのDNAバンドの存在を示した。
【0163】
(3’遠位部合成HOX遺伝子)
HOX遺伝子の遠位部分を合成するために、90−126塩基対の範囲の長さのプライマーを設計した。これらプライマーは、約60℃の計算された融解温度をもつ16−21塩基対の重複(相補的)領域を含んだ。このHOX遺伝子の遠位部分は、各々が530塩基対のサイズをもつ2つのフラグメント(AおよびB)として合成された。2つのPCR反応を、6つのプライマーを用いて一度に実施した。PCR反応1はプライマー1−6を含み、そしてPCR反応2はプライマー5−10を含んだ。PCR増幅反応は、100μlの反応容量中、0.1μMの各々のプライマー、250μMの各dNTP、2mMのMgSO4および2.5単位のPyrococcus furiosus(Stratagene)由来のPfu DNAポリメラーゼを用いて実施した。Pfu DNAポリメラーゼを用いる2つのPCR反応のサイクリングパラメーターは、95℃における1分の変性、次いで:94℃1分間、55℃1分間および72℃1分間のPCRの30サイクルを含めた。次いで、72℃における3分の伸長反応を行った。アガロースゲル電気泳動による2つのPCR反応からのPCR産物の分析は、両方の場合で、長さが約530bpの正確なサイズの1つの特異的DNAバンドの合成を示した。これらPCR産物を、pCR(登録商標)−Bluntベクター(Invitrogen)中にクローン化した。クローン化された部分的合成HOX遺伝子を、複数クローニング部位に隣接するプライマー(M13逆プライマーおよびT7プロモータープライマー)を用いて配列決定した。配列決定結果は、合成された部分遺伝子が正確な配列を含んでいたことを確証した。
【0164】
(最終のコドン最適化HOX遺伝子のアセンブリ)
合成HOX遺伝子の3つの部分を、Nco1/PvuII 5’基部HOX、3’遠位PvuII/SpeI HOXフラグメントAおよびSpeI/NotIで切断されたフラグメントBからなる、ゲル精製されたDNAフラグメントの連結により結合した。完全なコドン最適化された合成HOX遺伝子(図6)を、Hansenulaから外来タンパク質の発現および分泌を媒介するために開発されたHansenula発現ベクター中にアセンブルした。この発現ベクターは、ギ酸デヒドロゲナーゼプロモーター(FMD)、MOXターミネーター、酵母分泌シグナルありまたはなしに基づく。
【0165】
(結果1)
(H.polymorphaにおける組換えHOXの発現)
表1は、H.polymorpha発現/組み込みベクターの複数クローニング部位中に、EcoRI/NotI平滑フラグメントとして挿入された種々のHOX/分泌融合構築物を示す。異なるシグナル配列は、Schwanniomyces occidentalisからのグルコアミラーゼ遺伝子、Saccharomyces cerevisiaeからのα因子接合型遺伝子およびAspergillus oryzaeからのTAKAアミラーゼ由来であった。シグナル配列なしのNocI/NotI HOX構築物もまたベクター中にクローン化した。
【0166】
【表2】

【0167】
用語、変異体合成は、推定のKEX2プロテアーゼ切断部位R331−K332〜R331−P332に関する。
【0168】
(実施例2)
(形質転換および継代)
異なるHOX発現プラスミドを用いて、ウラシル栄養要求性H.polymopha株RB11を、ウリジン原栄養に形質転換した。異なる発現プラスミドを保持するHOX形質転換体を、選択的条件下で30世代の間培養し、プラスミドDNAを増幅し、そしてゲノム中へ組み込ませた。これら形質転換体を、完全非選択培地上で20世代の間増殖させた。選択に加え、PCRおよびサザン分析を用いて形質転換体を特徴付けた。
【0169】
(組み込まれた異質DNAのコピー数の決定)
非形質転換宿主株および特定のHOX構築物の種々の組換え単離株のゲノムDNAを制限酵素Asp718/NcoIで消化した。制限酵素消化DNAを、0.8%アガロースゲル上で分離し、メンブレン(ニトロセルロース)に移し、そしてクローン化FMDプロモーターの32P標識フラグメントにハイブリダイズした。このハイブリダイゼーションパターンは2つのシグナルを示し、1つは真の単一コピー1.4kbFMD遺伝子であり、そしてもう1つはわずかにより小さな異種融合に由来する。一連の希釈は、固有の単一コピーのコントロールと比較して組み込まれたDNAの単一強度の推定を可能にした。
【0170】
(結果2)
(HOX発現のスクリーニング)
形質転換体を、3mLのチューブ培養中で生育させ、そして1%グリセロールを培地に補填することによる脱抑制条件の下で培養した。HOX発現を、グリセロール発酵からの培養のSDS−PAGE分析により分析した。ポリクローナルHOX抗体を用いるウェスタンブロット分析を用いてHOXタンパク質の存在を検出した。
【0171】
【表3】

【0172】
(実施例3)
(H.polymorphaにおける組換えHOXの局在化)
組換えH.polymorphaの免疫蛍光顕微鏡法には、細胞を、Yeast Nitrogen Base(YNB)+グルコース中で、108細胞/mlの密度まで前培養した。発現を誘導するために、3×108細胞を、YNB+1%グリセロールで補填した100mLの振盪フラスコ培養にシフトした。脱抑制条件下の1、2または3日の増殖の後、5×108細胞を、組合わせたパラ−ホルムアルデヒド(4%)およびグルタルアルデヒド(0.2%)処置(HagenおよびHyam、1988)により固定した。1mLのPEM(100mM
Pipes、1mM EGTA、1mM MgSO4、pH6.9)で3回洗浄した後、細胞壁を、0.5mg/mLのZymolyase−100Tを補填したPEMS(PEM+1Mソルビトール)中で部分的に除去した。消化の約60分後、細胞を、PEMS+1%TritonX−100にシフトし、30秒インキュベートし、そして0.5mLのPEMで3回洗浄した。未反応グルタルアルデヒド細胞をクエンチするために、細胞をPEM+1mg/mLホウ化水素ナトリウム中に再懸濁した。この直後、細胞を、PEM中で2回洗浄し、PEMBAL(PEM+1%BSA(グロブリンフリー)、1mM リジン塩酸塩、0.1%NaN3)中に再懸濁し、そして回転ホイール上でインキュベートした。108細胞に等しい、細胞懸濁物の25%を、10μg/mlのアフィニティー精製したポリクローナル抗−HOX抗体で補填し、そして室温で一晩インキュベートした。0.5mLのPEMBAL中で3回洗浄した後、細胞を、PEMBAL中に懸濁し、そして0.5%のFITC結合ヤギ抗ウサギ抗体(Sigma)とともに暗中で5−20時間インキュベートした。PEMBAL中の洗浄後、細胞を、PBS中で1回、PBS+0.2μg/mLジアミジノフェニルインドール(DAPI)中で1回洗浄し、そして最後にPBS+0.1%NaN3中に再懸濁した。顕微鏡観察には、細胞懸濁物の小サンプルを、ポリLリジンでコートされたカバースリップ上に乾燥し、そして1mg/mLパラ−フェニレンジアミンを含む100%グリセロールの液滴中に転置した。細胞を、間接免疫蛍光装置を備えたZeiss顕微鏡で検査し(1.000×)、そしてイメージを、CCDカメラ(MicroMAX Kodak)によりキャプチャーし、そしてMetaMorphソフトウェアを用いてプロセッシングした。
【0173】
(結果3)
DK8−27形質転換体の免疫蛍光顕微鏡検査は、組換えHOXタンパク質が、凝集体として、主に細胞の周縁に局在化していることを示した(図7b)。生化学的データと組合わせ、これらの結果は、ある程度までのHOXが、(実質的な膜結合タンパク質に対し)膜結合タンパク質であり得ることを示す。HOXは、H.polymorpha中の原形質膜に局在化する可能性が最も高い。また、DK8−27由来のDK8−27mut25株では、HOXは、原形質膜と結合している(図7c)。しかし、このタンパク質は、凝集体で蓄積せず、より均一に分布している。種々のリーダーペプチドに融合するとき、HOXは、巨大な細胞内凝集体で蓄積する(図7d)。
【0174】
(実施例4)
(異なる界面活性剤およびプロテアーゼによる組換えHansenulaからのHOXの抽出)
実験は、15mLの遠心分離チューブ中の5.0mLの細胞懸濁物(細胞+上清)を用いることにより実施した(HOX9926−7、317g細胞/L湿潤重量、0.3U/mL細胞外HOX活性)。細胞を、4000gで10分間の遠心分離により分離した。透過性実験には、次いで、上清を、CTAB、CTAT+プロナーゼE、プロナーゼE、Tween20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートの商標名)およびTween80(ソルビタンモノラウレートの商標名)のいずれかで補填した。次いで、細胞を、4.0mLの上清中に再懸濁し、そして25℃で23時間インキュベートした(500rpm)。CTABとの時間の効果を調べるために、チューブの1つの中の細胞を、4mLの0.4%CTAB中25℃で7分間のインキュベートのみをした。次いで、細胞を、遠心分離により分離した。次いで、細胞を、添加されるCTABのない元の上清中に再懸濁し、次いで、上記のように23時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞フリー抽出物中の細胞外HOXを、HOXアッセイにより測定した。
【0175】
(HOX活性の測定のためのアッセイ方法(HOXアッセイ))
HOX活性は、SullivanおよびIkawa(1973)のアッセイにより推定した。このアッセイを、マイクロタイタープレート中で行うためにスケールダウンした。
【0176】
(原理)
HOXアッセイは、グルコースの酸化で発生する過酸化水素の測定に基づく。この過酸化水素は、ペルオキシダーゼ(POD)の存在下でo−ジアニシジンを酸化し、色素を形成する。
【0177】
HOX
β−D−グルコース+H2O+O2 → D−グルコノ−δ−ラクトン+H22
POD
22+o−ジアニシジンred → 2H2O+o−ジアニシジンox
(試薬)
1.100mM リン酸緩衝液、pH6.3
2.100mM リン酸緩衝液、pH6.3中の100mM D−グルコース
3.o−ジアニシジン、3.0mg/ml蒸留水中
4.ペルオキシダーゼ、0.10mg/lmL 100mM リン酸緩衝液、pH6.3中
(アッセイ)
120μl 試薬1
150μl 試薬2
10μl 試薬3
10μl 試薬4
および 10μl 酵素溶液(適正な希釈中)
このアッセイは、マイクロタイタープレート中で実施される。反応は、酵素溶液の添加により開始される。この混合物は、振盪しながら25℃で10分間インキュベートされる。ブランクの反応は、酵素溶液に代わる水とすべての成分を含む。色素の形成は、405nmにおけるマイクロタイタープレートリーダー中で測定される。反応の直線性は、マイクロリーダー上の動力学的プログラムを用いることによりチェックされる。
【0178】
(過酸化水素標準曲線)
過酸化水素標準曲線は、変化する濃度の新鮮H22を用いることにより構築する。1単位の酵素活性を、25℃で1分間あたり1μmolのH22を生成する酵素量と規定する。
【0179】
(結果4)
表3に提示されたデータは、CTABがHOXを抽出することで非常に効率的であることを示す。CTABはまた、Tween20およびTween80よりかなり効率的である。プロテアーゼを添加することの有意な利点はない。非常に興味深いことに、CTABは、ほんの7分のプレインキュベーションでもちいるときでさえ、そのポジティブな影響を奏し、これは、CTABが、Hansenula細胞壁に非常に迅速に結合し、かつ透過処理することを示す。これは、CTABに対する細胞フリー上清の分析により支持されており(以下を参照のこと)、これは、添加された4000ppmのCTABのうちほんの50−100ppmが細胞フリー上清中に存在することを示す。
【0180】
各試験薬剤についての遠心分離チューブ中の沈殿物の比較はまた、CTAB処置細胞のパックされた細胞容積が、CTAB以外の界面活性剤で処理されたコントロール細胞(単数または複数)の容積より小さいことを示す。細胞のこの収縮は、細胞が実際に透過処理され、そしてそれらの可溶性内容物のあるものが空にされたことを示す。
【0181】
【表4】

【0182】
(実施例5)
(CTABおよびベンズアルコニウムクロライド(BAC)を用いるHOXの抽出)
この実験は、15mL遠心分離チューブ中の5.0mLの細胞懸濁物(細胞+上清)(HOX9959、Mut45)を用いることにより実施した。次いで、細胞懸濁物を、CTAB(10%CTABストック溶液から)またはベンズアルコニウムクロライド(Rodalon、9.5%ベンズアルコニウムクロライド)いずれかで補填し、そして25℃で22時間インキュベートした(200rpm)。インキュベーション後、細胞外HOX(細胞を4000gで10分間の遠心分離により除去した)をHOXアッセイにより測定した。
【0183】
(結果5)
表4に提示したデータは、ベンズアルコニウムクロライド(BAC)が細胞からHOX酵素を放出することで非常に効果的であることを示す。
【0184】
【表5】

【0185】
(実施例6)
(塩と組み合わせたCTABによる、かつ異なる温度におけるHOXの抽出)
CTAB効果の機構を試験するために、CTABをカオトロピック塩および非カオトロピック塩と組み合わせた。5mLの細胞懸濁液(細胞+上清)を15mL遠心管に加えた(HOX9926−7、317g細胞/リットル湿重量、0.3U/mL細胞内HOX活性)。細胞を4000gで10分間遠心分離によって分離した。次いで、上清をCTAB、CTAB+NaCl、CTAB+尿素、CTAB+硫酸アンモニウムまたは非イオン性洗浄剤であるオクチル−グリコシドのいずれかで補充した。次いで、細胞を4.0mLの上清中に再懸濁させ、そして25℃で26時間インキュベートした(500rpm)。この実験において、振盪および温度の効果もまた、試験した。インキュベーション後、細胞を含まない抽出物を使用して、実施例4に概説されるようなHOXアッセイを用いてHOX活性を試験した。
【0186】
(結果6)
結果を表5に示す。振盪が、CTABの存在下でHOXの抽出をするために必ずしも必要でないことが明白である。明らかな温度効果があり、これは、4℃での抽出は、25℃で抽出された活性の半分だけ生じることを意味する。塩化ナトリウムおよび硫酸アンモニウムの添加は両方とも、CTAB処理の効果を減少させ、これは、CTAB]のイオン性が重要であることを示し得る。尿素の添加は、あまり強烈でない効果を有するが、依然として抽出されたHOXの量を0.4%のCTABで抽出された量の約半分まで減少させる。尿素は、非イオン性であるが、疎水性の相互作用によって妨害され得る。尿素は、親油性のタンパク質の抽出のためにPichia細胞を透過させる手法として、先行技術において報告された(Craig 1987)。非イオン洗浄剤であるオクチルグルコシドは、有意な抽出効果を有さない。
表5
細胞内HOXの抽出に対する洗浄剤、塩と組み合わせた洗浄剤、振盪、および温度の効果
【0187】
【表6】

【0188】
(実施例7)
(HOXを含む細胞抽出物におけるLC−ESI−MSによるCTABおよびLTABの決定)
実施例5からの抽出されたHOXのサンプルを、以下のユニットからなるHewlett−Packard 1100 HPLC−MSシステムにおけるLC−ESI−MSの手法によって、それらのCTABの含量について分析した:
a)二成分勾配ポンプ、HP1100
b)自動サンプラー、HP1100、
c)サーモスタットのカラム成分、HP1100
d)質量選択検出器、HP1100
e)クロマトグラフィーデータシステム、HP ChemStation、Version6.01。
【0189】
このシステムに、Zorbax Eclipse(登録商標)XDB−C8、5μM、150×4.6mM id.(Hewlett−Packard)カラムを備えた。カラム温度は25℃であった。
【0190】
クロマトグラフィー条件は、2つの溶媒からなる移動相であった。溶媒A:1mM NH4OAc/水、溶媒B:1mM NH4OAc/メタノール。カラムを、アイソクラチック(isocratic)条件によって(すなわち、クロマトグラフィーの期間の間、溶出液の組成が一定に保持される条件を用いて)実行した:5%A+95%B、0.80mL/分の溶媒流速および10μLの注入量で。サンプルを直接注入した。
【0191】
質量分析条件は、以下の噴霧室設定であった:
イオン化モード:ポジティブモードにおけるエレクトロスプレー
乾燥ガス(N2)温度:350℃
乾燥ガス流速:6.0l/分
噴霧器圧:60psi
毛細管電圧:−4000ボルト
フラグメンター(fragmentor)電圧:100ボルト。
【0192】
検出器の設定は以下であった:SIMパラメータ:m/z 284.1(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムカチオン)。500μgのCTAB/mL水(中心集中度 1000)を含むストック溶液を、水で希釈し、以下の中心集中度を有する標準溶液を得た:300−100−30−10。サンプルに、0.4%のCTABを添加し、これによって、抽出物に全CTABが存在する場合、4000μg/mLを得た。
【0193】
四級アンモニウム化合物のための分析方法を、異なるカラムを用いることによって、そして異なる移動相を用いることによって最適化した。2つの90Lスケールの発酵(314g/Lウエットセルのバイオマス濃度のVest0002bおよび332g/Lウエットセルのバイオマス濃度のVest0003b)を、0.02%(w/v)の濃度までLTABに添加し、そしてHOXを24時間抽出した。各発酵からのサンプルを10000gで10分間遠心分離し、そして得られた上清をLTAB分析のために除去した。以下の方法を用いて、以下のユニットからなるHewlett−Packard 1100 HPLC−MSシステムにおけるLC−ESI−MSの手法によって、上清中のLTAB含量を定量した:
a)二成分勾配ポンプ、HP1100
b)自動サンプラー、HP1100
c)サーモスタットのカラム成分、HP1100
d)質量選択検出器、HP1100
e)クロマトグラフィーデータシステム、HP ChemStation、Version6.01。
【0194】
このシステムに、PLRP−S、100Å、5μm、250×4.6mM id.(Polymer Laboratories)カラムを備えた。カラム温度は25℃であった。
【0195】
クロマトグラフィー条件は、メタノール中の0.1%のヘプタフルオロ酪酸からなる移動相であった。カラムを1.00mL/分の溶媒流速および5μLの注入量で実行した。サンプルをメタノールで25倍に希釈し、そして注入前に、Gelman GHP Acrodisc 13mM Minispike 0.45μMを介して濾過した。
【0196】
質量分析条件は、以下の噴霧室設定であった:
イオン化モード:ポジティブモードにおけるエレクトロスプレー
乾燥ガス(N2)温度:350℃
乾燥ガス流速:13.0L/分
噴霧器圧:60psi
毛細管電圧:−4000ボルト
フラグメンター(fragmentor)電圧:150ボルト。
【0197】
検出器の設定は以下であった:SIMパラメータ:m/z 228.1(ラウオリルトリメチルアンモニウムカチオン)。250μgのLTAB/mLメタノール(中心集中度 1000)を含むストック溶液を、メタノールで希釈し、以下の中心集中度を有する標準溶液を得た:400−200−120−80−36−10.8−5.4−2.16−0.864。
【0198】
(結果7)
表6から、HOX酵素を含む細胞抽出物におけるCTABのレベルは、細胞に添加された量よりずっとより低いことが明白である。これは、酵母細胞壁へのCTABの結合およびそれ故の固定化によって説明される。これは、得られたHOX酵素のみが、非常に低いレベルのCTABを含むことを意味する。
表6
実施例6からの抽出されたHOX上清中のCTABの含量
【0199】
【表7】

【0200】
上清中のLTABについて得られた結果(表6a参照)は、添加されたLTABの約27%のみが、細胞を含まない画分において見出されることを示す。この結果は、表6のCTABでの結果と同じ傾向を示す。
表6a
実施例6からの発酵Vest0002bおよびVest0003bから抽出された上清中のLTAB含量
【0201】
【表8】

【0202】
(実施例8)
(CTABによるHOXの抽出の時間および効率に対する温度の効果)
CTABによるHOXの抽出の時間および効率に対する温度の効果を、Hansenulaサンプル上で試験した:Mut45、HOX9949、284g/L、2.6U/mL。
【0203】
遠心管中の発酵物(細胞+上清)5mLに、(10%のCTAB溶液からの)0.2%か0.4%のいずれかのCTABを添加した。この管を、それぞれ、25、30、35および40℃でインキュベートした(200rpm)。指示された時間に、サンプルを取り、そして1000gで5分間遠心分離した後、上清をHOX活性についてアッセイした。結果を表7に示す。
表7
異なる温度でのH.polymorphaからのHOX抽出の時間経過
【0204】
【表9】

【0205】
(結果8)
CTAB抽出は、温度に依存すること、およびより高い温度を用いることによってより速い抽出が達成され得ることが明白である。しかし、これは、抽出されたタンパク質の安定性によってバランスされるべきパラメータである。この実験において、0.2%または0.4%のCTABを用いることの間に、有意差は存在しないようである。しかし、これは、特定の実験における細胞濃度に依存する。
【0206】
(実施例9)
(異なる4級アンモニウム化合物によるHOX抽出)
いくつかの異なる4級アンモニウム化合物を、Hansenula polymorpha由来の細胞内HOX酵素の抽出に関して試験した。発酵培養液のサンプルを、6Lスケールの発酵(ここでは、バイオマス濃度が1L当たり約340g湿重量である)から除去した。表8に列挙される4級アンモニウム化合物の各々の4%(w/v)溶液1mLを、プラスチック管に発酵培養液9mLまで添加した。25℃で200RPMでの24時間のインキュベーション後に、管を2000gで10分間遠心分離した。上清を、前記のように、HOXアッセイを用いてHOX活性について分析した。
【0207】
HOX抽出の時間経過をCTAB、LTABおよびCTACを用いて研究した。1L当たり280gの湿重量のHansenula polymorphaを含む発酵サンプルを発酵層から除去した。CTAB、LTABおよびCTACの4%(w/v)溶液を、発酵培養液9mLを含むプラスチック管に最終濃度0.2または0.4(w/v)まで添加した。25℃で200RPMでの48時間のインキュベーションの0、7、17、24、および48時間後に、管を2000gで10分間遠心分離した。上清を、前記のようにHOXアッセイを用いてHOX活性について分析した。
【0208】
LTABの抽出効果を、細胞内でHOXを産生するPichia pastoris株番号349において試験した。発酵培養液のサンプルを6Lスケールの発酵(ここで、バイオマス濃度は、1L当たり約232g湿重量であった)から除去した。発酵培養液9mLを、LTABの10%(w/v)溶液 0μL(コントロール)または180μLと共にプラスチック管に添加した。30℃で20RPMでの24時間のインキュベーション後に、管を9000gで5分間遠心分離した。上清を前記のようにHOXアッセイを用いてHOX活性について分析した。
【0209】
(結果9)
HOXは、0.4%(w/v)の終濃度で発酵サンプルに添加した場合の全ての試験した四級アンモニウム化合物で抽出することができた(表8を参照のこと)。25℃での24時間のインキュベーション後、LTABは、HOXの抽出に関して、他の試験した化合物より優れていた。抽出されたHOXの量は、四級アンモニウム化合物の鎖の長さが増加するにつれ減少するようであった。
【0210】
CTAB、LTABまたはCTACを用いたHOX抽出の時間経過を、表9に示す。インキュベーション時間および抽出試薬濃度の両方が抽出されるHOX活性の量に影響を与えることが、明らかである。LTABは、分析した全インキュベーション時間において最良の抽出試薬であることが見出され、これは、表8に示す結果と一致する。LTABを用いたHOXの抽出は、0.4%(w/v)の濃度のLTABよりも、0.2%(w/v)LTABの濃度においてよりゆっくりとした速度で進行するようである。HOX酵素の抽出に関して、0.2%(w/v)のCTABの使用と0.4%(w/v)のCTABの使用との間にほとんど差異はないようである。
【0211】
(表8)
(種々の四級アンモニウム化合物を用いたHansenula polymorphaからのHOXの抽出)
【0212】
【表10】

【0213】
抽出試薬の添加前の発酵培地における細胞外HOXレベルは、24時間後にLTABで抽出したHOX活性の約9%であった。
a化合物は、全て構造:CH3−(CH2n−N(CH3+3(塩化物または臭化物を対イオンとして有する)である。
b全ての実験を2連で実行した。
cPichia pastorisからの結果を、いずれのLTABの添加も伴わないコントロールチューブでの抽出HOXに対して標準化した。抽出開始前の発酵中の細胞外HOXレベルは、コントロール(すなわち、いずれのLTABの添加も伴わないプラスチックチューブ)中の抽出レベルの約24%であった。
【0214】
(表9)
(CTAB、LTAB、およびCTACを用いたHOX酵素の抽出の時間経過)
【0215】
【表11】

【0216】
抽出試薬の添加前の発酵培地における細胞外HOXレベルは、48時間後に0.4%(w/v)LTABで抽出したHOX活性の約4%であった。値を、±1標準偏差で提供する。n:実験数。
【0217】
全ての値を、48時間後に0.4%(w/v)LTABを用いた抽出レベルに対して標準化する。
【0218】
(実験10)
(HOX抽出に関するCTABと他の乳化剤との間の比較)
リゾレシチン(リゾホスファチジルクロライド)は、高分子の選択的な放出を伴って少なくとも哺乳動物細胞を透過可能であり得る。リゾレシチンおよび多数の他の乳化剤および短い鎖の脂肪酸の効果を試験するために、HOXを抽出するこれらの能力を試験してCTABと比較した。
【0219】
5mLの細胞懸濁液(細胞+上清)を、15mLの遠心分離チューブに添加した(HOX9910B、305g細胞/L 湿重量、1.6U/ml 細胞外HOX活性)。細胞を、4000gで10分間、遠心分離によって分離した。次いで、細胞を、CTAB、乳化剤SLL、YN、カプリン酸、リゾレシチン、またはレシチンのいずれかを補充した4.0mL 25mMクエン酸(pH6.3)中に再懸濁した。次いで細胞を、20時間25℃(500rpm)でインキュベートした。
【0220】
(結果10)
インキュベーション後、無細胞抽出物中のHOX活性のレベルを、HOXアッセイによって測定した。表10に示すデータは、CTAB以外の試験した乳化剤が、非常に低いレベルの活性酵素を放出し得るのみであることを示す。この結果はまた、CTABが、上清中の潜在的な酵素を活性化し得ること(おそらく、膜結合フラグメントから酵素を放出することによる)を示す。
【0221】
(表10)
(HOX抽出に対する界面活性剤、乳化剤、およびリン脂質の効果)
【0222】
【表12】

【0223】
(実施例11)
(HOXの抽出に関するCTABとサポニンとの間の比較)
サポニンがジギトニンのように作用するか否かを確認するために、HansenulaからのHOX酵素の抽出に対するサポニンの効果を試験した。
【0224】
実験を、5.0mLの細胞懸濁液(細胞+上清)を用いて15mL遠心分離チューブ中で実行した(HOX190799、340g細胞/L 湿重量、0.5U/mL 細胞外HOX活性)。細胞を、4000gで10分間、遠心分離することによって分離した。次いで、細胞を、CTABもしくははサポニンのいずれかを補充した4.0mLの上清中に再懸濁するか、またはCTABもしくはサポニンのいずれかを補充した25mM クエン酸(pH6.3)中に再懸濁した。
【0225】
無細胞抽出液(CTABを用いた処理後)中の測定されたHOX活性が実際に抽出の結果であり、単に上清中のHOX活性化の結果ではないこと(これは、HOXは上清中に既に存在するが不活性であることであり得る)を確認するために、無細胞抽出液(CTABまたはサポニンでの補充後)をまた、インキュベートし、そしてHOX活性について分析した。このチューブを、19時間25℃(500rpm)でインキュベートした。インキュベーション後、無細胞抽出物中の細胞外HOXを、HOXアッセイによって測定した。
【0226】
(結果11)
表11の結果は、サポニンがHOXを細胞から抽出するごくわずかな能力を有することを示す。さらに、サポニンによるHOX活性化の指標も、CTABによるHOX活性化の指標も、いずれもなかった。
【0227】
(表11)
異なる透過剤を使用することによる比較HOX抽出/活性化
試験 HOX活性%
コントロール 0(細胞+上清) 100
0.2% CTAB(細胞+上清) 1200
0.4% CTAB(細胞+上清) 3100
0.2% サポニン(細胞+上清) 150
0.4% サポニン(細胞+上清) 140
0.8% サポニン(細胞+上清) 140
コントロール 1(細胞+緩衝液) 100
0.2% CTAB(細胞+上清) 3100
0.4% CTAB(細胞+上清) 7700
0.2% サポニン(細胞+上清) 230
0.4% サポニン(細胞+上清) 230
0.8% サポニン(細胞+上清) 230
上清+0.2% CTAB 80
上清+0.4% CTAB 80
上清+0.2% サポニン 80
上清+0.4% サポニン 80
上清+0.8% サポニン 80
(実施例12)
(100L発酵槽におけるHOXのCTAB抽出)
120時間の発酵(FermID Vest9910b)の後、CTAB溶液(40℃の水3.6Lに溶解した360gのCTAB)を100L発酵槽の入口ポートを介してブロスに直接添加した。活性な発酵物容量が約90Lであったため、発酵ブロス中のCTABの最終濃度は、約4g/Lであった。
【0228】
同時に、撹拌、通気、pH制御、および栄養物添加をとめた。温度を25℃に制御し、そして22時間のCTAB処理の後、ブロスのHOX含量は、1.6U/mLから30U/mLに増加した。
【0229】
(実施例13)
(実験室スケールにおけるHOX産生Hansenula polymorphaの均質化)
CTAB処理の結果としてHOX抽出の効率を試験するために、2つの異なる発酵試験からの細胞を、細胞分裂装置「Z Plus」2.2kW(Constant Systems Ltd,UK)を使用することによって分裂させた。細胞(5mL)をワンショットポンプヘッドを使用して様々な圧力で分裂させた。開始後、この細胞片を遠心分離(10,000gで5分)によって上清から分離し、そして細胞を含まない上清中の細胞内HOXレベルを、上記のようなHOXアッセイを使用して測定した。同じ細胞をまた、0.2% CTABで処理し(25℃、500rpm、20時間)、そして細胞を含まない抽出物を比較物質として使用した。
【0230】
(結果13)
表12に示すデータは、細胞内HOXの総量が0.2% CTABでの処理によって抽出されることを示す。
【0231】
(表12)
CTAB処理の有効性
【0232】
【表14】

【0233】
*細胞は25℃で48時間インキュベートした。
【0234】
(実施例14)
(大スケールにおけるHOX産生Honsenula polymorphaの均質化)
APV Gaulin高圧ホモジナイザーモデル30CDで、10Lの発酵ブロス(FermID Vest9907b)をホモジナイズした。ホモジナイザーを最大流速(100L/分)で、1000barの圧力によって作動させた。均質化手順の間、このブロスを氷水で冷却し、そして産物の温度は決して20℃を越えなかった。HOX活性の迅速な増加は、初めの3サイクルの間に観察され、続いて5〜7サイクル後にほとんど定常レベルが観察された。
【0235】
(結果14)
この結果を、表13および図8に示す。
【0236】
(表13)
(Hansenula polymorphaからのHOXの機械抽出)
【0237】
【表15】

【0238】
(実施例15)
(Honsenula polymorphaからのHOXの抽出に対するTriton X−100の効果)
CTABまたはTriton X−100を、遠心分離管の5mLの発酵物(サンプル HOX9954、Mut 45、18.10.99,HVP)に添加した。水をコントロールに添加した。サンプルを、25℃、200rpmで22時間インキュベートした。インキュベーションの後、これらのサンプルを遠心分離し、そして上清を、上記のようにHOX活性について分析した。
【0239】
(結果15)
結果を表14および図9に示す。非イオン性界面活性剤、Triton X−100を使用して、酵母細胞を透過化処理し(Naglakら、1990および米国特許第第5124256号を参照のこと)たが、Triton X−100はCTAB(これは、当該分野において、細胞内酵素(例えば、HOX酵素)を抽出し得ることが記載されていないが、細胞の透過性化を与えることが記載されている)とは逆に抽出効果を有さないことは明らかである。
【0240】
(表14)
(Triton X−100と比較したCTABでのHOX抽出)
【0241】
【表16】

【0242】
(実施例16)
(ウェスタンブロッティング)
ウェスタンブロッティングを用いて、残余(ペレット)のHOX酵素および放出された(上清の)HOX酵素の量を分析することによりHOX分泌の効力を試験した。細胞を、それぞれ、0%、0.1%、0.2%、および0.4%CTABを用いて処置した。インキュベーションの後、細胞を、4000gで10分間遠心分離により分離した。得られた上清のSDS−Page(4−12% Mes Nu−Page)は、図10Aのレーン7−10に示される。ペレットを緩衝液を用いて2回洗浄し、次いで、緩衝液中に再懸濁したFastPrep細胞崩壊剤において崩壊させた。ペレット抽出物をまた、製造業者の指示書(Novex,San Diego,US)に従って、プレキャストNovexゲルを使用して、SDS−PAGE(図10A中のレーン2−5を参照のこと)にアプライした。SDS−PAGEゲルを、製造業者の指示書(Novex,San Diego,US)に従って、ニトロセルロース膜にブロットした。このブロットを、HOX酵素に対して惹起された抗体(ウサギ抗血清#4364 BI/OCH 190797)(この調製を以下に記載する)と共にインキュベートした。
【0243】
(HOX特異的抗体の調製)
組換えHOX酵素をWO96/40935に記載されるように、Escherichia coliにおいて、発現プラスミドPUPO181から産生させた。E.coli細胞発現組換えHOXの粗抽出物を、SDS−PAGEにより分析した。HOXに対応する62kDの相対分子量(Mr)でのプロミネントタンパク質のバンドを、WO96/40935に記載されるように、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜に転写させ、そしてN−末端アミノ酸配列分析に供した。同定したアミノ酸配列は:Ala−Thr−Leu−Pro−Gln−Lys−Asp−Pro−Gly−Tyr−(配列番号1)であった。この配列は、HOXについて開示された配列(HansenおよびStougaard,1997)中のアミノ酸番号2〜11に対応した。従って、発現した62kDタンパク質は、N−末端アミノ酸のメチオニン(Met1)を欠く組換えHOXであった。
【0244】
SDS−PAGEにおいて観察された62kDのHOXのバンドを、プレパラティブSDS−PAGEにより精製し、そしてHunkapillerら(1983)により記載されるようにゲルから電気溶出(electroelution)した。電気溶出した62kDのHOXバンドの純度を、上記のように、SDS−PAGE、そしてアミノ酸配列分析により分析した。精製したHOXを、ウサギにおける抗体産生のために用いた。約50μgを、等量の不完全Freund’sアジュバントと混合し、そして免疫に用いた。
【0245】
ウサギにおいて産生したHOX特異的モノクローナル抗体を、ウェスタンブロット分析における本研究を通じて用いた。ウェスタンブロット分析により分析されるタンパク質を、上記のように、電気泳動し、そして標準的手順に従って、ニトロセルロース膜に転写した。このニトロセルロース膜を、3%脱脂粉乳を含むTBS−T溶液(50mM Tris,pH7.5;150mM NaCl;0.1%Tween−20)中で1時間ブロックした。1.5%脱脂粉乳を含むTBS−T中に1:10,000で希釈したHOX特異的抗体を添加し、そして一晩ブロットした。このブロットを、TBS−T中で3回洗浄した後、1.5%脱脂粉乳を含むTBS−T中に1:1000で希釈した二次抗体(アルカリホスファターゼ結合体化ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン、DAKO,カタログ番号D487)と共にインキュベーション(1〜2時間)した。このブロットを、引き続いて、TBS−T(2x20分)およびTBS(50mM Tris,pH7.5;150mM NaCl;1×5分)中で洗浄した後、標準的な手順に従って、ニトロブルーテトラゾリウム/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート(NBT/BCIP)緩衝液中で発色させた。
【0246】
抗体の特異性を、それぞれ、Chondrus crispus、E.coliおよびPichia pastoris由来の抽出物を含むHOXを用いる一連のウェスタンブロットにおいて調査した。P.pastorisの抽出物を含むHOXのウェスタンブロット分析は、Mr62kDの強力なHOX特異的バンド、およびより低い分子量の2つまたは3つの弱いバンドを示した。
【0247】
(結果16)
ウェスタンブロットの結果を、図10Bに示す。このウェスタンブロットは、実質的に、HOXが0.4%CTABを用いる処置の後の細胞に残らないことを確認した。
【0248】
(実施例17)
(細胞内酵素の増加したレベルに対するハイスループットスクリーニング(HTS)についての記載)
細胞内HOX酵素を発現するHansenula polymorpha菌株を、254nmの波長のUV光を用いて変異させた。変異した菌株を、寒天プレート(Gibcoからの1.4g/L Yeast Nitrogen Base(YNB)、5g/L(NH42SO4、1g/Lグリセロールおよび2%(w/v)寒天)上にプレートし、そしてコロニーが形成されるまで30℃でインキュベートした。コロニーを、ロボテックコロニーピッカー(robotic colony picker)(Q−Pix,Genetix,Christchurch Dorsett,UK)を用いて96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。各マイクロタイターウェルは、200μL YNB培地(100mM MES pH6.1、1.4g/L YNB(Gibcoから)、5g/L(NH42SO4および10g/Lグリセロール)を含んだ。マイクロタイタープレートを、IOC400.XX2.C shaking incubator(SANYO Gallenkamp BV,Breda,The Netherlands)中で、7日間振盪させて25℃でインキュベートした。HOX活性を、105μLの試薬を含むように改変されたHOXアッセイを用いて10μL発酵ブロスで測定し、そして15μL 0.4%(w/v)CTABを、アッセイに加えた。反応時間は、30℃で60分であった。HOXアッセイをPlato 7 pipetting robot(Rosys,Hombrechtikon,Switzerland)を用いて実行し、吸収度をSpectramax plus microtiter plate reader(Molecular Devices,UK)で測定した。それぞれの個々のマイクロタイターウェルにおける増殖を、10μLの発酵ブロスを新しいマイクロタイタープレートに移し、100μLの100mMリン酸緩衝液、pH6.3を加え、そして600nmにおける吸収度を測定した。HOX測定を、乏しい増殖を考慮に入れるために、600nmでの吸収度に関して規格化した。
【0249】
(結果17)
この結果は、上昇したレベルの細胞内HOX酵素を産生するHansenula polymorphaの変異についてスクリーニングすることが可能であることを示す。
【0250】
(実施例18)
CTAB抽出HOX(例えば、表12を参照のこと)および「機械抽出」HOX酵素(例えば、表13および図8を参照のこと)からの比活性の比較。
【0251】
(結果18)
この結果は、CTAB抽出HOXからの比活性が、「機械抽出」HOXの比活性よりも高いことを示す。これらの結果は、CTABが、細胞小器官に局在化する細胞内タンパク質のすべてを抽出するわけではないが、主に細胞質ゾルタンパク質を抽出することを示す。
【0252】
(実施例19)
アニオン交換クロマトグラフィーによるCTAB抽出HOXおよび機械抽出HOXの特徴付け)
CTAB抽出HOXの純度を分析するために、これを細胞破壊を使用することによって抽出されたHOXと比較した。比活性を測定し、比較して、そして抽出物の核酸含有量を比較した。さらに、純度をアニオン交換クロマトグラフィーによって調べた。
【0253】
7mLの細胞懸濁液(細胞+上清)を、15mLの遠心分離チューブ(HOX9957,Mut 45)に加えた。0.4%CTABの添加時に、細胞懸濁液を23時間、30℃で(200rpm)インキュベートした。細胞を遠心分離(10000gおよび10分)で除去し、細胞を含まない上清をCTAB抽出HOXの供給源として使用した。別の7mLの同じ細胞懸濁液(CTABを添加しない)を、ワンショットポンプヘッド(Z Plus,2.2kW,Constant Systems Ltd,UK)を2×2400barで使用することによって破壊した。次いで、細胞の破片を遠心分離(10000gおよび10分)によって分離し、そして上清を機械抽出HOXの供給源として使用した。
【0254】
両方のサンプルを20mM TEA(トリエタノールアミン、Merck)緩衝液、pH7.3で、PD10カラム(Pharmacia Biotech.)で脱塩した。サンプルをHOX活性およびタンパク質濃度について分析した(タンパク質アッセイは、Schleif and Wensink,1981によって記載されるアッセイ方法に基づく)。核酸の含有量は、260nmおよび280nmの測定によって決定した(Bollag and Edelstein,1991)。
【0255】
イオン交換クロマトグラフィーを、Biologic Duo Flow
(Bio−Rad,CA,USA)システムを使用することによって行った。500μlの脱塩化サンプルを、TEA緩衝液(緩衝液A、20mM、pH7.3)で平衡化されたSource Q 15 column(HR5/5,Pharmacia Biotech.)に適用した。HOXを、1.5mL/分の流速で、緩衝液A中0−0.5M NaClの20mLの直線勾配で溶出し、この間、1.5mLの画分が、収集され、そしてHOX活性についてアッセイされた。
【0256】
(結果19)
比活性の決定は、CTAB抽出HOXが、機械抽出HOXと比較してずっとより純粋であることを示す(表15)。また、この核酸の含有量は、機械抽出HOXにおけるよりも、CTAB抽出HOXにおいてずっと低い(表15)。
【0257】
【表17】

【0258】
CTAB抽出HOXおよび機械抽出HOXについてのSource Q分析のクロマトグラムを示す図11Aおよび11Bにおけるアニオン交換クロマトグラフィー分析はまた、この結果を強く確認する。
【0259】
(CTABを用いた実験)
(実施例20)
(1.振とうフラスコ実験)
2種の異なる培地を、CTABとの実験のために選択した:
・YP/1%のグリセロール
・YNB/1%のグリセロール+0.1MのNaPi pH6.0。
【0260】
((a)YP/1%のグリセロール中での培養)
50mLの培地を、2.5mLのYPDプレ培地を用いてインキュベートし、そして37℃、160rpmで培養した。培養の28時間後に、1%(v/v)のメタノールを添加し、そして37℃、16rpmで18時間さらにインキュベートした。このOD600nmを測定して、必要であるCTABの量を計算した。上清(SN)のアリコートおよび1.5mLの培地の細胞ペレットを取り出した。細胞を機械で破壊した後、可溶なフラクション(CX)を単離した。
→ これらの状態のSNを、Aと命名した。
【0261】
これらの状態のCXを、Dと命名した。
【0262】
これらの培養物の同一の体積(20mL)を、2個の振とうフラスコにアリコートした。20mLの培地に、0.005gのCTABを補充した。(CTAB−ストック溶液:0.02g/mL;DANISCO:0.4%(発酵槽培地中)(OD600nm〜300)→振とうフラスコ実験OD600nm〜20→0.027gのCTAB/100mLの培地)培地のインキュベーション:24時間、4℃(振とう無し)。
→ これらの状態のSNを、Cと命名した。
【0263】
これらの状態のCXを、Fと命名した。
【0264】
CTABを含まない第2の振とうフラスコを、CTAB−フラスコとして同一の条件下でインキュベートし、そして参照培地として利用した。
→ これらの状態のSNを、Bと命名した。
【0265】
これらの状態のCXを、Eと命名した。
【0266】
5種の異なるIL−1ra構築物を有する菌株を培養した。この菌株4−17、AL9/2およびII3−1は、単一の配列を有さない、3種の異なる構築物を含んだが、この菌株MFα2およびMFαAL7/1は、MFαプレ−プロ配列を有する、2種の異なる構築物を示した。
【0267】
菌株FPMT8を、組換え菌株と同一の条件下で培養した。この菌株をエンプティーHansenulaベクターpFPMT121のほぼ30個のコピーに必須のRB11であり、ネガティブコントロールとして役立つ。
【0268】
CTABでの処理後に、40倍(20倍)から110倍のIL−1ra濃度の増加が、単一配列を有さない構築物を含む、菌株の上清において検出された。CTABで処置したMFα−菌株に関して、IL−1ra濃度のより低い増加(2倍〜5倍)が測定された。
【0269】
(結果20)
これらの結果を、表16に要約した。
【0270】
【表18】

【0271】
表16:YP/グリセロール/メタノール中でのCTABとの実験
A:YP/グリセロール/メタノール中での46時間の培養後の上清
B:YP/グリセロール/メタノール中での46時間の培養、次いで、CTABなしで24時間インキュベートした後の上清
C:YP/グリコール/メタノール中での46時間の培養、次いで、CTABなしで24時間インキュベートした後の滅菌濾過した上清。
*注釈
菌株AL9/2の上清中のこのIL−1ra濃度は、通常低かった。第4の実施形態において、0.6と0.7μg/mLとの間の濃度が検出された。低い収率の理由は、公知ではない。
【0272】
(実施例21)
((b)YNB/1%のグリセロール+0.1MのNaPi pH6.0中での培養)
CTABでのさらなる実験にために、シグナル配列を有さない3種の異なる構築物を含む3種の菌株を、選択した(菌株4−17;AL9/2;II3−1)。
【0273】
45mLの培地を、5mLのYPDプレ培養で播種し、そして37℃、160rpmで培養した。28時間培養した後、1%(v/v)のメタノールを添加し、そして37℃、160rpmで18時間さらにインキュベートした。
【0274】
このOD600nmを測定して、必要であるCTABの量を計算した。上清(SN)のアリコートおよび3mLの培地の細胞ペレットを取り出した。細胞を機械的に破壊した後、可溶なフラクション(CX)を単離した。
→ これらの状態のSNを、Aと命名した。
【0275】
これらの状態のCXを、Dと命名した。
【0276】
これらの培養物の同一の体積(20mL)を、2個の振とうフラスコにアリコートした。20mLの培地に、0.003gのCTABを補充した。培地のインキュベーション:24時間、4℃(振とう無し)。
→ これらの状態のSNを、Cと命名した。
【0277】
これらの状態のCXを、Fと命名した。
【0278】
CTABを含まない第2の振とうフラスコを、CTAB−フラスコとして同一の条件下でインキュベートし、そして参照培地として利用した。
→ これらの状態のSNを、Bと命名した。
【0279】
これらの状態のCXを、Eと命名した。
【0280】
全ての場合において、CTABでのインキュベーションは、上清のIL−1ra濃度の有意な増加(100〜130倍)に導いた。
【0281】
(結果21)
2種の培地において培養した後の、CTAB実験のELISA結果を、以下の表17において比較する。
【0282】
【表19】

【0283】
表17:YP/グリセロール/メタノールおよびYNB/グリコール/メタノール中でのCTABでの比較
A:YP/グリセロール/メタノール(またはYNB/グリセロール/メタノール)中での46時間の培養後の上清
B:YP/グリセロール/メタノール(またはYNB/グリセロール/メタノール)中での46時間の培養、次いで、CTABなしで24時間インキュベートした後の上清
C:YP/グリセロール/メタノール(またはYNB/グリセロール/メタノール)中での46時間の培養、次いで、CTABなしで24時間インキュベートした後の滅菌濾過した上清。
【0284】
(実施例22)
(異なるインキュベーション条件の試験)
YP/グリセロール/メタノール中で培養した菌株II 3/1(1.aを参照のこと)について、CTABの添加後に異なるインキュベーション条件を試験した。
条件:
>24時間 CTAB;4℃ 振盪なし(「標準的」条件)
>24時間 CTAB;4℃ 緩やかに振盪
>24時間 CTAB;37℃ 振盪なし
>24時間 CTAB;37℃ 緩やかに振盪
(結果22)
上清中のIL−1raの濃度を、ELISAによって測定した。結果を、表18に要約する。
【0285】
【表20】

【0286】
A:YP/グリセロール/メタノール中で46時間培養後の上清
B:YP/グリセロール/メタノール中で46時間培養し、次いでCTABなしで24時間インキュベートした後の上清
C:YP/グリセロール/メタノール中で46時間培養し、次いでCTABと共に24時間インキュベートした後の滅菌濾過上清。
【0287】
上清におけるIL−1raの最も高い増加は、振盪なしで37℃でCTABインキュベーション後(76倍)、および振盪なしで4℃でCTABインキュベーション後(49倍)で測定された。
【0288】
最も高いIL−1raの濃度は、37℃で検出されたが、CTABなしでインキュベートした参照サンプルにおける濃度もまた、増加した(16倍)。参照サンプルにおける高い濃度は、細胞の溶解によって引き起こされ得る。
=>最良の条件:4℃(細胞の溶解を回避するため)振盪なし。
【0289】
(実施例23)
(SDS−PAGE、ウエスタンブロットおよびクマシー染色)
振盪フラスコ実験から単離された粗抽出物の上清および可溶性画分を、還元条件下でSDS−PAGEによって分析した。
ゲル:16%Novex−gel TG 1mm;還元条件
コロイド状クマシー染色(BIO−SAFE Coomassie,Biorad)
サンプル:A:YP/グリセロール/メタノール中で46時間培養後の上清
B:CTABを含まない参照上清
D:粗抽出物の可溶性画分(CX) 1:3希釈
E:参照培養物の粗抽出物の可溶性画分(CX) 1:3希釈
F:CTAB処理後の粗抽出物の可溶性画分(CX) 1:3希釈。
【0290】
(結果23)
(*WB33およびCoo2)
菌株: 4〜17pFPMT icIL 1raI
Al 9/2pFPMT icIL 1raI+Al
CTAB:24時間インキュベーション;4℃、振盪なし。
【0291】
ウエスタンブロット(WB33)の結果を、図12Aに示す。試験サンプルおよび添加した量を、図12Aについての以下の説明文において示す。
【0292】
【表21】

【0293】
この結果は、両方の菌株について、SNにおけるIL−1raの増加(レーン4、レーン9)およびCXにおける減少(レーン5、レーン10)が、CTABでの処理後に検出されたことを実証する。
【0294】
コロイド状のクマシー(Coo2)ブルー染色を、図12Bに示す。この試験サンプルおよび添加量を、図12Bについての以下の説明文において示す。
【0295】
【表22】

【0296】
(*WB34およびCoo3)
菌株: MFα2 pFPMT MFα IL−1raI
MFαAL 7/1pFPMT MFα IL−1raI+Al
CTAB:24時間インキュベーション;4℃、振盪なし。
【0297】
ウエスタンブロット(WB34)の結果を、図13Aに示す。試験サンプルおよび添加した量を、図13Aについての以下の説明文において示す。
【0298】
【表23】

【0299】
この結果は、CTABでの処理後に、細胞内および分泌されたIL−1raの混合物が、レーン4および9において上清Cにおいて検出されたことを示す。
MFα2:細胞内IL−1ra由来の〜20kDaおよび34kDaのさらなるバンド。
【0300】
MFα7/1: 細胞内IL−1ra由来の17kDa未満のさらなるバンド
増加した18kDaシグナルの強度
コロイド状クマシー(Coo3)結果を図13Bに示す。
【0301】
添加された試験サンプルおよび量を、図13Bに対する以下の説明文に示す。
【0302】
【表24】

【0303】
(WB35およびCoo4)
株:II3/1pFPMT icIL−1ra II型
CTABの添加後の異なったインキュベーション条件:
24時間CTAB、4℃、浸透せず(「標準条件」)
24時間CTAB、37℃、浸透せず
ウエスタンブロット(WB35)結果を図14Aに示す。
【0304】
添加された試験サンプルおよび量を図14Aに対する以下の説明文に示す。
【0305】
【表25】

【0306】
コロイド状クマシー(Coo4)結果を図14Bに示す。
【0307】
添加された試験サンプルおよび量を、図14Bに対する以下の説明文に示す。
【0308】
【表26】

【0309】
4℃および37℃におけるCTABのインキュベーション後、SNにおけるIL−1raの増加(WB35:レーン4、レーン8)の増加およびCXにおける減少(WB35:レーン5、レーン9)が検出されたことを、この結果は実証する。
【0310】
SN CTAB 37℃(レーン8)において、最も多い量のIL−1raIIを得た。この結果は、ELISA結果と一致している(表3を参照のこと)。
【0311】
この上清において、より多くのIL−1raIIだけでなく、より多くの他のタンパク質(35kDaを超える)が染色された(Coo4:レーン8)。この観察は、4℃と比較して37℃で有意な細胞溶解が発生するという仮定を確かめた。
【0312】
(考察)
Chondrus crispus HOX遺伝子のコドン用法(StougaardおよびHansen 1996、HansenおよびStougaad,1997)は、Hansenula宿主生物体のより頻繁に使用されたコドンのコドン用法と、低使用コドンとの置換によって改変された。HOXの発現のためのコドン至適化されたHOX DNAフラグメントを含む酵母、Hansenula polymorpha、発現系(Rhein Biotech,Dussldorf/ドイツで開発された)の形質転換体を調製した。
【0313】
HOX酵素をコードする遺伝子のコドン至適化は、Hansenula polymorpha酵母宿主生物体におけるHOX酵素の高レベルの発現(高レベルの酵素活性の点から)を生じた。シグナル配列が存在しない場合、HOX酵素は、細胞内に局在化される。しかし、多数の異なったシグナル配列が異なった構築物において使用される場合でさえ、少しのHOX活性が細胞外培地において測定され得たか、または全く活性が測定され得なった。これらの結果は、HOX酵素が、シグナル配列を含むHOX酵素を発現する宿主株からでさえ分泌され得ないことを示す。ウエスタンブロットはまた、シグナル配列が存在する場合でさえ、HOX酵素が膜結合画分中に局在化し得ることを確認し、HOX遺伝子の転写および翻訳が存在するが、HOX酵素は分泌されずそして分泌経路にとどまっているようであることを示す。
【0314】
本発明の方法を使用する細胞内酵素学的に活性なHOX酵素は、他のイオン性/非イオン性界面活性剤および乳化剤を使用して、伝統的な細胞破壊方法および抽出方法と比較された。プロテアーゼおよび塩と界面活性剤との組み合わせがまた、調べられた。
【0315】
(要約)
本発明の1つの広範な局面において、目的の可溶性かまたは膜結合細胞内タンパク質(POI)を放出する方法が提供され、この方法は、以下の工程:可溶性かまたは膜結合細胞内POIを含む細胞を提供する工程;膜抽出組成物と細胞を接触させる工程;およびPOIの放出に十分な条件下でおよび可溶性形態で、POIを細胞から放出させる工程を包含する。
【0316】
本発明の別の広範な局面において、目的の可溶性かまたは膜結合細胞内タンパク質(POI)を特異的に放出する工程が提供され、この方法は、以下の工程:可溶性かまたは膜結合細胞内POIを含む細胞を提供する工程;膜抽出組成物と細胞を接触させる工程;およびPOIの放出について十分な条件下で細胞から放出されるが、他の混入したタンパク質の放出に不十分である工程を包含する。
【0317】
上記の明細書中で述べられた全ての刊行物は、本明細書中で参考として援用される。本発明の記載された方法および系の種々の改変およびバリエーションは、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明らかである。本発明は、特定の好ましい実施形態と関連して記載されているが、要求されるような本発明が、このような具体的な実施形態に過度に限定されるべきでないことが理解されるべきである。確かに、分子生物学または関連した分野における当業者に明らかである本発明を実施するために記載されたモデルの種々の改変は、以下の特許請求の範囲内であることが意図される。
【0318】
(参考文献)
【0319】
【表27】

【0320】

【0321】
本発明は、以下の図面を参照して、例示の目的でのみ説明される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−153152(P2011−153152A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−76689(P2011−76689)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【分割の表示】特願2001−539886(P2001−539886)の分割
【原出願日】平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願人】(397060588)ダニスコ エイ/エス (67)
【Fターム(参考)】