タンパク質凝集の疾患の治療のための組成物および方法
本発明は、タンパク質フォールディングおよび/もしくは凝集ならびに/またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存の障害をはじめとする疾患および/または疾病の治療に有益効果をもたらすエピ−イノシトール化合物を含む、組成物、方法および使用に関する。本発明の態様において、本エピ−イノシトール化合物は、アルツハイマー病、認知症および軽度認知障害の治療に有益効果をもたらす。1つの態様において、本発明は、アミロイド関連疾患の治療に有益効果をもたらすエピ−イノシトール化合物を含む組成物、特に、医薬組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年2月17日に出願された、米国仮特許出願第60/774,818号に対する、米国特許法第119(e)条の下での優先権の利益を主張する。米国仮特許出願第60/774,818号は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、エピ−イノシトール化合物および組成物、ならびにそれらの組成物についての方法および使用、特に、異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾病を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
多数の一連の証拠は、アミロイドβ−ペプチド(Aβ)の神経毒性オリゴマー/原線維凝集物の蓄積が、アルツハイマー病(AD)の病理発生の中心事象であることを示唆している[1、2]。これは、(β−もしくはγ−セクレターゼ阻害剤での)Aβの発生の阻害、その除去の促進、またはその凝集および毒性の予防に基づく治療法を開発しようという試みにつながった。ADのための抗Aβ療法の潜在的有用性は、ワクチンの臨床試験からの試験的支持を受けており、これは、AD患者の小コホートにおける臨床的および神経病理学的改善を示唆していた[3、4]。しかし、抗Aβワクチンは、一部の患者においてT細胞媒介髄膜脳炎も誘導し、このため、この特定のワクチンは広範にわたる臨床使用に適さない[非特許文献1]。それにもかかわらず、Aβワクチンは、一部のマウスモデルにおいて、Aβ原線維発生および毒性の抗体媒介阻害によって作用することが証明されている[非特許文献2〜4]。従って、免疫療法の潜在的リスクを回避するAβ凝集の小分子阻害剤を同定することは、望ましいことである。
【非特許文献1】Orgogozo,J.M.ら、Neurology 61,46−54(2003)
【非特許文献2】Schenk D.ら、Nature 400,173−177(1999)
【非特許文献3】McLaurin,J.ら、Nat.Med.8,1263−1269(2002)
【非特許文献4】Golde,T.E.J.Clin.Invest.111,11−18(2003)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、対象における本明細書に開示する疾患および/または疾病を治療するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物をその対象に投与することを含む。1つの態様において、本発明は、治療後に有益効果をもたらす治療を提供する。本発明の方法は、本明細書に開示する疾患および/または疾病にかかりやすい対象において治療的に用いることができ、または予防的に用いることができる。
【0005】
1つの態様において、本発明は、対象における異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾患および/または疾病を治療するための方法を提供し、この方法は、単離された、純粋な、特に、実質的に純粋な、エピ−イノシトール化合物を含む。特に、本発明は、タンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存の異常に関連した中枢もしくは末梢神経系または全身器官の状態を対象において治療するための方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物をその対象に投与することを含む。
【0006】
もう1つの態様において、本発明は、アミロイド形成、沈着、蓄積および/もしくは残存を阻害する、ならびに/または既存アミロイドの溶解/破壊を生じさせる、治療用エピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。従って、本発明のエピ−イノシトール化合物および組成物は、アミロイド沈着が発生する疾患においてアミロイドーシスを抑制するために使用することができる。
【0007】
もう1つの態様において、本発明は、対象において、アミロイドタンパク質集合を予防または阻害する、アミロイド沈着物のクリアランスを強化する、またはアミロイド沈着物の沈着を遅速させるための方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物をその対象に投与することを含む。
【0008】
1つの態様において、本発明は、対象におけるアミロイド原線維形成、器官特異的機能不全(例えば、神経変性)または細胞毒性を減少または抑制するための方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物をその対象に投与することを含む。
【0009】
もう1つの態様において、本発明は、エピ−イノシトール化合物で破壊または解離させることができるアミロイド相互作用に関連した状態を対象において治療するための方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物をその対象に投与することを含む。
【0010】
本発明は、アミロイド沈着、特にアミロイドーシスを特徴とする疾患および/または疾病、さらに特にアルツハイマー病の治療に、特に適用される。従って、本発明は、アミロイド沈着、さらに特にアルツハイマー病、の症状を有する対象に投与すると、有益効果、好ましくは持続的有益効果、を生じる、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む治療方法に関する。1つの実施形態において、有益効果は、次のうちの1つ以上によって証明される:凝集したAβの破壊、シナプス機能の長期増強および/もしくは維持の抑制増大、ならびに/またはAβの脳蓄積、脳アミロイド斑沈着、神経膠活性、炎症および/もしくは認知低下の減少。
【0011】
本発明は、加齢プロセスに関連した記憶、特に短期記憶、および他の精神機能障害を改善するための方法にさらに関し、この方法は、有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。特に、本発明は、有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することによる、健常対象の記憶または加齢性記憶障害を有する対象の記憶を改善する方法を提供する。1つの実施形態において、記憶を改善する必要がある哺乳動物(この場合の哺乳動物は、記憶を損なわせるまたは別様に低下させることが知られている疾病、疾患、虚弱または病気と診断されていない)を治療するための方法を提供し、この方法は、記憶改善有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物もしくはニュートラシューティカル的に許容される(neutraceutically acceptable)その誘導体を含む栄養補助食品を、その哺乳動物に投与する段階を含む。
【0012】
1つの態様において、本発明は、疾病(例えば、アルツハイマー病)に罹患している患者において疾病の進行を改善するまたはより重症度の低い病期を達成するための方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0013】
本発明は、疾病(例えば、アルツハイマー病)の進行を遅延させる方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0014】
本発明は、疾病に罹患している対象の生存を増加させる方法にも関し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0015】
1つの実施形態において、本発明は、アルツハイマー病に罹患している対象の寿命を改善する方法に関し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0016】
1つの態様において、本発明は、軽度認知障害(MCI)を治療するための方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0017】
1つの態様において、本発明は、個体における認知症の発症を遅延するまたは重症度を低下させる方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与して、認知症の発症を遅延させるまたは重症度を低下させることを含む。
【0018】
1つの実施形態において、本発明は、対象において認知障害およびアミロイド斑神経病態の発症後にアミロイド沈着および神経病態を逆転させる方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物をその対象に投与することを含む。
【0019】
本発明のエピ−イノシトール化合物または組成物は、本明細書に開示する疾病を治療するために有効な経路によって患者に投与することができる。例示的投与経路としては、静脈内、経口、腹腔内および皮下投与経路が挙げられる。
【0020】
本発明は、エピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と許容される担体とを含む栄養補助食品をヒトに投与することによる、健常人の食事を補うためのレジメンも含む。本発明は、エピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体をヒトに毎日投与することによる、健常人の食事を補うためのレジメンをさらに含む。
【0021】
本発明は、本明細書に記載する疾患および/または疾病、特に、タンパク質フォールディングおよび/もしくは凝集ならびに/またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存の異常、の治療に有益効果をもたらすエピ−イノシトール化合物を含む組成物、特に、医薬組成物を提供する。1つの態様において、本発明は、治療後に有益効果、特に、持続的有益効果をもたらす1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む医薬組成物を提供する。本発明の組成物によってもたらされる有益効果としては、治療効果、特に、持続的治療効果の増強を挙げることができる。
【0022】
1つの態様において、本発明は、アミロイド関連疾患の治療に有益効果をもたらすエピ−イノシトール化合物を含む組成物、特に、医薬組成物を提供する。
【0023】
本発明は、エピ−イノシトール化合物、特に、純粋なエピ−イノシトール化合物、さらに特に、実質的に純粋なエピ−イノシトール化合物を、場合によっては1つ以上の医薬的に許容される担体、賦形剤またはビヒクルと一緒に含む、有益効果、特に、持続的有益効果をもたらすために対象に投与することを意図した医薬組成物も提供する。
【0024】
本発明は、医薬的に許容される担体、賦形剤またはビヒクル中に、持続的有益効果をもたらす治療有効量のエピ−イノシトール化合物を含む、疾患および/または疾病を治療するための医薬組成物も提供する。
【0025】
1つの態様において、疾患および/または疾病を治療するために持続的有益効果をもたらす対象への投与に適応させた、エピ−イノシトール化合物を含む医薬組成物を提供する。1つの実施形態において、本組成物は、疾患および/または疾病に罹患している対象への投与が、Aβ原線維集合もしくは凝集、Aβ毒性、異常なタンパク質フォールディング、凝集、アミロイド形成、沈着蓄積もしくは残存、および/またはアミロイド脂質相互作用の阻害、減少または逆転、ならびに/あるいは既製原線維の分解の促進を結果として生じさせるような形態である。特に、本組成物は、対象において、凝集性AβもしくはAβオリゴマーの破壊、長期増強の増大もしくは回復、シナプス機能の維持;ならびに/またはアミロイドβの脳蓄積、脳アミロイド斑の沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマー、神経膠活性、炎症および/もしくは認知低下の減少を結果として生じさせる、特に、治療停止後、長期間にわたって生じさせる形態である。
【0026】
本発明は、疾患および/または疾病、特に、アミロイド沈着を特徴とする疾患および/または疾病、さらに特にアルツハイマー病、の治療に有益効果、特に持続的有益効果、をもたらすエピ−イノシトール化合物を含む組成物に関する。
【0027】
もう1つの態様において、本発明は、対象において、AβもしくはAβオリゴマーの凝集を破壊する、長期増強を増大もしくは回復させるおよび/またはシナプス機能の維持に;ならびに/あるいはアミロイドβの脳蓄積、脳アミロイド斑沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマー、神経膠活性、炎症および/または認知低下を減少させるために有効な、特に、その化合物の投与後、長期にわたって有効な用量で、エピ−イノシトール化合物を含む組成物を特徴とする。本組成物は、医薬的に許容される担体、賦形剤またはビヒクル中のものである場合もある。
【0028】
加えて、本発明は、治療後に有益効果、好ましくは持続的有益効果をもたらすようにした1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む、安定的な医薬組成物を調製する方法を提供する。本発明は、治療後に有益効果、好ましくは持続的有益効果をもたらすようにした治療有効量の1つ以上の純粋な、特に、実質的に純粋な、エピ−イノシトール化合物を含む、安定的な医薬組成物を調製する方法をさらに提供する。組成物を調製した後、それらを適切な容器に入れ、指示された状態の治療についてのラベルを貼ってもよい。本発明の組成物の投与のために、そうしたラベルは、投与の量、頻度および方法を含むであろう。
【0029】
本発明において使用するためのエピ−イノシトール化合物は、インビボで活性化合物に変換されるプロドラッグの形態であってもよい。例として、エピ−イノシトール化合物は、切断可能な基を含む場合があり、この基は、対象に投与された後に切断されて活性(例えば、治療活性)化合物、または後にその活性化合物を生じさせる中間化合物をもたらす。前記切断可能な基は、酵素的にまたは非酵素的に除去することができるエステルであってもよい。
【0030】
本発明において使用するためのエピ−イノシトール化合物は、その化合物と相互作用する担体を場合によっては含むことがある。担体としては、ポリマー、炭水化物もしくはペプチド、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。担体は、例えば、1つ以上のアルキル、ハロ、チオール、ヒドロキシルまたはアミノ基で置換されていてもよい。
【0031】
1つの態様において、本発明は、1つ以上のエピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体を含む、栄養補助食品組成物を提供する。1つの態様において、本発明は、エピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体を含む、記憶改善を目的とした、哺乳動物が消費するための、特に、人が消費するための栄養補助食品を提供する。もう1つの態様において、本発明は、そのサプリメントを摂取した個体の神経荒廃プロセスを遅速させる、および記憶、特に短期記憶を改善するための、エピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体を含むサプリメントを提供する。本発明の栄養補助食品は、好ましくは、快い味がし、体に有効に吸収され、実質的な治療効果をもたらす。
【0032】
本発明は、エピ−イノシトール化合物を含有する市販の製剤を製造する方法も提供する。
【0033】
1つの態様において、本発明のエピ−イノシトール化合物、特に、純粋なまたは実質的に純粋なエピ−イノシトール化合物、および組成物は、本明細書に開示する疾患および/または疾病、特に、アミロイド形成、凝集または沈着に関連した疾患および/または疾病を治療するために治療的または予防的に投与することができる。いずれの特定の理論による制約も受けることを望まないが、本化合物および組成物は、次のメカニズム(しかし、それらに限定されない)のうちの1つ以上を用いて疾病の経過を改善するように作用することができる:Aβ原線維もしくはAβオリゴマー集合もしくは凝集、Aβ毒性、Aβ42レベル、異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集、アミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存、および/またはアミロイド相互作用の予防、減少、逆転および/または阻害;Aβによって誘導される神経変性もしくは細胞毒性の予防、減少、逆転および/または阻害;既製原線維の分解の促進;凝集性AβもしくはAβオリゴマーの破壊もしくは解離;長期増強の増大もしくは回復;シナプス機能の維持;脳からのAβのクリアランスの強化;Aβの分解の増加;ならびに/あるいはアミロイドβの脳蓄積、脳アミロイド斑の沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマー、神経膠活性、炎症および/または認知低下の予防、減少、逆転および/または抑制。
【0034】
本発明は、疾患および/または疾病を予防および/または治療するための薬物を調製するための、少なくとも1つのエピ−イノシトール化合物を含む組成物の使用も考えている。加えて、本発明は、疾患および/または疾病の予防および/または治療のための薬物の調製における本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0035】
本発明は、対象における疾患および/または疾病を治療および/または予防するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物をその対象に投与して、有益効果をもたらすことを含む。1つの態様において、本発明は、治療後に持続的有益効果をもたらす治療を提供する。
【0036】
本発明は、エピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物もしくはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体と許容される担体とを含む栄養補助食品をヒトに投与することによる、健常人の食事を補うためのレジメンも含む。本発明は、エピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体をヒトに毎日投与することによる、健常人の食事を補うレジメンをさらに含む。
【0037】
本発明は、本発明の1つ以上のエピ−イノシトール化合物または医薬組成物を含むキットも提供する。1つの態様において、本発明は、1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む組成物と、容器と、使用説明書とを収容している、疾患および/または疾病を予防および/または治療するためのキットを提供する。このキットの組成物は、医薬的に許容される担体、賦形剤またはビヒクルをさらに含むことがある。
【0038】
以下の図面および詳細な説明から、当業者には、本発明のこれらおよび他の態様、特徴および利点がはっきりとわかることだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
用語解説
終点によって本明細書に列挙する数値範囲は、その範囲内に包含されるすべての数および小数部を包含する(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4および5を含む)。すべての数およびそれらの小数部は、用語「約」によって修飾されていると仮定されていると解釈しなければならない。用語「約」は、言及されている数のプラスまたはマイナス0.1から50%、5〜50%、または10〜40%、好ましくは、10〜20%、さらに好ましくは、10%または15%を意味する。さらに、単数形の冠詞「a」、「an」および「the」は、その文脈が明確にそうでなく指示していない限り、複数の指示対象を包含すると解釈しなければならない。従って、例えば、「化合物(a compound)」を含有する組成物への言及は、2つ以上の化合物の混合物を含む。
【0040】
用語「投与すること」および「投与」は、本明細書において考えられている化合物また組成物の治療有効量が予防および/または治療目的で対象に送達されるプロセスを指す。組成物は、その対象の臨床状態、投与の部位および方法、投薬量、患者の年齢、性別、体重、および医師には公知の他の因子を考慮に入れて、正しい医療行為によって投与される。
【0041】
用語「治療すること」は、こうした用語が適用される疾患および/もしくは疾病の進行またはそうした疾患および/もしくは疾病の1つ以上の症状を逆転、緩和または抑制することを指す。対象の状態に依存して、この用語は、疾病を予防することも指し、ならびに疾病の発症を予防すること、または疾病に随伴する症状を予防することを包含する。治療は、短期的に行われる場合もあり、または長期的に行われる場合もある。この用語は、疾病の重症度またはそうした疾病に随伴する症状をその疾病で苦しむ前に減少させることも指す。苦しむ前の疾病のそのような予防または重症度の減少は、投与時点でその疾病で苦しんでいない対象への本発明の化合物または組成物の投与にあてはまる。「予防すること」は、疾病のまたはそうした疾病に随伴する1つ以上の症状の再発を予防することも指す。「治療すること」は上で定義したが、用語「治療」および「治療的に」は、治療する行為を指す。
【0042】
用語「対象」、「個体」または「患者」は、本明細書では交換可能に用いており、本明細書に開示する疾患および/または疾病で苦しんでいる、またはそれ(ら)を有する疑いがある、またはそれ(ら)の素因を有する、哺乳動物などの温血動物をはじめとする動物を指す。哺乳動物は、哺乳類の任意のメンバーが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の態様において、この用語は、ヒトを指す。この用語は、馬、牛、羊、家禽、魚、豚、猫、犬、および動物園の動物、山羊、類人猿(例えば、ゴリラまたはチンパンジー)、ならびに齧歯動物、例えばラットおよびマウスをはじめとする、食用またはペットとしての家畜も包含する。治療の代表的対象としては、本明細書に開示する疾患および/または疾病の疑いがある、それ(ら)に罹患しているまたはそれ(ら)罹患したことがあるヒトが挙げられる。対象は、本明細書に開示する疾患および/または疾病、例えばアルツハイマー病、についての遺伝的素因を有する場合もあり、または有さない場合もある。一部の態様において、対象は、認知障害およびアミロイド斑神経病態の徴候を示す。本発明の実施形態において、対象は、アルツハイマー病の疑いかある、またはアルツハイマー病に罹患している。
【0043】
本明細書で用いる場合、用語「健常対象」は、疾患および/または疾病を有さない、特に、記憶を損なわせるまたは別様に低下させることが知られている疾病、疾患、虚弱または病気と診断されていない対象、特に哺乳動物を意味する。
【0044】
用語「医薬的に許容される担体(単数もしくは複数)、賦形剤(単数もしくは複数)またはビヒクル(単数もしくは複数)は、活性成分の有効性または活性に干渉しない、およびそれを投与する宿主に対して毒性でない、媒質を指す。担体、賦形剤またはビヒクルは、希釈剤、結合剤、接着剤、滑沢剤、崩壊剤、充填剤、湿潤または乳化剤、pH緩衝剤、およびその他の材料、例えば、特定の組成物を調製するために必要とされることがある吸収剤を含む。担体などの例としては、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。活性物質のためのそうした媒質および薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。
【0045】
本明細書で用いる場合、「ニュートラシューティカル的に許容される誘導体」は、同様に機能して所期の効果を生じさせる、実質的に同様である、および生理学的に適合性である、記載の化学種の誘導体または置換体を指す。置換体の例としては、記載の化学物質の塩、エステル、水和物または複合体が挙げられるが、これらに限定されない。置換体は、後にインビボで反応を受けて記載の化学物質またはその置換体を生じさせる、記載の化学物質の前駆体またはプロドラッグであってもよい。
【0046】
用語「純粋な」は、一般に、90%、92%、95%、97%、98%または99%より良好な純度を意味し、「実質的に純粋な」は、本発明の組成物または治療用量への考慮に利用できるように作られるその化合物が、従来の精製プロセスによって容易におよび適度に除去することができない不純物しか有さないように合成された、化合物を意味する。
【0047】
「医薬的に許容される塩(単数または複数)」は、医薬的に許容される塩であって、所望の薬理特性を有する塩を意味する。医薬的に許容される塩は、対象または患者の組織と接触させる使用に適し、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴なわず、妥当な損益比に見合っている塩を意味する。医薬的に許容される塩は、例えば、S.M.Bergeら,J.Pharmaceutical Sciences,1977,66:1に記載されている。適する塩としては、化合物中の酸性プロトンが無機または有機塩基と反応できる場合に形成され得る塩が挙げられる。適する無機塩としては、アルカリ金属、例えば、ナトリウムおよびカリウム、マグネシウム、カルシウムおよびアルミニウムとで形成されるものが挙げられる。適する有機塩としては、有機塩基、例えば、アミン塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどとで形成されるものが挙げられる。適する塩としては、無機酸(例えば、塩酸および臭化水素酸)および有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、ならびにアルカン−およびアレーン−スルホン酸、例えばメタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸)とで形成される酸付加塩も挙げられる。2個の酸基が存在するとき、医薬的に許容される塩は、一塩基酸モノ塩またはジ塩である場合があり;同様に、2個より多くの酸基が存在する場合、そうした基の一部またはすべてを塩化することができる。
【0048】
「併用治療」は、複数の活性成分が、治療を受ける患者に時を同じくして投与されることを意味する。併用で投与するとき、それぞれの成分を同じ時点で投与してもよいし、または異なる時点で任意の順序で逐次的に投与してもよい。従って、それぞれの成分を別々に投与してもよいが、所望の効果、特に、有益な、付加的または相乗的効果、をもたらすように十分に近い時間を選択する。第一の化合物を、第二の化合物での治療を追加として含むレジメンで、投与してもよい。複数の態様において、この用語は、エピ−イノシトール化合物および第二の治療薬の、場合によっては1年以内の投与を指し、これは、それぞれがそれらの化合物の一方を含有する薬物を別々に投与すること、ならびにそれらの化合物が、1つの製剤に併せられていようと、なかろうと、またはそれらが別々の製剤の中にあろうと、同時に投与することを含む。
【0049】
「検出可能物質」は、放射性同位体(例えば、3H、14C、35S、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド燐光体)、発光標識、例えばルミノール;酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ);ビオチニル基(これはマーク付アビジン、例えば、光学的または比色法により検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含有するストレプタビジン、によって検出することができる);二次レポーター(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、またはエピトープタグ)によって認識される所定のポリペプチドエピトープを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、可能性のある立体障害を減少させるために、様々な長さのスペーサーアームによって標識を取り付ける。
【0050】
「有益効果」は、好適な薬理および/もしくは治療効果、ならびに/または改善された生物活性をはじめとする、本発明の一定の態様における本発明の化合物またはその組成物の効果を指す。本発明の態様において、有益効果としては、Aβ原線維集合もしくは凝集、Aβ毒性、Aβ42レベル、異常なタンパク質フォールディング、凝集、アミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存、および/またはアミロイド脂質相互作用の防止、減少、逆転または阻害、ならびに/あるいは既製原線維の分解の促進が挙げられるが、これらに限定されない。他の態様において、有益効果としては、認知機能改善、血管負荷量減少、星状神経膠細胞症減少、アミロイド負荷減少、小神経膠細胞減少、および/または生存増加が挙げられる。本発明の特定の実施形態において、有益効果は、次のうちの1つ以上を含むがそれらに限定されない:凝集したAβもしくはAβオリゴマーの破壊;長期増強の増大もしくは回復;シナプス機能の維持;Aβ誘発進行性認知低下および脳アミロイド斑病態の阻害、減少もしくは逆転;認知改善;寿命延長;Aβの脳蓄積減少;脳アミロイド斑の沈着減少;脳内の可溶性Aβオリゴマー(例えば、Aβ42)減少;神経膠活性減少;炎症減少、および/または認知低下。1つの態様において、有益効果は、本発明の組成物/製剤の好適な特徴であり、安定性強化、より長い寿命、ならびに/または血液脳関門を横断する取り込みおよび輸送の強化を含む。一部の態様において、本発明の組成物の有益効果は、迅速な脳浸透、特に、投与から1〜6、1〜5、1〜4、1〜3または1〜2時間以内の脳浸透である。
【0051】
有益効果は、エピ−イノシトール化合物の効果のその化合物なしでの効果に対する統計解析によって統計学的に有意な効果であり得る。「統計学的に有意な」または「有意に差のある」効果またはレベルは、標準より高いレベルを表すこともあり、または低いレベルを表すこともある。本発明の実施形態において、この差は、エピ−イノシトール化合物なしで得られる効果と比較して1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25または50倍高いまたは低いことがある。
【0052】
「治療有効量」は、1つ以上の所望の有益効果、特に、1つ以上の持続的有益効果、をもたらすまたはもたらすに至るであろう本発明の活性化合物または組成物の量または用量に関する。物質の治療有効量は、その個体の疾病状態、年齢、性別および体重、ならびにその個体において所望の応答を惹起するその物質の能力などの因子によって変わり得る。最適な治療応答(例えば、1つ以上の有益効果、特に、持続的有益効果)をもたらすように、投薬レジメンを調整することができる。例えば、幾つかの分割用量を毎日投与してもよいし、または治療状況の緊急性によって指示された場合にはその用量を比例的に減少させてもよい。
【0053】
「エピ−イノシトール化合物」は、本明細書に記載する1つ以上の有益効果を完全にまたは部分的に、直接または間接的に提供する任意の化合物であって、式I:
【0054】
【化2】
の基本構造を有するものを指すと理解される。
【0055】
エピ−イノシトール化合物は、式Iの化合物の機能性誘導体を包含する。「機能性誘導体」とは、式Iのエピ−イノシトールの生物活性と実質的に同様の生物活性(機能的または構造的活性)を有する化合物を指す。用語「機能性誘導体」は、エピ−イノシトールの「変異体」、「類似体」または「化学的誘導体」を包含すると解釈される。用語「変異体」は、構造および機能の点でエピ−イノシトールまたはその一部と実質的に同様の分子を指すものとする。ある分子とエピ−イノシトールは、両方の分子が実質的に同様の構造を有する場合、または両方の分子が同様の生物活性を有する場合、「実質的に同様」である。用語「類似体」は、機能の点でエピ−イノシトール分子と実質的に同様の分子を指す。用語「化学的誘導体」は、通常は前記基本分子の一部でない追加の化学的部分を含有する分子を記述するものである。
【0056】
本発明のエピ−イノシトール化合物は、多形として存在し得る化合物の結晶形を含む。水または一般的な有機溶媒とで形成される本化合物の溶媒和物も本発明に包含されると解釈される。加えて、エピ−イノシトール化合物またはそれらの塩の水和物形が本発明に包含される。
【0057】
エピ−イノシトール化合物は、配座を維持しながら、式中の1、2または3個のヒドロキシル基が、置換基、特に、一価置換基によって置換されている、式Iの化合物を含む。適する置換基としては、水素、アルキル、アシル、アルケニル、アルコキシ、=O、シクロアルキル、ハロゲン、−NHR1(この場合、R1は、水素、アシル、アルキルまたは−R2R3であり、ここでのR2およびR3は、同じであるか異なり、アシルまたはアルキルを表す)、−PO3H2、−SR4(この場合、R4は、水素、アルキルまたは−O3Hである)および−OR3(この場合、R3は、水素、アルキルまたは−SO3Hである)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明の特定の態様は、式中のヒドロキシル基の1個以上が、アルキル、アシル、アルケニル、アルコキシ、−NHR1(この場合、R1は、水素、アシル、アルキルまたは−R2R3であり、ここでのR2およびR3は、同じであるか異なり、アシルまたはアルキルを表す)、−SR4(この場合、R4は、水素、アルキルまたは−O3Hである)および−OR3(この場合、R3は、水素、アルキルまたは−SO3Hである)、さらに特に、−SR4(この場合、R4は、水素、アルキルまたは−O3Hである)または−SO3Hで置換されている、式Iのエピ−イノシトール化合物を利用する。
【0059】
本発明の特定の態様は、式中のヒドロキシル基の1個以上が、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C1C6アルコキシ、C3−C10シクロアルキル、C1〜C6アシル、−NH2、−NHR1、−NR2R3、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヒドロキシアルキルまたはオキソで置換されている、式Iのエピ−イノシトール化合物を利用する。
【0060】
本発明の特定の態様は、式中のヒドロキシル基の1個以上が、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C1C6アルコキシ、C1〜C6アシル、−NH2、ハロまたはオキソで置換されている、式Iのエピ−イノシトール化合物を利用する。
【0061】
実施形態では、エピ−シクロヘキサンヘキソール(すなわち、エピ−イノシトール)、特に、純粋なまたは実質的に純粋なエピ−シクロヘキサンヘキソールが、本明細書に開示する組成物、方法および使用において使用される。
【0062】
本発明の実施形態では、式中の1個または2個のヒドロキシル基が=Oによって置換されている式Iのエピ−イノシトール化合物が利用される。本発明の特定の実施形態では、1個のヒドロキシル基が=Oによって置換されており、さらに特に、2位のヒドロキシル基が=Oによって置換されている。従って、本発明の特定の実施形態において、エピ−イノシトール化合物は、エピ−2−イノソーゼである。
【0063】
「アルキル」は、1から20個または1から10個の炭素原子、好ましくは約1から10個、1から8個、3から8個、1から6個、または1から3個、さらに好ましくは約3から6個の炭素原子を好ましくは有する、一価アルキル基を指す。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、アミル、sec−ブチル、tert−ブチル、tert−ペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、ウンデシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、ペンタデシル、n−ヘキサデシル、ヘプタデシル、n−オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ドシル、n−テトラコシルなどのような基、加えてこれらの分枝した変型によって例示される。本発明の一定の実施形態において、アルキルラジカルは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、アミル、トリブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、tert−ペンチルおよびn−ヘキシル、を含む、またはから成る群より選択されるC1〜C6低級アルキルである。アルキル基は、置換アルキルである場合もある。
【0064】
「置換アルキル」は、1から5個の置換基、好ましくは1から3個の置換基、例えば、アルキル、アルコキシ、特に低級アルコキシ、シクロアルキル、アシル、アミノ、置換アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、カルボキシル、置換カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、スルホニル、スルフェニル、スルフィニル、スルフェート、またはスルホキシド、を有する、好ましくは炭素原子数1から10の、アルキル基を指す。
【0065】
「アルケニル」は、好ましくは2から10個の炭素原子、さらに好ましくは3から8個の炭素原子を有すると共に、少なくとも1つ、好ましくは1〜2つのアルケニル不飽和部位を有する、アルケニル基を指す。アルケニルラジカルは、好ましくは、約3から6個または2から6個の炭素原子を含有し得る。適するアルケニルラジカルの例としては、エテニル、プロペニル、例えばプロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル(アリル)、プロプ−2−エン−2−イル、ブテン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、ヘキセン−1−イル、3−ヒドロキシヘキセン−1−イル、ヘプテン−1−イルおよびオクテン−1−イルなどが挙げられる。好ましいアルケニル基としては、エテニル(−CH=CH2)、n−プロペニル(−CH2CH=CH2)、イソプロペニル(−C(CH3)=CH2)などが挙げられる。
【0066】
「置換アルケニル」は、1から3個の置換基、例えば、アルキル、アルコキシ、特に低級アルコキシ、シクロアルキル、アシル、アミノ、置換アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、カルボキシル、置換カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、スルホニル、スルフェニル、スルフィニル、スルフェートまたはスルホキシドを有する、上で定義したとおりのアルケニル基を指す。
【0067】
「アシル」は、アルキル−C(O)−基、置換アルキル−C(O)−基、シクロアルキル−C(O)−基、置換シクロアルキル−C(O)−基、アリール−C(O)−基、ヘテロアリール−C(O)−基、および複素環−C(O)−基を指し、この場合、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび複素環は、本明細書において定義するとおりである。アシル基は、例えば、アルキルについて本明細書に開示されている基で、置換されていることがある。「アシル」ラジカルの実例は、ホルミル、アセチル、2−クロロアセチル、2−ブロモアセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、フタロイル、マロニル、ニコチニルなどである。
【0068】
「アルコキシ」は、メトキシラジカルなどの、炭素原子数1から約10のアルキル部分を有する線状または分枝状オキシ含有ラジカルを指し、これは置換されていることがある。特定のアルコキシラジカルは、約1から6個、1から4個または1から3個の炭素原子を有する「低級アルコキシ」ラジカルである。約1〜6個の炭素原子を有するアルコキシとしては、C1〜C6アルキル−O−ラジカルが挙げられ、この場合のC1〜C6アルキルは、本明細書において述べる意味を有する。アルコキシラジカルの実例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソプロポキシおよびtert−ブトキシが挙げられるが、これらに限定されない。「アルコキシ」ラジカルは、「アルキルアルコキシ」ラジカルをもたらすための、アルキル原子(特に、低級アルキル);「ハロアルコキシ」ラジカル(例えば、フルオロメトキシ、クロロメトキシ、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、フルオロエトキシ、テトラフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシおよびフルオロプロポキシ)および「ハロアルコキシアルキル」ラジカル(例えば、フルオロメトキシメチル、クロロメトキシエチル、トリフルオロメトキシメチル、ジフルオロメトキシエチルおよびトリフルオロエトキシメチル)をもたらすための、ハロ原子、例えば、フルオロ、クロロまたはブロモを含めて、本明細書に開示する1個以上の置換基で、場合によっては、さらに置換されていることがある。
【0069】
「アリール」は、単一の環(例えばフェニル)または多数の縮合(融合)環(例えば、ナフチルまたはアントリル)を有する、炭素原子数6から14の不飽和芳香族炭素環基を指す。好ましいアリールとしては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。本発明の態様において、アリールラジカルは、4から24個の炭素原子、特に、4から10個、4から8個または4から6個の炭素原子を有する。用語「アリール」は、芳香族ラジカル、例えば、フェニル、ナフチル、インデニル、ベンゾシクロオクテニル、ベンゾシクロヘプテニル、ペンタレニル、アズレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、アセフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニルおよびアントラセニル、好ましくはフェニルを含むが、これらに限定されない。アリール基は、1から8個、1から6個、1から4個または1から3個の置換基、例えば、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アシル、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノおよびニトロを有する、本明細書において定義するとおりのアリール基を含むことがある、置換アリール基である場合がある。置換アリールラジカルの例としては、ベンジル、クロロベンジルおよびアミノベンジルが挙げられる。
【0070】
「シクロアルキル」は、単一の環または多数の縮合した環を有する、炭素原子数3から16、3から15、または3から12の環状アルキル基を指す。
【0071】
本発明の態様において、シクロアルキルは、1、2、3または4個の環(こうした環は、ペンダント式に付いていることがあり、または融合していることがある)、特に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、アダマンチルなどを含む。本発明の一定の態様において、シクロアルキルラジカルは、約3から10個、3から8個、3から6個、または3から4個の炭素原子を有する「低級シクロアルキル」ラジカル、特に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルである。シクロアルキル基は、アダマンチルなどのような多環構造を含む。用語「シクロアルキル」は、シクロアルキルラジカルがアリールラジカルまたはヘテロシクリルラジカルと融合しているラジカルも包含する。シクロアルキルラジカルは、本明細書に開示するような基で場合によっては置換されていることがある。
【0072】
「置換シクロアルキル」は、アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノおよびニトロをはじめとする(しかし、これらに限定されない)、1から5個(特に1から3個)の置換基を有するシクロアルキル基を指す。
【0073】
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨード、好ましくは、フルオロまたはクロロのいずれかを指す。
【0074】
「ヘテロアリール」は、1から15個の炭素原子と、(1つより多くの環がある場合には)少なくとも1つの環の中の酸素、窒素および硫黄から選択される1から4個のヘテロ原子との芳香族基を指す。こうしたヘテロアリール基は、1から5個の置換基、例えば、アシルオキシ、ヒドロキシ、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリール、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルアルキル、シアノ、ハロ、ニトロ、ヘテロアリール、複素環、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシおよびチオヘテロアリールオキシ、で場合によっては置換されていることがある。こうしたヘテロアリール基は、単一の環(例えば、ピリジルもしくはフリル)または多数の縮合した環(例えば、インドリジニルまたはベンゾチエニル)を有することがある。
【0075】
「複素環」または「複素環の」は、単一の環または多数の縮合した環、1から15個の炭素原子、およびその環内に窒素、硫黄または酸素から選択される1から4個のヘテロ原子を有する、一価飽和または不飽和基を指す。複素環基は、単一の環を有する場合もあり、または多数の縮合した環を有する場合もある。複素環基は、1から5個の置換基、例えば、アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノまたはニトロ、で場合によっては置換されていることがある。
【0076】
複素環およびヘテロアリールの例としては、ピロール、フラン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、モルホリノ、ピペリジニル、テトラヒドロフラニルなど、ならびにN−アルコキシ−窒素含有複素環が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
エピ−イノシトール化合物は、従来のプロセスを用いて調製することができ、または市場の供給業者から入手することができる。エピ−イノシトール化合物は、化学および/または微生物プロセスを用いて調製することができる。例えば、エピ−イノシトールは、V.Pistara(Tetrahedron Letters 41,3253,2000)、Magasanik B.およびChargaff E.(J Biol Chem,1948,174:173188)、米国特許第7,157,268号によって、またはPCT公開出願第WO0075355号に記載されたプロセスによって調製することができる。誘導体は、通常の当業者には周知の方法を用いてエピ−イノシトールに置換基を誘導することにより製造することができる。
【0078】
本発明のエピ−イノシトール化合物または組成物は、ポリマー、炭水化物ペプチドまたはそれらの誘導体(しかし、これらに限定されない)をはじめとする担体を追加で含む場合がある。担体は、アルキル、アミノ、ニトロ、ハロゲン、チオール、チオアルキル、スルフェート、スルホニル、スルフェニル、スルフィニル、スルホキシド、ヒドロキシル基のうちの1つ以上(しかし、これらに限定されない)を含む、本明細書に記載の置換基で置換されていることがある。担体は、本発明の化合物に、直接または間接的に、共有結合で付けることができる。本発明の態様において、担体は、アラニン、グリシン、プロリン、メチオニン、セリン、トレオニンまたはアスパラギンをはじめとするアミノ酸である。他の態様において、担体は、アラニル−アラニル、プロリル−メチオニル、またはグリシル−グリシルをはじめとするペプチドである。
【0079】
担体は、本発明の化合物を特定の組織または器官にターゲッティングする分子も含む。特に、担体は、能動輸送または受動輸送のいずれかによる本発明の化合物の脳への輸送を助長または増進させることができる。
【0080】
「ポリマー」は、本明細書で用いる場合、2つ以上のモノマーサブユニット(これらは、同一の反復サブユニットである場合もあり、または異なる反復サブユニットである場合もある)を含む分子を指す。モノマーは、一般に、炭素を含有する単純な構造の低分子量分子を含む。ポリマーは、場合によっては置換されていることがある。本発明において使用することができるポリマーの例は、ビニル、アクリル、スチレン、炭水化物由来ポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン、ポリメチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ならびにこれらのコポリマー、塩および誘導体である。本発明の特定の態様において、ポリマーは、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル,−1−プロパンスルホン酸−co−アクリロニトリル、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−co−スチレン)、ポリ(ビニルスルホン酸);ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム);ならびにこれらから誘導される硫酸塩およびスルホン酸塩;ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、およびポリ(ビニルアルコール)である。
【0081】
「炭水化物」は、本明細書で用いる場合、ポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトン、およびこれらの誘導体を指す。最も単純な炭水化物は、単糖類であり、これは、付加された多数のヒドロキシル基(通常、官能基以外のそれぞれの炭素原子上に1個)を有する小さな直鎖アルデヒドおよびケトンである。単糖類の例としては、エリトロース、アラビノース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、トレオース、キシロース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、アルドヘキソース、フルクトース、ケトヘキソース、リボース、およびアルドペントースが挙げられる。他の炭水化物は、単糖単位から成り、これらとして、単糖単位の数に依存して、二糖類、オリゴ糖類または多糖類が挙げられる。二糖類は、共有グルコシド結合によって連結された2個の単糖単位から成る。二糖類の例は、スクロース、ラクトースおよびマルトースである。オリゴ糖類および多糖類は、グリコシド結合によって互いに結合された単糖単位の長鎖から成る。オリゴ糖類は、一般に、3個と9個の間の単糖単位を含有し、多糖類は、10個より多い単糖単位を含有する。炭水化物基は、式Iの化合物への連結位置以外に、1、2、3または4つの位置で置換されていることがある。例えば、炭水化物は、場合によっては置換されている1個以上のアルキル、アミノ、ニトロ、ハロ、チオール、カルボキシルまたはヒドロキシル基で、置換されていることがある。実例となる置換炭水化物は、グルコサミンまたはガラクトサミンである。
【0082】
本発明の態様において、炭水化物は、糖、特にヘキソースまたはペントースであり、アルドースまたはケトースである場合もある。糖は、D系列のメンバーである場合もあり、またはL系列のメンバーである場合もあり、ならびにアミノ糖、デオキシ糖、およびこれらのウロン酸誘導体を包含し得る。炭水化物がヘキソースである本発明の実施形態において、ヘキソースは、グルコース、ガラクトースもしくはマンノース、または置換ヘキソース糖残基、例えば、アミノ糖残基、例えばヘキソサミン、ガラクトサミン、グルコサミン、特にD−グルコサミン(2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコース)もしくはD−ガラクトサミン(2−アミノ−2−デオキシ−D−ガラクトース)から成る群より選択される。適するペントース糖としては、アラビノース、フコースおよびリボースが挙げられる。
【0083】
用語「炭水化物」は、糖タンパク質、例えば、レクチン(例えば、コンカナバリンA、小麦胚芽凝集素、ピーナッツ凝集素、セロムコイドおよびオロソムコイド)ならびに糖脂質、例えばセレブロシドおよびガングリオシドも包含する。
【0084】
本発明の実施の際に担体として使用するための「ペプチド」は、ペプチド結合によって共有結合で連結された1、2、3、4もしくは5個またはそれ以上のアミノ酸を含む。ペプチドは、1つ以上の天然アミノ酸、ならびにそれらの類似体、誘導体および同族体を含む場合がある。ペプチドは、その安定性、バイオアベイラビリティ、溶解度などを増大させるように修飾することができる。「ペプチド類似体」および「ペプチド誘導体」は、ここで用いる場合、ペプチドの化学構造を模倣し、そのペプチドの機能特性を保持する分子を包含する。本発明の態様において、担体は、アミノ酸、例えば、アラニン、グリシン、プロリン、メチオニン、セリン、トレオニン、ヒスチジンまたはアスパラギンである。他の態様において、担体は、ペプチド、例えば、アラニル−アラニル、プロリル−メチオニル、またはグリシル−グリシルである。さらに他の態様において、担体は、ポリペプチド、例えば、アルブミン、抗トリプシン、マクログロブリン、ハプトグロブリン、セルロプラズム、トランスフェリン、α−もしくはβ−リポタンパク質、β−もしくはγ−グロブリンまたはフィブリノゲンである。
【0085】
ペプチド類似体、誘導体および模倣体の設計へのアプローチは、当該技術分野において公知である。例えば、Farmer,P.S.in Drug Design(E.J.Ariens,ed.)Academic Press,New York,1980,vol.10,pp.119−143;Ball.J.B.and Alewood,P.F.(1990)J Mol.Recognition 3:55;Morgan,B.A.and Gainor,J.A.(1989)Ann.Rep.Med.Chem.24:243;およびFreidinger,R.M.(1989)Trends Pharmacol.Sci.10:270参照。Sawyer,T.K.(1995)「Peptidomimetic Design and Chemical Approaches to Peptide Metabolism」in Taylor,M.D.and Amidon,G.L.(eds.)Peptide−Based Drug Design:Controlling Transport and Metabolism,Chapter 17;Smith,A.B.3rdら,(1995)J.Am.Chem.Soc.117:11113−11123;Smith,A.B.3rdら,(1994)J.Am.Chem.Soc.116:9947−9962;およびHirschman,R.ら,(1993)J.Am.Chem.Soc.115:12550−12568も参照。
【0086】
ペプチド類似体、誘導体およびペプチド模倣体の例としては、1つ以上のベンゾジアゼピン分子で置換されているペプチド(例えば、James,G.L.ら(1993)Science 260:1937−1942参照)、メチル化アミド結合を有するペプチドおよび「レトロ−インベルソ」ペプチド(Sistoによる米国特許第4,552,752号参照)が挙げられる。
【0087】
ペプチド誘導体の例としては、そのアミノ酸側鎖、そのペプチド骨格またはそのアミノもしくはカルボキシ末端が誘導体化されているペプチド(例えば、メチル化アミド結合を有するペプチド化合物)が挙げられる。
【0088】
用語模倣体および特にペプチド模倣体は、同配体を包含すると解釈される。用語「同配体」は、その一次構造の立体配座が、その二次構造に特異的な結合部位に適合するため、その二次化学構造を置換することができる化学構造を指す。特に、この用語は、当業者に周知のペプチド骨格修飾を含む(すなわち、アミド結合模倣体)。そうした修飾としては、アミド窒素、アルファ−炭素、アミドカルボニルの修飾、アミド結合の完全置換、延長、欠失または骨格架橋が挙げられる。同配体の他の例としては、1つ以上のベンゾジアゼピン分子で置換されているペプチドが挙げられる(例えば、James,G.L.ら(1993)Science 260:1937−1942参照)。
【0089】
他の可能な修飾としては、N−アルキル(もしくはアリール)置換([CONR])、ラクタムおよび他の環状構造を構築するための骨格架橋、その化合物内のすべてのL−アミノ酸のすべてのD−アミノ酸での置換(「インベルソ」化合物)またはレトロ−インベルソアミノ酸組み込み([NHCO])が挙げられる。「インベルソ」とは、配列のL−アミノ酸をD−アミノ酸で置換することを意味し、「レトロ−インベルソ」または「エナンチオ−レトロ」は、アミノ酸の配列を逆転させ(「レトロ」)、L−アミノ酸をDアミノ酸で置換することを意味する。例えば、親ペプチドが、Thr−Ala−Tyrである場合、そのレトロ修飾形は、Tyr−Ala−Thrであり、そのインベルソ形は、thr−ala−tyrであり、そのレトロ−インベルソ形は、tyr−ala−thrである(小文字は、D−アミノ酸を指す)。親ペプチドと比較すると、レトロ−インベルソペプチドは、その側鎖の元々の立体配座を実質的に維持しながら逆転した骨格を有し、その結果、親ペプチドにそっくりなトポロジーを有するレトロ−インベルソ異性体となる。Goodmanら「Perspectives in Peptide Chemistry」pp.283−294(1981)参照。「レトロ−インベルソ」ペプチドのさらなる説明については、Sistoによる米国特許第4,522,752号を参照のこと。
【0090】
ペプチドは、一定のアミノ酸(例えば、セリン)の側鎖上の官能基、または他の適する官能基によって、本発明の化合物に付けることができる。本発明の実施形態において、担体は、4個以上のアミノ酸と、側鎖上の官能基によってそれらのアミノ酸のうちの3個以上に付いている基を含むことがある。もう1つの実施形態において、担体は、1個のアミノ酸、特に、アミノ酸、例えばシステイン酸、のスルホネート誘導体である。
【0091】
「疾患および/または疾病」、「疾患(単数または複数)」および「疾病(単数または複数)」は、本明細書では交換可能に用いられており、エピ−イノシトール化合物が治療効果をもたらす1つ以上の病的症状または症候群を指す。これらの用語は、異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集または異常なアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存、またはアミロイド脂質相互作用を特徴とする状態を包含する。一部の態様において、この用語は、異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする状態を包含する。特定の態様において、疾病は、中枢もしくは末梢神経系または全身器官の状態である。さらなる特定の実施形態において、この用語は、Aβアミロイド、AAアミロイド、ALアミロイド、IAPPアミロイド、PrPアミロイド、α2−ミクログロブリンアミロイド、トランスサイレチン、プレアルブミンおよびプロカルシトニン、特にAβアミロイドおよびIAPPアミロイド、を含むまたはから成る群より選択されるアミロイドタンパク質を含む、アロイドまたはアミロイド原線維の形成、沈着、蓄積または残存に関連した状態を包含する。疾患および/または疾病は、異常凝集タンパク質を解離させること、および/または既に形成されたもしくは既に沈着したアミロイドもしくはアミロイド原線維を溶解もしくは破壊することが望ましい状態である場合もある。
【0092】
本発明の一定の態様において、疾病は、アミロイドーシスである。「アミロイドーシス」は、後天的に得られるまたは遺伝に由来する多岐にわたる疾病群を指し、アミロイドと呼ばれる類似した特性を有するタンパク質原線維の幾つかの異なるタイプのうちの1つの蓄積を特徴とする。アミロイドは、単一の器官に蓄積する場合もあり、または体中に散在する場合もある。この疾病は、罹患領域に深刻な問題をもたらす場合があり、該罹患領域としては、心臓、脳、腎臓および消化管を挙げることができる。アミロイド沈着物の原線維組成は、様々なアミロイド症の識別特徴である。ベータアミロイドペプチド(β−AP)の原線維から主として成る脳内および脳血管沈着物は、アルツハイマー病(家族性と散発性、両方の形態)の特徴であり、膵島アミロイドタンパク質ペプチド(IAPP;アミリン)は、II型糖尿病に随伴する膵島細胞アミロイド沈着における原線維の特徴であり、ならびにβ−2−ミクログロブリンは、長期血管透析治療の結果として形成されるアミロイド沈着物の主成分である。プリオン関連疾患、例えば、クロイツフェルト−ヤコブ病、スクラピー、狂牛病などは、プロテアーゼ耐性型のプリオンタンパク質(AScr ro PrP−27と呼ばれる)の蓄積を特徴とする。
【0093】
一定の疾患は、既存または共存する疾患の証拠がない原発性アミロイドーシスであると考えられる。原発性アミロイドーシスは、一般に、「アミロイド軽鎖型」(AL型)タンパク質原線維の存在を特徴とする。続発性アミロイドーシスの場合、基礎をなす慢性炎症または感染性疾患状態(例えば、関節リウマチ、若年性慢性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬、ライター症候群、成人スティル病、ベーチェット症候群、クローン病、慢性微生物感染症、例えば脳髄炎、結核およびらい病、悪性新生物、例えばホジキンリンパ腫、腎癌、腸、肺および尿生殖路の癌腫、基底細胞癌、およびヘアリー細胞癌)が存在する。続発性アミロイドーシスは、血清アミロイドAタンパク質(ApoSSA)に由来するAA型原線維の沈着を特徴とする。家族遺伝性アミロイドーシスは、ATTRトランスサイレチン型の神経障害性、腎臓または心血管沈着を随伴することがあり、それらは、異なるアミロイド成分を有する他の症候群(例えば、AA原線維を特徴とする家族性地中海熱)を含む。アミロイドーシスの他の形態としては、孤立器官において発生する限局性(多く場合、腫瘍様)沈着物を特徴とする、限局性形態が挙げられる。加えて、アミロイドーシスは、加齢に関連付けられており、一般に、心臓または脳内の斑形成を特徴とする。アミロイドーシスは、全身性疾患、例えば、成人発症型糖尿病、長期血液透析からの合併症、および慢性炎症またはプラズマ細胞疾患の帰結を含む。
【0094】
本発明の一部の態様において、本発明の化合物、組成物および方法を用いて治療および/または予防することができるアミロイド症としては、オランダ型のアミロイドーシスを伴うアルツハイマー病、ダウン症候群、ボクサー認知症、多系統萎縮症、封入体筋炎、遺伝性脳内出血;C型ニーマン−ピック病;脳β−アミロイド血管症;皮質基底部変性に関連した認知症;2型糖尿病のアミロイドーシス;慢性炎症のアミロイドーシス;悪性および家族性地中海熱のアミロイドーシス;多発性骨髄腫およびB細胞疾患のアミロイドーシス;じんま疹および難聴を伴う腎症(マックル−ウェルズ症候群);全身性炎症疾患に関連したアミロイドーシス;骨髄腫またはマクログロブリン血症に関連した特発性原発性アミロイドーシス;免疫細胞疾患、単クローン性高ガンマグロブリン血症、潜在性疾患に関連したアミロイドーシス;慢性炎症性疾患に関連した局在結節アミロイドーシス;幾つかの免疫細胞疾患に関連したアミロイドーシス;家族性アミロイドポリニューロパシー;アミロイドーシスを伴う遺伝性脳内出血、アルツハイマー病および他の神経変性疾患;慢性血液透析、II型糖尿病、インスリノーマに関連したアミロイドーシス;プリオン病、(伝播性海綿状脳症プリオン病)、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー症候群、クールーおよびスクラピーのアミロイドーシス;手根管症候群に関連したアミロイドーシス;老人性心アミロイドーシス;家族性アミロイドポリニューロパシー;ならびに内分泌性腫瘍に関連したアミロイドーシス、特に、アルツハイマー病および2型糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
本発明の他の態様において、本発明の化合物、組成物および方法を用いて治療および/または予防することができる疾患および/または疾病としては、タンパク質、タンパク質フラグメント、およびベータプリーツシート中のペプチド、原線維、ならびに/または凝集物もしくはオリゴマーの沈着を生じさせる、中枢もしくは末梢神経系または全身器官の状態が挙げられる。特に、前記疾病は、アルツハイマー病、初老型および老人型;アミロイド血管症;軽度認知障害;アルツハイマー病関連認知症(例えば、血管性認知症またはアルツハイマー認知症);タウオパチー(例えば、嗜銀顆粒性認知症、皮質基底部変性、ボクサー認知症、石灰化を伴う散在性の神経原線維のもつれ、パーキンソン症候群を伴う前頭側頭骨認知症、プリオン関連疾患、ハレルフォルデン−スパッツ病、筋緊張性ジストロフィー、C型ニーマン−ピック病、神経原線維のもつれを伴う非グアム型運動ニューロン疾患、ピック病、脳炎後パーキンソン症候群、脳アミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、亜急性硬化症性全脳炎、および神経原線維型老年認知症(tangle only dementia))、アルファ−シヌクレイノパチー(例えば、レビー小体を伴う認知症、神経膠細胞質封入体を伴う多系統萎縮症、シャイ−ドレーガー症候群、脊髄小脳失調症(例えば、DRPLAもしくはマチャド−ジョセフ病);線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、I型脳内鉄蓄積を伴う神経変性、嗅覚機能不全、および筋萎縮性側索硬化症);パーキンソン病(例えば、家族性または非家族性);筋萎縮性側索硬化症;痙性対麻痺(例えば、シャペロンおよび/またはトリプルAプロテインの機能不全に関連したもの);ハンチントン病、脊髄小脳失調症、フリートライヒ運動失調症;対応する遺伝子内の3または4ヌクレオチド成分の病的発現から生じるポリグルタミン、ポリアラニンまたは他の反復単位を有するタンパク質の細胞内および/または神経内凝集物に関連した神経変性疾患;脳血管疾患;ダウン症候群;アミロイドベータペプチドの外傷後蓄積を伴う頭部外傷;プリオン関連疾患(クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病、および変型クロイツフェルト−ヤコブ病);家族性英国型認知症;家族性デンマーク型認知症;痙性失調を伴う初老性認知症;脳アミロイド血管症、英国型;痙性失調脳アミロイド血管症を伴う初老性認知症、デンマーク型;ニューロセルピン封入体を伴う家族性脳障害(FENIB);アミロイドポリニューロパシー(例えば、老人性アミロイドポリニューロパシーまたは全身性アミロイドーシス);アミロイドベータペプチドに起因する封入体筋炎;家族性フィンランド型アミロイドーシス;多発性骨髄腫に関連した全身性アミロイドーシス;家族性地中海熱;慢性感染症および炎症;ならびに膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)を随伴するII型真性糖尿病である。本発明の選択された態様において、疾病は、ニューロン性疾患(例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、病原性精神病状態、綜合失調症、摂食障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝の恒常性調節障害、自律神経機能障害、ホルモンバランス障害、調節障害、体液、高血圧、発熱、睡眠調節不全、食欲不振;うつ病を含む不安関連疾患;癲癇、投薬停止およびアルコール中毒を含む発作;認知機能不全および認知症を含む疾患)である。
【0096】
本発明の態様、特に併用療法、において、疾患および/または疾病は、ニューロン性疾患(例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、病原性精神病状態、綜合失調症、摂食障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝の恒常性調節障害、自律神経機能障害、ホルモンバランス障害、調節障害、体液、高血圧、発熱、睡眠調節不全、食欲不振;うつ病を含む不安関連疾患;癲癇、投薬停止およびアルコール中毒を含む発作;認知機能不全および認知症を含む神経変性疾患)である。
【0097】
本発明の一定の選択された態様において、疾病は、アルツハイマー病、認知症、MCI、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、癲癇、ピック病、ならびに本明細書に開示する他の類似の疾病および疾患などの疾病および障害をはじめとする、神経変性症または神経変性疾患である。
【0098】
本発明の化合物は、α−シヌクレイン/NAC原線維増殖を阻害もしくは防止する、ならびに/または既製α−シヌクレイン/NAC原線維およびα−シヌクレイン/NAC関連タンパク質沈着物の分解、破壊および/もしくは離解を生じさせるように、作用することができる。本発明の化合物または組成物での治療に適するシヌクレイン症またはシヌクレイノパチーの例は、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レビー小体病、アルツハイマー病のレビー小体変異型、レビー小体を伴う認知症、多系統萎縮症、オリーブ橋小脳萎縮症、I型脳内鉄蓄積を伴う神経変性、嗅覚機能不全、およびグアムのパーキンソン症候群−認知症複合をはじめとする(しかし、これらに限定されない)、シヌクレイン原線維、特にα−シヌクレイン原線維、の形成、沈着、蓄積または残存に関連した疾病である。
【0099】
本発明の態様において、疾病は、フィラメントならびに神経フィラメントおよび/もしくはスーパーオキシドジスムスターゼタンパク質の凝集物に関連した運動ニューロン疾患;シャペロンおよび/もしくはトリプルAプロテインの機能不良に関連した痙性対麻痺;またはDRPLAもしくはマチャド−ジョセフ病などの脊髄小脳失調症である。
【0100】
本発明の他の態様において、疾病は、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病、および変型クロイツフェルト−ヤコブ病をはじめとするプリオン関連疾患、ならびに老人性アミロイドポリニューロパシーまたは全身性アミロイドーシスをはじめとするアミロイドポリニューロパシーである。
【0101】
本発明の実施形態において、疾病は、家族型および非家族型を含む、アルツハイマー病またはパーキンソン病である。
【0102】
本発明の実施形態において、疾病は、軽度認知障害である。
【0103】
本発明の実施形態において、疾病は、認知症、特に、レビー小体を伴う血管性認知症、混合型認知症、アルツハイマー認知症、または薬物、せん妄もしくはうつ病に起因する続発性認知症である。認知症は、簡単な概念または指図を理解することができなくなり、情報を記憶に蓄積し、思い出すことができなくなり、ならびに行動および人格が変化する結果となる、統合中枢神経系機能の喪失を一般に特徴とする。DSM−IV(精神障害の診断と統計の手引き、米国精神医学会(Diagnostic and Statistical Manual for Mental Disorders,American Psychiatric Association))によると、認知症の診断特徴は、記憶障害と、次のうちの少なくとも1つを含む:言語障害(失語症)、学習運動機能を実行する能力の喪失(失行症)、普通の物を理解できないこと(失認症)、または実行機能または決断実施に関する障害。
【0104】
本発明の一定の態様において、疾病および/または疾患は、アミロイド形成性タンパク質またはペプチドによるマクロファージの存在に起因する炎症プロセスを特徴とし得る。本発明の方法は、マクロファージ活性化の阻害および/または炎症プロセスの阻害を含むことができる。1つの方法は、患者におけるマクロファージ浸潤または炎症の経過または程度の減少、遅速、改善または逆転を含むことができる。
【0105】
疾病は、本発明の化合物で破壊または解離させることができる分子相互作用を随伴する状態である場合もある。「本発明の化合物で破壊または解離させることができる分子相互作用」としては、アミロイドタンパク質とタンパク質または糖タンパク質とを含む相互作用が挙げられる。アミロイドタンパク質を含む相互作用としては、アミロイドタンパク質−アミロイドタンパク質相互作用、アミロイド−プロテオグリカン相互作用、アミロイド−プロテオグリカン/グリコサミノグリカン(GAG)相互作用、および/またはアミロイドタンパク質−グリコサミノグリカン相互作用が挙げられる。相互作用性タンパク質は、細胞表面、分泌または細胞外タンパク質であり得る。
【0106】
本発明の化合物または組成物を使用して治療または予防することができる疾病は、アミロイドタンパク質とタンパク質または糖タンパク質をはじめとする相互作用性化合物とを含む分子間相互作用の破壊または解離の恩恵を受ける疾病を含む。本発明の化合物または組成物を使用して治療または予防することができる疾病の例としては、細菌、ウイルス、プリオンおよび真菌によって引き起こされる感染症が挙げられる。そうした疾患および/または疾病の例は、単純疱疹ウイルス(Herpes simplex virus)、仮性狂犬病ウイルス(Pseudorabies virus)、ヒトサイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、百日咳菌(Bordetella pertussis)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、インフルエンザ菌(haemophilus influenzae)、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans)、ブタ連鎖球菌(Streptococcus suis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、アマゾンリーシュマニア(Leishmania amazonensi)、クルーズトリパノソーマ(Trypanozoma cruzi)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、マイコプラズマ肺炎(Mycoplasma pneumoniae)、毒素原性大腸菌(enterotoxigenic E.coli)、尿路病原性大腸菌(uropathogenic E.coli)、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)をはじめとする病原体に関連したものである。
【0107】
用語「相互作用」または「相互作用する(こと)」は、タンパク質、他の分子、例えば脂質、炭水化物、ヌクレオチドおよび他の細胞代謝産物の間のあらゆる物理的会合を指す。相互作用の例としては、タンパク質−タンパク質相互作用が挙げられる。好ましくは、この用語は、例えば、生理条件下での静電、疎水性、イオンおよび/または水素結合相互作用に起因する、2分子間の安定な会合を指す。
【0108】
組成物
エピ−イノシトール化合物は、対象に投与するための医薬組成物または栄養補助食品へと調合することができる。本発明の医薬組成物またはその画分は、所期の投与形態に基づいて選択される、および従来の製薬実施に矛盾しない、適する医薬的に許容される担体、賦形剤およびビヒクルを一般に含む。本発明の特定の組成物は、純粋または実質的に純粋であるエピ−イノシトール化合物を含有し得る。
【0109】
適する製薬用担体、賦形剤およびビヒクルは、標準的なテキスト、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21th Edition.University of the Sciences in Philadelphia(Editor),Mack Publishing Companyに記載されている。例として、カプセルまたは錠剤の形態での経口投与については、活性化合物を、経口用の非毒性で医薬的に許容される不活性担体、例えば、ラクトース、デンプン、スクロース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、グルコース、硫酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、マンニトール、ソルビタールなどと併せることができる。液体形態での経口投与については、薬物成分を、任意の経口、非毒性、医薬的に許容される不活性担体、例えば、エタノール、グリセロール、水などと併せることができる。適する結合剤(例えば、ゼラチン、デンプン、トウモロコシ甘味料、天然糖(グルコースを含む)、天然および合成ゴム、ならびに蝋)、滑沢剤(例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム)、崩壊剤(例えば、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、およびキサンタンガム)、着香剤、および着色剤も、本組成物またはそれらの成分に併せることができる。本明細書に記載する組成物は、湿潤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤をさらに含む場合がある。
【0110】
本発明は、エピ−イノシトール化合物、特に、純粋なまたは実質的に純粋なシロ−化合物を含有する、ピル、錠剤、カプセル、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、ロゼンジ、サッシェ、カシェ剤、VegiCap、液滴、エリキシル、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エアロゾル(固体として、または液体媒質中のもの)、坐剤、滅菌注射用溶液、ならびに/または滅菌包装粉末をはじめとする(しかし、これらに限定されない)、商業的に有用な製剤を提供する。
【0111】
組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、ピル、カプセル、徐放性製剤、または粉末である場合がある。本組成物は、伝統的な結合剤および担体、例えばトリグリセリド、を用いて、坐剤として調合することができる。経口製剤は、標準的な担体、例えば、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含むことがある。様々な送達システム(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルなどへの封入)が知られており、それらを用いて、本発明の組成物を投与することができる。
【0112】
本発明の態様において、疾病および/または疾患の治療用の1つ以上のエピ−イノシトール化合物の経口投与のための医薬組成物を提供する。特定の態様において、式Iの実質的に純粋なエピ−イノシトール化合物を含む、異常なタンパク質フォールディングおよび/もしくは凝集ならびに/またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾病および/または疾患(例えば、アルツハイマー病)の治療用の安定な経口医薬組成物を、提供する。
【0113】
非経口投与用の製剤としては、水溶液、シロップ、水性または油性懸濁液および乳濁液(可食油、例えば、綿実油、ココナッツ油、アーモンド油または落花生油を伴う)を挙げることができる。水性懸濁液に使用することができる分散剤または懸濁化剤としては、合成または天然ゴム、例えば、トラガカントゴム、アルジネート、アラビアゴム、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、メチルセルロース、およびポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0114】
非経口投与用組成物は、滅菌水性または非水性溶媒、例えば、水、等張食塩水、等張グルコース溶液、緩衝溶液、または治療活性剤の非経口投与のために好都合に使用されている他の溶媒を含むことがある。非経口投与を目的とした組成物は、従来の添加剤、例えば、安定剤、緩衝液または保存薬、例えば抗酸化物質、例えばメチルヒドロキシベンゾエートまたは類似の添加剤も含むことがある。
【0115】
本発明の組成物は、本明細書に記載するような医薬的に許容される塩として調合することができる。
【0116】
本発明の態様において、本組成物は、限定ではないが、少なくとも1つの緩衝剤または溶液を含む。緩衝剤の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロ酸、クエン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸、パモ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸、およびこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。追加の薬剤、例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、馬鈴薯デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、水素化食用脂、レシチン、アラビアゴム、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、分画植物油、メチル、プロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸、およびこれらの混合物のうちの1つ以上、も含むことがある。緩衝剤は、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリラクチド、ポリグリコリドおよびこれらの混合物のうちの1つ以上を追加で含むことがある。1つの実施形態において、緩衝剤は、懸濁液、溶液または乳濁液をはじめとする(しかし、これらに限定されない)少なくとも1つの媒質として、調合することができる。他の実施形態において、緩衝剤は、医薬的に許容される担体、賦形剤、懸濁化剤、安定剤または分散剤をはじめとする(しかし、これらに限定されない)製剤化剤を追加で含むことがある。
【0117】
本発明の組成物は、例えば、細菌保留フィルターによる濾過、組成物への滅菌剤の添加、組成物の照射、または組成物の加熱によって、滅菌することができる。あるいは、本発明の化合物または組成物は、使用直前に滅菌溶媒に容易に溶解される滅菌固体調製品、例えば、凍結乾燥粉末として、提供することができる。
【0118】
医薬組成物を調製した後、それらを適切な容器に入れ、指示された状態の治療についてのラベルを貼ってもよい。本発明の組成物の投与についてのそうしたラベルは、投与の量、頻度および方法を含むであろう。
【0119】
エピ−イノシトール化合物は、栄養補助食品としての投与に適する形態である場合がある。本発明のサプリメントは、不活性成分、例えば、希釈剤または充填剤、粘度調整剤、保存薬、着香剤、着色剤、または当該技術分野では通常の他の添加剤を追加して含むことがある。単なる例としてだが、蜜蝋、レシチン、ゼラチン、グリセリン、カラメルおよびカルミンなどの従来成分を含むことができる。
【0120】
本発明の栄養補助食品組成物は、第二活性成分を場合によっては含むことがある。1つの実施形態において、この第二活性成分は、ピニトールまたはその活性誘導体もしくは代謝産物である。ピニトールは、アルファルファ、ブーゲンビレアの葉、ガルバンソー、松の木および大豆をはじめとする(しかし、これらに限定されない)植物源から製造することができる。ピニトールは、市販もされている、例えば、Inzitol(商標)(Humanetics Corporation,Min)。ピニトールの誘導体および代謝産物の例としては、ピニトールグリコシド、ピニトールリン脂質、エステル化ピニトール、脂質結合ピニトール、リン酸ピニトール、フィチン酸ピニトール、および加水分解ピニトール、例えばd−シロ−イノシトールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
栄養補助食品は、液体栄養補助食品(例えば、分取可能な液体)として提供することができ、または本組成物を顆粒、カプセルもしくは坐剤として調合することもできる。液体サプリメントは、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存薬、着色剤などをはじめとする多数の適する担体および添加剤を含むことがある。カプセル、顆粒または坐剤形態の場合、本発明の組成物は、医薬的に許容される担体との混合で調合される。
【0122】
1つの態様では、本発明の栄養補助食品を飲料として調合するが、顆粒、カプセルまたは坐剤形態で調合することもできる。
【0123】
サプリメントは、従来の方法を用いて調製されるソフトゲルの形態で提供することができる。ソフトゲルは、少量のサプリメントを封入するゼラチンの層を一般に含む。サプリメントは、液体を充填し封止したゼラチンカプセルの形態である場合もあり、これは、従来の方法を用いて製造することができる。
【0124】
カプセル、顆粒または坐剤形態の本発明の栄養補助食品組成物を調製するために、従来の調合技術に従って、本発明の1つ以上の組成物と医薬的に許容される担体とを均質混合することがある。カプセルおよび顆粒などの固体経口調製品については、適する担体および添加剤、例えば、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが含まれることがある。
【0125】
本発明のもう1つの態様に従って、キットを提供する。1つの態様において、本キットは、本発明の化合物または医薬組成物を含む。本キットは、本発明の組成物が入っている容器を収容し、対象にその組成物を投与するための指図書も収容しているパッケージであり得る。
【0126】
本発明の実施形態において、有益効果、特に持続的有益効果、をもたらす本発明の医薬組成物の成分の1つ以上を満たした1つ以上の容器を含む薬剤パックまたはキットを提供する。様々な記載物、例えば、使用説明書、すなわち、医薬品または生物学的製剤のラベル付け、製造、使用または販売を規制する政府機関によって命じられた形式の注意書き(この注意書きは、人への投与のための製造、使用または販売に関するその機関による認可を反映する)を、そうした容器に付帯させることができる。
【0127】
用途
本発明は、有益効果をもたらすために1つ以上のエピ−イノシトール化合物を利用する組成物および方法に関する。特に、本発明は、疾患および/または疾病を治療するための、特に、疾病の重症度、疾病の症状、ならびに/または本明細書に開示する疾患および/もしくは疾病の再発の周期性を予防および/または改善するための、本発明の組成物の使用を考えている。本発明は、本発明の組成物または治療薬を使用して、哺乳動物において疾患および/または疾病を予防および/または治療することも考えている。実施形態において、本発明は、より大きな可溶性、安定性、効能、効力および/または有用性、特に、より大きな可溶性および安定性をはじめとする有益効果をもたらす化合物を含む組成物を提供することができる。
【0128】
1つの態様において、本発明は、有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と、医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することによる、健常対象の記憶または加齢性記憶障害を有する対象の記憶を改善する方法を提供する。
【0129】
もう1つの態様において、本発明は、記憶、特に短期記憶、および加齢プロセス随伴する他の精神機能障害を改善するための方法にさらに関連し、この方法は、有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、もしくはその医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与すること含む。
【0130】
1つの態様において、記憶を改善する必要がある哺乳動物(この場合、該哺乳動物は、記憶を損なわせるまたは別様に低下させることが知られている疾病、疾患、虚弱または病気と診断されていない)を治療するための方法を提供し、この方法は、記憶改善有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物もしくはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体を含む栄養補助食品をその哺乳動物に投与することを含む。
【0131】
本発明のもう1つの態様において、タンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存の異常に関連した中枢もしくは末梢神経系または全身器官の状態を対象において治療するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、もしくはその医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を、その対象に投与することを含む。
【0132】
さらなる態様において、本発明は、1つ以上のエピ−イノシトール化合物である治療化合物、もしくはその医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を対象に投与することを含む、アミロイド形成、沈着、蓄積および/もしくは残存を阻害する、ならびに/または既存アミロイドの溶解/破壊を生じさせる方法を提供する。従って、本発明の化合物および組成物は、アミロイド沈着が発生する疾患においてアミロイドーシスを抑制するために使用することができる。
【0133】
さらなる態様において、本発明は、1つ以上のエピ−イノシトール化合物である治療化合物、もしくはその医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を治療有効量で対象に投与して認知機能を改善する、血管負荷量を減少させる、星状神経膠細胞症を減少させる、アミロイド負荷を減少させる、小神経膠細胞症を減少させる、および/または生存を増加させることを含む方法を提供する。
【0134】
もう1つの態様において、本発明は、本発明の化合物で破壊または解離することができるアミロイド相互作用に関連した状態を対象において治療する方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を、その対象に投与することを含む。
【0135】
1つの態様において、本発明は、対象におけるアミロイドタンパク質集合を予防、逆転、減少もしくは阻害する、アミロイド沈着のクリアランスを増進する、またはアミロイド沈着物の沈着を遅速するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0136】
1つの態様において、本発明は、対象におけるアミロイド原線維形成、器官特異的機能不全(例えば、神経変性)、または細胞毒性を予防、逆転、減少または阻害するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を、その対象に投与することを含む。
【0137】
もう1つの態様において、本発明は、動物における配座改変タンパク質集合または凝集を予防または逆転する方法を提供し、この方法は、1つ以上のエピ−イノシトール化合物(その類似体または誘導体を含む)をその配座改変タンパク質に導入することを含む。
【0138】
本発明のさらなる態様では、動物における配座改変タンパク質集合または凝集を予防または逆転する方法を提供し、この方法は、1つ以上のエピ−イノシトール化合物をその配座改変タンパク質に導入することを含む。
【0139】
本発明のさらなる態様では、動物における配座改変タンパク質集合または凝集を治療する方法を提供し、この方法は、治療有効量の本発明の組成物を投与することを含む。
【0140】
1つの態様において、本発明は、対象におけるシナプス機能を増大または維持するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0141】
本発明は、アミロイド沈着、特にアミロイドーシス、を特徴とする疾患および/または疾病、さらに詳細には、アルツハイマー病を治療に、特に利用することができる。例えば、本発明は、アミロイド沈着を特徴とする疾病、さらに特にアルツハイマー病、の症状を有する対象に投与すると、有益効果、好ましくは持続的有益効果を生じさせる、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む、治療方法を提供する。1つの実施形態において、有益効果は、次のうちの1つ以上によって証明される:凝集したAβもしくはAβオリゴマーの破壊、長期増強の増大もしくは回復、ならびに/またはシナプス機能の維持もしくは増大、ならびに/またはAβの脳内蓄積、脳アミロイド斑沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマー、神経膠活性、炎症および/もしくは認知低下の減少。
【0142】
1つの態様において、本発明は、疾病および/または疾患の進行を改善する、またはより低い重症度の病期をそうした疾病(例えば、アルツハイマー病)に罹患している対象において達成するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0143】
もう1つの態様において、本発明は、疾患および/または疾病(例えば、アルツハイマー病)の進行を遅延させる方法に関し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0144】
さらなる態様において、本発明は、疾患および/または疾病に罹患している対象の生存を増加させる方法に関し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0145】
1つの実施形態において、本発明は、疾患および/または疾病(例えば、アルツハイマー病)に罹患している対象の寿命を改善する方法に関し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0146】
1つの態様において、本発明は、軽度認知障害(MCI)を治療するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0147】
1つの実施形態において、本発明は、対象において認知障害およびアミロイド斑神経病態の発症後にアミロイド沈着および神経病態を減少または逆転させる方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を、その対象に投与することを含む。
【0148】
もう1つの実施形態において、本発明は、対象において認知障害およびアミロイド斑神経病態の発症後にアミロイド沈着および神経病態を減少または逆転させる方法を提供し、この方法は、認知障害およびアミロイド斑神経病態の発症後にアミロイド沈着および神経病態を減少または逆転させるために有効な量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を、対象に投与することを含む。
【0149】
本発明の態様は、疾患および/または疾病(例えば、アルツハイマー病)の継続治療のために1つ以上のエピ−イノシトール化合物を使用するための改変された方法および組成物を提供する。1つの実施形態において、本発明は、より大きな効能、効力および有用性を実現する1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む組成物を提供する。例えば、より大きな効能は、治療を終えた後、持続的改善および/または生存増加を生じさせる、治療での認知低下および/またはアルツハイマー病における生存の改善または逆行によって証明することができる。
【0150】
本発明の態様において、式Iの化合物は、アルツハイマー病の治療に利用することができる。例えば、アルツハイマー病は、治療有効量の式Iの化合物を投与することによって治療することができる。こうした治療は、アルツハイマー病の変性作用(具体的には、排他的にではないが、中枢神経系の荒廃、精神能力の喪失、短期記憶の喪失および検討識障害を含む)を抑制するために有効であり得る。
【0151】
疾病がアルツハイマー病、認知症またはMCIである実施形態において、本発明の化合物または組成物あるいは治療の有益効果は、次のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、または以下のすべて、特に、5もしくは10以上、さらに特に次のうちの15以上のこととして顕在化し得る:
a)アルツハイマー病の症状を有する対象への投与後の、本明細書に開示する化合物が不在の状態でのレベルに比しての、長期増強の増大または回復。本発明の態様において、本化合物は、対象における長期増強の少なくとも約0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%増大を誘導する。
【0152】
b)アルツハイマー病の症状を有する対象への投与後の、本明細書に開示する化合物が不在の状態でのシナプス機能のレベルに比しての、シナプス機能の増加または維持。本発明の態様において、本化合物は、対象におけるシナプス機能の少なくとも0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、100%、125%、150%、175%または200%増加を誘導する。
【0153】
c)シナプトフィジンの増加。本発明の態様において、シナプトフィジンは、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、100%、125%、150%、175%または200%増加させる。
【0154】
d)シナプトフィジン反応性膿疱および細胞体の増加。本発明の態様において、シナプトフィジン反応性膿疱および細胞体は、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、100%、125%、150%、175%または200%、さらに特に、約100〜150%または140〜150%増加させる。
【0155】
e)アルツハイマー病の症状を有する対象への投与後の炎症、特にAβ誘発性炎症反応、の症状の増加についての減少、遅速もしくは防止、または該症状の不在。
【0156】
f)アルツハイマー病の症状を有する対象における、本明細書に開示する化合物が不在の状態で測定したレベルに比しての、アミロイドβの脳蓄積の増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本化合物は、アミロイドβの脳蓄積の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0157】
g)アルツハイマー病の症状を有する対象における、本明細書に開示する化合物が不在の状態で測定したレベルに比しての、脳アミロイド斑沈着増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本化合物は、脳アミロイド斑沈着の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0158】
h)斑数増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本明細書に開示する化合物は、斑数の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。特定の態様において、本化合物は、斑数の5〜15%または10〜15%減少を誘導する。
【0159】
i)斑サイズの増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本明細書に開示する化合物は、斑サイズの少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。特定の態様において、本化合物は、斑サイズの5〜15%または10〜15%の減少を誘導する。
【0160】
j)斑に覆われた脳の面積率の増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本明細書に開示する化合物は、斑に覆われた脳の面積率の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。特定の態様において、本化合物は、斑に覆われた脳の面積率の5〜15%または10〜15%減少を誘導する。
【0161】
k)アルツハイマー病の症状を有する対象における、本明細書に開示する化合物が不在の状態で測定したレベルに比しての、脳内可溶性Aβオリゴマー増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本組み合わせは、可溶性Aβオリゴマーの少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0162】
l)脳Aβ40レベルの増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本明細書に開示する化合物は、Aβ40の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。特定の態様において、本化合物は、脳Aβ40レベルの10〜50%、20〜45%、または25〜35%減少を誘導する。
【0163】
m)CSFまたは血液などの体液中のAβ42レベルの増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本明細書に開示する化合物は、Aβ42の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。特定の態様において、本化合物は、脳Aβ42レベルの10〜50%、15〜40%、または20〜25%減少を誘導する。
【0164】
n)脳Aβ42レベルの増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本明細書に開示する化合物は、Aβ42の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。特定の態様において、本化合物は、脳Aβ42レベルの10〜50%、15〜40%、または20〜25%減少を誘導する。
【0165】
o)アルツハイマー病の症状を有する対象における、本明細書に開示する化合物が不在の状態で測定したレベルに比しての、脳における神経膠活性の増加の減少、遅速または防止。好ましくは、本化合物は、神経膠活性の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0166】
p)治療後、長期間にわたる、特に、少なくとも5週間、6週間、8週間、10週間、12週間、14週間、16週間、20週間、24週間、30週間、40週間、52週間または78週間、さらに具体的には、2から4週間、2から5週間、3から5週間、2から6週間、2から8週間、2から10週間、2から12週間、2から16週間、2から20週間、2から24週間、2週間から12ヶ月間、または2週間から24ヶ月間の、ほぼ正常でのシナプス機能の維持。
【0167】
q)アルツハイマー病を有する対象における疾病進行速度の減少または遅速。特に、アルツハイマー病を有する対象における認知低下の減少または遅速。
【0168】
r)総血管負荷量の減少。本発明の態様において、本化合物は、総血管負荷量の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0169】
s)星状神経膠細胞症の減少。本発明の態様において、本化合物は、星状神経膠細胞症の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0170】
t)小神経膠細胞症の減少。本発明の態様において、本化合物は、小神経膠細胞症の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0171】
u)認知低下の減少または遅速。
【0172】
v)アミロイド血管症の減少または遅速。
【0173】
w)死亡加速の低減。
【0174】
x)アルツハイマー病の症状を有する対象の生存の増加。好ましくは、本化合物は、生存の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%増加を誘導する。
【0175】
本発明の態様において、本発明の組成物または治療の有益効果は、(a)および(b);(a)、(b)および(c);(a)、(b)、(e)、(f)および(g);(a)、(b)、(e)、(f)から(h);(a)、(b)、(e)、(f)から(i);(a)、(b)、(e)、(f)から(j);(a)、(b)、(e)、(f)から(k);(a)、(b)、(e)、(f)から(l);(a)、(b)、(e)、(f)から(m);(a)、(b)、(e)、(f)から(n);(a)、(b)、(e)、(f)から(o);(a)、(b)、(e)、(f)から(p);(a)、(b)、(e)、(f)から(q);(a)、(b)、(e)、(f)から(r);(a)、(b)、(e)、(f)から(s);(a)、(b)、(e)、(f)から(t);(a)から(d);(a)から(e);(a)から(f);(a)から(g);(a)から(h);(a)から(i);(a)から(j);(a)から(k);(a)から(l);(a)から(m);(a)から(n);(a)から(o);(a)から(p);(a)から(q);(a)から(r);(a)から(s);(a)から(t);(a)から(u);(a)から(v);(a)から(w)または(a)から(x)として顕在化し得る。
【0176】
統計学的に有意な有益効果、特に、上の(a)から(x)の効果のうちの1つ以上を有する本発明の化合物、医薬組成物および方法を選択することができる。持続的有益効果、特に、統計学的に有意な持続的有益効果を有する本発明の化合物、医薬組成物および方法を選択することもできる。1つの実施形態において、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む、統計学的に有意な持続的有益効果、特に、上の(a)から(x)のうちの1つ以上の持続的有益効果を有する、医薬組成物を提供する。本発明の態様において、前記有益効果のうちの1つ以上が、従来の治療薬と比較して強化された治療効果をもたらす。
【0177】
一部の態様において、本発明の治療のより大きな効能および効力は、有害副作用および毒性を減少させつつ、治療の治癒比を改善することができる。本発明の選択された方法は、長年にわたるアルツハイマー病を、症状出現からずっと後に治療を始めた場合でさえ、改善することもできる。本発明に従って、本発明の化合物または組成物の投与後、長期にわたって効能のある治療を達成することができる。
【0178】
1つの態様において、本発明は、アルツハイマー病を治療するための方法に関し、この方法は、対象におけるAβ、Aβ凝集物またはAβオリゴマー、特に、Aβ40またはAβ40凝集物もしくはオリゴマーならびに/あるいはAβ42またはAβ42凝集物もしくはオリゴマー、を、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物またはエピ−イノシトール化合物を含む組成物と接触させることを含む。
【0179】
もう1つの態様において、本発明は、アルツハイマー病を治療するための方法を提供し、この方法は、凝集したAβまたはオリゴマーを、投与後、長期間にわたって破壊するために十分な量で、1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む組成物を供給することによる。
【0180】
さらなる態様において、本発明は、その必要がある患者においてアルツハイマー病を治療するための方法を提供し、この方法は、長期増強を増大もしくは回復させるおよび/またはシナプス機能を維持するために十分な用量で、1つ以上のエピ−イノシトール化合物を供給する組成物を個体に投与することを含む。もう1つの態様において、本発明は、アルツハイマー病を治療するための方法を提供し、この方法は、投与後、長期間にわたってAβの脳蓄積、脳アミロイド斑沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマー、神経膠活性、および/または炎症を減少させる量のエピ−イノシトール化合物を、哺乳動物に投与、好ましくは経口または全身投与することを含む。
【0181】
本発明は、1つの実施形態において、アルツハイマー病を治療するための方法を提供し、この方法は、認知低下を、特に、投与後、長期間にわたって減少させるために十分な量で1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む組成物を、その必要がある哺乳動物に投与することを含み、それによってアルツハイマー病を治療する。
【0182】
本発明は、1つの実施形態において、アルツハイマー病を治療するための方法を提供し、この方法は、シナプス機能を、特に、投与後、長期間にわたって増大または維持するために十分な量で1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む組成物を、その必要がある哺乳動物に投与することを含み、それによってアルツハイマー病を治療する。
【0183】
もう1つの態様において、本発明は、アルツハイマー病を予防および/または治療するための方法を提供し、この方法は、凝集したAβまたはAβオリゴマーを、投与後、長期間にわたって破壊するために十分な量で1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む組成物を、その必要がある哺乳動物に投与すること、および凝集したAβまたはAβオリゴマーの量を決定することを含み、それによってアルツハイマー病を治療する。凝集したAβまたはAβオリゴマーの量は、Aβに特異的な抗体、または検出可能物質で標識されたエピ−イノシトールを使用して、測定することができる。
【0184】
本発明は、ベータ−セクレターゼ阻害剤、ガンマ−セクレターゼ阻害剤、イプシロン−セクレターゼ阻害剤、ベータ−シート凝集/原線維発生/ADDL形成についての他の阻害剤(例えば、Alzhemed)、NMDA拮抗薬(例えば、メマンチン)、非ステロイド系抗炎症化合物(例えば、イブプロフェン、Celebrex)、抗酸化物質(例えば、ビタミンE)、ホルモン(例えば、エストロゲン)、栄養素および栄養補助食品(例えば、イチョウ)、スタチンおよび他のコレステロール低下薬(例えば、LovastatinおよびSimvastatin)、アセチルコリンエステレラーゼ阻害剤(例えば、ドネゼピル)、ムスカリン作動薬(例えば、AF102B(Cevimeline、EVOXAC)、AF150(S)、およびAF267B)、抗精神病薬(例えば、ハロペリドール、クロザピン、オランザピン)、抗うつ薬(三環系抗うつ薬およびセロトニン再取り込み阻害剤(例えば、SertralineおよびCitalopram Hbr)を含む)、スタチンおよび他のコレステロール低下薬(例えば、LovastatinおよびSimvastatin)、免疫治療薬およびAβに対する抗体(例えば、ELAN AN−1792)、ワクチン、TAUタンパク質をリン酸化するキナーゼ(CDK5、GSK3α、GSK3β)の阻害剤(例えば、塩化リチウム)、Aβ生産を修飾するキナーゼ(GSK3α、GSK3β、Rho/ROCKキナーゼ)の阻害剤(例えば、塩化リチウムおよびイブプロフェン)、ネプリライシン(Aβを分解する酵素)をアップレギュレートする薬物、インスリン分解酵素(Aβを分解する酵素)をアップレギュレートする薬物、疾病に起因するもしくは関連した合併症を治療するために使用される薬剤、または副作用を治療もしくは予防する一般的薬剤をはじめとする(しかし、これらに限定されない)1つ以上の追加の治療薬との併用治療で本発明の組成物を使用する方法も含む。本発明は、ネプリライシン(Aβを分解する酵素)のアップレギュレーションへの遺伝子療法および/もしくは薬物ベースのアプローチ、インスリン分解酵素(Aβを分解する酵素)のアップレギュレーションへの遺伝子療法および/もしくは薬物ベースのアプローチ、または幹細胞および他の細胞ベースの療法をはじめとする(しかし、これらに限定されない)1つ以上の追加の治療との併用治療での本発明の組成物の使用方法も含む。
【0185】
予想外の相加効果または相加効果より大きい効果、すなわち相乗効果をもたらすように、エピ−イノシトール化合物と治療薬または治療との組み合わせを選択することができる。他の治療薬および療法は、別のメカニズムによって作用することができ、ならびに本発明との相加/相乗効果を有することができる。
【0186】
最大の治療効果を達成する、1つ以上のエピ−イノシトール化合物と、別のメカニズムを用いる治療薬とを含む組成物または方法(すなわち、併用療法)は、その療法に対する許容度を向上させ、より高い用量またはより長期の単独療法(すなわち、それぞれの化合物単独での療法)に起因し得る副作用のリスクを減少させることができる。併用療法によって、それぞれの化合物をより低い用量で使用し、それぞれの化合物の有害毒性作用を減少させることもできる。最適以下の投薬量によって、安全限界の増大をもたらすことができ、予防および治療を達成するために必要な薬物のコストを減少させることもできる。加えて、単回併用投薬単位を利用する治療は、適便性の増大をもたらすことができ、結果としてコンプライアンスを向上させることができる。併用療法の他の利点としては、分解および代謝に対するより高い安定性、より長い作用継続時間、ならびに/または特に低い用量でのより長い作用継続時間もしくは有効性を挙げることができる。
【0187】
1つの態様において、本発明は、疾患および/または疾病の治療における薬物を調製するための少なくとも1つのエピ−イノシトール化合物を含む組成物の使用を考えている。本発明は、疾患および/または疾病の予防および/または治療用の薬物を調製するための少なくとも1つのエピ−イノシトール化合物を含む組成物の使用も考えている。加えて、本発明は、疾患および/または疾病の予防および/または治療用の薬物の調製における本発明の医薬組成物の使用を提供する。前記薬物は、治療後に有益効果、好ましくは持続的有益効果、をもたらす。前記薬物は、その臨床設定に関係なく、アミロイド形成、沈着、蓄積および/または残存を阻害するための、対象による消費のための形態、例えば、ピル、錠剤、キャプレット、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、ロゼンジ、サッシェ、カシェ剤、VegiCap、液滴、エリキシル、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としてもしくは液体媒質中のもの)、坐剤、滅菌注射溶液、ならびに/または滅菌包装粉末であり得る。
【0188】
1つの実施形態において、本発明は、疾患および/または疾病の治療において治療効果、特に、有益効果、好ましくは持続的有益効果をもたらすための薬物を調製するための、治療有効量の本発明の少なくとも1つのエピ−イノシトール化合物または組成物の使用に関する。
【0189】
もう1つの実施形態において、本発明は、アルツハイマー病の長期または継続治療用の薬物を調製するための本発明の1つ以上のエピ−イノシトール化合物または組成物の使用を提供する。
【0190】
さらなる実施形態において、本発明は、異常なタンパク質フォールディングおよび/もしくは凝集ならびに/またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾患を治療するために経口投与によって用いる医薬組成物を調製するためのエピ−イノシトール化合物の使用を提供する。
【0191】
本発明の組成物および方法の治療効果および毒性は、細胞培養物におけるまたは実験動物を用いる標準的な製薬学的手順によって、例えば、ED50(その集団の50%において治療上有効である用量)またはLD50(その集団の50%に対して致死的である用量)統計量などの統計学的パラメータを計算することによって、決定することができる。治療指数は、治療効果の毒性効果に対する用量比であり、ED50/LD50比として表すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。治療効果、特に、本発明に開示する有益効果、のうちの1つ以上を対象または疾病モデルにおいて実証することができる。例えば、有益効果は、本明細書中の実施例で説明するモデルにおいて実証することができ、特に、アルツハイマー病の症状を有するTgCRND8マウスにおいて有益効果を実証することができる。
【0192】
投与
本発明のエピ−イノシトール化合物および組成物を、活性薬剤(単数または複数)と、対象または患者の体内の該薬剤の作用部位との接触を生じさせる任意の手段によって投与して、治療効果、特に有益効果、特に持続的有益効果を生じさせることができる。複数の活性成分を同時に投与して、または異なる時点で任意の順序で逐次的に投与して、所望の有益効果をもたらすことができる。本発明の化合物および組成物は、局所または全身送達のために徐放するように調合することができる。治療効果、特に、有益効果、さらに特に持続的有益効果をもたらすために、本発明の組成物および治療の効果を最適にする投与形態および経路を選択することは、熟練した医師または獣医の能力の範囲内に存する。
【0193】
本化合物および組成物は、経口剤形、例えば、錠剤、カプセル(それぞれが、徐放性または持効性製剤を含む)、ピル、粉末、顆粒、エリキシル、チンキ剤、懸濁液、シロップおよび乳濁液で投与することができる。それらは、静脈内用形態(ボーラスまたは輸液)、腹腔内用形態、皮下用形態または筋肉内用形態で投与することもでき、これらのすべてが、製薬技術分野における通常技能者に周知の剤形を利用する。本発明の組成物は、適する鼻腔内ビヒクルの局所使用により鼻腔内経路によって、または例えば従来の経皮パッチを使用して経皮経路によって投与することができる。経皮送達システムを使用する投与のための投薬プロトコルは、その投薬レジメンを通して間欠的にではなく継続的であり得る。これらの治療薬に徐放性処方を用いてもよい。
【0194】
本発明の態様において、本化合物および組成物は、末梢投与によって、特に、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、経口投与、局所投与、経粘膜投与、または肺投与によって、投与される。
【0195】
本発明の投薬レジメンは、公知の因子、例えば、薬剤の薬力学的特徴、それらの投与形式および経路、患者の種、年齢、性別、健康、医療状態および体重、症状の性質および程度、併用療法の種類、治療頻度、投与経路、患者の腎臓および肝臓機能、ならびに所望される効果に依存して、変わるであろう。
【0196】
特定の疾患および/または疾病の治療において効果、特に有益効果、さらに特に持続的有益効果をもたらすために有効であろう、エピ−イノシトール化合物およびそれを含む組成物の量は、その疾患および/または疾病の性質に依存することとなり、これは、標準的な臨床技術によって決定することができる。調合に用いるための正確な用量も、投与経路およびその疾病の重症度に依存することとなり、これは、現場の医師の判断およびそれぞれの患者の環境に従って決定されるはずである。
【0197】
特に、投与に適する投薬範囲は、治療効果、特に有益効果、さらに特に持続的有益効果をもたらすように選択される。投薬範囲は、一般に、所望の生物学的応答を誘発するために有効な範囲である。投薬範囲は、一般に、対象の体重の、kg当たり約.5mgから約2g、kg当たり約1mgから約1g、kg当たり約1mgから約200mg、kg当たり約1mgから約100mg、kg当たり約1mgから約50mg、kg当たり約10mgから約100mg、またはkg当たり約30mgから約70mgである。
【0198】
本発明の一部の態様において、1日1回、2回、3回またはそれ以上、特に1日1回または2回投与される本明細書に開示する化合物の投薬範囲は、約1から100mg/kg、1から90mg/kg、1から80mg/kg、1から75mg/kg、1から70mg/kg、1から60mg/kg、1から50mg/kg、1から40mg/kg、1から35mg/kg、2から35mg/kg、2.5から30mg/kg、3から30mg/kg、3から20mg/kg、または3から15mg/kgである。
【0199】
本発明の実施形態において、1日2回投与される本明細書に開示する化合物の必要用量は、約1から50mg/kg、1から40mg/kg、2.5から40mg/kg、3から40mg/kg、3から35mg/kg、最も好ましくは3から30mg/kgである。本発明の実施形態において、本化合物の必要日用量は、約1から80mg/kgであり、ならびに1から70mg/kg、1から65mg/kg、2から70mg/kg、3から70mg/kg、4から65mg/kg、5から65mg/kgまたは6から60mg/kgにわたる範囲内である。
【0200】
本発明の実施形態において、1日2回投与される本明細書に開示する化合物の必要用量は、約1から50mg/kg、1から40mg/kg、2.5から40mg/kg、3から40mg/kg、3から35mg/kg、最も好ましくは3から30mg/kgである。
【0201】
本発明の他の実施形態において、本明細書に開示する化合物の必要日用量は、約1から80mg/kgであり、ならびに1から70mg/kg、1から65mg/kg、2から70mg/kg、3から70mg/kg、4から65mg/kg、5から65mg/kgまたは6から60mg/kgにわたる範囲内である。
【0202】
本発明の組成物または治療は、有益効果、特に、本明細書において述べる有益効果(a)から(t)のうちの1つ以上をもたらすために少なくとも1つのエピ−イノシトール化合物の単位投薬量を含んでもよい。「単位投薬量」または「投薬単位」は、活性薬剤それ自体を含むまたは1つ以上の固体もしくは液体製薬用賦形剤、担体もしくはビヒクルとの混合物を含む物理的および化学的に安定な単位のままで、患者に投与することができる、ならびに容易に取り扱うことおよび包装することができる単位用量、すなわち単一用量を指す。
【0203】
実質的にいずれの所望されるスケジュールででも、エピ−イノシトール化合物またはその組成物もしくは製剤を用いて、対象を治療することができる。本発明の組成物は、1日1回以上、特に1日1または2回、週1回、月1回、または継続的に投与することができる。しかし、対象を、1日おきもしくは週1回などのより少ない頻度で治療することもでき、またはより多い頻度で治療することもできる。
【0204】
本発明のエピ−イノシトール化合物、組成物または製剤は、約もしくは少なくとも約1週間、2週間から4週間、2週間から6週間、2週間から8週間、2週間から10週間、2週間から12週間、2週間から14週間、2週間から16週間、2週間から6ヶ月間、2週間から12ヶ月、2週間から18ヶ月間、または2週間から24ヶ月間、定期的にまたは継続的に対象に投与することができる。
【0205】
1つの態様において、本発明は、エピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体を含むサプリメントを人に投与することを含む、人の食事を補うためのレジメンを提供する。少なくともほぼ毎日、またはそれより少ない頻度で、例えば1日おきもしくは週1回、対象をサプリメントで治療することができる。本発明のサプリメントは、毎日摂取できるが、より低い頻度の消費、例えば、週に数回の消費または独立した用量での消費でさえ、有益であり得る。
【0206】
特定の態様において、本発明は、人の食事を補うためのレジメンを提供し、このレジメンは、約25から約200ミリグラムの式Iの化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体をその人に毎日投与することを含む。もう1つの態様では、約50〜100ミリグラムの式Iの化合物をその人に毎日投与する。
【0207】
本発明のサプリメントは、食事と共に摂取してもよいし、または食後に摂取してもよい。例えば、個人の朝食時、および/または個人の昼食時にサプリメントを摂取することができる。食事直前、中または直後に一部を投与してもよい。毎日消費する場合、その人の朝食の直前、中または直後にサプリメントの一部を消費し、そのサプリメントの第二の部分をその人の昼食の直前、中または直後に消費してもよい。朝の分および昼の分は、それぞれ、ほぼ同量のエピ−イノシトール化合物を供給することができる。本明細書に記載するサプリメントおよびレジメンは、一般に認知されている栄養ガイドラインに従ったバランスのとれた食事および週に数回の軽度から中等度運動プログラムと併用すると、最も有効であり得る。
【0208】
1つの実施形態において、人の食事を補うためのレジメンを提供し、このレジメンは、そのサプリメントのグラム当たり約5ミリグラムから約30ミリグラムの1つ以上のエピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体を含むサプリメントをその人に投与することを含む。1つの実施形態では、そのサプリメントの一部をその人の朝食時に投与し、そのサプリメントの第二の部分をその人の昼食時に投与する。
【0209】
特定の実施例によって本発明をさらに詳細に説明することとする。以下の実施例は、例証を目的として提供するものであり、如何なる点においても本発明を制限するためのものではない。変更または修飾して本質的に同じ結果をもたらすことができる様々な重要でないパラメータは、当業者には容易にわかることだろう。
【実施例】
【0210】
(実施例1)
本実施例で説明する試験では、以下の方法を用いた:
マウス。C3H/B6非近交系バックグラウンドに対してTgCRND8マウス[12、13]の実験群を、最初、エピ−シクロヘキサンヘキソールまたはシロ−シクロヘキサンヘキソールのいずれか30mg/日で治療した。この初期投薬量は、様々な精神障害のために人間の患者に一般に投与されるミオ−シクロヘキサンヘキソールの用量(6〜18グラム/日/成人または86〜257mg/Kg/日)の投与量に基づいて選択した[21]。これらの投薬量でのミオ−シクロヘキサンヘキソールは、人間または動物において毒性を有さなかった。ここで説明する試験を5mg/Kg/日〜100mg/Kg/日の用量を用いて繰り返し、これらの代替用量は、同じ結果を生じさせた(データは示さない)。動物のコホート(治療アーム当たりマウス n=10)を月齢5ヶ月で試験に参加させて、1ヵ月の治療の後、転帰を分析した。体重、毛皮の特徴およびケージ内での行動をモニターした。カロリー摂取量の潜在的変化についての陰性対照として、マンニトールを使用した。すべての実験は、カナダ動物管理協会(Canadian Council on Animal Care)ガイドラインに従って行った。
【0211】
行動試験:以前に記載されたとおり、モーリス水迷路試験を行った[13]。非空間的予備訓練の後、マウスは、5日間の場所判別訓練と1日4回の試験、続いて、一般的な動機づけ、学習不足および運動の問題を除外するために手がかりのある見える足場、そして記憶を評価するためのプローブ試験を経験した。「対象間」因子として治療(未治療、エピ−またはシロ−シクロヘキサンヘキソール)および遺伝子型(TgCRND8 対 非Tg)を用いる反復測定分散分析(ANOVA)にデータを付した。運動活動のためのオープンフィールド試験を、以前に記載されたとおりに行った[22]。歩行、休止、毛づくろいを自発的運動活動の指標として分析した。感覚運動機能は、他の部分で説明されたようなEconomex(商標)加速ロータロッド(オハイオ州、コロンバスのColumbus Instruments)で試験した[23]。ロッドは、5r.p.m.の初期一定速度から0.2r.p.m./秒の率で加速されるように設定した。30分間隔で行う1日4回の検定で、落下までの潜伏時間を記録した。試験前、7日間、すべてのマウスを訓練した。それら4回の検定に関するその落下までの潜伏時間を合計することによって、それぞれの動物についての試験日動作スコアを得た。
【0212】
脳アミロイド負荷。脳を取り出し、一方の脳半球を4%パラホルムアルデヒドで固定し、正中矢状面でパラフィンワックスに包埋した。系統的均一ランダム切片のセットを生じさせるために、その全脳半球にわたって5μm連続切片を採集した。50μm間隔での切片のセットを分析に用いた(10〜14切片/セット)。ギ酸での抗原賦活、一次抗Aβ抗体(Dako M−0872)とのインキュベーション、続いての二次抗体(Dako StreptABC複合体/ホースラディッシュキット)とのインキュベーションの後、斑を同定した。最終製品をDABで可視化し、ルクソール・ファスト・ブルーで対比染色した。Leica顕微鏡および株式会社日立製作所(Hitachi)KP−M1U CCDビデオカメラとインターフェースで接続されたLeco IA−3001画像分析ソフトウェアを用いて、アミロイド斑負荷を評価した。次に、斑数および斑面積決定のために、Openlab画像形成ソフトウェア(マサチューセッツ州、レキシントンのImprovision)を使用して顕微鏡写真を2値画像に変換した。血管アミロイド負荷を、血管から発生するまたは血管を取り巻くアミロイドと定義し、同様に分析した。
【0213】
血漿および脳Aβ含量。半脳サンプルを緩衝スクロース溶液で均質化し、その後、可溶性Aβレベルのために0.4%ジエチルアミン/100mM NaClで、または全Aβの単離のために冷ギ酸で均質化した。中和後、それらのサンプルを希釈し、市販のキット(BIOSOURCE International)を使用してAβ40およびAβ42について分析した。それぞれの脳半球を三重反復で分析し、その平均値±SEMを報告した。Aβ種分析用のウレアゲルを使用して、すべての画分に対してウエスタンブロット分析を行った[24]。6E10(BIOSOURCE International)およびEnhanced Chemiluminenscence(Amersham)を使用して、Aβを検出した。
【0214】
神経膠症定量。治療および対照マウスの、パラホルムアルデヒドで固定し凍結した脳半球から、ランダムに選択した均等間隔の矢状切片を5つ採集した。切片を、星状神経膠細胞については抗ラットGFAP IgG2a(Dako;1:50希釈したもの)で、および小神経膠細胞については抗ラットCD68 IgG2b(Dako;1:50)で免疫標識した。Zeiss,Axioscope 2 Plus顕微鏡に搭載したCoolsnapデジタルカメラ(アリゾナ州、タスコンのPhotometrics)を使用して、デジタル画像を取り込んだ。Openlab 3.08画像形成ソフトウェア(マサチューセッツ州、レキシントンのImprovision)を使用して画像を分析した。
【0215】
生存調査:死亡が発生するたびに生存の確率を算定し、そのようにして小さなサンプルサイズに適するものにするKaplan Meier技術[25]によって、生存の確率を評価した。生存分析のために、各治療群について35匹のマウスを使用した。Tarone−Ware試験を用いて、治療の効果を評価した。
【0216】
脳内のAPPの分析。20mM トリスpH7.4、0.25M スクロース、1mM EDTAおよび1mM EGTA、ならびに0.4% DEA(ジエチルアミン)/100mM NaClと混合したプロテアーゼ阻害カクテルの中でマウス半脳サンプルを均質化し、109,000×gで回転させた。上清は、mAb 22C11を使用してウエスタンブロット法によりAPPレベルについて分析し、一方、ペレットは、前に記載されたとようにmAb C1/6.1でAPPホロタンパク質について分析した[12、13]。
【0217】
可溶性Aβオリゴマー分析。可溶性Aβオリゴマーのレベルを、抗オリゴマー特異的抗体でのドットブロットアッセイによって測定した[18]。簡単に言うと、片方の半脳からオリゴマーをプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)の存在下でPBSに可溶化した。78,500×gで、1時間、4℃で遠心分離した後、上清を分析した。タンパク質含量をBCAタンパク質アッセイ(Pierce)によって決定した。全タンパク質のうちの2μgをニトロセルロース上にスポッティングし、TBS中の10%脱脂乳でブロックし、その後、ビオチン化オリゴマー特異的抗体と共にインキュベートした。ブロットをストレプタビジン−HRPおよびECL化学発光キットでインキュベートした。可溶性および原線維状Aβ42を陰性対照として使用し、合成オリゴマーAβ42を陽性対照として使用した[17]。対照サンプルは、オリゴマー抗体をストリップし、抗Aβ抗体6E10で再びプローブした後、再び同定した。
【0218】
長期増強。標準的手順によって、マウス海馬のCA1における電場電位を記録した[26、27]。P16とP26の間の歳のSwiss Websterマウスをイソフルランで麻酔した。脳を迅速に取り出し、次のものを含有する氷冷酸素化スクロース−CSFの中に入れた:(mMで)248 スクロース、2 KCl、2 MgSO4、1.24 NaH2PO4、1 CaCl2、1 MgCl2、26 NaHCO3、10 D−グルコース、pH7.4、〜315ミリオスモル[28]。それぞれの脳半球から海馬を単離し、350μm冠状切断を行った。それらのスライスを、NaCl−CSF(mMで:124 NaCl、2 KCl、2 MgSO4、1.25 NaH2PO4、2 CaCl2、26 NaHCO3、10 D−グルコース、pH7.4、〜310ミリオスモル)が入っている保持チャンバーに移し、1時間より長く放置して回復させた。そのチャンバーに入れたら、15mLのACSFを含有する閉ループによってスライスに継続的に潅流して、オリゴマーAβを保存した。20分の安定したベースラインの後、1mLの15倍濃縮7PA2調整培地±1.25μM シロ−シクロヘキサンヘキソールをその潅流ループに追加した。双極刺激電極(World Precision Inst.)をシャッファー側枝に配置してベースライン刺激および強縮をもたらした。ACSFを含有するホウケイ酸ガラス記録用電極(2〜4MΩ)を刺激電極から約75〜200μmの位置に配置した。最大電場電位応答の25〜40%が得られるように、刺激の強度(一般に、10〜20マイクロアンペア)を設定した。テスト刺激を0.05Hzでもたらした。LTPを誘導するために、5分間間隔で4回の強縮(1秒あたり100Hz)をもたらした。Axopatch 200Bを使用して、電場電位応答を10倍に増幅した。10kHzでデータをサンプリングし、2kHzでフィルタリングした。pClamp 9.2を使用してトレースを分析した。全応答の約10〜60%を用いて、電場電位の傾きを概算した。
【0219】
シナプトフィジン定量。
【0220】
パラホルムアルデヒドで固定した治療および対照マウスの3つの均等間隔矢状切片を用いて、シナプトフィジン免疫組織化学染色を行った。切片のシナプトフィジンを抗シナプトフィジンIgG(1:40;Roche,Laval,PQ)で免疫標識した。上で説明したようにデジタル画像を取り込み、分析した。それぞれの切片の中の、海馬CA1領域の3つのランダムに選択した100μm2エリアのシナプトフィジン反応性細胞体および膿疱をカウントした。100μm2当たりの反応性細胞体および膿疱の数の平均として結果を示す[29、30]。
【0221】
結果
それらのインビボでの有効性を評価するために、アルツハイマー病の頑強マウスモデル(TgCRND8)にイノシトール化合物を投与した[12、13]。TgCRND8マウスは、ヒトにおけるADの原因となる2つのミスセンス突然変異(KM670/671NLおよびV717F)を有するヒトアミロイド前駆体タンパク質トランスジーン(APP695)を発現する。約3ヶ月の月齢で、マウスは、脳Aβレベルの上昇と脳細胞外アミロイド斑の数の増加の両方を伴う進行性空間学習障害を示す[12]。月齢6ヶ月には、TgCRND8マウスの脳におけるAβのレベルならびにアミロイド斑の形態、密度および分布は、ADが十分に定着したヒトの脳において見られるものと同様である[12]。ADを有するヒト患者の場合のように、このマウスモデルの生化学的、行動的および神経病理学的特徴は、死亡加速を伴う[12、13]。
【0222】
TgCRND8マウスおよび非トランスジェニック同腹子を性別および年齢を合わせたコホートに割り付け、その後、それらを用いて、(月齢5ヶ月まで治療を延期し、月齢6ヶ月までの1ヶ月間治療して)シクロヘキサンヘキソール立体異性体の治療薬としての有効性を試験した。マウスは、活性化合物(1,2,3,4,5/6−(エピ−)シクロヘキサンヘキソールもしくは1,3,5/2,4,6−(シロ−)シクロヘキサンヘキソールの経口投与)を受ける、模擬治療(マンニトール)を受ける、または治療を受けないようにランダムに割り付けた。エンドポイントは、認知機能、脳Aβレベルおよび神経病態であった。1,2,3,5/4,6−(ミオ−)シクロヘキサンヘキソールは、これらの試験には含めなかった。以前のインビトロ試験[11]が、ミオ−シクロヘキサンヘキソールは、弱有効性でしかないことを示していたからであり、ならびにインビボ予備試験が、有意な恩恵を示さなかった(データは示さない)からである。これらの実験のコース全体をとおして、観察者は、遺伝子型または治療群を知らなかった。
【0223】
シクロヘキサンヘキソール立体異性体は定着した脳アミロイド沈着を逆転する
殆どのAD患者は、症候性になった後、すなわち、Aβオリゴマー化、沈着、毒性および斑形成が既に十分に進行した時点で、しか治療を求めないだろう。シクロヘキサンヘキソール立体異性体が十分に定着したAD様表現型を排除できるかどうかを評価するために、TgCRND8マウスの治療開始を月齢5ヶ月まで延期した。この月齢で、TgCRND8マウスは、豊富なAβペプチドおよび斑負荷を伴う有意な行動障害を有する[12]。TgCRND8および非Tg同腹子のコホート(コホート当たりマウス10匹)を、エピ−シクロヘキサンヘキソールでもしくはシロ−シクロヘキサンヘキソールで28日間治療するか、未治療のまま放置した。これらの実験に用いた化合物の投薬量および経口投与ならびに神経化学的および神経病理学的アッセイは、最初の予防実験において用いたものと同じであった。このコホートの動物についての死亡率曲線は生成しなかった。この試験の短さの結果、意味のあるデータを生じさせるには、未治療TgCRND8マウスにおける死亡数が少なすぎたからである。
【0224】
これらのマウスにおける空間学習を、28日間、エピ−シクロヘキサンヘキソールもしくはシロ−シクロヘキサンヘキソールで治療したまたは治療していない月齢6ヶ月TgCRND8マウス間で比較した。28日間、エピ−シクロヘキサンヘキソールで治療した月齢6ヶ月TgCRND8マウスの遂行能力は、未治療TgCRND8同腹子のものと有意な差がなく(F1,15=3.02、p=0.27;図1A)、それらの非Tg同腹子の遂行能力より有意の劣っていた(F1,14=11.7、p=0.004;図1C)。さらに、プローブ試験により、エピ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスは、未治療TgCRND8マウスと統計学的に差がなかった(p=0.52;図1E)。エピ−シクロヘキサンヘキソールは、疾病が既に存在する動物において、脳Aβ40もしくはAβ42レベル、斑で覆われた脳の面積率、または斑数に有意な影響を及ぼさなかった(表1)。
【0225】
シロ−シクロヘキサンヘキソールでの月齢5ヶ月TgCRND8マウスの28日治療は、未治療TgCRND8マウスと比較して有意に良好な行動能力を生じさせた(p=0.01)。実際、これらのシロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスの認知能力は、それらの非Tg同腹子と区別できなかった(F1,13=2.9、p=0.11;図1B、D)。シクロヘキサンヘキソール治療のこの有益効果は、行動、運動または知覚系に対する非特異的効果によるものではなかった。シクロヘキサンヘキソール治療は、非Tgマウスの認知能力に対して効果がなかったからである(F2,19=0.98;p=0.39)。プローブ試験において、環交差指数(annulus crossing index)は、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスについて、非Tg同腹子と統計学的な差がない記憶の有意な改善を示した(p=0.64;図1E)。別のマウスコホートにおいて、ターゲット4分の1区における時間%を代替尺度として用いた場合、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスは、非Tg同腹子と統計学的に差がなかった(p=0.28;データは示さない)。シロ−シクロヘキサンヘキソールの有益効果は、感覚運動行動の変化によるものではなかった。シロ−シクロヘキサンヘキソールは、オープンフィールド試験において、未治療TgCRND8マウス(F1,9=0.25;=0.63)と非Tg同腹子(F1,12=0.02;p=0.89)の両方と比較すると、TgCRND8マウスの毛づくろいまたは活性には効果を有さなかった(補足データ)。同様に、ロータロッド試験は、感覚運動機能に関して、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療および未治療TgCRND8マウス間で差を示さず(p=0.42)、治療TgCRND8と治療または未治療非Tg同腹子の間でも差を示さなかった(p=0.79)。予防試験の結果と一致して、月齢5ヶ月でのシロ−シクロヘキサンヘキソールの28日コースは、1)Aβ40およびAβ42の脳レベルも減少させ(例えば、不溶性Aβ40=29±2.3%減少、p<0.05;不溶性Aβ42=23±1.4%減少、p<0.05)、2)斑数、斑サイズおよび斑に覆われた脳の面積率も有意に減少させた(斑数=13±0.3%減少、p<0.05:斑サイズ=16±0.4%減少、p=0.05;斑によって覆われた脳の面積率=14±0.5%減少、p<0.05;表1;図1F〜G)。これらの結果は、6ヶ月予防試験のものと効果の点で匹敵する。
【0226】
要するに、データは、シロ−シクロヘキサンヘキソールおよびより小程度にエピ−シクロヘキサンヘキソールが、TgCRND8マウスにおいてAD様表現型を防止および逆転させて、認知低下、アミロイド斑、アミロイド血管症、Aβ誘発性炎症反応および死亡加速を減少させることができることを示している。1)それらの化合物が、促進輸送によって脳血液関門を横断して輸送される[15、16]ため、および2)治療マウスの脳組織におけるそれらの存在をガスクロマトグラフィー−質量分析法によって証明することができる[17](データは示さない)ため、これらの効果は、CNS内でのそれらの化合物の直接効果である可能性が高い。
【0227】
治療および未治療TgCRND8マウスからの脳ホモジネートにおいて、APPホロタンパク質レベル、APPグリコシル化レベル、APP−αもしくはAPP−βレベル、またはAβ種分化レベル(すなわち、Aβ1〜38レベル)に変化はなかった(データは示さない)。同様に、血漿Aβ42レベルによって測定すると、Aβの抹消分布は、治療および未治療TgCRND8マウス間で差がなかった。月齢5ヶ月での28日のシクロヘキサンヘキソール治療後のTgCRND8マウスのコホートにおける血漿Aβ42レベルは:未治療=1144±76pg/mL;エピ−シクロヘキサンヘキソール=1079±79pg/mL;シロ−シクロヘキサンヘキソール=990±73pg/mL;p=0.87であった。末梢/血漿Aβ42における変化の不在は、血漿Aβレベルが、強い抗体応答およびAβ免疫療法後に明らかな臨床的改善を顕示した患者においても不変であったため、妥当であり得る[4]。
【0228】
シクロヘキサンヘキソール立体異性体が、脳内でのAβオリゴマー化を阻害する可能性、それらがインビトロで明確に有する活性[10、11]、に直接取り組むために、ドットブロットイムノアッセイ[18]を用いて、治療および未治療TgCRND8マウスの脳内のAβオリゴマーのレベルを測定した。このアッセイは、オリゴマーAβ種を選択的に識別する抗体を利用する[18]。可溶性Aβオリゴマーのレベルは、治療マウスの脳では有意に減少され、これらの減少は、これらの化合物によって誘導される行動改善度および神経病態改善度に見合っていた(図2A)。Aβオリゴマーは、病状が存在する月齢5ヶ月TgCRND8マウスにおけるエピ−シクロヘキサンヘキソールでの1ヶ月の治療後、有意に減少されなかった(未治療TgCRND8における56±4ピクセル 対 エピ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8における47±2ピクセル、p=0.12)。週齢5ヶ月でのシロ−シクロヘキサンヘキソールでの遅延28日治療は、可溶性Aβオリゴマーの30%減少も生じさせた(未治療TgCRND8における63±3ピクセル 対 シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8における45±2ピクセル、p=0.008)。ドットブロットは、TgCRND8脳ホモジネートにおいてAβに対するその抗体の特異性を明示するタウ,α−シヌクレインおよびチューブリンに対する交差反応性については陰性であった。これらの結果は、エピ−シクロヘキサンヘキソールではなく、シロ−シクロヘキサンヘキソールが、脳内の可溶性Aβオリゴマーの量を減少させることを直接明示している。
【0229】
シロ−シクロヘキサンヘキソールがAβオリゴマー誘発性神経毒性を阻害する可能性に取り組むために、TgCRND8マウスの脳におけるシナプトフィジン免疫反応性レベルによって測定して、マウス海馬スライスにおける長期増強(LTP)とシナプス密度の両方に対するその効果を判定した。海馬LTPは、シナプス可塑性の尺度であり、天然細胞由来のオリゴマーAβ種によって破壊されることが証明されている[19]。ラットにおいて以前に報告されているように[19、20]、ヒトAPPV717Fで安定的にトランスフェクトされたCHO細胞(7PA2細胞)の調整培地に分泌された可溶性Aβオリゴマーは、野生型マウス海馬スライスにおいてLTPを阻害した(図2B)。しかし、7PA2−調整培地をシロ−シクロヘキサンヘキソールでインビトロで前処理した場合、7PA2−調整培地単独と比較してLTPが有意に回復した(p=0.003;図2B)。ヒトAPPでトランスフェクトしていないプレーンCHOからのシロ−シクロヘキサンヘキソール処理培養基(図2C)およびこれらの細胞からの未処理培養基をシロ−シクロヘキサンヘキソール処理7A2培養基と区別できなかった、すなわち、3つすべてのサンプルがLTPを可能にしたので、シロ−シクロヘキサンヘキソールは、LTPに対する直接効果を有さなかった。シロ−シクロヘキサンヘキソールは、増強性強縮が不在の場合、シナプス応答を変化させかった(データは示さない)ので、LTP効果は、ベースライン伝達が改変された結果ではなかった。
【0230】
AZD−103の2つのエナンチオマーを試験して、LTPの奪還が化合物のこのファミリーの中で立体特異的であるかどうかを確立した。合成Aβ42細胞毒性からニューロンを保護するエピ−イノシトール(エピ−シクロヘキサンヘキソール)もLTPを奪還したが、合成Aβ42神経毒性のアッセイにおいて不活性であるシロ−イノシトール(シロ−シクロヘキサンヘキソール)は、効果がなかった。
シナプス機能に対してインビボ効果を有するスライス培養物中のLTPの増強の相関関係をみるために、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療および未治療TgCRND8マウスの海馬のCA1領域におけるシナプトフィジン免疫反応性レベルを測定した。シナプトフィジン免疫反応性は、シナプス機能と相関するシナプス密度の尺度である。シナプトフィジンのレベルは、有意に増加された。従って、シロ−シクロヘキサンヘキソールは、海馬のCA1領域におけるシナプトフィジン反応性膿疱および細胞体の数を、予防試験群については148%(未治療TgCRND8マウスにおける1610±176/100μm2 対 シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスにおける2384±232/100μm2;p=0.03)および遅延治療試験については150%(未治療での1750±84/100μm2 対 シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスにおける2625±124/100μm2;p<0.001)増加させた。合わせて、LTPおよびシナプトフィジン試験の結果は、脳において、シロ−シクロヘキサンヘキソールが、自然分泌ヒトAβオリゴマーによって誘導されるTLPの阻害を回復させ、シナプス機能の維持を可能にすることができることを示唆している。
【0231】
また、シロ−イノシトールをTgCRND8マウスに2ヶ月間投与し、月齢7ヶ月で終えた。これらの治療動物において、認知と病状の両方に対する持続的効果が観察された。
【0232】
(実施例2)
Aβ凝集のシクロヘキサンヘキソール系阻害剤は、アルツハイマー病のトランスジェニックモデルにおいてアルツハイマー様の特徴を予防および逆転させる。
【0233】
アルツハイマー病(AD)のトランスジェニックマウスモデルに経口投与したとき、シクロヘキサンヘキソール立体異性体は、これらのマウスにおける脳内のアミロイドβ−ペプチド(Aβ)の凝集を阻害し、認知障害、シナプス生理機能改変、脳Aβおよび死亡加速をはじめとする幾つかのAD様表現型を改善する。これらの効果は、それらの化合物をAD様表現型の発現の前に与えるか、十分後に与えるかに関わらず、発生する。これらの化合物は、インビボでも、インビトロでも、Aβの可溶性オリゴマーを優先的にターゲットにし、アミロイド前駆体タンパク質プロセッシングに対しては効果を有さない。用量応答曲線は、アルツハイマー病の治療薬としての使用の可能性を明示している。
【0234】
多数の系統の証拠は、アミロイドβ−ペプチド(Aβ)の神経毒性オリゴマー/原線維凝集物の蓄積が、アルツハイマー病(Aβ)の病理発生における中心事象であることを示唆している。これは、(β−またはβ−セクレターゼ阻害剤での)Aβの発生の阻止、その除去の促進、またはその凝集および毒性の予防に基づく治療法を開発しようという試みにつながった。経口投与されたシクロヘキサンヘキソール系立体異性体は、ADのトランスジェニックマウスモデルのAD様行動的および神経病理学的特徴ならびに死亡加速を阻止することが判明した。
【0235】
インビボでのそれらの有効性を評価するために、アルツハイマー病の頑強マウスモデル(TgCRND8)にそれらの化合物を投与した[12]。TgcRND8マウスは、ヒトにおけるADの原因となる2つのミスセンス突然変異(KM670/671NLおよびV717F)を有するヒトアミロイド前駆体タンパク質トランスジーン(APP695)を発現する。約3ヶ月の月齢で、TgCRND8マウスは、脳Aβレベルの上昇と脳細胞外アミロイド斑の数の増加の両方を伴う進行性空間学習障害を示す[12]。月齢6ヶ月には、TgCRND8マウスの脳内のAβのレベルならびにアミロイド斑の形態、密度および分布は、ADが十分に定着したヒトの脳において見られるものと同様である[12]。ADを有するヒト患者の場合のように、このマウスモデルの生化学的、行動的および神経病理学的特徴は、死亡加速を伴う[12、13]。
【0236】
TgCRND8マウスおよび非トランスジェニック同腹子を性別および年齢を合わせたコホートに割り付け、その後、それらを用いて、2つの異なる治療パラダイムでAZD−102(エピ−シクロヘキサンヘキソール)およびAZD−103(シロ−シクロヘキサンヘキソール)の有効性を試験した。第一のパラダイムでは、シクロヘキサンヘキソールを予防薬として経口投与し、週齢6週で(すなわち、その表現型の発現前〜6週間に)治療を始め、その後、月齢4または6ヶ月まで治療を継続した。第二のパラダイムでは、これらの化合物を治療薬として投与し、(AD様表現型が既に十分定着している)月齢5ヶ月まで治療を遅延し、月齢6ヶ月まで1ヶ月間、治療を継続した。これらの実験アームそれぞれの中で、マウスは、活性化合物AZD−102もしくはAZD−103を受ける(経口投与される)または治療を受けないように、ランダムに割り付けた。これらの試験のエンドポイントは、認知機能、脳Aβレベル、神経病態、ならびに予防試験における月齢4および6ヶ月での死亡率であった。これらすべての実験の間、観察者は、遺伝子型または治療群を知らなかった。結果を図3から8および表2に示す。
【0237】
結論:
これらの実験結果は、経口投与されたAZD−103およびAZD−102が、アルツハイマー病のTgCRND8マウスモデルにおいて、AD様行動障害、神経病態、および死亡加速を有意に抑制することを明示している。重要なこととして、これらの効果は、AD様疾患の潜伏期/前発症期の間に化合物を与えるか、AD様疾患の顕性/発症期の間に与えるかに関わらず、発生する。
【0238】
(実施例3)
この実施例において説明する試験では、以下の方法を用いた。
【0239】
方法:
マウス。飲み水に入れたエピ−2−イノソーゼ、10mg/mL、をTgCRND8マウスの実験群に投与した。動物のコホートを月齢5ヶ月で試験に参加させ、1ヵ月後、転帰を分析した。あるいは、動物のコホートを週齢6週での予防試験に参加させ、月齢6ヶ月で転帰測定値を分析した。体重、毛皮の特徴およびケージ内での行動をモニターした。すべての実験は、カナダ動物管理協会ガイドラインに従って行った。
【0240】
行動試験:モーリス水迷路試験を用いて行動分析を行った(13、14)。予備的空間訓練の後、マウスは、5日間の場所判別訓練と1日4回の試験を経験し、続いて、一般的な動機づけ、学習不足および運動の問題を除外するために手がかりのある見える足場を経験した。「対象間」因子として治療(未治療、エピ−2−イノソーゼ)および遺伝子型(TgCRND8 対 非Tg)を用いる反復測定分散分析(ANOVA)に行動データを付した。運動活動のためのオープンフィールド試験を、以前に記載されたとおりに行った(9)。自発的運動活動の指標として、歩行、休止、行動開始、毛づくろいを分析した。
【0241】
脳Aβ含量。半脳サンプルを緩衝スクロース溶液で均質化し、その後、可溶性Aβレベルのために0.4%ジエチルアミン/100mM NaClで、または全Aβの単離のために冷ギ酸で均質化した[22]。中和後、それらのサンプルを希釈し、市販のキット(BIOSOURCE International)を使用してAβ40およびAβ42について分析した。それぞれの脳半球を三重反復で分析し、その平均値±SEMを報告した。血漿は、希釈し、直接ELISAを実行した。
【0242】
生存調査:死亡が発生するたびに生存の確率を算定し、そのようにして小さなサンプルサイズに適するものにするKaplan Meier技術[31]によって、生存の確率を評価した。生存分析のために、各治療群につき30匹のマウスを使用した。Tarone−Ware試験を用いて、治療の効果を評価した。
【0243】
シナプトフィジン定量。
【0244】
ウエスタンブロット法によって治療および対照マウスにおけるシナプトフィジンタンパク質レベルを決定した。切片のシナプトフィジンを、抗シナプトフィジンIgG(1:40;Roche,Laval,PQ)または負荷対照としてのGAPDH IgG(1:10,000;Biodesign International)で免疫ブロットした。フィルムをスキャンし、その後、NIH Image分析を密度計測と併用して分析した。それぞれのサンプルについて、シナプトフィジン値を負荷対照に対して正規化した。統計解析は、多重比較試験としてのフィッシャーPLSDと関数ANOVAを用いて判定した。
【0245】
血液学および血清生化学分析:
犠牲にする前に血液を採取し、分析のためにサンプルをVITA−TECH laboratories(カナダ、オンタリオ州、Markham)に送った。基準値は、ZhouおよびHansson[32]から得た。
【0246】
結果:
疾病を有するTgCRND8マウスの治療
顕症期の疾病を示すTgCRND8マウスの認知および病理学的特性に対するエピ−2−イノソーゼの効果を調査した。この試験は、1ヶ月間、飲み水に入れたエピ−2−イノソーゼを投与したまたは未治療の、月齢5ヶ月の10匹のマウスから成るものであった。月齢6ヶ月で、空間記憶のモーリス水迷路試験にマウスを参加させて、認知に対する効果を試験した[13、14](図9)。このコホートにおいて、未治療の月齢6ヶ月TgCRND8マウスは、それらの非Tg同腹子と比較して、隠された足場を見つけるために、どの日も、より長い泳路を必要とした(遺伝子型効果:p<0.0001;訓練日効果:p=0.0005)が、水泳速度には有意な差がなかった(p>0.05)。治療は、非Tg同腹子の行動に対して効果を有さなかった(治療効果:p=0.67;訓練日効果:p<0.0001;図9A、B)。エピ−2−イノソーゼは、未治療TgCRND8マウスと比較して、TgCRND8マウスの認知を有意に改善し、p=0.01、ならびに治療nTg同腹子とは有意な差がなかった(p=0.09)。この改善された遂行能力も、栄養およびカロリーの影響によるものでなかった。治療および未治療コホート間で、体重、活動および毛皮の状態に差がなかったからである。いずれの治療群の間でも性別の影響は有意でなかった(p=0.85)。マウスのすべてのコホートが、モーリス水迷路試験の手がかりのあるバージョンで十分同等に動作したので、治療によって視力は変わらなかった(P=0.68)。
【0247】
Aβ40およびAβ42特異的ELISAを用いて、Aβ負荷量を検査した。Aβ40/42ELISAの結果を表3に示す。血漿Aβ42レベルを図10に示す。
【0248】
エピ−2−イノソーゼでのTgCRND8マウスの予防的治療
エピ−2−イノソーゼ投与前のアミロイド斑の存在が、CNS内の不溶性Aβの蓄積増進に一定の役割を果すかどうか判定するために、疾病表現型の発現前に、TgCRND8マウスの新たなコホートに、エピ−2−イノソーゼを投与した。予防試験では、TgCRND8マウスを、週齢6週間から月齢6ヶ月まで、エピ−2−イノソーゼで治療した。その後、モーリス水迷路試験からの行動データを、反復測定ANOVAを用いて、泳路長について分析した。TgCRND8マウスにおける空間学習の分析は、これらの治療マウスが、それらの未治療TgCRND8同腹子と比較して良好な認知機能を有し(p=0.07)、訓練日3から5に関して統計学的な差がある(p<0.01)ことを示した(図9C、D)。エピ−2−イノソーゼ治療TgCRND8マウスは、いずれの試験日においても非Tg同腹子とは差があった(治療効果:p=0.02)が、試験日4および5における非Tgの行動に近かった(データは示さない)。1ヶ月治療パラジウムにおいて見られるように、エピ−2−イノソーゼ投与は、非Tgマウスの認知能力に対して効果を有さず(治療効果:p=0.51;図9)、これは、エピ−2−イノソーゼ治療の有益効果が、行動、運動または知覚系に対する非特異的効果によるものでないことを示唆していた。時間のかかった行動開始、毛づくろい、歩行および停止をパラメータとして用いたとき、オープンフィールド試験によって治療TgCRND8マウス、未治療TgCRND8マウス(P=0.92)および非Tg同腹子(P=0.69)間の区別ができなかったからことから、延長エピ−2−イノソーゼ治療は、マウスの認知または感覚運動行動に対して効果を有さなかった(図11)。これらの結果は、エピ−2−イノソーゼ予防的治療も、ADのTgCRND8マウスモデルにおける認知機能に対して有益効果を有することを示唆している。
【0249】
TgCRND8マウスは、死亡が加速され、AD様表現型が十分に定着してきた月齢6ヶ月には、未治療TgCRND8マウスのうちの60%しか生存せず、これらの事象の殆どが、最初の3ヶ月の月齢の間に発生した(図12)。生存は、エピ−2−イノソーゼでの予防的治療によって有意に改善され、生存を50%改善した(p=0.01)。治療TgCRND8マウスの生存増加は、カロリー摂取量増加に帰するものではなかった。エピ−2−イノソーゼは、野生型マウスの生存、体重、毛皮の状態、またはケージ行動には効果を有さなかったからである。さらに、血清生化学により、エピ−2−イノソーゼで治療したTgおよび非Tg、両方のマウスにおける正常な腎臓、心臓、肝臓および膵臓機能が実証された(表4)。
【0250】
シナプス刈り込みは、ヒトADおよび多数のトランスジェニックモデルにおけるAD様疾患、両方の特徴である。これは、Aβオリゴマーの慢性シナプス毒性作用を反映し得、これらのモデルにおける認知障害の形態学的相関を表す可能性が高い。シナプス密度に対するエピ−2−イノソーゼのインビボ効果を検査するために、治療および未治療TgCRND8マウスの海馬におけるシナプトフィジン免疫活性レベルをウエスタンブロット分析によって測定した。シナプトフィジンのレベルは、予防試験および治療試験、両方からのTgCRND8マウスの脳において、有意に増加された(図13)。例えば、エピ−2−イノソーゼは、海馬におけるシナプトフィジン反応性の量を予防研究では33%増加させ(p=0.01)、遅延治療研究では15%増加させた(p=0.004)。
【0251】
本発明は、本明細書に記載する特定の実施形態によって範囲が限定されることはない。こうした実施形態を、本発明の1つの態様の単なる実例と考えているからであり、いずれの機能的に等価の実施形態も本発明の範囲内である。実際、本明細書において示し、説明したものに加えて、本発明の様々な変形が、上述の説明および添付の図面から、当業者には明らかになるだろう。そうした変形は、添付のクレームの範囲に入ると解釈される。
【0252】
本明細書の中で参照しているすべての文献、特許および特許出願は、あたかもそれぞれの個々の出版物、特許または特許出願が、全文、参照より本明細書に取り入れられていると具体的に且つ個々に示されているのと同程度に、参照より本明細書に取り入れられている。本明細書中の任意の参考文献の引用は、そうした参考文献を先行技術として本発明に利用できることの是認ではない。
【0253】
【表1】
【0254】
【表2】
【0255】
【表3】
【0256】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0257】
本発明は、図面を参照することで、より良好に理解されるであろう:
【図1−1】月齢5ヶ月で開始する28日の治療後の月齢6ヵ月のマウスにおける空間参照記憶試験(治療アーム当たりマウス n=10)を行った。エピ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスの遂行能力は、未治療TgCRND8同腹子と異ならず(p=0.27;図1A)、非Tg同腹子を基準にして障害のあるままであった(F1,14=11.7、p=0.004;図1C)。対照的に、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスは、未治療TgCRND8同腹子より有意に良好であり(p=0.01;図1B)、非Tg同腹子と区別できなかった(F1,13=2.9、p=0.11;図1D)。環交差指数を使用するプローブ試験により、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療マウスは、非Tg同腹子と統計学的に差がないことが実証された(p=0.64、図1E)。縦棒は、s.e.m.を表す。1ヶ月のシロ−シクロヘキサンヘキソール治療の後、マウスは、海馬に高い斑負荷量を有する対照動物と比較して、低い斑負荷量を有した(図1F、図1G)。斑負荷量は、抗Aβ抗体(褐色)を使用して同定し、抗GFAP抗体(赤)を使用して星状細胞を標識した。縮尺棒300μm。
【図1−2】月齢5ヶ月で開始する28日の治療後の月齢6ヵ月のマウスにおける空間参照記憶試験(治療アーム当たりマウス n=10)を行った。エピ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスの遂行能力は、未治療TgCRND8同腹子と異ならず(p=0.27;図1A)、非Tg同腹子を基準にして障害のあるままであった(F1,14=11.7、p=0.004;図1C)。対照的に、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスは、未治療TgCRND8同腹子より有意に良好であり(p=0.01;図1B)、非Tg同腹子と区別できなかった(F1,13=2.9、p=0.11;図1D)。環交差指数を使用するプローブ試験により、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療マウスは、非Tg同腹子と統計学的に差がないことが実証された(p=0.64、図1E)。縦棒は、s.e.m.を表す。1ヶ月のシロ−シクロヘキサンヘキソール治療の後、マウスは、海馬に高い斑負荷量を有する対照動物と比較して、低い斑負荷量を有した(図1F、図1G)。斑負荷量は、抗Aβ抗体(褐色)を使用して同定し、抗GFAP抗体(赤)を使用して星状細胞を標識した。縮尺棒300μm。
【図1−3】月齢5ヶ月で開始する28日の治療後の月齢6ヵ月のマウスにおける空間参照記憶試験(治療アーム当たりマウス n=10)を行った。エピ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスの遂行能力は、未治療TgCRND8同腹子と異ならず(p=0.27;図1A)、非Tg同腹子を基準にして障害のあるままであった(F1,14=11.7、p=0.004;図1C)。対照的に、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスは、未治療TgCRND8同腹子より有意に良好であり(p=0.01;図1B)、非Tg同腹子と区別できなかった(F1,13=2.9、p=0.11;図1D)。環交差指数を使用するプローブ試験により、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療マウスは、非Tg同腹子と統計学的に差がないことが実証された(p=0.64、図1E)。縦棒は、s.e.m.を表す。1ヶ月のシロ−シクロヘキサンヘキソール治療の後、マウスは、海馬に高い斑負荷量を有する対照動物と比較して、低い斑負荷量を有した(図1F、図1G)。斑負荷量は、抗Aβ抗体(褐色)を使用して同定し、抗GFAP抗体(赤)を使用して星状細胞を標識した。縮尺棒300μm。
【図2A】シロ−シクロヘキサンヘキソールおよびエピ−シクロヘキサンヘキソール治療および未治療TgCRND8マウスにおける可溶性オリゴマーAβのドットブロット分析(図2A)。予防研究からの4匹の代表の月齢4および6ヶ月未治療および治療TgCRND8マウスから、ならびに治療していないおよび治療した月齢5ヶ月治療群から単離した可溶性タンパク質を、ニトロセルロースに塗布し、オリゴマー特異的抗体でプローブし、その後、6E10で再びプローブした。合成Aβ42、モノマー状(下の列、レーン1および2)および原線維状(レーン3および4)を、可溶性凝集物のみを認識するオリゴマー特異的抗体についての陰性対照として使用した。6E10は、すべてのAβ種を認識する(下のレーン、右の4レーン)。長期増強は、可溶性Aβオリゴマーによって遮断され(図2B;緑四角)、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療によって奪還される(図2B;青丸)。LTPは、Aβオリゴマーを含有するシロ−シクロヘキサンヘキソール治療7PA2培養基(図2C;赤四角;図2Bと同じデータ)およびオリゴマーがないプレーンCHO培地(図2C;青丸)による影響を受けない。
【図2B】シロ−シクロヘキサンヘキソールおよびエピ−シクロヘキサンヘキソール治療および未治療TgCRND8マウスにおける可溶性オリゴマーAβのドットブロット分析(図2A)。予防研究からの4匹の代表の月齢4および6ヶ月未治療および治療TgCRND8マウスから、ならびに治療していないおよび治療した月齢5ヶ月治療群から単離した可溶性タンパク質を、ニトロセルロースに塗布し、オリゴマー特異的抗体でプローブし、その後、6E10で再びプローブした。合成Aβ42、モノマー状(下の列、レーン1および2)および原線維状(レーン3および4)を、可溶性凝集物のみを認識するオリゴマー特異的抗体についての陰性対照として使用した。6E10は、すべてのAβ種を認識する(下のレーン、右の4レーン)。長期増強は、可溶性Aβオリゴマーによって遮断され(図2B;緑四角)、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療によって奪還される(図2B;青丸)。LTPは、Aβオリゴマーを含有するシロ−シクロヘキサンヘキソール治療7PA2培養基(図2C;赤四角;図2Bと同じデータ)およびオリゴマーがないプレーンCHO培地(図2C;青丸)による影響を受けない。
【図2C】シロ−シクロヘキサンヘキソールおよびエピ−シクロヘキサンヘキソール治療および未治療TgCRND8マウスにおける可溶性オリゴマーAβのドットブロット分析(図2A)。予防研究からの4匹の代表の月齢4および6ヶ月未治療および治療TgCRND8マウスから、ならびに治療していないおよび治療した月齢5ヶ月治療群から単離した可溶性タンパク質を、ニトロセルロースに塗布し、オリゴマー特異的抗体でプローブし、その後、6E10で再びプローブした。合成Aβ42、モノマー状(下の列、レーン1および2)および原線維状(レーン3および4)を、可溶性凝集物のみを認識するオリゴマー特異的抗体についての陰性対照として使用した。6E10は、すべてのAβ種を認識する(下のレーン、右の4レーン)。長期増強は、可溶性Aβオリゴマーによって遮断され(図2B;緑四角)、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療によって奪還される(図2B;青丸)。LTPは、Aβオリゴマーを含有するシロ−シクロヘキサンヘキソール治療7PA2培養基(図2C;赤四角;図2Bと同じデータ)およびオリゴマーがないプレーンCHO培地(図2C;青丸)による影響を受けない。
【図3−1】シクロヘキサンヘキソールは、TgCRND8マウスにおける行動を改善する。TgCRND8マウスにおけるモーリス水迷路試験の空間参照記憶バージョン(治療アーム当たりn=8〜10)を認知の測定法として用いた。月齢4ヶ月では、未治療TgCRND8マウスは、AZD−102(エピ−シクロヘキサンヘキソール)(A)およびAZD−103(シロ−シクロヘキサンヘキソール)(B)治療マウスを基準にして、認知障害を示す(F2,26=3.99、p=0.03)。AZD−102治療マウス(C)は、治療および未治療非Tgマウスと有意な差があった(F1,18=11.7、p=0.004)が、AZD−103治療マウス(D)は、非Tgマウスのものに近かった(F1,17=2.89、p=0.97)。月齢6ヶ月では、未治療TgCRND8は、非Tg対照(F1,30=31.16、p<0.001)ならびにAZD−102(E)およびAZD−103(F)治療マウス(F2,36=4.1、p<0.02)を基準にして、認知障害を示した。AZD−102治療TgCRND8マウス(F1,21=2.35、p=0.14;G)とAZD−102の両方の遂行能力が、非Tg同腹子のもの(F1,22=3.26、p=0.44;D)に近かった。非Tg同腹子の行動は、AZD−102(G)およびAZD−103(H)治療のいずれによる影響も受けなかった(F2,37=0.83、p=0.45)。
【図3−2】シクロヘキサンヘキソールは、TgCRND8マウスにおける行動を改善する。TgCRND8マウスにおけるモーリス水迷路試験の空間参照記憶バージョン(治療アーム当たりn=8〜10)を認知の測定法として用いた。月齢4ヶ月では、未治療TgCRND8マウスは、AZD−102(エピ−シクロヘキサンヘキソール)(A)およびAZD−103(シロ−シクロヘキサンヘキソール)(B)治療マウスを基準にして、認知障害を示す(F2,26=3.99、p=0.03)。AZD−102治療マウス(C)は、治療および未治療非Tgマウスと有意な差があった(F1,18=11.7、p=0.004)が、AZD−103治療マウス(D)は、非Tgマウスのものに近かった(F1,17=2.89、p=0.97)。月齢6ヶ月では、未治療TgCRND8は、非Tg対照(F1,30=31.16、p<0.001)ならびにAZD−102(E)およびAZD−103(F)治療マウス(F2,36=4.1、p<0.02)を基準にして、認知障害を示した。AZD−102治療TgCRND8マウス(F1,21=2.35、p=0.14;G)とAZD−102の両方の遂行能力が、非Tg同腹子のもの(F1,22=3.26、p=0.44;D)に近かった。非Tg同腹子の行動は、AZD−102(G)およびAZD−103(H)治療のいずれによる影響も受けなかった(F2,37=0.83、p=0.45)。
【図4】シクロヘキサンヘキソールは、TgCRND8マウスの病理学的特徴を改善する。血管Aβ負荷量を、治療および未治療TgCRND8マウスの連続矢状切片で定量した。TgCRND8マウスは、小および中サイズの血管に関連付けられる有意な血管Aβ負荷量を有し;この負荷量は、AZD−103治療TgCRND8マウスでは減少された(A)。AZD−103治療は、未治療およびエピ−イノシトール治療TgCRND8マウスと比較して、総血管負荷量を有意に減少させた。Tg CRND8マウスは、CNS中のAβレベル増加への星状神経膠細胞症性応答を明らかに示し、AZD−102での治療は、月齢4ヶ月でも、6ヶ月でも、星状神経膠細胞症に覆われた脳の面積率を減少させた(B)。AZD−103治療は、両方の月齢で、より大きな程度に星状神経膠細胞症性応答を減少させた(B)。同様に、小神経膠細胞症は、TgCRND8マウスにおける斑負荷と相関した(C)。AZD−102での治療も、より大きな程度にAZD−103での治療も、小神経膠細胞症で覆われた脳の面積率を減少させた。Kaplan Meier累積生存プロットは、未治療TgCRND8マウス(灰色の丸)と比較して、AZD−103での治療後にTgCRND8マウスの生存増加を明らかに示している(薄い灰色の丸;p=0.02)。AZD−102は、有意には生存を改善しなかった(黒丸)(D)。ANOVA *P<0.05、**p<0.001。
【図5】月齢6ヶ月で、未治療のTgCRND8マウス、AZD−102およびAZD−103治療マウスにおいて斑負荷量および星状神経膠細胞症を検査した。対照動物は、海馬および大脳皮質に高い斑負荷量および星状神経膠細胞症を有する。より高い倍率は、星状神経膠細胞活性化が、斑負荷量にのみ関係するわけではないことをはっきりと示す。AZD−102治療は、アミロイド負荷量に対してささやかな効果を有し、星状神経膠細胞症を減少させる。AZD−103治療は、アミロイド負荷量および神経膠細胞症を有意に減少させた。抗GFAP抗体で標識された星状神経膠細胞(赤)および抗Aβ抗体で同定された斑負荷(褐色)。縮尺棒300μmまたは62.5μm。
【図6A】空間記憶バージョンのモーリス水迷路試験の終りにキューテストを行った。足場の上に旗を置いた。すべての治療群について、その足場に到達するために必要とされる路長は類似しており(p=0.78)、これは、治療が視力に影響を及ぼさないことを示している(D)。毛づくろい(A)、休止(B)および歩行(C)の継続時間についてのこのオープンフィールド試験は、AZD−103が、TgCRND8マウスまたはそれらの非Tg同腹子における活性レベルに影響を及ぼさないことを裏付ける。
【図6B】空間記憶バージョンのモーリス水迷路試験の終りにキューテストを行った。足場の上に旗を置いた。すべての治療群について、その足場に到達するために必要とされる路長は類似しており(p=0.78)、これは、治療が視力に影響を及ぼさないことを示している(D)。毛づくろい(A)、休止(B)および歩行(C)の継続時間についてのこのオープンフィールド試験は、AZD−103が、TgCRND8マウスまたはそれらの非Tg同腹子における活性レベルに影響を及ぼさないことを裏付ける。
【図6C】空間記憶バージョンのモーリス水迷路試験の終りにキューテストを行った。足場の上に旗を置いた。すべての治療群について、その足場に到達するために必要とされる路長は類似しており(p=0.78)、これは、治療が視力に影響を及ぼさないことを示している(D)。毛づくろい(A)、休止(B)および歩行(C)の継続時間についてのこのオープンフィールド試験は、AZD−103が、TgCRND8マウスまたはそれらの非Tg同腹子における活性レベルに影響を及ぼさないことを裏付ける。
【図6D】空間記憶バージョンのモーリス水迷路試験の終りにキューテストを行った。足場の上に旗を置いた。すべての治療群について、その足場に到達するために必要とされる路長は類似しており(p=0.78)、これは、治療が視力に影響を及ぼさないことを示している(D)。毛づくろい(A)、休止(B)および歩行(C)の継続時間についてのこのオープンフィールド試験は、AZD−103が、TgCRND8マウスまたはそれらの非Tg同腹子における活性レベルに影響を及ぼさないことを裏付ける。
【図7】ヒトAPPsweでトランスフェクトしたHEK293細胞におけるインビトロγ−セクレターゼアッセイ。swAPP安定性HEK293細胞を処理しないか、AZD−103または10nMの化合物Eで処理した後、細胞膜を、APP−FLおよび−CTF検出のために、ならびに37℃で1時間のe−スタブ生成インビトロアッセイのために使用した。レーン1および2。90μg/mL AZD−103処理;レーン3および4 900ug/mL AZD−103処理;レーン5および6 化合物Eで処理したもの、ならびにレーン7および8 未処理HEK293 APPswe細胞。
【図8A】AZD−102およびAZD−103治療および未治療TgCRND8マウスにおける可溶性オリゴマーAβのドットブロット分析(A、B)。予防試験(実験アーム当たりn=8〜10)からの月齢4ヶ月および6ヶ月未治療(黒棒)および治療(細かい平行線が引かれた棒)TgCRND8マウスすべてから、ならびに治療していない(黒棒)および治療した(細かい平行線が引かれた棒)月齢5ヶ月治療群(実験アーム当たりn=8〜10)から単離した可溶性タンパク質をニトロセルロース塗布し、オリゴマー特異的抗体でプローブし、その後、6E10で再びプローブした。予防パラダイムと治療パラダイムの両方でのAZD−103治療後、CA1領域においてシナプトフィジン反応性が増加された(C)(各実験アームにつき、n=3)。対照的に、TgTauP301Lマウスでは、治療後、シナプトフィジン反応性が変わらなかった(治療したものおよび未治療のものについて、n=3)。
【図8B】AZD−102およびAZD−103治療および未治療TgCRND8マウスにおける可溶性オリゴマーAβのドットブロット分析(A、B)。予防試験(実験アーム当たりn=8〜10)からの月齢4ヶ月および6ヶ月未治療(黒棒)および治療(細かい平行線が引かれた棒)TgCRND8マウスすべてから、ならびに治療していない(黒棒)および治療した(細かい平行線が引かれた棒)月齢5ヶ月治療群(実験アーム当たりn=8〜10)から単離した可溶性タンパク質をニトロセルロース塗布し、オリゴマー特異的抗体でプローブし、その後、6E10で再びプローブした。予防パラダイムと治療パラダイムの両方でのAZD−103治療後、CA1領域においてシナプトフィジン反応性が増加された(C)(各実験アームにつき、n=3)。対照的に、TgTauP301Lマウスでは、治療後、シナプトフィジン反応性が変わらなかった(治療したものおよび未治療のものについて、n=3)。
【図8C】AZD−102およびAZD−103治療および未治療TgCRND8マウスにおける可溶性オリゴマーAβのドットブロット分析(A、B)。予防試験(実験アーム当たりn=8〜10)からの月齢4ヶ月および6ヶ月未治療(黒棒)および治療(細かい平行線が引かれた棒)TgCRND8マウスすべてから、ならびに治療していない(黒棒)および治療した(細かい平行線が引かれた棒)月齢5ヶ月治療群(実験アーム当たりn=8〜10)から単離した可溶性タンパク質をニトロセルロース塗布し、オリゴマー特異的抗体でプローブし、その後、6E10で再びプローブした。予防パラダイムと治療パラダイムの両方でのAZD−103治療後、CA1領域においてシナプトフィジン反応性が増加された(C)(各実験アームにつき、n=3)。対照的に、TgTauP301Lマウスでは、治療後、シナプトフィジン反応性が変わらなかった(治療したものおよび未治療のものについて、n=3)。
【図9】月齢5ヶ月で開始する28日の治療後の月齢6ヶ月のマウスにおいて空間参照記憶試験を行った。エピ−2−イノソーゼ治療TgCRND8マウスの遂行能力は、未治療TgCRND8同腹子より有意に良好であり(p=0.01;A)、非Tg同腹子と有意な差がなかった(p=0.06;B)。エピ−2−イノソーゼは、未治療非Tgマウスと比較して、非Tg同腹子の行動に効果を有さなかった(p=0.67;C)。月齢6ヶ月で、未治療TgCRND8は、非Tg対照(データは示さない)および週齢6週から予防的にエピ−2−イノソーゼで治療したマウスを基準して、認知障害を示す(C)。両方のエピ−2−イノソーゼ治療TgCRND8マウスの遂行能力が、非Tg同腹子のものに近かった(D)。縦棒は、s.e.m.を表す。
【図10】1ヶ月治療後のTgCRND8におけるエピ−2−イノソーゼでの治療後の血漿Aβのレベル。
【図11】毛づくろい、休止および歩行の継続時間についてのこのオープンフィールド試験は、エピ−2−イノソーゼが、TgCRND8マウス(黒棒)またはそれらの非Tg同腹子(細かい平行線が引かれた棒)における活性レベルに影響を及ぼさないことを裏付ける。値は、平均±標準誤差。
【図12】Kaplan Meier累積生存プロットは、未治療TgCRND8マウス(ピンクの丸)と比較して、エピ−2−イノソーゼでの治療後のTgCRND8マウスの生存増加を明らかに示している(橙色の丸;p=0.01)。
【図13】エピ−2−イノソーゼ治療の結果としてのTgCRND8マウスにおけるシナプス密度の尺度として、シナプトフィジン免疫反応性を用いた。6ヶ月予防および治療パラダイム、両方でのエピ−2−イノソーゼ治療後にシナプトフィジン反応性が増加された(各実験アームについて、n=3)、未治療(黒棒)、被治療(灰色の棒)。
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年2月17日に出願された、米国仮特許出願第60/774,818号に対する、米国特許法第119(e)条の下での優先権の利益を主張する。米国仮特許出願第60/774,818号は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、エピ−イノシトール化合物および組成物、ならびにそれらの組成物についての方法および使用、特に、異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾病を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
多数の一連の証拠は、アミロイドβ−ペプチド(Aβ)の神経毒性オリゴマー/原線維凝集物の蓄積が、アルツハイマー病(AD)の病理発生の中心事象であることを示唆している[1、2]。これは、(β−もしくはγ−セクレターゼ阻害剤での)Aβの発生の阻害、その除去の促進、またはその凝集および毒性の予防に基づく治療法を開発しようという試みにつながった。ADのための抗Aβ療法の潜在的有用性は、ワクチンの臨床試験からの試験的支持を受けており、これは、AD患者の小コホートにおける臨床的および神経病理学的改善を示唆していた[3、4]。しかし、抗Aβワクチンは、一部の患者においてT細胞媒介髄膜脳炎も誘導し、このため、この特定のワクチンは広範にわたる臨床使用に適さない[非特許文献1]。それにもかかわらず、Aβワクチンは、一部のマウスモデルにおいて、Aβ原線維発生および毒性の抗体媒介阻害によって作用することが証明されている[非特許文献2〜4]。従って、免疫療法の潜在的リスクを回避するAβ凝集の小分子阻害剤を同定することは、望ましいことである。
【非特許文献1】Orgogozo,J.M.ら、Neurology 61,46−54(2003)
【非特許文献2】Schenk D.ら、Nature 400,173−177(1999)
【非特許文献3】McLaurin,J.ら、Nat.Med.8,1263−1269(2002)
【非特許文献4】Golde,T.E.J.Clin.Invest.111,11−18(2003)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、対象における本明細書に開示する疾患および/または疾病を治療するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物をその対象に投与することを含む。1つの態様において、本発明は、治療後に有益効果をもたらす治療を提供する。本発明の方法は、本明細書に開示する疾患および/または疾病にかかりやすい対象において治療的に用いることができ、または予防的に用いることができる。
【0005】
1つの態様において、本発明は、対象における異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾患および/または疾病を治療するための方法を提供し、この方法は、単離された、純粋な、特に、実質的に純粋な、エピ−イノシトール化合物を含む。特に、本発明は、タンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存の異常に関連した中枢もしくは末梢神経系または全身器官の状態を対象において治療するための方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物をその対象に投与することを含む。
【0006】
もう1つの態様において、本発明は、アミロイド形成、沈着、蓄積および/もしくは残存を阻害する、ならびに/または既存アミロイドの溶解/破壊を生じさせる、治療用エピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。従って、本発明のエピ−イノシトール化合物および組成物は、アミロイド沈着が発生する疾患においてアミロイドーシスを抑制するために使用することができる。
【0007】
もう1つの態様において、本発明は、対象において、アミロイドタンパク質集合を予防または阻害する、アミロイド沈着物のクリアランスを強化する、またはアミロイド沈着物の沈着を遅速させるための方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物をその対象に投与することを含む。
【0008】
1つの態様において、本発明は、対象におけるアミロイド原線維形成、器官特異的機能不全(例えば、神経変性)または細胞毒性を減少または抑制するための方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物をその対象に投与することを含む。
【0009】
もう1つの態様において、本発明は、エピ−イノシトール化合物で破壊または解離させることができるアミロイド相互作用に関連した状態を対象において治療するための方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物をその対象に投与することを含む。
【0010】
本発明は、アミロイド沈着、特にアミロイドーシスを特徴とする疾患および/または疾病、さらに特にアルツハイマー病の治療に、特に適用される。従って、本発明は、アミロイド沈着、さらに特にアルツハイマー病、の症状を有する対象に投与すると、有益効果、好ましくは持続的有益効果、を生じる、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む治療方法に関する。1つの実施形態において、有益効果は、次のうちの1つ以上によって証明される:凝集したAβの破壊、シナプス機能の長期増強および/もしくは維持の抑制増大、ならびに/またはAβの脳蓄積、脳アミロイド斑沈着、神経膠活性、炎症および/もしくは認知低下の減少。
【0011】
本発明は、加齢プロセスに関連した記憶、特に短期記憶、および他の精神機能障害を改善するための方法にさらに関し、この方法は、有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。特に、本発明は、有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することによる、健常対象の記憶または加齢性記憶障害を有する対象の記憶を改善する方法を提供する。1つの実施形態において、記憶を改善する必要がある哺乳動物(この場合の哺乳動物は、記憶を損なわせるまたは別様に低下させることが知られている疾病、疾患、虚弱または病気と診断されていない)を治療するための方法を提供し、この方法は、記憶改善有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物もしくはニュートラシューティカル的に許容される(neutraceutically acceptable)その誘導体を含む栄養補助食品を、その哺乳動物に投与する段階を含む。
【0012】
1つの態様において、本発明は、疾病(例えば、アルツハイマー病)に罹患している患者において疾病の進行を改善するまたはより重症度の低い病期を達成するための方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0013】
本発明は、疾病(例えば、アルツハイマー病)の進行を遅延させる方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0014】
本発明は、疾病に罹患している対象の生存を増加させる方法にも関し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0015】
1つの実施形態において、本発明は、アルツハイマー病に罹患している対象の寿命を改善する方法に関し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0016】
1つの態様において、本発明は、軽度認知障害(MCI)を治療するための方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0017】
1つの態様において、本発明は、個体における認知症の発症を遅延するまたは重症度を低下させる方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与して、認知症の発症を遅延させるまたは重症度を低下させることを含む。
【0018】
1つの実施形態において、本発明は、対象において認知障害およびアミロイド斑神経病態の発症後にアミロイド沈着および神経病態を逆転させる方法を提供し、この方法は、治療有効量のエピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物をその対象に投与することを含む。
【0019】
本発明のエピ−イノシトール化合物または組成物は、本明細書に開示する疾病を治療するために有効な経路によって患者に投与することができる。例示的投与経路としては、静脈内、経口、腹腔内および皮下投与経路が挙げられる。
【0020】
本発明は、エピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物と許容される担体とを含む栄養補助食品をヒトに投与することによる、健常人の食事を補うためのレジメンも含む。本発明は、エピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体をヒトに毎日投与することによる、健常人の食事を補うためのレジメンをさらに含む。
【0021】
本発明は、本明細書に記載する疾患および/または疾病、特に、タンパク質フォールディングおよび/もしくは凝集ならびに/またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存の異常、の治療に有益効果をもたらすエピ−イノシトール化合物を含む組成物、特に、医薬組成物を提供する。1つの態様において、本発明は、治療後に有益効果、特に、持続的有益効果をもたらす1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む医薬組成物を提供する。本発明の組成物によってもたらされる有益効果としては、治療効果、特に、持続的治療効果の増強を挙げることができる。
【0022】
1つの態様において、本発明は、アミロイド関連疾患の治療に有益効果をもたらすエピ−イノシトール化合物を含む組成物、特に、医薬組成物を提供する。
【0023】
本発明は、エピ−イノシトール化合物、特に、純粋なエピ−イノシトール化合物、さらに特に、実質的に純粋なエピ−イノシトール化合物を、場合によっては1つ以上の医薬的に許容される担体、賦形剤またはビヒクルと一緒に含む、有益効果、特に、持続的有益効果をもたらすために対象に投与することを意図した医薬組成物も提供する。
【0024】
本発明は、医薬的に許容される担体、賦形剤またはビヒクル中に、持続的有益効果をもたらす治療有効量のエピ−イノシトール化合物を含む、疾患および/または疾病を治療するための医薬組成物も提供する。
【0025】
1つの態様において、疾患および/または疾病を治療するために持続的有益効果をもたらす対象への投与に適応させた、エピ−イノシトール化合物を含む医薬組成物を提供する。1つの実施形態において、本組成物は、疾患および/または疾病に罹患している対象への投与が、Aβ原線維集合もしくは凝集、Aβ毒性、異常なタンパク質フォールディング、凝集、アミロイド形成、沈着蓄積もしくは残存、および/またはアミロイド脂質相互作用の阻害、減少または逆転、ならびに/あるいは既製原線維の分解の促進を結果として生じさせるような形態である。特に、本組成物は、対象において、凝集性AβもしくはAβオリゴマーの破壊、長期増強の増大もしくは回復、シナプス機能の維持;ならびに/またはアミロイドβの脳蓄積、脳アミロイド斑の沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマー、神経膠活性、炎症および/もしくは認知低下の減少を結果として生じさせる、特に、治療停止後、長期間にわたって生じさせる形態である。
【0026】
本発明は、疾患および/または疾病、特に、アミロイド沈着を特徴とする疾患および/または疾病、さらに特にアルツハイマー病、の治療に有益効果、特に持続的有益効果、をもたらすエピ−イノシトール化合物を含む組成物に関する。
【0027】
もう1つの態様において、本発明は、対象において、AβもしくはAβオリゴマーの凝集を破壊する、長期増強を増大もしくは回復させるおよび/またはシナプス機能の維持に;ならびに/あるいはアミロイドβの脳蓄積、脳アミロイド斑沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマー、神経膠活性、炎症および/または認知低下を減少させるために有効な、特に、その化合物の投与後、長期にわたって有効な用量で、エピ−イノシトール化合物を含む組成物を特徴とする。本組成物は、医薬的に許容される担体、賦形剤またはビヒクル中のものである場合もある。
【0028】
加えて、本発明は、治療後に有益効果、好ましくは持続的有益効果をもたらすようにした1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む、安定的な医薬組成物を調製する方法を提供する。本発明は、治療後に有益効果、好ましくは持続的有益効果をもたらすようにした治療有効量の1つ以上の純粋な、特に、実質的に純粋な、エピ−イノシトール化合物を含む、安定的な医薬組成物を調製する方法をさらに提供する。組成物を調製した後、それらを適切な容器に入れ、指示された状態の治療についてのラベルを貼ってもよい。本発明の組成物の投与のために、そうしたラベルは、投与の量、頻度および方法を含むであろう。
【0029】
本発明において使用するためのエピ−イノシトール化合物は、インビボで活性化合物に変換されるプロドラッグの形態であってもよい。例として、エピ−イノシトール化合物は、切断可能な基を含む場合があり、この基は、対象に投与された後に切断されて活性(例えば、治療活性)化合物、または後にその活性化合物を生じさせる中間化合物をもたらす。前記切断可能な基は、酵素的にまたは非酵素的に除去することができるエステルであってもよい。
【0030】
本発明において使用するためのエピ−イノシトール化合物は、その化合物と相互作用する担体を場合によっては含むことがある。担体としては、ポリマー、炭水化物もしくはペプチド、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。担体は、例えば、1つ以上のアルキル、ハロ、チオール、ヒドロキシルまたはアミノ基で置換されていてもよい。
【0031】
1つの態様において、本発明は、1つ以上のエピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体を含む、栄養補助食品組成物を提供する。1つの態様において、本発明は、エピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体を含む、記憶改善を目的とした、哺乳動物が消費するための、特に、人が消費するための栄養補助食品を提供する。もう1つの態様において、本発明は、そのサプリメントを摂取した個体の神経荒廃プロセスを遅速させる、および記憶、特に短期記憶を改善するための、エピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体を含むサプリメントを提供する。本発明の栄養補助食品は、好ましくは、快い味がし、体に有効に吸収され、実質的な治療効果をもたらす。
【0032】
本発明は、エピ−イノシトール化合物を含有する市販の製剤を製造する方法も提供する。
【0033】
1つの態様において、本発明のエピ−イノシトール化合物、特に、純粋なまたは実質的に純粋なエピ−イノシトール化合物、および組成物は、本明細書に開示する疾患および/または疾病、特に、アミロイド形成、凝集または沈着に関連した疾患および/または疾病を治療するために治療的または予防的に投与することができる。いずれの特定の理論による制約も受けることを望まないが、本化合物および組成物は、次のメカニズム(しかし、それらに限定されない)のうちの1つ以上を用いて疾病の経過を改善するように作用することができる:Aβ原線維もしくはAβオリゴマー集合もしくは凝集、Aβ毒性、Aβ42レベル、異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集、アミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存、および/またはアミロイド相互作用の予防、減少、逆転および/または阻害;Aβによって誘導される神経変性もしくは細胞毒性の予防、減少、逆転および/または阻害;既製原線維の分解の促進;凝集性AβもしくはAβオリゴマーの破壊もしくは解離;長期増強の増大もしくは回復;シナプス機能の維持;脳からのAβのクリアランスの強化;Aβの分解の増加;ならびに/あるいはアミロイドβの脳蓄積、脳アミロイド斑の沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマー、神経膠活性、炎症および/または認知低下の予防、減少、逆転および/または抑制。
【0034】
本発明は、疾患および/または疾病を予防および/または治療するための薬物を調製するための、少なくとも1つのエピ−イノシトール化合物を含む組成物の使用も考えている。加えて、本発明は、疾患および/または疾病の予防および/または治療のための薬物の調製における本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0035】
本発明は、対象における疾患および/または疾病を治療および/または予防するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物をその対象に投与して、有益効果をもたらすことを含む。1つの態様において、本発明は、治療後に持続的有益効果をもたらす治療を提供する。
【0036】
本発明は、エピ−イノシトール化合物、またはエピ−イノシトール化合物もしくはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体と許容される担体とを含む栄養補助食品をヒトに投与することによる、健常人の食事を補うためのレジメンも含む。本発明は、エピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体をヒトに毎日投与することによる、健常人の食事を補うレジメンをさらに含む。
【0037】
本発明は、本発明の1つ以上のエピ−イノシトール化合物または医薬組成物を含むキットも提供する。1つの態様において、本発明は、1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む組成物と、容器と、使用説明書とを収容している、疾患および/または疾病を予防および/または治療するためのキットを提供する。このキットの組成物は、医薬的に許容される担体、賦形剤またはビヒクルをさらに含むことがある。
【0038】
以下の図面および詳細な説明から、当業者には、本発明のこれらおよび他の態様、特徴および利点がはっきりとわかることだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
用語解説
終点によって本明細書に列挙する数値範囲は、その範囲内に包含されるすべての数および小数部を包含する(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4および5を含む)。すべての数およびそれらの小数部は、用語「約」によって修飾されていると仮定されていると解釈しなければならない。用語「約」は、言及されている数のプラスまたはマイナス0.1から50%、5〜50%、または10〜40%、好ましくは、10〜20%、さらに好ましくは、10%または15%を意味する。さらに、単数形の冠詞「a」、「an」および「the」は、その文脈が明確にそうでなく指示していない限り、複数の指示対象を包含すると解釈しなければならない。従って、例えば、「化合物(a compound)」を含有する組成物への言及は、2つ以上の化合物の混合物を含む。
【0040】
用語「投与すること」および「投与」は、本明細書において考えられている化合物また組成物の治療有効量が予防および/または治療目的で対象に送達されるプロセスを指す。組成物は、その対象の臨床状態、投与の部位および方法、投薬量、患者の年齢、性別、体重、および医師には公知の他の因子を考慮に入れて、正しい医療行為によって投与される。
【0041】
用語「治療すること」は、こうした用語が適用される疾患および/もしくは疾病の進行またはそうした疾患および/もしくは疾病の1つ以上の症状を逆転、緩和または抑制することを指す。対象の状態に依存して、この用語は、疾病を予防することも指し、ならびに疾病の発症を予防すること、または疾病に随伴する症状を予防することを包含する。治療は、短期的に行われる場合もあり、または長期的に行われる場合もある。この用語は、疾病の重症度またはそうした疾病に随伴する症状をその疾病で苦しむ前に減少させることも指す。苦しむ前の疾病のそのような予防または重症度の減少は、投与時点でその疾病で苦しんでいない対象への本発明の化合物または組成物の投与にあてはまる。「予防すること」は、疾病のまたはそうした疾病に随伴する1つ以上の症状の再発を予防することも指す。「治療すること」は上で定義したが、用語「治療」および「治療的に」は、治療する行為を指す。
【0042】
用語「対象」、「個体」または「患者」は、本明細書では交換可能に用いており、本明細書に開示する疾患および/または疾病で苦しんでいる、またはそれ(ら)を有する疑いがある、またはそれ(ら)の素因を有する、哺乳動物などの温血動物をはじめとする動物を指す。哺乳動物は、哺乳類の任意のメンバーが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の態様において、この用語は、ヒトを指す。この用語は、馬、牛、羊、家禽、魚、豚、猫、犬、および動物園の動物、山羊、類人猿(例えば、ゴリラまたはチンパンジー)、ならびに齧歯動物、例えばラットおよびマウスをはじめとする、食用またはペットとしての家畜も包含する。治療の代表的対象としては、本明細書に開示する疾患および/または疾病の疑いがある、それ(ら)に罹患しているまたはそれ(ら)罹患したことがあるヒトが挙げられる。対象は、本明細書に開示する疾患および/または疾病、例えばアルツハイマー病、についての遺伝的素因を有する場合もあり、または有さない場合もある。一部の態様において、対象は、認知障害およびアミロイド斑神経病態の徴候を示す。本発明の実施形態において、対象は、アルツハイマー病の疑いかある、またはアルツハイマー病に罹患している。
【0043】
本明細書で用いる場合、用語「健常対象」は、疾患および/または疾病を有さない、特に、記憶を損なわせるまたは別様に低下させることが知られている疾病、疾患、虚弱または病気と診断されていない対象、特に哺乳動物を意味する。
【0044】
用語「医薬的に許容される担体(単数もしくは複数)、賦形剤(単数もしくは複数)またはビヒクル(単数もしくは複数)は、活性成分の有効性または活性に干渉しない、およびそれを投与する宿主に対して毒性でない、媒質を指す。担体、賦形剤またはビヒクルは、希釈剤、結合剤、接着剤、滑沢剤、崩壊剤、充填剤、湿潤または乳化剤、pH緩衝剤、およびその他の材料、例えば、特定の組成物を調製するために必要とされることがある吸収剤を含む。担体などの例としては、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。活性物質のためのそうした媒質および薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。
【0045】
本明細書で用いる場合、「ニュートラシューティカル的に許容される誘導体」は、同様に機能して所期の効果を生じさせる、実質的に同様である、および生理学的に適合性である、記載の化学種の誘導体または置換体を指す。置換体の例としては、記載の化学物質の塩、エステル、水和物または複合体が挙げられるが、これらに限定されない。置換体は、後にインビボで反応を受けて記載の化学物質またはその置換体を生じさせる、記載の化学物質の前駆体またはプロドラッグであってもよい。
【0046】
用語「純粋な」は、一般に、90%、92%、95%、97%、98%または99%より良好な純度を意味し、「実質的に純粋な」は、本発明の組成物または治療用量への考慮に利用できるように作られるその化合物が、従来の精製プロセスによって容易におよび適度に除去することができない不純物しか有さないように合成された、化合物を意味する。
【0047】
「医薬的に許容される塩(単数または複数)」は、医薬的に許容される塩であって、所望の薬理特性を有する塩を意味する。医薬的に許容される塩は、対象または患者の組織と接触させる使用に適し、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴なわず、妥当な損益比に見合っている塩を意味する。医薬的に許容される塩は、例えば、S.M.Bergeら,J.Pharmaceutical Sciences,1977,66:1に記載されている。適する塩としては、化合物中の酸性プロトンが無機または有機塩基と反応できる場合に形成され得る塩が挙げられる。適する無機塩としては、アルカリ金属、例えば、ナトリウムおよびカリウム、マグネシウム、カルシウムおよびアルミニウムとで形成されるものが挙げられる。適する有機塩としては、有機塩基、例えば、アミン塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどとで形成されるものが挙げられる。適する塩としては、無機酸(例えば、塩酸および臭化水素酸)および有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、ならびにアルカン−およびアレーン−スルホン酸、例えばメタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸)とで形成される酸付加塩も挙げられる。2個の酸基が存在するとき、医薬的に許容される塩は、一塩基酸モノ塩またはジ塩である場合があり;同様に、2個より多くの酸基が存在する場合、そうした基の一部またはすべてを塩化することができる。
【0048】
「併用治療」は、複数の活性成分が、治療を受ける患者に時を同じくして投与されることを意味する。併用で投与するとき、それぞれの成分を同じ時点で投与してもよいし、または異なる時点で任意の順序で逐次的に投与してもよい。従って、それぞれの成分を別々に投与してもよいが、所望の効果、特に、有益な、付加的または相乗的効果、をもたらすように十分に近い時間を選択する。第一の化合物を、第二の化合物での治療を追加として含むレジメンで、投与してもよい。複数の態様において、この用語は、エピ−イノシトール化合物および第二の治療薬の、場合によっては1年以内の投与を指し、これは、それぞれがそれらの化合物の一方を含有する薬物を別々に投与すること、ならびにそれらの化合物が、1つの製剤に併せられていようと、なかろうと、またはそれらが別々の製剤の中にあろうと、同時に投与することを含む。
【0049】
「検出可能物質」は、放射性同位体(例えば、3H、14C、35S、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド燐光体)、発光標識、例えばルミノール;酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ);ビオチニル基(これはマーク付アビジン、例えば、光学的または比色法により検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含有するストレプタビジン、によって検出することができる);二次レポーター(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、またはエピトープタグ)によって認識される所定のポリペプチドエピトープを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、可能性のある立体障害を減少させるために、様々な長さのスペーサーアームによって標識を取り付ける。
【0050】
「有益効果」は、好適な薬理および/もしくは治療効果、ならびに/または改善された生物活性をはじめとする、本発明の一定の態様における本発明の化合物またはその組成物の効果を指す。本発明の態様において、有益効果としては、Aβ原線維集合もしくは凝集、Aβ毒性、Aβ42レベル、異常なタンパク質フォールディング、凝集、アミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存、および/またはアミロイド脂質相互作用の防止、減少、逆転または阻害、ならびに/あるいは既製原線維の分解の促進が挙げられるが、これらに限定されない。他の態様において、有益効果としては、認知機能改善、血管負荷量減少、星状神経膠細胞症減少、アミロイド負荷減少、小神経膠細胞減少、および/または生存増加が挙げられる。本発明の特定の実施形態において、有益効果は、次のうちの1つ以上を含むがそれらに限定されない:凝集したAβもしくはAβオリゴマーの破壊;長期増強の増大もしくは回復;シナプス機能の維持;Aβ誘発進行性認知低下および脳アミロイド斑病態の阻害、減少もしくは逆転;認知改善;寿命延長;Aβの脳蓄積減少;脳アミロイド斑の沈着減少;脳内の可溶性Aβオリゴマー(例えば、Aβ42)減少;神経膠活性減少;炎症減少、および/または認知低下。1つの態様において、有益効果は、本発明の組成物/製剤の好適な特徴であり、安定性強化、より長い寿命、ならびに/または血液脳関門を横断する取り込みおよび輸送の強化を含む。一部の態様において、本発明の組成物の有益効果は、迅速な脳浸透、特に、投与から1〜6、1〜5、1〜4、1〜3または1〜2時間以内の脳浸透である。
【0051】
有益効果は、エピ−イノシトール化合物の効果のその化合物なしでの効果に対する統計解析によって統計学的に有意な効果であり得る。「統計学的に有意な」または「有意に差のある」効果またはレベルは、標準より高いレベルを表すこともあり、または低いレベルを表すこともある。本発明の実施形態において、この差は、エピ−イノシトール化合物なしで得られる効果と比較して1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25または50倍高いまたは低いことがある。
【0052】
「治療有効量」は、1つ以上の所望の有益効果、特に、1つ以上の持続的有益効果、をもたらすまたはもたらすに至るであろう本発明の活性化合物または組成物の量または用量に関する。物質の治療有効量は、その個体の疾病状態、年齢、性別および体重、ならびにその個体において所望の応答を惹起するその物質の能力などの因子によって変わり得る。最適な治療応答(例えば、1つ以上の有益効果、特に、持続的有益効果)をもたらすように、投薬レジメンを調整することができる。例えば、幾つかの分割用量を毎日投与してもよいし、または治療状況の緊急性によって指示された場合にはその用量を比例的に減少させてもよい。
【0053】
「エピ−イノシトール化合物」は、本明細書に記載する1つ以上の有益効果を完全にまたは部分的に、直接または間接的に提供する任意の化合物であって、式I:
【0054】
【化2】
の基本構造を有するものを指すと理解される。
【0055】
エピ−イノシトール化合物は、式Iの化合物の機能性誘導体を包含する。「機能性誘導体」とは、式Iのエピ−イノシトールの生物活性と実質的に同様の生物活性(機能的または構造的活性)を有する化合物を指す。用語「機能性誘導体」は、エピ−イノシトールの「変異体」、「類似体」または「化学的誘導体」を包含すると解釈される。用語「変異体」は、構造および機能の点でエピ−イノシトールまたはその一部と実質的に同様の分子を指すものとする。ある分子とエピ−イノシトールは、両方の分子が実質的に同様の構造を有する場合、または両方の分子が同様の生物活性を有する場合、「実質的に同様」である。用語「類似体」は、機能の点でエピ−イノシトール分子と実質的に同様の分子を指す。用語「化学的誘導体」は、通常は前記基本分子の一部でない追加の化学的部分を含有する分子を記述するものである。
【0056】
本発明のエピ−イノシトール化合物は、多形として存在し得る化合物の結晶形を含む。水または一般的な有機溶媒とで形成される本化合物の溶媒和物も本発明に包含されると解釈される。加えて、エピ−イノシトール化合物またはそれらの塩の水和物形が本発明に包含される。
【0057】
エピ−イノシトール化合物は、配座を維持しながら、式中の1、2または3個のヒドロキシル基が、置換基、特に、一価置換基によって置換されている、式Iの化合物を含む。適する置換基としては、水素、アルキル、アシル、アルケニル、アルコキシ、=O、シクロアルキル、ハロゲン、−NHR1(この場合、R1は、水素、アシル、アルキルまたは−R2R3であり、ここでのR2およびR3は、同じであるか異なり、アシルまたはアルキルを表す)、−PO3H2、−SR4(この場合、R4は、水素、アルキルまたは−O3Hである)および−OR3(この場合、R3は、水素、アルキルまたは−SO3Hである)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明の特定の態様は、式中のヒドロキシル基の1個以上が、アルキル、アシル、アルケニル、アルコキシ、−NHR1(この場合、R1は、水素、アシル、アルキルまたは−R2R3であり、ここでのR2およびR3は、同じであるか異なり、アシルまたはアルキルを表す)、−SR4(この場合、R4は、水素、アルキルまたは−O3Hである)および−OR3(この場合、R3は、水素、アルキルまたは−SO3Hである)、さらに特に、−SR4(この場合、R4は、水素、アルキルまたは−O3Hである)または−SO3Hで置換されている、式Iのエピ−イノシトール化合物を利用する。
【0059】
本発明の特定の態様は、式中のヒドロキシル基の1個以上が、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C1C6アルコキシ、C3−C10シクロアルキル、C1〜C6アシル、−NH2、−NHR1、−NR2R3、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヒドロキシアルキルまたはオキソで置換されている、式Iのエピ−イノシトール化合物を利用する。
【0060】
本発明の特定の態様は、式中のヒドロキシル基の1個以上が、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C1C6アルコキシ、C1〜C6アシル、−NH2、ハロまたはオキソで置換されている、式Iのエピ−イノシトール化合物を利用する。
【0061】
実施形態では、エピ−シクロヘキサンヘキソール(すなわち、エピ−イノシトール)、特に、純粋なまたは実質的に純粋なエピ−シクロヘキサンヘキソールが、本明細書に開示する組成物、方法および使用において使用される。
【0062】
本発明の実施形態では、式中の1個または2個のヒドロキシル基が=Oによって置換されている式Iのエピ−イノシトール化合物が利用される。本発明の特定の実施形態では、1個のヒドロキシル基が=Oによって置換されており、さらに特に、2位のヒドロキシル基が=Oによって置換されている。従って、本発明の特定の実施形態において、エピ−イノシトール化合物は、エピ−2−イノソーゼである。
【0063】
「アルキル」は、1から20個または1から10個の炭素原子、好ましくは約1から10個、1から8個、3から8個、1から6個、または1から3個、さらに好ましくは約3から6個の炭素原子を好ましくは有する、一価アルキル基を指す。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、アミル、sec−ブチル、tert−ブチル、tert−ペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、ウンデシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、ペンタデシル、n−ヘキサデシル、ヘプタデシル、n−オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ドシル、n−テトラコシルなどのような基、加えてこれらの分枝した変型によって例示される。本発明の一定の実施形態において、アルキルラジカルは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、アミル、トリブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、tert−ペンチルおよびn−ヘキシル、を含む、またはから成る群より選択されるC1〜C6低級アルキルである。アルキル基は、置換アルキルである場合もある。
【0064】
「置換アルキル」は、1から5個の置換基、好ましくは1から3個の置換基、例えば、アルキル、アルコキシ、特に低級アルコキシ、シクロアルキル、アシル、アミノ、置換アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、カルボキシル、置換カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、スルホニル、スルフェニル、スルフィニル、スルフェート、またはスルホキシド、を有する、好ましくは炭素原子数1から10の、アルキル基を指す。
【0065】
「アルケニル」は、好ましくは2から10個の炭素原子、さらに好ましくは3から8個の炭素原子を有すると共に、少なくとも1つ、好ましくは1〜2つのアルケニル不飽和部位を有する、アルケニル基を指す。アルケニルラジカルは、好ましくは、約3から6個または2から6個の炭素原子を含有し得る。適するアルケニルラジカルの例としては、エテニル、プロペニル、例えばプロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル(アリル)、プロプ−2−エン−2−イル、ブテン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、ヘキセン−1−イル、3−ヒドロキシヘキセン−1−イル、ヘプテン−1−イルおよびオクテン−1−イルなどが挙げられる。好ましいアルケニル基としては、エテニル(−CH=CH2)、n−プロペニル(−CH2CH=CH2)、イソプロペニル(−C(CH3)=CH2)などが挙げられる。
【0066】
「置換アルケニル」は、1から3個の置換基、例えば、アルキル、アルコキシ、特に低級アルコキシ、シクロアルキル、アシル、アミノ、置換アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、カルボキシル、置換カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、スルホニル、スルフェニル、スルフィニル、スルフェートまたはスルホキシドを有する、上で定義したとおりのアルケニル基を指す。
【0067】
「アシル」は、アルキル−C(O)−基、置換アルキル−C(O)−基、シクロアルキル−C(O)−基、置換シクロアルキル−C(O)−基、アリール−C(O)−基、ヘテロアリール−C(O)−基、および複素環−C(O)−基を指し、この場合、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび複素環は、本明細書において定義するとおりである。アシル基は、例えば、アルキルについて本明細書に開示されている基で、置換されていることがある。「アシル」ラジカルの実例は、ホルミル、アセチル、2−クロロアセチル、2−ブロモアセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、フタロイル、マロニル、ニコチニルなどである。
【0068】
「アルコキシ」は、メトキシラジカルなどの、炭素原子数1から約10のアルキル部分を有する線状または分枝状オキシ含有ラジカルを指し、これは置換されていることがある。特定のアルコキシラジカルは、約1から6個、1から4個または1から3個の炭素原子を有する「低級アルコキシ」ラジカルである。約1〜6個の炭素原子を有するアルコキシとしては、C1〜C6アルキル−O−ラジカルが挙げられ、この場合のC1〜C6アルキルは、本明細書において述べる意味を有する。アルコキシラジカルの実例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソプロポキシおよびtert−ブトキシが挙げられるが、これらに限定されない。「アルコキシ」ラジカルは、「アルキルアルコキシ」ラジカルをもたらすための、アルキル原子(特に、低級アルキル);「ハロアルコキシ」ラジカル(例えば、フルオロメトキシ、クロロメトキシ、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、フルオロエトキシ、テトラフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシおよびフルオロプロポキシ)および「ハロアルコキシアルキル」ラジカル(例えば、フルオロメトキシメチル、クロロメトキシエチル、トリフルオロメトキシメチル、ジフルオロメトキシエチルおよびトリフルオロエトキシメチル)をもたらすための、ハロ原子、例えば、フルオロ、クロロまたはブロモを含めて、本明細書に開示する1個以上の置換基で、場合によっては、さらに置換されていることがある。
【0069】
「アリール」は、単一の環(例えばフェニル)または多数の縮合(融合)環(例えば、ナフチルまたはアントリル)を有する、炭素原子数6から14の不飽和芳香族炭素環基を指す。好ましいアリールとしては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。本発明の態様において、アリールラジカルは、4から24個の炭素原子、特に、4から10個、4から8個または4から6個の炭素原子を有する。用語「アリール」は、芳香族ラジカル、例えば、フェニル、ナフチル、インデニル、ベンゾシクロオクテニル、ベンゾシクロヘプテニル、ペンタレニル、アズレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、アセフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニルおよびアントラセニル、好ましくはフェニルを含むが、これらに限定されない。アリール基は、1から8個、1から6個、1から4個または1から3個の置換基、例えば、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アシル、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノおよびニトロを有する、本明細書において定義するとおりのアリール基を含むことがある、置換アリール基である場合がある。置換アリールラジカルの例としては、ベンジル、クロロベンジルおよびアミノベンジルが挙げられる。
【0070】
「シクロアルキル」は、単一の環または多数の縮合した環を有する、炭素原子数3から16、3から15、または3から12の環状アルキル基を指す。
【0071】
本発明の態様において、シクロアルキルは、1、2、3または4個の環(こうした環は、ペンダント式に付いていることがあり、または融合していることがある)、特に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、アダマンチルなどを含む。本発明の一定の態様において、シクロアルキルラジカルは、約3から10個、3から8個、3から6個、または3から4個の炭素原子を有する「低級シクロアルキル」ラジカル、特に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルである。シクロアルキル基は、アダマンチルなどのような多環構造を含む。用語「シクロアルキル」は、シクロアルキルラジカルがアリールラジカルまたはヘテロシクリルラジカルと融合しているラジカルも包含する。シクロアルキルラジカルは、本明細書に開示するような基で場合によっては置換されていることがある。
【0072】
「置換シクロアルキル」は、アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノおよびニトロをはじめとする(しかし、これらに限定されない)、1から5個(特に1から3個)の置換基を有するシクロアルキル基を指す。
【0073】
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨード、好ましくは、フルオロまたはクロロのいずれかを指す。
【0074】
「ヘテロアリール」は、1から15個の炭素原子と、(1つより多くの環がある場合には)少なくとも1つの環の中の酸素、窒素および硫黄から選択される1から4個のヘテロ原子との芳香族基を指す。こうしたヘテロアリール基は、1から5個の置換基、例えば、アシルオキシ、ヒドロキシ、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリール、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルアルキル、シアノ、ハロ、ニトロ、ヘテロアリール、複素環、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシおよびチオヘテロアリールオキシ、で場合によっては置換されていることがある。こうしたヘテロアリール基は、単一の環(例えば、ピリジルもしくはフリル)または多数の縮合した環(例えば、インドリジニルまたはベンゾチエニル)を有することがある。
【0075】
「複素環」または「複素環の」は、単一の環または多数の縮合した環、1から15個の炭素原子、およびその環内に窒素、硫黄または酸素から選択される1から4個のヘテロ原子を有する、一価飽和または不飽和基を指す。複素環基は、単一の環を有する場合もあり、または多数の縮合した環を有する場合もある。複素環基は、1から5個の置換基、例えば、アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノまたはニトロ、で場合によっては置換されていることがある。
【0076】
複素環およびヘテロアリールの例としては、ピロール、フラン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、モルホリノ、ピペリジニル、テトラヒドロフラニルなど、ならびにN−アルコキシ−窒素含有複素環が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
エピ−イノシトール化合物は、従来のプロセスを用いて調製することができ、または市場の供給業者から入手することができる。エピ−イノシトール化合物は、化学および/または微生物プロセスを用いて調製することができる。例えば、エピ−イノシトールは、V.Pistara(Tetrahedron Letters 41,3253,2000)、Magasanik B.およびChargaff E.(J Biol Chem,1948,174:173188)、米国特許第7,157,268号によって、またはPCT公開出願第WO0075355号に記載されたプロセスによって調製することができる。誘導体は、通常の当業者には周知の方法を用いてエピ−イノシトールに置換基を誘導することにより製造することができる。
【0078】
本発明のエピ−イノシトール化合物または組成物は、ポリマー、炭水化物ペプチドまたはそれらの誘導体(しかし、これらに限定されない)をはじめとする担体を追加で含む場合がある。担体は、アルキル、アミノ、ニトロ、ハロゲン、チオール、チオアルキル、スルフェート、スルホニル、スルフェニル、スルフィニル、スルホキシド、ヒドロキシル基のうちの1つ以上(しかし、これらに限定されない)を含む、本明細書に記載の置換基で置換されていることがある。担体は、本発明の化合物に、直接または間接的に、共有結合で付けることができる。本発明の態様において、担体は、アラニン、グリシン、プロリン、メチオニン、セリン、トレオニンまたはアスパラギンをはじめとするアミノ酸である。他の態様において、担体は、アラニル−アラニル、プロリル−メチオニル、またはグリシル−グリシルをはじめとするペプチドである。
【0079】
担体は、本発明の化合物を特定の組織または器官にターゲッティングする分子も含む。特に、担体は、能動輸送または受動輸送のいずれかによる本発明の化合物の脳への輸送を助長または増進させることができる。
【0080】
「ポリマー」は、本明細書で用いる場合、2つ以上のモノマーサブユニット(これらは、同一の反復サブユニットである場合もあり、または異なる反復サブユニットである場合もある)を含む分子を指す。モノマーは、一般に、炭素を含有する単純な構造の低分子量分子を含む。ポリマーは、場合によっては置換されていることがある。本発明において使用することができるポリマーの例は、ビニル、アクリル、スチレン、炭水化物由来ポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン、ポリメチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ならびにこれらのコポリマー、塩および誘導体である。本発明の特定の態様において、ポリマーは、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル,−1−プロパンスルホン酸−co−アクリロニトリル、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−co−スチレン)、ポリ(ビニルスルホン酸);ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム);ならびにこれらから誘導される硫酸塩およびスルホン酸塩;ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、およびポリ(ビニルアルコール)である。
【0081】
「炭水化物」は、本明細書で用いる場合、ポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトン、およびこれらの誘導体を指す。最も単純な炭水化物は、単糖類であり、これは、付加された多数のヒドロキシル基(通常、官能基以外のそれぞれの炭素原子上に1個)を有する小さな直鎖アルデヒドおよびケトンである。単糖類の例としては、エリトロース、アラビノース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、トレオース、キシロース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、アルドヘキソース、フルクトース、ケトヘキソース、リボース、およびアルドペントースが挙げられる。他の炭水化物は、単糖単位から成り、これらとして、単糖単位の数に依存して、二糖類、オリゴ糖類または多糖類が挙げられる。二糖類は、共有グルコシド結合によって連結された2個の単糖単位から成る。二糖類の例は、スクロース、ラクトースおよびマルトースである。オリゴ糖類および多糖類は、グリコシド結合によって互いに結合された単糖単位の長鎖から成る。オリゴ糖類は、一般に、3個と9個の間の単糖単位を含有し、多糖類は、10個より多い単糖単位を含有する。炭水化物基は、式Iの化合物への連結位置以外に、1、2、3または4つの位置で置換されていることがある。例えば、炭水化物は、場合によっては置換されている1個以上のアルキル、アミノ、ニトロ、ハロ、チオール、カルボキシルまたはヒドロキシル基で、置換されていることがある。実例となる置換炭水化物は、グルコサミンまたはガラクトサミンである。
【0082】
本発明の態様において、炭水化物は、糖、特にヘキソースまたはペントースであり、アルドースまたはケトースである場合もある。糖は、D系列のメンバーである場合もあり、またはL系列のメンバーである場合もあり、ならびにアミノ糖、デオキシ糖、およびこれらのウロン酸誘導体を包含し得る。炭水化物がヘキソースである本発明の実施形態において、ヘキソースは、グルコース、ガラクトースもしくはマンノース、または置換ヘキソース糖残基、例えば、アミノ糖残基、例えばヘキソサミン、ガラクトサミン、グルコサミン、特にD−グルコサミン(2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコース)もしくはD−ガラクトサミン(2−アミノ−2−デオキシ−D−ガラクトース)から成る群より選択される。適するペントース糖としては、アラビノース、フコースおよびリボースが挙げられる。
【0083】
用語「炭水化物」は、糖タンパク質、例えば、レクチン(例えば、コンカナバリンA、小麦胚芽凝集素、ピーナッツ凝集素、セロムコイドおよびオロソムコイド)ならびに糖脂質、例えばセレブロシドおよびガングリオシドも包含する。
【0084】
本発明の実施の際に担体として使用するための「ペプチド」は、ペプチド結合によって共有結合で連結された1、2、3、4もしくは5個またはそれ以上のアミノ酸を含む。ペプチドは、1つ以上の天然アミノ酸、ならびにそれらの類似体、誘導体および同族体を含む場合がある。ペプチドは、その安定性、バイオアベイラビリティ、溶解度などを増大させるように修飾することができる。「ペプチド類似体」および「ペプチド誘導体」は、ここで用いる場合、ペプチドの化学構造を模倣し、そのペプチドの機能特性を保持する分子を包含する。本発明の態様において、担体は、アミノ酸、例えば、アラニン、グリシン、プロリン、メチオニン、セリン、トレオニン、ヒスチジンまたはアスパラギンである。他の態様において、担体は、ペプチド、例えば、アラニル−アラニル、プロリル−メチオニル、またはグリシル−グリシルである。さらに他の態様において、担体は、ポリペプチド、例えば、アルブミン、抗トリプシン、マクログロブリン、ハプトグロブリン、セルロプラズム、トランスフェリン、α−もしくはβ−リポタンパク質、β−もしくはγ−グロブリンまたはフィブリノゲンである。
【0085】
ペプチド類似体、誘導体および模倣体の設計へのアプローチは、当該技術分野において公知である。例えば、Farmer,P.S.in Drug Design(E.J.Ariens,ed.)Academic Press,New York,1980,vol.10,pp.119−143;Ball.J.B.and Alewood,P.F.(1990)J Mol.Recognition 3:55;Morgan,B.A.and Gainor,J.A.(1989)Ann.Rep.Med.Chem.24:243;およびFreidinger,R.M.(1989)Trends Pharmacol.Sci.10:270参照。Sawyer,T.K.(1995)「Peptidomimetic Design and Chemical Approaches to Peptide Metabolism」in Taylor,M.D.and Amidon,G.L.(eds.)Peptide−Based Drug Design:Controlling Transport and Metabolism,Chapter 17;Smith,A.B.3rdら,(1995)J.Am.Chem.Soc.117:11113−11123;Smith,A.B.3rdら,(1994)J.Am.Chem.Soc.116:9947−9962;およびHirschman,R.ら,(1993)J.Am.Chem.Soc.115:12550−12568も参照。
【0086】
ペプチド類似体、誘導体およびペプチド模倣体の例としては、1つ以上のベンゾジアゼピン分子で置換されているペプチド(例えば、James,G.L.ら(1993)Science 260:1937−1942参照)、メチル化アミド結合を有するペプチドおよび「レトロ−インベルソ」ペプチド(Sistoによる米国特許第4,552,752号参照)が挙げられる。
【0087】
ペプチド誘導体の例としては、そのアミノ酸側鎖、そのペプチド骨格またはそのアミノもしくはカルボキシ末端が誘導体化されているペプチド(例えば、メチル化アミド結合を有するペプチド化合物)が挙げられる。
【0088】
用語模倣体および特にペプチド模倣体は、同配体を包含すると解釈される。用語「同配体」は、その一次構造の立体配座が、その二次構造に特異的な結合部位に適合するため、その二次化学構造を置換することができる化学構造を指す。特に、この用語は、当業者に周知のペプチド骨格修飾を含む(すなわち、アミド結合模倣体)。そうした修飾としては、アミド窒素、アルファ−炭素、アミドカルボニルの修飾、アミド結合の完全置換、延長、欠失または骨格架橋が挙げられる。同配体の他の例としては、1つ以上のベンゾジアゼピン分子で置換されているペプチドが挙げられる(例えば、James,G.L.ら(1993)Science 260:1937−1942参照)。
【0089】
他の可能な修飾としては、N−アルキル(もしくはアリール)置換([CONR])、ラクタムおよび他の環状構造を構築するための骨格架橋、その化合物内のすべてのL−アミノ酸のすべてのD−アミノ酸での置換(「インベルソ」化合物)またはレトロ−インベルソアミノ酸組み込み([NHCO])が挙げられる。「インベルソ」とは、配列のL−アミノ酸をD−アミノ酸で置換することを意味し、「レトロ−インベルソ」または「エナンチオ−レトロ」は、アミノ酸の配列を逆転させ(「レトロ」)、L−アミノ酸をDアミノ酸で置換することを意味する。例えば、親ペプチドが、Thr−Ala−Tyrである場合、そのレトロ修飾形は、Tyr−Ala−Thrであり、そのインベルソ形は、thr−ala−tyrであり、そのレトロ−インベルソ形は、tyr−ala−thrである(小文字は、D−アミノ酸を指す)。親ペプチドと比較すると、レトロ−インベルソペプチドは、その側鎖の元々の立体配座を実質的に維持しながら逆転した骨格を有し、その結果、親ペプチドにそっくりなトポロジーを有するレトロ−インベルソ異性体となる。Goodmanら「Perspectives in Peptide Chemistry」pp.283−294(1981)参照。「レトロ−インベルソ」ペプチドのさらなる説明については、Sistoによる米国特許第4,522,752号を参照のこと。
【0090】
ペプチドは、一定のアミノ酸(例えば、セリン)の側鎖上の官能基、または他の適する官能基によって、本発明の化合物に付けることができる。本発明の実施形態において、担体は、4個以上のアミノ酸と、側鎖上の官能基によってそれらのアミノ酸のうちの3個以上に付いている基を含むことがある。もう1つの実施形態において、担体は、1個のアミノ酸、特に、アミノ酸、例えばシステイン酸、のスルホネート誘導体である。
【0091】
「疾患および/または疾病」、「疾患(単数または複数)」および「疾病(単数または複数)」は、本明細書では交換可能に用いられており、エピ−イノシトール化合物が治療効果をもたらす1つ以上の病的症状または症候群を指す。これらの用語は、異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集または異常なアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存、またはアミロイド脂質相互作用を特徴とする状態を包含する。一部の態様において、この用語は、異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする状態を包含する。特定の態様において、疾病は、中枢もしくは末梢神経系または全身器官の状態である。さらなる特定の実施形態において、この用語は、Aβアミロイド、AAアミロイド、ALアミロイド、IAPPアミロイド、PrPアミロイド、α2−ミクログロブリンアミロイド、トランスサイレチン、プレアルブミンおよびプロカルシトニン、特にAβアミロイドおよびIAPPアミロイド、を含むまたはから成る群より選択されるアミロイドタンパク質を含む、アロイドまたはアミロイド原線維の形成、沈着、蓄積または残存に関連した状態を包含する。疾患および/または疾病は、異常凝集タンパク質を解離させること、および/または既に形成されたもしくは既に沈着したアミロイドもしくはアミロイド原線維を溶解もしくは破壊することが望ましい状態である場合もある。
【0092】
本発明の一定の態様において、疾病は、アミロイドーシスである。「アミロイドーシス」は、後天的に得られるまたは遺伝に由来する多岐にわたる疾病群を指し、アミロイドと呼ばれる類似した特性を有するタンパク質原線維の幾つかの異なるタイプのうちの1つの蓄積を特徴とする。アミロイドは、単一の器官に蓄積する場合もあり、または体中に散在する場合もある。この疾病は、罹患領域に深刻な問題をもたらす場合があり、該罹患領域としては、心臓、脳、腎臓および消化管を挙げることができる。アミロイド沈着物の原線維組成は、様々なアミロイド症の識別特徴である。ベータアミロイドペプチド(β−AP)の原線維から主として成る脳内および脳血管沈着物は、アルツハイマー病(家族性と散発性、両方の形態)の特徴であり、膵島アミロイドタンパク質ペプチド(IAPP;アミリン)は、II型糖尿病に随伴する膵島細胞アミロイド沈着における原線維の特徴であり、ならびにβ−2−ミクログロブリンは、長期血管透析治療の結果として形成されるアミロイド沈着物の主成分である。プリオン関連疾患、例えば、クロイツフェルト−ヤコブ病、スクラピー、狂牛病などは、プロテアーゼ耐性型のプリオンタンパク質(AScr ro PrP−27と呼ばれる)の蓄積を特徴とする。
【0093】
一定の疾患は、既存または共存する疾患の証拠がない原発性アミロイドーシスであると考えられる。原発性アミロイドーシスは、一般に、「アミロイド軽鎖型」(AL型)タンパク質原線維の存在を特徴とする。続発性アミロイドーシスの場合、基礎をなす慢性炎症または感染性疾患状態(例えば、関節リウマチ、若年性慢性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬、ライター症候群、成人スティル病、ベーチェット症候群、クローン病、慢性微生物感染症、例えば脳髄炎、結核およびらい病、悪性新生物、例えばホジキンリンパ腫、腎癌、腸、肺および尿生殖路の癌腫、基底細胞癌、およびヘアリー細胞癌)が存在する。続発性アミロイドーシスは、血清アミロイドAタンパク質(ApoSSA)に由来するAA型原線維の沈着を特徴とする。家族遺伝性アミロイドーシスは、ATTRトランスサイレチン型の神経障害性、腎臓または心血管沈着を随伴することがあり、それらは、異なるアミロイド成分を有する他の症候群(例えば、AA原線維を特徴とする家族性地中海熱)を含む。アミロイドーシスの他の形態としては、孤立器官において発生する限局性(多く場合、腫瘍様)沈着物を特徴とする、限局性形態が挙げられる。加えて、アミロイドーシスは、加齢に関連付けられており、一般に、心臓または脳内の斑形成を特徴とする。アミロイドーシスは、全身性疾患、例えば、成人発症型糖尿病、長期血液透析からの合併症、および慢性炎症またはプラズマ細胞疾患の帰結を含む。
【0094】
本発明の一部の態様において、本発明の化合物、組成物および方法を用いて治療および/または予防することができるアミロイド症としては、オランダ型のアミロイドーシスを伴うアルツハイマー病、ダウン症候群、ボクサー認知症、多系統萎縮症、封入体筋炎、遺伝性脳内出血;C型ニーマン−ピック病;脳β−アミロイド血管症;皮質基底部変性に関連した認知症;2型糖尿病のアミロイドーシス;慢性炎症のアミロイドーシス;悪性および家族性地中海熱のアミロイドーシス;多発性骨髄腫およびB細胞疾患のアミロイドーシス;じんま疹および難聴を伴う腎症(マックル−ウェルズ症候群);全身性炎症疾患に関連したアミロイドーシス;骨髄腫またはマクログロブリン血症に関連した特発性原発性アミロイドーシス;免疫細胞疾患、単クローン性高ガンマグロブリン血症、潜在性疾患に関連したアミロイドーシス;慢性炎症性疾患に関連した局在結節アミロイドーシス;幾つかの免疫細胞疾患に関連したアミロイドーシス;家族性アミロイドポリニューロパシー;アミロイドーシスを伴う遺伝性脳内出血、アルツハイマー病および他の神経変性疾患;慢性血液透析、II型糖尿病、インスリノーマに関連したアミロイドーシス;プリオン病、(伝播性海綿状脳症プリオン病)、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー症候群、クールーおよびスクラピーのアミロイドーシス;手根管症候群に関連したアミロイドーシス;老人性心アミロイドーシス;家族性アミロイドポリニューロパシー;ならびに内分泌性腫瘍に関連したアミロイドーシス、特に、アルツハイマー病および2型糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
本発明の他の態様において、本発明の化合物、組成物および方法を用いて治療および/または予防することができる疾患および/または疾病としては、タンパク質、タンパク質フラグメント、およびベータプリーツシート中のペプチド、原線維、ならびに/または凝集物もしくはオリゴマーの沈着を生じさせる、中枢もしくは末梢神経系または全身器官の状態が挙げられる。特に、前記疾病は、アルツハイマー病、初老型および老人型;アミロイド血管症;軽度認知障害;アルツハイマー病関連認知症(例えば、血管性認知症またはアルツハイマー認知症);タウオパチー(例えば、嗜銀顆粒性認知症、皮質基底部変性、ボクサー認知症、石灰化を伴う散在性の神経原線維のもつれ、パーキンソン症候群を伴う前頭側頭骨認知症、プリオン関連疾患、ハレルフォルデン−スパッツ病、筋緊張性ジストロフィー、C型ニーマン−ピック病、神経原線維のもつれを伴う非グアム型運動ニューロン疾患、ピック病、脳炎後パーキンソン症候群、脳アミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、亜急性硬化症性全脳炎、および神経原線維型老年認知症(tangle only dementia))、アルファ−シヌクレイノパチー(例えば、レビー小体を伴う認知症、神経膠細胞質封入体を伴う多系統萎縮症、シャイ−ドレーガー症候群、脊髄小脳失調症(例えば、DRPLAもしくはマチャド−ジョセフ病);線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、I型脳内鉄蓄積を伴う神経変性、嗅覚機能不全、および筋萎縮性側索硬化症);パーキンソン病(例えば、家族性または非家族性);筋萎縮性側索硬化症;痙性対麻痺(例えば、シャペロンおよび/またはトリプルAプロテインの機能不全に関連したもの);ハンチントン病、脊髄小脳失調症、フリートライヒ運動失調症;対応する遺伝子内の3または4ヌクレオチド成分の病的発現から生じるポリグルタミン、ポリアラニンまたは他の反復単位を有するタンパク質の細胞内および/または神経内凝集物に関連した神経変性疾患;脳血管疾患;ダウン症候群;アミロイドベータペプチドの外傷後蓄積を伴う頭部外傷;プリオン関連疾患(クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病、および変型クロイツフェルト−ヤコブ病);家族性英国型認知症;家族性デンマーク型認知症;痙性失調を伴う初老性認知症;脳アミロイド血管症、英国型;痙性失調脳アミロイド血管症を伴う初老性認知症、デンマーク型;ニューロセルピン封入体を伴う家族性脳障害(FENIB);アミロイドポリニューロパシー(例えば、老人性アミロイドポリニューロパシーまたは全身性アミロイドーシス);アミロイドベータペプチドに起因する封入体筋炎;家族性フィンランド型アミロイドーシス;多発性骨髄腫に関連した全身性アミロイドーシス;家族性地中海熱;慢性感染症および炎症;ならびに膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)を随伴するII型真性糖尿病である。本発明の選択された態様において、疾病は、ニューロン性疾患(例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、病原性精神病状態、綜合失調症、摂食障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝の恒常性調節障害、自律神経機能障害、ホルモンバランス障害、調節障害、体液、高血圧、発熱、睡眠調節不全、食欲不振;うつ病を含む不安関連疾患;癲癇、投薬停止およびアルコール中毒を含む発作;認知機能不全および認知症を含む疾患)である。
【0096】
本発明の態様、特に併用療法、において、疾患および/または疾病は、ニューロン性疾患(例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、病原性精神病状態、綜合失調症、摂食障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝の恒常性調節障害、自律神経機能障害、ホルモンバランス障害、調節障害、体液、高血圧、発熱、睡眠調節不全、食欲不振;うつ病を含む不安関連疾患;癲癇、投薬停止およびアルコール中毒を含む発作;認知機能不全および認知症を含む神経変性疾患)である。
【0097】
本発明の一定の選択された態様において、疾病は、アルツハイマー病、認知症、MCI、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、癲癇、ピック病、ならびに本明細書に開示する他の類似の疾病および疾患などの疾病および障害をはじめとする、神経変性症または神経変性疾患である。
【0098】
本発明の化合物は、α−シヌクレイン/NAC原線維増殖を阻害もしくは防止する、ならびに/または既製α−シヌクレイン/NAC原線維およびα−シヌクレイン/NAC関連タンパク質沈着物の分解、破壊および/もしくは離解を生じさせるように、作用することができる。本発明の化合物または組成物での治療に適するシヌクレイン症またはシヌクレイノパチーの例は、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レビー小体病、アルツハイマー病のレビー小体変異型、レビー小体を伴う認知症、多系統萎縮症、オリーブ橋小脳萎縮症、I型脳内鉄蓄積を伴う神経変性、嗅覚機能不全、およびグアムのパーキンソン症候群−認知症複合をはじめとする(しかし、これらに限定されない)、シヌクレイン原線維、特にα−シヌクレイン原線維、の形成、沈着、蓄積または残存に関連した疾病である。
【0099】
本発明の態様において、疾病は、フィラメントならびに神経フィラメントおよび/もしくはスーパーオキシドジスムスターゼタンパク質の凝集物に関連した運動ニューロン疾患;シャペロンおよび/もしくはトリプルAプロテインの機能不良に関連した痙性対麻痺;またはDRPLAもしくはマチャド−ジョセフ病などの脊髄小脳失調症である。
【0100】
本発明の他の態様において、疾病は、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病、および変型クロイツフェルト−ヤコブ病をはじめとするプリオン関連疾患、ならびに老人性アミロイドポリニューロパシーまたは全身性アミロイドーシスをはじめとするアミロイドポリニューロパシーである。
【0101】
本発明の実施形態において、疾病は、家族型および非家族型を含む、アルツハイマー病またはパーキンソン病である。
【0102】
本発明の実施形態において、疾病は、軽度認知障害である。
【0103】
本発明の実施形態において、疾病は、認知症、特に、レビー小体を伴う血管性認知症、混合型認知症、アルツハイマー認知症、または薬物、せん妄もしくはうつ病に起因する続発性認知症である。認知症は、簡単な概念または指図を理解することができなくなり、情報を記憶に蓄積し、思い出すことができなくなり、ならびに行動および人格が変化する結果となる、統合中枢神経系機能の喪失を一般に特徴とする。DSM−IV(精神障害の診断と統計の手引き、米国精神医学会(Diagnostic and Statistical Manual for Mental Disorders,American Psychiatric Association))によると、認知症の診断特徴は、記憶障害と、次のうちの少なくとも1つを含む:言語障害(失語症)、学習運動機能を実行する能力の喪失(失行症)、普通の物を理解できないこと(失認症)、または実行機能または決断実施に関する障害。
【0104】
本発明の一定の態様において、疾病および/または疾患は、アミロイド形成性タンパク質またはペプチドによるマクロファージの存在に起因する炎症プロセスを特徴とし得る。本発明の方法は、マクロファージ活性化の阻害および/または炎症プロセスの阻害を含むことができる。1つの方法は、患者におけるマクロファージ浸潤または炎症の経過または程度の減少、遅速、改善または逆転を含むことができる。
【0105】
疾病は、本発明の化合物で破壊または解離させることができる分子相互作用を随伴する状態である場合もある。「本発明の化合物で破壊または解離させることができる分子相互作用」としては、アミロイドタンパク質とタンパク質または糖タンパク質とを含む相互作用が挙げられる。アミロイドタンパク質を含む相互作用としては、アミロイドタンパク質−アミロイドタンパク質相互作用、アミロイド−プロテオグリカン相互作用、アミロイド−プロテオグリカン/グリコサミノグリカン(GAG)相互作用、および/またはアミロイドタンパク質−グリコサミノグリカン相互作用が挙げられる。相互作用性タンパク質は、細胞表面、分泌または細胞外タンパク質であり得る。
【0106】
本発明の化合物または組成物を使用して治療または予防することができる疾病は、アミロイドタンパク質とタンパク質または糖タンパク質をはじめとする相互作用性化合物とを含む分子間相互作用の破壊または解離の恩恵を受ける疾病を含む。本発明の化合物または組成物を使用して治療または予防することができる疾病の例としては、細菌、ウイルス、プリオンおよび真菌によって引き起こされる感染症が挙げられる。そうした疾患および/または疾病の例は、単純疱疹ウイルス(Herpes simplex virus)、仮性狂犬病ウイルス(Pseudorabies virus)、ヒトサイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、百日咳菌(Bordetella pertussis)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、インフルエンザ菌(haemophilus influenzae)、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans)、ブタ連鎖球菌(Streptococcus suis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、アマゾンリーシュマニア(Leishmania amazonensi)、クルーズトリパノソーマ(Trypanozoma cruzi)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、マイコプラズマ肺炎(Mycoplasma pneumoniae)、毒素原性大腸菌(enterotoxigenic E.coli)、尿路病原性大腸菌(uropathogenic E.coli)、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)をはじめとする病原体に関連したものである。
【0107】
用語「相互作用」または「相互作用する(こと)」は、タンパク質、他の分子、例えば脂質、炭水化物、ヌクレオチドおよび他の細胞代謝産物の間のあらゆる物理的会合を指す。相互作用の例としては、タンパク質−タンパク質相互作用が挙げられる。好ましくは、この用語は、例えば、生理条件下での静電、疎水性、イオンおよび/または水素結合相互作用に起因する、2分子間の安定な会合を指す。
【0108】
組成物
エピ−イノシトール化合物は、対象に投与するための医薬組成物または栄養補助食品へと調合することができる。本発明の医薬組成物またはその画分は、所期の投与形態に基づいて選択される、および従来の製薬実施に矛盾しない、適する医薬的に許容される担体、賦形剤およびビヒクルを一般に含む。本発明の特定の組成物は、純粋または実質的に純粋であるエピ−イノシトール化合物を含有し得る。
【0109】
適する製薬用担体、賦形剤およびビヒクルは、標準的なテキスト、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21th Edition.University of the Sciences in Philadelphia(Editor),Mack Publishing Companyに記載されている。例として、カプセルまたは錠剤の形態での経口投与については、活性化合物を、経口用の非毒性で医薬的に許容される不活性担体、例えば、ラクトース、デンプン、スクロース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、グルコース、硫酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、マンニトール、ソルビタールなどと併せることができる。液体形態での経口投与については、薬物成分を、任意の経口、非毒性、医薬的に許容される不活性担体、例えば、エタノール、グリセロール、水などと併せることができる。適する結合剤(例えば、ゼラチン、デンプン、トウモロコシ甘味料、天然糖(グルコースを含む)、天然および合成ゴム、ならびに蝋)、滑沢剤(例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム)、崩壊剤(例えば、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、およびキサンタンガム)、着香剤、および着色剤も、本組成物またはそれらの成分に併せることができる。本明細書に記載する組成物は、湿潤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤をさらに含む場合がある。
【0110】
本発明は、エピ−イノシトール化合物、特に、純粋なまたは実質的に純粋なシロ−化合物を含有する、ピル、錠剤、カプセル、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、ロゼンジ、サッシェ、カシェ剤、VegiCap、液滴、エリキシル、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エアロゾル(固体として、または液体媒質中のもの)、坐剤、滅菌注射用溶液、ならびに/または滅菌包装粉末をはじめとする(しかし、これらに限定されない)、商業的に有用な製剤を提供する。
【0111】
組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、ピル、カプセル、徐放性製剤、または粉末である場合がある。本組成物は、伝統的な結合剤および担体、例えばトリグリセリド、を用いて、坐剤として調合することができる。経口製剤は、標準的な担体、例えば、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含むことがある。様々な送達システム(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルなどへの封入)が知られており、それらを用いて、本発明の組成物を投与することができる。
【0112】
本発明の態様において、疾病および/または疾患の治療用の1つ以上のエピ−イノシトール化合物の経口投与のための医薬組成物を提供する。特定の態様において、式Iの実質的に純粋なエピ−イノシトール化合物を含む、異常なタンパク質フォールディングおよび/もしくは凝集ならびに/またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾病および/または疾患(例えば、アルツハイマー病)の治療用の安定な経口医薬組成物を、提供する。
【0113】
非経口投与用の製剤としては、水溶液、シロップ、水性または油性懸濁液および乳濁液(可食油、例えば、綿実油、ココナッツ油、アーモンド油または落花生油を伴う)を挙げることができる。水性懸濁液に使用することができる分散剤または懸濁化剤としては、合成または天然ゴム、例えば、トラガカントゴム、アルジネート、アラビアゴム、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、メチルセルロース、およびポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0114】
非経口投与用組成物は、滅菌水性または非水性溶媒、例えば、水、等張食塩水、等張グルコース溶液、緩衝溶液、または治療活性剤の非経口投与のために好都合に使用されている他の溶媒を含むことがある。非経口投与を目的とした組成物は、従来の添加剤、例えば、安定剤、緩衝液または保存薬、例えば抗酸化物質、例えばメチルヒドロキシベンゾエートまたは類似の添加剤も含むことがある。
【0115】
本発明の組成物は、本明細書に記載するような医薬的に許容される塩として調合することができる。
【0116】
本発明の態様において、本組成物は、限定ではないが、少なくとも1つの緩衝剤または溶液を含む。緩衝剤の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロ酸、クエン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸、パモ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸、およびこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。追加の薬剤、例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、馬鈴薯デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、水素化食用脂、レシチン、アラビアゴム、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、分画植物油、メチル、プロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸、およびこれらの混合物のうちの1つ以上、も含むことがある。緩衝剤は、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリラクチド、ポリグリコリドおよびこれらの混合物のうちの1つ以上を追加で含むことがある。1つの実施形態において、緩衝剤は、懸濁液、溶液または乳濁液をはじめとする(しかし、これらに限定されない)少なくとも1つの媒質として、調合することができる。他の実施形態において、緩衝剤は、医薬的に許容される担体、賦形剤、懸濁化剤、安定剤または分散剤をはじめとする(しかし、これらに限定されない)製剤化剤を追加で含むことがある。
【0117】
本発明の組成物は、例えば、細菌保留フィルターによる濾過、組成物への滅菌剤の添加、組成物の照射、または組成物の加熱によって、滅菌することができる。あるいは、本発明の化合物または組成物は、使用直前に滅菌溶媒に容易に溶解される滅菌固体調製品、例えば、凍結乾燥粉末として、提供することができる。
【0118】
医薬組成物を調製した後、それらを適切な容器に入れ、指示された状態の治療についてのラベルを貼ってもよい。本発明の組成物の投与についてのそうしたラベルは、投与の量、頻度および方法を含むであろう。
【0119】
エピ−イノシトール化合物は、栄養補助食品としての投与に適する形態である場合がある。本発明のサプリメントは、不活性成分、例えば、希釈剤または充填剤、粘度調整剤、保存薬、着香剤、着色剤、または当該技術分野では通常の他の添加剤を追加して含むことがある。単なる例としてだが、蜜蝋、レシチン、ゼラチン、グリセリン、カラメルおよびカルミンなどの従来成分を含むことができる。
【0120】
本発明の栄養補助食品組成物は、第二活性成分を場合によっては含むことがある。1つの実施形態において、この第二活性成分は、ピニトールまたはその活性誘導体もしくは代謝産物である。ピニトールは、アルファルファ、ブーゲンビレアの葉、ガルバンソー、松の木および大豆をはじめとする(しかし、これらに限定されない)植物源から製造することができる。ピニトールは、市販もされている、例えば、Inzitol(商標)(Humanetics Corporation,Min)。ピニトールの誘導体および代謝産物の例としては、ピニトールグリコシド、ピニトールリン脂質、エステル化ピニトール、脂質結合ピニトール、リン酸ピニトール、フィチン酸ピニトール、および加水分解ピニトール、例えばd−シロ−イノシトールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
栄養補助食品は、液体栄養補助食品(例えば、分取可能な液体)として提供することができ、または本組成物を顆粒、カプセルもしくは坐剤として調合することもできる。液体サプリメントは、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存薬、着色剤などをはじめとする多数の適する担体および添加剤を含むことがある。カプセル、顆粒または坐剤形態の場合、本発明の組成物は、医薬的に許容される担体との混合で調合される。
【0122】
1つの態様では、本発明の栄養補助食品を飲料として調合するが、顆粒、カプセルまたは坐剤形態で調合することもできる。
【0123】
サプリメントは、従来の方法を用いて調製されるソフトゲルの形態で提供することができる。ソフトゲルは、少量のサプリメントを封入するゼラチンの層を一般に含む。サプリメントは、液体を充填し封止したゼラチンカプセルの形態である場合もあり、これは、従来の方法を用いて製造することができる。
【0124】
カプセル、顆粒または坐剤形態の本発明の栄養補助食品組成物を調製するために、従来の調合技術に従って、本発明の1つ以上の組成物と医薬的に許容される担体とを均質混合することがある。カプセルおよび顆粒などの固体経口調製品については、適する担体および添加剤、例えば、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが含まれることがある。
【0125】
本発明のもう1つの態様に従って、キットを提供する。1つの態様において、本キットは、本発明の化合物または医薬組成物を含む。本キットは、本発明の組成物が入っている容器を収容し、対象にその組成物を投与するための指図書も収容しているパッケージであり得る。
【0126】
本発明の実施形態において、有益効果、特に持続的有益効果、をもたらす本発明の医薬組成物の成分の1つ以上を満たした1つ以上の容器を含む薬剤パックまたはキットを提供する。様々な記載物、例えば、使用説明書、すなわち、医薬品または生物学的製剤のラベル付け、製造、使用または販売を規制する政府機関によって命じられた形式の注意書き(この注意書きは、人への投与のための製造、使用または販売に関するその機関による認可を反映する)を、そうした容器に付帯させることができる。
【0127】
用途
本発明は、有益効果をもたらすために1つ以上のエピ−イノシトール化合物を利用する組成物および方法に関する。特に、本発明は、疾患および/または疾病を治療するための、特に、疾病の重症度、疾病の症状、ならびに/または本明細書に開示する疾患および/もしくは疾病の再発の周期性を予防および/または改善するための、本発明の組成物の使用を考えている。本発明は、本発明の組成物または治療薬を使用して、哺乳動物において疾患および/または疾病を予防および/または治療することも考えている。実施形態において、本発明は、より大きな可溶性、安定性、効能、効力および/または有用性、特に、より大きな可溶性および安定性をはじめとする有益効果をもたらす化合物を含む組成物を提供することができる。
【0128】
1つの態様において、本発明は、有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と、医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することによる、健常対象の記憶または加齢性記憶障害を有する対象の記憶を改善する方法を提供する。
【0129】
もう1つの態様において、本発明は、記憶、特に短期記憶、および加齢プロセス随伴する他の精神機能障害を改善するための方法にさらに関連し、この方法は、有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、もしくはその医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与すること含む。
【0130】
1つの態様において、記憶を改善する必要がある哺乳動物(この場合、該哺乳動物は、記憶を損なわせるまたは別様に低下させることが知られている疾病、疾患、虚弱または病気と診断されていない)を治療するための方法を提供し、この方法は、記憶改善有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物もしくはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体を含む栄養補助食品をその哺乳動物に投与することを含む。
【0131】
本発明のもう1つの態様において、タンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存の異常に関連した中枢もしくは末梢神経系または全身器官の状態を対象において治療するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、もしくはその医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を、その対象に投与することを含む。
【0132】
さらなる態様において、本発明は、1つ以上のエピ−イノシトール化合物である治療化合物、もしくはその医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を対象に投与することを含む、アミロイド形成、沈着、蓄積および/もしくは残存を阻害する、ならびに/または既存アミロイドの溶解/破壊を生じさせる方法を提供する。従って、本発明の化合物および組成物は、アミロイド沈着が発生する疾患においてアミロイドーシスを抑制するために使用することができる。
【0133】
さらなる態様において、本発明は、1つ以上のエピ−イノシトール化合物である治療化合物、もしくはその医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を治療有効量で対象に投与して認知機能を改善する、血管負荷量を減少させる、星状神経膠細胞症を減少させる、アミロイド負荷を減少させる、小神経膠細胞症を減少させる、および/または生存を増加させることを含む方法を提供する。
【0134】
もう1つの態様において、本発明は、本発明の化合物で破壊または解離することができるアミロイド相互作用に関連した状態を対象において治療する方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を、その対象に投与することを含む。
【0135】
1つの態様において、本発明は、対象におけるアミロイドタンパク質集合を予防、逆転、減少もしくは阻害する、アミロイド沈着のクリアランスを増進する、またはアミロイド沈着物の沈着を遅速するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0136】
1つの態様において、本発明は、対象におけるアミロイド原線維形成、器官特異的機能不全(例えば、神経変性)、または細胞毒性を予防、逆転、減少または阻害するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を、その対象に投与することを含む。
【0137】
もう1つの態様において、本発明は、動物における配座改変タンパク質集合または凝集を予防または逆転する方法を提供し、この方法は、1つ以上のエピ−イノシトール化合物(その類似体または誘導体を含む)をその配座改変タンパク質に導入することを含む。
【0138】
本発明のさらなる態様では、動物における配座改変タンパク質集合または凝集を予防または逆転する方法を提供し、この方法は、1つ以上のエピ−イノシトール化合物をその配座改変タンパク質に導入することを含む。
【0139】
本発明のさらなる態様では、動物における配座改変タンパク質集合または凝集を治療する方法を提供し、この方法は、治療有効量の本発明の組成物を投与することを含む。
【0140】
1つの態様において、本発明は、対象におけるシナプス機能を増大または維持するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0141】
本発明は、アミロイド沈着、特にアミロイドーシス、を特徴とする疾患および/または疾病、さらに詳細には、アルツハイマー病を治療に、特に利用することができる。例えば、本発明は、アミロイド沈着を特徴とする疾病、さらに特にアルツハイマー病、の症状を有する対象に投与すると、有益効果、好ましくは持続的有益効果を生じさせる、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、またはエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む、治療方法を提供する。1つの実施形態において、有益効果は、次のうちの1つ以上によって証明される:凝集したAβもしくはAβオリゴマーの破壊、長期増強の増大もしくは回復、ならびに/またはシナプス機能の維持もしくは増大、ならびに/またはAβの脳内蓄積、脳アミロイド斑沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマー、神経膠活性、炎症および/もしくは認知低下の減少。
【0142】
1つの態様において、本発明は、疾病および/または疾患の進行を改善する、またはより低い重症度の病期をそうした疾病(例えば、アルツハイマー病)に罹患している対象において達成するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0143】
もう1つの態様において、本発明は、疾患および/または疾病(例えば、アルツハイマー病)の進行を遅延させる方法に関し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0144】
さらなる態様において、本発明は、疾患および/または疾病に罹患している対象の生存を増加させる方法に関し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0145】
1つの実施形態において、本発明は、疾患および/または疾病(例えば、アルツハイマー病)に罹患している対象の寿命を改善する方法に関し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0146】
1つの態様において、本発明は、軽度認知障害(MCI)を治療するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を投与することを含む。
【0147】
1つの実施形態において、本発明は、対象において認知障害およびアミロイド斑神経病態の発症後にアミロイド沈着および神経病態を減少または逆転させる方法を提供し、この方法は、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を、その対象に投与することを含む。
【0148】
もう1つの実施形態において、本発明は、対象において認知障害およびアミロイド斑神経病態の発症後にアミロイド沈着および神経病態を減少または逆転させる方法を提供し、この方法は、認知障害およびアミロイド斑神経病態の発症後にアミロイド沈着および神経病態を減少または逆転させるために有効な量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、その医薬的に許容される塩、または1つ以上のエピ−イノシトール化合物と医薬的に許容される担体、賦形剤もしくはビヒクルとを含む組成物を、対象に投与することを含む。
【0149】
本発明の態様は、疾患および/または疾病(例えば、アルツハイマー病)の継続治療のために1つ以上のエピ−イノシトール化合物を使用するための改変された方法および組成物を提供する。1つの実施形態において、本発明は、より大きな効能、効力および有用性を実現する1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む組成物を提供する。例えば、より大きな効能は、治療を終えた後、持続的改善および/または生存増加を生じさせる、治療での認知低下および/またはアルツハイマー病における生存の改善または逆行によって証明することができる。
【0150】
本発明の態様において、式Iの化合物は、アルツハイマー病の治療に利用することができる。例えば、アルツハイマー病は、治療有効量の式Iの化合物を投与することによって治療することができる。こうした治療は、アルツハイマー病の変性作用(具体的には、排他的にではないが、中枢神経系の荒廃、精神能力の喪失、短期記憶の喪失および検討識障害を含む)を抑制するために有効であり得る。
【0151】
疾病がアルツハイマー病、認知症またはMCIである実施形態において、本発明の化合物または組成物あるいは治療の有益効果は、次のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、または以下のすべて、特に、5もしくは10以上、さらに特に次のうちの15以上のこととして顕在化し得る:
a)アルツハイマー病の症状を有する対象への投与後の、本明細書に開示する化合物が不在の状態でのレベルに比しての、長期増強の増大または回復。本発明の態様において、本化合物は、対象における長期増強の少なくとも約0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%増大を誘導する。
【0152】
b)アルツハイマー病の症状を有する対象への投与後の、本明細書に開示する化合物が不在の状態でのシナプス機能のレベルに比しての、シナプス機能の増加または維持。本発明の態様において、本化合物は、対象におけるシナプス機能の少なくとも0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、100%、125%、150%、175%または200%増加を誘導する。
【0153】
c)シナプトフィジンの増加。本発明の態様において、シナプトフィジンは、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、100%、125%、150%、175%または200%増加させる。
【0154】
d)シナプトフィジン反応性膿疱および細胞体の増加。本発明の態様において、シナプトフィジン反応性膿疱および細胞体は、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、100%、125%、150%、175%または200%、さらに特に、約100〜150%または140〜150%増加させる。
【0155】
e)アルツハイマー病の症状を有する対象への投与後の炎症、特にAβ誘発性炎症反応、の症状の増加についての減少、遅速もしくは防止、または該症状の不在。
【0156】
f)アルツハイマー病の症状を有する対象における、本明細書に開示する化合物が不在の状態で測定したレベルに比しての、アミロイドβの脳蓄積の増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本化合物は、アミロイドβの脳蓄積の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0157】
g)アルツハイマー病の症状を有する対象における、本明細書に開示する化合物が不在の状態で測定したレベルに比しての、脳アミロイド斑沈着増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本化合物は、脳アミロイド斑沈着の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0158】
h)斑数増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本明細書に開示する化合物は、斑数の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。特定の態様において、本化合物は、斑数の5〜15%または10〜15%減少を誘導する。
【0159】
i)斑サイズの増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本明細書に開示する化合物は、斑サイズの少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。特定の態様において、本化合物は、斑サイズの5〜15%または10〜15%の減少を誘導する。
【0160】
j)斑に覆われた脳の面積率の増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本明細書に開示する化合物は、斑に覆われた脳の面積率の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。特定の態様において、本化合物は、斑に覆われた脳の面積率の5〜15%または10〜15%減少を誘導する。
【0161】
k)アルツハイマー病の症状を有する対象における、本明細書に開示する化合物が不在の状態で測定したレベルに比しての、脳内可溶性Aβオリゴマー増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本組み合わせは、可溶性Aβオリゴマーの少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0162】
l)脳Aβ40レベルの増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本明細書に開示する化合物は、Aβ40の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。特定の態様において、本化合物は、脳Aβ40レベルの10〜50%、20〜45%、または25〜35%減少を誘導する。
【0163】
m)CSFまたは血液などの体液中のAβ42レベルの増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本明細書に開示する化合物は、Aβ42の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。特定の態様において、本化合物は、脳Aβ42レベルの10〜50%、15〜40%、または20〜25%減少を誘導する。
【0164】
n)脳Aβ42レベルの増加の減少、遅速または防止。本発明の態様において、本明細書に開示する化合物は、Aβ42の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。特定の態様において、本化合物は、脳Aβ42レベルの10〜50%、15〜40%、または20〜25%減少を誘導する。
【0165】
o)アルツハイマー病の症状を有する対象における、本明細書に開示する化合物が不在の状態で測定したレベルに比しての、脳における神経膠活性の増加の減少、遅速または防止。好ましくは、本化合物は、神経膠活性の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0166】
p)治療後、長期間にわたる、特に、少なくとも5週間、6週間、8週間、10週間、12週間、14週間、16週間、20週間、24週間、30週間、40週間、52週間または78週間、さらに具体的には、2から4週間、2から5週間、3から5週間、2から6週間、2から8週間、2から10週間、2から12週間、2から16週間、2から20週間、2から24週間、2週間から12ヶ月間、または2週間から24ヶ月間の、ほぼ正常でのシナプス機能の維持。
【0167】
q)アルツハイマー病を有する対象における疾病進行速度の減少または遅速。特に、アルツハイマー病を有する対象における認知低下の減少または遅速。
【0168】
r)総血管負荷量の減少。本発明の態様において、本化合物は、総血管負荷量の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0169】
s)星状神経膠細胞症の減少。本発明の態様において、本化合物は、星状神経膠細胞症の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0170】
t)小神経膠細胞症の減少。本発明の態様において、本化合物は、小神経膠細胞症の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少を誘導する。
【0171】
u)認知低下の減少または遅速。
【0172】
v)アミロイド血管症の減少または遅速。
【0173】
w)死亡加速の低減。
【0174】
x)アルツハイマー病の症状を有する対象の生存の増加。好ましくは、本化合物は、生存の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%増加を誘導する。
【0175】
本発明の態様において、本発明の組成物または治療の有益効果は、(a)および(b);(a)、(b)および(c);(a)、(b)、(e)、(f)および(g);(a)、(b)、(e)、(f)から(h);(a)、(b)、(e)、(f)から(i);(a)、(b)、(e)、(f)から(j);(a)、(b)、(e)、(f)から(k);(a)、(b)、(e)、(f)から(l);(a)、(b)、(e)、(f)から(m);(a)、(b)、(e)、(f)から(n);(a)、(b)、(e)、(f)から(o);(a)、(b)、(e)、(f)から(p);(a)、(b)、(e)、(f)から(q);(a)、(b)、(e)、(f)から(r);(a)、(b)、(e)、(f)から(s);(a)、(b)、(e)、(f)から(t);(a)から(d);(a)から(e);(a)から(f);(a)から(g);(a)から(h);(a)から(i);(a)から(j);(a)から(k);(a)から(l);(a)から(m);(a)から(n);(a)から(o);(a)から(p);(a)から(q);(a)から(r);(a)から(s);(a)から(t);(a)から(u);(a)から(v);(a)から(w)または(a)から(x)として顕在化し得る。
【0176】
統計学的に有意な有益効果、特に、上の(a)から(x)の効果のうちの1つ以上を有する本発明の化合物、医薬組成物および方法を選択することができる。持続的有益効果、特に、統計学的に有意な持続的有益効果を有する本発明の化合物、医薬組成物および方法を選択することもできる。1つの実施形態において、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む、統計学的に有意な持続的有益効果、特に、上の(a)から(x)のうちの1つ以上の持続的有益効果を有する、医薬組成物を提供する。本発明の態様において、前記有益効果のうちの1つ以上が、従来の治療薬と比較して強化された治療効果をもたらす。
【0177】
一部の態様において、本発明の治療のより大きな効能および効力は、有害副作用および毒性を減少させつつ、治療の治癒比を改善することができる。本発明の選択された方法は、長年にわたるアルツハイマー病を、症状出現からずっと後に治療を始めた場合でさえ、改善することもできる。本発明に従って、本発明の化合物または組成物の投与後、長期にわたって効能のある治療を達成することができる。
【0178】
1つの態様において、本発明は、アルツハイマー病を治療するための方法に関し、この方法は、対象におけるAβ、Aβ凝集物またはAβオリゴマー、特に、Aβ40またはAβ40凝集物もしくはオリゴマーならびに/あるいはAβ42またはAβ42凝集物もしくはオリゴマー、を、治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物またはエピ−イノシトール化合物を含む組成物と接触させることを含む。
【0179】
もう1つの態様において、本発明は、アルツハイマー病を治療するための方法を提供し、この方法は、凝集したAβまたはオリゴマーを、投与後、長期間にわたって破壊するために十分な量で、1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む組成物を供給することによる。
【0180】
さらなる態様において、本発明は、その必要がある患者においてアルツハイマー病を治療するための方法を提供し、この方法は、長期増強を増大もしくは回復させるおよび/またはシナプス機能を維持するために十分な用量で、1つ以上のエピ−イノシトール化合物を供給する組成物を個体に投与することを含む。もう1つの態様において、本発明は、アルツハイマー病を治療するための方法を提供し、この方法は、投与後、長期間にわたってAβの脳蓄積、脳アミロイド斑沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマー、神経膠活性、および/または炎症を減少させる量のエピ−イノシトール化合物を、哺乳動物に投与、好ましくは経口または全身投与することを含む。
【0181】
本発明は、1つの実施形態において、アルツハイマー病を治療するための方法を提供し、この方法は、認知低下を、特に、投与後、長期間にわたって減少させるために十分な量で1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む組成物を、その必要がある哺乳動物に投与することを含み、それによってアルツハイマー病を治療する。
【0182】
本発明は、1つの実施形態において、アルツハイマー病を治療するための方法を提供し、この方法は、シナプス機能を、特に、投与後、長期間にわたって増大または維持するために十分な量で1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む組成物を、その必要がある哺乳動物に投与することを含み、それによってアルツハイマー病を治療する。
【0183】
もう1つの態様において、本発明は、アルツハイマー病を予防および/または治療するための方法を提供し、この方法は、凝集したAβまたはAβオリゴマーを、投与後、長期間にわたって破壊するために十分な量で1つ以上のエピ−イノシトール化合物を含む組成物を、その必要がある哺乳動物に投与すること、および凝集したAβまたはAβオリゴマーの量を決定することを含み、それによってアルツハイマー病を治療する。凝集したAβまたはAβオリゴマーの量は、Aβに特異的な抗体、または検出可能物質で標識されたエピ−イノシトールを使用して、測定することができる。
【0184】
本発明は、ベータ−セクレターゼ阻害剤、ガンマ−セクレターゼ阻害剤、イプシロン−セクレターゼ阻害剤、ベータ−シート凝集/原線維発生/ADDL形成についての他の阻害剤(例えば、Alzhemed)、NMDA拮抗薬(例えば、メマンチン)、非ステロイド系抗炎症化合物(例えば、イブプロフェン、Celebrex)、抗酸化物質(例えば、ビタミンE)、ホルモン(例えば、エストロゲン)、栄養素および栄養補助食品(例えば、イチョウ)、スタチンおよび他のコレステロール低下薬(例えば、LovastatinおよびSimvastatin)、アセチルコリンエステレラーゼ阻害剤(例えば、ドネゼピル)、ムスカリン作動薬(例えば、AF102B(Cevimeline、EVOXAC)、AF150(S)、およびAF267B)、抗精神病薬(例えば、ハロペリドール、クロザピン、オランザピン)、抗うつ薬(三環系抗うつ薬およびセロトニン再取り込み阻害剤(例えば、SertralineおよびCitalopram Hbr)を含む)、スタチンおよび他のコレステロール低下薬(例えば、LovastatinおよびSimvastatin)、免疫治療薬およびAβに対する抗体(例えば、ELAN AN−1792)、ワクチン、TAUタンパク質をリン酸化するキナーゼ(CDK5、GSK3α、GSK3β)の阻害剤(例えば、塩化リチウム)、Aβ生産を修飾するキナーゼ(GSK3α、GSK3β、Rho/ROCKキナーゼ)の阻害剤(例えば、塩化リチウムおよびイブプロフェン)、ネプリライシン(Aβを分解する酵素)をアップレギュレートする薬物、インスリン分解酵素(Aβを分解する酵素)をアップレギュレートする薬物、疾病に起因するもしくは関連した合併症を治療するために使用される薬剤、または副作用を治療もしくは予防する一般的薬剤をはじめとする(しかし、これらに限定されない)1つ以上の追加の治療薬との併用治療で本発明の組成物を使用する方法も含む。本発明は、ネプリライシン(Aβを分解する酵素)のアップレギュレーションへの遺伝子療法および/もしくは薬物ベースのアプローチ、インスリン分解酵素(Aβを分解する酵素)のアップレギュレーションへの遺伝子療法および/もしくは薬物ベースのアプローチ、または幹細胞および他の細胞ベースの療法をはじめとする(しかし、これらに限定されない)1つ以上の追加の治療との併用治療での本発明の組成物の使用方法も含む。
【0185】
予想外の相加効果または相加効果より大きい効果、すなわち相乗効果をもたらすように、エピ−イノシトール化合物と治療薬または治療との組み合わせを選択することができる。他の治療薬および療法は、別のメカニズムによって作用することができ、ならびに本発明との相加/相乗効果を有することができる。
【0186】
最大の治療効果を達成する、1つ以上のエピ−イノシトール化合物と、別のメカニズムを用いる治療薬とを含む組成物または方法(すなわち、併用療法)は、その療法に対する許容度を向上させ、より高い用量またはより長期の単独療法(すなわち、それぞれの化合物単独での療法)に起因し得る副作用のリスクを減少させることができる。併用療法によって、それぞれの化合物をより低い用量で使用し、それぞれの化合物の有害毒性作用を減少させることもできる。最適以下の投薬量によって、安全限界の増大をもたらすことができ、予防および治療を達成するために必要な薬物のコストを減少させることもできる。加えて、単回併用投薬単位を利用する治療は、適便性の増大をもたらすことができ、結果としてコンプライアンスを向上させることができる。併用療法の他の利点としては、分解および代謝に対するより高い安定性、より長い作用継続時間、ならびに/または特に低い用量でのより長い作用継続時間もしくは有効性を挙げることができる。
【0187】
1つの態様において、本発明は、疾患および/または疾病の治療における薬物を調製するための少なくとも1つのエピ−イノシトール化合物を含む組成物の使用を考えている。本発明は、疾患および/または疾病の予防および/または治療用の薬物を調製するための少なくとも1つのエピ−イノシトール化合物を含む組成物の使用も考えている。加えて、本発明は、疾患および/または疾病の予防および/または治療用の薬物の調製における本発明の医薬組成物の使用を提供する。前記薬物は、治療後に有益効果、好ましくは持続的有益効果、をもたらす。前記薬物は、その臨床設定に関係なく、アミロイド形成、沈着、蓄積および/または残存を阻害するための、対象による消費のための形態、例えば、ピル、錠剤、キャプレット、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、ロゼンジ、サッシェ、カシェ剤、VegiCap、液滴、エリキシル、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としてもしくは液体媒質中のもの)、坐剤、滅菌注射溶液、ならびに/または滅菌包装粉末であり得る。
【0188】
1つの実施形態において、本発明は、疾患および/または疾病の治療において治療効果、特に、有益効果、好ましくは持続的有益効果をもたらすための薬物を調製するための、治療有効量の本発明の少なくとも1つのエピ−イノシトール化合物または組成物の使用に関する。
【0189】
もう1つの実施形態において、本発明は、アルツハイマー病の長期または継続治療用の薬物を調製するための本発明の1つ以上のエピ−イノシトール化合物または組成物の使用を提供する。
【0190】
さらなる実施形態において、本発明は、異常なタンパク質フォールディングおよび/もしくは凝集ならびに/またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾患を治療するために経口投与によって用いる医薬組成物を調製するためのエピ−イノシトール化合物の使用を提供する。
【0191】
本発明の組成物および方法の治療効果および毒性は、細胞培養物におけるまたは実験動物を用いる標準的な製薬学的手順によって、例えば、ED50(その集団の50%において治療上有効である用量)またはLD50(その集団の50%に対して致死的である用量)統計量などの統計学的パラメータを計算することによって、決定することができる。治療指数は、治療効果の毒性効果に対する用量比であり、ED50/LD50比として表すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。治療効果、特に、本発明に開示する有益効果、のうちの1つ以上を対象または疾病モデルにおいて実証することができる。例えば、有益効果は、本明細書中の実施例で説明するモデルにおいて実証することができ、特に、アルツハイマー病の症状を有するTgCRND8マウスにおいて有益効果を実証することができる。
【0192】
投与
本発明のエピ−イノシトール化合物および組成物を、活性薬剤(単数または複数)と、対象または患者の体内の該薬剤の作用部位との接触を生じさせる任意の手段によって投与して、治療効果、特に有益効果、特に持続的有益効果を生じさせることができる。複数の活性成分を同時に投与して、または異なる時点で任意の順序で逐次的に投与して、所望の有益効果をもたらすことができる。本発明の化合物および組成物は、局所または全身送達のために徐放するように調合することができる。治療効果、特に、有益効果、さらに特に持続的有益効果をもたらすために、本発明の組成物および治療の効果を最適にする投与形態および経路を選択することは、熟練した医師または獣医の能力の範囲内に存する。
【0193】
本化合物および組成物は、経口剤形、例えば、錠剤、カプセル(それぞれが、徐放性または持効性製剤を含む)、ピル、粉末、顆粒、エリキシル、チンキ剤、懸濁液、シロップおよび乳濁液で投与することができる。それらは、静脈内用形態(ボーラスまたは輸液)、腹腔内用形態、皮下用形態または筋肉内用形態で投与することもでき、これらのすべてが、製薬技術分野における通常技能者に周知の剤形を利用する。本発明の組成物は、適する鼻腔内ビヒクルの局所使用により鼻腔内経路によって、または例えば従来の経皮パッチを使用して経皮経路によって投与することができる。経皮送達システムを使用する投与のための投薬プロトコルは、その投薬レジメンを通して間欠的にではなく継続的であり得る。これらの治療薬に徐放性処方を用いてもよい。
【0194】
本発明の態様において、本化合物および組成物は、末梢投与によって、特に、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、経口投与、局所投与、経粘膜投与、または肺投与によって、投与される。
【0195】
本発明の投薬レジメンは、公知の因子、例えば、薬剤の薬力学的特徴、それらの投与形式および経路、患者の種、年齢、性別、健康、医療状態および体重、症状の性質および程度、併用療法の種類、治療頻度、投与経路、患者の腎臓および肝臓機能、ならびに所望される効果に依存して、変わるであろう。
【0196】
特定の疾患および/または疾病の治療において効果、特に有益効果、さらに特に持続的有益効果をもたらすために有効であろう、エピ−イノシトール化合物およびそれを含む組成物の量は、その疾患および/または疾病の性質に依存することとなり、これは、標準的な臨床技術によって決定することができる。調合に用いるための正確な用量も、投与経路およびその疾病の重症度に依存することとなり、これは、現場の医師の判断およびそれぞれの患者の環境に従って決定されるはずである。
【0197】
特に、投与に適する投薬範囲は、治療効果、特に有益効果、さらに特に持続的有益効果をもたらすように選択される。投薬範囲は、一般に、所望の生物学的応答を誘発するために有効な範囲である。投薬範囲は、一般に、対象の体重の、kg当たり約.5mgから約2g、kg当たり約1mgから約1g、kg当たり約1mgから約200mg、kg当たり約1mgから約100mg、kg当たり約1mgから約50mg、kg当たり約10mgから約100mg、またはkg当たり約30mgから約70mgである。
【0198】
本発明の一部の態様において、1日1回、2回、3回またはそれ以上、特に1日1回または2回投与される本明細書に開示する化合物の投薬範囲は、約1から100mg/kg、1から90mg/kg、1から80mg/kg、1から75mg/kg、1から70mg/kg、1から60mg/kg、1から50mg/kg、1から40mg/kg、1から35mg/kg、2から35mg/kg、2.5から30mg/kg、3から30mg/kg、3から20mg/kg、または3から15mg/kgである。
【0199】
本発明の実施形態において、1日2回投与される本明細書に開示する化合物の必要用量は、約1から50mg/kg、1から40mg/kg、2.5から40mg/kg、3から40mg/kg、3から35mg/kg、最も好ましくは3から30mg/kgである。本発明の実施形態において、本化合物の必要日用量は、約1から80mg/kgであり、ならびに1から70mg/kg、1から65mg/kg、2から70mg/kg、3から70mg/kg、4から65mg/kg、5から65mg/kgまたは6から60mg/kgにわたる範囲内である。
【0200】
本発明の実施形態において、1日2回投与される本明細書に開示する化合物の必要用量は、約1から50mg/kg、1から40mg/kg、2.5から40mg/kg、3から40mg/kg、3から35mg/kg、最も好ましくは3から30mg/kgである。
【0201】
本発明の他の実施形態において、本明細書に開示する化合物の必要日用量は、約1から80mg/kgであり、ならびに1から70mg/kg、1から65mg/kg、2から70mg/kg、3から70mg/kg、4から65mg/kg、5から65mg/kgまたは6から60mg/kgにわたる範囲内である。
【0202】
本発明の組成物または治療は、有益効果、特に、本明細書において述べる有益効果(a)から(t)のうちの1つ以上をもたらすために少なくとも1つのエピ−イノシトール化合物の単位投薬量を含んでもよい。「単位投薬量」または「投薬単位」は、活性薬剤それ自体を含むまたは1つ以上の固体もしくは液体製薬用賦形剤、担体もしくはビヒクルとの混合物を含む物理的および化学的に安定な単位のままで、患者に投与することができる、ならびに容易に取り扱うことおよび包装することができる単位用量、すなわち単一用量を指す。
【0203】
実質的にいずれの所望されるスケジュールででも、エピ−イノシトール化合物またはその組成物もしくは製剤を用いて、対象を治療することができる。本発明の組成物は、1日1回以上、特に1日1または2回、週1回、月1回、または継続的に投与することができる。しかし、対象を、1日おきもしくは週1回などのより少ない頻度で治療することもでき、またはより多い頻度で治療することもできる。
【0204】
本発明のエピ−イノシトール化合物、組成物または製剤は、約もしくは少なくとも約1週間、2週間から4週間、2週間から6週間、2週間から8週間、2週間から10週間、2週間から12週間、2週間から14週間、2週間から16週間、2週間から6ヶ月間、2週間から12ヶ月、2週間から18ヶ月間、または2週間から24ヶ月間、定期的にまたは継続的に対象に投与することができる。
【0205】
1つの態様において、本発明は、エピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体を含むサプリメントを人に投与することを含む、人の食事を補うためのレジメンを提供する。少なくともほぼ毎日、またはそれより少ない頻度で、例えば1日おきもしくは週1回、対象をサプリメントで治療することができる。本発明のサプリメントは、毎日摂取できるが、より低い頻度の消費、例えば、週に数回の消費または独立した用量での消費でさえ、有益であり得る。
【0206】
特定の態様において、本発明は、人の食事を補うためのレジメンを提供し、このレジメンは、約25から約200ミリグラムの式Iの化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体をその人に毎日投与することを含む。もう1つの態様では、約50〜100ミリグラムの式Iの化合物をその人に毎日投与する。
【0207】
本発明のサプリメントは、食事と共に摂取してもよいし、または食後に摂取してもよい。例えば、個人の朝食時、および/または個人の昼食時にサプリメントを摂取することができる。食事直前、中または直後に一部を投与してもよい。毎日消費する場合、その人の朝食の直前、中または直後にサプリメントの一部を消費し、そのサプリメントの第二の部分をその人の昼食の直前、中または直後に消費してもよい。朝の分および昼の分は、それぞれ、ほぼ同量のエピ−イノシトール化合物を供給することができる。本明細書に記載するサプリメントおよびレジメンは、一般に認知されている栄養ガイドラインに従ったバランスのとれた食事および週に数回の軽度から中等度運動プログラムと併用すると、最も有効であり得る。
【0208】
1つの実施形態において、人の食事を補うためのレジメンを提供し、このレジメンは、そのサプリメントのグラム当たり約5ミリグラムから約30ミリグラムの1つ以上のエピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体を含むサプリメントをその人に投与することを含む。1つの実施形態では、そのサプリメントの一部をその人の朝食時に投与し、そのサプリメントの第二の部分をその人の昼食時に投与する。
【0209】
特定の実施例によって本発明をさらに詳細に説明することとする。以下の実施例は、例証を目的として提供するものであり、如何なる点においても本発明を制限するためのものではない。変更または修飾して本質的に同じ結果をもたらすことができる様々な重要でないパラメータは、当業者には容易にわかることだろう。
【実施例】
【0210】
(実施例1)
本実施例で説明する試験では、以下の方法を用いた:
マウス。C3H/B6非近交系バックグラウンドに対してTgCRND8マウス[12、13]の実験群を、最初、エピ−シクロヘキサンヘキソールまたはシロ−シクロヘキサンヘキソールのいずれか30mg/日で治療した。この初期投薬量は、様々な精神障害のために人間の患者に一般に投与されるミオ−シクロヘキサンヘキソールの用量(6〜18グラム/日/成人または86〜257mg/Kg/日)の投与量に基づいて選択した[21]。これらの投薬量でのミオ−シクロヘキサンヘキソールは、人間または動物において毒性を有さなかった。ここで説明する試験を5mg/Kg/日〜100mg/Kg/日の用量を用いて繰り返し、これらの代替用量は、同じ結果を生じさせた(データは示さない)。動物のコホート(治療アーム当たりマウス n=10)を月齢5ヶ月で試験に参加させて、1ヵ月の治療の後、転帰を分析した。体重、毛皮の特徴およびケージ内での行動をモニターした。カロリー摂取量の潜在的変化についての陰性対照として、マンニトールを使用した。すべての実験は、カナダ動物管理協会(Canadian Council on Animal Care)ガイドラインに従って行った。
【0211】
行動試験:以前に記載されたとおり、モーリス水迷路試験を行った[13]。非空間的予備訓練の後、マウスは、5日間の場所判別訓練と1日4回の試験、続いて、一般的な動機づけ、学習不足および運動の問題を除外するために手がかりのある見える足場、そして記憶を評価するためのプローブ試験を経験した。「対象間」因子として治療(未治療、エピ−またはシロ−シクロヘキサンヘキソール)および遺伝子型(TgCRND8 対 非Tg)を用いる反復測定分散分析(ANOVA)にデータを付した。運動活動のためのオープンフィールド試験を、以前に記載されたとおりに行った[22]。歩行、休止、毛づくろいを自発的運動活動の指標として分析した。感覚運動機能は、他の部分で説明されたようなEconomex(商標)加速ロータロッド(オハイオ州、コロンバスのColumbus Instruments)で試験した[23]。ロッドは、5r.p.m.の初期一定速度から0.2r.p.m./秒の率で加速されるように設定した。30分間隔で行う1日4回の検定で、落下までの潜伏時間を記録した。試験前、7日間、すべてのマウスを訓練した。それら4回の検定に関するその落下までの潜伏時間を合計することによって、それぞれの動物についての試験日動作スコアを得た。
【0212】
脳アミロイド負荷。脳を取り出し、一方の脳半球を4%パラホルムアルデヒドで固定し、正中矢状面でパラフィンワックスに包埋した。系統的均一ランダム切片のセットを生じさせるために、その全脳半球にわたって5μm連続切片を採集した。50μm間隔での切片のセットを分析に用いた(10〜14切片/セット)。ギ酸での抗原賦活、一次抗Aβ抗体(Dako M−0872)とのインキュベーション、続いての二次抗体(Dako StreptABC複合体/ホースラディッシュキット)とのインキュベーションの後、斑を同定した。最終製品をDABで可視化し、ルクソール・ファスト・ブルーで対比染色した。Leica顕微鏡および株式会社日立製作所(Hitachi)KP−M1U CCDビデオカメラとインターフェースで接続されたLeco IA−3001画像分析ソフトウェアを用いて、アミロイド斑負荷を評価した。次に、斑数および斑面積決定のために、Openlab画像形成ソフトウェア(マサチューセッツ州、レキシントンのImprovision)を使用して顕微鏡写真を2値画像に変換した。血管アミロイド負荷を、血管から発生するまたは血管を取り巻くアミロイドと定義し、同様に分析した。
【0213】
血漿および脳Aβ含量。半脳サンプルを緩衝スクロース溶液で均質化し、その後、可溶性Aβレベルのために0.4%ジエチルアミン/100mM NaClで、または全Aβの単離のために冷ギ酸で均質化した。中和後、それらのサンプルを希釈し、市販のキット(BIOSOURCE International)を使用してAβ40およびAβ42について分析した。それぞれの脳半球を三重反復で分析し、その平均値±SEMを報告した。Aβ種分析用のウレアゲルを使用して、すべての画分に対してウエスタンブロット分析を行った[24]。6E10(BIOSOURCE International)およびEnhanced Chemiluminenscence(Amersham)を使用して、Aβを検出した。
【0214】
神経膠症定量。治療および対照マウスの、パラホルムアルデヒドで固定し凍結した脳半球から、ランダムに選択した均等間隔の矢状切片を5つ採集した。切片を、星状神経膠細胞については抗ラットGFAP IgG2a(Dako;1:50希釈したもの)で、および小神経膠細胞については抗ラットCD68 IgG2b(Dako;1:50)で免疫標識した。Zeiss,Axioscope 2 Plus顕微鏡に搭載したCoolsnapデジタルカメラ(アリゾナ州、タスコンのPhotometrics)を使用して、デジタル画像を取り込んだ。Openlab 3.08画像形成ソフトウェア(マサチューセッツ州、レキシントンのImprovision)を使用して画像を分析した。
【0215】
生存調査:死亡が発生するたびに生存の確率を算定し、そのようにして小さなサンプルサイズに適するものにするKaplan Meier技術[25]によって、生存の確率を評価した。生存分析のために、各治療群について35匹のマウスを使用した。Tarone−Ware試験を用いて、治療の効果を評価した。
【0216】
脳内のAPPの分析。20mM トリスpH7.4、0.25M スクロース、1mM EDTAおよび1mM EGTA、ならびに0.4% DEA(ジエチルアミン)/100mM NaClと混合したプロテアーゼ阻害カクテルの中でマウス半脳サンプルを均質化し、109,000×gで回転させた。上清は、mAb 22C11を使用してウエスタンブロット法によりAPPレベルについて分析し、一方、ペレットは、前に記載されたとようにmAb C1/6.1でAPPホロタンパク質について分析した[12、13]。
【0217】
可溶性Aβオリゴマー分析。可溶性Aβオリゴマーのレベルを、抗オリゴマー特異的抗体でのドットブロットアッセイによって測定した[18]。簡単に言うと、片方の半脳からオリゴマーをプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)の存在下でPBSに可溶化した。78,500×gで、1時間、4℃で遠心分離した後、上清を分析した。タンパク質含量をBCAタンパク質アッセイ(Pierce)によって決定した。全タンパク質のうちの2μgをニトロセルロース上にスポッティングし、TBS中の10%脱脂乳でブロックし、その後、ビオチン化オリゴマー特異的抗体と共にインキュベートした。ブロットをストレプタビジン−HRPおよびECL化学発光キットでインキュベートした。可溶性および原線維状Aβ42を陰性対照として使用し、合成オリゴマーAβ42を陽性対照として使用した[17]。対照サンプルは、オリゴマー抗体をストリップし、抗Aβ抗体6E10で再びプローブした後、再び同定した。
【0218】
長期増強。標準的手順によって、マウス海馬のCA1における電場電位を記録した[26、27]。P16とP26の間の歳のSwiss Websterマウスをイソフルランで麻酔した。脳を迅速に取り出し、次のものを含有する氷冷酸素化スクロース−CSFの中に入れた:(mMで)248 スクロース、2 KCl、2 MgSO4、1.24 NaH2PO4、1 CaCl2、1 MgCl2、26 NaHCO3、10 D−グルコース、pH7.4、〜315ミリオスモル[28]。それぞれの脳半球から海馬を単離し、350μm冠状切断を行った。それらのスライスを、NaCl−CSF(mMで:124 NaCl、2 KCl、2 MgSO4、1.25 NaH2PO4、2 CaCl2、26 NaHCO3、10 D−グルコース、pH7.4、〜310ミリオスモル)が入っている保持チャンバーに移し、1時間より長く放置して回復させた。そのチャンバーに入れたら、15mLのACSFを含有する閉ループによってスライスに継続的に潅流して、オリゴマーAβを保存した。20分の安定したベースラインの後、1mLの15倍濃縮7PA2調整培地±1.25μM シロ−シクロヘキサンヘキソールをその潅流ループに追加した。双極刺激電極(World Precision Inst.)をシャッファー側枝に配置してベースライン刺激および強縮をもたらした。ACSFを含有するホウケイ酸ガラス記録用電極(2〜4MΩ)を刺激電極から約75〜200μmの位置に配置した。最大電場電位応答の25〜40%が得られるように、刺激の強度(一般に、10〜20マイクロアンペア)を設定した。テスト刺激を0.05Hzでもたらした。LTPを誘導するために、5分間間隔で4回の強縮(1秒あたり100Hz)をもたらした。Axopatch 200Bを使用して、電場電位応答を10倍に増幅した。10kHzでデータをサンプリングし、2kHzでフィルタリングした。pClamp 9.2を使用してトレースを分析した。全応答の約10〜60%を用いて、電場電位の傾きを概算した。
【0219】
シナプトフィジン定量。
【0220】
パラホルムアルデヒドで固定した治療および対照マウスの3つの均等間隔矢状切片を用いて、シナプトフィジン免疫組織化学染色を行った。切片のシナプトフィジンを抗シナプトフィジンIgG(1:40;Roche,Laval,PQ)で免疫標識した。上で説明したようにデジタル画像を取り込み、分析した。それぞれの切片の中の、海馬CA1領域の3つのランダムに選択した100μm2エリアのシナプトフィジン反応性細胞体および膿疱をカウントした。100μm2当たりの反応性細胞体および膿疱の数の平均として結果を示す[29、30]。
【0221】
結果
それらのインビボでの有効性を評価するために、アルツハイマー病の頑強マウスモデル(TgCRND8)にイノシトール化合物を投与した[12、13]。TgCRND8マウスは、ヒトにおけるADの原因となる2つのミスセンス突然変異(KM670/671NLおよびV717F)を有するヒトアミロイド前駆体タンパク質トランスジーン(APP695)を発現する。約3ヶ月の月齢で、マウスは、脳Aβレベルの上昇と脳細胞外アミロイド斑の数の増加の両方を伴う進行性空間学習障害を示す[12]。月齢6ヶ月には、TgCRND8マウスの脳におけるAβのレベルならびにアミロイド斑の形態、密度および分布は、ADが十分に定着したヒトの脳において見られるものと同様である[12]。ADを有するヒト患者の場合のように、このマウスモデルの生化学的、行動的および神経病理学的特徴は、死亡加速を伴う[12、13]。
【0222】
TgCRND8マウスおよび非トランスジェニック同腹子を性別および年齢を合わせたコホートに割り付け、その後、それらを用いて、(月齢5ヶ月まで治療を延期し、月齢6ヶ月までの1ヶ月間治療して)シクロヘキサンヘキソール立体異性体の治療薬としての有効性を試験した。マウスは、活性化合物(1,2,3,4,5/6−(エピ−)シクロヘキサンヘキソールもしくは1,3,5/2,4,6−(シロ−)シクロヘキサンヘキソールの経口投与)を受ける、模擬治療(マンニトール)を受ける、または治療を受けないようにランダムに割り付けた。エンドポイントは、認知機能、脳Aβレベルおよび神経病態であった。1,2,3,5/4,6−(ミオ−)シクロヘキサンヘキソールは、これらの試験には含めなかった。以前のインビトロ試験[11]が、ミオ−シクロヘキサンヘキソールは、弱有効性でしかないことを示していたからであり、ならびにインビボ予備試験が、有意な恩恵を示さなかった(データは示さない)からである。これらの実験のコース全体をとおして、観察者は、遺伝子型または治療群を知らなかった。
【0223】
シクロヘキサンヘキソール立体異性体は定着した脳アミロイド沈着を逆転する
殆どのAD患者は、症候性になった後、すなわち、Aβオリゴマー化、沈着、毒性および斑形成が既に十分に進行した時点で、しか治療を求めないだろう。シクロヘキサンヘキソール立体異性体が十分に定着したAD様表現型を排除できるかどうかを評価するために、TgCRND8マウスの治療開始を月齢5ヶ月まで延期した。この月齢で、TgCRND8マウスは、豊富なAβペプチドおよび斑負荷を伴う有意な行動障害を有する[12]。TgCRND8および非Tg同腹子のコホート(コホート当たりマウス10匹)を、エピ−シクロヘキサンヘキソールでもしくはシロ−シクロヘキサンヘキソールで28日間治療するか、未治療のまま放置した。これらの実験に用いた化合物の投薬量および経口投与ならびに神経化学的および神経病理学的アッセイは、最初の予防実験において用いたものと同じであった。このコホートの動物についての死亡率曲線は生成しなかった。この試験の短さの結果、意味のあるデータを生じさせるには、未治療TgCRND8マウスにおける死亡数が少なすぎたからである。
【0224】
これらのマウスにおける空間学習を、28日間、エピ−シクロヘキサンヘキソールもしくはシロ−シクロヘキサンヘキソールで治療したまたは治療していない月齢6ヶ月TgCRND8マウス間で比較した。28日間、エピ−シクロヘキサンヘキソールで治療した月齢6ヶ月TgCRND8マウスの遂行能力は、未治療TgCRND8同腹子のものと有意な差がなく(F1,15=3.02、p=0.27;図1A)、それらの非Tg同腹子の遂行能力より有意の劣っていた(F1,14=11.7、p=0.004;図1C)。さらに、プローブ試験により、エピ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスは、未治療TgCRND8マウスと統計学的に差がなかった(p=0.52;図1E)。エピ−シクロヘキサンヘキソールは、疾病が既に存在する動物において、脳Aβ40もしくはAβ42レベル、斑で覆われた脳の面積率、または斑数に有意な影響を及ぼさなかった(表1)。
【0225】
シロ−シクロヘキサンヘキソールでの月齢5ヶ月TgCRND8マウスの28日治療は、未治療TgCRND8マウスと比較して有意に良好な行動能力を生じさせた(p=0.01)。実際、これらのシロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスの認知能力は、それらの非Tg同腹子と区別できなかった(F1,13=2.9、p=0.11;図1B、D)。シクロヘキサンヘキソール治療のこの有益効果は、行動、運動または知覚系に対する非特異的効果によるものではなかった。シクロヘキサンヘキソール治療は、非Tgマウスの認知能力に対して効果がなかったからである(F2,19=0.98;p=0.39)。プローブ試験において、環交差指数(annulus crossing index)は、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスについて、非Tg同腹子と統計学的な差がない記憶の有意な改善を示した(p=0.64;図1E)。別のマウスコホートにおいて、ターゲット4分の1区における時間%を代替尺度として用いた場合、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスは、非Tg同腹子と統計学的に差がなかった(p=0.28;データは示さない)。シロ−シクロヘキサンヘキソールの有益効果は、感覚運動行動の変化によるものではなかった。シロ−シクロヘキサンヘキソールは、オープンフィールド試験において、未治療TgCRND8マウス(F1,9=0.25;=0.63)と非Tg同腹子(F1,12=0.02;p=0.89)の両方と比較すると、TgCRND8マウスの毛づくろいまたは活性には効果を有さなかった(補足データ)。同様に、ロータロッド試験は、感覚運動機能に関して、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療および未治療TgCRND8マウス間で差を示さず(p=0.42)、治療TgCRND8と治療または未治療非Tg同腹子の間でも差を示さなかった(p=0.79)。予防試験の結果と一致して、月齢5ヶ月でのシロ−シクロヘキサンヘキソールの28日コースは、1)Aβ40およびAβ42の脳レベルも減少させ(例えば、不溶性Aβ40=29±2.3%減少、p<0.05;不溶性Aβ42=23±1.4%減少、p<0.05)、2)斑数、斑サイズおよび斑に覆われた脳の面積率も有意に減少させた(斑数=13±0.3%減少、p<0.05:斑サイズ=16±0.4%減少、p=0.05;斑によって覆われた脳の面積率=14±0.5%減少、p<0.05;表1;図1F〜G)。これらの結果は、6ヶ月予防試験のものと効果の点で匹敵する。
【0226】
要するに、データは、シロ−シクロヘキサンヘキソールおよびより小程度にエピ−シクロヘキサンヘキソールが、TgCRND8マウスにおいてAD様表現型を防止および逆転させて、認知低下、アミロイド斑、アミロイド血管症、Aβ誘発性炎症反応および死亡加速を減少させることができることを示している。1)それらの化合物が、促進輸送によって脳血液関門を横断して輸送される[15、16]ため、および2)治療マウスの脳組織におけるそれらの存在をガスクロマトグラフィー−質量分析法によって証明することができる[17](データは示さない)ため、これらの効果は、CNS内でのそれらの化合物の直接効果である可能性が高い。
【0227】
治療および未治療TgCRND8マウスからの脳ホモジネートにおいて、APPホロタンパク質レベル、APPグリコシル化レベル、APP−αもしくはAPP−βレベル、またはAβ種分化レベル(すなわち、Aβ1〜38レベル)に変化はなかった(データは示さない)。同様に、血漿Aβ42レベルによって測定すると、Aβの抹消分布は、治療および未治療TgCRND8マウス間で差がなかった。月齢5ヶ月での28日のシクロヘキサンヘキソール治療後のTgCRND8マウスのコホートにおける血漿Aβ42レベルは:未治療=1144±76pg/mL;エピ−シクロヘキサンヘキソール=1079±79pg/mL;シロ−シクロヘキサンヘキソール=990±73pg/mL;p=0.87であった。末梢/血漿Aβ42における変化の不在は、血漿Aβレベルが、強い抗体応答およびAβ免疫療法後に明らかな臨床的改善を顕示した患者においても不変であったため、妥当であり得る[4]。
【0228】
シクロヘキサンヘキソール立体異性体が、脳内でのAβオリゴマー化を阻害する可能性、それらがインビトロで明確に有する活性[10、11]、に直接取り組むために、ドットブロットイムノアッセイ[18]を用いて、治療および未治療TgCRND8マウスの脳内のAβオリゴマーのレベルを測定した。このアッセイは、オリゴマーAβ種を選択的に識別する抗体を利用する[18]。可溶性Aβオリゴマーのレベルは、治療マウスの脳では有意に減少され、これらの減少は、これらの化合物によって誘導される行動改善度および神経病態改善度に見合っていた(図2A)。Aβオリゴマーは、病状が存在する月齢5ヶ月TgCRND8マウスにおけるエピ−シクロヘキサンヘキソールでの1ヶ月の治療後、有意に減少されなかった(未治療TgCRND8における56±4ピクセル 対 エピ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8における47±2ピクセル、p=0.12)。週齢5ヶ月でのシロ−シクロヘキサンヘキソールでの遅延28日治療は、可溶性Aβオリゴマーの30%減少も生じさせた(未治療TgCRND8における63±3ピクセル 対 シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8における45±2ピクセル、p=0.008)。ドットブロットは、TgCRND8脳ホモジネートにおいてAβに対するその抗体の特異性を明示するタウ,α−シヌクレインおよびチューブリンに対する交差反応性については陰性であった。これらの結果は、エピ−シクロヘキサンヘキソールではなく、シロ−シクロヘキサンヘキソールが、脳内の可溶性Aβオリゴマーの量を減少させることを直接明示している。
【0229】
シロ−シクロヘキサンヘキソールがAβオリゴマー誘発性神経毒性を阻害する可能性に取り組むために、TgCRND8マウスの脳におけるシナプトフィジン免疫反応性レベルによって測定して、マウス海馬スライスにおける長期増強(LTP)とシナプス密度の両方に対するその効果を判定した。海馬LTPは、シナプス可塑性の尺度であり、天然細胞由来のオリゴマーAβ種によって破壊されることが証明されている[19]。ラットにおいて以前に報告されているように[19、20]、ヒトAPPV717Fで安定的にトランスフェクトされたCHO細胞(7PA2細胞)の調整培地に分泌された可溶性Aβオリゴマーは、野生型マウス海馬スライスにおいてLTPを阻害した(図2B)。しかし、7PA2−調整培地をシロ−シクロヘキサンヘキソールでインビトロで前処理した場合、7PA2−調整培地単独と比較してLTPが有意に回復した(p=0.003;図2B)。ヒトAPPでトランスフェクトしていないプレーンCHOからのシロ−シクロヘキサンヘキソール処理培養基(図2C)およびこれらの細胞からの未処理培養基をシロ−シクロヘキサンヘキソール処理7A2培養基と区別できなかった、すなわち、3つすべてのサンプルがLTPを可能にしたので、シロ−シクロヘキサンヘキソールは、LTPに対する直接効果を有さなかった。シロ−シクロヘキサンヘキソールは、増強性強縮が不在の場合、シナプス応答を変化させかった(データは示さない)ので、LTP効果は、ベースライン伝達が改変された結果ではなかった。
【0230】
AZD−103の2つのエナンチオマーを試験して、LTPの奪還が化合物のこのファミリーの中で立体特異的であるかどうかを確立した。合成Aβ42細胞毒性からニューロンを保護するエピ−イノシトール(エピ−シクロヘキサンヘキソール)もLTPを奪還したが、合成Aβ42神経毒性のアッセイにおいて不活性であるシロ−イノシトール(シロ−シクロヘキサンヘキソール)は、効果がなかった。
シナプス機能に対してインビボ効果を有するスライス培養物中のLTPの増強の相関関係をみるために、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療および未治療TgCRND8マウスの海馬のCA1領域におけるシナプトフィジン免疫反応性レベルを測定した。シナプトフィジン免疫反応性は、シナプス機能と相関するシナプス密度の尺度である。シナプトフィジンのレベルは、有意に増加された。従って、シロ−シクロヘキサンヘキソールは、海馬のCA1領域におけるシナプトフィジン反応性膿疱および細胞体の数を、予防試験群については148%(未治療TgCRND8マウスにおける1610±176/100μm2 対 シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスにおける2384±232/100μm2;p=0.03)および遅延治療試験については150%(未治療での1750±84/100μm2 対 シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスにおける2625±124/100μm2;p<0.001)増加させた。合わせて、LTPおよびシナプトフィジン試験の結果は、脳において、シロ−シクロヘキサンヘキソールが、自然分泌ヒトAβオリゴマーによって誘導されるTLPの阻害を回復させ、シナプス機能の維持を可能にすることができることを示唆している。
【0231】
また、シロ−イノシトールをTgCRND8マウスに2ヶ月間投与し、月齢7ヶ月で終えた。これらの治療動物において、認知と病状の両方に対する持続的効果が観察された。
【0232】
(実施例2)
Aβ凝集のシクロヘキサンヘキソール系阻害剤は、アルツハイマー病のトランスジェニックモデルにおいてアルツハイマー様の特徴を予防および逆転させる。
【0233】
アルツハイマー病(AD)のトランスジェニックマウスモデルに経口投与したとき、シクロヘキサンヘキソール立体異性体は、これらのマウスにおける脳内のアミロイドβ−ペプチド(Aβ)の凝集を阻害し、認知障害、シナプス生理機能改変、脳Aβおよび死亡加速をはじめとする幾つかのAD様表現型を改善する。これらの効果は、それらの化合物をAD様表現型の発現の前に与えるか、十分後に与えるかに関わらず、発生する。これらの化合物は、インビボでも、インビトロでも、Aβの可溶性オリゴマーを優先的にターゲットにし、アミロイド前駆体タンパク質プロセッシングに対しては効果を有さない。用量応答曲線は、アルツハイマー病の治療薬としての使用の可能性を明示している。
【0234】
多数の系統の証拠は、アミロイドβ−ペプチド(Aβ)の神経毒性オリゴマー/原線維凝集物の蓄積が、アルツハイマー病(Aβ)の病理発生における中心事象であることを示唆している。これは、(β−またはβ−セクレターゼ阻害剤での)Aβの発生の阻止、その除去の促進、またはその凝集および毒性の予防に基づく治療法を開発しようという試みにつながった。経口投与されたシクロヘキサンヘキソール系立体異性体は、ADのトランスジェニックマウスモデルのAD様行動的および神経病理学的特徴ならびに死亡加速を阻止することが判明した。
【0235】
インビボでのそれらの有効性を評価するために、アルツハイマー病の頑強マウスモデル(TgCRND8)にそれらの化合物を投与した[12]。TgcRND8マウスは、ヒトにおけるADの原因となる2つのミスセンス突然変異(KM670/671NLおよびV717F)を有するヒトアミロイド前駆体タンパク質トランスジーン(APP695)を発現する。約3ヶ月の月齢で、TgCRND8マウスは、脳Aβレベルの上昇と脳細胞外アミロイド斑の数の増加の両方を伴う進行性空間学習障害を示す[12]。月齢6ヶ月には、TgCRND8マウスの脳内のAβのレベルならびにアミロイド斑の形態、密度および分布は、ADが十分に定着したヒトの脳において見られるものと同様である[12]。ADを有するヒト患者の場合のように、このマウスモデルの生化学的、行動的および神経病理学的特徴は、死亡加速を伴う[12、13]。
【0236】
TgCRND8マウスおよび非トランスジェニック同腹子を性別および年齢を合わせたコホートに割り付け、その後、それらを用いて、2つの異なる治療パラダイムでAZD−102(エピ−シクロヘキサンヘキソール)およびAZD−103(シロ−シクロヘキサンヘキソール)の有効性を試験した。第一のパラダイムでは、シクロヘキサンヘキソールを予防薬として経口投与し、週齢6週で(すなわち、その表現型の発現前〜6週間に)治療を始め、その後、月齢4または6ヶ月まで治療を継続した。第二のパラダイムでは、これらの化合物を治療薬として投与し、(AD様表現型が既に十分定着している)月齢5ヶ月まで治療を遅延し、月齢6ヶ月まで1ヶ月間、治療を継続した。これらの実験アームそれぞれの中で、マウスは、活性化合物AZD−102もしくはAZD−103を受ける(経口投与される)または治療を受けないように、ランダムに割り付けた。これらの試験のエンドポイントは、認知機能、脳Aβレベル、神経病態、ならびに予防試験における月齢4および6ヶ月での死亡率であった。これらすべての実験の間、観察者は、遺伝子型または治療群を知らなかった。結果を図3から8および表2に示す。
【0237】
結論:
これらの実験結果は、経口投与されたAZD−103およびAZD−102が、アルツハイマー病のTgCRND8マウスモデルにおいて、AD様行動障害、神経病態、および死亡加速を有意に抑制することを明示している。重要なこととして、これらの効果は、AD様疾患の潜伏期/前発症期の間に化合物を与えるか、AD様疾患の顕性/発症期の間に与えるかに関わらず、発生する。
【0238】
(実施例3)
この実施例において説明する試験では、以下の方法を用いた。
【0239】
方法:
マウス。飲み水に入れたエピ−2−イノソーゼ、10mg/mL、をTgCRND8マウスの実験群に投与した。動物のコホートを月齢5ヶ月で試験に参加させ、1ヵ月後、転帰を分析した。あるいは、動物のコホートを週齢6週での予防試験に参加させ、月齢6ヶ月で転帰測定値を分析した。体重、毛皮の特徴およびケージ内での行動をモニターした。すべての実験は、カナダ動物管理協会ガイドラインに従って行った。
【0240】
行動試験:モーリス水迷路試験を用いて行動分析を行った(13、14)。予備的空間訓練の後、マウスは、5日間の場所判別訓練と1日4回の試験を経験し、続いて、一般的な動機づけ、学習不足および運動の問題を除外するために手がかりのある見える足場を経験した。「対象間」因子として治療(未治療、エピ−2−イノソーゼ)および遺伝子型(TgCRND8 対 非Tg)を用いる反復測定分散分析(ANOVA)に行動データを付した。運動活動のためのオープンフィールド試験を、以前に記載されたとおりに行った(9)。自発的運動活動の指標として、歩行、休止、行動開始、毛づくろいを分析した。
【0241】
脳Aβ含量。半脳サンプルを緩衝スクロース溶液で均質化し、その後、可溶性Aβレベルのために0.4%ジエチルアミン/100mM NaClで、または全Aβの単離のために冷ギ酸で均質化した[22]。中和後、それらのサンプルを希釈し、市販のキット(BIOSOURCE International)を使用してAβ40およびAβ42について分析した。それぞれの脳半球を三重反復で分析し、その平均値±SEMを報告した。血漿は、希釈し、直接ELISAを実行した。
【0242】
生存調査:死亡が発生するたびに生存の確率を算定し、そのようにして小さなサンプルサイズに適するものにするKaplan Meier技術[31]によって、生存の確率を評価した。生存分析のために、各治療群につき30匹のマウスを使用した。Tarone−Ware試験を用いて、治療の効果を評価した。
【0243】
シナプトフィジン定量。
【0244】
ウエスタンブロット法によって治療および対照マウスにおけるシナプトフィジンタンパク質レベルを決定した。切片のシナプトフィジンを、抗シナプトフィジンIgG(1:40;Roche,Laval,PQ)または負荷対照としてのGAPDH IgG(1:10,000;Biodesign International)で免疫ブロットした。フィルムをスキャンし、その後、NIH Image分析を密度計測と併用して分析した。それぞれのサンプルについて、シナプトフィジン値を負荷対照に対して正規化した。統計解析は、多重比較試験としてのフィッシャーPLSDと関数ANOVAを用いて判定した。
【0245】
血液学および血清生化学分析:
犠牲にする前に血液を採取し、分析のためにサンプルをVITA−TECH laboratories(カナダ、オンタリオ州、Markham)に送った。基準値は、ZhouおよびHansson[32]から得た。
【0246】
結果:
疾病を有するTgCRND8マウスの治療
顕症期の疾病を示すTgCRND8マウスの認知および病理学的特性に対するエピ−2−イノソーゼの効果を調査した。この試験は、1ヶ月間、飲み水に入れたエピ−2−イノソーゼを投与したまたは未治療の、月齢5ヶ月の10匹のマウスから成るものであった。月齢6ヶ月で、空間記憶のモーリス水迷路試験にマウスを参加させて、認知に対する効果を試験した[13、14](図9)。このコホートにおいて、未治療の月齢6ヶ月TgCRND8マウスは、それらの非Tg同腹子と比較して、隠された足場を見つけるために、どの日も、より長い泳路を必要とした(遺伝子型効果:p<0.0001;訓練日効果:p=0.0005)が、水泳速度には有意な差がなかった(p>0.05)。治療は、非Tg同腹子の行動に対して効果を有さなかった(治療効果:p=0.67;訓練日効果:p<0.0001;図9A、B)。エピ−2−イノソーゼは、未治療TgCRND8マウスと比較して、TgCRND8マウスの認知を有意に改善し、p=0.01、ならびに治療nTg同腹子とは有意な差がなかった(p=0.09)。この改善された遂行能力も、栄養およびカロリーの影響によるものでなかった。治療および未治療コホート間で、体重、活動および毛皮の状態に差がなかったからである。いずれの治療群の間でも性別の影響は有意でなかった(p=0.85)。マウスのすべてのコホートが、モーリス水迷路試験の手がかりのあるバージョンで十分同等に動作したので、治療によって視力は変わらなかった(P=0.68)。
【0247】
Aβ40およびAβ42特異的ELISAを用いて、Aβ負荷量を検査した。Aβ40/42ELISAの結果を表3に示す。血漿Aβ42レベルを図10に示す。
【0248】
エピ−2−イノソーゼでのTgCRND8マウスの予防的治療
エピ−2−イノソーゼ投与前のアミロイド斑の存在が、CNS内の不溶性Aβの蓄積増進に一定の役割を果すかどうか判定するために、疾病表現型の発現前に、TgCRND8マウスの新たなコホートに、エピ−2−イノソーゼを投与した。予防試験では、TgCRND8マウスを、週齢6週間から月齢6ヶ月まで、エピ−2−イノソーゼで治療した。その後、モーリス水迷路試験からの行動データを、反復測定ANOVAを用いて、泳路長について分析した。TgCRND8マウスにおける空間学習の分析は、これらの治療マウスが、それらの未治療TgCRND8同腹子と比較して良好な認知機能を有し(p=0.07)、訓練日3から5に関して統計学的な差がある(p<0.01)ことを示した(図9C、D)。エピ−2−イノソーゼ治療TgCRND8マウスは、いずれの試験日においても非Tg同腹子とは差があった(治療効果:p=0.02)が、試験日4および5における非Tgの行動に近かった(データは示さない)。1ヶ月治療パラジウムにおいて見られるように、エピ−2−イノソーゼ投与は、非Tgマウスの認知能力に対して効果を有さず(治療効果:p=0.51;図9)、これは、エピ−2−イノソーゼ治療の有益効果が、行動、運動または知覚系に対する非特異的効果によるものでないことを示唆していた。時間のかかった行動開始、毛づくろい、歩行および停止をパラメータとして用いたとき、オープンフィールド試験によって治療TgCRND8マウス、未治療TgCRND8マウス(P=0.92)および非Tg同腹子(P=0.69)間の区別ができなかったからことから、延長エピ−2−イノソーゼ治療は、マウスの認知または感覚運動行動に対して効果を有さなかった(図11)。これらの結果は、エピ−2−イノソーゼ予防的治療も、ADのTgCRND8マウスモデルにおける認知機能に対して有益効果を有することを示唆している。
【0249】
TgCRND8マウスは、死亡が加速され、AD様表現型が十分に定着してきた月齢6ヶ月には、未治療TgCRND8マウスのうちの60%しか生存せず、これらの事象の殆どが、最初の3ヶ月の月齢の間に発生した(図12)。生存は、エピ−2−イノソーゼでの予防的治療によって有意に改善され、生存を50%改善した(p=0.01)。治療TgCRND8マウスの生存増加は、カロリー摂取量増加に帰するものではなかった。エピ−2−イノソーゼは、野生型マウスの生存、体重、毛皮の状態、またはケージ行動には効果を有さなかったからである。さらに、血清生化学により、エピ−2−イノソーゼで治療したTgおよび非Tg、両方のマウスにおける正常な腎臓、心臓、肝臓および膵臓機能が実証された(表4)。
【0250】
シナプス刈り込みは、ヒトADおよび多数のトランスジェニックモデルにおけるAD様疾患、両方の特徴である。これは、Aβオリゴマーの慢性シナプス毒性作用を反映し得、これらのモデルにおける認知障害の形態学的相関を表す可能性が高い。シナプス密度に対するエピ−2−イノソーゼのインビボ効果を検査するために、治療および未治療TgCRND8マウスの海馬におけるシナプトフィジン免疫活性レベルをウエスタンブロット分析によって測定した。シナプトフィジンのレベルは、予防試験および治療試験、両方からのTgCRND8マウスの脳において、有意に増加された(図13)。例えば、エピ−2−イノソーゼは、海馬におけるシナプトフィジン反応性の量を予防研究では33%増加させ(p=0.01)、遅延治療研究では15%増加させた(p=0.004)。
【0251】
本発明は、本明細書に記載する特定の実施形態によって範囲が限定されることはない。こうした実施形態を、本発明の1つの態様の単なる実例と考えているからであり、いずれの機能的に等価の実施形態も本発明の範囲内である。実際、本明細書において示し、説明したものに加えて、本発明の様々な変形が、上述の説明および添付の図面から、当業者には明らかになるだろう。そうした変形は、添付のクレームの範囲に入ると解釈される。
【0252】
本明細書の中で参照しているすべての文献、特許および特許出願は、あたかもそれぞれの個々の出版物、特許または特許出願が、全文、参照より本明細書に取り入れられていると具体的に且つ個々に示されているのと同程度に、参照より本明細書に取り入れられている。本明細書中の任意の参考文献の引用は、そうした参考文献を先行技術として本発明に利用できることの是認ではない。
【0253】
【表1】
【0254】
【表2】
【0255】
【表3】
【0256】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0257】
本発明は、図面を参照することで、より良好に理解されるであろう:
【図1−1】月齢5ヶ月で開始する28日の治療後の月齢6ヵ月のマウスにおける空間参照記憶試験(治療アーム当たりマウス n=10)を行った。エピ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスの遂行能力は、未治療TgCRND8同腹子と異ならず(p=0.27;図1A)、非Tg同腹子を基準にして障害のあるままであった(F1,14=11.7、p=0.004;図1C)。対照的に、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスは、未治療TgCRND8同腹子より有意に良好であり(p=0.01;図1B)、非Tg同腹子と区別できなかった(F1,13=2.9、p=0.11;図1D)。環交差指数を使用するプローブ試験により、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療マウスは、非Tg同腹子と統計学的に差がないことが実証された(p=0.64、図1E)。縦棒は、s.e.m.を表す。1ヶ月のシロ−シクロヘキサンヘキソール治療の後、マウスは、海馬に高い斑負荷量を有する対照動物と比較して、低い斑負荷量を有した(図1F、図1G)。斑負荷量は、抗Aβ抗体(褐色)を使用して同定し、抗GFAP抗体(赤)を使用して星状細胞を標識した。縮尺棒300μm。
【図1−2】月齢5ヶ月で開始する28日の治療後の月齢6ヵ月のマウスにおける空間参照記憶試験(治療アーム当たりマウス n=10)を行った。エピ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスの遂行能力は、未治療TgCRND8同腹子と異ならず(p=0.27;図1A)、非Tg同腹子を基準にして障害のあるままであった(F1,14=11.7、p=0.004;図1C)。対照的に、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスは、未治療TgCRND8同腹子より有意に良好であり(p=0.01;図1B)、非Tg同腹子と区別できなかった(F1,13=2.9、p=0.11;図1D)。環交差指数を使用するプローブ試験により、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療マウスは、非Tg同腹子と統計学的に差がないことが実証された(p=0.64、図1E)。縦棒は、s.e.m.を表す。1ヶ月のシロ−シクロヘキサンヘキソール治療の後、マウスは、海馬に高い斑負荷量を有する対照動物と比較して、低い斑負荷量を有した(図1F、図1G)。斑負荷量は、抗Aβ抗体(褐色)を使用して同定し、抗GFAP抗体(赤)を使用して星状細胞を標識した。縮尺棒300μm。
【図1−3】月齢5ヶ月で開始する28日の治療後の月齢6ヵ月のマウスにおける空間参照記憶試験(治療アーム当たりマウス n=10)を行った。エピ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスの遂行能力は、未治療TgCRND8同腹子と異ならず(p=0.27;図1A)、非Tg同腹子を基準にして障害のあるままであった(F1,14=11.7、p=0.004;図1C)。対照的に、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療TgCRND8マウスは、未治療TgCRND8同腹子より有意に良好であり(p=0.01;図1B)、非Tg同腹子と区別できなかった(F1,13=2.9、p=0.11;図1D)。環交差指数を使用するプローブ試験により、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療マウスは、非Tg同腹子と統計学的に差がないことが実証された(p=0.64、図1E)。縦棒は、s.e.m.を表す。1ヶ月のシロ−シクロヘキサンヘキソール治療の後、マウスは、海馬に高い斑負荷量を有する対照動物と比較して、低い斑負荷量を有した(図1F、図1G)。斑負荷量は、抗Aβ抗体(褐色)を使用して同定し、抗GFAP抗体(赤)を使用して星状細胞を標識した。縮尺棒300μm。
【図2A】シロ−シクロヘキサンヘキソールおよびエピ−シクロヘキサンヘキソール治療および未治療TgCRND8マウスにおける可溶性オリゴマーAβのドットブロット分析(図2A)。予防研究からの4匹の代表の月齢4および6ヶ月未治療および治療TgCRND8マウスから、ならびに治療していないおよび治療した月齢5ヶ月治療群から単離した可溶性タンパク質を、ニトロセルロースに塗布し、オリゴマー特異的抗体でプローブし、その後、6E10で再びプローブした。合成Aβ42、モノマー状(下の列、レーン1および2)および原線維状(レーン3および4)を、可溶性凝集物のみを認識するオリゴマー特異的抗体についての陰性対照として使用した。6E10は、すべてのAβ種を認識する(下のレーン、右の4レーン)。長期増強は、可溶性Aβオリゴマーによって遮断され(図2B;緑四角)、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療によって奪還される(図2B;青丸)。LTPは、Aβオリゴマーを含有するシロ−シクロヘキサンヘキソール治療7PA2培養基(図2C;赤四角;図2Bと同じデータ)およびオリゴマーがないプレーンCHO培地(図2C;青丸)による影響を受けない。
【図2B】シロ−シクロヘキサンヘキソールおよびエピ−シクロヘキサンヘキソール治療および未治療TgCRND8マウスにおける可溶性オリゴマーAβのドットブロット分析(図2A)。予防研究からの4匹の代表の月齢4および6ヶ月未治療および治療TgCRND8マウスから、ならびに治療していないおよび治療した月齢5ヶ月治療群から単離した可溶性タンパク質を、ニトロセルロースに塗布し、オリゴマー特異的抗体でプローブし、その後、6E10で再びプローブした。合成Aβ42、モノマー状(下の列、レーン1および2)および原線維状(レーン3および4)を、可溶性凝集物のみを認識するオリゴマー特異的抗体についての陰性対照として使用した。6E10は、すべてのAβ種を認識する(下のレーン、右の4レーン)。長期増強は、可溶性Aβオリゴマーによって遮断され(図2B;緑四角)、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療によって奪還される(図2B;青丸)。LTPは、Aβオリゴマーを含有するシロ−シクロヘキサンヘキソール治療7PA2培養基(図2C;赤四角;図2Bと同じデータ)およびオリゴマーがないプレーンCHO培地(図2C;青丸)による影響を受けない。
【図2C】シロ−シクロヘキサンヘキソールおよびエピ−シクロヘキサンヘキソール治療および未治療TgCRND8マウスにおける可溶性オリゴマーAβのドットブロット分析(図2A)。予防研究からの4匹の代表の月齢4および6ヶ月未治療および治療TgCRND8マウスから、ならびに治療していないおよび治療した月齢5ヶ月治療群から単離した可溶性タンパク質を、ニトロセルロースに塗布し、オリゴマー特異的抗体でプローブし、その後、6E10で再びプローブした。合成Aβ42、モノマー状(下の列、レーン1および2)および原線維状(レーン3および4)を、可溶性凝集物のみを認識するオリゴマー特異的抗体についての陰性対照として使用した。6E10は、すべてのAβ種を認識する(下のレーン、右の4レーン)。長期増強は、可溶性Aβオリゴマーによって遮断され(図2B;緑四角)、シロ−シクロヘキサンヘキソール治療によって奪還される(図2B;青丸)。LTPは、Aβオリゴマーを含有するシロ−シクロヘキサンヘキソール治療7PA2培養基(図2C;赤四角;図2Bと同じデータ)およびオリゴマーがないプレーンCHO培地(図2C;青丸)による影響を受けない。
【図3−1】シクロヘキサンヘキソールは、TgCRND8マウスにおける行動を改善する。TgCRND8マウスにおけるモーリス水迷路試験の空間参照記憶バージョン(治療アーム当たりn=8〜10)を認知の測定法として用いた。月齢4ヶ月では、未治療TgCRND8マウスは、AZD−102(エピ−シクロヘキサンヘキソール)(A)およびAZD−103(シロ−シクロヘキサンヘキソール)(B)治療マウスを基準にして、認知障害を示す(F2,26=3.99、p=0.03)。AZD−102治療マウス(C)は、治療および未治療非Tgマウスと有意な差があった(F1,18=11.7、p=0.004)が、AZD−103治療マウス(D)は、非Tgマウスのものに近かった(F1,17=2.89、p=0.97)。月齢6ヶ月では、未治療TgCRND8は、非Tg対照(F1,30=31.16、p<0.001)ならびにAZD−102(E)およびAZD−103(F)治療マウス(F2,36=4.1、p<0.02)を基準にして、認知障害を示した。AZD−102治療TgCRND8マウス(F1,21=2.35、p=0.14;G)とAZD−102の両方の遂行能力が、非Tg同腹子のもの(F1,22=3.26、p=0.44;D)に近かった。非Tg同腹子の行動は、AZD−102(G)およびAZD−103(H)治療のいずれによる影響も受けなかった(F2,37=0.83、p=0.45)。
【図3−2】シクロヘキサンヘキソールは、TgCRND8マウスにおける行動を改善する。TgCRND8マウスにおけるモーリス水迷路試験の空間参照記憶バージョン(治療アーム当たりn=8〜10)を認知の測定法として用いた。月齢4ヶ月では、未治療TgCRND8マウスは、AZD−102(エピ−シクロヘキサンヘキソール)(A)およびAZD−103(シロ−シクロヘキサンヘキソール)(B)治療マウスを基準にして、認知障害を示す(F2,26=3.99、p=0.03)。AZD−102治療マウス(C)は、治療および未治療非Tgマウスと有意な差があった(F1,18=11.7、p=0.004)が、AZD−103治療マウス(D)は、非Tgマウスのものに近かった(F1,17=2.89、p=0.97)。月齢6ヶ月では、未治療TgCRND8は、非Tg対照(F1,30=31.16、p<0.001)ならびにAZD−102(E)およびAZD−103(F)治療マウス(F2,36=4.1、p<0.02)を基準にして、認知障害を示した。AZD−102治療TgCRND8マウス(F1,21=2.35、p=0.14;G)とAZD−102の両方の遂行能力が、非Tg同腹子のもの(F1,22=3.26、p=0.44;D)に近かった。非Tg同腹子の行動は、AZD−102(G)およびAZD−103(H)治療のいずれによる影響も受けなかった(F2,37=0.83、p=0.45)。
【図4】シクロヘキサンヘキソールは、TgCRND8マウスの病理学的特徴を改善する。血管Aβ負荷量を、治療および未治療TgCRND8マウスの連続矢状切片で定量した。TgCRND8マウスは、小および中サイズの血管に関連付けられる有意な血管Aβ負荷量を有し;この負荷量は、AZD−103治療TgCRND8マウスでは減少された(A)。AZD−103治療は、未治療およびエピ−イノシトール治療TgCRND8マウスと比較して、総血管負荷量を有意に減少させた。Tg CRND8マウスは、CNS中のAβレベル増加への星状神経膠細胞症性応答を明らかに示し、AZD−102での治療は、月齢4ヶ月でも、6ヶ月でも、星状神経膠細胞症に覆われた脳の面積率を減少させた(B)。AZD−103治療は、両方の月齢で、より大きな程度に星状神経膠細胞症性応答を減少させた(B)。同様に、小神経膠細胞症は、TgCRND8マウスにおける斑負荷と相関した(C)。AZD−102での治療も、より大きな程度にAZD−103での治療も、小神経膠細胞症で覆われた脳の面積率を減少させた。Kaplan Meier累積生存プロットは、未治療TgCRND8マウス(灰色の丸)と比較して、AZD−103での治療後にTgCRND8マウスの生存増加を明らかに示している(薄い灰色の丸;p=0.02)。AZD−102は、有意には生存を改善しなかった(黒丸)(D)。ANOVA *P<0.05、**p<0.001。
【図5】月齢6ヶ月で、未治療のTgCRND8マウス、AZD−102およびAZD−103治療マウスにおいて斑負荷量および星状神経膠細胞症を検査した。対照動物は、海馬および大脳皮質に高い斑負荷量および星状神経膠細胞症を有する。より高い倍率は、星状神経膠細胞活性化が、斑負荷量にのみ関係するわけではないことをはっきりと示す。AZD−102治療は、アミロイド負荷量に対してささやかな効果を有し、星状神経膠細胞症を減少させる。AZD−103治療は、アミロイド負荷量および神経膠細胞症を有意に減少させた。抗GFAP抗体で標識された星状神経膠細胞(赤)および抗Aβ抗体で同定された斑負荷(褐色)。縮尺棒300μmまたは62.5μm。
【図6A】空間記憶バージョンのモーリス水迷路試験の終りにキューテストを行った。足場の上に旗を置いた。すべての治療群について、その足場に到達するために必要とされる路長は類似しており(p=0.78)、これは、治療が視力に影響を及ぼさないことを示している(D)。毛づくろい(A)、休止(B)および歩行(C)の継続時間についてのこのオープンフィールド試験は、AZD−103が、TgCRND8マウスまたはそれらの非Tg同腹子における活性レベルに影響を及ぼさないことを裏付ける。
【図6B】空間記憶バージョンのモーリス水迷路試験の終りにキューテストを行った。足場の上に旗を置いた。すべての治療群について、その足場に到達するために必要とされる路長は類似しており(p=0.78)、これは、治療が視力に影響を及ぼさないことを示している(D)。毛づくろい(A)、休止(B)および歩行(C)の継続時間についてのこのオープンフィールド試験は、AZD−103が、TgCRND8マウスまたはそれらの非Tg同腹子における活性レベルに影響を及ぼさないことを裏付ける。
【図6C】空間記憶バージョンのモーリス水迷路試験の終りにキューテストを行った。足場の上に旗を置いた。すべての治療群について、その足場に到達するために必要とされる路長は類似しており(p=0.78)、これは、治療が視力に影響を及ぼさないことを示している(D)。毛づくろい(A)、休止(B)および歩行(C)の継続時間についてのこのオープンフィールド試験は、AZD−103が、TgCRND8マウスまたはそれらの非Tg同腹子における活性レベルに影響を及ぼさないことを裏付ける。
【図6D】空間記憶バージョンのモーリス水迷路試験の終りにキューテストを行った。足場の上に旗を置いた。すべての治療群について、その足場に到達するために必要とされる路長は類似しており(p=0.78)、これは、治療が視力に影響を及ぼさないことを示している(D)。毛づくろい(A)、休止(B)および歩行(C)の継続時間についてのこのオープンフィールド試験は、AZD−103が、TgCRND8マウスまたはそれらの非Tg同腹子における活性レベルに影響を及ぼさないことを裏付ける。
【図7】ヒトAPPsweでトランスフェクトしたHEK293細胞におけるインビトロγ−セクレターゼアッセイ。swAPP安定性HEK293細胞を処理しないか、AZD−103または10nMの化合物Eで処理した後、細胞膜を、APP−FLおよび−CTF検出のために、ならびに37℃で1時間のe−スタブ生成インビトロアッセイのために使用した。レーン1および2。90μg/mL AZD−103処理;レーン3および4 900ug/mL AZD−103処理;レーン5および6 化合物Eで処理したもの、ならびにレーン7および8 未処理HEK293 APPswe細胞。
【図8A】AZD−102およびAZD−103治療および未治療TgCRND8マウスにおける可溶性オリゴマーAβのドットブロット分析(A、B)。予防試験(実験アーム当たりn=8〜10)からの月齢4ヶ月および6ヶ月未治療(黒棒)および治療(細かい平行線が引かれた棒)TgCRND8マウスすべてから、ならびに治療していない(黒棒)および治療した(細かい平行線が引かれた棒)月齢5ヶ月治療群(実験アーム当たりn=8〜10)から単離した可溶性タンパク質をニトロセルロース塗布し、オリゴマー特異的抗体でプローブし、その後、6E10で再びプローブした。予防パラダイムと治療パラダイムの両方でのAZD−103治療後、CA1領域においてシナプトフィジン反応性が増加された(C)(各実験アームにつき、n=3)。対照的に、TgTauP301Lマウスでは、治療後、シナプトフィジン反応性が変わらなかった(治療したものおよび未治療のものについて、n=3)。
【図8B】AZD−102およびAZD−103治療および未治療TgCRND8マウスにおける可溶性オリゴマーAβのドットブロット分析(A、B)。予防試験(実験アーム当たりn=8〜10)からの月齢4ヶ月および6ヶ月未治療(黒棒)および治療(細かい平行線が引かれた棒)TgCRND8マウスすべてから、ならびに治療していない(黒棒)および治療した(細かい平行線が引かれた棒)月齢5ヶ月治療群(実験アーム当たりn=8〜10)から単離した可溶性タンパク質をニトロセルロース塗布し、オリゴマー特異的抗体でプローブし、その後、6E10で再びプローブした。予防パラダイムと治療パラダイムの両方でのAZD−103治療後、CA1領域においてシナプトフィジン反応性が増加された(C)(各実験アームにつき、n=3)。対照的に、TgTauP301Lマウスでは、治療後、シナプトフィジン反応性が変わらなかった(治療したものおよび未治療のものについて、n=3)。
【図8C】AZD−102およびAZD−103治療および未治療TgCRND8マウスにおける可溶性オリゴマーAβのドットブロット分析(A、B)。予防試験(実験アーム当たりn=8〜10)からの月齢4ヶ月および6ヶ月未治療(黒棒)および治療(細かい平行線が引かれた棒)TgCRND8マウスすべてから、ならびに治療していない(黒棒)および治療した(細かい平行線が引かれた棒)月齢5ヶ月治療群(実験アーム当たりn=8〜10)から単離した可溶性タンパク質をニトロセルロース塗布し、オリゴマー特異的抗体でプローブし、その後、6E10で再びプローブした。予防パラダイムと治療パラダイムの両方でのAZD−103治療後、CA1領域においてシナプトフィジン反応性が増加された(C)(各実験アームにつき、n=3)。対照的に、TgTauP301Lマウスでは、治療後、シナプトフィジン反応性が変わらなかった(治療したものおよび未治療のものについて、n=3)。
【図9】月齢5ヶ月で開始する28日の治療後の月齢6ヶ月のマウスにおいて空間参照記憶試験を行った。エピ−2−イノソーゼ治療TgCRND8マウスの遂行能力は、未治療TgCRND8同腹子より有意に良好であり(p=0.01;A)、非Tg同腹子と有意な差がなかった(p=0.06;B)。エピ−2−イノソーゼは、未治療非Tgマウスと比較して、非Tg同腹子の行動に効果を有さなかった(p=0.67;C)。月齢6ヶ月で、未治療TgCRND8は、非Tg対照(データは示さない)および週齢6週から予防的にエピ−2−イノソーゼで治療したマウスを基準して、認知障害を示す(C)。両方のエピ−2−イノソーゼ治療TgCRND8マウスの遂行能力が、非Tg同腹子のものに近かった(D)。縦棒は、s.e.m.を表す。
【図10】1ヶ月治療後のTgCRND8におけるエピ−2−イノソーゼでの治療後の血漿Aβのレベル。
【図11】毛づくろい、休止および歩行の継続時間についてのこのオープンフィールド試験は、エピ−2−イノソーゼが、TgCRND8マウス(黒棒)またはそれらの非Tg同腹子(細かい平行線が引かれた棒)における活性レベルに影響を及ぼさないことを裏付ける。値は、平均±標準誤差。
【図12】Kaplan Meier累積生存プロットは、未治療TgCRND8マウス(ピンクの丸)と比較して、エピ−2−イノソーゼでの治療後のTgCRND8マウスの生存増加を明らかに示している(橙色の丸;p=0.01)。
【図13】エピ−2−イノソーゼ治療の結果としてのTgCRND8マウスにおけるシナプス密度の尺度として、シナプトフィジン免疫反応性を用いた。6ヶ月予防および治療パラダイム、両方でのエピ−2−イノソーゼ治療後にシナプトフィジン反応性が増加された(各実験アームについて、n=3)、未治療(黒棒)、被治療(灰色の棒)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常なタンパク質フォールディングおよび/もしくは凝集、ならびに/またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾患を治療するための医薬組成物であって、該疾患の治療に有益効果をもたらす治療有効量で
式I:
【化1】
の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、または配座を維持しながら1、2もしくは3個のヒドロキシル基が置換基で置換されている式Iの化合物、あるいはその医薬的に許容される塩と、医薬的に許容される担体、賦形剤またはビヒクルとを含む、医薬組成物。
【請求項2】
1、2または3個のヒドロキシル基が、水素、アルキル、アシル、アルケニル、シクロアルキル、アルコキシ、=O、ハロゲン、−NHR1(この場合、R1は、水素、アシル、アルキルまたは−R2R3であり、ここでのR2およびR3は、同じであるか異なり、アシルまたはアルキルを表す)、−PO3H2、−SR4(この場合、R4は、水素、アルキルまたは−O3Hである)および−OR3(この場合、R3は、水素、アルキルまたは−SO3Hである)によって置換されている式Iの化合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ヒドロキシル基の1個以上が、アルキル、アシル、アルケニル、−NHR1(この場合、R1は、水素、アシル、アルキルまたは−R2R3であり、ここでのR2およびR3は、同じであるか異なり、アシルまたはアルキルを表す)、−SR4(この場合、R4は、水素、アルキルまたは−O3Hである)または−OR3(この場合、R3は、水素、アルキルまたは−SO3Hである)で置換されている式Iの化合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ヒドロキシル基の1個以上が、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アシル、−NH2、またはオキソで置換されている式Iの化合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
純粋なまたは実質的に純粋なエピ−シクロヘキサンヘキソールを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
式中の1個または2個のヒドロキシル基が、=Oで置換されている式Iの化合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
2位のヒドロキシル基が=Oで置換されている式Iの化合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
純粋なまたは実質的に純粋なエピ−2−イノソーゼを含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記化合物が、該化合物と相互作用する担体を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記化合物が、プロドラッグの形態であり、切断可能な基を含み、該基は、対象への投与後に切断されて、治療に有効な化合物をもたらす、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記有益効果が、次のうちの1つ以上を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物:Aβ原線維集合もしく凝集、Aβ毒性、異常なタンパク質フォールディング、凝集、アミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存および/またはアミロイド脂質相互作用の減少、逆転または阻害、ならびに/あるいは既製原線維の分解の促進。
【請求項12】
前記有益効果が、認知改善および/または寿命延長を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記疾患が、タンパク質、タンパク質フラグメント、およびベータプリーツシート中のペプチド、原線維、ならびに/または凝集物もしくはオリゴマーの沈着を生じさせる、中枢もしくは末梢神経系または全身器官の状態である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記疾患が、アルツハイマー病、認知症または軽度認知障害である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
経口投与のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記疾患が、アルツハイマー病である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
微生物プロセス段階を用いて生産されたエピ−イノシトール化合物を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物または医薬組成物を対象に投与して、治療後、有益効果、好ましくは持続的有益効果をもたらすことを含む、対象における異常なタンパク質フォールディングおよび/もしくは凝集、ならびに/またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾患を治療するための方法。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または治療有効量の式Iのエピ−イノシトール化合物を対象に投与することを含む、タンパク質フォールディングもしくは凝集、またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存の異常に関連した中枢もしくは末梢神経系または全身器官の状態を対象において治療するための方法。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または式Iの治療用エピ−イノシトール化合物もしくはその医薬的に許容される塩を治療有効量で対象に投与することを含む、アミロイド形成、沈着、蓄積および/もしくは残存を阻害するための、および/または既存アミロイドの溶解/破壊を生じさせる方法。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または治療有効量の式Iのエピ−イノシトール化合物を投与することを含む、アルツハイマー病に罹患している患者においてアルツハイマー病の進行を改善するまたはより重症度が低い病期を達成するための方法。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または治療有効量の式Iのエピ−イノシトール化合物を対象に投与することを含む、対象におけるアルツハイマー病の進行を遅延させる方法。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または治療有効量の式Iのエピ−イノシトール化合物を投与することを含む、アルツハイマー病に罹患している対象の生存を増加させる方法。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または治療有効量の式Iのエピ−イノシトール化合物を対象に投与することを含む、対象における軽度認知障害(MCI)を治療するための方法。
【請求項25】
記憶を改善する必要がある哺乳動物を治療するための方法であって、該哺乳動物は、記憶を損なわせるまたは別様に低下させることが知られている疾病、疾患、虚弱または病気と診断されておらず、該方法は、請求項1〜17のいずれか1項に記載の記憶改善有効量の医薬組成物または治療有効量の式Iのエピ−イノシトール化合物もしくはその医薬的に許容される塩を該哺乳動物に投与する段階を含む、方法。
【請求項26】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の式Iのエピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体、および許容される担体をヒトに投与することによる、健常対象の食事を補うためのレジメン。
【請求項27】
異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾病を治療するための薬物の調製のための、請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または式Iのエピ−イノシトール化合物の使用。
【請求項28】
前記疾病が、アルツハイマー病である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾病を予防および/または治療するための請求項1〜17のいずれか1項に記載の式Iの1つ以上のエピ−イノシトール化合物と、容器と、使用説明書とを含むキット。
【請求項1】
異常なタンパク質フォールディングおよび/もしくは凝集、ならびに/またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾患を治療するための医薬組成物であって、該疾患の治療に有益効果をもたらす治療有効量で
式I:
【化1】
の1つ以上のエピ−イノシトール化合物、または配座を維持しながら1、2もしくは3個のヒドロキシル基が置換基で置換されている式Iの化合物、あるいはその医薬的に許容される塩と、医薬的に許容される担体、賦形剤またはビヒクルとを含む、医薬組成物。
【請求項2】
1、2または3個のヒドロキシル基が、水素、アルキル、アシル、アルケニル、シクロアルキル、アルコキシ、=O、ハロゲン、−NHR1(この場合、R1は、水素、アシル、アルキルまたは−R2R3であり、ここでのR2およびR3は、同じであるか異なり、アシルまたはアルキルを表す)、−PO3H2、−SR4(この場合、R4は、水素、アルキルまたは−O3Hである)および−OR3(この場合、R3は、水素、アルキルまたは−SO3Hである)によって置換されている式Iの化合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ヒドロキシル基の1個以上が、アルキル、アシル、アルケニル、−NHR1(この場合、R1は、水素、アシル、アルキルまたは−R2R3であり、ここでのR2およびR3は、同じであるか異なり、アシルまたはアルキルを表す)、−SR4(この場合、R4は、水素、アルキルまたは−O3Hである)または−OR3(この場合、R3は、水素、アルキルまたは−SO3Hである)で置換されている式Iの化合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ヒドロキシル基の1個以上が、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アシル、−NH2、またはオキソで置換されている式Iの化合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
純粋なまたは実質的に純粋なエピ−シクロヘキサンヘキソールを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
式中の1個または2個のヒドロキシル基が、=Oで置換されている式Iの化合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
2位のヒドロキシル基が=Oで置換されている式Iの化合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
純粋なまたは実質的に純粋なエピ−2−イノソーゼを含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記化合物が、該化合物と相互作用する担体を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記化合物が、プロドラッグの形態であり、切断可能な基を含み、該基は、対象への投与後に切断されて、治療に有効な化合物をもたらす、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記有益効果が、次のうちの1つ以上を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物:Aβ原線維集合もしく凝集、Aβ毒性、異常なタンパク質フォールディング、凝集、アミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存および/またはアミロイド脂質相互作用の減少、逆転または阻害、ならびに/あるいは既製原線維の分解の促進。
【請求項12】
前記有益効果が、認知改善および/または寿命延長を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記疾患が、タンパク質、タンパク質フラグメント、およびベータプリーツシート中のペプチド、原線維、ならびに/または凝集物もしくはオリゴマーの沈着を生じさせる、中枢もしくは末梢神経系または全身器官の状態である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記疾患が、アルツハイマー病、認知症または軽度認知障害である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
経口投与のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記疾患が、アルツハイマー病である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
微生物プロセス段階を用いて生産されたエピ−イノシトール化合物を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の治療有効量の1つ以上のエピ−イノシトール化合物または医薬組成物を対象に投与して、治療後、有益効果、好ましくは持続的有益効果をもたらすことを含む、対象における異常なタンパク質フォールディングおよび/もしくは凝集、ならびに/またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾患を治療するための方法。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または治療有効量の式Iのエピ−イノシトール化合物を対象に投与することを含む、タンパク質フォールディングもしくは凝集、またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存の異常に関連した中枢もしくは末梢神経系または全身器官の状態を対象において治療するための方法。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または式Iの治療用エピ−イノシトール化合物もしくはその医薬的に許容される塩を治療有効量で対象に投与することを含む、アミロイド形成、沈着、蓄積および/もしくは残存を阻害するための、および/または既存アミロイドの溶解/破壊を生じさせる方法。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または治療有効量の式Iのエピ−イノシトール化合物を投与することを含む、アルツハイマー病に罹患している患者においてアルツハイマー病の進行を改善するまたはより重症度が低い病期を達成するための方法。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または治療有効量の式Iのエピ−イノシトール化合物を対象に投与することを含む、対象におけるアルツハイマー病の進行を遅延させる方法。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または治療有効量の式Iのエピ−イノシトール化合物を投与することを含む、アルツハイマー病に罹患している対象の生存を増加させる方法。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または治療有効量の式Iのエピ−イノシトール化合物を対象に投与することを含む、対象における軽度認知障害(MCI)を治療するための方法。
【請求項25】
記憶を改善する必要がある哺乳動物を治療するための方法であって、該哺乳動物は、記憶を損なわせるまたは別様に低下させることが知られている疾病、疾患、虚弱または病気と診断されておらず、該方法は、請求項1〜17のいずれか1項に記載の記憶改善有効量の医薬組成物または治療有効量の式Iのエピ−イノシトール化合物もしくはその医薬的に許容される塩を該哺乳動物に投与する段階を含む、方法。
【請求項26】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の式Iのエピ−イノシトール化合物またはニュートラシューティカル的に許容されるその誘導体、および許容される担体をヒトに投与することによる、健常対象の食事を補うためのレジメン。
【請求項27】
異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾病を治療するための薬物の調製のための、請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物または式Iのエピ−イノシトール化合物の使用。
【請求項28】
前記疾病が、アルツハイマー病である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
異常なタンパク質フォールディングもしくは凝集またはアミロイド形成、沈着、蓄積もしくは残存を特徴とする疾病を予防および/または治療するための請求項1〜17のいずれか1項に記載の式Iの1つ以上のエピ−イノシトール化合物と、容器と、使用説明書とを含むキット。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1−2】
【図1−3】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−526834(P2009−526834A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554886(P2008−554886)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001929
【国際公開番号】WO2007/129221
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(505321031)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001929
【国際公開番号】WO2007/129221
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(505321031)
【Fターム(参考)】
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