説明

タンパク質製剤の界面活性剤の定量方法

本発明は、液相界面活性剤製剤からタンパク質性成分を除去する方法であって、(a)タンパク質性成分を含む液相界面活性剤製剤を提供し;(b)錯化剤を工程(a)の製剤に加えて、錯化剤に界面活性剤と錯体を形成させ;(c)工程(b)と同時に、またはその後に、相溶性沈澱剤をそれぞれ工程(a)の製剤または工程(b)の生成物に加えて液相反応混合物を形成し、相溶性沈澱剤に液相反応混合物中のタンパク質性成分を沈澱させ;(d)錯体を工程(c)の生成物中の沈澱したタンパク質性成分から分離して、精製した液相界面活性剤製剤を提供することを含んでなり、ここで錯体は液相反応混合物中に溶解したままであり、かつ工程(d)は錯体を液相に保持している方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、界面活性剤製剤から成分を除去し、製剤中の界面活性剤をアッセイ法に関する。
【0002】
ヒト血清アルブミン(HSA)および組換えヒトアルブミン(rHA)のようなタンパク質製剤の熱処理に続く粒子形成は、既知の問題である(欧州特許第0 341 103号明細書)。粒子は、気/液界面および他の疎水性表面でのタンパク質変性によって形成すると考えられている(Manning, M. C., Patel, K. & Borchart, R.T. (1989), Pharmaceutical Research, 6, 903-918; Thurow, H. & Geisen, K. (1984), Diabetologia, 27,212-218)。粒子形成は、タンパク質製剤に界面活性剤を加えることによって抑制することができる。
【0003】
ポリソルベート80をrHA最終生成物について処方したように10〜20μg/mlの濃度で用いて、粒子形成を防止することができる。欧州特許第0 341 103号明細書には、ヒトアルブミン溶液を安定させるため50mg/lまでの濃度での様々な界面活性剤の使用が記載されている。多くの他の薬学用タンパク質製剤は、界面活性剤を含んでいる。例えば、Orthoclone(商品名)OKT3(Janssen-Cilag GmbH, ドイツ)は、ポリソルベート80を約0.2mg/ml含み、Activase(商品名)50(Genentech, Inc. , カリフォルニア, 米国)は、ポリソルベート80を全容量が50mlのガラス瓶当たり≦4mg含み、Vepesid(商品名)J 100(Bristol Laboratories NJ, 米国)は、特に400mgのポリソルベート80を含み、NovoSeven(商品名)240(Novo Nordisk A/S, デンマーク)は、特に0.65mgのポリソルベート80を含む。
【0004】
例えば、界面活性剤は、薬学用タンパク質製剤などのタンパク質製剤において重要な処方成分であることができる。それ自体は、最終生成物でそれらを分析する規制要件がある。この分析法の精度は、医薬製剤の場合には特に重要である。しかしながら、この分析法は、分光光度法、高性能液体クロマトグラフィー、界面張力測定法、毛細管電気泳動、総有機炭素(TOC)滴定法、およびTLCなどのような界面活性剤について用いられる検出法はタンパク質も検出するので、タンパク質の存在下では界面活性剤含量を正確に評価することはできない。例えば、タンパク質含量は、界面活性剤含量の過剰評価をもたらす。
【0005】
Garewal(Anal. Biochem., 54, 319-324, 1973)は、タンパク質水溶液の界面活性剤含量の評価方法を提供した。このプロトコールは、第一工程として、エタノールの添加によってミセルを崩壊した後、アンモニウムコバルトチオシアネート(ACT)を添加することを教示している。Garewalによって例示された方法は、Triton X-100界面活性剤の水溶液を用い、この界面活性剤にACTが結合して青色錯体を形成した。次に、Garewalは、ACT-Triton X-100錯体が可溶性である非相溶性有機相(二塩化エチレン)を加えた。錯体は有機相に移動し、有機相が水性相から分離する。最終的に、有機相のTritonX-100含量が580nm−700nmの有機相のスペクトルを記録することによって決定され、622nmと687nmの吸光度の差は含まれているTriton界面活性剤の量に比例するといわれる。
【0006】
Garewalは、タンパク質であるウシ血清アルブミン(BSA)をTriton X-100の水溶液に導入する方法の効力に対する効果を検討した。666μg/mlまでのBSA濃度を検討した。低めのBSA濃度、例えば267μg/mlを用いると、抽出効力は約85%まで減少するが、タンパク質濃度を666μg/mlまで増加させても抽出効力はそれ以上有意に減少しなかった。Garewalは、ACTと反応するポリ(エチレンオキシド)基は生物学的成分(例えば、タンパク質)では極めて少ないので、干渉は極めて少なく、上記の方法は生化学的分析法に適していると結論した。
【0007】
Garewalの方法は、過去30年間生物学的製剤での界面活性剤定量に一般に好まれる方法となってきた。僅かな修正を加えて、Garewalの方法は、WCBP 2002, ジ・インターフェース・オブ・レギュラトリー・アンド・アナリティカル・サイエンス、フォー・バイオテクノロジー・ヘルス・プロダクツ(the Interface of Regulator and Analytical Sciences for Biotechnology Health Products)第6回シンポジウム(2002年1月27-30日)に、Lanteigne, D. & Kobayashi, K.(Biogen, Inc., ケンブリッジ,マサチューセッツ,米国)によって「直接比色法によるタンパク質を基剤とする生物薬剤処方におけるポリソルベートの定量測定」という標題のポスターで発表された。このポスターには、52mg/mlのモノクローナル抗体製剤中のポリソルベート80(「Tween 80」の商品名で発売)の分析法が記載されている。Lanteigne & Kobayashiは、試料が「高」濃度のタンパク質(例えば、52 mg/ml)を含む場合には、「活性薬剤物質により(すなわち、タンパク質により)起こり得る干渉を除去するためのタンパク質除去工程」を用いる必要があると述べている。Lanteigne & Kobayashiは、試料を−30℃で一晩インキュベーション(して、遠心分離および上清を単離)した後、ACTを加えて界面活性剤を錯体形成し、ジクロロメタンを有機液相として用いてACT−界面活性剤の錯体を抽出することを含む製剤中のタンパク質のエタノール沈澱によってこれを検討している。
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、検討の後に、彼らの教示内容と反対に、Lanteigne & Kobayashiの方法ではタンパク質溶液の界面活性剤含量は正確には分析されないことを本発明者らは意外にも見出した。この方法および基礎となるGarewalの方法の精度は、高タンパク質濃度では特に不十分である。例えば、下記のように(比較例1参照)、Garewalの方法は、界面活性剤溶液のタンパク質含量が50 mg/mlより大きい試料を試験したときには、紛らわしい結果を生じた。Garewalの方法は、200mg/mlのタンパク質を含む溶液では正確な界面活性剤分析法を提供することは期待されない。これは、これらの方法が、分析の辞典で界面活性剤の試料からタンパク質成分を除去することができないからである。更に、本発明者らは、GarewalおよびLanteigne & Kobayashiによって提案されたエタノール添加工程では、許容できないほど高い界面活性剤の損失を生じ、信頼性のないデータが提供されることを明らかにした。本発明者らは、Lanteigne & Kobayashiによって記載されたACT/ジクロロメタン法を用いて界面活性剤を抽出するときには、界面活性剤製剤からタンパク質含量を除去すると許容できないほどの界面活性剤が損失することも明らかにした。
【0009】
この予想しなかった問題を克服するため、本発明者らは、所定の試料における界面活性剤からタンパク質および他の成分を分離することによって、更に完全な界面活性剤製剤であって、分析したときに採取した実際の界面活性剤含量の更に典型的な結果が得られるものが提供される方法を考案した。更に、本発明の方法は、タンパク質を除去するのに試料を一晩インキュベーションする時間のかかる工程を必要とせず、従って、Lanteigne & Kobayashiによって記載された方法より効率的に行う方法である。
【0010】
従って、本発明の第一の態様では、液相界面活性剤製剤からタンパク質性成分を除去する方法であって、
(a) タンパク質性成分を含む液相界面活性剤製剤を提供し、
(b) 錯化剤を工程(a)の製剤に加えて、錯化剤に界面活性剤と錯体を形成させ、
(c) 工程(b)と同時に、またはその後に、相溶性沈澱剤(miscible precipitating agent)を、それぞれ工程(a)の製剤または工程(b)の生成物に加えて液相反応混合物を形成させて、相溶性沈澱剤に液相反応混合物(liquid-phase reaction mixture)中のタンパク質性成分を沈澱させ、
(d) 前記錯体を工程(c)の生成物中の沈澱したタンパク質性成分から分離して、精製した液相界面活性剤製剤を提供する
ことを含んでなり、
ここで錯体は液相反応混合物中に溶解したままであり、かつ、工程(d)は錯体を液相に保持している方法を提供する。
【発明の具体的説明】
【0011】
いずれの種類の界面活性剤も、本発明の第一の態様に準じて精製することができる。界面活性剤は、液体の表面張力を減少させる作用を行うことができる分子である。表面張力は、液体の表面に作用して、表面積を最小限にしようとする力であり、定量的には、表面上で単位長さの線を横切って作用すると思われる力である。水の表面張力は、聴力系を用いて室温(20℃)で測定したときには72ダイン/cmであり、界面活性剤はこの値を典型的には50ダイン/cmのみ、例えば約30−50ダイン/cmの表面張力に減少させることができる。
【0012】
典型的には、界面活性剤は、非イオン性であり、すなわち荷電していない親水性の頭部基を有する。非イオン性界面活性剤の例としては、ポリ(エチレンオキシド)基、アルコール基または別の極性基のようなポリ(アルキレンオキシド)基を有する界面活性剤が挙げられる。適当な非イオン性界面活性剤は、疎水性基および反応性水素原子、例えばアルキレンオキシド、特にエチレンオキシドを単独でまたはプロピレンオキシドと共に有する脂肪族アルコール、酸、アミドまたはアルキルフェノールを有することができる。例えば、非イオン性界面活性剤は、アルキルフェノールとアルキレンオキシドの縮合体、ポリオキシアルキレンソルビタンオレエート、またはポリオキシアルキレングリコールであることができる。
【0013】
特定の非イオン性界面活性剤化合物としては、アルキル(C−C22)フェノール−エチレンオキシド縮合物、脂肪族(C−C18)第一または第二直鎖状または分岐鎖状アルコールとエチレンオキシドの縮合生成物、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドおよびエチレンジアミンの反応生成物との縮合によって作成された生成物が挙げられる。他の非イオン性界面活性剤化合物としては、長鎖第三アミンオキシド、長鎖第三ホスフィンオキシド、およびジアルキルスルホキシドが挙げられる。非イオン性界面活性剤は、多糖類アミドのような糖質アミド、例えば、米国特許第5,389,279号明細書に記載のラクトビオナミドの一つまたは米国特許第5,009,814号明細書に記載の糖質アミドの一つを挙げることができる。この種の他の典型的な界面活性剤としては、Igepal DM 730、Igepal DM 530、Igepal DM 210、Igepal CO 880、Igepal CO 530、Brijの商品名で販売されている化合物(例えば、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(Brij 30)、ラウリルエーテル(Brij 35)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij 58)、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(Brij 78)、およびポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(Brij 92))などのポリオキシエチレングリコール、およびMyrjの商品名で販売されている化合物(例えば、Myrj 51)などのポリオキシエチレン脂肪酸エステルが挙げられる。典型的な非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオクチルフェノール(例えば、TritonX−100)、アルキルフェノキシポリエトキシ(3)エタノール、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween 20)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(Tween 40)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween 60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート(Tween 65)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween 80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート(Tween 85)、ポリオキシエチレン(20)パルミテート(G2079)、ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(23)、ポリオキシエチレン(25)水素化ヒマシ油(G1292)、ポリオキシエチレン(25)オキシプロピレンモノステアレート(G2162)が挙げられる。
【0014】
本発明の第一の態様による方法に用いるのに適する他の界面活性剤は、下記のものであってもよい:
・ 負に帯電した頭部基を有するアニオン性のもの[アニオン性界面活性剤の例としては、長鎖脂肪酸、スルホスクシネート、アルキルスルフェート、ホスフェートおよびスルホネート、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、およびタウロコール酸ナトリウムが挙げられる]。
・ 正に帯電した頭部基を有するカチオン性のもの[カチオン性界面活性剤の例としては、プロトン化した長鎖アミンおよび長鎖第四アンモニウム化合物、例えば、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(Cetavlon)、臭化セチルトリメチルアンモニウム、および塩化N-ヘキサデシルピリジニウムが挙げられる]。
・ 双性イオン性頭部基を有する両性のもの[両性界面活性剤の例としては、ベタインおよびある種のレシチンが挙げられる]。
【0015】
界面活性剤は、1種類以上のアルキレンオキシド基を有することができる。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのような任意のアルキレンオキシド基を含むことができる。エチレンオキシド基は、商業的に利用可能な界面活性剤でよく知られている。多数のアルキレンオキシド基はポリマー(例えば、ホモポリマー、コポリマーまたはブロックコポリマー)として、すなわちホモポリマー性のポリ(エチレンオキシド)基のようなポリ(アルキレンオキシド)基として存在することができる。この方法では5、4、3、2または1このような少なめのアルキレンオキシド基を有する界面活性剤を用いて作用することができるが、界面活性剤が6個以上のアルキレンオキシド基を含むことはよく知られている。この界面活性剤は1個以上のポリ(エチレンオキシド)基を有する非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート、オクチルフェノールエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルなどであることができる。
【0016】
ポリソルベート(ポリオキシエチレンソルビタンエステルとしても知られ、商標Tweenで販売されている)は、ソルビタンエステルから誘導される非イオン性界面活性剤である(Becher, P.「ポリオール界面活性剤(Polyol Surfactants)」/非イオン性界面活性剤(Nonionic SuJfactants), Schick, M.J.監修(Dekker, New York, 1967), page 247-299; Chislett, L.R. & Walford, J. (1976) Int Flavours Food Addit., 7, 61; Varma, R.K. et al (1985) Arzneimittel-Forsch, 35, 804)。好ましいポリソルベートとしては、ポリソルベート20、21、40、60、65、80、81、85などが挙げられる。特に好ましい界面活性剤はポリソルベート80であり、これは下記一般式(I)を有する:
【化1】

[ここで、w、x、yおよびzの和は20である]。
【0017】
オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(オクトキシノールとしても知られ、Triton X、Igepal CAおよびPolytergent Gの商品名として販売されている)は、イソオクチルフェノールをアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドと反応させることによって調製することができる非イオン性界面活性剤である。一般に販売されているオクトキシノール1分子当たりのエチレンオキシド単位の平均数(n)は、5〜15の範囲である。一般式は、下記の式(II)によって表される:
【化2】

[ここで、n=5〜15である]。
【0018】
Triton X-100として販売されている典型的な上記界面活性剤では、nは約9.5である。
【0019】
ポリエチレンポリプロピレングリコール(ポロキサマーとしても知られ、Pluronicの商標で販売されている)は、下記の式(III)によって表される一般式を有する一連の非イオン性界面活性剤である:
HO(CHCHO)(CH-(CH)CHO)(CHCHO)H (III)
[上記式中、bは少なくとも15であり、(CHCHO)+(CHCHO)は20−90重量%の範囲である]。
分子量は、1,000−16,000g/モル以上の範囲である。ポロキサマーの総説については、Schmolka, I. R. (1967) Am. Perfumer Cosmet., 82(7), 25-30を参照されたい。特定のポロキサマーの例としては、「Pluronic L62LF」(但し、a=7、b=30、c=7)「Pluronic F68」(但し、a=75、b=30、c=75)、および「Pluronic L101」(但し、a=7、b=54、c=7)が挙げられる。
【0020】
本発明の第一の態様に準じて用いられる界面活性剤は、更に1以上の直鎖状または分岐鎖状炭化水素鎖を含むことができる。商業的に入手可能な界面活性剤で典型的に見られる炭化水素鎖としては、脂肪酸が挙げられる。脂肪酸は、通常は炭化水素主鎖に少なくとも6個の炭素原子を有し、C16およびC18のようなより大きい主鎖がよく知られている。従って、炭化水素鎖はオレイン酸(すなわち、Cl6脂肪酸)基であることができる。界面活性剤は、ポリ(アルキレンオキシド)基と炭化水素鎖を両方とも含むことができる。例えば、ポリソルベートはポリ(エチレンオキシド)基とオレイン酸基とを含み、オクトキシノールは分岐鎖状炭化水素鎖とポリ(エチレンオキシド)基を含んでなる。
【0021】
タンパク質性成分は、出発材料から調製される任意の精製した界面活性剤製剤では望ましくない任意のタンパク質性分子を含んでなることができる。特に、この成分は、任意のその後の界面活性剤定量の精度を妨げるものである可能性がある。成分がペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含んでなるまたはからなるときには、この成分はタンパク質性である。「ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質」という用語は、天然に存在するものまたは人工的なものであっても、好ましくはペプチド結合によって接合されているアミノ酸の任意のポリマーを包含する。好ましくは、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、長さが少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90または100個のアミノ酸である。タンパク質性成分は、天然に存在するまたは組換えによって産生されたタンパク質、例えばアルブミン、WO 01/77137号明細書(この明細書の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)に記載されているようなアルブミン融合タンパク質、モノクローナル抗体、エトポシド、血清タンパク質(例えば、血液凝固因子)、アンチスタシン、マダニ抗凝固性ペプチド、または個々のタンパク質がアルブミンから離れているときには、WO 01/77137号明細書に開示されているアルブミン「融合パートナー」の任意の1以上であることができる。
【0022】
従来技術による方法とは異なり、本発明の第一の態様の方法は、界面活性剤を高濃縮したタンパク質性成分であって、例えば、少なくとも50、75、100、150、200mg/mlの濃度で工程(a)の液相界面活性剤製剤に存在することがある成分から効率的に分離することができ、成分レベルは界面活性剤製剤の容積当たりの重量で測定される。
【0023】
工程(a)の液相界面活性剤製剤における界面活性剤対タンパク質性成分の比を測定するのが適当であることがある。従って、界面活性剤対タンパク質性成分の比は、工程(a)の液相界面活性剤製剤に存在するタンパク質性成分分子の質量当たりの界面活性剤分子の質量(すなわち、ppm)として表されるときには、4,800ppm未満、例えば、4,500ppm、4,000ppm、3,500ppm、3,000ppm、2,500ppm、2,000ppm、1,500ppm、1,000ppm、900ppm、800ppm、700ppm、600ppm、500ppm、400ppm、300ppm、200ppm、110ppm、100ppm、90ppm、80ppm、75ppm、70ppm、60ppm、50ppm、40ppm、30ppm、20ppm、18ppm、17ppm、16ppm、15ppm、14ppm、13ppm、12ppm、11ppm、10ppm、9ppm、8ppm、7ppm、6ppm、5 ppm以下であることができる。
【0024】
「液相界面活性剤製剤」(liquid-phase surfactant preparation)という用語は、界面活性剤を含んでなる任意の液相製剤を包含する。この製剤は、水性であることができる。
【0025】
液相界面活性剤製剤を提供することの文脈において、「提供する」とは、全試料、より大きい製剤からのアリコート、または同じ基本ロットから調製した試料のバッチの一つを採取することを包含する。
【0026】
「錯化剤」(complexing agent)という用語は、1種類以上の界面活性剤(この方法の条件下で上記で定義した通りの界面活性剤)分子と弱い結合を形成する能力によって界面活性剤の疎水性を変更することができる任意の化合物を包含する。典型的には、錯化剤は、遷移金属イオンのような多価金属イオンを含む化合物となる。例えば、金属イオンは、VI、VII、VIII、IXまたはX族遷移金属イオン、例えば、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀でよいが、好ましい遷移金属イオンは3d遷移金属イオン、例えば、コバルト、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、マンガン、クロム、バナジウム、チタン、およびスカンジウムである。コバルト化合物を、錯化剤として用いることができる。従って、錯化剤はアンモニウムコバルトチオシアネート(ACT)であることができる。ACTは、アルキレンオキシドまたはポリ(アルキレンオキシド)(例えば、エチレンオキシドまたはポリ(エチレンオキシド))基を有する界面活性剤を錯形成する目的で用いる適当な錯化剤である。同様に、鉄(III)チオシアネートのような鉄化合物を錯化剤として用いることができる。
【0027】
従来技術による方法とは異なり、本発明の方法は、界面活性剤の存在を評価するのにカラー錯体の形成には依存しない。従って、本発明で用いられる錯化剤は、必ずしも着色錯体の形成を必要としない。
【0028】
有効量の錯化剤を液相界面活性剤製剤に加える。換言すれば、添加する錯化剤の量は、液相界面活性剤製剤における実質的に総ての界面活性剤を錯形成するのに十分なものである。典型的には、これは過剰に加える。液相界面活性剤製剤中の実質的に総ての界面活性剤を錯形成するのに要する錯化剤の量は、錯化剤と不純物を含まない界面活性剤の溶液との経験的試験によって決定することができる。
【0029】
「錯化剤が界面活性剤と錯体を形成することができる」とは、錯化剤の少なくとも幾らかが界面活性剤の少なくとも幾らかと錯形成することを意味する。典型的には、錯化剤を液相界面活性剤製剤に加えた後、製剤を混合して製剤中に錯化剤を分散させる。錯形成を起こさせる最適条件は、界面活性剤の性質と錯化剤の性質によって変化し、典型的には温度、圧力pH、および/または液相のイオン強度の変更を包含する。錯形成に有用な条件としては、中性pHおよび低イオン強度が挙げられる(Crabb & Persinger, 1961, Journal of the American Oil Chemist's Society, 41, 752-755)。例えば、界面活性剤がポリソルベート80であり錯化剤がACTである場合には、錯化剤に界面活性剤を用いて錯体を形成させるのに適する条件は、実施例において下記に示す通りである。
【0030】
形成の後、錯体は液相中に溶液状のままである。従って、錯化剤に界面活性剤を用いて(いかなるタンパク質の非存在下で)錯体を形成させるのに用いた条件下では、錯体は実質的に全く沈澱を生成しない。液相を47,800gで4℃にて15分間遠心分離することによって沈澱としてのペレットで回収することができる界面活性剤の量が、下記の実施例に記載のHPLCを用いて測定するときに遠心分離後の上清に回収された界面活性剤の20%、15%、10%、5%、2%、1%、0.5%または0.1重量%未満である場合には、錯体は溶液状のままであるということができる。低めの百分率の値が好ましい。
【0031】
「沈澱剤」(precipitating agent)は、界面活性剤以外の化合物に沈澱を起こさせる任意の薬剤である。沈殿剤は、その機能を行うには液相界面活性剤製剤中で「相溶性」(miscible)でなければならない。換言すれば、用いた条件下では、沈殿剤は液相界面活性剤製剤と非相溶性の分離した液または固相を形成してはならない。好ましくは、沈殿剤は、液相界面活性剤製剤水溶液に相溶性である。水と相溶性であるには、沈殿剤は通常は極性領域を有する。典型的には、沈殿剤は水相溶性の有機溶媒である。水相溶性沈殿剤の例としては、極性のプロトン性溶媒および極性の非プロトン性溶媒、例えば、アルコール、シアノアルキル、アミン、アミド、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、グリコール、エーテル、ハロゲン化アルキルおよび芳香族炭化水素が挙げられる。好ましい沈殿剤としては、アセトン、アセトニトリル、イソプロパノール、メタノールおよびエタノールが挙げられる。アセトニトリルは、界面活性剤収率とコンタミナント・キャリーオーバー(contaminant carry-over)との間で良好なバランスを示す。更に、アセトニトリルは、アセトンと比較して、
(a) アセトンを用いると、上清の処理のためにガラス器を用いる必要があり、これはクリーニングによる洗剤で汚染される可能性があるが、アセトニトリルの使用では使い捨てプラスチック容器を用いることができるので、汚染の危険性が最小限になり、
(b) アセトンはまた引火点が典型的な遠心分離温度より低い−18であり、安全のためには、引火点が+13℃のアセトニトリルを用いる方がよい
などの利点を有する。
【0032】
沈殿剤は、錯化剤を液相界面活性剤製剤に加える前にではなく、加えるのと同時に、または一層一般的には加えた後に加える。これは、本発明と従来技術との重要な差である。Garewal(上記引用)およびLanteigne & Kobayashi(上記引用)ではいずれの場合にも、錯化剤(ACT)を加える前に沈殿剤(エタノール)を界面活性剤製剤に加えた。これにより幾らかの界面活性剤が沈澱中に取り込まれるので、幾らかの界面活性剤が溶液から失われる。従って、上清中の界面活性剤の得られる定量値は、出発製剤中の界面活性剤の量の不正確な尺度である。理論に束縛されるものではないが、錯化剤を加える前にではなく、のと同時にまたは一層一般的にはの後に沈澱剤を加えることによって、タンパク質性成分除去の有効性が向上すると考えられる。錯化剤は、実質的に総ての界面活性剤を溶液に保持するが、タンパク質性成分は沈澱する。
【0033】
幾つかの場合には、続いて沈殿剤を添加することによって、錯化剤の効果を高め、界面活性剤と錯化剤の間の錯体形成の程度を大きくすることができる。理論によって束縛されるものではないが、これは、沈殿剤が更に界面活性剤をタンパク質性成分から分離することによって、錯化剤による界面活性剤の錯形成を改良することができるからであると考えられる。
【0034】
「相溶性沈殿剤に液相反応混合物中のタンパク質性成分を沈澱させる」ときには、タンパク質性成分の沈澱に有利であるが錯体を実質的に妨げない条件下で液相反応混合物をインキュベーションすることができる。用いられる実際の条件は、問題とする系における特定の成分の同一性によって変化する。当業者であれば、経験的試験によって系の任意の所定の組合せに適当な条件を決定することができる。
【0035】
錯体は、液相反応混合物中で溶液のままである。これに関して、液相反応混合物を47,800gで4℃にて15分間遠心分離することによって沈澱としてのペレットで回収することができる界面活性剤の量が、下記の実施例に記載のHPLCを用いて測定するときに遠心分離後の上清に回収された界面活性剤の20%、15%、10%、5%、2%、1%、0.5%または0.1重量%未満である場合には、錯体は「溶液状のまま」である。低めの百分率の値が好ましい。
【0036】
「錯体を工程(c)の生成物中の沈澱したタンパク質性成分から分離する」工程は、「液相中で錯体を保持する」限り、沈澱を溶液から分離するための当該技術分野で知られている任意の適当な方法によって行うことができる。実質的に総ての錯体は、工程(c)の液相生成物に保持されている。疑問を回避するには、錯体が別の非相溶性液相に分配される場合には、これは液相に保持されない。これは、本発明の方法とGarewal(上記引用)およびLanteigne & Kobayashi(上記引用)の方法とのもう一つの重要な差である。Garewal(上記引用)およびLanteigne & Kobayashi(上記引用)の方法では、錯形成した界面活性剤を非相溶性有機相(エチレンジクロリドまたはジクロロメタン)を添加することによって水溶液から単離する。理論によって束縛されるものではないが、界面活性剤錯体を別の液相に分配することによって大きなコンタミナント・キャリーオーバーを生じると考えられる。対照的に、本発明者らはこの形態の錯体単離には依存せず、その結果一層多くのタンパク質性成分が除去される。
【0037】
分離工程は、典型的には反応混合物を遠心分離し、沈澱したタンパク質性成分がペレットを形成し、錯体が上清に保持されるようにし、上清をペレットから分離することによって行う。"g"および継続時間のような最適遠心分離パラメーターは、形成された沈澱の性質によって変化する。下記の実施例を手引とすることはできるが、当業者は経験的試験によって適当な条件を決定することができる。
【0038】
しかしながら、当業者であれば、濾過のような多くの他の方法を当該技術で利用して沈澱から液相製剤を分離することができることが分かるであろう。
【0039】
分離工程の生成物は精製した液相界面活性剤製剤である。「精製した液相界面活性剤製剤には、沈澱したタンパク質性成分を実質的に含まない液相界面活性剤製剤の意味が包含される。これに関して、疎水性固相抽出カートリッジをブロックしたりまたはSPE精製後の界面活性剤の純度に著しくに影響するなく下記の実施例に記載の条件下でこのカートリッジに応用することができる場合には、液相界面活性剤製剤は沈澱したタンパク質性成分を実質的に含まない。
【0040】
本発明の第一の態様による方法は、1以上の追加の精製工程を含んでなり、精製した液相界面活性剤製剤中の界面活性剤を更に精製することができる。任意の適当な方法を用いることができる。
【0041】
一つの態様では、本発明の第一の態様による方法は、精製した液相界面活性剤製剤中の錯体を固相に非共有的に結合する追加工程を含んでなる。典型的には、疎水性固相は界面活性剤を吸着するので、これを用いる。あるいは、親水性固相を用いて、界面活性剤を保持することなしに精製した液相界面活性剤製剤中に残っているタンパク質性成分を吸着することによって、界面活性剤を溶出物として回収することができる。
【0042】
錯体が固相への暴露前に解離している場合には、好都合であることがある。当業者であれば、錯体を解離する方法を周知している。具体的詳細は、界面活性剤および錯化剤の性質によって変化する。例えば、キレート化剤を用いることができる。典型的には、キレート化剤は界面活性剤と競合して錯化剤の多価金属イオンに結合する。従って、錯化剤がACT(すなわち、多価金属イオンがコバルト)である場合には、錯体を解離する適当な方法はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような錯化剤を精製した液相界面活性剤に添加するによる。
【0043】
一つの態様では、追加工程で用いる固相は固相抽出(SPE)カートリッジまたはディスクである。
【0044】
SPEカートリッジまたはディスクは疎水性であることができる。疎水性SPEカートリッジおよびディスクの例としては、ポリスチレンジビニルベンゼン(例えば、下記に例示したBakerbond SDB1カラム、Merck製のLicrolut EN PDBVカートリッジ、またはPhenomenex製のStrattaX)、またはC2−24アルキルカートリッジが挙げられる。
【0045】
界面活性剤が固形マトリックスに非共有結合している本の第一の態様による方法では、固形マトリックスを、結合した界面活性剤をマトリックスに結合したままにしてあらゆる残っているタンパク質性成分を洗浄除去する液体で洗浄することができる。適当な洗浄液体は当該技術分野で周知であり、市販されている。適当な洗浄液体としては、イソプロパノール、ヘキサンおよびアセトニトリルが挙げられる。洗浄液が酸性またはアルカリ性であるのが好都合であることがある。例えば、酢酸をヘキサンに0.1%(v/v)のような適当な濃度で加え、酸性洗浄液を提供することができる。アンモニウムまたはトリエチルアミンをヘキサンに0.5%(v/v)アンモニウムまたは1%(v/v)トリエチルアミンのような適当な濃度で加え、アルカリ性洗浄液を提供することができる。適当な洗浄条件は、界面活性剤および固相の性質によって当業者が決定することができる。
【0046】
マトリックスは、界面活性剤をマトリックスから除去しない液体で洗浄することができる。典型的には、適当な洗浄液体は界面活性剤とマトリックスの相互作用を妨げないように十分親水性であることがあり、あるいは溶液中の界面活性剤を沈澱させるように十分疎水性であることがある。適当な洗浄液を決定する方法は、下記のように行うことができる。界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)の少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、99%または実質的に100%をマトリックス(例えば、下記に例示したBakerbond SDB1カラム、Merck製のLicrolut EN PDBVカートリッジ、またはPhenomenex製のStrattaXなどのようなポリスチレンジビニルベンゼンSPEカートリッジ)から下記の条件下で回収することができる。
(a) カートリッジを下記の実施例2の工程2(v)(a)に準じて調製する。
(b) カートリッジに15μg/mlの界面活性剤水溶液を(約0.5ml/分で)10ml装填する。
(c) カートリッジを、問題の洗浄液3x1mlで洗浄する。カートリッジを真空で少なくとも30秒間空気を通して完全に乾燥させる。
(d) それぞれのカートリッジ上の界面活性剤を実施例2、工程2(v)(d)-(g)に準じて溶出して回収し、界面活性剤の回収率を、実施例2、工程(vii)-(ix)に規定したプロトコールによる実施例2、工程2(vi)に準じて設定したHPLC装置を用いて決定した。
(e) 回収率は、検討を行っている溶媒洗浄液なしでの抽出から計算すべきである。
【0047】
従って、当業者であれば、界面活性剤の性質および用いる固形マトリックスの性質によって適当な洗浄液体を選択することができる。適当な洗浄液は、固相上の界面活性剤を沈澱するのに十分強く、または十分弱くて界面活性剤の溶出を最小限にしまたは防止するほどであることができる。典型的には、洗浄液体は、水不溶性有機溶媒または水溶性有機溶媒となる。
【0048】
適当な洗浄液体、特にポリ(アルキレンオキシド)(例えば、ポリ(エチレンオキシド))基を有する界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)の場合には、ヘキサンなど、例えば、クロロホルムまたはトルエンを含むことができる。適当な洗浄液体、特に固相に強く結合している基、例えばソルビタン基を有する界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)は、アセトニトリル、イソプロパノールおよび/またはトリエチルアミンのような界面活性剤を溶出しない弱い洗浄液であることができる。当業者であれば、これらの方法を適宜組み合わせることができることを理解されるであろう。例えば、ポリソルベート80はポリ(エチレンオキシド)基とソルビタン基をいずれも含んでおり、強および弱洗浄液のいずれも用いることができる。例えば、本発明者らは、下記の洗浄液がポリソルベート80に適当であることを見出した: 30%(v/v)アセトニトリルに続いてイソプロパノール、1%(v/v)トリエチルアミン/ヘキサン、および最後にヘキサン。
【0049】
界面活性剤の性質、マトリックスの性質、および除去しようとするタンパク質性成分の性質によっては、更なる洗浄工程を用いることができる。
【0050】
(複数の)洗浄工程に続いて、界面活性剤を典型的にはマトリックスから溶出して、溶出物として回収する。任意の適当な溶離剤を用いることができる。本発明者らは、トルエン:エタノール(1:1)混合物が例示した系で良好な結果を提供することを見出した。
【0051】
精製した液相界面活性剤製剤またはそれから誘導される溶出物を分析して、界面活性剤含量を決定することができる。当業者であれば、溶液の界面活性剤含量を測定する方法を熟知している。例えば、界面活性剤が少なくとも6個のアルキレンオキシド基を含むときには、界面活性剤をACTと錯体形成させ、界面活性剤濃度をGarewal(上記引用)などに記載されているように分光光度法により測定することができる。あるいは、界面活性剤含量は、下記の実施例に記載されているように、HPLCまたは水性GPCによって測定することもできる。
【0052】
試験試料中のタンパク質性成分が低レベルであるため、分析の結果は、分析を従来技術の方法に準じて行った場合よりも緊密に初期液相界面活性剤製剤の実際の界面活性剤含量に相関する。好ましくは、試験試料中のタンパク質性成分のレベルは、下記に例示した方法を用いてHPLCによって評価したときには検出可能なレベルを下回る。
【0053】
従って、本発明の方法であって、用いる液相界面活性剤製剤がより大きい製剤のアリコートまたは製剤のバッチの一試料であるものを用いることができ、この方法は、このようにして測定した精製した液相界面活性剤製剤またはそれから誘導される溶出物の界面活性剤含量を、より大きい製剤または他のバッチ部分の界面活性剤含量と相関させる追加の工程を含んでなる。
【0054】
この相関を行った後、使用者はより大きい製剤または他のバッチ部分を適当に標識することができ、または適当な品質管理報告を供給してこのようにして測定した界面活性剤含量を反映することができる。
【0055】
本発明の方法は従来技術の方法より正確な界面活性剤含量の測定方法を提供するので、本発明の方法を用いて分析する必要があり且つこのようにして測定した界面活性剤含量を標識した製剤は、その標識または他の関連データがその含量における界面活性剤レベルを一層正確に且つ一層精密に反映するという点において従来技術の製剤とは異なっている。従って、このような生成物は規制要件を一層よく満たすことができる。
【0056】
従って、本発明の第二の態様では、上記で提議した方法によって得ることができる標識した液相界面活性剤製剤が提供される。好ましい態様では、液相界面活性剤製剤は、上記のようなタンパク質性成分を含んでなる。好ましくは、この成分は、工程(a)の液相界面活性剤製剤に少なくとも50、75、100、150、200mg/ml以上の濃度で含まれ、成分レベルは界面活性剤製剤容積当たりの重量で測定される。
【0057】
工程(a)の液相界面活性剤製剤中の界面活性剤対タンパク質性成分の比を測定するのが適当であることがある。従って、界面活性剤対タンパク質性成分の比は、工程(a)の液相界面活性剤製剤に存在するタンパク質性成分分子の質量当たりの界面活性剤分子の質量(すなわち、ppm)として表されるときには、4,800ppm未満、例えば、4,500ppm、4,000ppm、3,500ppm、3,000ppm、2,500ppm、2,000ppm、1,500ppm、1,000ppm、900ppm、800ppm、700ppm、600ppm、500ppm、400ppm、300ppm、200ppm、110ppm、100ppm、90ppm、80ppm、75ppm、70ppm、60ppm、50ppm、40ppm、30ppm、20ppm、18ppm、17ppm、16ppm、15ppm、14ppm、13ppm、12ppm、11ppm、10ppm、9ppm、8ppm、7ppm、6ppm、5 ppm以下であることができる。
【0058】
上記の方法は界面活性剤含有医薬製剤のバッチの品質管理に有用であることが、当業者には明らかであろう。品質管理は、標準的項目に対する製造工程の産出物の試料、典型的にはロットまたはバッチを試験することによって産出物が必要な標準に合うことを保証することによる製造した生成物における標準を保持するシステムである。これは、要求の厳しい規制要件を満たすことが必要な医薬品の製造では特に重要である。例えば、界面活性剤の分析に関する「成分」は、一般的に所望な薬学活性化合物である。従って、製剤の界面活性剤含量の品質管理は、上記で定義した方法を用いて製剤の試料の界面活性剤含量を測定することによって行うことができる。
【0059】
従って、本発明の第三の態様では、上記の方法を用いて品質管理を行った界面活性剤含有医薬製剤が提供される。
【0060】
本発明を、下記の図および実施例を参照することによって更に詳細に説明する。
【実施例】
【0061】
比較例1
下記の例は、Garewal(上記引用)の方法に基づくものである。
【0062】
5および25%(w/v)のrHA製剤にポリソルベート80(「Tween 80」、Sigma製)を15μg/mlの濃度まで加え、200μl分量をACT試薬(17.8gアンモニウムチオシアネートおよび2.8g硝酸コバルト/100ml Milli Q水)2mlと混合した
【0063】
次に、混合物をクロロホルム2mlと室温にて15分間混合することによって抽出した。次に、クロロホルムを回収し、抽出を更に4x1ml分量のクロロホルムで反復した。
【0064】
それぞれのクロロホルム抽出物の600nmでの吸光度を測定し、それぞれの試料についての全吸光度を計算した(すなわち、上記で定義した条件下で抽出した全ACT錯体)。
【0065】
この抽出手順を、超純水(「Milli Q(商品名)」水、Millipore Corp.製)およびrHA(5%w/v)の両方中で調製した標準ポリソルベート80溶液(0、0.5、5.0および50.0mg/ml)について反復した。
【0066】
結果を、表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
ACT試薬を水溶液中でポリソルベート80と混合すると、有機緩衝液中に抽出することができる着色した(青色)不溶性塩が形成する。rHAのACT試薬−溶媒抽出では、水について得たものより高いバックグラウンド吸光度が得られた(図1)。これは、rHAがACT試薬と反応してこの方法で予測したより高い吸光度を示すポリソルベート80以外の物質を含むことを示している。
【0069】
rHA最終生成物中のポリソルベート80の推定値は、この方法による既知濃度の4000倍を上回り(表1)、この方法が正確でないことを示している。この分析法の変動性と組み合わせた無添加のrHA試料での高い吸光度は、この結果を説明している。無添加rHAで得られる高く且つ変化しやすい干渉反応のため、この方法はrHA最終生成物中におけるポリソルベート80の直接分析法には適さない。
【0070】
比較例2
比較例1の方法を用いるときに経験した汚染の問題を解決するための試みにおいて、C18SPEカートリッジを用いる追加の精製工程を包含することの効果を評価した。
【0071】
ポリソルベート80は、超純水中で50mg/mlの最終濃度、およびrHA中で15μg/mlで調製した。これらの試料のそれぞれの200μlに、エタノール800μlを加えた後、ACT試薬2mlを加えた。次に、混合物にクロロホルム5mlを加えた後、室温で15分間混合することによって抽出を行った。次に、クロロホルム抽出物を採取し、C18SPE上で下記のように抽出した:
工程 手順
湿潤化: 1mlクロロホルム
平衡: 1mlクロロホルム
装填: rHAまたは水からのACT-Tween 80錯体のクロロホルム抽出物
洗浄液: 1mlクロロホルム
溶出: 0.25、0.50または1.00mlメタノール
【0072】
SPE溶出物を遠心蒸発を用いて乾燥し、テトラヒドロフラン(THF)1ml(水抽出物)または0.5ml(rHA抽出物)に再懸濁した。次に、それぞれの再懸濁した溶出物の600nmでの吸光度を測定した。
【0073】
コントロールとして、ポリソルベート80を含まないrHAの200μl分量を、上記の手順を用いて抽出した。結果を表2に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
「ND」は、測定しなかったことを意味する。無添加rHAの吸収は50mg/ml標準と同等であるので、これらの試料の回収率計算しなかった。すなわち、rHA試料由来の高いバックグラウンドがある。
【0076】
水からのACT−ポリソルベート80錯体の回収率は、80%を上回る(表2)。ACT−ポリソルベート80錯体のこの回収率は、0.25−1.0mlのSPE溶出容積で保持される(表2)。低溶出容積を用いるのが、再懸濁の前の溶出物の乾燥時間を短縮するのに好都合なことがある。
【0077】
ACT錯体形成、溶媒抽出およびSPEを用いるrHAからポリソルベート80の抽出により、ポリソルベート80を有するおよびなしの試料について本質的に同一の吸光度が得られた(表2)。これは、これらの抽出物で生じた色がポリソルベート80の存在には完全には関係しておらず、rHA汚染物、賦形剤またはタンパク質自身によって生成する可能性があることを示している。
【0078】
従って、ポリソルベート80−ACT錯体はC18SPEを用いてクロロホルムから抽出することができるが、高いバックグラウンド応答も生成する。
【0079】
比較例3
Lanteigne & Kobayashi(上記引用)に記載の「高」濃度のタンパク質(例えば、52mg/ml)を含む溶液中の界面活性剤レベルを分析する方法は、試料の−30℃での一晩インキュベーション(および遠心分離と上清の単離)を含むタンパク質のエタノール沈澱の後、ACTを添加することによる界面活性剤の錯形成、およびジクロロメタンを有機液相として用いるACT−界面活性剤錯体の抽出を伴う。
【0080】
本発明者らは、Lanteigne & Kobayashiによって提案された書記のエタノール沈澱工程で許容できないほどのレベルの界面活性剤が損失することを見出した。
【0081】
rHA(5%w/v)+10μg/mlポリソルベート80の分量(10ml)を、冷エタノール40mlで処理した。試料を、Sorval RC5C遠心分離機(ローター=SS34)中で20,000rpmで20分間遠心分離した。次に、上清をロータリーエバポレーターを用いて(約2mlまで)乾燥した後、C18SPEカートリッジ上で抽出した。
【0082】
rHAをエタノール沈澱に続いてC18SPEによって除去しても、ポリソルベート80回収率は35%を上回るまで向上しなかった(データは示さず)。これは、C18SPE上での回収率は水抽出物(すなわち、タンパク質を含まない)から得られるものより低いので、タンパク質の沈澱によりポリソルベート80が損失することを示している。
【0083】
Lanteigne & Kobayashiに記載されているように試料の−30℃での徹底的な一晩インキュベーションは行わないが、Garewal(上記引用)の方法でも、第一工程としてエタノールの添加を含む。本発明者らは、Garewalによって提案された書記のエタノール添加工程、あるいは同様な溶媒(この場合には、メタノールまたはイソプロパノール)の添加では、許容できないほどのレベルの界面活性剤が損失することを見出した。
【0084】
rHA(5%w/v)+10μg/mlポリソルベート80を調製し、10ml分量をメタノール、イソプロパノールまたはエタノール5mlと混合した。次に、処理した試料(l5ml)を上記のようにC18SPEカートリッジ上で抽出し、溶出物を実施例1の通りにポリソルベート80について分析した。C18SPEの前に、rHA最終生成物を30%イソプロパノール、メタノールまたはエタノールで前処理したところ、ポリソルベート80の回収率はそれぞれ7、25および51%となった。これらの回収率は規制による分析には許容できないほど低く、紛らわしい結果を生じる。
【0085】
比較例4
比較例3に記載のLanteigne & Kobayashi(上記引用)の方法を用いるときには、エタノール沈澱の結果として観察された界面活性剤の損失に加えて、本発明者らは、ACTの添加による界面活性剤の錯形成工程、およびジクロロメタンを有機液相として用いるACT−界面活性剤錯体の抽出も界面活性剤の損失を引き起こすことも示した。
【0086】
ポリソルベート80の回収率を、rHA(5%w/v)+10μg/ml Tween80の10ml分量と超純水+10μg/mlポリソルベート80の10ml分量との間で比較した。それぞれの試料にACT試薬(17.8g アンモニウムチオシアネートおよび2.8g硝酸コバルト六水和物/100ml超純水)70mlを2回添加した後、ジクロロメタン5mlと混合した。試料を一晩インキュベーションした。混合物を3000rpmで5分間遠心分離し、最上部の水相を廃棄した。無水硫酸アンモニウムの結晶を若干数加えて、試料を上記のように混合し、再度遠心分離した。次に、ジクロロメタンを清浄な試験管に移し、ヘリウム気流下で乾燥した。次に、残渣をメタノール1mlに再懸濁し、遠心蒸発によって乾燥した後、100mlのTHFに再懸濁した。次に、これらの再懸濁した試料を、実施例1に記載の通りポリソルベート80について分析した。
【0087】
水試料からのポリソルベート80の回収率は82%であった。rHA試料からのポリソルベート80の回収率は、僅か21%であった。これは、Lanteigne & Kobayashiの界面活性剤の回収率プロトコールは、タンパク質性汚染物の存在下では界面活性剤を効率的に抽出することができないことを示している。
【0088】
実施例1
比較例で用いた方法に対する大きな変更としては、
・ ACTの添加前よりはむしろ後にタンパク質沈澱剤を加え、
・ ACT−ポリソルベート80錯体を、溶媒抽出よりはむしろ遠心分離を用いて最初にタンパク質性成分から分離した
ことが挙げられる。
【0089】
rHAの6個のロット(「A」−「F」)を検討した。ロットFには、故意に15μg/mlのポリソルベート80を添加した。rHA(250mg/ml)の10ml分量に、ACT試薬2mlに続いてアセトン18mlを加えた。
【0090】
次に、試料を渦流混合し、47,800gで4℃にて15分間遠心分離した。上清を取り出し、100mM EDTA/0.5M Tris/HCl緩衝液pH8.0の30mlで希釈した(Bakerbond SDB 200mg/3mlカラム上で予備抽出)。次に、これらの希釈試料を、下記のように50mg Bakerbond SDB1カラムを用いて固相抽出(SPE)によって抽出した:
工程 手順
湿潤化: 2mlクロロホルム、2mlメタノール
平衡: 2ml 30%アセトン、50%EDTA溶液、20%超純水(Milli Q(商品名))
装填: 希釈したACT上清
洗浄: 超純水(Milli Q(商品名))、メタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、0.5%アンモニア/ヘキサン、ヘキサン、1%酢酸/ヘキサン、ヘキサン
溶出: トルエン:エタノール(1:1)の2x750μl分量
【0091】
次に、SPE溶出物をロータリーエバポレーターで乾燥し、テトラヒドロフラン(THF)200μlに再懸濁し、下記のようにHPSECによって分析した:
カラム: 3本の前に50x7.8mm 5μmガードカラムを備えた300x7.8mm Phenomenex Phenogel 50オングストローム, 5μmカラム
移動相: テトラヒドロフラン(THF)
流速: 1ml/分
注入: 50μl
検出: Waters 410示差屈折計
カラム温度: 25℃
検出器温度: 35℃
【0092】
2つのバッチ(EおよびD)に、ごく僅かな汚染が見られた(図2)。しかしながら、これは、面積よりは高さを用いておよび/または公式化されていないrHAにおいて標準曲線を用いて定量することによって正確且つ精密な分析を促進するために無視することができる(すなわち、標準曲線は、ポリソルベート80を添加する前にrHAを用いて調製することができる)。
【0093】
実施例2
1.試験した医薬製剤
Orthoclone(商品名)OKT3: Orthoclone(商品名)OKT3((ムロモナブ-CD3)-Janssen-Cilag GmbH, ドイツ)についての製品文献は、それぞれの5mlアンプルがとりわけ1mgのポリソルベート80を含むことを述べている。分析には、0.25mgポリソルベート80に相当する製品1.25mlを分析した。
【0094】
Vepesid(商品名)J 100: ((エトポシド)-Bristol Laboratories NJ, 米国)は、とりわけ400mgのポリソルベート80を含む。ポリソルベート80分析には、5μlの製品を分析した。
【0095】
NovoSeven(商品名)240: ((組換え凝固因子VIIa) Novo Nordisk A/S, デンマーク)は、とりわけ0.65mgのポリソルベート80を含む。再構成は、注射用滅菌水(USP)8.5mlを加えることによって製品文献に記載の通りに行った。ポリソルベート80分析には、再構成した製品3mlを分析した。
【0096】
2.ポリソルベート80の抽出および分析
ポリソルベート80の分析は、下記のようにして行った:
(i) 下記の装置を用いた: 1ml, 50mg Bakerbond SDB1 SPEカートリッジ(Mallinckrodt Baker B.V.); 3ml, 200mg Bakerbond SDB1 SPEカートリッジ(Mallinckrodt Baker B.V.); 50μl試料ループ、システムコントローラーおよびインテグレーターを備えたオートインジェクターを有する分析用HPLCシステム; 上記のHPLCシステムに適当な屈折率検出器; Phenomenex Phenogel 50オングストローム, 5μmガードカラム(50x7.8mm); HPLCカラムヒーターおよびコントロールモジュール(Waters, インサートなし); ステリリン(sterilin)容器; 蓋付きのガラス製ネジきり瓶(2ml 12mmx46mm); 12mmx46mm瓶用のローターを備えたUnivapロータリーエバポレーター; 圧着トップシールを有する250μlガラス製HPLC試料瓶。
【0097】
(ii) 下記の試薬を用いた: アンモニウムチオシアネート, AR級(Fisher Chemicals); 硝酸コバルト六水和物, AR級(Fisher Chemicals); アセトニトリル, 遠紫外級(Fisher Chemicals); エチレンジアミン四酢酸(二ナトリウム塩), Sigmaウルトラ級(Sigma); トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン, Sigma級(Sigma); (濃)塩酸, SLR級(Fisher Chemicals); ヘキサン, ジストール級(Fisher Chemicals); テトラヒドロフラン, GPC級(Fisher Chemicals); トリエチルアミン, AR級(Fisher Chemicals); イソプロパノール, HPLC級(Fisher Chemicals); メタノール, HPLC級(Fisher Chemicals); クロロホルム, HPLC級(Fisher Chemicals); 水, 実験室級; トルエン, GPC級(Fisher Chemicals); エタノール, AR級(Fisher Chemicals); ポリソルベート80, CAPP Raw Material 34 (Surfachem); ヘキサデカン酸, Sigmaウルトラ級(Sigma)。
【0098】
(iii) 下記の溶液を用いた:
(a) Orthoclone(商品名)OKT3, Vepesid(商品名)J 100、およびNovoSeven(商品名)240は、上記で定義した通り、実験室級の水で10mlまで希釈、
(b) 15μg/mlポリソルベート80を含む組換えヒトアルブミン25%(w/v)水溶液(10ml)、
(c) ACT試薬 (71.2gアンモニウムチオシアネートおよび11.2g硝酸コバルト六水和物を20mlの実験室級水に溶解し、100mlまで希釈)、
(d) EDTA緩衝液(37.22gエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)および60.55gトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを約900mlの実験室級水に溶解し、濃塩酸を加えてpHを8.0に調整し、1リットルまで希釈)。この溶液は、下記のように固相抽出を用いて精製した:
・3ml, 200mg Bakerbond SDB1 SPEカートリッジをTHF 6mlに続いて実験室級水6mlで洗浄し、溶液を重力下で流した。
・Pharmacia P1ポンプを用いてEDTA緩衝液6mlをSPEカラムを約4ml/分で通過させ、溶液を廃棄した。
・残りのEDTA緩衝液をSPEカラム中を約4ml/分で通過させ、採取して分析に用いた。
(e) 30%(v/v)アセトニトリル(アセトニトリル30mlを実験室級水70mlと混合した);
(f) 1%(v/v)トリエチルアミン/ヘキサン(トリエチルアミン200μlをヘキサン19.8mlに溶解した);
(g) トルエン:エタノール(1:1)(トルエン10mlをエタノール10mlと混合した);
(h) ポリソルベート80標準溶液(0.5000±0.0005gのポリソルベート80をA級測容フラスコ中で最終容積が50mlの実験室級水に溶解した)。最終濃度=10mg/ml; および
(i) 「システム適合性」(system suitability)標準溶液(0.10gのヘキサデカン酸および0.l0gのポリソルベート80を測容フラスコ中で最終容積が10mlのTHFに溶解: 最終濃度=10mg/mlおよび10mg/分ヘキサデカン酸; ガラス瓶に200μlで−20℃にて保管)。
【0099】
(iv) タンパク質沈澱および除去は、下記のようにして行った:
(a) 総ての試験管(標準および試験)に、ACT試薬4mlを加えて、混合物を緩やかに攪拌混合した。
(b) 総ての試験管(標準および試験)に、アセトニトリル20mlを加えた。試験管の栓をし、激しく振盪して粘稠な沈澱を粉砕し、少なくとも1分間渦流混合した。試験管を室温にて15分間インキュベーションした。
(c) インキュベーションの後、それぞれの試料を更に1分間渦流混合し、次に47,800g(Sorvall RC5C CentrifugeおよびSS34ローター 20,000r.p.m.)で4℃にて20分間遠心分離した。
(d) 10個のステリリンポット(70ml)に、EDTA緩衝液17mlを加えた。
(e) 遠心分離の後、それぞれの試験管からの総ての上清を(上記の用にして調製した)EDTA緩衝液の個別分量(17ml)に移した。
(f) それぞれの遠沈管を更に17mlのEDTA緩衝液で洗浄し、これを適当なステリリンポットに加えた。これが、精製した界面活性剤製剤である。
【0100】
(v) 精製した界面活性剤製剤を、固相抽出(SPE)によって更に精製した。SPEは、下記のようにして行った:
(a) 製造業者の指示に従って、10個の1ml, 50mg Bakerbond SDB1 SPEカートリッジをSPEマニホールドに取り付け、2mlクロロホルムに続いて2mlメタノール、最後に30%アセトニトリル2mlで、それぞれ洗浄した。
(b) それぞれのカラムに、(約0.5ml/分で)上記の方法で得た精製した界面活性剤製剤を装填した。
(c) それぞれのカラム30%(v/v)アセトニトリル2mlに続いてイソプロパノール1ml、1%(v/v)トリエチルアミンヘキサン1ml、最後にヘキサン1mlで洗浄した。SPEカートリッジを、それぞれのカートリッジ中に真空下で少なくとも30秒間空気を通じることによって完全に乾燥した。
(d) ネジ蓋付き2mlガラス瓶を、溶出物を収集するためのSPEマニホールドに取り付けた。
(e) それぞれのカラムを、トルエン:エタノール(1:1)の1000mlの2分量で約0.5ml/分で溶出した。それぞれの分量の後、溶出物を空気を満たした10mlシリンジをSPEカラムを通過させることによって収集試験管に排出した。
(f) 総ての溶出物を真空下にて50℃で遠心蒸発を用いて乾燥した後、THF 200μlに再懸濁した。
(g) それぞれの試料を、250μlのHPLC用ガラス瓶に移し、圧着上蓋で密封した。
【0101】
(vi) HPLC装置は、図3に示すように設定した。テトラヒドロフラン(THF) 2リットルを含む移動相容器を25℃に設定したサーモスタットで調節した水槽に入れた。吸引フィルターをHPLCポンプの入口パイプに接続し、移動相を空気を排出するために設置したガードカラムまでラインに詰めた。オートインジェクターをガードカラムに接続した後、分析カラムに接続した。ガードおよび分析カラムを、Waters HPLCオーブンコントロールモジュールで設定したようにサーモスタットで調節したオーブンに入れた。カラム設置後に、温度平衡を1時間行った。分析カラムの出口を屈折率検出器入口に接続し、屈折率検出器参照を指示し、排出物は廃棄物容器に入れた。ポンプ流速は1.0ml/分に設定し、屈折率検出器は256の感度および時定数10秒に設定した。検出器オーブンは、35℃に設定した。HPLCシステムコントローラーおよびインテグレーターは、製造業者の指示に従って、クロマトグラフィーデータを収集して積分する目的で設定した。分析前に、システム安定性試験を行った(下記参照)。
【0102】
(vii) 下記の手順を用いて、HPLC分析を行った: 屈折率検出器を使用前に少なくとも1時間洗浄し、安定したベースラインをモニターし、EDTA緩衝液を調製して、その抽出を開始し、総ての他の分析緩衝液を調製し、試験および標準の抽出を開始し、HPLCシステムを開始して平衡にし、HPLCのベースラインをチェックし、試験溶液を調製し、システムの安定性を試験し、試料をSPE中で処理しながら、HPLCシステムを検討して、システムの安定性試験が許容可能となるようにし、抽出を完了し、システムの安定性が許容可能であるとき、試料を分析した。
【0103】
(viii) ポリソルベート80の抽出標準曲線は、0.00、0.10、0.20、0.30、0.40および0.50mgポリソルベート80/10ml実験室水から調製した。
【0104】
(ix) ポリソルベート80は、下記のようにHPLCによって定量した:
(a) システムの安定性試験を行った直後に、それぞれの試料50μlを上記の標準条件下でHPLCに注入した。
(b) 総ての試料のクロマトグラフィーおよびポリソルベート80ピークを積分した後、標準濃度(mg/ml)に対するポリソルベート80のピーク高さの線形キャリブレーション曲線を直線回帰を行うことによって標準について構築し、標準曲線についての傾き(m)とx軸上の切片(c)を計算した。これらの回帰データを用いて、試験試料中のポリソルベート80の濃度を下記の方法で計算した:
標準曲線に最も良く適合する直線は、試験におけるポリソルベート80ピーク高さ=mx+c
(式中、x=ポリソルベート80濃度(μg/ml)
従って、
ポリソルベート80濃度(μg/ml)=(試験でのポリソルベート80ピーク高さ−c)/m
次に、試験反復実験についての平均ポリソルベート80濃度(μg/ml)を計算した。
【0105】
3.結果
抽出した標準曲線は、回帰直線Rが0.999であり且つ規格化ピーク高さのCV率3.4%の線形キャリブレーション曲線を生じた(図4)。このキャリブレーション曲線を用いて、記載した処方物に対するポリソルベート80の質量の測定値を比較したところ、アルブミン、NovoSeven(商品名)およびVepesid(商品名)について近接した一致を示した(表3)。
【0106】
【表3】

【0107】
上記したrHA最終生成物中のポリソルベート80を定量する方法は、その方法に修正を全く加えることなくそれ自身総ての生成物の定量に適していた。
【0108】
システムの安定性試験
手順:
1. システムの安定性標準溶液を、標準条件下で作動しているHPLCに注入した。
2. 試験試料を、ポリソルベート80とヘキサデカン酸についての理論段数、テーリングおよび分離度を計算することによって評価した(下記参照)。
3. ポリソルベート80またはヘキサデカン酸についてのパラメーターのいずれか1つが予測値を下回るときには、カラムを新たなカラムのセットに取り換えた。
【0109】
試験試料の評価
1. 理論段数を、図5に関して式1を用いてポリソルベート80(第一の溶出ピーク)とヘキサデカン酸(第二の溶出ピーク)の両方のピークを計算した。
【数1】

予測値: ポリソルベート80 >650の理論段数
ヘキサデカン酸 >6200の理論段数
2. ピークテーリングは、図6に関して式2を用いてポリソルベート80とヘキサデカン酸の両方のピークを計算した。
【数2】

予測値: ポリソルベート80 <3.5
ヘキサデカン酸 <3.0
3. ポリソルベート80とヘキサデカン酸の分離度は、図7に関して式3を用いて計算した。
【数3】

予測値: 分離度>2.0
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】比較例1に記載の金属イオン錯体形成および溶媒抽出を用いるポリソルベート80の分析結果。
【図2】実施例1に記載の様々なアルブミン抽出のHPSECクロマトグラム。
【図3】実施例2で用いたHPLCの設定。
【図4A】キャリブレーションデータ。
【図4B】実施例2で得た線形キャリブレーション曲線。
【図5】理論段数を計算するためのクロマトグラフィープロフィール。
【図6】ピークテーリングを計算するためのクロマトグラフィープロフィール。
【図7】分離度を計算するためのクロマトグラフィープロフィール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相界面活性剤製剤からタンパク質性成分を除去する方法であって、
(a)タンパク質性成分を含む液相界面活性剤製剤を提供し、
(b)錯化剤を、工程(a)の製剤に加えて、錯化剤に界面活性剤と錯体を形成させ、
(c)工程(b)と同時に、またはその後に、相溶性沈澱剤を、それぞれ工程(a)の製剤または工程(b)の生成物に加えて液相反応混合物を形成させて、相溶性沈澱剤に液相反応混合物中のタンパク質性成分を沈澱させ、
(d)前記錯体を工程(c)の生成物中の沈澱したタンパク質性成分から分離して、精製した液相界面活性剤製剤を提供する
ことを含んでなり、
ここで、錯体は液相反応混合物中に溶解したままであり、かつ、工程(d)は錯体を液相に保持している、方法。
【請求項2】
界面活性剤が1種類以上のアルキレンオキシド基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
界面活性剤が、非イオン性であり、好ましくはアルキルフェノールとアルキレンオキシドの縮合体、ポリオキシアルキレンソルビタンオレエート、またはポリオキシアルキレングリコールである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
錯化剤が、多価金属イオン、好ましくは遷移金属イオンを含んでなる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
沈澱剤が、アルコール、シアノアルキル、アミン、アミド、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、グリコール、エーテル、ハロゲン化アルキルまたは芳香族炭化水素のような水性の相溶性有機溶媒、例えばアセトン、アセトニトリルまたはエタノールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
タンパク質性成分が、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
タンパク質性成分が、アルブミン、アルブミン含有融合タンパク質、モノクローナル抗体、エトポシドまたは血液凝固因子を含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1の工程(a)の液相界面活性剤製剤中のタンパク質性成分のタンパク質濃度が少なくとも50mg/mlである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
界面活性剤が請求項1の工程(a)の液相界面活性剤製剤中のタンパク質性成分に対して4800ppm未満で含まれる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
精製した液相界面活性剤製剤を提供する工程が、反応混合物を遠心分離して、沈澱したタンパク質性成分がペレットを形成し、錯体が上清に保持されるようにし、かつ、上清をペレットから分離することを含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
錯体を、固相、好ましくは固相抽出(SPE)媒体に非共有的に結合する、追加の後工程を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
界面活性剤を固相に非共有的に結合する工程の前に、錯体が解離する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
錯体が、錯化剤を精製した液相界面活性剤に加えることによって解離する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
固相が疎水性SPE媒体である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
SPE媒体がポリスチレンジビニルベンゼンまたはC2−24アルキル媒体である、請求項15に記載の方法。
【請求項16】
固相に結合している界面活性剤を洗浄して、残留タンパク質性成分を除去する、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
マトリックスをアセトニトリル、イソプロパノールおよび/またはトリエチルアミンのような水溶性有機溶媒で洗浄する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
界面活性剤が溶解している場合にはこれを沈澱させる液体で、固相を洗浄する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
固相を、ヘキサン、クロロホルムまたはトルエンのような水不溶性有機溶媒で洗浄する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
界面活性剤を固相から溶出させ、溶出物として回収する、請求項11〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
精製した液相界面活性剤製剤またはそれから誘導される更なる画分の界面活性剤含量を決定する追加工程を含んでなる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程(a)の液相界面活性剤製剤がより大きい製剤のアリコートであるかまたは製剤のバッチの一試料であり、かつ、
精製した液相界面活性剤製剤またはそれから誘導される更なる画分の決定した界面活性剤含量と、より大きい製剤または他のバッチ部分の界面活性剤含量とを相関させる追加の工程を含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
より大きい製剤または他のバッチ部分を適当に標識して、このようにして決定された界面活性剤含量を反映する追加工程を含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法によって得ることができる、標識した液相界面活性剤製剤。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法を用いて製剤の試料の界面活性剤含量を決定することを含んでなる、界面活性剤含有医薬製剤のバッチの品質管理方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法を用いて品質管理を行った、界面活性剤含有医薬製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−537971(P2007−537971A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506233(P2006−506233)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001992
【国際公開番号】WO2004/099234
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(591131523)ノボザイムス、デルタ、リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】NOVOZYMES DELTA LIMITED
【Fターム(参考)】