説明

タンパク質PTX3測定用の単クローン抗体、ハイブリドーマ、改良方法、及び前記測定用キット

【課題】生物学的流体の試料におけるPTX3タンパク質のレベルを定めるための方法、キットを提供する。
【解決手段】生物学的流体の試料におけるPTX3タンパク質のレベルを定めるための方法;ラットの抗-PTX3の単クローン抗体を生産し得るハイブリドーマであって、前記ハイブリドーマがMNB10及びPen(ペン)-3からなる群より選ばれるもの;ハイブリドーマMNB10及びPen-3によって生産される単クローン抗体から選ばれる特異的な抗-PTX3のラットの単クローン抗体;生物学的流体の試料におけるPTX3タンパク質のレベルを定めるためのキットであって、前記キットがラットの抗-PTX3の単クローン抗体を含むもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的流体におけるタンパク質PTX3を測定するための、ラットの抗-PTX3の単クローン抗体、前記抗体を生産するためのハイブリドーマ、改良した方法及び前記測定を遂行するためのキットに関する。
より一層詳しくは、前記方法、前記ラット抗-PTX3単クローン抗体及び前記キットは、心血管性及び/又は脳血管性疾病を患うヒト個体における死の危険性の早期診断にとって有用である。
【背景技術】
【0002】
ペントラキシン(pentraxins)は、それらの五量体(pentameric)構造のためにそう称されるが、C-反応性タンパク質(CRP)及び血清のアミロイドP(SAP)が包含され、炎症性媒介物に応じて肝臓によって生産されるタンパク質の群である。それらのレベルは、血清において、種々の刺激に応じて増加し、及び感染、炎症性条件及び組織の損傷の監視について使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−220096号公報
【特許文献2】特開平08−075737号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】MULLER B.,CRIT.CARE MED.,2001年 7月,V29 N7,P1404-1407
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PTX3は、この系統(ファミリ)の新しい一員(メンバ)であり、その系統はインターロイキン-1(IL-1)によって刺激される内皮細胞において見出された。PTX3は、典型的な長-鎖のペントラキシンであり、C-末端領域の203個のアミノ酸によって特徴付けられ、それは、古典的なペントラキシンとの相同性を表示し、及びN-末端領域の178個のアミノ酸が相同性を欠くことによって特徴付けられる。CRP及びSAPとは対照的に、PTX3は、種々の種類の細胞において、主として、内皮細胞において、及び単核の食細胞において、IL-1に対して、及び腫瘍壊死因子(TNF)に対しては応じて生産されるが、インターロイキン-6(IL-6)には応じてはいない。さらに、PTX3は、単球によって、マイコバクテリアの細胞壁の成分に応じて、及び未刺激の滑膜細胞によって、関節リウマチを有する患者において生産される。
【0006】
タンパク質PTX3の識別は、1992年にまで遡る(Breviario(ブリビィアリオ) F. et al.(等)の“Cloning of a new gene related to C-reactive protein and serum amyloid P component(C-反応性タンパク質及び血清アミロイドP成分に関連する新しい遺伝子のクローン化)”、J. Biol. Chem.(ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリ)、1992年、267: 22190-22197)。
【0007】
また、細菌においてのその生産が、Vidal Alles(ビダル・アレス) V.等によって“Inducible expression of PTX3, a new member of the pentraxin family, in human mononuclear phagocytes.(PTX3、ペントラキシン系統の新しい一員、ヒトの単核の食細胞においての誘導発現。)”、Blood(ブラッド)、1994年、84: 3483-3493において記述され、その一方で、真核細胞(CHO)でのその生産が、Bottazzi(ボッタージ) B.等の“Multimer formation and ligand recognition by the long pentraxin PTX3 - Similarities and differences with the short pentraxin C-reactive protein and serum amyloid component.(長いペントラキシンPTX3による多量体形成及びリガンド認識-短いペントラキシンのC-反応性タンパク質及び血清アミロイド成分との類似及び相違。)”、J. Biol. Chem. 1997年、272: 32817-32823によって記述されていることが知られている。
それにもかかわらず、タンパク質PTX3の生物学的機能はまだ十分に理解されていない。
【0008】
最近の調査は、PTX3タンパク質のレベルが敗血症(sepsis)又は心筋梗塞のような急性のか又は慢性の炎症性疾病を患う患者において増加することを実証した。特に、Peri(ペリ)等は、PTX3タンパク質のレベルが、6.94±11.26ng/mlのピークに、院内冠動脈単位(hospital coronary units)までの投与後7.5時間の梗塞患者(infarcted patients)において達することを報告した(Circulation(サーキュレーション) 2000、102: 636-641)。
【0009】
さらに、またより一層最近、PTX3タンパク質のレベルが、梗塞患者において、死亡の危険性を、発症(エピソード)の後の3月において指し示すことが観察された(Latini(ラティーニ) R.等の“Prognostic significance of the long pentraxin PTX3 in acute myocardial infarction: comparison with C-reactive protein, NT-proBNP and troponin T.(長いペントラキシンPTX3の、急性心筋梗塞における、予後の重要性: C-反応性タンパク質、NT-プロBNP及びトロポニンTとの比較。)”、abstract(アブストラクト、概要) 3091、Supplement(サプレメント、補足)IV、page 680(頁)、Circulation 2003, 108 (17),)。より一層詳しくは、著者は、ST部分(ST segment)の上昇(elevation)を有する心筋梗塞に苦しむ患者の代表的な数において、急性の相でのPTX3タンパク質のレベルが、死亡の危険性を予測する独立した情報を提供することを報告した。同じ予測は、C-反応性タンパク質(短い鎖のペントラキシン)のか、又はNT-プロBNP又はトロポニン-Tのような他の生物的心臓性(biocardiac)マーカのレベルに基づいてはなされ得ない。
【0010】
さらに、本発明者は、脳卒中を患う患者において、PTX3タンパク質のレベルが、中枢神経系によって被る損傷に比例することを示す実験データを承知している。
【0011】
文献において報告されるPTX3の測定[Peri等のloc. cit.(loco citato、前に引用した箇所に); Muller(ミュラー) B.等の“Circulating levels of the long pentraxin PTX3 correlate with severity of infection in critically ill patients(長いペントラキシンPTX3の循環のレベルは重病の患者において感染の重症度と相関する)”、Crit. Care Med.(クリティカル・ケア・メディシン)、2001年、29(7): 1404-1407; Fazzini(ファッツィーニ) F.等の“PTX3 in small-vessel vasculitides - An independent indicator of disease activity produced at sites of inflammation(小-血管性血管炎におけるPTX3-炎症の部位で生産される疾病活性の独立した指標)”、Arthritis and Rheumatism(アルスリティス・アンド・リューマティズム)、2001年、44(12): 2841-2850]は、PTX3タンパク質に特異的な単クローン抗体に基づき、及びPTX3タンパク質に特異的なビオチン化した(biotinylated)多クローン性のラビットのIgGに基づくELISA法によって遂行された。前述の単クローン抗体はMNB4として文献において識別されるが、対応するハイブリドーマは公衆にとってアクセスし易いものではない。
【0012】
特に、前述の方法は、Muller B.等の前の引用箇所によって詳細に記述され、及び次の工程を備える:
a)96-ウェルのELISAのプレート(Nunc Roskilde(ヌン・ロスキレ)、Denmark(デンマーク国))を、100μlのラットの単クローン抗体NMB4(腹水(ascites)として、1:5000に、被覆のために用いる緩衝剤において希釈する)により被覆し、及び一夜の間4℃でインキュベートした工程;
b)プレートを、次いで、ダルベッコ(Dulbecco)のリン酸塩緩衝剤塩類溶液(phosphate buffer saline)であって、0.05%のトゥイーン(Tween)20を含有するもの(washing buffer、洗浄緩衝剤)、及び200μlの5%の粉乳により洗浄して、非-特異結合部位をブロックした工程;
c)2時間の間の周囲温度でのインキュベート後、プレートを再度3回洗浄緩衝剤により洗浄した工程;
d)50μlの標準組換えヒトPTX3(100pg/mlから10ng/mlまでのもの)であって、RPMI 1640媒体(Seromed(セロムド)、Berlin(ベルリン)、Germany(ドイツ国))及び2%ウシ血清アルブミン(Sigma Chemicals(シグマ・ケミカルズ社)、St. Louis(セントルイス)、MO(米国、ミズーリ州))において希釈したもの、又は試験血漿の試料を、3通り(in triplicate)で、各ウェルにおいて配置(placed)し、及びプレートを2時間の間37℃でインキュベートした工程;
e)プレートを、3回、洗浄緩衝剤により洗浄し、及び100μlの抗-TPX3のラビットの血清であって、ビオチンと複合化し(conjugated with、共役させ)、洗浄緩衝剤において1:2000に希釈したものを添加した工程;
f)プレートを、1時間の間37℃でインキュベートし、及び次いで、3回、200μlの洗浄緩衝剤により洗浄した工程;
g)100μlのストレプトアビジン-ペルオキシダーゼであって、デキストラン基質と複合化したもの(Amdex(アムデックス社)、Copenhagen(コペンハーゲン)、Denmark)であり、1:4000に希釈したものを、各ウェルに添加し、及びプレートを1時間の間周囲温度でインキュベートした工程;
h)プレートを4回洗浄した後、100μlの色素生産性(chromogenic)基質ABTS Microwell Peroxidase Substrate System(マイクロウェル・ペルオキシダーゼ・サブストレート・システム)(Kirkegaard and Perry Laboratories(キルケガード・アンド・ペリー・ラボラトリーズ)、Gaithersburg(ゲイサーズバーグ)、MD(米国、メリーランド州))を添加した工程;
i)プレートを、405nmで、自動読取機により読み取った工程
を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1種の局面は、本発明者が観察した事実に基づくもので、それは、前述の既知の方法でいくつもの不利な点が現れることが観察されたことである。
【0014】
既知の方法の第1の不利な点は、その事実からなり、それは、幾人かの患者の血漿の場合に、試験血漿試料の異なる希釈で決定されるPTX3のレベルが、遂行した希釈に対して比例しないという事実である。本発明者は、今回、この不利な点が、驚くべきことに、試験血漿試料に対してEDTAを添加することによって克服されることを見出した。これについての理由がまだ完全に明瞭になっていないという事実にもかかわらず、本発明者が仮定するものであって、それによって、本発明の範囲を制限することは望まないが、観察された効果が、錯体の(複雑な)Mg++及びCa++イオンに対するEDTAの能力のためにそうなったもので、その結果、同じ結果がまた他の錯化剤により得られるべきである。
【0015】
第2の不利な点は、既知の方法の感度(ca.(およそ)200pg/ml)が、約5%の正常な対象(被検物)において、PTX3タンパク質の測定のためには十分でないという事実で成っている。本発明者は、今回、その方法の感度が、75pg/mlにまで、新しい単クローン抗体を用いること(工程a)、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼの濃度を変えること(工程g)及び異なる色素原(chromogen、色原体)を用いること(工程h)によって、高められ得ることを見出した。
【0016】
したがって、本発明は、その1種の局面において、生物学的流体の試料におけるPTX3タンパク質のレベルを定めるための方法に関し、その方法は次の工程:
i)96-ウェルのELISAのプレートを、ラットの単クローン抗体を含有する100μlの溶液により被覆し、及び一夜の間、4℃でインキュベートする工程;
ii)次いで、プレートを、緩衝剤溶液(buffer solution)及び非-特異結合部位をブロックし得る溶液により洗浄する工程;
iii)2時間の間の周囲温度でのインキュベーションの後、プレートを、再び(更に)洗浄緩衝剤により洗浄する工程;
iv)繰り返して、50μlの、適切な媒体において希釈する標準組換えヒトPTX3又は試験下の生物学的流体の試料を、各ウェルにおいて配置し、及びプレートを2時間の間37℃でインキュベートする工程;
v)プレートを洗浄緩衝剤により繰り返し洗浄し、及び次いで洗浄緩衝剤における25ng/mlのビオチン化した抗-PTX3のラビットのIgGの100μlを、各ウェルに添加する工程;
vi)プレートを1時間の間37℃でインキュベートし、及び次いで洗浄緩衝剤により繰り返し洗浄する工程;
vii)100μlの希釈したストレプトアビジン-ペルオキシダーゼを各ウェルに添加し、及びプレートを1時間の間周囲温度でインキュベートする工程;
viii)プレートを洗浄緩衝剤により繰り返し洗浄した後、100μlの色素生産性基質を各ウェルに添加する工程;
ix)プレートを短時間に周囲温度でインキュベートし、停止溶液(stop solution)を添加し、及びプレートを405nmで自動読取機により読み取る工程
を含み;
改善は、
-工程(i)において用いるラットの単クローン抗体が、ハイブリドーマMNB10(受託番号(access No.、受入番号)ABC/ PD04001)からのか、又はハイブリドーマPen(ペン)-3(受託番号ABC/ PD01004)から得られる抗体であり;
-工程(vii)において用いるストレプトアビジン-ペルオキシダーゼが1:8000に希釈され;及び
-工程(viii)において用いる色素生産性基質がテトラメチルベンジジン(TMB)である
という事実にある。
【0017】
好ましくは、工程(i)において、ラットの単クローン抗体の溶液における濃度は、約700ng/mlである。さらに、工程(i)において用いる溶液は、有利には、被覆緩衝剤溶液(coating buffer solution)から構成される。好ましくは、前記緩衝剤溶液は、15mMの炭酸塩緩衝剤を含有し、及びそのpHは9.6である。
【0018】
典型的には、工程(ii)において用いる緩衝剤溶液は、PBS(リン酸塩緩衝剤塩類溶液)+0.05%のトゥイーン20から構成される。有利には、前記溶液は、約300μl/ウェルの量において用いる。
【0019】
好ましくは、工程(ii)において用いる非-特異結合部位をブロックし得る溶液は、PBS+0.05%トゥイーン20からなる緩衝剤溶液における粉乳の5%溶液から構成される。有利には、非-特異結合部位をブロックし得る前記溶液を、約300μl/ウェルの量において用いる。
【0020】
工程(iii)において特定する洗浄は、好ましくは3回繰り返し、各回数で約300μlの溶液を各ウェルについて用いる。
【0021】
好ましくは、工程(iv)において、用いる標準組換えヒトPTX3は、ウェルにおいて、75pg/mlから1.2ngまでに増加する量で配置される。有利には、試験血漿試料を希釈するのに用いる媒体は、PBS+2%のBSA(ウシ血清アルブミン)+0.18%のK3-EDTAから構成される。この溶液におけるEDTAの存在は、極めて重要であり、その理由には、既に述べたように、本発明者によって、これが、遂行された希釈に比例するPTX3の測定を得ることができるようにすることを見出したからである。
【0022】
工程(v)において用いるビオチン化した抗-TPX3ラビットIgGは、好ましくは、Muller B.等の前の引用箇所に従って得られる。
【0023】
また、工程(vii)において用いるストレプトアビジン-ペルオキシダーゼは、好ましくは、セイヨウワサビペルオキシダーゼ-複合化ストレプトアビジン(horseradish peroxidase-conjugated streptavidin)Amdex(RPN 4401 Amersham(アマシャム社)、Copenhagen、Denmark)である。
【0024】
典型的に、工程(ix)において用いる停止溶液は1M溶液のH2SO4である。
【0025】
有利には、工程(xii)において用いるTMB基質溶液は、会社(firm)のPharmingen(ファーミノーゲン社)のカタログ番号2642KKに相当する。
【0026】
他の局面において、本発明は、抗-PTX3のラットの単クローン抗体を生産し得るハイブリドーマに関し、これは、前記ハイブリドーマが、MNB10[ブダペスト条約に従い、Italy(イタリア国)のGenoa(ジェノバ)所在のAdvanced Biotechnology Centre(ABC、アドバンスド・バイオテクノロジ・センタ)に16.04.04(2004年4月16日)付けで受託された、受託番号PD04001]及びPen-3[ブダペスト条約に従い、イタリア国のジェノバ所在のアドバンスド・バイオテクノロジ・センタ(ABC)に02.08.2001(2001年8月2日)付けで受託された、受託番号PD01004]を備える群より選ばれることにおいて特徴付けられる。
【0027】
前述のハイブリドーマの選定は、それが、本発明に従う抗-PTX3ラット単クローン抗体を生産するもので、例えば、以下の例1において記載するもののような慣習的な方法によって実行することができる。
【0028】
別の局面において、本発明は、特異的な抗-PTX3ラット単クローン抗体に関し、それは、前述のハイブリドーマMNB10及びPen-3によって生産される単クローン抗体を備える群より選ばれる。
【0029】
特異的な抗-PTX3ラット単クローン抗体の本発明のハイブリドーマからの調製は、特別な限定を被らず、及び例えば、以下の例2において記載するもののような慣習的な方法によって実行することができる。
【0030】
また別の局面において、本発明は、生物学的流体におけるPTX3タンパク質のレベルを定めるためのキットに関しており、それは、それが抗-PTX3ラット単クローン抗体を含むことにおいて特徴付けられる。
【0031】
好適な態様において、PTX3タンパク質のレベルの決定は、心血管性及び/又は脳血管性疾病を患うヒト個体の血清上でのそれらの死の危険性の早期診断について実行される。
【0032】
好ましくは、前述のキットはまた、抗-PTX3ラビット多クローン性抗体を含む。
【0033】
有利には、前述のキットはまた、精製組換えPTX3タンパク質を含む。
【0034】
好適な態様では、前述のキットはまた、セイヨウワサビペルオキシダーゼと複合化したストレプトアビジンを含む。
【0035】
有利には、前述のキットはまた、洗浄緩衝剤溶液を含む。
【0036】
好ましくは、前述のキットはまた、アッセイすべき生物学的流体の試料のための希釈剤を含む。
【0037】
典型的に、前述のキットはまた、色素原として、テトラメチルベンジジン(TMB)の溶液を含む。
【0038】
最後に、前述のキットには、停止溶液をも含めることができる。
以下の図1及び次の例は、更に本発明を例証するのに役立つものであるが、それを制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】心不全(cardiac decompensation)を有する患者の血漿に及ぼすEDTAの効果を例証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1では、全血漿の希釈(1:2、1:4、1:8及び1:16)をx-軸上に示す。光学密度をy-軸上に示す。
【0041】
見ることができるように、心不全を有する患者の血清における検出可能なPTX3タンパク質のレベルは、全血漿希釈間隔の約1:4(0.25)及び約1:16(0.0625)の間において、EDTAの不存在下、実際に存在するタンパク質のレベルよりも約3倍低い。しかし、EDTAの添加は、標準曲線のものに本質的に相当するレベルが得られることを可能にする。
【0042】
(例1)
(ハイブリドーマ)
(免疫化)
Lewis(ルイス)のラットを、200μgのPTX3により皮下に3回、15日の間隔で免疫化する。抗体の反応のELISAアッセイによっての評価後、融合を、最も高い抗体の表題(antibody title)を有する動物により遂行する。
【0043】
(融合プロトコル)
(方法)
a)(脾細胞の調製)
-予め免疫化したラットの脾臓を、滅菌条件下に取り出し、及び3回の10mlのDMEMにより洗浄し、プラスチック製ペトリ皿で3mlのDMEM培地(媒体)を含有するものに移し、及び針を用いて脱凝集させ(disaggregated)、及び/又は注射筒ピストンにより押しつぶす(crushed);
-細胞懸濁物を試験管に移し、DMEM培地により50mlにまで補い、及び70μmのスクリーンによりろ過して細胞凝集物を除去する;
-脾細胞を2回の50mlのDMEM培地により洗浄する;
-Turk(ターク)において計数する。
b)(骨髄腫“SP2/0”の調製)
-骨髄腫細胞は、対数増殖期(exponential growth phase)でなければならず、及び停滞期(プラト)であってはならない。
-細胞を2回の50mlのDMEM培地により洗浄する。
-それらを計数する
c)(融合)
-SP2/0の細胞を脾細胞に添加して、脾細胞及び骨髄腫の間で(5:1)の比率を得る;
-DMEMにより50mlにまで補い、及び1700rpmで7分間遠心分離する;
-パスツールピペット(Pasteur pipette)により、上清を、それがすべて除去されるように取り除く;
-沈降した細胞を撹拌し、試験管を指により振とうし、及び次いで37℃に維持したDMEMにおける37%PEGの0.6mlを添加する;
-パスツールピペットにより、細胞を極めて緩徐に再懸濁させ、PEGを添加したときから2分待ち、及び次いで800rpmで6分間遠心分離する;
-上清をパスツールピペットにより除去する。細胞を再懸濁し、試験管を緩やかに指により振とうし、及び37℃に維持したDMEMを、少しずつ(drop by drop)、20ml容量まで添加する;
-1300rpmで10分間遠心分離する;
-上清を除去し、及び細胞の塊(ペレット)を、極めて緩徐に、HAT-DMEMにより、パスツールピペットを用いて、再懸濁する;
-それらを、1.25×106×mlの濃度にまで希釈し、及び次いでそれらの0.2mlを平底の96-ウェルのプレートにおいてウェル当りに播種し、ウェル当り2.5×105細胞を持つようにする;
-プレートを37℃でウェル加湿インキュベータ(well humidified incubator)においてインキュベートし、及びコロニーの存在を1週間後に検査する;
-融合後7日に、培地を取り除き、及び200μlの新鮮HAT-DMEMを添加する;
-融合後10日目及び15日目の間で選別を遂行する;
-次いで、HT-DMEM培地において陽性のハイブリドーマをクローン化し;
-第2のクローン化後、HT-DMEM培地をハイブリドーマについてのDMEMにより置換することができる。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
(HAT-DMEM)
骨髄腫用培地+ヒポキサンチン+アミノプテリン+チミジン
(HT-DMEM)
骨髄腫用培地+ヒポキサンチン+チミジン
【0047】
(PEG 1550(ポリエチレングリコール1550) 37%)
7.4gのPEG(Serva(セルバ社)のcode(コード)の33132)を、パイレックス(登録商標)ボトルにおいてオートクレーブする。それが固化する前に(およそ55℃)、FCSを含まない12.6mlのDMEMを添加し、及びよく混合する。0.2μmのフィルタによりろ過し、試験管当り1mlを等分し(aliquot)、及び冷蔵室において貯える。
【0048】
(例2)
(プロテインG結合-セファロース(Sepharose)を用いる単クローン抗体の精製)
(材料)
-Ca及びMgを有するPBS:450mlの蒸留水+50mlのPBS(10×)+3mlの1MのNaOH;
-Sepharose Protein G 4 fast flow(セファロース・プロテインG4・ファスト・フロー)(Pharmacia(ファルマシア社)、cat.(カタログ)、17-0618-01):樹脂を4回PBSにより、傾斜法(デカンテーション)又は軽微な遠心分離によって洗浄し、次いで、それを10%にまでPBS+0.1%アジ化ナトリウムにより希釈し、及びそれを冷蔵室において貯える;
-グリシン-0.1MのHCl緩衝剤pH2.8:750mgのグリシンを100mlの蒸留水において溶解し、及びpH2.8にまで、280μlの37%HClにより調節する;
-1.5MのTRIS(トリス)-HCl緩衝剤pH8.8:18.17gのTRISを100mlの蒸留水において溶解し、及びpH8.8にまで37%HClにより調節する;
-1種の7mlプラスチック製のミニカラム。
【0049】
(方法)
-カラムで3ml容量にまで樹脂セファロース・プロテインG4・ファスト・フローを負荷する;
-20mlのPBSにより、樹脂が乾ききらないように洗浄する;
-腹水又は血清をPBSにより1:3に希釈し、及び0.2μmのフィルタ上でろ過する;
-樹脂を4回通過させ、及びその最後で樹脂のレベルでの流れを停止させる;
-30mlのPBSにより洗浄する;
-9mlのpH2.8グリシン-HCl緩衝剤を添加し(1回に3ml)、及び3種の試験管において溶出物を収集する;
-直ちに、pH7にまで、100から150μlまでのpH8.8のTRIS-HCl緩衝剤を添加することによって調節する;
-合計のタンパク質を測定し、及び必要なら、それらをCentriplus(セントリプラス) 50又は100により濃縮する;
-PBSに対して透析し、等分し、及び凍結する。
【0050】
(例3)
(患者の血漿におけるPTX3のレベルを決定するための方法)
-96-ウェルのELISAのプレート(Nunc MaxiSorp(マキシソープ) 446612)を、100μlの被覆緩衝剤溶液(15mM炭酸塩緩衝剤、pH9.6)であって、精製したMNB10抗体を含有するもの(700ng/ml)により被覆し、及び一夜の間、4℃でインキュベートした;
-プレートを、3回、300μl/ウェルの洗浄緩衝剤溶液(PBS+0.05%トゥイーン20)により洗浄し、及び次いで300μlの洗浄緩衝剤であって、5%粉乳を有するものを添加して、非-特異結合部位をブロックした;
-2時間の間の周囲温度でのインキュベートの後、プレートを、3回洗浄緩衝剤により洗浄した;
-繰り返して、50μlの標準組換えヒトPTX3(75pg/mlから1.2ng/mlまで)、及びPBS+2%BSA+0.19%K3-EDTAにおいて希釈する試験下の血漿の試料を、各ウェルにおいて配置し、及びプレートを2時間の間37℃でインキュベートした;
-プレートを5回洗浄緩衝剤により洗浄し、及び洗浄緩衝剤における25ng/mlのビオチン化したラビットの抗-PTX3のIgGの100μlを、各ウェルに添加した;
-プレートを1時間の間37℃でインキュベートし、及び次いで5回、300μlの洗浄緩衝剤により洗浄した;
-100μlのセイヨウワサビペルオキシダーゼ-複合化ストレプトアビジンのAmdex(RPN 4401 Amersham、Copenhagen、Denmark)であって、1:8000に希釈したものを各ウェルに添加し、及びプレートを1時間の間、周囲温度でインキュベートした;
-プレートを5回洗浄緩衝剤により洗浄した後、100μlのTMB(テトラメチルベンジジン)の基質溶液を各ウェルに添加した;
-プレートを5分間の間、周囲温度でインキュベートした;
-50μlの停止溶液(H2SO4、1M)を各ウェルに添加した;
-405nmで吸光度を反応の停止から30分以内に読み取った。
【0051】
(例4)
(キット)
ヒトの生物学的流体においてPTX3のレベルを測定するためのキットは、次のものを含む:
1.マイクロプレート:12×8ウェルのラット抗-PTX3抗体MNB10を被覆したもの。
2.リン酸塩緩衝剤溶液におけるビオチン化ラビット抗-PTX3 IgG。
3.リン酸塩緩衝剤溶液におけるセイヨウワサビペルオキシダーゼ-複合化ストレプトアビジン。
4.標準品:緩衝剤溶液において2.4、1、0.5、0.2及び0.05ng/mlでの精製組換えPTX3。
5.洗浄緩衝剤溶液:リン酸塩緩衝剤塩類溶液(PBS)の溶液。
6.希釈剤(試験下のヒトの生物学的流体を希釈するためのもの):リン酸塩緩衝剤塩類溶液の溶液における1%ウシ血清アルブミン及び0.19%K3-EDTA。
7.基質:0.05モル/lのクエン酸塩緩衝剤(pH3.8)における安定化した0.26mg/mlのテトラメチルベンジジン及び0.01%のH2O2
8.停止溶液:1MのH2SO4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的流体の試料におけるPTX3タンパク質のレベルを定めるための方法であって、次の工程:
i)96-ウェルのELISAのプレートを、ラットの単クローン抗体を含有する100μlの溶液により被覆し、及び一夜の間、4℃でインキュベートする工程;
ii)次いで、プレートを、緩衝剤溶液及び非-特異結合部位をブロックし得る溶液により洗浄する工程;
iii)2時間の間の周囲温度でのインキュベートの後、プレートを、更に(再び)洗浄緩衝剤により洗浄する工程;
iv)繰り返して、50μlの、適切な媒体において希釈する標準組換えヒトPTX3又は試験下の生物学的流体の試料を、各ウェルにおいて配置し、及びプレートを2時間の間37℃でインキュベートする工程;
v)プレートを洗浄緩衝剤により繰り返し洗浄し、及び次いで洗浄緩衝剤における25ng/mlのビオチン化した抗-PTX3のラビットのIgGの100μlを、各ウェルに添加する工程;
vi)プレートを1時間の間37℃でインキュベートし、及び次いで洗浄緩衝剤により繰り返し洗浄する工程;
vii)100μlの希釈したストレプトアビジン-ペルオキシダーゼを各ウェルに添加し、及びプレートを1時間の間周囲温度でインキュベートする工程;
viii)プレートを洗浄緩衝剤により繰り返し洗浄した後、100μlの色素生産性基質を各ウェルに添加する工程;
ix)プレートを短時間に周囲温度でインキュベートし、停止溶液を添加し、及びプレートを405nmで自動読取機により読み取る工程
を含み;
改善は、
-工程(i)において用いるラットの単クローン抗体が、ハイブリドーマMNB10(受託番号ABC/ PD04001)からのか、又はハイブリドーマPen-3(受託番号ABC/ PD01004)から得られる抗体であり;
-工程(vii)において用いるストレプトアビジン-ペルオキシダーゼが1:8000に希釈され;及び
-工程(viii)において用いる色素生産性基質がテトラメチルベンジジン(TMB)である
という事実にある
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程(i)における溶液において、ラットの単クローン抗体の濃度が、約700ng/mlであることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
工程(i)における溶液が被覆緩衝剤溶液であることを特徴とする、請求項1又は2の方法。
【請求項4】
前記緩衝剤溶液が15mMの炭酸塩緩衝剤を含有し、及びそのpHが9.6であることを特徴とする、請求項3の方法。
【請求項5】
工程(ii)において用いる緩衝剤溶液が、PBS(リン酸塩緩衝剤塩類溶液)+0.05%のトゥイーン20から構成されることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項の方法。
【請求項6】
前記溶液を約300μl/ウェルの量において用いることを特徴とする、請求項5の方法。
【請求項7】
工程(ii)において用いる非-特異結合部位をブロックし得る溶液が、PBS+0.05%のトゥイーン20からなる緩衝剤溶液における粉乳の5%溶液から構成されることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項の方法。
【請求項8】
非-特異結合部位をブロックし得る前記溶液を、約300μl/ウェルの量において用いることを特徴とする、請求項7の方法。
【請求項9】
工程(iii)において特定する洗浄を、好ましくは3回繰り返し、毎回に約300μlの溶液を各ウェルについて用いることを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項の方法。
【請求項10】
工程(iv)において、用いる標準組換えヒトPTX3を、ウェルにおいて、75pg/mlから1.2ngまでに増加する量で配置することを特徴とする、請求項1〜9の何れか1項の方法。
【請求項11】
試験血漿試料を希釈するのに用いる媒体が、PBS+2%のBSA(ウシ血清アルブミン)+0.18%のEDTAから構成されることを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項の方法。
【請求項12】
抗-PTX3のラットの単クローン抗体を生産し得るハイブリドーマであって、前記ハイブリドーマが、MNB10[ブダペスト条約に従い、イタリア国のジェノバ所在のアドバンスド・バイオテクノロジ・センタ(ABC)に、2004年4月16日付けで受託された、受託番号PD04001]及びPen-3[ブダペスト条約に従い、イタリア国のジェノバ所在のアドバンスド・バイオテクノロジ・センタ(ABC)に2001年8月2日付けで受託された、受託番号PD01004]を備える群より選ばれる、ハイブリドーマ。
【請求項13】
ラットの単クローン抗体の特異的な抗-PTX3であって、ハイブリドーマMNB10及びPen-3によって生産される単クローン抗体の群から選ばれる抗体。
【請求項14】
生物学的流体におけるPTX3タンパク質のレベルを定めるためのキットであって、前記キットがラットの抗-PTX3の単クローン抗体を含むことを特徴とする、キット。
【請求項15】
それがまた、ラビットの抗-PTX3多クローン性抗体を含むことを特徴とする、請求項14のキット。
【請求項16】
それがまた、精製組換えPTX3タンパク質を含むことを特徴とする、請求項14又は15のキット。
【請求項17】
それがまた、セイヨウワサビペルオキシダーゼと複合化したストレプトアビジンを含むことを特徴とする、請求項14〜16の何れか1項のキット。
【請求項18】
それがまた、洗浄緩衝剤溶液を含むことを特徴とする、請求項14〜17の何れか1項のキット。
【請求項19】
それがまた、アッセイすべき生物学的流体の試料のための希釈剤を含むことを特徴とする、請求項14〜18の何れか1項のキット。
【請求項20】
前記希釈剤にEDTAが包含されることを特徴とする、請求項19のキット。
【請求項21】
それがまた、色素原を含むことを特徴とする、請求項14〜20の何れか1項のキット。
【請求項22】
色素原がテトラメチルベンジジン(TMB)の溶液から構成されることを特徴とする、請求項21のキット。
【請求項23】
それがまた、停止溶液を含むことを特徴とする、請求項14〜20の何れか1項のキット。

【図1】
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【公開番号】特開2011−117973(P2011−117973A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−32661(P2011−32661)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【分割の表示】特願2007−509981(P2007−509981)の分割
【原出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(506360790)ファーマ ディヴェロップメント ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (2)
【Fターム(参考)】