タンピングツール
【課題】砕石の締め固め作業の効率を向上すると共に施工サイクルを長くできるタンピングツールを提供する。
【解決手段】タンピングツール1は、矩形板状のプレート2と、プレート2の裏面から上方に向かって延びる取付棒3とを備えている。プレート2の表面には、上縁部2aと2つの側縁部2b,2cとに、肉盛部4が連続的に設けられている。プレート2の表面は、肉盛部4に囲まれることによって、平面状のくぼみ部5が構成されている。
【解決手段】タンピングツール1は、矩形板状のプレート2と、プレート2の裏面から上方に向かって延びる取付棒3とを備えている。プレート2の表面には、上縁部2aと2つの側縁部2b,2cとに、肉盛部4が連続的に設けられている。プレート2の表面は、肉盛部4に囲まれることによって、平面状のくぼみ部5が構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タンピングツールに係り、とくに、鉄道レールの枕木の下方に敷き詰められた砕石を抱え込んで締め固めるプレートを備えた、マルチプルタイタンパー用のタンピングツールに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道のレールは、枕木の下方に砕石を敷き詰めて緩衝作用を持たせることにより、電車等の動揺を除去して乗り心地を良くすると共に、レール及び電車の傷みの軽減や電車の速度アップを図っている。レール上を電車が走行すると、砕石の緩衝作用が徐々に低下するため、定期的に砕石を締め固める作業が必要となる。
一般に、この作業は、電車の走行がない終電から始発までの間に行われるため、実際に作業可能な時間は、1日のうち1時間半から2時間である。このような短い時間で作業を行うためには、作業を効率的なものにすることによって必要な作業時間を短縮し、砕石の締め固め効果を向上させることによって施工サイクルを延ばす必要がある。
【0003】
砕石の締め固め作業を行う装置として、特許文献1に示されるようなマルチプルタイタンパーが知られている。このようなマルチプルタイタンパーは、図10に示されるような矩形板状のプレート51を有したタンピングツール50を備えている。図11に示されるように、2つのタンピングツール50,50’は、それぞれのプレート51,51’を対向させて開閉揺動するように、1組のタンピングツール対52を構成する。マルチプルタイタンパーは、このようなタンピングツール対52を複数備えている。
【0004】
図12に示されるように、マルチプルタイタンパーが砕石の締め固めを行うために、タンピングツール対52(図11参照)を構成する2つのタンピングツール50,50’は、枕木60を挟むように、それぞれのプレート51,51’を砕石61中に挿入させる。その後、タンピングツール対52を開閉揺動させ、プレート51,51’間の砕石を抱え込むことにより、枕木60の下方に敷き詰められた砕石の締め固めが行われる。通常は、1つの枕木に対し、タンピングツール対52を1回開閉揺動させることによって、締め固めを行っているが、所望の締め固め効果が得られない場合には、1つの枕木に対し、タンピングツール対52を2回開閉揺動させることによって、締め固めを行う場合がある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−266107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のタンピングツール50は、プレート51の表面が平面状であるため、プレート51が砕石を抱え込むと、砕石が主に図10に示される横方向(矢印Cの方向)及び上方向(矢印Dの方向)に逃げ出す傾向がある。これにより、1つの枕木に対してタンピングツール対52を開閉揺動させる回数を増やす必要があるため、締め固め作業に要する時間が長くなるといった問題点があった。
【0007】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、砕石の締め固め作業の効率を向上すると共に施工サイクルを長くできるタンピングツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
鉄道レールの枕木の下方に敷き詰められた砕石を抱え込んで締め固めるプレートを備えた、マルチプルタイタンパー用のタンピングツールにおいて、プレートは、周囲に、下方に開口した肉盛部を備えることを特徴とする。
また、プレートは矩形であり、肉盛部は、プレートの上縁部と2つの側縁部とに、連続的に設けてもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、タンピングツールのプレートは、周囲に、下方に開口した肉盛部を備えるので、マルチプルタイタンパーが砕石の締め固めを行う際に、タンピングツールのプレートに抱え込まれた砕石は、肉盛部による障害によって、主に下方向に逃げ出すようになるので、砕石の締め固め効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、この実施の形態に係るタンピングツール1を、図示しないマルチプルタイタンパーのタンピングユニットに取り付けた状態を示す図である。また、図2は、図1において、矢印II方向から見たタンピングツール1の拡大図である。このタンピングツール1は、従来のタンピングツール50に対して、先端のプレート2に特徴を有するものである。
図2に示されるように、タンピングツール1は、矩形板状のプレート2と、プレート2の裏面から上方に向かって延びる取付棒3とを備えている。プレート2の表面には、上縁部2aと2つの側縁部2b,2cとに、肉盛部4が連続的に設けられている。プレート2の表面は、肉盛部4に囲まれることによって、平面状のくぼみ部5が構成されている。
【0011】
図1に示されるように、タンピングユニットには、一対の支持アーム11が開閉揺動自在に設けられている。タンピングツール1の取付棒3の端部を、一対の支持アーム11のうちの一方の支持アーム11aの脚部に挿入することによって、タンピングツール1が支持アーム11aに取り付けられている。一方、タンピングツール1と同じタンピングツール1’が、タンピングツール1と同様にして、もう一方の支持アーム11bに取り付けられている。支持アーム11a,11bが開閉揺動することによって、タンピングツール1,1’が矢印Bの方向に開閉揺動を行い、プレート2,2’間の距離が変化するようになっている。ここで、タンピングツール1,1’は、それぞれのプレート2,2’が対向する配置になっており、1組のタンピングツール対を構成する。
【0012】
さらに、このタンピングツール対は、枕木の長さの範囲で適当な間隔をとって6組が一列に設けられてタンピングツール群を構成する。タンピングユニットには、2つのタンピングツール群が、枕木間の間隔と同じ間隔をあけて、並列に設けられている。
【0013】
次に、この実施の形態に係るタンピングツールの動作について説明する。
図3に示されるように、タンピングユニットに設けられた2つのタンピングツール群25,26のそれぞれを、枕木21,22の上方に位置させる。タンピングツール群25を構成する6組のタンピングツール対全てが、枕木21を挟むようにして砕石中に挿入される。それと同時に、もう一方のタンピングツール群26を構成する6組のタンピングツール対全てが、枕木22を挟むようにして砕石中に挿入される。全てのタンピングツール対が、それぞれのプレート間にある砕石を抱え込むことによって締め固めを行う。
【0014】
枕木21,22の下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行った後、タンピングツール群25,26はそれぞれ、砕石中から抜き出される。次に、図示しないマルチプルタイタンパーがフロント側に進むことによって、タンピングツール群25,26のそれぞれを、枕木21,22に隣接する枕木23,24の上方に位置させる。その後の作業は、枕木21,22の下方に敷き詰められた砕石の締め固めと同様にして、枕木23,24の下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行う。この作業を繰り返すことによって、マルチプルタイタンパーの進行方向に対して、順次、枕木の下方に敷き詰められた砕石の締め固めが行われる。
【0015】
ここで、プレート2の上縁部2a及び側縁部2b,2cに肉盛部4を連続的に設けることによって、くぼみ部5が構成されており、各タンピングツール対が砕石を抱え込む際、砕石はくぼみ部5内に収容される。くぼみ部5内に収容された砕石は、肉盛部4が障害となるため、横方向や上方向には逃げにくくなり、図1の矢印Aで示される下方向に主に逃げ出ることになる。これにより、砕石が効率的に枕木21,22の下方に入り込むことになる。すなわち、1つの枕木に対してタンピングツール対の開閉揺動を1回にしても、従来のタンピングツール50で2回の開閉揺動を行った場合と同程度に、砕石が締め固められる。
【0016】
このように、プレート2の上縁部2a及び側縁部2b,2cに肉盛部4を連続的に設けてくぼみ部5を構成することにより、タンピングツール1が砕石を抱え込む際に、くぼみ部5内に収容された砕石が肉盛部4の障害によって、主に下方向に逃げ出すようになるので、砕石を効率的に枕木21,22の下方に入り込ませることができる。したがって、従来、1ヶ所当たりにタンピングツール対を2回開閉揺動させる必要のあった箇所においても、開閉揺動の回数を1回に減少することができるので、締め固め作業に要する時間を短縮することができる。すなわち、締め固め作業の効率を向上することができる。また、砕石の締め固めがしっかり行われるようになるため、施工サイクルを長くすることもできる。
【0017】
尚、図4に示されるタンピングツール30のように、くぼみ部5にディンプル6を設けてもよい。ディンプル6の大きさや設ける数については、使用環境等に応じて適宜設計すべき事項である。
また、図5に示されるタンピングツール40のように、取付棒3を、プレート2に対して、左右どちらか一方にずらして設けてもよい。左右どちらの側にどれだけずらして取付棒3を設けるかは、使用環境等に応じて適宜設計すべき事項である。
【0018】
<締め固め試験方法>
次に、この発明に係るタンピングツールを用いることによって、開閉揺動回数を減少しても、同等の締め固め効果が得られることを、締め固め試験によって確認した。
締め固め試験に用いたタンピングツールは、図4に示されるタンピングツール30と、図10に示される従来のタンピングツール50である。
図6に示されるように、枕木21下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行うタンピングツール群25の12本をタンピングツール30とし、枕木22下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行うタンピングツール群26の12本を、タンピングツール50とした。
【0019】
図6に示されるように、タンピングツール30,50をマルチプルタイタンパーに取り付けた後、実施の形態で説明した方法と同様にして、タンピングツール群25,26それぞれによって、枕木21,22下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行った。タンピングツール群25,26を構成する各タンピングツール対については、2秒の時間をかけて1回だけ開閉揺動させた。タンピングツール群25を構成するタンピングツール30の試験条件を実施例1とし、タンピングツール群26を構成するタンピングツール50の試験条件を比較例1とした。
その後、タンピングツール群25,26を砕石中から抜き出し、図示しないマルチプルタイタンパーをフロント側に移動させ、タンピングツール群25,26をそれぞれ、枕木23,24に位置させた。タンピングツール群26のみによって、実施の形態で説明した方法と同様にして、枕木24下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行った。タンピングツール群26を構成する各タンピングツール対については、2秒の時間をかけて2回開閉揺動させ、タンピングツール群26を構成するタンピングツール50の試験条件を比較例2とした。
締め固めを行った後、実施例1及び比較例1,2において、枕木下方に新たに入り込んだ砕石の数を数えた。
【0020】
締め固め試験の結果を図7に示す。試験結果は、比較例1において測定された砕石の個数に対するそれぞれの条件において測定された砕石の個数の割合(%)によって表した。
図7は、実施例1と比較例2とがほぼ同等の結果であることを表している。すなわち、タンピングツール30を用いて1つの枕木に対して1回の開閉揺動を行った場合と、タンピングツール50を用いて1つの枕木に対して2回の開閉揺動行った場合とは、砕石が枕木下方に入り込む効率が同等である。したがって、この発明に係るタンピングツールを用いることにより、開閉揺動回数を減少させることができるため、砕石の締め固め作業に要する時間を短縮できることが示された。
【0021】
<沈下進み試験方法>
次に、この発明に係るタンピングツールを用いることによって、締め固めの施工サイクルを長くすることができることを、沈下進み試験によって確認した。
図8に示されるように、実施例2として、タンピングツール30をマルチプルタイタンパーに取り付けた後、実施の形態で説明した方法と同様にして、枕木31,32下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行い、締め固め前に比べて、枕木31,32を30mmこう上させた。一方、比較例3として、タンピングツール50をマルチプルタイタンパーに取り付けた後、実施例2と同様の操作によって、枕木33,34下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行った。尚、実施例2及び比較例3の両方とも、各タンピングツール対は、2秒の時間をかけて1回だけ開閉揺動させた。
この操作の後、バラストレギュレータのスタビライザーによって、砕石に振動数26Hzの振動を与え、これにより枕木31,32及び枕木33,34が沈下した距離を測定した。さらに、1週間後、2週間後、1ヶ月後における枕木31,32及び枕木33,34が沈下した距離を測定した。
【0022】
沈下進み試験の結果を図9に示す。試験結果は、実施例2及び比較例3において、締め固め直後の枕木の位置に対する各時間経過後の枕木の位置の割合(沈下率)(%)によって表した。
図9は、実施例2における枕木の沈下速度が、比較例3における枕木の沈下速度よりも遅いことを表している。これにより、砕石の締め固めを施工した後、再び締め固めを施工する必要のある程度まで枕木が低下するのに要する時間が長くなるため、締め固めの施工サイクルを長くすることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態に係るタンピングツールを、マルチプルタイタンパーに備えたタンピングユニットに取り付けた状態を示す図である。
【図2】図1の矢印IIから見た、この実施の形態に係るタンピングツールの拡大図である。
【図3】この実施の形態に係るタンピングツールを用いて、枕木下方に敷き詰められた砕石を締め固める方法を説明するための図である。
【図4】この実施の形態に係るタンピングツールの変形例についての全体図である。
【図5】この実施の形態に係るタンピングツールの別の変形例についての全体図である。
【図6】締め固め試験方法を説明するための図である。
【図7】締め固め試験の結果である。
【図8】沈下進み試験方法を説明するための図である。
【図9】沈下進み試験の結果である。
【図10】従来のタンピングツールの全体図である。
【図11】従来のタンピングツールから構成されるタンピングツール対の全体図である。
【図12】従来のタンピングツールを用いて、枕木下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行う方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0024】
1 タンピングツール、2 プレート、2a 上縁部、2b,2c 側縁部、4 肉盛部、21,22,23,24 枕木、27 レール。
【技術分野】
【0001】
この発明は、タンピングツールに係り、とくに、鉄道レールの枕木の下方に敷き詰められた砕石を抱え込んで締め固めるプレートを備えた、マルチプルタイタンパー用のタンピングツールに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道のレールは、枕木の下方に砕石を敷き詰めて緩衝作用を持たせることにより、電車等の動揺を除去して乗り心地を良くすると共に、レール及び電車の傷みの軽減や電車の速度アップを図っている。レール上を電車が走行すると、砕石の緩衝作用が徐々に低下するため、定期的に砕石を締め固める作業が必要となる。
一般に、この作業は、電車の走行がない終電から始発までの間に行われるため、実際に作業可能な時間は、1日のうち1時間半から2時間である。このような短い時間で作業を行うためには、作業を効率的なものにすることによって必要な作業時間を短縮し、砕石の締め固め効果を向上させることによって施工サイクルを延ばす必要がある。
【0003】
砕石の締め固め作業を行う装置として、特許文献1に示されるようなマルチプルタイタンパーが知られている。このようなマルチプルタイタンパーは、図10に示されるような矩形板状のプレート51を有したタンピングツール50を備えている。図11に示されるように、2つのタンピングツール50,50’は、それぞれのプレート51,51’を対向させて開閉揺動するように、1組のタンピングツール対52を構成する。マルチプルタイタンパーは、このようなタンピングツール対52を複数備えている。
【0004】
図12に示されるように、マルチプルタイタンパーが砕石の締め固めを行うために、タンピングツール対52(図11参照)を構成する2つのタンピングツール50,50’は、枕木60を挟むように、それぞれのプレート51,51’を砕石61中に挿入させる。その後、タンピングツール対52を開閉揺動させ、プレート51,51’間の砕石を抱え込むことにより、枕木60の下方に敷き詰められた砕石の締め固めが行われる。通常は、1つの枕木に対し、タンピングツール対52を1回開閉揺動させることによって、締め固めを行っているが、所望の締め固め効果が得られない場合には、1つの枕木に対し、タンピングツール対52を2回開閉揺動させることによって、締め固めを行う場合がある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−266107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のタンピングツール50は、プレート51の表面が平面状であるため、プレート51が砕石を抱え込むと、砕石が主に図10に示される横方向(矢印Cの方向)及び上方向(矢印Dの方向)に逃げ出す傾向がある。これにより、1つの枕木に対してタンピングツール対52を開閉揺動させる回数を増やす必要があるため、締め固め作業に要する時間が長くなるといった問題点があった。
【0007】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、砕石の締め固め作業の効率を向上すると共に施工サイクルを長くできるタンピングツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
鉄道レールの枕木の下方に敷き詰められた砕石を抱え込んで締め固めるプレートを備えた、マルチプルタイタンパー用のタンピングツールにおいて、プレートは、周囲に、下方に開口した肉盛部を備えることを特徴とする。
また、プレートは矩形であり、肉盛部は、プレートの上縁部と2つの側縁部とに、連続的に設けてもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、タンピングツールのプレートは、周囲に、下方に開口した肉盛部を備えるので、マルチプルタイタンパーが砕石の締め固めを行う際に、タンピングツールのプレートに抱え込まれた砕石は、肉盛部による障害によって、主に下方向に逃げ出すようになるので、砕石の締め固め効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、この実施の形態に係るタンピングツール1を、図示しないマルチプルタイタンパーのタンピングユニットに取り付けた状態を示す図である。また、図2は、図1において、矢印II方向から見たタンピングツール1の拡大図である。このタンピングツール1は、従来のタンピングツール50に対して、先端のプレート2に特徴を有するものである。
図2に示されるように、タンピングツール1は、矩形板状のプレート2と、プレート2の裏面から上方に向かって延びる取付棒3とを備えている。プレート2の表面には、上縁部2aと2つの側縁部2b,2cとに、肉盛部4が連続的に設けられている。プレート2の表面は、肉盛部4に囲まれることによって、平面状のくぼみ部5が構成されている。
【0011】
図1に示されるように、タンピングユニットには、一対の支持アーム11が開閉揺動自在に設けられている。タンピングツール1の取付棒3の端部を、一対の支持アーム11のうちの一方の支持アーム11aの脚部に挿入することによって、タンピングツール1が支持アーム11aに取り付けられている。一方、タンピングツール1と同じタンピングツール1’が、タンピングツール1と同様にして、もう一方の支持アーム11bに取り付けられている。支持アーム11a,11bが開閉揺動することによって、タンピングツール1,1’が矢印Bの方向に開閉揺動を行い、プレート2,2’間の距離が変化するようになっている。ここで、タンピングツール1,1’は、それぞれのプレート2,2’が対向する配置になっており、1組のタンピングツール対を構成する。
【0012】
さらに、このタンピングツール対は、枕木の長さの範囲で適当な間隔をとって6組が一列に設けられてタンピングツール群を構成する。タンピングユニットには、2つのタンピングツール群が、枕木間の間隔と同じ間隔をあけて、並列に設けられている。
【0013】
次に、この実施の形態に係るタンピングツールの動作について説明する。
図3に示されるように、タンピングユニットに設けられた2つのタンピングツール群25,26のそれぞれを、枕木21,22の上方に位置させる。タンピングツール群25を構成する6組のタンピングツール対全てが、枕木21を挟むようにして砕石中に挿入される。それと同時に、もう一方のタンピングツール群26を構成する6組のタンピングツール対全てが、枕木22を挟むようにして砕石中に挿入される。全てのタンピングツール対が、それぞれのプレート間にある砕石を抱え込むことによって締め固めを行う。
【0014】
枕木21,22の下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行った後、タンピングツール群25,26はそれぞれ、砕石中から抜き出される。次に、図示しないマルチプルタイタンパーがフロント側に進むことによって、タンピングツール群25,26のそれぞれを、枕木21,22に隣接する枕木23,24の上方に位置させる。その後の作業は、枕木21,22の下方に敷き詰められた砕石の締め固めと同様にして、枕木23,24の下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行う。この作業を繰り返すことによって、マルチプルタイタンパーの進行方向に対して、順次、枕木の下方に敷き詰められた砕石の締め固めが行われる。
【0015】
ここで、プレート2の上縁部2a及び側縁部2b,2cに肉盛部4を連続的に設けることによって、くぼみ部5が構成されており、各タンピングツール対が砕石を抱え込む際、砕石はくぼみ部5内に収容される。くぼみ部5内に収容された砕石は、肉盛部4が障害となるため、横方向や上方向には逃げにくくなり、図1の矢印Aで示される下方向に主に逃げ出ることになる。これにより、砕石が効率的に枕木21,22の下方に入り込むことになる。すなわち、1つの枕木に対してタンピングツール対の開閉揺動を1回にしても、従来のタンピングツール50で2回の開閉揺動を行った場合と同程度に、砕石が締め固められる。
【0016】
このように、プレート2の上縁部2a及び側縁部2b,2cに肉盛部4を連続的に設けてくぼみ部5を構成することにより、タンピングツール1が砕石を抱え込む際に、くぼみ部5内に収容された砕石が肉盛部4の障害によって、主に下方向に逃げ出すようになるので、砕石を効率的に枕木21,22の下方に入り込ませることができる。したがって、従来、1ヶ所当たりにタンピングツール対を2回開閉揺動させる必要のあった箇所においても、開閉揺動の回数を1回に減少することができるので、締め固め作業に要する時間を短縮することができる。すなわち、締め固め作業の効率を向上することができる。また、砕石の締め固めがしっかり行われるようになるため、施工サイクルを長くすることもできる。
【0017】
尚、図4に示されるタンピングツール30のように、くぼみ部5にディンプル6を設けてもよい。ディンプル6の大きさや設ける数については、使用環境等に応じて適宜設計すべき事項である。
また、図5に示されるタンピングツール40のように、取付棒3を、プレート2に対して、左右どちらか一方にずらして設けてもよい。左右どちらの側にどれだけずらして取付棒3を設けるかは、使用環境等に応じて適宜設計すべき事項である。
【0018】
<締め固め試験方法>
次に、この発明に係るタンピングツールを用いることによって、開閉揺動回数を減少しても、同等の締め固め効果が得られることを、締め固め試験によって確認した。
締め固め試験に用いたタンピングツールは、図4に示されるタンピングツール30と、図10に示される従来のタンピングツール50である。
図6に示されるように、枕木21下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行うタンピングツール群25の12本をタンピングツール30とし、枕木22下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行うタンピングツール群26の12本を、タンピングツール50とした。
【0019】
図6に示されるように、タンピングツール30,50をマルチプルタイタンパーに取り付けた後、実施の形態で説明した方法と同様にして、タンピングツール群25,26それぞれによって、枕木21,22下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行った。タンピングツール群25,26を構成する各タンピングツール対については、2秒の時間をかけて1回だけ開閉揺動させた。タンピングツール群25を構成するタンピングツール30の試験条件を実施例1とし、タンピングツール群26を構成するタンピングツール50の試験条件を比較例1とした。
その後、タンピングツール群25,26を砕石中から抜き出し、図示しないマルチプルタイタンパーをフロント側に移動させ、タンピングツール群25,26をそれぞれ、枕木23,24に位置させた。タンピングツール群26のみによって、実施の形態で説明した方法と同様にして、枕木24下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行った。タンピングツール群26を構成する各タンピングツール対については、2秒の時間をかけて2回開閉揺動させ、タンピングツール群26を構成するタンピングツール50の試験条件を比較例2とした。
締め固めを行った後、実施例1及び比較例1,2において、枕木下方に新たに入り込んだ砕石の数を数えた。
【0020】
締め固め試験の結果を図7に示す。試験結果は、比較例1において測定された砕石の個数に対するそれぞれの条件において測定された砕石の個数の割合(%)によって表した。
図7は、実施例1と比較例2とがほぼ同等の結果であることを表している。すなわち、タンピングツール30を用いて1つの枕木に対して1回の開閉揺動を行った場合と、タンピングツール50を用いて1つの枕木に対して2回の開閉揺動行った場合とは、砕石が枕木下方に入り込む効率が同等である。したがって、この発明に係るタンピングツールを用いることにより、開閉揺動回数を減少させることができるため、砕石の締め固め作業に要する時間を短縮できることが示された。
【0021】
<沈下進み試験方法>
次に、この発明に係るタンピングツールを用いることによって、締め固めの施工サイクルを長くすることができることを、沈下進み試験によって確認した。
図8に示されるように、実施例2として、タンピングツール30をマルチプルタイタンパーに取り付けた後、実施の形態で説明した方法と同様にして、枕木31,32下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行い、締め固め前に比べて、枕木31,32を30mmこう上させた。一方、比較例3として、タンピングツール50をマルチプルタイタンパーに取り付けた後、実施例2と同様の操作によって、枕木33,34下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行った。尚、実施例2及び比較例3の両方とも、各タンピングツール対は、2秒の時間をかけて1回だけ開閉揺動させた。
この操作の後、バラストレギュレータのスタビライザーによって、砕石に振動数26Hzの振動を与え、これにより枕木31,32及び枕木33,34が沈下した距離を測定した。さらに、1週間後、2週間後、1ヶ月後における枕木31,32及び枕木33,34が沈下した距離を測定した。
【0022】
沈下進み試験の結果を図9に示す。試験結果は、実施例2及び比較例3において、締め固め直後の枕木の位置に対する各時間経過後の枕木の位置の割合(沈下率)(%)によって表した。
図9は、実施例2における枕木の沈下速度が、比較例3における枕木の沈下速度よりも遅いことを表している。これにより、砕石の締め固めを施工した後、再び締め固めを施工する必要のある程度まで枕木が低下するのに要する時間が長くなるため、締め固めの施工サイクルを長くすることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態に係るタンピングツールを、マルチプルタイタンパーに備えたタンピングユニットに取り付けた状態を示す図である。
【図2】図1の矢印IIから見た、この実施の形態に係るタンピングツールの拡大図である。
【図3】この実施の形態に係るタンピングツールを用いて、枕木下方に敷き詰められた砕石を締め固める方法を説明するための図である。
【図4】この実施の形態に係るタンピングツールの変形例についての全体図である。
【図5】この実施の形態に係るタンピングツールの別の変形例についての全体図である。
【図6】締め固め試験方法を説明するための図である。
【図7】締め固め試験の結果である。
【図8】沈下進み試験方法を説明するための図である。
【図9】沈下進み試験の結果である。
【図10】従来のタンピングツールの全体図である。
【図11】従来のタンピングツールから構成されるタンピングツール対の全体図である。
【図12】従来のタンピングツールを用いて、枕木下方に敷き詰められた砕石の締め固めを行う方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0024】
1 タンピングツール、2 プレート、2a 上縁部、2b,2c 側縁部、4 肉盛部、21,22,23,24 枕木、27 レール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道レールの枕木の下方に敷き詰められた砕石を抱え込んで締め固めるプレートを備えた、マルチプルタイタンパー用のタンピングツールにおいて、
前記プレートは、周囲に、下方に開口した肉盛部を備えることを特徴とするタンピングツール。
【請求項2】
前記プレートは矩形であり
前記肉盛部は、前記プレートの上縁部と2つの側縁部とに、連続的に設けられる請求項1に記載のタンピングツール。
【請求項1】
鉄道レールの枕木の下方に敷き詰められた砕石を抱え込んで締め固めるプレートを備えた、マルチプルタイタンパー用のタンピングツールにおいて、
前記プレートは、周囲に、下方に開口した肉盛部を備えることを特徴とするタンピングツール。
【請求項2】
前記プレートは矩形であり
前記肉盛部は、前記プレートの上縁部と2つの側縁部とに、連続的に設けられる請求項1に記載のタンピングツール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−241834(P2006−241834A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58965(P2005−58965)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人日本鉄道施設協会「平成16年度 総合技術講演会(保線)講演概要集」平成16年10月27日
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(505079246)株式会社三暁 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人日本鉄道施設協会「平成16年度 総合技術講演会(保線)講演概要集」平成16年10月27日
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(505079246)株式会社三暁 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]