説明

ターゲット核酸を急速に多重増幅するための方法

高速の多重PCRシステムについて記載されている。このシステムは、ターゲット核酸から、増幅された核酸生成物(例えば、完全なSTRプロファイル)を急速に生成することが可能である。このようなシステムは、例えば、マイクロ流体バイオチップ、および、特別製のサーマルサイクラーを備えており、これらについても記載されている。得られたSTRプロファイルは、信号強度、内部遺伝子座におけるピーク高さのバランス、ヘテロ接合体におけるピーク高さの比率、テンプレートを用いない不完全なヌクレオチドの添加、およびスタッターに関する、法医学的なガイドラインを満たすことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
この出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、米国仮出願第60/921,802(出願日;2007年4月4日)、米国仮出願第60/964,502(出願日;2007年8月13日)、および、米国仮出願第61/028,073(出願日;2008年2月12日)における出願日の利益を主張する。これらのそれぞれは、本明細書によって参照されることにより、その全体がここに組み込まれている。この出願は、さらに、この出願と同じ日付で申請された2つの米国特許出願を参照することにより、その全体を組み込んでいる。これらの1つは、「INTEGRATED NUCLEIC ACID ANALYSIS(一体化された核酸の分析)」と題された出願(代理人整理番号第07−801−US)であり、もう1つは、「PLASTIC MICROFLUIDIC SEPARATION AND DETECTION PLATFORMS(プラスチックのマイクロ流体に関するプラットフォームの分離および検出)」と題された出願(代理人整理番号第07−865−US)である。
【0002】
本発明は、概略的には、核酸サンプルにおける1つあるいは複数の遺伝子座を急速に増幅するための方法、サーマルサイクラー、および、この方法を実行するために有用なシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、体外(in vitro)における幾何学級数的に急速な核酸配列の増幅を促進する酵素反応である。法医学においては、縦列型反復配列(STR)として知られている繰り返しDNAのクラスを有しているヒトゲノムの小さな領域の増幅に基づいて、個人を識別するために、PCRを利用することが可能である。特定のSTRにおける単位長さは、2〜10個の塩基対の間の範囲において繰り返されている。また、STRは、一般的に、非コードのフランキング配列内に含まれているが、コーディング領域に含まれていることもある(Edwardsら, Am. J. Hum. Genet. 1991, 49, 746-756)。ヒトゲノム内には、数10万のSTR遺伝子座があり、これらは、平均して6〜10kbごとに発生しており(BeckmanおよびWeber, Genomics 1992,12,627-631)、さらに、より多様な形態となっているようにも見える(Edwardsら, Trans. Assoc. Am. Physicians 1989, 102, 185-194)。STR分析は、法医学的な装備における主要なツールになっており、その一連の用途(父親であることの検査、集団災害における人物特定、および、子供のルーチンタイピングを含む)は増大しつつある。
【0004】
所望される高い特異性を有するPCR産物を合成するための、複数の市販のSTRキットが開発されている。しかしながら、現在のSTR技術には、改善することの可能な非常に大きなエリアがある。最も重要なことに、市販のSTRタイピングキットを利用して多重PCRを完了するための平均時間は、およそ2.14時間である。これらの分析における時間消費および労働集中は、法医学研究所におけるバックログの一因となっている。多数のサンプルを同時に処理するための自動化された器具類の誕生は、タイピングのスループットにおける重大なボトルネックを軽減するために役立っている一方、分析するべきサンプルの数が増えることは、プロセスのさらなる加速を要求するはずである。さらに、STR分析の感度を増大する必要性とともに、増幅された産物の検出を改善する必要性もある(Gill, Croat. Med. J. 2001, 42, 229-32)。現時点において有用なSTRキットは、9〜16個の遺伝子座を含んでおり、検出することの可能な遺伝子座の数を増大するために当該技術分野において作業が進行中である。この分野におけるSTR分析の特定の用途を、4つ以上の遺伝子座を利用して実施することが可能である。
【0005】
また、PCRを、臨床状況における広い範囲で応用することも可能である。例えば、PCRを、グループAの連鎖球菌、メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌などの細菌感染の診断に利用することも可能である。また、PCRは、一般的に、培養物ベースの診断技術に比べて、より高い感度を有している。同様に、真菌感染症を診断することも可能である。PCRを、呼吸器系ウイルス(例えば、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、および、インフルエンザおよびパラインフルエンザウイルス)、尿生殖器のウイルス(例えば、ヘルペスウイルスおよびタイピング・ヒト・パピローマウイルス)、骨髄炎(例えば、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、および、エンテロ・ウイルス)、および、肝炎(例えば、B型およびC型肝炎)の診断に利用することも可能である。PCRは、さらに、着床前遺伝子診断(異数性の評価および遺伝的な疾患の診断を含む)にも有用である。腫瘍学からリウマチ学まで、および、血液学から消化器病学まで、PCRによって影響を受けていない医学のエリアを見つけることは困難である。
【0006】
また、PCRは、さまざまな非臨床的状況(獣医学的な識別(ヒトのSTRタイピングに類似している)、獣医学的な診断、食品安全の評価、農業における病原体の検出、および、ファーマコジェノミックスを含む)においても応用されている。重要性の増大しつつある用途は、臨床サンプルおよび環境サンプルにおける生物兵器薬剤の特定に関連しているものである。各増幅サイクルの後に続く反応において現れる生成物の量の定量を可能とするリアルタイムPCR(PCRに関連が深いもの)は、PCR自体と本質的に同じ用途において利用されている(Espyら, Clinical Microbiology Reviews 2006, 19, 1656-256を参照されたい)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最も商業的に有用な温度サイクル器具は、これらが、PCR溶液温度と対照的なものとしてのブロック温度から、温度フィードバックを直接的に受けるという点、および、これらが、このブロック温度を制御するという点において、制限されている。その結果として、溶液の温度プロファイル(PCRの成功にとっては絶対不可欠なもの)が、望ましいプロファイルとは大幅に異なってしまう可能性がある。
【0008】
さらに、PCRの速度および感度の増加に関する文献の大部分は、1度に1つの特定の遺伝子座の増幅(「1重分析」)に焦点をあてており、さらに、法医学的なSTRタイピング、臨床的な診断および非臨床的な用途に関して必要とされているような、多数の遺伝子座における同時増幅(「多重分析」)に関しては、限定された成功だけが報告されている。例えば、一体化されたヒーターと結合している160nLのチャンバーは、80分間のY−STR分析に含まれている4つのSTR(検出限界は、テンプレートDNAにおける20個のコピー)を、増幅および分離することが可能であることが示されている(Liuら, Anal. Chem.2007, 79, 1881-1889)。また、PCRの反応容積を減少することによって増大されたPCRの感度が、PowerPlex(登録商標)16システムに関して報告されている。けれども、反応速度を増大する試みはなされていない(Schmidtら, Int. J. Legal Med. 2006, 120, 42-48)。しかしながら、当該技術において必要とされている、大幅に短縮された増幅時間を与える報告はない。Hopwoodら, International Congress Series 1288 (2006) 639-641)は、11個のSTRプライマーのセットを利用した100分間の増幅を報告している。臨床的な診断に関しては、7つの一般的な呼吸器系ウイルスからなるパネルが、97.5分間を必要とするPCR分析において、ナノチップシステムを利用して増幅されている(Takahashiら, J. lin. Microbiol 2008, doi:10. 1128/JCM. 01947-07)。
【0009】
STRタイピングによる法医学的な人物特定、臨床的な診断、および生物兵器薬剤の検出などの、PCR(およびリアルタイムPCR)の用途の多くは、極度に時間的な制約がある。そして、多くの用途は、多重状況において最も良好に実行される。さらに、これらの用途の多くは、限定されたサンプル(例えば、臨床サンプルまたは環境サンプルからの少数の病原体、あるいは、法医学的なサンプルからの少数のヒト細胞)しか得られないような状況であって、反応の感度が重要な意味をもつような状況において利用される。
【0010】
顕著には、Horsmanら,(J. Forensic Sci., 2007, 52, 784-799)の792のIdは、「このトピックに関する大量の文献によって立証されているように、PCRは、分析的なマイクロチップ研究者の間で、一般的な研究となった。しかしながら、法医学的なDNA分析に関しては、発達のための多数の手段が残されている。市販されている法医学的STRキット、あるいは、さらに、単一のデバイスにおける多重STR増幅を利用した、広範囲にわたる仕事はみられない。しかしながら、完全に発達したときには、マイクロチップPCRは、疑いようもなく、法医学的なコミュニティにおける多量の時間およびコストを節約することになると述べている。したがって、広範囲の用途に関して、核酸サンプルにおける複数の遺伝子座の同時増幅を首尾よく提供するための、急速かつ高感度な方法に関する、この分野における必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の機器、バイオチップ、方法およびシステムは、少なくとも部分的に溶液における実際の温度に基づいて、サーマルサイクラーをモニターおよび制御することによって、急速に、制御可能に、かつ再現可能に、PCR溶液を加熱および冷却する機能を提供する。ここに開示されている本発明の機器、バイオチップ、方法およびシステムは、市販のサーマルサイクラーにはないサーモセンサーを特別に組み込むことによって、過剰な加熱(あるいは加熱不足)を回避するために、バイオチップ内の溶液の反応温度を、モニターおよび/または制御する能力を提供する。このような温度に反応溶液を急速に加熱および冷却する能力によって、立ち上がり時間および立ち下がり時間を最小化することが可能となるとともに、トータルのステップ時間の大半を、所望される温度での培養時間とすることが可能となる。さらに、ここに提供されている本発明の機器、バイオチップ、方法およびシステムは、反応溶液の温度を急速に変化させるとともに、この温度の平衡を保つ能力を開示している。これにより、増幅反応が進行することの可能な速度が、大幅に増大される。
【0012】
本発明の機器、バイオチップ、方法およびシステムを用いることによって、高速の多重PCRの増幅時間(17分間ほどの短さ)が得られている。この発明の教示するところに基づいて、さらなる時間短縮が可能である。さらに、本発明の高速PCR方法は、広いダイナミックレンジにわたって効果的であり、極めて敏感であり、さらに、市販の酵素および試薬における広い範囲に対応している。法医学的な用途に関して、本発明の機器、バイオチップ、方法およびシステムは、STR分析に関する解釈のガイドラインを満足する完全なプロファイルを生成するために必要な時間を、大幅に短縮することが可能である。
【0013】
第1の態様では、本発明は、サーマルサイクラーにおいて、温度制御素子(TCE)を備えており、前記TCEにおける第1の表面が、溶液を保持しているサンプルチャンバーおよびサーモセンサーを保持している検知チャンバーを受容するように構成されており、サーモセンサーが、所望される温度にサンプルを設定あるいは維持するために、前記TCEにフィードバックを与えている、サーマルサイクラーを提供する。第2の態様では、本発明は、TCEにおける第1の表面の温度をモニターするために配置された、第2のサーモセンサーをさらに備えているサーマルサイクラーを提供する。
【0014】
第2の態様では、本発明は、バイオチップを備えたシステムにおいて、このバイオチップが、容積(volume)を有するバイオチップの一部を備えている1つあるいは複数の反応チャンバーを備えており、各反応チャンバーが、さらに、マイクロ流体の流入チャネルおよびマイクロ流体の流出チャネルを有しており、各反応チャンバーが、バイオチップ基板の接触表面から200μm未満となっているシステムであって、さらに、サーマルサイクラーを備えており、このサーマルサイクラーが、温度制御素子(TCE)を備えており、このTCEにおける第1の表面が、サンプルを保持している基板およびサーモセンサーを受容するように構成されており、このサーモセンサーが、基板内のサンプルの温度を測定するとともに、所望される温度にサンプルを設定あるいは維持するためにTCEにフィードバックを与えるように配置されており、前記サーマルサイクラーが、バイオチップ基板の接触表面と熱伝導しているシステム、を提供する。
【0015】
第3の態様では、本発明は、バイオチップおよびサーマルサイクラーを備えたシステムにおいて、このバイオチップが1つあるいは複数の反応チャンバーを備えており、各反応チャンバーが、容積を有するバイオチップの一部を備えており、さらに、マイクロ流体の流入チャネルおよびマイクロ流体の流出チャネルを有しており、各反応チャンバーが、バイオチップ基板の接触表面から100μm未満となっており、さらに、サーマルサイクラーが、温度制御素子(TCE)を備えており、このTCEにおける第1の表面が、サンプルを保持している基板およびサーモセンサーを受容するように構成されており、このサーモセンサーが、基板内のサンプルの温度を測定するとともに、所望される温度にサンプルを設定あるいは維持するためにTCEにフィードバックを与えるように配置されており、前記サーマルサイクラーが、バイオチップ基板の接触表面と熱伝導しているシステム、を提供する。
【0016】
第4の態様では、本発明は、核酸溶液における複数の遺伝子座を同時に増幅するための方法において、1つあるいは複数の反応チャンバーを設けるステップを含んでおり、各反応チャンバーが、(i)増幅されるべき少なくとも1つのターゲット核酸における少なくとも1つのコピーを含んだ核酸溶液、(ii)1つあるいは複数のバッファ、(iii)1つあるいは複数の塩、(iv)増幅されるべき複数の遺伝子座のそれぞれに対応するプライマーのセット、(v)核酸ポリメラーゼ、および、(vi)ヌクレオチド、を有している方法であって、各反応チャンバー内の核酸溶液の温度を、変性状態、アニーリング状態および伸長状態の間で、所定のサイクル数にわたって、約4〜150℃/秒の加熱および冷却速度で、連続的に熱的に循環させ、これにより、約97分間以内に、各反応チャンバーに複数の増幅された遺伝子座を生成するステップ、を含んでいる方法、を提供する。
【0017】
第5の態様では、本発明は、核酸溶液における複数の遺伝子座を同時に増幅するための方法において、1つあるいは複数の反応チャンバーを設けるステップを含んでおり、各反応チャンバーが、(i)増幅されるべき少なくとも1つのターゲット核酸における少なくとも1つのコピーを含んだ核酸溶液、(ii)1つあるいは複数のバッファ、(iii)1つあるいは複数の塩、(iv)増幅されるべき複数の遺伝子座のそれぞれに対応するプライマーのセット、(v)核酸ポリメラーゼ、および、(vi)ヌクレオチド、を有している方法であって、各反応チャンバー内の核酸溶液の温度を、所定のサイクル数にわたって、約4〜150℃/秒の加熱および冷却速度で、連続的に熱的に循環させ、これにより、約97分間以内に、各反応チャンバーに複数の増幅された遺伝子座を生成するステップ、を含んでいる方法、を提供する。
【0018】
第6の態様では、本発明は、核酸溶液における5つ以上の遺伝子座を同時に増幅するための方法において、1つあるいは複数の反応チャンバーを設けるステップを含んでおり、各反応チャンバーが、(i)増幅されるべき少なくとも1つのターゲット核酸における少なくとも1つのコピーを含んだ核酸溶液、(ii)1つあるいは複数のバッファ、(iii)1つあるいは複数の塩、(iv)増幅されるべき5つ以上の遺伝子座に対応するプライマーのセット、(v)核酸ポリメラーゼ、および、(vi)ヌクレオチド、を有している方法であって、各反応チャンバー内の核酸溶液の温度を、変性状態、アニーリング状態および伸長状態の間で、所定のサイクル数にわたって、約4〜150℃/秒の加熱および冷却速度で、連続的に熱的に循環させ、これにより、各反応チャンバーに5つ以上の増幅された遺伝子座を生成するステップ、を含んでいる方法、を提供する。
【0019】
第7の態様では、本発明は、一体化されたバイオチップシステムにおいて、マイクロ流体連通している少なくとも2つの反応チャンバーを備えたバイオチップを有しており、第1の反応チャンバーが、サーマルサイクラーと熱伝導しており、このサーマルサイクラーが、温度制御素子(TCE)を備えており、このTCEにおける第1の表面が、サンプルを保持している基板およびサーモセンサーを受容するように構成されており、このサーモセンサーが、基板内のサンプルの温度を測定するとともに、所望される温度にサンプルを設定あるいは維持するためにTCEにフィードバックを与えるように配置されており、バイオチップの接触表面が、サーマルサイクラーにおける第1の表面と熱伝導しており、さらに、サーマルサイクラーが、第1の反応チャンバーと流体接続している第2の反応チャンバーであって、核酸抽出、核酸精製、PCRの前の核酸浄化、PCRの後の浄化、シークエンシングの前の浄化、シークエンシング、シークエンシングの後の浄化、核酸分離、核酸検出、逆転写、逆転写の前の浄化、逆転写の後の浄化、核酸ライゲーション、核酸混成、あるいは定量化に適している第2の反応チャンバーを有しており、第1の反応チャンバーが、バイオチップの接触表面から200μm未満となっている、一体化されたバイオチップシステムを提供する。
【0020】
本発明における特定の好ましい実施形態が、特定の好ましい実施形態における後述するより詳細な説明および特許請求の範囲から、明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】本発明のサーマルサイクラーにおける実施形態の写真である。
【図1B】図1Aに示したサーマルサイクラーとともに使用するための、16レーンのマイクロ流体バイオチップの実施形態を示す写真である。
【図2A】ここに示した標準的なSTRサイクルプロトコル(トータルのサイクル時間:145.1分間)における1回の熱サイクルに関する、ブロックおよび反応溶液の温度プロファイルを示すグラフである。
【図2B】ここに示した高速サイクルプロトコル(トータルのサイクル時間:19.56分間)における1回の熱サイクルに関する、ブロックおよび反応溶液の温度プロファイルを示すグラフである。
【図3】高速サイクル条件(トータルのサイクル時間:17.3分間)を利用している本発明のサーマルサイクラーのための1回の熱サイクルに関する、ヒートポンプおよび反応溶液の温度プロファイルを示すグラフである。
【図4A】0.5ngのテンプレートDNAを利用して本発明にしたがうバイオチップ反応において生成された、STRプロファイルを示すグラフである。
【図4B】0.5ngのテンプレートDNAを利用して本発明にしたがうチューブ反応において生成された、STRプロファイルを示すグラフである。
【図5A】バイオチップ反応における信号強度に対する、DNAテンプレートレベルの影響を示すグラフである。
【図5B】チューブ反応における信号強度に対する、DNAテンプレートレベルの影響を示すグラフである。
【図6A】バイオチップ反応におけるヘテロ接合体のピーク高さの比率(PHR)に対する、DNAテンプレートレベルの影響を示すグラフである。
【図6B】チューブ反応におけるPHRに対する、DNAテンプレートレベルの影響を示すグラフである。
【図7A】バイオチップ反応におけるテンプレートを用いないヌクレオチドの添加(NTA)に対する、DNAテンプレートレベルの影響を示すグラフである。
【図7B】チューブ反応におけるNTAに対する、DNAテンプレートレベルの影響を示すグラフである。
【図8A】バイオチップ反応におけるスタッターに対する、DNAテンプレートレベルの影響を示すグラフである。
【図8B】チューブ反応におけるスタッターに対する、DNAテンプレートレベルの影響を示すグラフである。
【図9A】IngテンプレートDNAを利用してCOfiler(商標)プライマーのセットによって生成された、バイオチップ反応(最上部)およびチューブ反応(底部)に関するプロファイルを示すグラフである。
【図9B】IngテンプレートDNAを利用してIdentifiler(商標)プライマーのセットによって生成された、バイオチップ反応(最上部)およびチューブ反応(底部)に関するプロファイルを示すグラフである。
【図10】実施例5に記載されているような、シークエンシング反応の実施形態に関するプロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
PCRのような高速の多重核酸増幅を得るために、本発明は、ターゲットの核酸サンプルにおける複数の遺伝子座を増幅するために使用することの可能な反応条件、温度サイクル器具類、および、反応容器を提供する。ここに示した実施例によって示されているように、本発明における高速の温度サイクル方法を、本発明のサーマルサイクラーおよびここに記載されている方法を利用して、マイクロ流体バイオチップにおいて実行することが可能である。
【0023】
本発明によって与えられる方法は、ここに記載されているバイオチップおよびサーマルサイクラーを利用した用途に加えて、複数の用途において急速な多重増幅を可能とするものである。例えば、従来のサーマルサイクラー(例えば、ブロックベースのサーマルサイクラー、および、Roche LightCycler(商標))における薄肉チューブの使用、および、温度サイクルPCR以外の増幅方法(例えば、イソサーマルPCRあるいはローリングサイクル増幅)の使用が、特に想定されている。
【0024】
本発明によって提供される方法、バイオチップ、およびサーマルサイクラーは、少なくとも0.006ngの量のヒトゲノミックDNA(単一の有核ヒト細胞内におけるDNAの近似量)に存在する特定の核酸溶液内において、100分間足らずのうちに、複数の遺伝子座を増幅することが可能である。他の実施形態では、この増幅は、90分間未満、80分間未満、70分間未満、60分間未満、50分間未満、40分間未満、30分間未満、20分間未満、17.7分間未満、15分間未満、10分間未満、あるいは5分間未満のうちに生じる
【0025】
他の実施形態では、細菌由来、ウイルス由来、菌類由来、動物由来あるいは植物由来のゲノム内において、ターゲットの核酸における単数の遺伝子座あるいは複数の遺伝子座における少なくとも1つのコピーを発端として、複数の遺伝子座を増幅することが可能である。例えば、分析すべきサンプルは、多重増幅反応の前に、ターゲット核酸における1000個未満のコピー、400個未満のコピー、200個未満のコピー、100個未満のコピー、50個未満のコピー、30個未満のコピー、10個未満のコピー、あるいは少なくとも1つのコピーを含んでいればよい。さらに、ターゲットの核酸の遺伝子座が、ゲノム内における1つより多くのコピー内に含まれている場合には、増幅のために、DNAに相当する単一のゲノムを使用することも可能である。一般的に、ここに記載されている方法にしたがうと、サンプル内におけるターゲットの核酸のそれぞれにおいて、少なくとも2つの遺伝子座、および、およそ250までの遺伝子座を、同時に増幅することが可能である。さらに、ここに記載されている方法にしたがうと、複数のターゲットの核酸において、少なくとも2つの遺伝子座、および、およそ250までの遺伝子座を、同時に増幅することが可能である。
【0026】
ここで利用されるターゲットの核酸については、任意の核酸とすることが可能である(例えば、ヒト核酸、細菌の核酸、あるいはウイルスの核酸など)。ターゲットの核酸のサンプルについては、例えば、1つあるいは複数の細胞、組織、あるいは、体液(例えば、血液、尿、精液、リンパ液、脳脊髄液、あるいは羊水など)、あるいは、他の生体サンプル(例えば、組織培養細胞、口腔スワブ、マウスウォッシュ、排泄物、組織の薄片、吸引生検など)、および、考古学的なサンプル(例えば、骨あるいはミイラ化した組織)からの核酸サンプルとすることが可能である。例えば、ターゲットの核酸を、DNA、RNA、あるいは、逆転写にさらされたRNAのDNA生成物とすることが可能である。ターゲットのサンプルについては、任意のソースから取得することが可能である。そのソースとしては、例えば、真核生物、植物、動物、脊椎動物、魚類、哺乳類、ヒト、ヒト以外のもの、細菌、微生物、ウイルス、生物学的ソース、血清、血漿、血液、尿、精液、リンパ液、脳脊髄液、羊水、生検、針吸引生検、ガン細胞、腫瘍、組織、細胞、細胞溶解物、未処理の細胞溶解物、組織溶解物、組織培養細胞、口腔スワブ、マウスウォッシュ、排泄物、ミイラ化した組織、法医学的なソース、遺体解剖、考古学的なソース、感染、院内感染、生成物ソース、薬物製剤、生体分子生成物、プロテイン製剤、脂質製剤、炭水化物製剤、無生物、空気、土、樹液、金属、化石、根きり土、および/または、他の地球上のあるいは地球外の物質およびソースが挙げられる(ただし、これらに限定されるわけではない)。同様に、サンプルは、1つのソースあるいは異なる複数のソースからの物質の混合物を含むことが可能である。例えば、感染細菌あるいは感染ウイルスの核酸を、ヒトの核酸とともに増幅することも可能である(このような感染細胞あるいは感染組織からの核酸が、開示されている方法を利用して増幅される場合)。実用的なターゲットのサンプルのタイプは、真核性のサンプル、植物のサンプル、動物のサンプル、脊椎動物のサンプル、魚類のサンプル、哺乳類のサンプル、ヒトのサンプル、ヒト以外サンプル、細菌のサンプル、微生物のサンプル、ウイルスのサンプル、生体のサンプル、血清のサンプル、血漿のサンプル、血液のサンプル、尿のサンプル、精液のサンプル、リンパ液のサンプル、脳脊髄液のサンプル、羊水のサンプル、生検のサンプル、針吸引生検のサンプル、ガン細胞のサンプル、腫瘍のサンプル、組織のサンプル、細胞のサンプル、細胞溶解物のサンプル、未処理の細胞溶解物のサンプル、組織溶解物のサンプル、組織培養細胞のサンプル、口腔スワブのサンプル、マウスウォッシュのサンプル、排泄物のサンプル、ミイラ化した組織のサンプル、遺体のサンプル、考古学的なサンプル、感染のサンプル、院内感染のサンプル、生成物のサンプル、薬物製剤のサンプル、生体分子生成物のサンプル、プロテイン製剤のサンプル、脂質製剤のサンプル、炭水化物製剤のサンプル、無生物サンプル、空気のサンプル、土のサンプル、樹液のサンプル、金属のサンプル、化石のサンプル、根きり土のサンプル、および/または、他の地球上のあるいは地球外のサンプルである。科学捜査サンプルのタイプは、血液、乾いた血液、血液の染み、口腔スワブ、指紋、タッチサンプル(例えば、飲用グラスの縁、野球帽の内側の周縁、あるいは、たばこの吸殻に残った上皮細胞など)、チューインガム、胃の内容物、唾液、爪垢、土、性的暴行のサンプル、髪の毛、骨、皮膚および固形組織などである。環境サンプルのタイプは、フィルタリングされていない(あるいはフィルタリングされている)空気および水、土、表面からのスワブサンプル、エンベロープ、および粉末などである。
【0027】
例えば、ここに示した方法は、その分析が法医学的な解釈にとって適切なデータ(特に法医学的な解釈のガイドラインを満たすデータ)を生み出すような、増幅された核酸サンプルを提供することが可能である。このようなガイドラインには、信号強度、内部遺伝子座におけるピーク高さのバランス、ヘテロ接合体におけるピーク高さの比率(PHR)、テンプレートを用いない不完全なヌクレオチドの添加(NTA)、および、スタッター(Scientific Working Group on DNA Analysis Methods, Short Tandem Repeat (STR) Interpretation Guidelines. Forensic Science Communications, 2000, 2(3))が含まれている。
【0028】
ここで使用されている「流体連通(fluid communication)」というフレーズは、「2つのチャンバー、あるいは、流体を含んでいる他の部材あるいは領域が互いに接続されており、これにより、これらの2つのチャンバー、部材あるいは領域の間で流体を流すことが可能となっている」ことを示している。したがって、「流体連通」している2つのチャンバーを、例えば、これら2つのチャンバー間におけるマイクロ流体チャネルによって互いに接続することが可能であり、これにより、2つのチャンバー間において流体を自由に流すことが可能となる。このようなマイクロ流体チャネルは、選択的に、1つあるいは複数のバルブをその内部に備えることが可能である。そして、チャンバー間の流体連通をブロックする(および/または制御する)ために、これらのバルブを閉じるすなわち塞ぐことが可能である。
【0029】
ここで使用されている「ポリ(メチルメタクリレート)」あるいは「PMMA」という用語は、メチルメタクリレートの合成ポリマーを意味する。これは、Plexiglas(商標)、Limacryl(商標)、R-Cast(商標)、Perspex(商標)、Plazcryl(商標)、Acrylex(商標)、ACrylite(商標)、ACrylplast(商標)、Altuglas(商標)、Polycast(商標)およびLucite(商標)のトレードネームの下で販売されているもの、および、米国特許第5,561,208号、第5,462,995号および第5,334,424号(これらのそれぞれは、参照することによりここに組み込まれている)に記載されているポリマーを含んでいる(ただし、これらに限定されるわけではない)。
【0030】
ここで使用されている「ポリカーボネート」という用語は、炭酸およびグリコールのポリエステル、あるいは、二価のフェノールを意味する。このようなグリコールあるいは二価のフェノールの例としては、p−キシリレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−オキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)エタン1,1−ビス(オキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(オキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(オキシフェニル)ブタン、およびこれらの混合物が挙げられる。また、Calibre(商標)、Makrolon(商標)、Panlite(商標)、Makroclear(商標)、Cyrolon(商標)、Lexan(商標)およびTuffak(商標)のトレードネームの下で販売されているものが含まれる(ただし、これらに限定されるわけではない)。
【0031】
ここで使用されている「核酸」という用語は、一本鎖あるいは二本鎖のDNAおよびRNA、および、改良された塩基、糖類およびバックボーンを含む代替的な核酸における、任意のあるいは全ての形状を包含するように意図されている。したがって、「核酸」という用語は、一本鎖あるいは二本鎖のDNAおよびRNA(および、部分的に一本鎖あるいは部分的に二本鎖となることの可能なDNAおよびRNAの形状)、cDNA、アプタマー、ペプチド核酸(「PNA」)、2'−5'DNA(DNAのA構造に適合する塩基間隔を有する短縮されたバックボーンを有する合成物質;2'−5'DNAは、通常、B形状のDNAとは交雑することはないが、RNAとは容易に交雑する)、および、ロックされた核酸(「LNA」)を含むように理解されるはずである(ただし、これらに限定されるわけではない)。核酸誘導体は、塩基のペアリング特性における同様のあるいは改善された結合、交雑を有する、天然ヌクレオチドの既知の誘導体を含んでいる。プリン類およびピリミジンにおける「類似の」形状は、この技術分野において周知であり、アジリジニルシトシン、4−アセチルシトシン、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、イノシン、N−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキューオシン、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N−6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸、および、2,6−ジアミノプリンを含んでいる(ただし、これらに限定されるわけではない)。本発明によって提供されるDNAバックボーンの誘導体は、リン酸エステル、ホスホロチオエート、ジチオリン酸、メチルホスホン酸、ホスホロアミダート、アクリルリン酸トリエステル、スルファミン酸塩、3'−チオアセタール、メチレン基(メチルイミノ基)、3'−N−カルバミン酸塩、モルホリノカルバミン酸塩、および、ペプチド核酸(PNA)、メチルホスホン酸連鎖、あるいは、代替的なメチルホスホン酸、および、リン酸エステル連鎖(Strauss-Soukup, 1997, Biochemistry 36:8692-8698)、および、米国特許第6,664,057号において説明されているベンジルホスホン酸連鎖を含んでいる。なお、「OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES, A PRACTICAL APPROACH, F.Eckstein編集, IRL Press at Oxford University Press (1991)」、「Antisense Strategies, Annals of the New York Academy of Sciences, Volume 600, BasergaおよびDenhardt編(NYAS 1992)」、「Milligan, 1993, J. Med. Chem. 36:1923-1937;Antisense Research and Applications (1993, CRC Press)」、についても参照されたい。これらの核酸については、細胞から抽出することも可能であり、当業者に知られている任意の手段に従って合成的に調合することも可能である。例えば、これらの核酸を、化学的に、他のソースに混じっているcDNAあるいはmRNAから、合成あるいは転写あるいは逆転写することも可能である。
【0032】
ここで使用されている「ビア(via)」という用語は、固体物質内に形成されたスルーホールを意味する。これにより、この物質における上面と底面との間の流体連通が可能となる。
【0033】
ここで使用されている「遺伝子座(locus)」あるいは「複数の遺伝子座(loci)」という用語は、ここで規定されているような1つあるいは複数の核酸(例えば、1つあるいは複数の染色体)における1つあるいは複数の特定の位置を意味している。
【0034】
ここで使用されている「STR遺伝子座」および「複数のSTR遺伝子座」という用語は、ターゲット核酸の特定の遺伝子座における、2つ以上のヌクレオチドの繰り返しパターンからなる、ヌクレオチド配列を意味している。この繰り返しパターンは、2から10までの塩基対(bp)の長さの範囲にあることが可能であり、一般的には、非コーディングイントロン領域内にある。
【0035】
本発明における一態様にしたがうと、急速に、制御可能に、かつ、再生可能な方法で、反応溶液を加熱および冷却する能力を有するサーマルサイクラーが提供される。本発明のサーマルサイクラーにおける実施形態の例が、図1Aに示されている。反応溶液の温度を急速に加熱および冷却するための機能は、立ち上がり時間および立ち下がり時間が最小化されることを可能とするとともに、トータルのステップ時間において、望ましい温度での培養時間が支配的となることを可能とする。これにより、多重サイクル時間を最小化することが可能となる。
【0036】
単独の、あるいはヒートシンクと流体連通している温度制御素子(TCE)を利用することによって、高い加熱および冷却速度を得ることが可能である。TCEは、加熱および冷却のための手段、サーモセンサー、このサーモセンサーからの信号を受信するコントローラ、および電源を有している。好ましい実施形態では、TCEにおける第1の表面を、サンプルチャンバーを受容するように構成することが可能である。このサンプルチャンバーは、溶液および検知チャンバーを備えており、この検知チャンバーは、追加的なサーモセンサーを有している。このセッティングでは、サーモセンサーがTCEに取り付けられている検知チャンバー内に配置されている。これにより、それが、サンプルチャンバー内の状況をシミュレートする。この検知チャンバーは、サンプルチャンバーと同一の積層物質を有するように製造されている。温度センサー内に取り付けられているサーモカップルは、この構造におけるサンプルチャンバー内のサンプルの位置に類似する位置に、埋め込まれている。このセンサーは、サンプルチャンバー内における溶液の有効温度を知らせる。市販されているタイプ−TあるいはタイプKのサーモカップル(Omega Engineering(Stamford, CT)製)が、最も適切である。しかし、他のタイプ(サーミスタ、半導体および赤外線を含む)のサーモカップルおよびサーモセンサーを使用することも可能である。検知チャンバー内のサーモセンサーは、TCEに対してフィードバックを与える。これにより、望ましい温度にサンプルが設定あるいは維持される。このようにして、反応チャンバー自体の内部にサーモセンサーを挿入することなく、サンプルの温度を間接的に測定および制御することが可能となる。あるいは、サーモセンサーを、反応チャンバー内に直接的に配置して、サンプルの温度を設定あるいは維持することも可能である。これにより、検知チャンバーの必要性を排除することが可能となる。当業者にとっては当然のことであるが、この発明の教示するところに従って、他のタイプのセンサー(例えば圧力センサー)を利用することも可能である。
【0037】
TCEにおける第1の表面を、ほぼ平面の基板を受容するように構成することも可能である。これは、例えば、基板(例えばバイオチップ(後述する))を受容するために、第1の表面に凹所を形成することによる。あるいは、TCEを、1つあるいは複数の薄肉チューブを受容するように構成することも可能である。この薄肉チューブは、200μmよりも小さい範囲の厚さの壁直径を有するチューブとして規定されている。ヒートシンクについては、高性能のヒートシンクとすることが好ましい。このようなヒートシンクとしては、例えば、ファン冷却式のヒートシンク(冷却ファンを有する銅ベースのもの)が挙げられる(ただし、これに限定されるわけではない)。より好ましくは、ヒートシンクを、約0.4℃/W以下の熱抵抗を有する、ファン冷却式の銅製のベースおよびフィンとすることも可能である。高性能のヒートシンクにおける特定の非限定的な例は、E1U-N7BCC-03-GP(Coolermaster, Taiwan ROC)である。
【0038】
本発明のサーマルサイクラーは、さらに、TCEにおける第1の表面の温度をモニターするために配された、サーモセンサーを備えることが可能である。要望に応じて、サンプルの温度制御をさらに改善するために、追加的なサーモセンサーを追加することも可能である。モニター可能な補助的な温度は、基板上(あるいはその内部)における複数の領域の温度、ヒートシンク上(あるいはその内部)における複数の領域の温度、出入りする冷却空気の温度、出入りするサンプルの温度、および、環境温度などである。
【0039】
TCEとヒートシンクとの間の良好な熱伝導が望まれている。2つのあわせ面が適切に設けられている場合、密接な物理的接触は、これら2つの部材の間における適切な熱伝達を与えるために十分なものとなる。熱的結合を強化するために、TCEとヒートシンクとの間の熱インターフェイス物質(TIM)を使用することが可能である。このようなTIMは、接着剤、グリース、相変化物質(PCM)、金属熱インターフェイス物質、セラッミック熱インターフェイス物質、軟質金属合金、インジウム、アルミナ・ナノレイヤー・コーティング、サブミクロンフィルム、グリコール、水、オイル、不凍液、エポキシ化合物、および他のものを含んでいる(ただし、これらに限定されるわけではない)。特定の例は、Arctic SilverすなわちCeramique(Arctic Silver, Visalia, CA;0.007℃−in/Wより小さい熱抵抗を有する化合物)、圧縮可能なヒートスプリングHSD4(Indium Corp, Utica, NY)、HITHERM(GrafTech International Holdings Inc., Lakewood, OH)、あるいは、ヒートシンクの表面に対するTCEの直接的な結合などである。2psiより大きな、あるいは5psiより大きな、あるいは10psiより大きな、あるいは30psiより大きな、あるいは60psiより大きな、あるいは100psiより大きな、あるいは200psiより大きな平均力で、部材どうしを物理的にクランプすることによって、あるいは、表面どうしを直接的に結合することによって、熱的な接触をさらに強化することも可能である。
【0040】
Eppendorf Mastercycler(商標)ep gradient Sというサーマルサイクラー(高い熱伝導率および低い比熱容量を有する銀のブロックを介して、熱エネルギーを与える)などの、ブロック・サーマルサイクラーに関して、基板を直接的にTCE上に配置することによって、TCEと、それに接触している基板との間の熱伝達を増加することも可能である。好適なTCEは、高い加熱容量および冷却容量を有するヒートポンプ、および、高い出力のペルチェデバイス、を含んでいる(ただし、これらに限定されるわけではない)。ペルチェデバイスの例としては、9500/131/150B(Ferrotec, Bedford NH)、XLT2393(Marlow, Dallas TX)が挙げられる。本発明のサーマルサイクラーに関するTCEの一部として利用される場合、ペルチェデバイスは、Hブリッジによって有利に動力供給を受ける。Hブリッジデバイスの例としては、5R7-001(Oven Industries)が挙げられる。
【0041】
本発明のサーマルサイクラーに関するTCEの一部として、ペルチェデバイスを使用する場合、加熱および冷却に関するパルス幅変調を用いて、Hブリッジによってペルチェデバイスに動力を与えることが有利である。サンプルの温度を測定するサーモセンサーからの温度フィードバックは、TCEを駆動して、所望されるサンプル温度を設定および維持させる。TCEの制御に関する閉ループ温度制御アルゴリズムは、PID制御およびファジー論理制御を含んでいる(ただし、これらに限定されるわけではない)。
【0042】
前記熱コントローラは、1つのターゲット温度状態から他のターゲット温度状態への急速な遷移のためのキャパシティを与える、コントロールアルゴリズムを備えている。この遷移を、3つの異なるフェーズに分割することも可能である。フェーズ1では、実際の温度とターゲット温度との間に大きな相違(例えば、1〜20℃、あるいは、より大きな相違)がある。このフェーズでは、TCEデバイスの最大レート(あるいはその近傍)において、ランピングが生じる。フェーズ2(遷移フェーズ)では、実際の温度とターゲット温度とがより近づく(およそ1〜20℃より小さくなる)。この場合、コントローラは、溶液温度のオーバーシュートを防止するために、TCEへのパワーを小さくする必要があるとともに、最小の逸脱および振動をもって、ターゲット温度の急速な獲得を可能とする必要がある。フェーズ3では、ターゲット温度が獲得され、そして、コントローラが、ターゲット温度の近傍の狭い範囲内に溶液を維持するために、サーマルサイクラーに対するパワーを抑えている。センサーを用いた温度測定は、実際の温度におけるより正確なフィードバックを与えるとともに、TCEの表面温度の温度をオーバードライブすることを可能とする。上述した3つのフェーズのそれぞれを、さらに、多数のサブフェーズに細分割することも可能である。これにより、より速い反応時間、より正確な温度制御、増大した安定性、および、外部変動に対する増大した耐性が与えられる。
【0043】
一実施例では、基板表面のチャネル内に薄いサーモカップルを配置することによって、基板の温度を測定することが可能である。他の実施例では、利用されている基板とほぼ同一の材料からなる第2のサーモセンサーを、「この第2のサーモセンサーにおけるTCEからの距離が、TCEに接触している基板上の反応チャンバーにおけるTCEからの距離とほぼ同一となるように、第2のサーモセンサーを保持する範囲」内に収容することも可能である。一般的に、このような第2のサーモセンサーを、基板から分離すること(すなわち、孤立型のセンサーとすること)も可能である。また、この第2のサーモセンサーを、TCEにおける第1の表面上の基板の隣に配置することも可能である。
【0044】
ヒートシンクは、選択的に、ヒートシンクの温度を制御するために、可変速度冷却ファン、および/または、第2の加熱素子を備えることも可能である。この場合、ヒートシンクにおける追加的な素子のそれぞれは、第2の制御素子と連通している。これにより、ヒートシンクの冷却効率を調整することが可能となる。特に、ヒートシンクの温度を、環境温度の変化とは無関係に、ほぼ一定に維持することが可能となる。また、ヒーターは、あらかじめ、ヒートシンクの温度をほぼ動作温度に調整しておくことも可能である。
【0045】
基板およびTCEにおける反応溶液の熱的結合を促進するために、サーマルサイクラーが動作しているときに、基板を固定するための力を基板に印加することによって、TCEにおける第1の表面と接触している基板の接触表面の熱伝導を一定に保つことが可能である。このような力は、好ましくは、TCEにおける第1の表面に対して一時的にだけ基板を保持する手段であって、熱サイクルの完了時に容易に除去することの可能な手段によって、印加される。例えば、TCEにおける第1の表面の上部に、チップ圧縮素子(CCE)を配置することも可能である。これにより、間に基板を配置することが可能となる。そして、このチップ圧縮素子を、サーマルサイクラーの動作中に基板を適切な位置に保持するために使用すること、および、基板の除去を可能とするために解放することが可能である。CCE、TCEおよびヒートシンクを適切に一体化することにより、CCEによって、これら3つの部材間における熱的結合を改善することが可能となる。
【0046】
基板に接触しているCCEの一部を、低熱質量の絶縁性物質から形成することも可能である。このような物質は、例えばWF71 Rohcell foam(Inspec foams, Magnolia, AR)のようなフォーム(泡)を含む(ただし、これに限定されるわけではない)。ここに示されている実施形態に関しては、このRohcellは好ましい。これは、1.4〜1.6(J/gK)の比熱容量(あるいは、より少ない熱質量)、および、0.0345W/mK以下の熱伝導率を有している。
【0047】
バイオチップ圧縮素子は、1つあるいは複数のクランプ、スプリング、圧縮可能なフォーム、あるいは、TCEにおける第1の表面上に基板を保持するための力を与えるように膨張させることの可能な、加圧された気胞を含んでいる(ただし、これらに限定されるわけではない)。好ましくは、チップ圧縮素子は、基板の表面に対して、約5〜約250psiaの、ほぼ均一の力を与える。また、より好ましくは、TCEにおける第1の表面に基板を保持するために、約20〜約50psiaの、ほぼ均一の力を与える。とりわけ、熱的結合溶液(例えば、熱グリースあるいはグリコールなど)のない場合にも、バイオチップ基板の接触表面とTCEとの間の熱伝導を与えることが可能である。なお、必要に応じて、上記の熱的結合溶液を利用することは可能である。
【0048】
バイオチップ圧縮素子は、バイオチップ−熱電冷却器−ヒートシンクに力を与える。この力は、良好な熱的接触、および、これによるバイオチップとTCEにおける最上部の表面との間の熱伝達を確保するように機能する。
【0049】
一実施形態では、低い熱質量の絶縁体が、気胞であり、低い熱質量および絶縁特性を与えるために利用されている。他の実施形態では、低い熱質量の絶縁体が、フォームパッドである。クランプ力については、空気圧シリンダーによってフォームパッドに与えることが可能であり、あるいは、気胞からの空気圧あるいは圧縮によって、クローズドセル・フォームパッドに与えることが可能である。後者の場合には、気胞が、絶縁性および圧縮力の双方を与える。
【0050】
上述したように、サーマルサイクラーは、TCE表面における第1の表面において、1秒ごとに約4〜150℃(好ましくは、約8〜150℃/秒、より好ましくは、約10〜150℃/秒)の加熱および/または冷却速度を有することが可能である。サーマルサイクラーは、また、TCE(例えばバイオチップ)における第1の表面との間で均一な熱伝導状態にある基板における反応チャンバー内の溶液において、1秒ごとに約4〜150℃(好ましくは、約8〜150℃/秒、より好ましくは、約10〜150℃/秒)の加熱あるいは冷却速度を有することが可能である。さらに、本発明のサーマルサイクラーは、+/−1.0℃(好ましくは、+/−0.50℃、より好ましくは、+/−0.25℃)の温度安定性を有することが可能である。
【0051】
バイオチップ
本発明における他の態様にしたがうバイオチップ(すなわち、本発明のサーマルサイクラーとともに使用するための基板)の実施形態は、例示の目的で、図1Bに示されている。このバイオチップは、16個のマイクロ流体システムを有しており、これらのそれぞれが、バイオチップ内に形成されている反応チャンバーのそれぞれとの流体連通における流入口および流出口を有している。しかしながら、このような開示は、限定する目的のものではない。むしろ、当業者であれば容易に認識することではあるが、バイオチップは、他の数量のマイクロ流体システム(後述する)を備えることが可能であり、1つのシステムを有するバイオチップ、および、2つ以上のシステムを有するバイオチップもある。ここで使用されている「複数の」という用語は、2つ以上、4つ以上、8つ以上、16個以上、32個以上、48個以上、64個以上、96個以上、128個以上、あるいは、2〜16個、2〜32個、2〜48個、2〜64個、2〜96個、2〜128個、8〜128個、8〜64個、あるいは8〜32個のマイクロ流体チャネルを意味している。
【0052】
バイオチップは、基板層およびカバー層を有することが可能である。ここでは、グルーブおよび/またはくぼみを備えている1つあるいは複数のマイクロ流体システムは、基板層内にパターン化されている。マイクロ流体チャネルおよび反応チャンバーに対する流体アクセスを与えるために、カバー層内に、一連のビア(すなわち、スルーホールおよび/または流入口あるいは流出口)を形成することが可能である。また、これら一連のビアを、バイオチップに関して任意の位置に配置することが可能である。また、同じ機能性を得るために、ビアを、カバー層ではなく基板層に形成することも可能である。マイクロ流体システムを完成させるために、基板層の最上面を、カバー層の底面と結合することが可能である。ポリマーベースのマイクロ流体システムを製造するための技術は、BeckerおよびGartner(Becker, 2000, Electrophoresis 21, 12-26およびBecker, 2008, Electrophoresis 390, 89)によって、大規模に見直されている。これらについては、参照することにより、その全体がここに組み込まれている。バイオチップについては、不飽和の、部分的に不飽和の、あるいは飽和した環状オレフィン・コポリマー「COC」、不飽和の、部分的に不飽和の、あるいは飽和した環状オレフィン・ポリマー「COP」、ポリ(メチル)メタクリレート「PMMA」、ポリカーボネート「PC」、ポリプロピレン「PP」、ポリエチレン「PE」、ポリエーテルエーテルケトン「PEEK」、ポリ(ジメチルシロキサン)「PDMA」、ポリイミド「PI」などの材料を用いて製造することが可能である。増幅反応において利用される最大温度よりも高いガラス転移温度を有するプラスチックを選択することは重要である。ここに記載したバイオチップを製造するために、これらのプロセスおよび材料における任意の数を利用することが可能である。特に、バイオチップを、プラスチック基板(例えば、COCあるいはCOPベースのポリマー(現在、Topas(商標)、Zeonex(商標)、Zeonor(商標)、およびApel(商標)のトレードネームで販売されている))の射出成形によって、製造することが可能である。この製造手順では、形成されるべき構造のネガティブからなる金型インサートおよび射出成形金型が、機械加工およびその後の表面研磨によって製造される。金型およびインサートは、ともに、基板層を製造することを可能とするとともに、形成された基板が、チャネル、反応チャンバー構造およびビアを備えることを可能とする。基板およびカバー層については、熱および圧力を印加することによって、拡散接合することが可能である。
【0053】
あるいは、製造されるべき構造のネガティブにおけるマスター金型を用いて、薄い熱可塑性フィルムを熱エンボス加工することによって、バイオチップを製造することも可能である。このマスター金型については、固体の基板内に形成されているデバイスを再現するための電鋳法を用いることによって、製造することが可能である。固体の基板については、ガラスシートとすることが可能である。このシートは、当業者に知られている標準的なフォトリソグラフィー法およびケミカルエッチング法によって、パターン化される。基板およびカバー層は、熱および圧力を印加されることによって、拡散接合される。
【0054】
バイオチップの基板およびカバー層については、さまざまなプラスチック基板から構成することが可能である。このプラスチック基板は、ポリエチレン、ポリ(アクリレート)(例えば、ポリ(メチルメタクリレート))、ポリ(カーボネート)、および、不飽和の、部分的に不飽和の、あるいは飽和した環状オレフィン・ポリマー(COP)、あるいは、不飽和の、部分的に不飽和の、あるいは飽和した環状オレフィン・コポリマー(COC)を含む(ただし、これらに限定されるわけではない)。このプロセスにおいて利用されるプラスチック基板およびカバー層の厚さは、その質量を最小化するために、薄く維持される。これにより、サーマルサイクラーと各反応チャンバーに保持されている反応溶液との間の使用時の熱伝達が、最大化される。プラスチック基板およびカバー層は、それぞれ、独立に、2mm未満、1mm未満、750μm未満、650μm未満、500μm未満、400μm未満、300μm未満、200μm未満、あるいは100μm未満の厚さを有することが可能である。あるいは、プラスチック基板およびカバー層は、それぞれ、独立に、25〜2000μm、25〜1000、25〜750μm、25〜650mm、25〜500μm、25〜400μm、25〜300μm、25〜200μm、25〜100μmの厚さ範囲を有するプラスチックを備えることが可能である。好ましくは、基板およびカバー層の少なくとも1つが、約200μm未満の厚さを有している。これにより、バイオチップの反応チャンバー内に保持されている反応溶液に対する熱伝達が、最大化される。より好ましくはバイオチップの接触表面(TCEにおける第1の表面と接触する面)が、約200μm未満の厚さを有している。
【0055】
各反応チャンバーについては、例えば100μL未満の容積を有するように形成することが可能である。好ましくは、各反応チャンバーは、約50μL未満、あるいは、約40μL未満、あるいは、約30μL未満、あるいは、約25μL未満、あるいは、約20μL未満、あるいは、約15μL未満、あるいは、約10μL未満、あるいは、約5μL未満、あるいは、約1μL未満、あるいは、約0.1μL未満の容積を有する。あるいは、各反応チャンバーを、約0.1μLから約100μLまでの範囲の容積を有するように、形成することも可能である。好ましくは、各反応チャンバーは、約0.1μLから約10μLまで、あるいは、約10μLから約50μLまでの範囲の容積を有している。反応チャンバーは、一般的に、ポリマーあるいはシランコーティングによっては被覆されていない。反応チャンバーについては、流入口チャネルおよび流出口チャネルを有するように設計することも可能である。あるいは、流入口および流出口のために、単一のチャネルを利用することも可能である。
【0056】
本発明のバイオチップ設計は、マイクロ流体の利点を利用している。この利点には、熱伝達を最大化するための高い表面積対体積率および短縮された拡散時間を有している点、および、均一な加熱および冷却を有している点、が含まれる。マイクロ流体技術の利用は、さらに、完全に一体化された法医学的な分析機器に関する利点を提供する。さらに、さまざまな層(例えば、COC層)を結合するために、接着剤を用いることなく、拡散接合によって製造されたバイオチップがテストされ、このバイオチップが、所望される用途における要求に応えられなくなるまでに、100から1500psiまでの圧力に耐えられることが立証されている。例えば、本発明のバイオチップは、450psiに耐える。これは、所望される熱サイクル用途にとって十分である。
【0057】
注意すべきことであるが、上述した本発明のバイオチップにおける特定の実施形態は、実質的に、反応チャンバーを加熱および/または冷却するための、バイオチップに一体化された何らの加熱素子も有していない。バイオチップにおける反応チャンバーの熱サイクルは、外部的に、例えば、本発明のサーマルサイクラーによって、与えられる。しかしながら、本発明のバイオチップに対して、加熱素子を一体化することも可能である。
【0058】
動作中においては、バイオチップの一部分が、1つあるいは複数の反応溶液を受容することが可能である。各反応溶液は、独立に、バイオチップ内に形成されている1つあるいは複数の反応チャンバーとの流体連通における1つあるいは複数の流入口を介した、1つあるいは複数の試薬(例えば、PCR用の試薬)および/または拡散サンプルを有している。個別の分離反応チャンバーに核酸サンプルのそれぞれを注入することによって、複数のサンプルにおける同時増幅を実行することが可能である。同時の多重サンプル増幅を可能とするために、複数のサンプルウェルあるいはバッファウェルに対して複数のサンプルを同時に注入するための注入器を、バイオチップに設けることも可能である。このような注入器は、例えば、複数のサンプルにおける1つのサンプルを、複数の反応チャンバーにおける1つの反応チャンバーに供給する。当業者に知られている任意の方法に従って、例えば、反応チャンバーに対してサンプルを接続する針あるいはチューブあるいはチャネルを介した、電気泳動輸送、空気圧駆動、あるいは液体駆動によって、注入器が、サンプルをチャネルに導入することが可能である。
【0059】
増幅(および、選択的に、核酸の抽出および定量化)に続いて、フラグメントの分離およびSTRプロファイルの生成のために、反応チャンバーとの流体連通における1つあるいは複数の流出口を介して、増幅された核酸生成物を(例えばGenebench-FX(商標)100に対して)通過させることが可能である。
【0060】
比較的に低コストのプラスチック成形は、本発明のバイオチップを使い捨てのものとすることを可能とする。これにより、バイオチップの再利用のために必要とされる作業がなくなるとともに、汚染の可能性もほぼなくなる。1回限りで使い捨てることは、少ないコピー数の分析にとって、汚染(最初のサンプル収集以外の汚染)の可能性が存在しないという点において、特に有利になるはずである。汚染および作業の双方が主な配慮事項になっていない状況では、再利用可能なプラスチックおよびガラスのバイオチップを利用することも可能である。
【0061】
一体化の方法
マイクロ流体を利用することによって、単一のバイオチップにおいて1つより多くの機能を実行するための構成を製造することが可能となる。これらの機能は、核酸抽出、核酸精製、PCRの前の核酸浄化、PCRの後の浄化、シークエンシングの前の浄化、シークエンシング、シークエンシングの後の浄化、核酸分離、核酸検出、逆転写、逆転写の前の浄化、逆転写の後の浄化、核酸ライゲーション、核酸の混成および定量化を含むことが可能である。サンプルの逐次的なプロセスを可能とするために、これらの機能の2つ以上を、マイクロ流体的に接続することが可能である。この結合は、一体化(integration)と呼ばれる。
【0062】
入力チャネルと出力チャネルとの間に精製媒体を挿入することによって、マイクロ流体DNA抽出における1つの形態を得ることが可能である。この精製媒体は、シリカファイバー・ベースのものとすることが可能であるとともに、生体サンプルを溶解させるため、DNAを露出させるため、および、DNAを精製媒体に結合させるために、カオトロピック塩の試薬を用いることが可能である。そして、溶解物は、DNAと結合するために、入力チャネルを介して、精製媒体を通って搬送される。結合されたDNAは、汚染物質を除去するために、エタノールベースのバッファによって洗浄される。これについては、入力チャネルを介して、精製膜を通して洗浄試薬を流すことによって、達成することが可能である。そして、適切な低塩バッファ(例えば、米国特許第5,234,809号(Boom)を参照されたい)を流すことによって、結合されたDNAが、この膜から溶出し、入力チャネルを介して、精製膜を通って、出力チャネルから外に出る。
【0063】
マイクロ流体フォーマットにおけるDNA定量化に対する1つのアプローチは、リアルタイムPCRに基づいている。この定量化方法では、反応チャンバーは、入力チャネルと出力チャネルとの間に形成されている。この反応チャンバーは、サーマルサイクラーに結合しており、光学的励起および検出システムが、反応チャンバーに結合している。これにより、反応溶液からの蛍光発光を測定することが可能となる。サンプル内におけるDNAの量は、サイクルごとの反応チャンバーからの蛍光発光の強度と相関関係がある(例えば、Heidら, Genome Research 1996, 6, 986-994を参照されたい)。
【0064】
マイクロ流体フォーマットにおける一体化についてのさらなる情報に関しては、この出願と同じ日付で申請された「INTEGRATED NUCLEIC ACID ANALYSIS(一体化された核酸の分析)」と題された米国特許出願(代理人整理番号07−801−US)を参照されたい。なお、参照することにより、この出願の全てがここに組み込まれている。マイクロ流体フォーマットにおける分離および検出についてのさらなる情報に関しては、この出願と同じ日付で申請された、「Plastic Microfluidic Separation and Detection Platforms(プラスチックのマイクロ流体に関するプラットフォームの分離および検出)」と題された米国特許出願(代理人整理番号07−865−US)を参照されたい。なお、参照することにより、この出願の全てがここに組み込まれている。
【0065】
本発明のマイクロ流体ドライブは、一体化されたバイオチップにおける反応チャンバー内の流体を搬送するための手段である。マイクロ流体ドライブにおける1つのタイプは、組み込まれている膜ポンプによって達成される。この膜ポンプは、膜に対して陽圧および陰圧を順次的に印加することによって、流体を搬送する。あるいは、マイクロ流体チャンバーの入力部に容積型ポンプを接続することも可能である。ポンプの変位が、マイクロ流体チャネルを介して流体を押し進める。
【0066】
一体化は、バイオチップにおける流体の流れをゲート制御するために、マイクロ流体バルブを利用することが可能である。バルブ調整については、受動的な構造あるいは能動的な構造を利用して、実現することが可能である。受動的なバルブ調整構造は、毛管圧力を利用することによって流体の流れを停止する、毛管バルブを備えている。流体は、毛管力に打ち勝つために十分な大きさの圧力を受けることによって、毛管バルブ構造内を流れることが可能である。能動的なバルブ構造は膜バルブを備えており、これは、2つのチャネル間の位置において、柔らかい(あるいは半剛体の)構造を使用している。膜に対して圧力を印加することによって、膜がチャネルを閉鎖する。膜に真空を作用させると、膜がチャネルから持ち上がる。これにより、流体の通過が可能となる。
【0067】
増幅方法
さらに他の態様では、本発明は、1つあるいは複数のターゲット核酸における複数の核酸遺伝子座を、急速ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって同時に増幅するための方法を提供する。このような方法は、1つあるいは複数の反応溶液を、1つあるいは複数の反応チャンバーに供給するステップを含んでいる。そして、各反応溶液は、(i)少なくとも1つのターゲット核酸における少なくとも1つのコピー(各ターゲット核酸は、同一であるかあるいは異なっており、さらに、各ターゲット核酸は、独立して、増幅されるべき複数の遺伝子座を備えている)、(ii)1つあるいは複数のバッファ、(iii)1つあるいは複数の塩、(iv)増幅されるべき複数の遺伝子座に対応するプライマーのセット、(v)核酸ポリメラーゼ、および、(vi)ヌクレオチドを備えている。
【0068】
反応溶液のそれぞれ、例えば、ターゲット核酸のぞれぞれは、必要に応じて、同一であっても異なっていてもよい。これにより、例えば、同一の核酸サンプルにおける多重同時分析が実行される、あるいは、多数の核酸サンプルが同時に処理される。
【0069】
各反応チャンバーを、上述したように本発明のバイオチップ内に保持することも可能であり、あるいは、薄肉の反応チューブ内に保持することも可能である。薄肉の反応チューブは、約200μm未満の壁厚を有していることが好ましい。できれは、薄肉の反応チューブは、約100μm未満の壁厚を有していることが好ましい。
【0070】
PCR増幅に関するプライマーは、ターゲットDNAの遺伝子座を交雑するように特別に設計された、オリゴヌクレオチド配列である。これらのプライマーは、ポリメラーゼ伸長に関する出発点として機能する。増幅されたフラグメントの分析を容易にするために、PCR反応において、ラベル付けされたプライマーを使用することも可能である。ラベル付けされたプライマーは、オリゴヌクレオチド配列である。これらの配列は、検出可能な部分と結合している。その非限定的な例は、蛍光染料である。蛍光によってラベル付けされたプライマーを用いてPCRが実行された場合、蛍光ラベルを有する単位複製配列が生成される。高速のPCRを実行するための方法は、ラベル付けされたプライマーおよびラベル付けされていないプライマーの双方に対応することが可能である。また、高速の多重PCRが実証されている。
【0071】
プライマーのセットは、上述したようなターゲットの核酸を有する複数の遺伝子座の増幅に関して、当業者に知られている任意のものとすることが可能である。例えば、ヒトの核酸サンプルにおける1つあるいは複数の遺伝子座の増幅において有用なプライマーは、米国特許第5,582,989号、米国特許第5,843,660号、米国特許第6,221,598号、米国特許第6,479,235号、米国特許第6,531,282号、および、米国特許第7,008,771号、および、米国特許出願公開第2003/0180724号、第2003/0186272号、および、第2004/0137504号に記載されている。これらのそれぞれは、参照することにより、ここに組み込まれている。
【0072】
さらに、ウイルスの核酸サンプルにおける1つあるいは複数の遺伝子座の増幅において有用なプライマーは、例えば、米国特許第7,312,036号、米国特許第6,958,210号、米国特許第6,849,407号、米国特許第6,790,952号、および、米国特許第6,472,155号に記載されている。これらのそれぞれは、参照することにより、ここに組み込まれている。
【0073】
細菌の核酸サンプルにおける1つあるいは複数の遺伝子座の増幅において有用なプライマーの例は、米国特許第7,326,779号、米国特許第7,205,111号、米国特許第7,074,599号、米国特許第7,074,598号、米国特許第6,664,080号、および、米国特許第5,994,066号に記載されている。これらのそれぞれは、参照することにより、ここに組み込まれている。
【0074】
塩およびバッファは、当業者に周知のものを含んでおり、敬意を表して、MgCl、およびTris−HClおよびKClを備えるものを含んでいる。バッファは、例えば、界面活性剤(例えばTweens)、ジメチル・スルホキシド(DMSO)、グリセロール、ウシの血清アルブミン(BSA)およびポリエチレングリコール(PEG)、および、当業者に周知の他のもの、のような添加物を含むことも可能である。ヌクレオチドは、一般的に、例えば、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、およびデオキシチミジン三リン酸(dTTP)のような、デオキシリボヌクレオシド三リン酸であり、合成物質に対しても、ターゲットの核酸の増幅のために適切な量が添加される。
【0075】
核酸ポリメラーゼのホットスタート活性化に適した第1の期間に、溶液を、選択的に、第1の温度に加熱および保持することも可能である。一般的に、この第1の期間は、約90秒よりも短い。第1の温度については、約95℃から約99℃とすることも可能である。60秒以内に活性化することの可能なホットスタート機構を有するポリメラーゼには、抗体を介したホットスタートを利用するもの、および、アプタマーを介したホットスタート機構を利用するものも含む。あるいは、本発明においては、ホットスタート・ポリメラーゼを利用しなくてもよい。
【0076】
その後、反応溶液の温度は、変性状態、アニーリング状態および伸長状態の間において、所定の循環数にわたって、連続的に循環する。一般的に、1つあるいは複数の反応溶液は、第1の冷却速度で、変性状態からアニーリング状態に冷却される。この第1の冷却速度は、約1から約150℃/秒、あるいは、約1から約100℃/秒、あるいは、約1から約80℃/秒、あるいは、約1から約60℃/秒、あるいは、約1から約40℃/秒、あるいは、約1から約30℃/秒、あるいは、約1から約20℃/秒、約4から約150℃/秒、あるいは、約4から約100℃/秒、あるいは、約4から約80℃/秒、あるいは、約4から約60℃/秒、あるいは、約4から約40℃/秒、あるいは、約4から約30℃/秒、あるいは、約4から約20℃/秒、あるいは、約10から約150℃/秒、あるいは、約10から約100℃/秒、あるいは、約10から約80℃/秒、あるいは、約10から約60℃/秒、あるいは、約10から約40℃/秒、あるいは、約10から約30℃/秒、あるいは、約10から約20℃/秒である。1つあるいは複数の反応溶液を、第1の加熱速度で、アニーリング状態から伸長状態に加熱することが可能である。第1の加熱速度は、約1から約150℃/秒、あるいは、約1から約100℃/秒、あるいは、約1から約80℃/秒、あるいは、約1から約60℃/秒、あるいは、約1から約40℃/秒、約1から約30℃/秒、約1から約20℃/秒、4から約150℃/秒、あるいは、約4から約100℃/秒、あるいは、約4から約80℃/秒、あるいは、約4から約60℃/秒、あるいは、約4から約40℃/秒、約4から約30℃/秒、約4から約20℃/秒、あるいは、約10から約150℃/秒、あるいは、約10から約100℃/秒、あるいは、約10から約80℃/秒、あるいは、約10から約60℃/秒、あるいは、約10から約40℃/秒、あるいは、約10から約30℃/秒、あるいは、約10から約20℃/秒である。および/または、1つあるいは複数の反応溶液は、第2の加熱速度で、伸長状態から変性状態に加熱される。この第2の加熱レートとは、約1から約150℃/秒、あるいは、約1から約100℃/秒、あるいは、約1から約80℃/秒、あるいは、約1から約60℃/秒、あるいは、約1から約40℃/秒、約1から約30℃/秒、約1から約20℃/秒、約4から約150℃/秒、あるいは、約4から約100℃/秒、あるいは、約4から約80℃/秒、あるいは、約4から約60℃/秒、あるいは、約4から約40℃/秒、約4から約30℃/秒、約4から約20℃/秒、あるいは、約10から約150℃/秒、あるいは、約10から約100℃/秒、あるいは、約10から約80℃/秒、あるいは、約10から約60℃/秒、あるいは、約10から約40℃/秒、あるいは、約10から約30℃/秒、あるいは、約10から約20℃/秒である。最終的に、反応溶液は、1つあるいは複数の増幅された拡散生成物を提供するための、最終状態に保持される。
【0077】
変性状態は、一般的に、約1から30秒までの時間範囲において、約90から99℃までの範囲にわたっている可能性がある。実際の時間および温度は、酵素、プライマーおよびターゲットに依存する。ヒトゲノミックDNAを増幅するための、Applied Biosystems(AB)多重STRキットに関しては、約5秒間で約95℃であることが好ましい。
【0078】
アニーリングの温度および時間は、ターゲット核酸における複数の遺伝子座と結合しているプライマーの特異性および能力に影響し、多重PCR反応にとっては特に重要である。アニーリングステップにおいて、プライマー対の完全なセットを正しく結合することによって、複数の遺伝子座における多重増幅(例えば、容認できるPHRおよび内部遺伝子座強度信号バランスを有する、1つあるいは複数の完全なSTRプロファイル)を生成することが可能となる。特定のプライマー対に関して、アニーリング状態は、約50℃から70℃までの範囲、および、約1秒から30秒までの時間範囲にわたる可能性がある。実際の時間および温度は、酵素、プライマーおよびターゲットに依存する。ヒトゲノミックDNAを増幅するためのAB多重STRキットに関しては、15秒間で約59℃であることが好ましい。
【0079】
伸長の温度および時間は、主として対立遺伝子生成物収量に影響を与えるものであり、研究対象の酵素における固有の特性である。なお、製造者によって報告されている伸長速度は、多くの場合、一重反応に関して与えられていることに注意されたい。多重反応に関する伸長速度は、はるかに遅くなる可能性がある。特定の酵素に関しては、伸長状態は、約60℃から75℃までの範囲、および、約1秒から30秒までの時間範囲にわたる可能性がある。実際の時間および温度は、酵素、プライマー、およびターゲットに依存する。ヒトゲノミックDNAを増幅するためのAB多重STRキットに関しては、約5秒間で約72℃であることが好ましい。好ましくは、所定数のサイクルを継続することに関して、反応溶液は、第3の速度で、伸長状態から変性状態に加熱される。この第3の速度は、約1から約150℃/秒、あるいは、約1から約100℃/秒、あるいは、約1から約80℃/秒、あるいは、約1から約60℃/秒、あるいは、約1から約40℃/秒、あるいは、約1から約30℃/秒、あるいは、約1から約20℃/秒、4から約150℃/秒、あるいは、約4から約100℃/秒、あるいは、約4から約80℃/秒、あるいは、約4から約60℃/秒、あるいは、約4から約40℃/秒、あるいは、約4から約30℃/秒、あるいは、約4から約20℃/秒、あるいは、約10から約150℃/秒、あるいは、約10から約100℃/秒、あるいは、約10から約80℃/秒、あるいは、約10から約60℃/秒、あるいは、約10から約40℃/秒、あるいは、約10から約30℃/秒、あるいは、約10から約20℃/秒である。一般的に、所定数のサイクルは、約10から50回までのサイクルとなるように選択される。しかしながら、必要に応じて、より少ない(あるいはより多くの)サイクルを使用することも可能である。
【0080】
最終的な伸長時間については、不完全なNTAが増加し始めるまで、大幅に減少することが可能である。特定の酵素に関しては、最終的な伸長温度は、約60℃から75℃までの範囲にわたる可能性があり、その時間範囲は、約0秒から300秒にわたる可能性がある。実際の時間および温度は、酵素、プライマーおよびターゲットに依存する。ヒトゲノミックDNAを増幅するためのAB多重STRキットに関しては、約90秒間で約72℃であることが好ましい。
【0081】
上述した3ステップ熱サイクルアプローチに加えて、このプロセスは、さらに、2ステップ熱サイクルアプローチにも適している。このアプローチでは、反応溶液は、変性状態とアニーリング/伸長状態との間において、所定数のサイクルの間、連続的に循環される。このアプローチは、伸長温度でアニールするように設計されているプライマーを利用する。これにより、アニーリングおよび伸長ステップが、同一の温度を共有することが可能となっている。温度遷移数の減少により、サイクル時間がさらに短縮される。
【0082】
特定の実施形態では、約5から約20分間で、複数の増幅された核酸生成物を得ることが可能である。他の特定の実施形態では、約5から10分間、約1から5分間、あるいは、5分間未満で、複数の増幅された核酸生成物を得ることが可能である。約10ng未満のターゲット核酸から、増幅された核酸生成物のそれぞれを生成することが可能である。好ましくは、約5ng未満の核酸、あるいは、約2ng未満の核酸、あるいは、約1ng未満の核酸、あるいは、約0.5ng未満の核酸、あるいは、約0.2ng未満の核酸、あるいは、約0.1ng未満の核酸、あるいは、約0.05ng未満の核酸、あるいは、約0.006ng未満の核酸から、増幅された核酸生成物を生成することが可能である。
【0083】
例えば、臨床サンプルあるいは環境サンプルにおける生物兵器薬剤の特定、あるいは、ヒト、植物および動物における細菌性、ウイルス性あるいは真菌性の感染症の特定などの、他の実施形態では、増幅された核酸生成物を、ターゲット核酸における少なくとも1つのコピーから生成することが可能である。例えば、分析すべきサンプルは、多重増幅反応の前に、ターゲット核酸における1000個未満のコピー(例えば、1〜1000個のコピー)、400個未満のコピー、200個未満のコピー、100個未満のコピー、50個未満のコピー、30個未満のコピー、10個未満のコピー、1個未満のコピーを含んでいればよい。
【0084】
さらに、ターゲット核酸の遺伝子座が、ゲノムにおける1つ以上のコピー内に存在している場合には、DNAに相当する単一のゲノムに満たないものを、増幅のために利用することが可能である。
【0085】
上述した全ての方法では、ターゲット核酸における遺伝子座の十分な増幅を得るために、所定数のサイクルの間、熱サイクルを実行することが可能である(このことは、当業者によって容易に判断することが可能である)。例えば、所定数のサイクルを、約10から約50サイクルの範囲、好ましくは約20から50サイクルの範囲とすることが可能である。さらに、上述した全ての方法では、1つあるいは複数の核酸における少なくとも2つの遺伝子座を、同時に増幅することが可能である。所望される用途に応じて、4個より多くの、5から10個の、10から20個の、20から30個の、あるいは10から250個の遺伝子座が、同時に増幅される。例えば、STR遺伝子座の増幅に関しては、10から20個の遺伝子座が好ましい可能性がある。
【0086】
好ましくは、反応溶液の温度は、本発明のサーマルサイクラー(前述)によって循環される。PCR溶液の遅延反応を補償することによって、急速熱サイクルのための市販のブロック・サーマルサイクラーを利用することも可能である。この補償は、加熱ステップにおいて所望される溶液温度よりも高いブロック温度を設定すること、および、冷却ステップにおいて所望される溶液温度よりも低いブロック温度を設定すること、によってなされる。しかしながら、この動作モードは、遅いランピング反応を補償するために必要とされる温度設定点を経験的に決定する必要があるために、実施しにくい。さらに、ブロックによって、フィードバックおよび制御が引き続き実行されているため、および、溶解温度のモニタリングが実施されていないために、プロファイルの反復性(repeatability)および再現性(reproducibility)が、外部的な要因(室温の変化を含む)によって影響されてしまう可能性がある。したがって、溶液の温度プロファイルを再現することはできない。
ここに記載したアプローチを用いて、市販されている多くのポリメラーゼを、急速PCR用途に適用することも可能である。一般的に、核酸ポリメラーゼは、少なくとも100塩基/秒の伸長速度を有している。サーマス・アクアチクス(Taq)、パイロコッカス・フリオサス(Pfu)、パイロコッカス・ウォーセイ(Pwo)、サーマス・フラバス(TfI)、サーマス・サーモフィルス(Tth)、サーマス・リトリス(TIi)およびサーモトーガ・マリティム(Tma)を含む多数のポリメラーゼが、PCR増幅に関して有用である。これらの酵素、これらの酵素の改良バージョン、および、これらの酵素を組み合わせたものは、Roche、Invitrogen、Qiagen、Strategene、およびApplied Biosystemsを含むベンダーから市販されている。代表的な酵素は、PHUSION(New England Biolabs, Ipswich, MA)、Hot MasterTaq(商標)(Eppendorf)、PHUSION Mpx(Finnzymes)、PyroStart(Fermentas)、KOD(EMD Biosciences)、Z-Taq(TAKARA)、および、CS3AC/LA (KlenTaq, University City, MO)を含んでいる。STRタイピングのためのPCR増幅に関して広く使用されている酵素は、Taqポリメラーゼである。また、TaqGoldの改良型が、Identifiler(商標)、Profiler(商標)、およびCOfiler(商標)キットに同梱されている。
【0087】
完全なプロファイルの生成は必要とされていないけれども、特定の実施形態では、ここに提示されているPCR条件は、ヒトのターゲット核酸から、高い効率で、完全なSTRプロファイルを生成することが可能である。常染色体のSTRに関する完全なプロファイルは、例えば、アメロゲニン、D8S1179、D21S11、D7S820、CFS1PO、D3S1358、TH01、D13S317、D16S539、D2S1338、D19S433、vWA、TPOX、D18S51、D5S818、FGA、あるいはこれらのうちの複数、などの遺伝子座、ミニSTRおよびY−STR分析を含む他のSTR遺伝子座を有することが可能である。プロトコルにおける最適化の基準は、完全なプロファイルの生成、信号強度、ダイナミックレンジ、内部遺伝子座信号強度バランス、PHR、不完全なNTA、スタッター、およびトータルのサイクル時間を含んでいる。
【0088】
一実施形態にしたがうと、SpeedSTAR酵素および本発明のサーマルサイクラーを利用するプロトコルは、完全なSTRプロファイルを生成するために、バイオチップ反応およびチューブ反応に関するトータルのサイクル時間を、それぞれ、17.3分間および19.1分間に短縮することが可能である。このプロトコルでは、変性状態が約4秒間で約98℃であり、アニーリング状態が約15秒間で約59℃であり、伸長状態が約7秒間で約72℃であり、そして、最終状態が約90秒間で約70℃である。
【0089】
特定の実施形態では、少なくとも10回、20回あるいは30回の多重PCRサイクルに関するトータルのサイクル時間を、約1分間から約90分間までの範囲とすることが可能である。好ましくは、少なくとも10回、20回あるいは30回の多重PCRサイクルに関するトータルのサイクル時間は、約1分間から約90分間、あるいは、約1分間から約85分間、あるいは、約1分間から約80分間、あるいは、約1分間から約75分間、あるいは、約1分間から約70分間、あるいは、約1分間から約65分間、あるいは、約1分間から約60分間、あるいは、約1分間から約55分間、あるいは、約1分間から約50分間、あるいは、約1分間から約45分間、あるいは、約1分間から約40分間、あるいは、約1分間から約35分間、あるいは、約1分間から約30分間、あるいは、約1分間から約25分間、あるいは、約1分間から約20分間、あるいは、約1分間から約15分間、あるいは、約1分間から約10分間、あるいは、約1分間から約5分間の範囲にある。他の実施形態では、少なくとも10回、20回あるいは30回の多重PCRサイクルに関するトータルのサイクル時間は、約90分間未満である。好ましくは、少なくとも10回、20回あるいは30回の多重PCRサイクルに関するトータルのサイクル時間は、約89分間未満、約85分間未満、約80分間未満、約75分間未満、約70分間未満、約65分間未満、約60分間未満、約55分間未満、約50分間未満、約45分間未満、約40分間未満、約35分間未満、約30分間未満、約25分間未満、約20分間未満、約15分間未満、約10分間未満、約5分間未満、約4分間未満、約3分間未満、約2分間未満、あるいは約1分間未満である。
【0090】
本発明は、核酸サンプルにおける複数の遺伝子座の多重PCR増幅を実行するための、および、同一のバイオチップ・プラットフォームにおいて、少なくとも1つの他のサンプルの製造および/または分析方法を実行するための、1つあるいは複数のマイクロ流体システムを備えた、一体化されたバイオチップを意図している。例えば、バイオチップにおける各マイクロ流体システム内では、それぞれが、流入ポートから流出ポートに向かう流れ方向を有しており、システムが、複数の反応チャンバーを備えることが可能であり、これら複数の反応チャンバーにおける第1の反応チャンバーが、流入ポートと流体連通している一方、複数の反応チャンバーにおける最終的な反応チャンバーが、流出ポートと流体連通しており、さらに、システムが、反応チャンバーにおける連続的な対のそれぞれに対して前記流れ方向に沿って流体的に接続している、少なくとも1つのマイクロチャネルを備えることが可能である。各マイクロ流体システムにおける少なくとも1つの反応チャンバーを、バイオチップ基板の接触表面から200μm未満とすることが可能である。これにより、前記反応チャンバー内において多重PCRを実行するための、本発明のサーマルサイクラーとの熱伝導が促進される。
【0091】
バイオチップの各マイクロ流体システムにおける、残りの反応チャンバーのそれぞれについては、核酸抽出、核酸精製、核酸混成、核酸ライゲーション、PCRの前の核酸浄化、PCRの後の浄化、シークエンシングの前の浄化、シークエンシング、シークエンシングの後の浄化、分離および検出、逆転写、逆転写の前の浄化、および/または、逆転写の後の浄化、電気泳動分離、核酸検出に適応させることが可能である。ここで使用されている「浄化」という用語は、上に列挙したいずれかの反応チャンバー・プロセスを妨害する可能性のある、反応成分の除去を意味する。この反応成分には、アニオン、カチオン、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、防腐剤、酵素、あるいは阻害剤を含んでいる。
【0092】
以下に示す実施例は、本発明における特定の実施形態、および、そのさまざまな使用を例示している。これらは、説明目的のために記載されているに過ぎないのであって、本発明を限定するように理解されるべきものではない。
【0093】
実施例
実施例1
カスタムサーマルサイクラーおよびマイクロ流体バイオチップ
PCR反応溶液温度を急速に、制御可能に、かつ再現的に加熱冷却することができることによって高速サイクリングを行うために、図1Aに示すような本発明のサーマルサイクラーを使用した。この器具は、16−チャンバーのマイクロ流体バイオチップを受容し、高性能ヒートシンクに取り付けられている高出力熱電冷却器/加熱器からなる。16のPCR反応溶液のそれぞれを、クランプ機構を用いて圧縮圧力0.2MPaを印加することによってヒートポンプに結合するマイクロ流体バイオチップの個々のチャンバーに入れた。図1Bは、16−サンプルの使い捨て可能なプラスチック製マイクロ流体バイオチップの写真を示している。各PCRチャンバーは、深さが500μm、幅が約1mmであり、7μlのPCR反応溶液が入っている。
【0094】
計測および温度プロファイル
以下の実施例では、Eppendorf Mastercyler(商標)ep gradient S(Eppendorf North America,Westbury,NY)を用いて、管内のあらゆる増幅反応を行った。ブロックに直接取り付けられている直径127μmの型式Kの熱電対センサーを使用して、上記の器具のブロック温度プロファイルを得た。反応溶液プロファイルのために、直径127μmの型式Kの熱電対センサーを、薄肉のPCRチューブ内の20μLの反応溶液に載置した。100Hzの速度でデータを取得するように、Omega HH506RA Multiloggerサーモメーターセットでデータ収集を行った。
【0095】
反応器として16−サンプルのプラスチック製のバイオチップを備えた実施例1のサーマルサイクラーを使用して、バイオチップでの増幅反応を行った。バイオチップ内の検出チャンバーに熱電対を挿入することによって、マイクロ流体バイオチップ内の溶液温度をモニターした。
【0096】
PCR−反応混合物成分およびサイクリング条件
9947AゲノムDNA(Promega,Madison,WI)をテンプレートとしてthe AmpFlSTR(登録商標) Profiler Plus(登録商標)IDPCR Amplification Kit(Profiler Plus IDキット)(Applied Biosystems, Foster City, CA)で多重PCR反応を行った。増幅に使用したポリメラーゼは、Profiler Plus IDキットに供給されているAmpliTaq Gold(登録商標) DNAポリメラーゼ(TaqGold(商標))か、または他のポリメラーゼ、すなわち、SpeedSTAR HS DNA Polymerase(SpeedSTAR)(Takara BIO USA Inc., Madison, WI)、KOD Hot Start DNAポリメラーゼ(KOD)(EMD Biosciences Inc., Gibbstown, NJ)、またはPyroStart(商標)Fast PCR Master Mix(PyroStart)(Fermentas Inc., Glen Burnie, MD)のいずれかであった。ポリメラーゼ特定のバッファとデオキシヌクレオチド三リン酸とを組み合わせて、Profiler Plus IDキットからのラベル付き多重プライマーを使用して、他のポリメラーゼを用いた多重PCRを行った。Eppendorf Mastercyler(商標)ep gradient Sを使用して、0.2mLの薄肉のPCRチューブ(Eppendorf North America, Westbury, NY)であらゆるチューブPCRを行った。16−サンプルのバイオチップを使用して、あらゆるバイオチップ反応が図1Aのサーマルサイクラーで増幅した。
【0097】
以下のPCR反応混合物を調製して、サーマルサイクルに使用した。
Standard TaqGold(商標)の反応物:
Standard TaqGold(商標)多重反応物は、25μLの反応容積に、9.55μLのProfiler Plus ID反応混合物と、1ngの9947AゲノムDNAと、5μLのProfiler Plus IDプライマーセットと、2.25UのTaqGold(商標)からなるものであった。製造業者の推奨に従ってサイクリング条件(ブロック温度および時間)を選択し、最初が95℃で11分間(ホットスタート)、続いて28サイクルを94℃で1分(変性)、59℃で1分(アニーリング)、72℃で1分(伸長)、最後の伸長を60℃で45分に設定した。
【0098】
最適化されたTaqGold(商標)反応物:
高速サイクルに最適化されたTaqGold(商標)反応物について、3.82μLのProfiler Plus ID反応混合物と、1ngの9947AゲノムDNAと、2μLのProfiler Plus IDプライマーセットと、0.9UのTaqGold(商標)とを含有する、10μL反応容積で行った。95℃で11分間、28サイクルを98℃で10秒、59℃で45秒、72℃で30秒、最後の伸長を72℃で15分、で反応が循環した。
【0099】
SpeedSTARチューブ反応物:
チューブPCR用のSpeedSTAR PCR混合物成分は、以下の通りであった。2μLのProfiler Plus IDプライマーセットと、9947AゲノムDNAと、1xFast Buffer I(Takara BIO USA Inc., Madison, WI)と、200μMのデオキシヌクレオチド三リン酸と、0.315UのSpeedSTARとが、10μLの反応容積に入っていた。急速に実行するためのサイクリング条件は、以下に設定された。95℃で1分(酵素活性化)に続いて、28サイクルを98℃で4秒、59℃で15秒、72℃で5秒、最後の伸長を72℃で1分であった。
【0100】
SpeedSTARバイオチップ反応物:
バイオチップPCR用に、7μLの反応混合物が、1.4μLのProfiler Plus IDプライマーセットと、9947AゲノムDNAと、1xFast Buffer Iと、200μMのデオキシヌクレオチド三リン酸と、0.42UのSpeedSTARを含有していた。サイクリングパラメーターを、95℃で70秒、28サイクルが98℃で4秒、59℃で15秒、72℃で7秒、最後の伸長を70℃で1:30分に設定した。
【0101】
KOD反応物:
10μLの反応容積に入っている、2μLのProfiler Plus IDプライマーセットと、1xKODバッファ(EMD Biosciences Inc., Gibbstown, NJ)と、200μMのデオキシヌクレオチド三リン酸と、1ngの9947AゲノムDNAと、1.5mMの硫酸マグネシウム(MgSO)と、0.2UのKODとで、KODでの増幅を行った。サイクリング条件は、以下の通りであった。95℃で2分に続いて、28サイクルを98℃で4秒、59℃で30秒、72℃で10秒、最後の伸長に72℃で1分であった。
【0102】
PyroStart反応物:
1つの終濃度におけるPyroStartでの反応混合物はまた、10μLの反応物に2μLのProfiler Plus IDプライマーセットと、1ngの9947AゲノムDNAとを含有したものであり、以下で循環した。95℃で1分、28サイクルを98℃で4秒、59℃で20秒、72℃で30秒に続いて、最後の伸長を72℃で1分行った。
【0103】
他のSTRタイピングキットでの多重PCR:
他のSTRタイピングキット(AmpFlSTR(登録商標)Identifiler(登録商標)(Identifiler)(AmpFlSTR(登録商標)Cofiler(登録商標)PCR Amplification Kit(COfiler)(Applied Biosystems))を用いた、完全なSTRプロファイルを生成するためのSpeedSTARの適合性を、上述のようなProfiler Plus IDキットでのSpeedSTAR用の反応条件で、チューブおよびバイオチップ内で検査した。これらの反応物では、Profiler Plus IDプライマーセットを、それぞれのキットからプライマーセットに置き換えた。
【0104】
再現性
チューブおよびバイオチップの再現性の研究を、テンプレートとして1ngの9947AゲノムDNAを使用して、TaqGold(商標)およびSpeedSTARを用いて行った。チューブの再現性として、5つの個々の反応物を調製した。それぞれ8つの反応物を備えた3つのバイオチップPCRを行い、バイオチップ再現性を測定した。
【0105】
感応性
チューブおよびバイオチップにおけるSpeedSTAR増幅の感応性の研究を、以下の量の9947AテンプレートDNAを使用して行った。チューブ内:4ng、2ng、1.5ng、1ng、0.5ng、0.25ng、0.125ng、0.1ng、0.05ng、0.03ng、0.02ng、0.01ng、0.006ng;バイオチップ内:4ng、2ng、1.5ng、1ng、0.5ng、0.25ng、0.1ng、0.05ng、0.025ng、0.02ng、0.015ng、0.01ng、0.006ng。各テンプレートレベルでの反応を、2回行った。
【0106】
STRの分離検出の計測
Network Biosystem Genebench-FX(商標)Series100を使用して、増幅産物を分離し、検出した(PyzowskiおよびTan, Advances in Biochip-Based Analysis:A Rapid Field-Based Approach 59th Annual Meeting of the American Academy of Forensic Sciences San Antonio, TX, February 19-24, 2007)。この器具は、特にSTR分析法のために開発し、最適化された。各増幅産物が2.7μLになるまで、10.2μLのHi-Di(商標)ホルムアミドおよび0.1μLのGenescan 500 LIZ internal lane standard(両方ともApplied Biosystems, Foster City, CA)を添加した。3分間95℃で変性させ、氷上でスナップ冷却(snap cooling)した後、サンプルを分離チップに装填し、90秒間350V/cmの電界を印加することによって、分離チャネルに電気泳動的に移動させた。これに続いて、分離チャネルに沿って150V/cmの電界を加え、DNA断片を分離した。すべての分離を、50℃で行った。
【0107】
データ分析
GeneMarker(登録商標)HID STR Human Identification Software, Version 1.51(SoftGenetics LLC, State College, PA)を用いて、データを分析した。信号強度をinternal lane standardに標準化して、スタッターと不完全なNTAならびにPHRとの百分率を測定した。遺伝子座の小さな信号強度の対立遺伝子をより大きな信号強度の対立遺伝子で割ることによって、PHRを算出する。テンプレート断片の信号強度(−A)をアデニル化された断片の信号強度(+A)で割ることによって、不完全なNTAのレベルを算出する。
【0108】
実施例2
サーマルサイクル器具と従来のPCRチューブおよびマイクロ流体バイオチップの反応溶液との温度プロファイル
商業的なサーマルサイクラーを使用して薄肉のPCRチューブで、かつ実施例1のサーマルサイクラーを使用してマイクロ流体バイオチップで、増幅反応を行った。チューブ反応に、Eppendorf Mastercyler(商標)を利用した。図2Aは、従来のSTRサイクリングプロトコルを使用した、チューブ内での28サーマルサイクルのうちの1つのブロックおよび反応溶液の温度を示している。The Mastercycler(商標)加熱冷却システムは、チューブを挿入するための一体化したブロックを備えたヒートポンプに基づいている。時間および温度の設定値は、変性に98℃で1分、アニーリングに59℃で1分、および伸長に72℃で1分である。熱ブロックと反応溶液との温度プロファイルを比較すると、ブロック温度に対して溶液温度の反応の遅延が示されている。ブロックの測定加熱冷却速度は、5.6℃/秒および4.9℃/秒であり、溶液の測定加熱冷却速度は、4.8℃/秒および3.3℃/秒である。ブロックは伸長(72℃)から変性(98℃)まで14秒で温度が遷移するが、溶液は、39秒間設定値の温度に到達しない。ブロックおよび溶液ではそれぞれ、変性とアニーリング(59℃)のステップ間の遷移に、10秒および27秒かかり、アニーリングと伸長のステップ間では7秒および24秒かかる。
【0109】
高速サイクリング条件下での28のサーマルサイクルのうちの1つのためのEppendorf Mastercyler(商標)のブロックおよび反応溶液の温度プロファイルを、図2Bに示す。時間および温度の設定値は、変性に98℃で5秒、アニーリングに59℃で15秒、および伸長に72℃で5秒である。しかし、遅延して抑制された溶液の反応によって、溶液が所望の設定値の温度に到達しない。
【0110】
また、高速サイクル条件を使用した本発明のサーマルサイクラーの28のサーマルサイクルのうちの1つに対するヒートポンプおよび反応溶液の温度プロファイルも測定した(図3)。反応溶液温度の測定に、バイオチップ内の検出チャンバーを使用した。時間および温度の設定値は、変性に95℃で4秒、アニーリングに59℃で15秒、および伸長に72℃で7秒である。ヒートポンプの測定加熱冷却速度は、21.5℃/秒および21.7℃/秒であり、反応溶液の測定加熱冷却速度は、14.8℃/秒および15.4℃/秒である。
【0111】
したがって、本発明のサーマルサイクラーは、商業的なブロックベースのサイクラーよりも3から5倍の速度で反応溶液を急速に加熱冷却することができる。ヒートポンプでの伸長、変性、およびアニーリングのステップ間の遷移時間は、1.7秒、2.1秒、および0.7秒であり、溶液では2.7秒、4.5秒および2.2秒である。本発明のサーマルサイクラーによって、反応溶液がブロックベースのサイクラーよりも約7倍急速に必要な温度に到達することができ、結果として、高速サイクリング条件下で所定の制御された培養温度および時間になる。
【0112】
実施例3
チューブのPCR酵素の測定
多数のポリメラーゼを、高速多重STR分析法を潜在的に使用して測定し、部分的にホットスタート活性化時間および伸長速度に基づいて、候補物質を選択した。TaqGold(商標)の推奨条件と比較して実験的評価として選択した4つのポリメラーゼの報告された特性を、表1(A)に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
測定した酵素は、約15〜200ヌクレオチド/秒に変化すると報告された伸長速度を有する。一般に、報告された伸長速度は、1重増幅に基づいており、多重の用途としてはいくぶん小さくてもよい。
【0115】
最少の時間量で完全なSTRプロファイルを得ることを目的として、チューブのPCR条件をこれらの4つの酵素のために最初に調査した。すべての反応で、Profiler Plus IDキットからのプライマー対と供給業者が推奨するバッファおよび酵素濃度を使用することによって、1ngのヒトゲノムDNAが増幅し、結果として生じるプロファイルを、Genebench-FX(商標)Series 100を使用して分離し、検出し、大きさを決定し、数量化した。変性、アニーリング、および伸長のステップのさまざまな時間および温度を測定して、SpeedSTARで19.13分からTaqGold(商標)で71.7分まで変化するSTR翻訳に適した信号強度とともに、PCR増幅のための総使用時間を示した[表1(B)]。本発明の方法の条件によって、TaqGold(商標)で推奨された条件よりも2〜10倍増幅を急速に行うことが可能となる。
【0116】
法医学に関連した性能のための酵素のさらなる測定には、信号強度と、スタッターおよび不完全なNTAおよびPHRのレベルが含まれている[表1(B)]。すべての酵素は、Profiler Plus IDプライマーを使用して、高度な多重増幅を行うことができる。SpeedSTAR、Pyrostart、KODおよび最適化されたTaqGold(商標)反応のための信号強度はすべて、標準TaqGold(商標)のPCR条件を使用して生成されるものとほぼ同じであるか、あるいは高くなっている。
不完全なNTAに関して、SpeedSTARおよびPyroStartの両方、ならびに最適化されたTaqGold(商標)反応が、標準TaqGold(商標)反応よりも最大で3倍高いレベルを示した。ほとんどの対立遺伝子で、レベルが15%の翻訳許容限界以下になった。後述するように、高レベルの不完全なNTAを有するこれらの対立遺伝子を、15%の翻訳許容限界以下に減少させることができる。KODポリメラーゼは、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を備えており、A-overhangを備えた断片を生成しない。したがって、すべての対立遺伝子はこれらの対立遺伝子ラダー対応物(allelic ladder counterpart)よりも1ヌクレオチドだけ短かった。
【0117】
最適化されたTaqGold(商標)、SpeedSTARおよびPyroStart反応で観察されるスタッターの相対レベルは、標準のTaqGold(商標)反応によって生成されるスタッターの範囲と類似している。すなわち、KODによって生成されるスタッターの範囲は、標準TaqGold(商標)のスタッターよりもわずかに高い。
【0118】
実施例4a
チューブおよびバイオチップのSpeedSTARポリメラーゼを使用した高速PCRプロトコル
上記の結果に基づいて、全サイクル時間を最小限に抑えて、信号強度、PHR、不完全なNTA、およびスタッターの翻訳要件を満たす全STRプロファイルを達成することを目的として、SpeedSTARポリメラーゼをさらにバイオチップの測定のために選択した。
【0119】
本発明のサーマルサイクラーのマイクロ流体の16−サンプルのバイオチップでSpeedSTARを使用した、増幅のための時間および温度の設定値は、ホットスタート活性化に95℃で70秒、続いて28サイクルでは、変性に95℃で4秒、アニーリングに59℃で15秒、伸長に72℃で7秒である。17.3分の全プロトコル時間の間に、72℃で90秒の最後の伸長を行う。Eppendorf Mastercyclerのチューブ反応を、19.13分行い、これは、95℃で1分、28サイクルに98℃で4秒、59℃で15秒、および72℃で5秒に続いて、最後の伸長を72℃で1分の初期活性化時間に設定されたブロック時間および温度を含むものであった。
【0120】
図4Aおよび図4Bは、0.5ngのDNAを使用して、7μLのバイオチップ(図4A)および10μLのチューブ反応(図4B)で、上記のSpeedSTARサイクリング条件によって生成されるSTRプロファイルを示し、表2は、標準プロトコルを使用して、SpeedSTARバイオチップおよびチューブの反応ならびにチューブのTaqGold(商標)からのすべてのProfiler Plus ID対立遺伝子の信号強度を示している。0.5ngのSpeedSTARバイオチップの反応の信号強度は、1ngの標準TaqGold(商標)の反応の場合よりも平均して約2倍高いのに対して、0.5ngのSpeedSTARチューブの反応の信号強度は、TaqGold(商標)の反応の場合と平均するとほぼ同じである。
【0121】
【表2】

【0122】
実施例4b
チューブおよびバイオチップのSpeedSTARポリメラーゼを使用した、高速PCRの対立遺伝子性質決定
実施例4aから高速PCR反応の生成物を性質決定するために、PHR、不完全なNTAおよびスタッターの数量化を行った。SpeedSTARポリメラーゼを使用したバイオチップおよびチューブ反応は、TaqGold(商標)の反応と比較して、遺伝子座間のピーク高さの不均衡が大きい。バイオチップ反応で生成される対立遺伝子のPHRは、0.70〜0.95であり、チューブでもほぼ同じである。すなわち、すべて許容の翻訳ガイドライン内にある。SpeedSTARを使用した反応は、標準TaqGold(商標)反応で測定されたものよりもPHRが約10%小さい。同様に、SpeedSTARを使用したバイオチップおよびチューブの両方の反応におけるほとんどの対立遺伝子の不完全なNTAのレベルは、ほぼ同じ(2.0および10.6%)である。すなわち、両方とも、TaqGold(商標)制御反応よりもほぼ2倍大きい。例外は、D3S1358対立遺伝子の不完全なNTAであり、これは、TaqGold(商標)を用いるよりもSpeedSTARを用いると4.8から7倍大きい。すなわち、この場合でさえも、不完全なNTAのレベルは、SpeedSTAR酵素で12%以下である。最後に、SpeedSTARを使用したバイオチップおよびチューブの両方に基づく反応のスタッターのレベルは、約6.0〜14.1%であり、標準TaqGold(商標)のチューブ反応のレベルよりも平均して約1.6倍大きい。
【0123】
0.5ngのテンプレートDNAを使用したマイクロ流体バイオチップ反応は、1ngのテンプレートを使用した標準TaqGold(商標)反応のものよりも約2倍大きな信号強度を生成する。この結果が示唆するのは、バイオチップのSpeedSTAR酵素および従来の反応のTaqGold(商標)酵素が、同じ効率で作用するということである。すなわち、バイオチップのDNA濃度は、チューブの約1.8倍であり、このことは信号強度が2倍大きいことに対応している。対照的に、チューブベースの高速反応は、制御TaqGold(商標)反応よりも効率的でない。すなわち、生成物収量が約40%減少したことは、おそらく不十分なサイクリングプロファイルの結果であり、このことは、商業的なサーマルサイクラーが高速サーマルサイクルで使用された場合に生じる。この環境にあっても、信号強度は、翻訳に必要なレベルを十分に超えており、1サイクルあたり数秒だけ伸長時間を延長させることによって有意に増加することができる(データは示さず)。バイオチップおよびチューブの高速PCR反応の信号強度の反復性および再現性は、従来の反応のものと類似している。
【0124】
高速バイオチップおよびチューブの反応のための遺伝子座間の対立遺伝子の信号強度は、TaqGold(商標)反応と比較して、高い不均衡レベルを示している。遺伝子座間の信号強度のバランスは、プライマー濃度、アニール温度および時間、ならびに遺伝子座の分子量を含む多数の因子によって影響される。これらの実験に使用するSTR増幅キットは、TaqGold(商標)酵素および推奨されたサイクルプロトコルのために最適化された1組のプライマー濃度を有する。増幅反応で利用するプライマー濃度を調整することによって、遺伝子座の信号強度を変更することができる(Henegariuら, Biotechniques 1997, 23, 504-11)。
【0125】
バイオチップおよびチューブの高速反応の信号強度とテンプレートレベルとの関係は、予期した通り、信号強度が一般にテンプレートで増加する。良好なピークモフォロジは、すべての対立遺伝子で4ngの高テンプレートレベルで観察される(これは、12000RFUを超える信号強度を備えた対立遺伝子を生成する)。0.03ng以下のテンプレートレベルで、一部の対立遺伝子の欠落が生じる。増幅反応が溶液中の限定数のテンプレートDNA鎖で行われ、確率的増幅につながる場合に、この効果が観察される(Walshら, PCR Methods Appl. 1992, 1, 241-250)。0.006ngのテンプレートレベルで大きな信号強度の対立遺伝子および小さな信号強度の対立遺伝子の両方を直ちに検出可能な信号があると、Genebench-FX(商標)Series 100の分離および検出で結合されるバイオチップおよびチューブの高速反応の高感度を示し、低コピー数の分析法へのこのシステムの有用性を示す。まとめると、このデータはまた、高速PCR方法および本発明のサーマルサイクラー、ならびにGenebench計測が、高いテンプレートのダイナミックレンジを有することを示唆している。
【0126】
実施例4c
高速PCR反応におけるDNAテンプレートレベルおよび対立遺伝子の特徴
バイオチップ(図5A)およびチューブ(図5B)の反応でSpeedSTARポリメラーゼを使用した高速PCR反応の信号強度に関するテンプレートDNAの効果を、図5Aおよび図5Bに示す。分析法のために選択した対立遺伝子は、アメロゲニンであり、対立遺伝子は、STRプロファイルおよびFGA23および24、ならびD7S820 10および11の最大の信号レベルを備えており、対立遺伝子はそのプロファイルの最小の信号レベルを備えていた。SpeedSTARバイオチップおよびチューブの両方の反応において、DNAテンプレートレベルが0.006ngから4ngまで増加するにつれて、すべての対立遺伝子の信号強度が増加している。テンプレートレベル0.006ngでは、バイオチップの111RFUおよびチューブ反応の58RFUのアメロゲニンピークでの信号強度を観察した。テンプレートレベル4ngでは、信号強度12680RFUがバイオチップで、5570RFUがチューブの反応で見られた。両方の反応型で観察されたすべての対立遺伝子は、良好なピークモフォロジを示していた。
【0127】
高速バイオチップ反応(図6A)では、PHRは、0.6〜1.0であり、テンプレートレベルとしては0.05ngから4.0ngまで変化している。0.05ng以下のテンプレートレベルでは、対立遺伝子の欠落の例が生じ、0のPHRが観察される場合に、PHRは0.025ngまで減少している。同様の結果は、これらが概してバイオチップ反応(図6B)よりもいくぶん小さいPHRを呈しているが、高速チューブの反応に観察される。バイオチップ反応では、不完全なNTAのレベルは、2.0ng以下のテンプレートレベルとして15%以下である。チューブ反応では、不完全なNTAのレベルは、テンプレートレベル1ngで15%を上回り、劇的に4ng増加している。
【0128】
バイオチップとチューブとの反応間の2つの主要な差異は、反応溶液の温度プロファイルとテンプレートおよびポリメラーゼの相対濃度である。不完全なNTAのレベルは、より多くのポリメラーゼが利用可能となるにつれて減少する。バイオチップ反応で、実験データが示すのは、0.5ngから4.0ngのDNAテンプレートの範囲を超えると、SpeedSTARポリメラーゼ量が0.3Uから1.2Uまで増加するにつれて、不完全なNTAのレベルが約50%減少する(図7Aおよび図7B)ことである。バイオチップおよびチューブの高速反応のスタッターのレベルは、比較的一定で、0.25ngから4.0ngのテンプレートレベルの範囲を超えると、概してすべての対立遺伝子で15%少なかった(図8Aおよび図8B)。
【0129】
反応そのものが法医学の翻訳ガイドラインを満たす訴訟対象となるデータを生成する場合、STR増幅反応速度は関連するだけである。FBIは、STR翻訳用に使用する一般的なガイドラインを有し、個々の研究所は、プロファイルが確認作業に基づいて許容できるとみなされ得る前に満たすべき限界値を設定している(Holtら, J. Forensic Sci. 2002, 47(1), p.66-96;LaFountainら, J. Forensic Sci., 2001, 46(5), 1191-8)。
【0130】
本願明細書において示されている条件は、これらのガイドラインを満たす高速STRプロファイルを生成することができる。バイオチップおよびチューブの反応における0.5ngのテンプレートのPHRは、0.6以上のレベルが必要であると述べており、前に報告された結果と合致した翻訳ガイドラインを満たしている(Leclairら, J. Forensic Sci. 2004, 49, 968-80)。多量のDNAテンプレートでは、PHRは比較的一定のままであるが、1ngのTaqGold(商標)反応のものよりも少ない。低コピー数では、このPHRは、増幅によって確率的変動に起因して支配される。
【0131】
不完全なNTAのレベルは、すべてのSTR増幅産物を完全にアデニル化するポリメラーゼの能力に基づく。従来の増幅では、「ピグテール」をプライマーに取り付けて、最後の伸長時間を延長させることによって、これを達成する。本願明細書において記載されている0.5ngのバイオチップおよびチューブの反応の不完全なNTAのレベルは、翻訳ガイドライン内にある。
【0132】
不完全なNTAのレベルは、DNAテンプレートの増加と共に増加し(ポリメラーゼに対するDNAの比率が増加した結果)、ポリメラーゼ量、1サイクルあたりの伸長時間、および最後の伸長時間を増加させることによって、減少させることができる。後者の2つの方法は、これらが反応時間を増加させるために、高速多重増幅に十分に適していない。ポリメラーゼ濃度を増加させることは効果的であり、高速PCRと互換性を持つ。スタッターは、伸長中のDNA鎖のずれの結果である(Walshら, Nucleic Acids Res. 1996, 24(14), 2807-12)。本明細書において記載されている0.5ngのバイオチップおよびチューブの反応のスタッターのレベルは、翻訳ガイドライン内にあり、前に挙げた報告とも合致している。予想通り、スタッターのレベルは、DNAテンプレートレベルとは関係ないようである。
【0133】
実施例4d
反復性および再現性の研究
SpeedSTARポリメラーゼを使用した高速のバイオチップ(表3A)およびチューブ(表3B)の反応の反復性および再現性を、3つのPCRバイオチップで24の同じPCR反応を行い、5つの同じチューブ反応を行うことによって算出した。バイオチップ反応では、信号強度の信頼値(CV)が17から24%まで変化し、チューブ反応では15から34%まで変化する。標準TaqGold(商標)反応でのCVは、6%〜21%である。
【0134】
【表3】

【0135】
標準TaqGold(商標)反応で観察される5%から10%の範囲と比較して、PHRのCVは、バイオチップで最大で14%であり、チューブ反応では21%である。バイオチップ反応における不完全なNTAのCVは6%〜28%であり、チューブ反応では2〜13%である。やはり、これらの変化は、標準TaqGold(商標)の反応で観察される4から28%の範囲と類似している。バイオチップでのスタッターのCVは、4から9%であり、チューブでは2から6%であり、標準TaqGold(商標)反応で観察される4〜13%の範囲とも類似している。
【0136】
実施例4e
他の市販のSTRキットとの適合性
上述と同一の高速バイオチップおよびチューブの条件を使用して、プライマーセットを使用した一連のサンプルをCOfiler(商標)およびIdentifiler(商標)キットから算出した。図9Aおよび図9Bは、本願明細書において記載されている本発明のサーマルサイクラー、SpeedSTAR酵素、およびプロトコルを使用したこれらのプライマーセットを使用した、全プロファイルの達成を示している。それぞれは、これらの市販のキットに同様に適している。全プロファイルが達成されたにもかかわらず、遺伝子座にわたる信号強度の不均衡を観察した。
【0137】
実施例5
サーマルサイクラーを用いた高速シークエンシング
サーマルサイクル器具および方法論は、高速DNAシークエンシング反応に適用可能である。高速サーマルサイクラーをこのように実現するには、計測およびバイオチップは、PCRに使用したものと同一である。シークエンシングに、異なる反応溶液、ポリメラーゼ、およびサイクリング温度を適用する。現在市販のシークエンシング反応には、49分(GE Amersham DYEnamic(商標)ET Terminato Cycle Sequencingキットで)、および2.25時間(AB Big Dye V3.1で)かかる。従来の試薬とともにNetBioサーマルサイクラーを利用することによって、シークエンシング反応時間を21分まで短縮することができた。
【0138】
本願明細書において開示されるサーモサイクラーおよび16レーンを含むバイオチップを使用して、高速シークエンシングを達成している。チップ内の最終反応容積は、7μLであった。半分の強度のシークエンシング反応を、製造業者のプロトコルに従って、GE HealthcareのDYEnamic(商標)ET Terminator Cycle Sequencingキットによって設定した。したがって、7μLの最終容積を収容するために、すべての容積を縮小した。反応用テンプレートは、343bpの断片サイズを有する0.1pmolの枯草菌(B. subtilus)であった。
【0139】
(95℃で20秒、50℃で15秒、および60℃で60秒)の30サイクル(全サイクル時間が51.7分となる)からなる第1のプロトコルと、95℃で5秒、50℃で15秒、および60℃で30秒の30サイクル(全サイクル時間は29分となる)からなる第2のプロトコルと、95℃で5秒、50℃で10秒、および60℃で20秒の30サイクル(全サイクル時間は21.6分となる)からなる第3のプロトコルとによって、3つのサイクリングプロトコルを証明した。各シークエンシング反応を、析出したエタノールで浄化し、Genebench FX Series 100に分離した。3つのサイクリングプロトコルのための343bpのPCR生成物を配列決定する平均的PHREDスコアは、それぞれ、282、287、および279であった。すなわち、チップにおいて22分未満で、343bpの生成物の配列決定を証明することができる。図10は、高速DNAシークエンシングプロトコルのDNA配列を示している。
【0140】
総じて、本願明細書において記載されているシステム及び方法を利用した、バイオチップベースの1つ以上の核酸の多重増幅には、薄肉チューブでの反応実行に関して非常に短い全反応時間で増幅された核酸生成物を提供し、現在商業化されているサーマルサイクルユニットを利用するという利点がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルサイクラーにおいて、
温度制御素子(TCE)を備えており、
前記TCEにおける第1の表面が、溶液を保持しているサンプルチャンバー、および、サーモセンサーを保持している検知チャンバーを受容するように構成されており、
前記サーモセンサーが、所望される温度に溶液を設定あるいは維持するために、前記TCEにフィードバックを与えている、サーマルサイクラー。
【請求項2】
サーマルサイクラーにおいて、
温度制御素子(TCE)を備えており、
前記TCEにおける第1の表面が、溶液を保持しているサンプルチャンバー、および、第1のサーモセンサーを保持している検知チャンバーを受容するように構成されており、
前記サーモセンサーが、所望される温度に溶液を設定あるいは維持するために、前記TCEにフィードバックを与えており、
第1の表面が、さらに、前記TCEにおける前記第1の表面の温度をモニターするために配置された、第2のサーモセンサーを備えている、サーマルサイクラー。
【請求項3】
サーマルサイクラーにおいて、
温度制御素子(TCE)を備えており、前記TCEにおける第1の表面が、サンプルチャンバーを受容するように構成されており、前記チャンバーが、溶液およびサーモセンサーを保持しており、前記サーモセンサーが、所望される温度に溶液を設定あるいは維持するために、前記TCEにフィードバックを与えている、サーマルサイクラー。
【請求項4】
前記TCEにおける第1の表面上に配置されたチップ圧縮素子(CCE)をさらに備えており、これにより、CCEとTCEとの間における基板の挿入を可能とし、このCCEが、TCEと基板との間の熱伝導を与えている、請求項1、2あるいは3に記載のサーマルサイクラー。
【請求項5】
前記CCEが、低熱質量の絶縁性物質を含んでいる、請求項4に記載のサーマルサイクラー。
【請求項6】
前記CCEがフォームパッドを含んでいる、請求項4に記載のサーマルサイクラー。
【請求項7】
前記CCEが、1つあるいは複数のクリップを含んでいる、請求項4に記載のサーマルサイクラー。
【請求項8】
前記CCEが気胞を含んでいる、請求項4に記載のサーマルサイクラー。
【請求項9】
前記TCEにおける第1の表面が、薄肉チューブを受容するように構成されている、請求項1あるいは2あるいは3に記載のサーマルサイクラー。
【請求項10】
1秒ごとに約4〜150℃の、前記TCEにおける第1の表面での加熱および冷却速度を有している、請求項1あるいは2あるいは3に記載のサーマルサイクラー。
【請求項11】
ヒートシンクをさらに備えており、このヒートシンクが、このヒートシンクの温度を制御するための可変速度冷却ファンを有している、請求項1あるいは2あるいは3に記載のサーマルサイクラー。
【請求項12】
前記ヒートシンクが、このヒートシンクの温度を制御するための第2のサーモサイクラーをさらに備えている、請求項11に記載のサーマルサイクラー。
【請求項13】
前記TCEにおける第1の表面と熱伝導している基板内のサンプルの場所で、+/−1.0℃の温度安定性を有している、請求項1あるいは2あるいは3に記載のサーマルサイクラー。
【請求項14】
前記TCEが、高い加熱および冷却容量を有するヒートポンプ、あるいは、高い出力のペルチェデバイスを備えている、請求項1あるいは2あるいは3に記載のサーマルサイクラー。
【請求項15】
前記ヒートシンクが、冷却ファンを有する銅ベースのファン冷却式ヒートシンクである、請求項11に記載のサーマルサイクラー。
【請求項16】
前記ヒートシンクが、およそ0.4℃/W以下の熱抵抗を有している、請求項15に記載のサーマルサイクラー。
【請求項17】
システムにおいて、
1つあるいは複数の反応チャンバーを有するバイオチップを備えており、
各反応チャンバーが、マイクロ流体の流入チャネルおよびマイクロ流体の流出チャネルを有しており、各反応チャンバーが、バイオチップ基板の接触表面から200μm未満となっており、
さらに、温度制御素子(TCE)を有するサーマルサイクラーを備えており、
前記TCEにおける第1の表面が、溶液を保持しているサンプルチャンバー、および、サーモセンサーを保持している検知チャンバーを受容するように構成されており、前記サーモセンサーが、所望される温度に溶液を設定あるいは維持するために、前記TCEにフィードバックを与えており、
前記バイオチップ基板の接触表面と熱伝導しているシステム。
【請求項18】
システムにおいて、
1つあるいは複数の反応チャンバーを有するバイオチップを備えており、
各反応チャンバーが、マイクロ流体の流入チャネルおよびマイクロ流体の流出チャネルを有しており、各反応チャンバーが、バイオチップ基板の接触表面から100μm未満となっており、
さらに、温度制御素子(TCE)を有するサーマルサイクラーを備えており、
前記TCEにおける第1の表面が、溶液を保持しているサンプルチャンバー、および、サーモセンサーを保持している検知チャンバーを受容するように構成されており、前記サーモセンサーが、所望される温度に溶液を設定あるいは維持するために、前記TCEにフィードバックを与えており、
さらに、前記サーマルサイクラーが、前記TCEにおける第1の表面の温度をモニターするために配置された、第2のサーモセンサーを有しており、
前記バイオチップ基板の接触表面と熱伝導しているシステム。
【請求項19】
前記マイクロ流体の流入チャネル、前記マイクロ流体の流出チャネル、あるいはこれらの双方が、ビアを有している、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項20】
前記サーマルサイクラーが、前記TCEにおける第1の表面上に配置されたチップ圧縮素子(CCE)をさらに備えており、これにより、CCEとTCEとの間における基板の挿入を可能とし、このCCEが、TCEと基板との間の熱伝導を与えている、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項21】
前記チップ圧縮素子が、低熱質量の絶縁性物質を含んでいる、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記CCEがフォームパッドを含んでいる、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記CCEが、1つあるいは複数のクリップを含んでいる、請求項20に記載のシステム。
【請求項24】
前記CCEが気胞を含んでいる、請求項20に記載のシステム。
【請求項25】
前記バイオチップ基板の接触表面を、前記TCEにおける第1の表面と熱的に接触するように保持するために、前記CCEが、約5から約50psiの圧力を与えている、請求項20に記載のシステム。
【請求項26】
前記反応チャンバーが、ポリマー、シランコーティングあるいはBSAによって被覆されていない、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項27】
熱的結合溶液のないときでも、前記バイオチップ基板の接触表面と前記TCEにおける第1の表面との間の熱伝導が与えられている、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項28】
1秒ごとに約4〜150℃の、前記TCEにおける第1の表面での加熱および冷却速度を有している、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項29】
前記サーマルサイクラーが、前記反応チャンバー内での加熱および冷却速度を1秒ごとに約4〜150℃とする能力を有している、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項30】
冷却ファンを有する銅ベースのファン冷却式ヒートシンクをさらに備えている、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項31】
およそ0.4℃/W以下の熱抵抗を有するヒートシンクをさらに備えている、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項32】
ヒートシンクをさらに備えており、このヒートシンクが、このヒートシンクの温度を制御するための可変速度冷却ファンを有している、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項33】
ヒートシンクをさらに備えており、このヒートシンクが、このヒートシンクの温度を制御するための第2の加熱素子をさらに有している、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項34】
前記サーマルサイクラーが、バイオチップ内のサンプルの場所における温度安定性を、+/−1.0℃とする能力を有している、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項35】
前記TCEが、高い加熱および冷却容量を有するヒートポンプ、あるいは、高い出力のペルチェデバイスを備えている、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項36】
前記バイオチップ基板が、有機物質、無機物質、結晶物質、あるいはアモルファス物質から構成されている、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項37】
前記バイオチップ基板がプラスチック物質を含んでいる、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記バイオチップ基板が、環状オレフィン・コポリマー(COC)を含んでいる、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記バイオチップ基板が、8〜128個のマイクロ流体システムを備えている、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項40】
各反応チャンバーが、約100μL未満の容積を有している、請求項17あるいは18に記載のシステム。
【請求項41】
核酸溶液における複数の遺伝子座を同時に増幅するための方法において、
1つあるいは複数の反応チャンバーを設けるステップを含んでおり、
各反応チャンバーが、
(i)増幅されるべき少なくとも1つのターゲット核酸における少なくとも1つのコピーを含んだ核酸溶液、
(ii)1つあるいは複数のバッファ、
(iii)1つあるいは複数の塩、
(iv)増幅されるべき複数の遺伝子座のそれぞれに対応するプライマーのセット、
(v)核酸 ポリメラーゼ、および、
(vi)ヌクレオチド、を有している方法であって、
各反応チャンバー内の核酸溶液の温度を、変性状態、アニーリング状態および伸長状態の間で、所定のサイクル数にわたって、約4〜150℃/秒の加熱および冷却速度で、連続的に熱的に循環させ、これにより、約97分間以内に、各反応チャンバーに複数の増幅された遺伝子座を生成するステップを含んでいる方法。
【請求項42】
1つあるいは複数の増幅された核酸生成物を与えるために、1つあるいは複数の反応溶液を最終状態に維持するステップを含んでいる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
核酸溶液における複数の遺伝子座を同時に増幅するための方法において、
1つあるいは複数の反応チャンバーを設けるステップを含んでおり、
各反応チャンバーが、
(i)増幅されるべき少なくとも1つのターゲット核酸における少なくとも1つのコピーを含んだ核酸溶液、
(ii)1つあるいは複数のバッファ、
(iii)1つあるいは複数の塩、
(iv)増幅されるべき複数の遺伝子座のそれぞれに対応するプライマーのセット、
(v)核酸 ポリメラーゼ、および、
(vi)ヌクレオチド、を有している方法であって、
各反応チャンバー内の核酸溶液の温度を、所定のサイクル数にわたって、約4〜150℃/秒の加熱および冷却速度で、連続的に熱的に循環させ、これにより、約97分間以内に、各反応チャンバーに複数の増幅された遺伝子座を生成するステップを含んでいる方法。
【請求項44】
核酸溶液における5つ以上の遺伝子座を同時に増幅するための方法において、
1つあるいは複数の反応チャンバーを設けるステップを含んでおり、
各反応チャンバーが、
(i)増幅されるべき少なくとも1つのターゲット核酸における少なくとも1つのコピーを含んだ核酸溶液、
(ii)1つあるいは複数のバッファ、
(iii)1つあるいは複数の塩、
(iv)増幅されるべき5つ以上の遺伝子座に対応するプライマーのセット、
(v)核酸 ポリメラーゼ、および、
(vi)ヌクレオチド、を有している方法であって、
各反応チャンバー内の核酸溶液の温度を、変性状態、アニーリング状態および伸長状態の間で、所定のサイクル数にわたって、約4〜150℃/秒の加熱および冷却速度で、連続的に熱的に循環させ、これにより、各反応チャンバーに5つ以上の増幅された遺伝子座を生成するステップを含んでいる方法。
【請求項45】
前記核酸溶液がバイオチップ内にある、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記核酸溶液が薄肉チューブ内にある、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記5つ以上の増幅された遺伝子座が、約97分間未満で生成される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記増幅された遺伝子座が、約45分間未満で生成される、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記連続的な熱サイクルに先行して、
1つあるいは複数の反応溶液を、核酸ポリメラーゼのホットスタート活性化に適した第1の温度にまで加熱するステップと、
前記1つあるいは複数の反応溶液を、核酸ポリメラーゼのホットスタート活性化に適した第1の期間、前記第1の温度に維持するステップと、
をさらに含んでいる、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の期間が約90秒未満である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第1の温度が約90℃から約99℃である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記熱サイクルが、請求項1に記載のサーマルサイクラーによって与えられる、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記核酸ポリメラーゼが、少なくとも100bp/secの伸長速度を有している、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
各反応チャンバーが、約100μL未満の容積を有している、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
各反応チャンバーが、約200μm未満の距離だけサーマルサイクラーから離れている、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
各核酸溶液が、ターゲット核酸における約1から約1000個のコピーを含んでいる、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記核酸ポリメラーゼが、SpeedSTAR、PHUSION、Hot MasterTaq(商標)、PHUSION Mpx、PyroStart、KOD、Z-Taq、あるいはCS3AC/LAである、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
増幅された各核酸生成物の分析が、法医学的な解釈のガイドラインを満たしている、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記変性状態が、約4秒間で約95℃である、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記アニーリング状態が、約15秒間で約59℃である、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記伸長状態が、約7秒間で約72℃である、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記最終状態が、約90秒間で約70℃である、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
1つあるいは複数の反応溶液が、約10から約50℃/秒までの第1の冷却速度で、変性状態からアニーリング状態に冷却される、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
1つあるいは複数の反応溶液が、約10から約50℃/秒までの第1の加熱速度で、アニーリング状態から伸長状態に加熱される、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
1つあるいは複数の反応溶液が、約10から約50℃/秒までの第2の加熱速度で、伸長状態から変性状態に加熱される、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
1つあるいは複数の増幅された核酸生成物が、約10から約90分間のうちに得られる、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
各反応溶液が、約0.005から約10ngのターゲット核酸を含んでいる、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記ターゲット核酸が、ヒトの核酸、微生物の核酸、あるいはウイルスの核酸を含んでいる、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
10から250個の遺伝子座が同時に増幅される、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記遺伝子座が、アメロゲニン、D8S1179、D21S11、D7S820、CFS1PO、D3S1358、TH01、D13S317、D16S539、D2S1338、D19S433、vWA、TPOX、D18S51、D5S818、FGA、あるいはこれらのうちの複数を含んでいる、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記所定のサイクル数が、約10から約50サイクルの間である、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
1つあるいは複数の薄肉反応チューブが、1つあるいは複数の反応チャンバーを有している、請求項43〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
一体化されたバイオチップシステムにおいて、
マイクロ流体連通している少なくとも2つの反応チャンバーを備えたバイオチップを有しており、第1の反応チャンバーが、サーマルサイクラーと熱伝導しており、
このサーマルサイクラーが、温度制御素子(TCE)を備えており、前記TCEにおける第1の表面が、溶液を保持しているサンプルチャンバー、および、サーモセンサーを保持している検知チャンバーを受容するように構成されており、前記サーモセンサーが、所望される温度に溶液を設定あるいは維持するために、前記TCEにフィードバックを与えており、
バイオチップの接触表面が、サーマルサイクラーにおける第1の表面と熱伝導しており、
さらに、前記サーマルサイクラーが、第1の反応チャンバーと流体接続している第2の反応チャンバーであって、
(i)核酸抽出、
(ii)核酸精製、
(iii)PCRの前の核酸浄化、
(iv)PCRの後の浄化、
(v)シークエンシングの前の浄化、
(vi)シークエンシング、
(vii)シークエンシングの後の浄化、
(viii)核酸分離、
(ix)核酸検出、
(x)逆転写、
(xi)逆転写の前の浄化、
(xii)逆転写の後の浄化、
(xiii)核酸ライゲーション、
(xiv)核酸混成、
(xv)定量化、に適した第2の反応チャンバーを有しており、
第1の反応チャンバーが、バイオチップの接触表面から200μm未満となっている、一体化されたバイオチップシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9a−1】
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【図9a−2】
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【図9b−1】
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【図9b−2】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−523116(P2010−523116A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502155(P2010−502155)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/004487
【国際公開番号】WO2008/124116
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(507382050)ネットワーク・バイオシステムズ・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】