説明

ターンシグナルスイッチ装置

【課題】部品点数が少なく、左折指示出力または右折指示出力の解除を機械的手段によらず行うことのできるターンシグナルスイッチ装置を提供する。
【解決手段】ステアリングシャフト3と共に回転するリング体42と、2つのセンサー部14、15と、スイッチ出力をなす出力部7とを有し、周壁43は周方向の2か所に切欠部44、45を有し、2つのセンサー部14、15は周壁43による遮蔽状態または切欠部44、45による開放状態を検出自在とされ、2つのセンサー部14、15は、ステアリングシャフト3が中立位置にあるとき、一方の検出ライン14cが一方の切欠部44を横切ると共に他方の検出ライン15cが他方の切欠部45を横切って、いずれも開放状態を検出し、ステアリングシャフト3の異なる回転角度位置で、各検出ラインの遮蔽状態と開放状態とが切替わるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中立位置から少なくとも左折指示回動位置と右折指示回動位置に回動自在な操作レバーを備えるターンシグナルスイッチ装置に関し、特にハンドルを一方向に回転操作した後、逆方向に回転させた際に、左折指示出力または右折指示出力の解除を行うターンシグナルスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターンシグナルスイッチ装置は、自動車の運転席に設けられるものであって、ステアリングコラムに取付けられたハウジングに、操作レバーを回動自在に設けてある。この操作レバーを中立位置から左折指示回動位置または右折指示回動位置に回動させることにより、左折または右折の指示ランプを点滅させることができるように、ハウジング内には操作レバーの回動に伴い駆動されるスイッチが設けられる。
【0003】
操作レバーの回動方向を案内するため、ハウジング内にはカム面が設けられ、操作レバーの回動に伴い駆動される駆動体がカム面上を摺動する。また、操作レバーは、左折指示回動位置または右折指示回動位置においてラッチされるが、ハンドルを指示方向に回転させた後、逆方向に回転させることにより、左折指示回動位置または右折指示回動位置から中立位置に自動的に復帰させるキャンセル機構が、ターンシグナルスイッチ装置に設けられている。このようなキャンセル機構を備えたターンシグナルスイッチ装置としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−269901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のターンシグナルスイッチ装置は、左折指示回動位置または右折指示回動位置から中立位置への復帰のための機構が、全て機械的手段で構成され、左折指示出力または右折指示出力の解除も、機械的手段によりなされていたので、部品点数が多く、組立が面倒であると共に、装置全体が大型化するという問題があった。
【0006】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、部品点数が少なく、左折指示出力または右折指示出力の解除を機械的手段によらず行うことのできるターンシグナルスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係るターンシグナルスイッチ装置は、中立位置から少なくとも左折指示回動位置と右折指示回動位置に回動自在な操作レバーを備え、該操作レバーを左折指示回動位置に回動させると左折指示出力をなし、前記操作レバーを右折指示回動位置に回動させると右折指示出力をなし、ステアリングシャフトの回転に伴い前記左折指示出力または右折指示出力を解除するターンシグナルスイッチ装置において、
前記ステアリングシャフトと同心状の周壁を有するリング体と、前記周壁の内外に対向するように設けられる一対の検出部及び被検出部を備えた2つのセンサー部と、該センサー部の検出状態に応じてスイッチ出力をなす出力部とを有し、
前記リング体は前記ステアリングシャフトと共に回転自在であると共に、前記周壁は周方向の異なる位置に2か所の切欠部を有し、前記2つのセンサー部は、それぞれ前記周壁と直交する各検出ラインにおいて、前記検出部と被検出部間の前記周壁による遮蔽状態または前記2か所の切欠部による開放状態を検出可能とされ、
前記2つのセンサー部は、前記ステアリングシャフトが中立位置にあるとき、前記各検出ラインのうち一方の検出ラインが、前記2か所の切欠部のうち一方の切欠部を横切ると共に、前記各検出ラインのうち他方の検出ラインが、前記2か所の切欠部のうち他方の切欠部を横切って、いずれも開放状態を検出し、前記ステアリングシャフトの異なる回転角度位置で、前記各検出ラインの遮蔽状態と開放状態とが切替わるように配置されることを特徴として構成されている。
【0008】
また、本発明に係るターンシグナルスイッチ装置は、前記周壁の周方向における前記2か所の切欠部間の中央角度位置を周壁における基準位置とし、
前記ステアリングシャフトが中立位置にあるときの前記基準位置から前記各検出ラインまでの角度は、正負二方向に同じ大きさであり、
前記2か所の切欠部の角度範囲は、前記ステアリングシャフトが中立位置にあるときの前記基準位置を中心として周方向で対称であることを特徴として構成されている。
【0009】
さらに、本発明に係るターンシグナルスイッチ装置は、前記ステアリングシャフトが中立位置にあるときの、前記2か所の切欠部の前記基準位置側の各端部から前記各検出ラインまでの角度の大きさは、前記各検出ラインから前記2か所の切欠部の前記基準位置と反対側の各端部までの角度の大きさと異なることを特徴として構成されている。
【0010】
さらにまた、本発明に係るターンシグナルスイッチ装置は、前記出力部は、前記操作レバーにより左折指示出力または右折指示出力がなされた後、前記2つのセンサー部のうち一方のセンサー部が開放状態から遮蔽状態に切り替わったことを検出したら、前記2つのセンサー部のうち他方のセンサー部が遮蔽状態から開放状態に切り替わった時点で、前記左折指示出力または右折指示出力を解除することを特徴として構成されている。
【0011】
そして、本発明に係るターンシグナルスイッチ装置は、前記操作レバーは、谷状のカム面に対して押し付ける方向に弾性付勢された駆動体を有し、該駆動体は前記操作レバーの中立位置において前記カム面の最深部に位置し、前記操作レバーが前記左折指示回動位置または右折指示回動位置に回動操作されてから操作が解除されると、前記駆動体が弾性付勢力により前記カム面の最深部に移動することで、前記操作レバーを中立位置に復帰させることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るターンシグナルスイッチ装置によれば、2つの切欠部を有する周壁からなるリング体につき、周壁による遮蔽状態または切欠部による開放状態を検出する2つのセンサー部は、ステアリングシャフトが中立位置にあるとき、一方の検出ラインが一方の切欠部を横切ると共に他方の検出ラインが他方の切欠部を横切って、いずれも開放状態を検出し、ステアリングシャフトの異なる回転角度位置で、各検出ラインの遮蔽状態と開放状態とが切替わるように配置されることにより、機械的手段によらずハンドル操作の角度検出を行い、左折指示出力または右折指示出力の解除可能状態の判別と、左折指示出力または右折指示出力の解除とを行うことができるので、部品点数を大幅に削減することができ、また耐久性も向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係るターンシグナルスイッチ装置によれば、ステアリングシャフトが中立位置にあるときの基準位置から2つの検出ラインまでの角度は、正負二方向に同じ大きさであり、2つの切欠部の角度範囲は、ステアリングシャフトが中立位置にあるときの基準位置を中心として周方向で対称であることにより、ハンドルを左右どちらに回転操作した場合であっても、同様の動作を可能とすることができる。
【0014】
さらに、本発明に係るターンシグナルスイッチ装置によれば、ステアリングシャフトが中立位置にあるときの切欠部の基準位置側端部から検出ラインまでの角度の大きさは、検出ラインからステアリングシャフトが中立位置にあるときの切欠部の基準位置と反対側端部までの角度の大きさと異なることにより、リング体とセンサー部の配置関係を適切に設定するだけで、異なる回転角度位置で、各検出ラインの遮蔽状態と開放状態とが切替わるように構成することができる。
【0015】
さらにまた、本発明に係るターンシグナルスイッチ装置によれば、操作レバーにより左折指示出力または右折指示出力がなされた後、一方のセンサー部が開放状態から遮蔽状態に切り替わったことを検出したら、他方のセンサー部が遮蔽状態から開放状態に切り替わった時点で、左折指示出力または右折指示出力を解除することにより、簡易な処理でリング体の状態を判別することができる。
【0016】
そして、本発明に係るターンシグナルスイッチ装置によれば、操作レバーが左折指示回動位置または右折指示回動位置に回動操作されてから操作解除されると、駆動体が弾性付勢力によりカム面の最深部に移動することで、操作レバーを中立位置に復帰させることにより、操作レバーの操作による左折指示出力または右折指示出力とその解除を切り離して行うことができ、機械的手段によらない解除出力を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態におけるターンシグナルスイッチ装置の取付構造を示す断面図である。
【図2】図1のターンシグナルスイッチ装置の操作レバーの保持構造を表した拡大断面図である。
【図3】ターンシグナルスイッチ装置のスイッチ出力をなすための構成図である。
【図4】回転コネクタの斜視図である。
【図5】ステアリングシャフトが中立位置にあるときのリング体と第1センサー部及び第2センサー部の位置関係を表した平面図である。
【図6】リング体が正方向にθ2回転したときのリング体と第1センサー部及び第2センサー部の位置関係を表した平面図である。
【図7】リング体がθ1の角度位置となるまでハンドルが戻されたときの、リング体と第1センサー部及び第2センサー部の位置関係を表した平面図である。
【図8】ステアリングシャフトの回転角度と第1センサー部及び第2センサー部からの出力の関係を表した図である。
【図9】ターンシグナルスイッチ装置の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態におけるターンシグナルスイッチ装置1の取付構造を示す断面図を示している。本実施形態のターンシグナルスイッチ装置1は、自動車の運転席に設けられるハンドルの奥側に固定されたハウジング50に取り付けられている。
【0019】
ハウジング50は、断面中空状に形成されており、ステアリングシャフト3を貫通させると共に、内部に回転コネクタ4が配置される。回転コネクタ4は、ハウジング50に固定される固定ハウジング4aと、固定ハウジング4aに対して回転自在に取付けた可動ハウジング4bと、これら両ハウジング間にリング状をなすように形成された、周方向に沿って連続状な空間であるケーブル収納部40とを有している。ケーブル収納部40には、フラットケーブル5が巻回されている。フラットケーブル5は、自動車側に取り付けられた固定ハウジング4aと、回転するハンドル側に取り付けられた可動ハウジング4bとを電気的に接続するために設けられ、回転コネクタ4の可動ハウジング4bの回転に伴って巻締めあるいは巻緩められる。また、回転コネクタ4の可動ハウジング4bは、ハウジング50の内底面と対向する面に、周方向に沿う周壁43からなるリング体42が形成されている。その詳細は後述する。
【0020】
操作レバー2は、ターンシグナルスイッチ装置1に対して左折指示方向または右折指示方向の二方向に回動操作自在とされている。図1において操作レバー2は、少なくとも紙面に対して垂直な二方向に回動操作できるように、ターンシグナルスイッチ装置1に保持されている。図2には、図1中矢印X方向からみたターンシグナルスイッチ装置1の操作レバー2の保持構造を表した拡大断面図を示している。操作レバー2は、ターンシグナルスイッチ装置1内に収納されて回動中心を有する基部20に支持され、ターンシグナルスイッチ装置1の外方に突出して露出している。
【0021】
ターンシグナルスイッチ装置1の外壁には、操作レバー2を挿通させるための開口部10が形成されており、その内部には、操作レバー2の基部20を回動自在に保持する回転軸部12が設けられる。また、ターンシグナルスイッチ装置1内には、基部20と対向するようにカム面11が配置されている。カム面11は、中央部が最深部となる谷状に形成されている。
【0022】
操作レバー2の基部20には、カム面11側に開放状の凹部22が形成され、凹部22内にはコイルばねからなる弾性体24を介して駆動体23が保持されている。弾性体24を保持するため、凹部22の底壁には突起状の保持部22aが形成される。駆動体23にも先端部23aと反対側に開放状となる凹状の空間が形成され、この空間に弾性体24が納められる。弾性体24は、駆動体23をカム面11に対して押し付ける方向に弾性付勢する。
【0023】
図2において破線で示した操作レバー2は、駆動体23の先端部23aがカム面11の中央部に位置した中立位置を表しており、実線で示した操作レバー2は、中立位置から左折指示回動位置に回動操作した状態を表している。この状態で手を離し、操作状態を解除すると、弾性付勢された駆動体23の先端部23aは、カム面11の最深部である中央部に向かって移動するから、それに伴い操作レバー2は回転軸部12を中心に回動し、駆動体23の先端部23aがカム面11の中央部に到達した状態、すなわち図2において破線で示した位置まで回動すると停止する。中立位置から反対側の右折指示回動位置に回動操作した場合も、同様である。
【0024】
このように、操作レバー2は、中立位置から左折指示回動位置または右折指示回動位置に回動操作され、操作状態が解除されると、弾性体24の弾性付勢力により、中立位置に自動的に復帰するように構成されている。
【0025】
図3には、ターンシグナルスイッチ装置1のスイッチ出力をなすための構成図を示している。本実施形態のターンシグナルスイッチ装置1は、操作レバー2の回動操作を検出することにより、左折指示出力または右折指示出力をなし、ハンドルを右方向あるいは左方向操作した後、中立位置に戻すように回転操作するのに伴うステアリングシャフト3の回転につき、ステアリングシャフト3と共に回転するリング体42(図4)の動作を光学的に検出することにより、左折指示出力または右折指示出力を解除する。
【0026】
操作レバー2は、回動操作の有無及び方向を回動検出部6によって検出する。回動検出部6は、例えば、基部20に設けたマグネット(図示略)と、マグネットに対向するようターンシグナルスイッチ装置1内に取り付けた磁気センサ(図示略)とで構成されるが、操作レバー2の動作を検出できるものであればよく、電気的検出手段、光学的検出手段、その他の手段を用いることができる。回動検出部6は、スイッチ出力をなす出力部7に接続されており、出力部7では、回動検出部6での検出に基づき左折指示出力または右折指示出力を行う。
【0027】
リング体42は、上述のようにステアリングシャフト3の回転に伴い回転し、その回転角度及び回転方向は、第1センサー部14及び第2センサー部15によって検出される。第1センサー部14及び第2センサー部15は、ハウジング50内に設けられて、光学的手段によりリング体42の回転を検出するものであり、それぞれ出力部7に接続されている。出力部7では、第1センサー部14及び第2センサー部15での検出に基づき左折指示出力または右折指示出力の解除を行う。
【0028】
右折指示の場合を例にハンドル操作につき説明すると、通常、運転者は操作レバー2を回動操作して右折指示器を点滅させたらハンドルを右方向に回転操作し、自動車が右折したらハンドルを戻すように回転操作する。したがって、ターンシグナルスイッチ装置1は、このハンドル操作に合わせて、ハンドルが右折方向にある程度以上回転操作されたら右折指示出力を解除可能な状態とし、ハンドルが所定角度以下まで戻されたら右折指示出力を解除する。左折の場合も同様である。
【0029】
ステアリングシャフト3の回転検出につき、さらに詳細に説明する。図4には、回転コネクタ4の裏側からみた斜視図を示している。この図に示すように、リング体42は、回転コネクタ4と同軸となる周壁43を周方向に沿って円形状に形成してなり、周壁43には周方向2か所に第1切欠部44と第2切欠部45が形成されている。このような切欠を有する周壁43が本体部1に対して回転することで、本体部1に設けられる第1センサー部14や第2センサー部15に対する遮蔽状態と開放状態が切り替わるように構成されている。
【0030】
図5には、ステアリングシャフト3が中立位置にあるときのリング体42と第1センサー部14及び第2センサー部15の位置関係を表した平面図を示している。リング体42は回転コネクタ4と同軸であるから、リング体42の中心位置(O)はステアリングシャフト3の中心位置と一致する。周壁43のうち第1切欠部44と第2切欠部45の間に配置される部分の中央角度位置を、周壁43における基準位置43aとし、ステアリングシャフト3が中立位置にあるときの基準位置43aの角度を0°とする。また、ハンドルの右折方向への回転操作に対応する図中時計回り方向を正方向とし、ハンドルの左折方向への回転操作に対応する図中反時計回り方向を負方向とし、リング体42の回転に伴い周方向に移動する基準位置43aの角度位置を、リング体42の角度位置として表記する。以下図6〜8においても同様である。
【0031】
リング体42の第1切欠部44は、基準位置43a側の端部44aと、基準位置43aと反対側の端部44bとの間に形成された空間部分であり、リング体42の第2切欠部45は、基準位置43a側の端部45aと、基準位置43aと反対側の端部45bとの間に形成された空間部分である。
【0032】
第1センサー部14は、周壁43と直交する検出ライン14cにおいて、周壁43による遮蔽状態と切欠部45による開放状態のいずれかであるかを検出することができる。検出ライン14cは、周壁43と直交するから、リング体42の中心位置(O)から半径方向に伸びる線上に位置する。当該検出のため、第1センサー部14は、検出ライン14c上に検出部14aと被検出部14bを備えている。
【0033】
検出部14aは、例えば、フォトダイオードを備えた受光部品からなり、被検出部14bは、レーザーダイオードを備えた発光部品からなる。被検出部14bと検出部14aは、検出ライン14cを光軸とし、周壁43を挟むように配置されている。リング体42が回転するのに伴い、検出ライン14c上に切欠部45が存在するとき、第1センサー部14は検出部14aと被検出部14bの間の開放状態を検出し、検出ライン14c上に周壁43が存在するとき、第1センサー部14は検出部14aと被検出部14bの間の遮蔽状態を検出する。
【0034】
第2センサー部15は、第1センサー部14と同様、検出部15a及び被検出部15bからなり、周壁43と直交する検出ライン15cにおいて、周壁43による遮蔽状態と切欠部45による開放状態のいずれかであるかを検出することができる。
【0035】
図8には、ステアリングシャフト3の回転角度と第1センサー部14及び第2センサー部15からの出力の関係を表した図を示している。この図では、0°から±90°の回転角度範囲について示している。第1センサー部14と第2センサー部15は、検出ライン14c、15cに第1切欠部44または第2切欠部45が位置している開放状態のとき、ローレベルの信号を出力し、検出ライン14c、15cに第1切欠部44または第2切欠部45が位置している遮蔽状態のとき、ハイレベルの信号を出力する。
【0036】
図5に示すように、ステアリングシャフト3が中立位置のとき、第1センサー部14の検出ライン14cは、第1切欠部44の基準位置43a側端部44aの角度位置とθ1の角度をなし、第1切欠部44の基準位置43aと反対側端部44bの角度位置とθ2の角度をなしている。θ1はθ2よりも小さく、本実施形態では、θ1は13.5°であり、θ2は22.5°である。第1切欠部44は、θ1+θ2の角度範囲の大きさを有することとなり、第2切欠部45も同じである。
【0037】
また、第2センサー部15側の配置は、0°の角度位置を挟んで第1センサー部14側と対称であり、第2センサー部15の検出ライン15cは、第2切欠部45の基準位置43a側端部45aの角度位置とθ1の角度をなし、第2切欠部45の基準位置43aと反対側端部45bの角度位置とθ2の角度をなしている。
【0038】
図8において、矢印Aで示した回転角度0°が、図5の状態に対応している。リング体42が正方向に回転したとき、リング体42の角度位置(基準位置43aの角度位置)がθ1(13.5°)の角度位置で第1切欠部44の端部44aが検出ライン14c上に位置するから、それ以上回転すると、第1センサー部14の検出ライン14cが開放状態から遮蔽状態となり、第1センサー部14の出力がローレベルからハイレベルに切り替わる。
【0039】
リング体42をθ1の角度位置からさらに正方向に回転させると、θ2(22.5°)の角度位置で第2切欠部45の端部45bが検出ライン15c上に位置する。リング体42が正方向にθ2回転したときのリング体42と第1センサー部14及び第2センサー部15の位置関係を表した平面図を図6に示している。図8においては、矢印Bで示した回転角度22.5°が、図6の状態に対応している。
【0040】
図6のように、第2切欠部45の端部45bが第2センサー部15の検出ライン15c上に位置しているとき、第1センサー部14の検出ライン14cは周壁43により遮蔽状態となっている。そして、リング体42が図6の状態よりさらに正方向に回転すると、第2センサー部15の検出ライン15cが開放状態から遮蔽状態となり、図8に示されているように、第2センサー部15の出力がローレベルからハイレベルに切り替わる。
【0041】
本実施形態では、ハンドルが正方向に操作されて、リング体42がθ2より大きい角度位置まで回転したとき、出力部7において右折指示出力の解除が可能な状態となり、その後にハンドルが中立位置側に戻されて、リング体42がθ1より小さい角度位置まで回転したとき、出力部7において右折指示出力が解除される。
【0042】
図7には、リング体42がθ1の角度位置となるまでハンドルが戻されたときの、リング体42と第1センサー部14及び第2センサー部15の位置関係を表した平面図を示している。図8においては、矢印Cで示した回転角度13.5°が、図6の状態に対応している。このとき、第1切欠部44の基準位置43a側端部44aの角度位置は、第1センサー部14の検出ライン14c上にあり、これよりさらにハンドルを戻すと、図8に示されているように、第1センサー部14の出力がハイレベルからローレベルに切り替わる。
【0043】
ハンドルを負方向に操作し、リング体42を0°の角度位置から負方向に回転させた場合には、θ1の角度とθ2の角度に対応する第1センサー部14と第2センサー部15の出力切替が逆になる。なお、以下において、負方向に回転させた場合も、回転角度は絶対値で表す。リング体42が負方向に回転していくと、θ1の角度位置で第2センサー部15の出力がローレベルからハイレベルに切り替わり、θ2の角度位置で第1センサー部14の出力がローレベルからハイレベルに切り替わって、出力部7において左折指示出力の解除が可能な状態となる。その後にハンドルが中立位置側に戻されて、リング体42がθ1より小さい角度位置まで回転すると、第2センサー部15の出力がハイレベルからローレベルに切り替わって、出力部7において左折指示出力が解除される。
【0044】
このように、第1センサー部14の検出ライン14c及び第2センサー部15の検出ライン15cにつき、ステアリングシャフト3が中立位置にある状態において、θ1とθ2の大きさが異なることにより、ステアリングシャフト3の回転に伴いリング体42が回転した際に、第1センサー部14で遮蔽状態を検出する角度と第2センサー部15で遮蔽状態を検出する角度が異なることとなるから、左折指示出力または右折指示出力を解除可能とする回転角度と、実際に解除する回転角度とをそれぞれ検出することができ、ハンドル操作に合わせたスイッチ出力をなすことができる。
【0045】
また、検出ライン14c、15cは、0°の角度位置を中心に周方向対称位置にあり、また第1切欠部44と第2切欠部45の角度範囲も、0°の角度位置を中心に周方向対称であるから、リング体42の正方向の回転及び負方向の回転のいずれでも、同じ回転角度での検出ができるから、ハンドルを右方向に回転操作したときと左方向に回転操作したときとで、同様の動作を可能とすることができる。
【0046】
以下、ターンシグナルスイッチ装置1の動作についてより詳細に説明する。図9には、ターンシグナルスイッチ装置の動作フローチャートを示している。この図に示すように、まずリング体42が中立位置範囲にあるか否かが判別される(S1)。ここでの判別は、第1センサー部14の出力と第2センサー部15の出力が、いずれもローレベルであるか否かによりなされる。したがって、リング体42が正方向または負方向にθ1より小さい角度位置にあれば、S1において中立位置範囲と判別されることになる。S1でリング体42が中立位置範囲にない場合は、条件を満たすまで判別が繰り返される。
【0047】
S1においてリング体42が中立位置範囲にあったら、次に操作レバー2が右折指示操作されたか否かを判別する(S2)。ここでの判別は、操作レバー2の回動操作を検出する回動検出部6の出力に応じてなされる。右折指示操作がなされていれば、出力部7は右折指示出力をなす(S4)。右折指示操作がなされていなければ、操作レバー2が左折指示操作されたか否かを判別する(S3)。左折指示操作がなされていれば、出力部7は左折指示出力をなす(S8)。右折指示操作も左折指示操作もなされていなければ、再びS2に戻って判別を繰り返す。
【0048】
次に、S2で右折指示操作があった場合について説明する。S4で出力部7が右折指示出力をなしたら、自動車側では、右折指示器を点滅させるなどの動作が行われる。右折指示出力をなしたら、リング体42の角度位置が、θ2より大きいか否かを判別する(S5)。この判別は、第2センサー部15の出力がローレベルからハイレベルに変化したか否かによってなされる。第2センサー部15の出力がローレベルからハイレベルに変化するのは、図8において矢印Bで示された角度位置であり、図6に示した状態のときであるから、ハンドルをある程度以上右折操作した状態に対応する。このS5で、右折指示出力を解除可能な状態となる。S5においてリング体42の角度位置がθ2より小さい場合には、θ2より大きくなるまでS5を繰り返す。
【0049】
S5でリング体42の角度位置がθ2より大きいと判別されたら、次にリング体42の角度位置がθ1より小さいか否かを判別する(S6)。この判別は、第1センサー部14の出力がハイレベルからローレベルに変化したか否かによってなされる。第1センサー部14の出力がハイレベルからローレベルに変化するのは、図8において矢印Cで示された角度位置であって、図7に示した状態のときであり、ハンドルの右折操作の後、ハンドルを戻して中立位置範囲に入った状態、すなわち自動車が右折を完了するときの状態と対応する。S6においてリング体42の角度位置がθ1より大きい場合には、θ1より小さくなるまでS6を繰り返す。
【0050】
S6でリング体42の角度位置がθ1より小さいと判別されたら、出力部7は右折指示出力を解除する(S7)。これにより、自動車側では右折指示器の点滅を停止するなどの動作が行われる。S7が行われたら、再びS1に戻る。
【0051】
S3で左折指示操作が検出された場合も、右折の場合と同様であり、まず左折指示出力がなされ(S8)、リング体42の角度位置がθ2より大きいか否かを判別し(S9)、条件が満たされたら左折指示出力の解除可能状態となり、その後にリング体42の角度位置がθ1より小さいか否かを判別し(S10)、条件が満たされたら左折指示出力を解除し(S11)、再びS1に戻る。
【0052】
ここまで説明したように、本実施形態のターンシグナルスイッチ装置は、第1センサー部14で開放状態と遮蔽状態が切り替わる角度位置と、第2センサー部15で開放状態と遮蔽状態が切り替わる角度位置との相違を利用して、左折指示出力または右折指示出力の解除可能状態の判別と、左折指示出力または右折指示出力の解除とを行うようにしたので、ハンドル操作に合わせて適切にスイッチ出力をなすことができる。そして、ハンドル操作の角度検出を、ステアリングシャフト3と共に回転するリング体42と、光学的手段でリング体42の回転を検出する第1センサー部14及び第2センサー部15で行うため、機械的手段で左折指示出力または右折指示出力の解除を行うものに比べて、部品点数を大幅に削減することができ、小型化できると共に、耐久性も向上させることができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。本実施形態では第1センサー部14及び第2センサー部15を、光学的手段で構成したが、リング体42による遮蔽状態と開放状態を検出できるものであれば、他の手段でもよく、例えば磁気的手段を用いてもよい。
【0054】
また、リング体42と第1センサー部14及び第2センサー部15の配置関係も、様々に設定することができ、例えば角度θ1とθ2の大きさは、両者が異なっていれば本実施形態には限られないし、θ1の方がθ2よりも大きくてもよい。この場合には、図8に示したリング体42の回転角度に対する各センサー部の出力が変化するので、それに応じて図9の判定を行うようにすればよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ターンシグナルスイッチ装置
2 操作レバー
3 ステアリングシャフト
4 回転コネクタ
5 フラットケーブル
6 回動検出部
7 出力部
14 第1センサー部
14a 検出部
14b 被検出部
14c 検出ライン
15 第2センサー部
15a 検出部
15b 被検出部
15c 検出ライン
42 リング体
43 周壁
43a 基準位置
44 第1切欠部
45 第2切欠部
50 ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中立位置から少なくとも左折指示回動位置と右折指示回動位置に回動自在な操作レバーを備え、該操作レバーを左折指示回動位置に回動させると左折指示出力をなし、前記操作レバーを右折指示回動位置に回動させると右折指示出力をなし、ステアリングシャフトの回転に伴い前記左折指示出力または右折指示出力を解除するターンシグナルスイッチ装置において、
前記ステアリングシャフトと同心状の周壁を有するリング体と、前記周壁の内外に対向するように設けられる一対の検出部及び被検出部を備えた2つのセンサー部と、該センサー部の検出状態に応じてスイッチ出力をなす出力部とを有し、
前記リング体は前記ステアリングシャフトと共に回転自在であると共に、前記周壁は周方向の異なる位置に2か所の切欠部を有し、前記2つのセンサー部は、それぞれ前記周壁と直交する各検出ラインにおいて、前記検出部と被検出部間の前記周壁による遮蔽状態または前記2か所の切欠部による開放状態を検出可能とされ、
前記2つのセンサー部は、前記ステアリングシャフトが中立位置にあるとき、前記各検出ラインのうち一方の検出ラインが、前記2か所の切欠部のうち一方の切欠部を横切ると共に、前記各検出ラインのうち他方の検出ラインが、前記2か所の切欠部のうち他方の切欠部を横切って、いずれも開放状態を検出し、前記ステアリングシャフトの異なる回転角度位置で、前記各検出ラインの遮蔽状態と開放状態とが切替わるように配置されることを特徴とするターンシグナルスイッチ装置。
【請求項2】
前記周壁の周方向における前記2か所の切欠部間の中央角度位置を周壁における基準位置とし、
前記ステアリングシャフトが中立位置にあるときの前記基準位置から前記各検出ラインまでの角度は、正負二方向に同じ大きさであり、
前記2か所の切欠部の角度範囲は、前記ステアリングシャフトが中立位置にあるときの前記基準位置を中心として周方向で対称であることを特徴とする請求項1記載のターンシグナルスイッチ装置。
【請求項3】
前記ステアリングシャフトが中立位置にあるときの、前記2か所の切欠部の前記基準位置側の各端部から前記各検出ラインまでの角度の大きさは、前記各検出ラインから前記2か所の切欠部の前記基準位置と反対側の各端部までの角度の大きさと異なることを特徴とする請求項2記載のターンシグナルスイッチ装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記操作レバーにより左折指示出力または右折指示出力がなされた後、前記2つのセンサー部のうち一方のセンサー部が開放状態から遮蔽状態に切り替わったことを検出したら、前記2つのセンサー部のうち他方のセンサー部が遮蔽状態から開放状態に切り替わった時点で、前記左折指示出力または右折指示出力を解除することを特徴とする請求項3記載のターンシグナルスイッチ装置。
【請求項5】
前記操作レバーは、谷状のカム面に対して押し付ける方向に弾性付勢された駆動体を有し、該駆動体は前記操作レバーの中立位置において前記カム面の最深部に位置し、前記操作レバーが前記左折指示回動位置または右折指示回動位置に回動操作されてから操作が解除されると、前記駆動体が弾性付勢力により前記カム面の最深部に移動することで、前記操作レバーを中立位置に復帰させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のターンシグナルスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−201226(P2012−201226A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67850(P2011−67850)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】