説明

ターンバックル

【課題】 ターンバックル10の回転操作中に、ラッシングロッド4がターンバックル10の操作枠11の二股部17aの開口から抜け出さないようにして、ターンバックル10の締め付け作業の効率を向上し、コンテナ固締作業中における作業員の安全性を向上させることを課題とする。
【解決手段】 操作枠11の上端に、ラッシングロッド4を操作枠11に対して進退自在に挿通するロッド受け部17を設け、このロッド受け部17に、ラッシングロッド4を操作枠11内に出し入れする二股部17aを形成し、ロッド受け部17の下面に、ラッシングロッド4の下端に所定のピッチで設けられた突部4aを嵌合するポケット部17bを設けたターンバックル10において、上記ラッシングロッド4を操作枠11内に出し入れする二股部17aの開口を開閉する開閉アーム18をロッド受け部17に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主としてコンテナ固締用のラッシングロッドを緊張させるターンバックルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、多数のコンテナを船舶輸送する場合、図14に示すように、複数のコンテナ1を上下に積み重ね、各コンテナ1のコーナ金具2に設けた係合孔3に、ラッシングロッド4の一端を連結し、このラッシングロッド4の他端とデッキに設けられた係留金具5とをターンバックル6で連結し、このターンバックル6の回転操作により、ラッシングロッド4を緊張させて各段のコンテナ1を固締している。
【0003】
ところで、ターンバックル6の締め付け作業を能率よく行うためには、ターンバックル6の回転操作量を少なくする必要がある。
【0004】
このため、従来、図14に示すように、ラッシングロッド4の下端に、所定のピッチで複数の突部4aを設け、この複数の突部4aのうち、ターンバックル4の上端に設けたロッド受け部7に最も近い位置の突部4aを、ロッド受け部6aに嵌め入れることによって、ターンバックル6の回転操作量を少なくすることが行われている(特許文献1の図5参照)。
【0005】
図14及び図15は、ターンバックル6の上端に設けたロッド受け部7にラッシングロッド4の下端を挿通した状態を示し、図16及び図17は、図14及び図15に示す状態から、ターンバックル6の操作枠8を回転させて、ターンバックル6とラッシングロッド4を緊張させた状態を示している。
【0006】
ターンバックル6の上端のロッド受け部7は、図18に示すように、二股形状に形成され、この二股部の開口からラッシングロッド4を、ターンバックル6の操作枠8内に出し入れできるようにしている。
【0007】
そして、上記二股部の下面には、図19に示すように、ラッシングロッド4の突部4aが嵌合するポケット部7aが設けられ、ターンバックル6の操作枠8を回転させて、ラッシングロッド4の突部4aを二股部の下面のポケット部7aに嵌合させると、二股部の開口部からラッシングロッド4が外れなくなり、さらにターンバックル6の操作枠8を回転させることにより、ターンバックル6の締め付け作業が終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−296297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記ターンバックル6の操作枠8の上端に設けられるロッド受け部7は、上記のように、二股形状であるため、ターンバックル6の操作枠8を回転させて、二股部の開口が下面を向いた時に、ラッシングロッド4が二股部の開口から抜け出し、図14に破線で示すように、ラッシングロッド4が上端のフック4cを回転中心にして元の垂直の状態に戻ることがある。
【0010】
ラッシングロッド4が二股部の開口から抜け出し、図14に破線で示すように、ラッシングロッド4が回転して元の垂直の状態に戻る際に、ラッシングロッド4が作業員等に当たる恐れがある。
【0011】
また、ターンバックル6の緊張作業中に、図1に破線で示すように、ラッシングロッド4が元の垂直の状態に戻ると、作業員が腕を伸ばして、ラッシングロッド4を掴み直し、再度、ターンバックル6のロッド受け部7への装着をやり直す必要が生じるため、作業効率が甚だ悪い。
【0012】
そこで、この発明は、ターンバックルの回転操作中に、ラッシングロッドがターンバックルの操作枠の二股部の開口から抜け出さないようにして、ターンバックルの締め付け作業の効率を向上し、コンテナ固締作業中における作業員の安全性を向上させることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するために、この発明は、操作枠と、この操作枠の下端に設けた軸受部にネジ結合され、操作枠の回転により操作枠の軸方向に相対的に進退するネジ軸とを備え、操作枠の上端に、ラッシングロッドを操作枠に対して進退自在に挿通するロッド受け部を設け、このロッド受け部に、ラッシングロッドを操作枠内に出し入れする二股部を形成し、ロッド受け部の下面に、ラッシングロッドの下端に所定のピッチで設けられた突部を嵌合するポケット部を設けたターンバックルにおいて、上記ラッシングロッドを操作枠内に出し入れする二股部の開口を開閉する開閉アームをロッド受け部に設けたことを特徴とする。
【0014】
この発明のターンバックルは、開閉アームを開くことによって、ラッシングロッドを操作枠内に挿入することができ、開閉アームを閉じると、二股部の開口が閉じられるので、操作枠を回転させても、ラッシングロッドが二股部から抜け落ちない。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係るターンバックルは、上記のように、ターンバックルの回転操作中に、ラッシングロッドがターンバックルの操作枠の二股部の開口から抜け出さないので、ターンバックルの締め付け作業の効率が向上し、コンテナ固締作業中における作業員の安全性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明のターンバックルの開閉アームを開いてラッシングロッドをロッド受け部に嵌め入れた状態の全体図である。
【図2】図1のターンバックルとラッシングロッドの関係を示す拡大図である。
【図3】図1の状態から開閉アームを閉じてターンバックルの操作枠を回転させることによりターンバックルを緊張させた状態を示す全体図である。
【図4】図3のターンバックルとラッシングロッドの関係を示す拡大図である。
【図5】この発明のターンバックルの開閉アームを開いた状態を示す平面図である。
【図6】図5の部分正面図である。
【図7】この発明のターンバックルの開閉アームを閉じた状態を示す平面図である。
【図8】図7の部分正面図である。
【図9】図7の部分右側面図である。
【図10】この発明の他の実施形態のターンバックルの開閉アームを閉じた状態を示す平面図である。
【図11】図10のターンバックルの開閉アームを開いた状態を示す平面図である。
【図12】この発明の他の実施形態のターンバックルの開閉アームを閉じた状態を示す平面図である。
【図13】図12の部分右側面図である。
【図14】従来のターンバックルのロッド受け部にラッシングロッドを嵌め入れた状態の全体図である。
【図15】図14のターンバックルとラッシングロッドの関係を示す拡大図である。
【図16】図14の状態からターンバックルの操作枠を回転させることによりターンバックルを緊張させた状態を示す全体図である。
【図17】図16のターンバックルとラッシングロッドの関係を示す拡大図である。
【図18】従来のターンバックルの平面図である。
【図19】従来のターンバックルの部分縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
この発明に係るターンバックル10は、左右2本の操作ロッド11a、11bによって構成される操作枠11と、この操作枠11の下端に設けた上下一対の軸受部12a、12bにネジ結合され、操作枠11の回転により操作枠11の軸方向に相対的に進退するネジ軸13とを備えている。
【0019】
ネジ軸13の下端には、甲板上のラッシングブリッジに設けられた係留金具5に連結する二股形状の連結部14が設けられ、連結部14には連結ピン15が挿通されている。
【0020】
また、上記連結部14と下方の軸受部12aとの間のネジ軸13には、操作枠11を回転させてラッシングロッド4と操作枠11とを緊張させた後に、操作枠11の回転による弛みが生じないようにするための弛み止めナット16を設けている。
【0021】
操作枠11の上端には、ラッシングロッド4を操作枠11に対して進退自在に挿通するロッド受け部17を設けている。
【0022】
このロッド受け部17は、図5に示すように、ラッシングロッド4を操作枠11内に出し入れする二股部17a有する。
【0023】
この発明に係るターンバックルに使用するラッシングロッド4は、上記二股部17aの開口に出し入れ可能な直径のロッド軸4bからなり、このロッド軸4bの上端に、コンテナ1のコーナ金具2に設けた係合孔3に引っ掛けるフック4cがピン4dによって連結されている。
【0024】
また、上記ロッド軸4bの下端には、所定のピッチでロッド軸4bの直径よりも大径の突部4aが複数設けられている。突部4aは、逆円錐台形に形成されている。
【0025】
上記ロッド受け部17の二股部17aの下面には、ラッシングロッド4の下端に所定のピッチで設けられた突部4aを嵌合するポケット部17bを設けている。
【0026】
上記ロッド受け部17の二股部17aにラッシングロッド4のロッド軸4bを挿通した状態では、図5及び図6に示すように、ラッシングロッド4は、軸方向に進退可能になっている。
【0027】
そして、操作枠11を回転させて、操作枠11をネジ軸13に対して下降させると、ラッシングロッド4の突部4aが、図8に示すように、ロッド受け部17の二股部17aの下面のポケット部17bに嵌合し、この状態で、操作枠11をさらに回転させることにより、ラッシングロッド4と操作枠11とが緊張する。
【0028】
この発明に係るターンバックルには、図5に示すように、ラッシングロッド4のロッド軸4bを、ロッド受け部17の二股部17aに挿し入れる際に、上方に開き、ロッド受け部17の二股部17aにラッシングロッド4のロッド軸4b挿し入れた後に、図7に示すように、ロッド受け部17の二股部17aの開口部を閉じて、ロッド受け部17の二股部17aからのラッシングロッド4のロッド軸4bの脱落を防止する開閉アーム18を、ロッド受け部17の二股部17aの上面に設けている。
【0029】
開閉アーム18は、図7に示すように、ロッド受け部17の二股部17aと直交する二股形状に形成されている。
【0030】
ロッド受け部17の二股部17aの上面には、開閉アーム18を回転自在に支持する対向一対の支柱19が設けられ、二股形状の開閉アーム18の付け根部18aが、支柱19間に嵌め入れられている。
【0031】
対向する支柱19と、開閉アーム18の付け根部18aとには、開閉アーム18の回転軸になるボルト20が挿通されている。
【0032】
開閉アーム18の付け根部18aには、切欠き部18bが設けられ、この切欠き部18bのボルト20には、つる巻バネ21が装着され、つる巻ばね21によって開閉アーム18がロッド受け部17の二股部17aの上面に当接するように、即ち、開閉アーム18を閉じる方向に付勢している。
【0033】
開閉アーム18を図5及び図6に示すように、上方へ手で押し上げると、つる巻ばね21が縮んで、ロッド受け部17の二股部17aが開き、手で押し上げた開閉アーム18を離すと、開閉アーム18がロッド受け部17の二股部17aの上面に当接するように、つる巻ばね21によって戻される。
【0034】
開閉アーム18を開いて二股部17a内にラッシングロッド4のロッド軸4bを挿し入れた後に、図7及び図8に示すように、開閉アーム18を閉じると、操作枠11を回転させても、ロッド受け部17の二股部17aからラッシングロッド4のロッド軸4bが抜け出さない。
【0035】
ロッド受け部17の二股部17aの開口が下方向を向くと、ラッシングロッド4の応力が開閉アーム18に加わる。この開閉アーム18に加わる応力を受けるために、ストッパー22を二股部17aの上面に設けている。
【0036】
図5及び図6に示すように、開閉アーム18を手で持ち上げる際に、指先が開閉アーム18の先端に掛かり易くするために、開閉アーム18の先端に、指掛け用の傾斜面23を形成している。
【0037】
次に、図10及び図11は、この発明のターンバックル10の他の実施形態であり、この実施形態は、開閉アーム18を開閉するつる巻ばね21に替え、ロッド受け部17の支柱19と、開閉アーム18の付け根部18aとの間に、スプリングワッシャ24を嵌め入れ、スプリングワッシャ24の弾性により、開閉アーム18を、図10に示す閉じた位置と、図11に示す開いた位置に固定できるようにしている。
【0038】
また、この図10及び図11に示す実施形態では、開閉アーム18の開閉に便利なように、開閉アーム18に指掛け部25を設けている。
【0039】
次に、図12及び図13は、この発明のターンバックルの他の実施形態であり、この実施形態は、開閉アーム18を開いた位置と、閉じた位置にそれぞれ固定できるロック手段を、開閉アーム18の付け根部に収容された、バネ26によってロッド受け部17の支柱19側に押し付けるボール27と、このボール27が、開閉アーム18が開いた位置と閉じた位置で嵌まる、ロッド受け部17の支柱19に設けられた凹所28とによって構成している。
【符号の説明】
【0040】
1 コンテナ
2 コーナ金具
3 係合孔
4 ラッシングロッド
4a 突部
4b ロッド軸
4c フック
4d ピン
5 係留金具
10 ターンバックル
11 操作枠
11a、11b 操作ロッド
12a、12b 軸受部
13 ネジ軸
14 連結部
15 連結ピン
16 弛み止めナット
17 ロッド受け部
17a 二股部
17b ポケット部
18 開閉アーム
18a 付け根部
18b 切欠き部
19 支柱
20 ボルト
21 つる巻バネ
22 ストッパー
23 傾斜面
24 スプリングワッシャ
25 指掛け部
26 バネ
27 ボール
28 凹所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作枠と、この操作枠の下端に設けた軸受部にネジ結合され、操作枠の回転により操作枠の軸方向に相対的に進退するネジ軸とを備え、操作枠の上端に、ラッシングロッドを操作枠に対して進退自在に挿通するロッド受け部を設け、このロッド受け部に、ラッシングロッドを操作枠内に出し入れする二股部を形成し、ロッド受け部の下面に、ラッシングロッドの下端に所定のピッチで設けられた突部を嵌合するポケット部を設けたターンバックルにおいて、上記ラッシングロッドを操作枠内に出し入れする二股部の開口を開閉する開閉アームをロッド受け部に設けたことを特徴とするターンバックル。
【請求項2】
上記開閉アームが、二股部の開口方向と直交する方向に回転軸によって回転可能に設けられ、この回転軸に開閉アームを閉じる方向に付勢するつる巻バネを設けたことを特徴とする請求項1記載のターンバックル。
【請求項3】
上記開閉アームを開位置と閉位置の任意の位置で固定するスプリングワッシャを開閉アームと二股部との間に設けたことを特徴とする請求項1記載のターンバックル。
【請求項4】
上記開閉アームを開位置と閉位置で固定するロック手段を開閉アームと二股部との間に設けたことを特徴とする請求項1記載のターンバックル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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