説明

ダイアモンドの高温/高圧での変色

【課題】 褐色タイプのIIaダイアモンドを褐色からピンク色に変化する方法を提供すること。
【解決手段】 (i)ダイアモンドを完全に囲む圧力伝達媒体におけるダイアモンドの提供によりリアクションマスを生成する段階と、及び
(ii)適切な期間で6.9GPa乃至8.5GPaの圧力下で1900℃乃至2300℃の温度範囲をリアクションマスが受ける段階と、を含む、褐色タイプのIIaダイアモンドを褐色からピンク色に変化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイアモンドの変色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイアモンドは一般的に、Ia,Ib,IIa及びIIbの4つのグループに分けられる。これらのタイプは、通常は赤外線及び紫外線のスペクトルによって区別される。タイプIa及びIbは、単一の代理の窒素若しくはC−センター(C−centres)を含んでいる。Iaは様々な窒素構造の組み合わせを含んでいる。タイプIIaのダイアモンドは数ppmよりわずかな窒素を含み、赤外線で照射された場合、1332乃至400cm−1の範囲で実質的な吸収を示さないダイアモンドとして定義できる。タイプIIaのダイアモンドは、ダイアモンドの結晶格子内の構造的な変形によって引き起こされると信じられている、褐色の色を示すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,124,690号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、黒鉛化を防ぐ圧力において高温度の焼きなましによりタイプIbダイアモンドにおいてタイプIb窒素をタイプIa窒素に変換する工程を記載している。この処理はタイプIbダイアモンドの黄色を減少する効果を有する。
【0005】
本発明は、褐色タイプのIIaダイアモンドを褐色からピンク色に変化する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(i)ダイアモンドを完全に囲む圧力伝達媒体におけるダイアモンドの提供によりリアクションマスを生成する段階と、及び
(ii)適切な期間で6.9GPa乃至8.5GPaの圧力下で1900℃乃至2300℃の温度範囲をリアクションマスが受ける段階と、を含む、褐色タイプのIIaダイアモンドを褐色からピンク色に変化する方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
褐色タイプのIIaダイアモンドを褐色からピンク色に変化する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】タイプIIaダイアモンドの典型的な赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図2】タイプIIaダイアモンドの典型的な紫外線/可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図3】天然の褐色タイプIIaダイアモンドの処理以前の紫外線/可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図4】反応管の圧力伝達媒体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、一般に天然のダイアモンドである褐色タイプIIaダイアモンドは、褐色の着色を引き起こす構造的な変形を修正するための著しい黒鉛化を防ぐ圧力において焼きなましされ、それによって褐色を減少しダイアモンドのピンク色を生成するか若しくは増強する。ピンクダイアモンドが製造される。
【0010】
ピンク色の天然ダイアモンドは稀少である。したがって、本発明は、ダイアモンドの結晶を損傷することなく、天然のIIaダイアモンドのピンク色を生成するか若しくは増強する方法を提供する。
【0011】
タイプIIaダイアモンドの典型的な赤外線吸収スペクトルが図1に示される。しかしながら、本発明の高温及び高圧処理による色の増強に適切であるすべてのタイプIIaダイアモンドではない。ダイアモンドは、例えばピンク色を帯びた褐色などを含有する、濃い色から明るい褐色まで変化できる褐色を有するべきである。本発明に最も適切なかかるタイプIIaダイアモンドは、2ppmよりも薄い濃度、好ましくは0.2ppmよりもわずかな窒素濃度を有し、褐色からピンク色を帯びた褐色を示し、単調に上昇する吸収を示す図2のグラフ線aで示されるような、若しくは図2のグラフ線bで示されるような約390と550nmの中心の広帯域で単調に上昇する吸収で示されるような典型的な紫外線/可視吸収スペクトルを有する。
【0012】
褐色のダイモンドは、約1900℃乃至約2300℃、好ましくは2100℃乃至2300℃の温度範囲での焼きなましを用い、6.9GPa乃至8.5GPa、好ましくは約7.4GPa乃至8.5GPaの圧力下で、一般的に10分間乃至10時間、好ましくは20分間乃至4時間の期間範囲でピンクダイアモンドに変換される。一般的に、焼きなまし温度が高くなるにつれ、焼きなまし時間は短くなる。前述の条件を識別する圧力範囲内の特定の適切な焼きなまし条件の実施例は、
2200乃至2300℃で1時間 2300℃で4時間より短い、好ましくは1時間より短い期間 2100℃で1時間である。
【0013】
タイプIIaダイアモンドの結晶の変色は、焼きなましの前後で得られる結晶の吸収スペクトルの変化によって定量できる。結晶のスペクトルは、結晶の紫外線/可視吸収スペクトルを示す従来手法の分光計の手段によって室温で得られる。結晶の焼きなまし後、結晶のスペクトルは再度室温で得られる。
【0014】
かかるダイアモンドが本発明の方法を受けることは、単調に上昇する吸収の強度の減少及び390と550nmの広域吸収帯の強度の生成若しくは増強に帰着し、この結果はピンク色の増強に帰着する。
【0015】
本発明の方法において、リアクションマスはダイアモンドを完全に囲む圧力伝達媒体におけるダイアモンドの提供により生成される。圧力伝達媒体は、好ましくは、処理されるダイアモンドの全表面上に適用される、圧力が一定に分配される、均一に圧力を伝達する媒体である。適切な媒体の実施例は、ハロゲン化金属塩などの低い剪断強度を有する媒体である。適切なハロゲン化金属塩は、臭化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、臭化セシウム、塩化銅及び臭化銅である。かかる媒体は、ダイアモンドの表面で発生するかもしれない如何なる黒鉛化を最小限に維持することを保証する圧力の所望の均一な分配を提供することが明かになっている。圧力伝達媒体としてハロゲン化金属塩を使用する特定の利点は、処理後に媒体を温水で溶解することによってダイアモンドが容易に回収できることである。
【0016】
本発明の方法は、単一のダイアモンド若しくは複数の個別のダイアモンドを処理するために使用されるかもしれない。複数の個別のダイアモンドが同じに処理される場合、各ダイアモンドは、圧力伝達媒体によって隣り合うダイアモンドから離されるべきである。処理されるダイアモンドの最大量は、使用される高圧/高温装置の性能によってのみ制限される。
【0017】
従来の高温/高温装置は、本発明の方法で使用されるかもしれない。リアクションマスの間接的若しくは直接的な加熱を提供する様々な反応管形状は、特許文献で開示され、本発明の焼きなまし工程の実行において有用である。通常、これらの反応管は、複数の相互に適合する円筒状の要素及び真ん中のシリンダにリアクションマスを含むためのエンドプラグ若しくはディスクからなる。間接的に加熱するタイプの反応管において、円筒状要素の一つは、円筒状要素を通過する電流の径路によって加熱され、それによってリアクションマスを加熱するグラファイトからなる。直接的に加熱するタイプの反応管において、リアクションマスは電気的に伝導性であり、それによって電気的に伝導性のグラファイトのシリンダにおける必要を除外し、電流はリアクションマスを加熱するために直接通過する。
【0018】
本発明は下記の実施例によって例示される。
【0019】
実施例1 図3のグラフ線aで示される処理以前の紫外線/可視吸収スペクトルを伴う天然の褐色タイプIIaダイアモンドが使用された。複数のかかるダイアモンドは図4で例示されるタイプの反応管の圧力伝達媒体に置かれた。図を参照するに、ダイアモンドの結晶10は、結晶が圧力伝達媒体でお互いに個別に分離しているように圧力伝達媒体12に置かれた。ダイアモンドは、媒体において好ましく均一に分散された。圧力伝達媒体は、好ましくは、既に記載のタイプの低い剪断強度媒体である。ダイアモンドを含有する媒体12は、容器14の周りの金属キャニスターを形成する協働する金属カップ16,18によって囲まれる、グラファイト、葉ろう石、酸化マグネシウム、若しくは酸化ジルコニウムからなる容器14に置かれる。金属はモリブデン、タンタル、スチールであるかもしれない。キャニスターは空気の空間を除去するために容器のまわりで圧縮されるかもしれない。ロードされたキャニスターは、従来の高温/高温装置の反応領域に置かれた。カプセルの中身は、2250℃の温度で、7.8GPaの圧力を4時間維持する条件を受けた。カプセルは装置から取り出され、冷却された。キャニスターとグラファイトの容器は取り外され、ダイアモンドが媒体から回収された。処理後のダイアモンドの紫外線/可視吸収スペクトルが図3のグラフ線bに示された。スペクトルは観察されるピンク色の着色をもたらす390及び550nmでの広帯域の存在を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ダイアモンドを完全に囲む圧力伝達媒体における前記ダイアモンドの提供によりリアクションマスを生成する段階と、及び
(ii)適切な期間で6.9GPa乃至8.5GPaの圧力下で1900℃乃至2300℃の温度範囲を前記リアクションマスが受ける段階と、を含む、褐色タイプのIIaダイアモンドを褐色からピンク色に変化する方法。
【請求項2】
前記ダイアモンドは天然ダイアモンドであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タイプIIaダイアモンドは、2ppmよりも薄い窒素濃度を有し、褐色からピンク色を帯びた褐色を示し、単調に上昇する吸収を示すか若しくは約390及び550nmの中心の広帯域で単調に上昇する吸収を示す紫外線/可視吸収スペクトルを有することを特徴とする請求項1若しくは2に記載の方法。
【請求項4】
前記窒素濃度が0.2ppmよりも薄い濃度であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記段階(ii)を受けた後、前記ダイアモンドは単調に上昇する吸収の強度の減少、及び390及び550nmで広域吸収帯の強度の生成若しくは増強を有することを特徴とする前述までの請求項1乃至4のいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
前記段階(ii)の前記温度は2100℃乃至2300℃の範囲内であることを特徴とする前述までの請求項1乃至5のいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
前記段階(ii)の前記圧力は7.4GPa乃至8.5GPaの範囲内であることを特徴とする前述までの請求項1乃至6のいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
前記ダイアモンドが前記段階(ii)の条件を受ける前記期間は10分間乃至10時間の範囲内であることを特徴とする前述までの請求項1乃至7のいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
前記ダイアモンドが前記段階(ii)の条件を受ける前記期間は20分間乃至4時間の範囲内であることを特徴とする前述までの請求項1乃至8のいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
前記圧力伝達媒体によって各前記ダイアモンドが隣り合う前記ダイアモンドと離れて、複数の前記ダイアモンドが前記圧力伝達媒体に置かれることを特徴とする前述までの請求項1乃至9のいずれか一に記載の方法。
【請求項11】
請求項1及び実施例に関して実質的に後述される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−47179(P2013−47179A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−224666(P2012−224666)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【分割の表示】特願2001−570360(P2001−570360)の分割
【原出願日】平成13年4月2日(2001.4.2)
【出願人】(507147219)エレメント シックス テクノロジーズ (プロプライアタリー) リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Element Six Technologies (Proprietary) Limited
【住所又は居所原語表記】Debid Road, Nuffield, Springs, South Africa
【Fターム(参考)】