説明

ダイアモンド若しくは宝石用原石のマーキング

【課題】ダイアモンド若しくは他の宝石用原石の表面へのマーキング方法及びその装置を提供すること。
【解決手段】
ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面へのマークの形成方法及び装置を開示する。そのマークはダイアモンド若しくは宝石用原石のクラリティグレードに悪影響を及ぼさない複数の溝(10)からなり、特定の照明及び拡大条件下にて、高い回折効果を示す。かかるマークの観察装置及び方法をも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイアモンド若しくは他の宝石用原石の表面へのマーキング方法及びその装置に関する。そのマークはいずれのマークでもよいが、本発明は、特にダイアモンドに情報マークを付けることに専ら関するものではない。
【背景技術】
【0002】
ダイアモンドは、例えば、線引ダイ(wire-drawing die)のような産業用ダイアモンドであるが、本発明は、宝石用原石であるダイアモンドにマークを付ける際に特に関心があり、特に、そのクラリティグレードを損なうことなくその宝石用原石の磨き上げたファセットにマークが付けられる際に、裸眼で識別不可能若しくは(宝石商に利用される)10倍のルーペを利用しても識別不可能であるマークを付けるためのものである。
【0003】
それらマークは、シリアルナンバーによりその宝石用原石を一意に識別するために、或いは、ブランド若しくは品質マークとして利用されるが、原石の価値若しくは外観に悪影響を与えるべきではなく、黒変(blackening)を示すことは好ましくはない。
【0004】
国際公開第97/03846号には、適用可能なマークの性質の詳細な説明があり、投影マスクを利用して、紫外領域のレーザ放射線をダイアモンド宝石用原石に照射することにより、マークを付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第97/03846号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
適当な拡大及び照明条件下で観察した際に、優れた解像度と可視性のあるマークを形成することが、通常は望ましく、そのマークはダイアモンド若しくは他の宝石用原石の価値及び外観を損なうことがないものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面に、一つ又はそれ以上の英数文字等を含むマークを形成させる方法であって、ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面に複数の溝を形成する工程を含む方法が提供され、前記マークは裸眼では読み取れないが、所定の拡大条件下では読み取れるように、前記溝が所定の照明条件下にて可視性のある回折効果をもたらす。
【0008】
また、本発明の第一の態様によれば、前述の方法を実行するための装置が提供される。さらに、本発明は、前述の方法によりマーキングされたダイアモンド若しくは宝石用原石にも及ぶ。
【0009】
本発明の第二の態様によれば、ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面にマークを形成する方法であって、ダイアモンドの表面に複数の溝を形成する工程を含む方法が提供され、前記溝はダイアモンド若しくは宝石用原石のクラリティグレードに悪影響を及ぼすことなく、所定の照明条件下にて、可視性のある回折効果をもたらす。
【0010】
また、本発明の第二の態様によれば、前述の方法を実行するための装置が提供される。さらに、本発明は前述の方法によりマーキングされたダイアモンド若しくは宝石用原石にも及ぶ。
【0011】
溝の深さが深くなればなるほど、観察した際のマークの可視性はよくなる。その溝は、マークが適当な観察条件下でかなりの可視性を有するように、適用な深さを有するべきであるが、ダイアモンド若しくは他の宝石用原石のクラリティグレードに悪影響を及ぼすほど深くするべきではない。一つの好ましい実施例では、各溝は、黒変の跡がない、約10nm以上及び/又は約50nm以下の深さである。具体例は、約30nmである。
【0012】
その溝は平行線の形態であってもよく、或いは、所望の効果に応じて、クロスハッチパターンを形成する複数の交差する溝であってもよい。
【0013】
マーキングは適当な手段、例えば、エキシマーレーザによるエッチング若しくはプラズマエッチングを利用して行われるが、好ましくはマーキングはイオンビームを利用して実行され、さらに好ましくは集束イオンビームにてダイアモンド表面に直接書き込まれる。線量を制限することにより、カーボン原子のスパッタリングを回避することが可能であり、そのスパッタリングは材料の直接的な除去を引き起こす。これにより、マークの深さと良好な解像度を制御することが可能となる。通常、ガリウムイオンが利用されるが、代替に、他の適当なイオンビームをも利用できる。
【0014】
各入射イオンは多くの数のカーボン原子をそのサイトから変位させて、ダイアモンド結晶に空隙及び空孔が生じる。ダメージ量(結晶格子の不規則)が増加するにつれて、ダイアモンドのsp結合は擬グラファイトsp結合により置換される傾向がある。上記結合は化学的エッチにより攻撃されて不規則層を除去させる。線量を制限することにより、十分な線量が与えられると、入射イオンにより、ダイアモンドを擬グラファイト若しくは他の非ダイアモンド構造に変化させる不規則化を引き起こし、その構造は、例えば、融解硝酸カリウムのような強力な酸化剤を約380乃至550℃の温度で数分乃至数時間の時間で洗浄される。
【0015】
硝酸カリウムの使用は、他の公知な方法よりも不規則化ダイアモンドを除去する際に、より効果的であり、よって、比較的低線量のイオンで一定深さのマークを作ることが可能となることが判明した。
【0016】
他の適当な酸化剤には、アルカリ金属塩や、XnYmの形で表わされる化合物のような融解化合物があり、ここで、X基はLi+、Na+、K+、Rb+,Cs+或いは他のカチオンであり、Y基はOH-、NO-、O2-、O2-、CO2-或いは他のアニオンであり、整数であるn及びmは電荷バランスを維持させるために使われる。かかる化合物の混合物も利用できる。空気若しくは他の酸素含有ガスも存在する。
【0017】
代替として、ダイアモンドの不規則層は酸若しくは酸に溶解させた硝酸カリウムを利用して除去される。しかしながら、例えば、融解硝酸カリウムの使用によりアシッドフューム(acid fume)を排除する。さらに、消費された酸を処理する必要性を排除し、もって、安全で、環境及び経済的便益をもたらす。
【0018】
ダイアモンドの表面にイオンビームで加えた不規則化の深さを最小化させる必要がある。不規則化の深さはイオンの広がりにより決定される。50keVのガリウムでは、上記広がりは約30nmである。最小の線量は約1013/cmであり、好ましくは約1014/cm乃至1015/cmであるが、良好なマークは適切な中程度の線量にて作ることが可能であり、好ましい最大線量は約1016/cm若しくは約1017/cmまでである。しかしながら、線量は利用するイオン及びそのイオンのエネルギー(keVの単位で測定される)に依存する。イオンビーム線量はマーキング中のサンプル表面の単位面積当たりの入射イオンの全数である。ビーム電流は約0.5nAであり、ビームエネルギーは約10keV若しくは約30keV以上、及び/又は約100keV若しくは約50keV以下である。
【0019】
マークの深さを一連のさまざまなビームエネルギーのビーム線量に対してプロットすると、ビームエネルギーの増加に伴いマークの深さが増加している。マークの特徴は、マークの所望の深さになる線量/エネルギーの組合わせから選択することにより最適化される。
【0020】
マークされるべき領域及び/又は周辺領域は、マーク形成に先立ち、例えば、金のような導電層で塗布され、荷電するのを防止するために、イオンビームによるマーキング前に電気接続が形成される。金若しくは他の被膜の厚さは、ビームエネルギーによるマークの深さの変化により変化し、作られるマークを最適化させるように選択される。しかしながら、例えば、荷電を防止しながらのマーキング中に、電子フラッド銃(electron flood gun)からの電子(例えば、約1乃至100eV)の低エネルギー源でマークされるべき領域を照射されることが好ましい。
【0021】
集束イオンビームが複数の溝を形成させるために利用されると、本発明の方法にはマスキングは必要なく、溝が形成されることが要請されている位置に、イオンビームをダイアモンドの表面に直接当てることができる精度がある。しかしながら、他の方法ならば、溝を形成させる方法はあまり精度がよくなく、マーキングを回避させる溝間の領域をマスクする必要がある。
【0022】
本発明の第三の態様によれば、本発明の第一及び第二の態様の方法を利用して、ダイアモンドに形成されたマークを観察する装置であって、所定の波長若しくは波長帯の光の回折角に対応する角度で指向性光によりマークを照射させる照射手段と、前記マークを観察するための観察手段と、前記マークの観察画像を拡大する拡大手段とを具備する装置を提供する。さらに、本発明は前記した装置に対応するマークを観察する観察方法にも拡張される。
【0023】
マークは暗い背景に対して観察されることが好ましく、つまり、照明光は原石から反射と、マークの後ろ若しくはマーク近傍に直接現れることを実質的に防止することが好ましい。上記のことを達成させるために、供給される照明光の角度及び方向(及びラインの配向及び間隔)は、光が不必要な経路をたどらないことを確実にするように選択しなければならないことは、当業者には明白であろう。
【0024】
マークの観察に必要な通常の拡大範囲は、10倍乃至50倍である。
【0025】
複数の溝と指向性光との間の距離は、観察した際に現れるマークの色を決める。一般の回折格子では、
dsinθ = ±nλ
の関係があり、ここで、dは各溝間の距離であり、θは入射光の角度であり、λは回折光の波長であり、nは整数である。nは1であることが好ましい。
【0026】
したがって、マークがダイアモンドに形成されると、d及びnは決まり、回折光の波長、つまり、観察した際に現れるマークの色は、入射光の角度を変化させることにより変化する。よって、観察した際にマークを青色で表わしたいのなら入射光の角度は、つまり、上記式を利用して、λが約450nmであるようにθが設定される。同様に、マークを赤で表わしたいのなら、λを約620nmであるようにθが設定される。
【0027】
本発明の第三の態様による装置の一つの実施例では、照明手段は光源と、入射光の経路に配置された透明スクリーンとを具備し、前記スクリーンは内部に形成された二つの開口部を有し、各開口部は通常中央位置の何れかの側に形成され、二つの角度指向性光が生じる。開口部間の距離が入射光源の角度を決定する。しかしながら、指向性光源は従来公知の手段、例えば、二つの分離光源により提供されると考えられる。従来公知の顕微鏡はリモートタングステン光バルブにより照射されるオプティカルファイバーを有する円形リング型ソースを具有するッ照明手段を具備する。本発明の照明手段は、照明器の全てではないが二つの正反対のセクションをマスクオフ(mask off)することにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一及び第二の態様の方法及び装置を利用して形成されたマークタイプに拡大模式図である。
【図2】図1のA−A線に沿って切った、さらに拡大させた断面図である。
【図3】本発明の第三の態様による装置の実施例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施を、以下の例と添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0030】
図面の図1を参照するに、英数文字の形をしたマークは複数の等間隔の平行の細長い溝10により構成されており、それぞれの溝は距離dだけ離れている。各溝10は、通常、図2に示すように正方形若しくは矩形の断面を有している。あるいは、正弦波プロファイルが不必要な高次回折を低減させるのには好ましい。
【0031】
各溝の具体的な形成方法を、以下に説明する。
【0032】
ダイアモンド宝石用原石を適当なホルダーに取り付け、FEI又はMicrionにより販売されている集束イオンビーム源を装備した真空チャンバーに設置する。露光中に、ダイアモンドが荷電しないように、マークされるべき領域は、例えば、電子源として、1乃至100eVの低エネルギーを与えるMicrionから販売されている電子フラッド銃を利用して照射される。
【0033】
例えば、ラスタースキャン若しくは同様なビームスキャンにて集束イオンビームを利用して、電界偏向(代わりとして、ダイアモンドが移動するが、これはあまり実用的ではない)及びイオンビームを制御する任意の適当なソフトウエア、一連の密接な間隔の平行ラインが、ダイアモンドファセットに「書込まれる」。
【0034】
サンプルが真空チャンバーから取外され、ステンレススチールのるつぼに置かれ、融解硝酸カリウムにような強力な酸化剤で、約1又は2時間の間覆われる。その後、そのサンプルは冷却され、水及びエタノールを用いて洗浄する前に、硝酸カリウムから取除かれ、よって、イオンビームにより不規則化されたダイアモンド表面部分を除去し、黒変の跡のない、約30乃至35nmの深さの一連の密接な間隔にある溝を残す。
【0035】
洗浄前に検査すると、例えば、反射光顕微鏡にて観察すると、露光領域は擬グラファイト外観として識別可能である。かかるマークは、ダイアモンドのクラリティグレードを実質的に縮減させる点において、ダイアモンドのグレーダーには許容されない。しかしながら、強力な酸化剤を利用して洗浄すると、顕微鏡では、マークとその周辺領域との間に全くコントラストがなく、そのマークを容易には観察できない。マークは、例えば、マークが青色に表れる青の特定の波長の回折光の角度に対応する角度で、好ましくは二つの指向性光源により照明を当てた際にのみ可視化される。かかるマークは、ダイアモンドのクラリティグレードに悪影響を及ぼさないという点で、ダイアモンドのグレーダーには許容される。
【0036】
密接な間隔の溝は、図面の図1に示すように、英数文字等の「識別不可能なアウトライン」内に形成されることが好ましい。
【0037】
図面の図3を参照するに、前記された方法によりつくられた マークを観察するための方法及び装置は、以下の例により説明する。
【0038】
マークの付いたダイアモンド104が従来公知の顕微鏡102の観察表面100に置かれる。ダイアモンド104は垂直軸Yに対して角度θを有する二つの指向性光源106により照射される。前述したように、θは、例えば、望むならば青若しくは赤として表わされるように選択される。よって、マークを青で表わしたいのなら、dは約1200nmであり、θは以下の式を満たすように選択される:
dsinθ = (約)450nm
ここで、nは1であり、450nmは青色光のおおよその波長で、図3のXでの回折光の波長である。この場合、θは22°である。
【0039】
指向性光源には、通常、リング形照射器を備えられており、照明器の全てではないが、二つの正反対の部分がマスクオフされている。しかしながら、何れかの適当な光源は同じ効果が生じるように利用される。
【0040】
本発明は前記した例により純粋に説明し、変形例は本発明の精神内で可能であり、説明した特徴の等価なものにまで及ぶ。さらに、本発明は、説明した個々の特徴にあり、本願若しくは例示に暗示され、図面、かかる特徴の組合わせ、かかる特徴若しくは組合わせの一般化させたものにも暗示されている。

(1) ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面に、一つ又はそれ以上の英数文字等からなるマークを形成する方法であって、ダイアモンド若しくは宝石用原石の前記表面に複数の溝を形成する工程を含み、前記マークは裸眼では可読できず、前記溝は所定の照明条件下にて可視性のある回折効果をもたらし、前記マークが所定の拡大条件下にて可読される方法。
(2) 前記溝は集束イオンビームにより形成される請求項1記載の方法。
(3) ダイアモンド若しくは宝石用原石の前記表面の結晶格子は前記集束イオンビームにより不規則化され、強力な酸化剤により除去される請求項2記載の方法。
(4) 前記強力な酸化剤は融解硝酸カリウムである請求項3記載の方法。
(5) 前記強力な酸化剤はXnYmの形の化合物であり、ここで、X基はLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+若しくは他のカチオン又はそれらの混合物であり、Y基はOH、NO3‐、O2‐、O2‐、CO2‐若しくは他のアニオン又はそれらの混合物であり、整数n及びmは電荷バランスを維持させるように利用される請求項3記載の方法。
(6) 前記溝は実質的に等間隔に離れており、平行で細長い溝として形成される請求項1乃至5のうち何れか1項記載の方法。
(7) 複数の溝の交差した組が形成されて網かけ効果をもたらす請求項6記載の方法。
(8) 前記集束イオンビームは50keV又はそれ以下のビームエネルギーを有する請求項2乃至7のうち何れか1項記載の方法。
(9) 前記集束イオンビームは約0.5nAのビーム電流を有する請求項2乃至8のうち何れか1項記載の方法。
(10) 前記集束イオンビームにより生じるイオンの線量は約1013/cm乃至1017/cmである請求項2乃至9のうち何れか1項記載の方法。
(11) 前記線量は約1014/cm乃至1016/cmである請求項10記載の方法。
(12) マークを形成させるべきダイアモンド若しくは宝石用原石の前記表面領域は、荷電を排除させるために、電子の低エネルギー源で照射させる請求項2乃至11のうち何れか1項記載の方法。
(13) 前記ダイアモンドは宝石用原石のダイアモンドである請求項1乃至12のうち何れか1項記載の方法。
(14) ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面に、一つ又はそれ以上の英数文字等からなるマークを形成させる装置であって、ダイアモンド若しくは他の宝石用原石の前記表面に複数の溝を形成させる手段を具備し、前記マークは裸眼では可読できず、前記溝は所定の照明条件下で可視性のある回折効果をもたらし、所定の拡大条件下にて可読できる装置。
(15) 前記複数の溝を形成させる前記手段は、前記ダイアモンド若しくは宝石用原石の部分を照射させる手段と、照射により前記ダイアモンド若しくは宝石用原石の部分の結晶格子を不規則化させて、不規則化層が生じ、前記不規則化層を除去する手段とを具備する請求項14記載の装置。
(16) 前記ダイアモンドの部分を照射させる前記手段は集束イオンビームを具備する請求項15記載の装置。
(17) 前記不規則化層は強力な酸化剤により除去される請求項15又は16記載の装置。
(18) 前記強力な酸化剤は融解硝酸カリウムである請求項17記載の装置。
(19) 前記強力な酸化剤はXnYmの形の化合物であり、ここで、X基はLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+若しくは他のカチオン又はそれらの混合物であり、Y基はOH、NO3‐、O2‐、O2‐、CO2‐若しくは他のアニオン又はそれらの混合物であり、整数n及びmは電荷バランスを維持させるように利用される請求項17記載の装置。
(20) 前記集束イオンビームは50keV又はそれ以下のビームエネルギーを有する請求項15乃至19のうち何れか1項記載の装置。
(21) 前記集束イオンビームは約0.5nAのビーム電流を有する請求項15乃至20のうち何れか1項記載の装置。
(22) 前記集束イオンビームにより生じるイオンの線量は約1013/cm乃至1017/cmである請求項15乃至21のうち何れか1項記載の装置。
(23) 前記線量は約1014/cm乃至1016/cmである請求項22記載の装置。
(24) 荷電を排除させるために、電子の低エネルギー源でマークを形成させるべきダイアモンドの前記表面の領域を照射させる手段をさらに具備する請求項14乃至23のうち何れか1項記載の装置
(25) 前記照射させる手段は電子フラッド銃である請求項24記載の装置。
(26) 前記マークはダイアモンドのクラリティ価値に悪影響を及ぼさない請求項1乃至13のうち何れか1項記載の方法又は請求項14乃至25のうち何れか1項記載の装置。
(27) 請求項1乃至13のうち何れか1項記載の方法により形成させたマークを有するダイアモンド又は宝石用原石。
(28) ダイアモンド又は宝石用原石の表面にマークを形成させる方法であって、ダイアモンド若しくは宝石用原石に複数の溝を形成させる工程を含み、前記溝は、ダイアモンド若しくは宝石用原石のクラリティの価値に悪影響を及ぼさずに、所定の照明条件下で可視性のある回折硬化をもたらす方法。
(29) 前記マークは一つ又はそれ以上の英数文字等の形である請求項28記載の方法。
(30) 前記溝は集束イオンビームにより形成される請求項28又は29記載の方法。
(31) 前記ダイアモンド若しくは宝石用原石の前記表面領域の結晶格子は前記集束イオンビームにより不規則化され、強力な酸化剤により除去される請求項29又は30記載の方法。
(32) 前記強力な酸化剤は融解硝酸カリウムである請求項31記載の方法。
(33) 前記強力な酸化剤はXnYmの形の化合物であり、ここで、X基はLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+若しくは他のカチオン又はそれらの混合物であり、Y基はOH、NO3‐、O2‐、O2‐、CO2‐若しくは他のアニオン又はそれらの混合物であり、整数n及びmは電荷バランスを維持させるように利用される請求項31記載の方法。
(34) 前記溝は実質的に等間隔に離れており、平行で細長い溝として形成される請求項28乃至33のうち何れか1項記載の方法。
(35) 二つ以上の溝の交差した組が形成されて網かけ効果をもたらす請求項34記載の方法。
(36) 前記集束イオンビームは50keV又はそれ以下のビームエネルギーを有する請求項29乃至35のうち何れか1項記載の方法。
(37) 前記集束イオンビームは約0.5nAのビーム電流を有する請求項29乃至36のうち何れか1項記載の方法。
(38) 前記集束イオンビームにより生じるイオンの線量は約1013/cm乃至1017/cmである請求項29乃至37のうち何れか1項記載の方法。
(39) 前記線量は約1014/cm乃至1016/cmである請求項38記載の方法。
(40) マークを形成すべきダイアモンド又は宝石用原石の前記表面領域は、荷電を排除するために、電子の低エネルギー源で照射される請求項28乃至39のうち何れか1項記載の方法。
(41) 請求項28乃至40記載の方法により形成されたマークを有するダイアモンド。
(42) ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面にマークを形成させる装置であって、ダイアモンドの表面に複数の溝を形成させる手段を具備し、前記溝は、ダイアモンドのクラリティの価値に悪影響を及ぼすことなく、所定の照明条件下にて可視性のある回折効果をもたらす装置。
(43) 前記複数の溝を形成させる前記手段は、前記ダイアモンド若しくは宝石用原石の部分を照射させる手段と、照射により前記ダイアモンド若しくは宝石用原石の部分の結晶格子を不規則化させて、不規則化層が生じ、前記不規則化層を除去する手段とを具備する請求項42記載の装置。
(44) 前記ダイアモンド若しくは宝石用原石の部分を照射させる前記手段は集束イオンビームを具備する請求項43記載の装置。
(45) 前記不規則化層は強力な酸化剤により除去される請求項43又は44記載の装置。
(46) 前記強力な酸化剤は融解硝酸カリウムである請求項45記載の装置。
(47) 前記強力な酸化剤はXnYmの形の化合物であり、ここで、X基はLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+若しくは他のカチオン又はそれらの混合物であり、Y基はOH、NO3‐、O2‐、O2‐、CO2‐若しくは他のアニオン又はそれらの混合物であり、整数n及びmは電荷バランスを維持させるように利用される請求項45記載の方法。
(48) 前記集束イオンビームは50keV又はそれ以下のビームエネルギーを有する請求項44乃至47のうち何れか1項記載の装置。
(49) 前記集束イオンビームは約0.5nAのビーム電流を有する請求項44乃至48のうち何れか1項記載の装置。
(50) 前記集束イオンビームにより生じるイオンの線量は約1013/cm乃至1017/cmである請求項44乃至49のうち何れか1項記載の装置。
(51) 前記線量は約1014/cm乃至1016/cmである請求項50記載の装置。
(52) マークを形成すべきダイアモンド又は宝石用原石の前記表面領域は、荷電を排除するために、電子の低エネルギー源で照射される請求項42乃至51のうち何れか1項記載の装置。
(53) 前記照射させる手段は電子フラッド銃である請求項52記載の装置。
(54) ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面にある、拡大させて照明を当てた際にかなりの回折効果をもたらす複数の溝からなるマークを観察する装置であって、所定の波長若しくは波長帯の光の回折角度に対応する角度で指向性光で照明を当てる照明手段と、前記マークを観察する観察手段と、前記マークの観察画像を拡大する拡大手段とを具備する装置。
(55) 照明光の角度及び方向は、前記マークが相対的に暗い背景に対して観察可能であるように供給される請求項54記載の装置。
(56) ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面にある、照明を当てた際に回折効果をもたらす複数の溝からなるマークを観察する方法であって、所定の波長若しくは波長帯の光の回折角度に対応する角度で指向性光により前記マークに照明を当てる工程と、前記マークを観察する工程と、前記マークの観察画像を拡大させる工程とを含む方法。
(57) 照明光の角度及び方向は相対的に暗い背景に対して前記マークが観察させるように選択される工程を含む請求項56記載の方法。
(58) 添付図面を参照して本願で実質的に説明する、ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面にマークを形成させる方法。
(59) 添付図面を参照して本願で実質的に説明する、ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面にマークを形成させる装置。
(60) 添付図面を参照して本願で実質的に説明する、ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面に形成されたマークを観察する装置。
(61) 添付図面を参照して本願で実質的に説明する、ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面に形成させたマークを観察する方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアモンド若しくは宝石用原石の表面に、一つ又はそれ以上の英数文字等からなるマークを形成する方法であって、ダイアモンド若しくは宝石用原石の前記表面に複数の溝を形成する工程を含み、前記マークは裸眼では可読できず、前記溝は所定の照明条件下にて可視性のある回折効果をもたらし、前記マークが所定の拡大条件下にて可読される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−285733(P2009−285733A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−190919(P2009−190919)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【分割の表示】特願2000−526381(P2000−526381)の分割
【原出願日】平成10年12月23日(1998.12.23)
【出願人】(500297410)
【Fターム(参考)】