説明

ダイカストマシンの型厚調整機構

【課題】駆動モータの位置を変えることにより、型厚調整中間ギアの駆動モータギアからの脱輪、装置高さを一挙に解決することができるような構造を提供することをその解決課題とする。
【解決手段】本発明のダイカストマシンMの型厚調整機構は、移動ダイプレート1を往復移動させるトグル機構Tの一方端が取着されているトグルサポート34と、トグルサポート34の四隅に回動自在に設けられ、挿通されたタイバー12が進退可能に螺合し、トグルサポート34の背面からの突出部分に型厚調整従動ギア40aが刻設されている型厚調整回動筒体40と、トグルサポート34の背面に設けられた支持ローラ42にて回動自在に配設され且つ前記型厚調整従動ギア40aにそれぞれ噛合する型厚調整中間ギア41と、トグルサポート34の側面に配設され、前記型厚調整中間ギア41に噛合した駆動モータギア43aを有する駆動モータ43とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイカストマシンの型厚調整機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイカストマシン100の型厚調整機構に使用される駆動モータ143はトグルサポート134の上辺中央に設けられている。一方、トグルサポート134の背面には支持ローラ142により型厚調整中間ギア141が回動自在に設けられ、この型厚調整中間ギア141にトグルサポート134の四隅に設けられた型厚調整従動ギア140aが噛合しており、金型交換時の型厚調整や型締力の調整において、駆動モータ143を正転又は逆転させることで、タイバー112に対して型厚調整従動ギア140aをトグルサポート134と共に前進・後退させ、トグルサポート134と固定ダイプレート(図示せず)との間の距離を調整して型厚調整及び型締力を調整するようにしている。
【0003】
このような型厚調整において、駆動モータ143を回転させてトグルサポート134を前進・後退させる場合、トグルサポート134の重量の関係からどうしても上側の型厚調整従動ギア140a1の方が回りやすく、これに対して下側の型厚調整従動ギア140a2の方が回り難くて下側の型厚調整従動ギア140a2の方に力が多く加わるようになる。
【0004】
型厚調整中間ギア141は図5に示すように、外周に歯車が刻設されたリング状のもので型厚調整従動ギア140aに加わる力がアンバランスになるとどうしても水平方向に広がり垂直方向が縮み、わずかではあるが楕円に変形する。図中、破線は力が加わっていない状態の真円を示し、実線は変形楕円を示す。
【0005】
そうするとトグルサポート134の上部中央に設けられている駆動モータ143の駆動ギア143aから型厚調整中間ギア141が離間する方向に変形することになり、両者の噛合が甘くなり、甚だしい場合は噛合が外れることがある。
【0006】
その解決方法として型厚調整中間ギア141の強度を高めるため、肉厚とその幅を大きくすればよいのであるが、最近の装置重量の軽量化という設計思想からこのような解決方法を採用することができない。
【特許文献1】特開2005‐152915
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題点を克服するためになされたので、駆動モータの位置を変えることにより、型厚調整中間ギアの駆動モータギアからの脱輪、装置高さを一挙に解決することができるような構造を提供することをその解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のダイカストマシンMの型厚調整機構は、
(a)移動ダイプレート1を往復移動させるトグル機構Tの一方端が取着されているトグルサポート34と、
(b)トグルサポート34の4隅に回動自在に設けられ、挿通されたタイバー12が進退可能に螺合し、トグルサポート34の背面からの突出部分に型厚調整従動ギア40aが刻設されている型厚調整回動筒体40と、
(c)トグルサポート34の背面に設けられた支持ローラ42にて回動自在に配設され且つ前記型厚調整従動ギア40aにそれぞれ噛合する型厚調整中間ギア41と、
(d)トグルサポート34の側面に配設され、前記型厚調整中間ギア41に噛合した駆動モータギア43aを有する駆動モータ43とで構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
駆動モータギア43aがトグルサポート34の側面に配設され型厚調整中間ギア41に噛合するようになっているので、従来例で示したように型厚調整時に型厚調整中間ギア41を回動させた場合に型厚調整中間ギア41が水平方向に広がるようにやや楕円形に撓んだとしても変形方向が駆動モータギア43a側であるため、駆動モータギア43aと型厚調整中間ギア41との噛み合いが甘くなったり、甚だしくは脱輪するというようなことはない。
【0010】
これに加えてこのように駆動モータギア43aがトグルサポート34の側面に配設されているので、駆動モータギア43aがトグルサポート34から上に飛び出さず、装置高さをそれだけ低く出来るし、付随的にトグルサポート34の背面を覆うカバーS1やトルグ機構Tの上面を覆うトルグカバー(図示せず)の形状や取り付けもそれだけ簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明のダイカストマシンMの概略平面図、図2はその概略正面図である。図において、土台であるフレーム21上の右端に固定ダイプレート23が固定され、該固定ダイプレート23から所定の距離を置いて左端にトグルサポート34がフレーム21に対してスライド自在に配設されている。そして、前記固定ダイプレート23とトグルサポート34との間に4本のタイバー12が架設されている。
【0012】
そして前記固定ダイプレート23と対向して移動ダイプレート1が前記タイバー12にガイドされて固定ダイプレート23に近接離間可能に配設されている。該固定ダイプレート23と移動ダイプレート1との対向面がそれぞれ金型取付面23a、2aとなっており、移動金型K1、固定金型K2がそれぞれ装着できるようになっている。また、前記移動ダイプレート1の背面中央に突設されたバックサポート部6内にエジェクタピンを移動させるためのエジェクタピン駆動装置Eが取り付けられるようになっている。
【0013】
前記移動ダイプレート1とトグルサポート34との間には型締装置としてのトグル機構Tが設けられ、前記トグルサポート34の背面には型締用駆動手段としてのトグル駆動装置30(本実施例では油圧シリンダ)が取り付けられている。トグル駆動装置30は、油圧シリンダ等を駆動源とし、クロスヘッド35を進退させることによって、トグル機構Tを作動させる。
【0014】
トグルサポート34の四隅には、図3に示すように、型厚調整回動筒体40が回動自在に取り付けられており、この型厚調整回動筒体40の内周に設けられたタイバー噛合雌ネジ40bにタイバー12の噛合雄ネジ12bが噛合している(図4参照)。そして型厚調整回動筒体40の、トグルサポート34の背面から突出している部分に型厚調整従動ギア40aが刻設されている。
【0015】
トグルサポート34の背面には、図3に示すように、リング状でその外周に歯が刻設されている型厚調整中間ギア41がその内側四隅を支持ローラ42に支えられて回動自在に配設されており、トグルサポート34の四隅に設けられた前記型厚調整回動筒体40の型厚調整従動ギア40aに噛合して四隅の型厚調整回動筒体40を同期回転させるるようになっている。そしてトグルサポート34の側面には駆動モータ43が設置されており、前記型厚調整中間ギア41に駆動モータ43の駆動モータギア43aが側方から噛合している。
【0016】
トグル機構Tは前記クロスヘッド35に対して揺動自在に支持された連結レバー36、前記トグルサポート34に対して揺動自在に支持されたトグル作動レバー32、及び、前記移動ダイプレート1に対して揺動自在に支持されたトグルアーム33から成り、前記トグル作動レバー32と連結レバー36との間、及び、トグル作動レバー32とトグルアーム33との間がそれぞれリンク結合されている(図2参照)。これにより、前記移動ダイプレート1が固定ダイプレート23方向に前進して型閉に続く型締が行われると、トグル駆動装置30による推進力にトグル倍率を乗じた型締力が発生して該型締力によって型締が行われる。勿論、トグル機構Tを使用することなく、トグル駆動装置30で直接型締することもできる。移動ダイプレート1はその四隅にそれぞれタイバー12が挿通され、タイバー12に沿って摺動して移動ダイプレート1が往復移動する。
【0017】
また、クロスヘッド35からトグルサポート34側に安全バー35aが伸びており(図4参照)、これがトグルサポート34に設けられた貫通孔34aにクロスヘッド35の動きに合わせてスライド可能に挿通されている。該安全バー35aの先端には係合溝35bが凹設されている。
【0018】
トグルサポート34の背面中央にはトグル駆動装置30が設けられており、そのシリンダロッド30aがクロスヘッド35に装着され、シリンダロッド30aの出没に合わせてクロスヘッド35が移動ダイプレート1を往復移動させる。クロスヘッド35はその両サイドの水平にて平行に配設された一対のクロスヘッドガイド37にガイドされつつ往復移動する。
【0019】
前記型厚調整中間ギア41或いはタイバー12はトグルサポート34の背面側に突出するように装着され、且つ動くので安全のためにそれぞれカバーS1、S2…がなされている。
【0020】
カバーS1(図3参照)は中央から2分割されてトグルサポート34の略背面全面を覆うような大型のもので、主として型厚調整中間ギア41をカバーしており、トグルサポート34の背方に大きく突出するトグル駆動装置30及び安全装置のカバーS3の部分が切り欠かれている。カバーS2はタイバー用のもので、タイバー12の端部をトグルサポート34に取り付けるタイバー取付板38に固定され、トグルサポート34の背方及び内方に延びてタイバー12の上面及び両側面をカバーする。カバーS3は安全装置を覆うもので、一方のカバーS1の切り欠き内に設けられている。
【0021】
このようなダイカストマシンMおいて、金型Kを変更して型厚や型締力を調整する場合に駆動モータ43を作動させて型厚調整中間ギア41を回転させ、これに噛合する型厚調整従動ギア40aを同期回転させ、タイバー12対してトグルサポート34を前進・後退させる。このとき従来例で述べたように、重量の関係から下側の型厚調整従動ギア40a2に、より大きな力が加わって型厚調整中間ギア41がわずかながら楕円形に変形する。変形方向は楕円の長軸側が水平方向で、トグルサポート34の側方に設置された駆動モータ43の駆動モータギア43aに強く噛合する。従って、駆動モータギア43aから型厚調整中間ギア41が回動中に噛合が甘くなったり、外れたりするようなことはなく、円滑に型厚調整を行うことができる。型厚調整が終了すると、通常のダイカスト作業に入る。
【0022】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例におけるダイカストマシンの平面図
【図2】図1の正面図
【図3】本発明の実施例におけるトグルサポートの背面図
【図4】図3の縦断面図
【図5】従来のトグルサポートの背面図
【符号の説明】
【0024】
T トグル機構
1 移動ダイプレート
12 タイバー
34 トグルサポート
40a 型厚調整従動ギア
41 型厚調整中間ギア
42 支持ローラ
43 駆動モータ
43a 駆動モータギア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)移動ダイプレートを往復移動させるトグル機構の一方端が取着されているトグルサポートと、
(b)トグルサポートの4隅に回動自在に設けられ、挿通されたタイバーが進退可能に螺合し、トグルサポートの背面からの突出部分に型厚調整従動ギアが刻設されている型厚調整回動筒体と、
(c)トグルサポートの背面に設けられた支持ローラにて回動自在に配設され且つ前記型厚調整従動ギアにそれぞれ噛合した型厚調整中間ギアと、
(d)トグルサポートの側面に配設され、前記型厚調整中間ギアに噛合する駆動モータギアを有する駆動モータとで構成されたことを特徴とするダイカストマシンの型厚調整機構。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−82628(P2010−82628A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251297(P2008−251297)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)