説明

ダイカスト用装置及びダイカスト法

【課題】キャビティ内への溶湯の充填完了前にランナーを加圧する場合の押湯効果に優れたダイカスト用装置及び当該ダイカスト用装置を用いるダイカスト法の提供。
【解決手段】ダイカスト用装置1は、キャビティ53と該キャビティ53に連通するランナー50を画成するダイカスト金型10を備えている。また、キャビティ53内に向けて溶湯を充填する第1加圧手段24、25と、ランナー50の溶湯を加圧する第2加圧手段40、41、43とを備えている。第2加圧手段40、41、43はダイカスト金型10の型開き方向に略直交する方向に向けて進退する加圧ロッド43を備えている。ランナー50は加圧ロッド43の先端部43Aの断面形状に対応する対応形状部51を有し、該対応形状部51を画成する面51Aと加圧ロッド43の先端部43Aとの隙間が0.5〜3.0mmに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト用装置及びダイカスト法に関し、特にダイカスト金型のランナーを加圧する為の加圧手段を備えたダイカスト用装置及び当該ダイカスト用装置を用いて行うダイカスト法に関する。
【背景技術】
【0002】
スリーブ内の溶湯をダイカスト金型の内部に画成されたキャビティに向けて充填する第1のプランジャと、ランナーの溶湯を加圧する第2のプランジャを設けるようにしたダイカスト用装置は下記特許文献1により公知である。特許文献1は、第2のプランジャによるランナーの溶湯への加圧を第1のプランジャによる溶湯のキャビティ内への充填完了よりも前、好ましくは完了直前に行うことを示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−117411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、溶湯のキャビティ内への充填完了よりも前のタイミングにおいてはランナーの溶湯の流動性がいい状態にあるので、特許文献1に開示されるダイカスト装置を用い、このタイミングでランナーの溶湯を加圧したとしても、第2のプランジャとランナーを画成する面との隙間から溶湯が逆流してしまい、圧力を保持することができないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、キャビティ内への溶湯の充填完了前にランナーを加圧する場合の押湯効果に優れたダイカスト用装置及び当該ダイカスト用装置を用いるダイカスト法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のダイカスト用装置1は、キャビティ53と該キャビティ53に連通するランナー50を画成するダイカスト金型10と、該キャビティ53内に向けて溶湯を充填する第1加圧手段24、25と、該ランナー50の溶湯を加圧する第2加圧手段40、41、43とを備え、該第2加圧手段40、41、43が該ダイカスト金型10の型開き方向に略直交する方向に向けて進退する加圧ロッド43を備えたダイカスト用装置1において、該ランナー50は該加圧ロッド43の先端部43Aの断面形状に対応する対応形状部51を有し、該対応形状部51を画成する面51Aと該加圧ロッド43の先端部43Aとの隙間が0.5〜3.0mmに設定されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、該第1加圧手段24、25は該ダイカスト金型10に配設されたスリーブ23内の溶湯を該キャビティ53内に向けて充填するものであり、該ランナー50は、該型開き方向に略一致する方向に延びる第1ランナー50Aと、該型開き方向に略直交する方向に延びる第2ランナー50Bとを備え、該第2ランナー50Bが該対応形状部51を有していることが好ましい。
【0008】
ここで、該第2ランナー部50Bは該対応形状部51と連通する溝部54を備えており、該溝部54内で凝固した溶湯が押出しピン55により押し出されることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、上記ダイカスト用装置1によりダイカストを行うダイカスト法を提供している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1乃至請求項3記載のダイカスト用装置、請求項4記載のダイカスト法によれば、キャビティ内への溶湯の充填完了前にランナーを加圧した場合でも十分な押湯効果が得られるので、キャビティ内で成形されるダイカスト品の品質を向上させることができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係るダイカスト用装置を示す断面図であり、加圧ロッドが後退位置にある状態を示す。
【図2】本実施形態に係るダイカスト用装置を示す断面図であり、加圧ロッドが前進位置にある状態を示す。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】変形例を示す図2のB−B断面図である。
【図5】変形例に係るダイカスト用装置を示す断面図であり、押出しピンによりダイカスト品が押し出された状態を示す。
【図6】変形例に係る図5のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係るダイカスト用装置1について図1乃至図3に基づき説明する。図1に示されるように、ダイカスト金型10は、固定型20と可動型30とを備えている。固定型20は固定ホルダー21及び固定ダイス22からなり、固定ホルダー21には射出スリーブ23(スリーブ)が配設されている。射出スリーブ23内にはプランジャロッド24の先端に連結されたプランジャチップ25が配設されている。図示せぬ射出シリンダを作動させて該プランジャチップ25を射出スリーブ23内で摺動させることで射出スリーブ23の図示せぬ給湯孔から供給されたアルミニウム合金等の溶湯を後述のキャビティ53内に充填可能である。プランジャチップ25、プランジャロッド24及び図示せぬ射出シリンダが第1加圧手段に相当する。
【0013】
可動型30は可動ホルダー31、可動ダイス32及び分流子33からなり、矢印A←→A´で示される可動型の移動方向(ダイカスト金型1の型開き方向)に移動可能である。図1及び図2に示す型締め状態においては、ダイカスト金型10の内部にはランナー50、ゲート52及びキャビティ53が画成され、スリーブ23内の空間はランナー50及びゲート52を介してキャビティ53と連通する。ランナー50は、射出スリーブ23の軸線方向(ダイカスト金型1の型開き方向)に略一致する方向に延びる第1ランナー50Aと、射出スリーブ23の軸線方向に略直交する方向に延びる第2ランナー50Bとを備えている。第1ランナー50Aは、固定型20に配設された射出スリーブ23と可動型30の分流子33とにより画成されている。第2ランナー50Bは、射出スリーブ23と分流子33とにより画成される部分と、固定ダイス22と可動ダイス32とにより画成される部分とを有している。ゲート52及びキャビティ53は、固定ダイス22と可動ダイス32とにより画成されている。
【0014】
分流子33には図示せぬブラケットを介して油圧シリンダ40が固定されている。油圧シリンダ40のピストンロッド41にはカップリング42を介して加圧ロッド43が連結されている。加圧ロッド43は分流子33に形成された貫通孔34に挿入され、加圧ロッド43の先端部43Aが貫通孔34の上側開口34Aを塞いでいる。加圧ロッド43は油圧シリンダ40の作動によりダイカスト金型10の型開き方向に略直交する方向に向けて進退可能とされ、油圧シリンダ40を作動させた場合には図1に示す後退位置から第2ランナー50B内に進入し、図2に示す前進位置まで進出可能である。従って、加圧ロッド43を第2ランナー50B内に進出させることにより、第2ランナー50Bの溶湯を介してキャビティ53内の溶湯を加圧することが可能である。油圧シリンダ40、ピストンロッド41及び加圧ロッド43は第2加圧手段に相当する。
【0015】
図3に示すように、加圧ロッド43の先端部43Aは円柱形状とされている。そして、第2ランナー50Bは加圧ロッド43の先端部43Aの横断面形状と対応するように円形状に形成された対応形状部51を備え、この対応形状部51を画成する面51Aと加圧ロッド43の先端部43Aとの周方向の隙間が0.5〜3.0mmの範囲に設定されている。隙間が0.5mm未満の場合には、隙間で凝固した薄肉部分がダイカスト品の取り出し時に切断されてしまう。又、隙間が3.0mmを超える場合には、加圧ロッド43で第2ランナー50B内の溶湯を加圧した際に溶湯が隙間から逆流することを充分に防ぐことができず、キャビティ53内の溶湯に充分な押湯効果を与えることができない。第2ランナー50B内の溶湯の流動性が良い場合には隙間から逆流が生じやすいので、キャビティ53内への溶湯の充填完了前に加圧ロッド43で第2ランナー50B内の溶湯を加圧する場合には、第2ランナー50Bの対応形状部51を画成する面51Aと加圧ロッド43の先端部43Aとの隙間を3.0mm以下とすることが極めて重要である。本実施形態では図1にXで示される範囲の第2ランナー50Bの部分が対応形状部51とされているが、固定ダイス22と可動ダイス32により画成される第2ランナー50Bの所定範囲にのみ対応形状部51を設けるようにしてもよい。
【0016】
本実施形態によるダイカスト法では、先ず、可動型30を図1にA←→A´で示される可動型30の移動方向に移動させることによりダイカスト金型10の型締めを行い、ダイカスト金型10の内部にランナー50、ゲート52及びキャビティ53を画成する。次に、射出スリーブ23内に溶湯を供給し、プランジャチップ25を射出スリーブ23内で摺動させることにより、射出スリーブ23内の溶湯をランナー50とゲート52を介してキャビティ53内に充填する。次に、溶湯のキャビティ53内への充填が完了する前、好ましくは直前のタイミングで加圧ロッド43を第2ランナー50B内に進出させて加圧を行う。そして、キャビティ53内の溶湯が凝固したら可動型30を移動させて型開きを行い、加圧ロッド43を後退させた後に可動型30からダイカスト品を取り出す。
【0017】
本実施形態のダイカスト用装置1及び当該装置を用いるダイカスト法では、第2ランナー50Bが加圧ロッド43の先端部43Aの断面形状に対応する対応形状部51を有しており、対応形状部51を画成する面51Aと加圧ロッド43の先端部43Aとの隙間が0.5〜3.0mmに設定されているので、キャビティ53内への溶湯の充填完了前に加圧ロッド43で第2ランナー50B内の溶湯を加圧する場合でも押湯効果を充分に得ることができ、キャビティ53内で成形されるダイカスト品の品質を優れたものとすることができる。また、ダイカスト金型1の型開き後にダイカスト品を取り出す際に第2ランナー50Bで凝固し、加圧ロッド43により中空とされた部分においてダイカスト品が切断されてしまうことを防ぐことができる。
【0018】
本発明によるダイカスト用装置及びダイカスト法は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、上述実施形態においては加圧ロッド43の先端部43Aの横断面形状は円形状であったが、多角形状であってもよく、その場合には対応形状部を対応した多角形に形成すればよい。
【0019】
また、図4に示すように、第2ランナー50Bには対応形状部51と連通する溝部54を形成するようにしてもよい。図4における対応形状部51の上下の2箇所には、固定ダイス22、可動ダイス32及び押出しピン55によって画成される溝部54が加圧ロッド43の先端部43Aを挟むように設けられ、ダイカスト法を行った場合に溝部54内において溶湯を凝固させることが可能となっている。対応形状部51を画成する面51Aと加圧ロッド43の先端部43Aとの周方向の隙間は0.5〜3.0mmの範囲に設定されており、この隙間で凝固した溶湯は図5及び図6に示すように中空円筒状の薄肉部60Aとなる。ダイカスト品60を可動型30から取り出す際にこの薄肉部60Aを押出しピン55で押し出した場合には、薄肉部60Aが破けてダイカスト品60が第2ランナー50Bの位置で切断されてしまうので、第2ランナー50Bの位置には押出しピン55を配設することができない。しかしながら、対応形状部52に連通する溝部54により5.0mm程度の肉厚を有する厚肉部60B(図6参照)を成形して押しピン座とすることにより、図5に示すように、加圧ロッド43を後退させた後に第2ランナー50Bの位置を押出しピン55で押し出すことが可能となり、中空円筒状の薄肉部60Aが可動型30に型残りすることを防止することができる。尚、溝部54は図2にXで示される対応形状部51の範囲の上端から下方に離間した位置に設けるのが好ましい。
【0020】
図6においては厚肉部60Bを2箇所に成形し、2つの押出しピン55で厚肉部60Bを押し出すようにしているが、厚肉部60Bを1箇所のみに成形し、1つの押出しピン55で厚肉部60Bを押し出すようにしてもよく、厚肉部60Bは対応形状部51と連通するように少なくとも1つ設けられていればよい。
【符号の説明】
【0021】
1 ダイカスト用装置
10 ダイカスト金型
20 固定型
21 固定ホルダー
22 固定ダイス
23 射出スリーブ(スリーブ)
24 プランジャロッド
25 プランジャチップ
30 可動型
31 可動ホルダー
32 可動ダイス
33 分流子
34 貫通孔
40 油圧シリンダ
41 ピストンロッド
42 カップリング
43 加圧ロッド
43A 先端部
50 ランナー
50A 第1ランナー
50B 第2ランナー
51 対応形状部
52 ゲート
53 キャビティ
54 溝部
55 押出しピン
60 ダイカスト品
60A 薄肉部
60B 厚肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティと該キャビティに連通するランナーを画成するダイカスト金型と、該キャビティ内に向けて溶湯を充填する第1加圧手段と、該ランナーの溶湯を加圧する第2加圧手段とを備え、該第2加圧手段が該ダイカスト金型の型開き方向に略直交する方向に向けて進退する加圧ロッドを備えたダイカスト用装置において、該ランナーは該加圧ロッドの先端部の断面形状に対応する対応形状部を有し、該対応形状部を画成する面と該加圧ロッドの先端部との隙間が0.5〜3.0mmに設定されていることを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項2】
該第1加圧手段は該ダイカスト金型に配設されたスリーブ内の溶湯を該キャビティ内に向けて充填するものであり、該ランナーは、該型開き方向に略一致する方向に延びる第1ランナーと、該型開き方向に略直交する方向に延びる第2ランナーとを備え、該第2ランナーが該対応形状部を有していることを特徴とする請求項1に記載のダイカスト用装置。
【請求項3】
該第2ランナー部は該対応形状部と連通する溝部を備えており、該溝部内で凝固した溶湯が押出しピンにより押し出されることを特徴とする請求項2に記載のダイカスト用装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3記載のダイカスト用装置によりダイカストを行うことを特徴とするダイカスト法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224650(P2011−224650A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200987(P2010−200987)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)