説明

ダイカスト鋳造装置

【課題】ダイカスト鋳造装置によるダイカスト品の鋳造に際し、給湯ラドルからスリーブの溶湯導入開口に注がれた溶湯が、溶湯導入の開口から飛散・流出することを防止する。
【解決手段】溶湯3が注がれる開口4Sを備えるスリーブ4、スリーブ4の長手方向に駆動して溶湯3を押圧するロッド1Rに固着されたプランジャチップ1T、スリーブ4と流体連通するキャビティを備えた金型を含み、溶湯を金型キャビティ内に射出し、ダイカスト品を鋳造する装置において、注入中又は注入済みの溶湯3が、開口4Sから飛散、流出しないように、溶湯3を、プランジャチップ1Tに形成された、30度から45度のいずれかの傾斜角の斜面1Pで受け、受けた溶湯3を、プランジャチップ1Tで迅速に上流方向に流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト品を鋳造するためのダイカスト鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ダイカスト品の鋳造には、鋳込みスリーブと、給湯ラドルと、プランジャと、ダイカスト品形状に対応するキャビティを備えた金型とを含むダイカスト鋳造装置が使用されている。
かかるダイカスト鋳造装置では、鋳込みスリーブに設けられた溶湯導入開口から、給湯ラドルに満たされた溶湯を注ぎ、注がれた溶湯を、プランジャの端部に位置付けられた円柱状のプランジャチップで押圧し、鋳込みスリーブの中空部を通じて上流方向に射出し、金型キャビティ内を満たし、溶湯(溶融金属)を冷却・凝固して、所望のダイカスト品を鋳造している。
【0003】
このようなダイカスト鋳造装置は、例えば、特許文献1に提案されている。同文献に示されているダイカスト鋳造装置は、上記従来装置と同様な構成を有し、もって同様に動作するものであるが、さらに、鋳込みスリーブを水平方向に対して30°未満の角度で傾斜させることにより、給湯ラドルから鋳込みスリーブ内に注がれた溶湯を、鋳込みスリーブの中空部に流し易くし、その上流方向の先にある金型キャビティを溶湯で満たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−344956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このダイカスト鋳造装置の構造であっても、給湯ラドルから鋳込みスリーブ内へ溶湯を注いでいる最中に、溶湯が鋳込みスリーブの溶湯注入口から、飛散し、外部に流出しがちとなる。結果として、折角注いだ溶湯の一部が無駄になり、かつ、鋳込みスリーブから金型キャビティに向けて、溶湯が円滑かつ急速に流れず、もって、材料歩留り、生産効率及び品質の、低下要因を招来する。
そこで、本発明者は、鋭意検討の結果、プランジャチップの形状を改良することにより、上記不具合を解決する手段を見出した。
【0006】
本発明は、ダイカスト鋳造装置によるダイカスト品の鋳造に際し、給湯ラドルから鋳込みスリーブの溶湯導入開口にいったん注がれた溶湯が、溶湯導入開口から外部に飛散・流出することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の態様)
以下、本発明の態様を示し、それらについて説明する。なお、(1)項及び(2)項が、請求項1及び請求項2に対応する。
【0008】
(1)給湯ラドルから溶湯が注がれる溶湯導入開口を備えた鋳込みスリーブと、該鋳込みスリーブの貫通孔内を直線的に駆動して前記溶湯を押圧する、プランジャロッドとプランジャチップとからなるプランジャと、前記鋳込みスリーブと流体連通するキャビティを備えた金型とを含み、前記溶湯を、前記プランジャチップによって押圧し、前記キャビティ内を満たし、ダイカスト品を鋳造するダイカスト鋳造装置であって、前記プランジャチップの先端面に、30度から45度の範囲の、いずれかの傾斜角度が付けられた斜面であることを特徴とするダイカスト鋳造装置。
【0009】
本項によれば、プランジャチップの先端面は、傾斜面を成しているため、給湯ラドルからの溶湯をその傾斜面で受けることができ、傾斜面で溶湯が跳ね上がることもなく、溶湯が上流方向に円滑に流れていく。そのため、溶湯が溶湯導入開口から飛散・流出することを防止することができる。
【0010】
本項で、「傾斜角度が付けられ」とは、例えば、プランジャロッドの軸方向(長尺方向)に対して上向きの角度が付けられていることを指す。さらに、当該傾斜角は、鉛直斜め上方に向く角度にすることが望ましい。このようにすると、溶湯の上流方向への流速度が大きくなり、より迅速に金型内型内のキャビティ空間を満たすからである。
【0011】
また、本項では、傾斜面に関し、好適な傾斜角度を、30度から45度のいずれかの角度としている。傾斜角度が30度より小さいと、溶湯がプランジャチップの斜面に当たった後、斜面から跳ね返り易くなるため好ましくなく、一方、45度より大きくしても、溶湯が溶湯スリーブの内面下部に当たり易く、もって、スリーブ内面から跳ね返り易くなるため好ましくない。
但し、プランジャチップの斜面が、厳密に鉛直斜め上方に向く必要はなく、例えば、プランジャロッドの軸周り方向にいくらか傾斜していてもよい。
【0012】
(2)前記斜面が、それぞれ異なる傾斜角度が付けられた2つの斜面からなることを特徴とする(1)に記載のダイカスト鋳造装置。
本項によれば、プランジャチップの先端面が、2つの異なる角度の傾斜面を成しているため、プランジャチップで溶湯を押し出すときに、溶湯の流れをひねるように変えることができ、また、溶湯をプランジャチップでせん断することができる。すなわち、(1)項と同様に溶湯を上流方向に円滑に流すことができることに加え、溶湯を構成する溶融金属が凝固し易い場合に、よりその凝固を防ぐことができる。
【0013】
(2)項の場合は、2つの斜面の傾斜角の差を大きくすると、溶湯(流体)をひねるような力が増し、かつ、溶湯をせん断する力も向上する。一方、傾斜角の差を大きくし過ぎると、プランジャを駆動する負荷がかかりすぎ、かえって溶湯を円滑かつ急速に上流に流しにくくなるおそれがある。よって、溶湯を構成する溶融金属の物性によって適宜傾斜角の差を決めることが望ましい。
【0014】
(3)先端面が一定の傾斜角度が付けられた斜面であることを特徴とするダイカスト鋳造用プランジャチップ。
(4)前記斜面を、それぞれ異なる傾斜角度を付けた少なくとも2つの斜面をからなるように形成したことを特徴とする(3)項に記載のダイカスト鋳造用プランジャチップ。
(5)前記傾斜角度の値は、30度から45度の範囲内にあることを特徴とする(3)項又は(4)項に記載のダイカスト鋳造用プランジャチップ。
【0015】
(3)項から(5)項は、代表的には(1)項の装置に用いられる、プランジャチップを例示したものである。
【0016】
(6)給湯ラドルに満たされた溶湯が注がれる溶湯導入開口を備え、かつ水平方向に沿って配置された鋳込みスリーブと、該鋳込みスリーブを前記長手方向に駆動して溶湯を押圧するプランジャロッドを備えたプランジャチップと、前記鋳込みスリーブと導管を通じて流体連通するキャビティを備えた金型と、を準備し、前記溶湯を、前記プランジャチップの押圧によってキャビティ内に射出して、ダイカスト品を鋳造する方法であって、前記鋳込みスリーブ内に注がれる溶湯を、前記プランジャチップに形成された30度から45度のいずれかの角度の斜面で受け、該斜面で受けた前記溶湯を、前記プランジャチップによって水平方向かつ上流方向に移動させながら、前記キャビティ内に、円滑かつ急速に満たすことを特徴とするダイカスト品鋳造方法。
本項は、(1)項のダイカスト鋳造装置と同様な装置を用いて、ダイカスト品を鋳造するための方法の一態様を示す。
【0017】
(7)給湯ラドルに満たされた溶湯が注がれる溶湯導入開口を備え、かつ水平方向に沿って配置された鋳込みスリーブと、該鋳込みスリーブを前記長手方向に駆動して溶湯を押圧するプランジャロッドを備えたプランジャチップと、前記鋳込みスリーブと導管を通じて流体連通するキャビティを備えた金型と、を準備し、前記溶湯を、前記プランジャチップの押圧によってキャビティ内に射出して、ダイカスト品を鋳造する方法であって、前記鋳込みスリーブ内に注がれる溶湯を、前記プランジャチップに形成された30度から45度のいずれかの角度のうち、異なる二つの角度で形成された斜面で受け、該斜面で受けた前記溶湯を、前記プランジャチップによって、ひねりながら、水平方向かつ上流方向に移動させながら、前記キャビティに円滑かつ急速に満たすことを特徴とするダイカスト品鋳造方法。
【0018】
本項は、典型的には(2)項のダイカスト鋳造装置と同様な装置を用いて、ダイカスト品を鋳造するための方法の別の態様を示す。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ダイカスト鋳造装置によって所望のダイカスト品を鋳造するに際し、給湯ラドルから鋳込みスリーブの溶湯導入開口に、いったん注がれた溶湯が、溶湯導入開口から飛散・流出することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1又は第2実施形態に係るダイカスト鋳造装置の概略的な断面図である。
【図2】第1実施形態のダイカスト鋳造装置に用いるプランジャチップを説明するための概略斜視図である。
【図3】第1実施形態のダイカスト鋳造装置に用いるプランジャチップを説明するための概略断面図である。
【図4】第1又は第2実施形態のダイカスト鋳造装置に用いるプランジャチップの概略的な一部斜視図である。
【図5】第1又は第2実施形態に係るダイカスト鋳造装置の動作を説明するための概略断面図である。
【図6】第2実施形態に係るプランジャチップであって、ダイカスト鋳造装置に用いるプランジャチップの第1実施形態にかかるものを説明するための概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態(「本実施形態」という)を、第1実施形態と第2実施形態とに分けて、図1から図6を参照しながら説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図1を参照しながら、第1実施形態に係るダイカスト鋳造装置100の構成を説明する。
ダイカスト鋳造装置100は、固定金型50S及び可動金型50Mからなる金型部50と、鋳込みスリーブ4と、プランジャチップ1T及びプランジャロッド1Rからなるプランジャ部1と、給湯ラドル2を含む。
【0023】
固定金型50S及び可動金型50Mは、金型部50が全閉状態(溶湯射出完了状態)にあるときには、両金型50S、50Mの3箇所(溶湯射出時には溶湯が流れる導路となる)、すなわち、A部、B部及びC部の固定金型50S及び可動金型50Mの対向両端部が互いが当接し、ダイカスト品の形状に相当する金型キャビティVの空間が略中央に形成される。
【0024】
また、固定金型50S及び可動金型50Mは、金型部50が半開状態(溶湯導入状態)にあるときには、C部には、溶湯が通過する導入路が形成され溶湯がC部を通過して金型キャビティに流れる。A部とB部との間に小キャビティDがあるが、小キャビティD内に、キャビティVから溢れ出た溶湯が収容される。
【0025】
固定金型50S及び可動金型50Mには高さ方向に寸法差がある。この寸法差は、鋳込みスリーブ4の高さ(鋳込みスリーブ4の管径)に相当している。そして、固定金型50S、可動金型50M及び鋳込みスリーブ4によって、ブーツ状構造(L字状管構造)を成している。
【0026】
可動金型50Mには、キャビテイV内の溶湯の鋳込み及び冷却が完了したダイカスト品を押して、可動金型50Mからダイカスト品を脱着させる加圧ピンP1、P2が、可動金型50Mの側面から垂直に延びキャビテイVまで貫通している。加圧ピンP1、P2は、図示しない油圧ポンプ、モータ等の駆動手段で直線的に駆動し、完成したダイカスト品(不図示)を押し出す。
【0027】
鋳込みスリーブ4は、中空部を含む円筒(パイプ状部材)であり、上述したように、鋳込みスリーブ4の一方の末端上面が固定金型50Sに当接し、下側の末端面が可動金型に当接するように配置されている。また、鋳込みスリーブ4と可動金型50Mの下面は、水平面を備えた基台25の上に配置されている。
【0028】
鋳込みスリーブ4の中空部には、末端開口部から、プランジャチップ1T及びプランジャロッド1Rからなるプランジャ1が挿入されて、中空部内で水平方向に直線駆動可能とされている。また、プランジャチップ1Tの周面は鋳込みスリーブ4の中空部の内面に摺動可能であり、そして、プランジャロッド1Aを回転軸として、鋳込みスリーブ4の中空部内で回転可能とされている。このプランジャ1は、図示しない油圧シリンダのようなアクチュエータを用いて直線駆動される。
【0029】
次に、図1、図2及び図3を参照し、従来技術(特許文献1)の不具合点に触れながら、プランジャチップ1Tについて説明する。
従来のプランジャチップ(63)[本段落において、特許文献1の参照符号を丸括弧内に記す]のプランジャロッド(62)が存在しない側の端面が、プランジャロッド(62)に対して垂直な平面(非斜面)であった。そのため、給湯ラドル(7)から溶湯導入開口(51)に注がれた溶湯が、プランジャチップ1Tの近くに滞留しがちであった。そのため、次々に注がれる溶湯が溶湯導入開口(51)から溢れ出し(図1、図3の点線で示した矢印NG参照)、ダイカスト品の体積に相当する溶湯量を鋳込みスリーブ(5)内に確保することができなかった。併せて、鋳込みスリーブ(5)内に溶湯が一定時間移動しないまま滞留していると、鋳込みスリーブ(5)に接している溶湯が、そこで冷却、凝固し、この凝固片がダイカスト品の中に含有してしまい、ダイカスト品の品質を悪化させていた。
【0030】
そこで、第1実施形態では、プランジャチップ1に関し、図2に拡大して示した斜視図、及び図3に示した断面図のように、プランジャチップ1の末端面が一定の傾斜角αを含む斜面1Pを形成するようにした。この傾斜角αは、本実施形態では、好適には、水平方向(ロッド軸1Aの長手方向)に対して30度から45度のいずれかの角度である。傾斜角αが、30度より小さくても、45度よりも大きくても、従来の不具合が解消が困難となる傾向が高まるため好ましくない。
【0031】
さらに、図1と共に、図4、図5をさらに参照し、第1実施形態において、ダイカスト鋳造装置1によって、ダイカスト品が鋳造されるプロセスを説明する。
まず、固定金型50Sと可動金型50Mとの間に一定のギャップ(溶湯の導路B、Cとなる)が形成されるように金型部50をやや開いた状態に設定する。そして、プランジャチップ1を鋳込みスリーブ4に嵌合し、斜面1Pを、溶湯導入開口4Sの上から観察できる位置まで駆動させて、プランジャチップ1の位置を決め、固定する。
【0032】
この固定状態で、少なくとも、ダイカスト品の体積(金型50が閉じたときのキャビティV)及び導路Cの容積の総和に相当する容量の溶湯3を、給湯ラドル2から溶湯導入開口4Sを通過させて、プランジャチップ1の斜面1Pに向け注入する。
【0033】
溶湯の注入が完了した後、図4に示す矢印Xの方向(水平方向かつ上流方向)に、プランジャチップ1を、プランジャロッド1Rをロッド軸1Aに沿って駆動することによって変位させる。この動作によって、溶湯3が、斜面1Pに沿いながら、かつ、鋳込みスリーブ4内を上流方向に向けて円滑かつ急速に流れ出す。そして、図5に示すように、溶湯3が導路C部を通り、金型キャビティVを満たす。尚、プランジャチップ1の初動時は、低速で駆動させることが望ましい。初めから高速で駆動させると溶湯が溶湯導入開口4Sから溢れ出すおそれがあるためである。
【0034】
図示しないが、さらに、固定金型50S及び可動金型50Mが閉じられ、さらに、金型キャビティV内に満たした溶湯が冷却かつ凝固される。その後、可動金型50Mを、水平方向(図面の右方向)に移動させ、金型50を開き、加圧ピンP1、P2を水平方向(図面の左方向)に押し出すと、金型キャビティV内に形成されたダイカスト品を得ることができ、当該鋳造プロセスが完了する。
【0035】
このように第1実施形態によれば、プランジャチップ1の末端面を一定の角度を備えた斜面1Pに形成したため、溶湯が溶湯導入開口4Sから溢出、飛散したり、溶湯がプランジャチップの末端面周辺で凝固したりする不具合が発生することがなくなる。結果として、材料歩留りの向上、生産効率の向上、品質の安定性をもたらすことが可能となる。
【0036】
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態に係るダイカスト鋳造装置1(図1、図4及び図5)を基本的に用いるが、プランジャチップの形状が第1実施形態とは異なる。よって、第2実施形態を説明するに当たり、同装置1の構成及び動作の説明は省略し、第2実施形態におけるプランジャチップ1´の形状を以下説明する。
【0037】
図6は、第2実施形態におけるプランジャチップ1´の概略的な斜視図である。図6に示すように、プランジャチップ1´の端面は、やや緩やかな斜面1Pと、やや急な斜面1Pからなる。斜面1Pは、その斜面の傾斜角度βを30度から45度とし、1Pは、その斜面の傾斜角度γを45度から60度とすることが好ましい(両傾斜角度が同時に45度とはならない)。このように斜面1P、1Pを備えたプランジャチップ1´によって、第1実施形態と同様に溶湯3を、プランジャロッド1Rを駆動して押圧すると(図4、図5参照)、溶湯シリンダ3の中空部で溶湯3の流れがひねられ、かつ、流れをさらに円滑にすることができる。また、溶湯3をせん断することもでき、無用な凝固を防ぐことができる。
【0038】
以上のように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、材料歩留りの向上、生産効率の向上、品質の安定性をもたらすことが可能となる。特に、溶湯3をせん断することができるため、溶湯スリーブ4内で凝固し易い金属からなる溶湯3を用いるときには特に効果的である。
【実施例】
【0039】
実施例1、2及び3、並びに比較例について以下に示す。
すべての例において、目的とする鋳造品はアルミダイカスト品、使用装置はダイカスト鋳造装置100、溶湯は700℃のアルミニウム15kgとした。
【0040】
ただし、プランジャチップの傾斜角α(末端面を図2の形状で構成)を、実施例1では30度とし、実施例2では45度とし、実施例3では傾斜角β、γ(末端面を図6の形状で構成)を、それぞれ、30度、45度とした。また比較例では、傾斜角αを90度とした(斜面なし)。
【0041】
実施例1から3いずれも、給湯時間は4秒で、溶湯導入開口4Sからの溢れ出しは、皆無(0kg)であった。
【0042】
比較例では、給湯時間を6秒にしても、溶湯導入開口4Sからの溢れ出しが、2kg生じた。
追試したところ、アルミニウム溶湯の溢れ出しを皆無にするには、給湯時間に8秒、要することが分かった。
【0043】
<評価結果>
以上のように、実施例1から3のいずれにおいても、給湯ラドルから鋳込みスリーブの溶湯導入開口に、いったん注がれた溶湯の、溶湯導入開口からの飛散・流出を防止することができることが分かった。さらに、併せて、実施例1、2及び3いずれも、比較例(従来の方法)に比べ、倍の速さで金型キャビティVに必要な溶湯を射出できることが分かった。
【0044】
尚、本発明は、上記の、本実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0045】
例えば、プランジャーチップの傾斜面をスコップのような凹状に形成してもよい。凹状に形成すると、特に注入初期にフラット面よりもラドルから注がれた溶湯が跳ね上がりにくくなる。
【符号の説明】
【0046】
2;給湯ラドル、3;溶湯、4S;溶湯導入開口、4;鋳込みスリーブ、1R;プランジャロッド、1T;プランジャチップ、1;プランジャ、C;導管、V;キャビティ、50(50S、50M);金型、100;ダイカスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯ラドルから溶湯が注がれる溶湯導入開口を備えた鋳込みスリーブと、
該鋳込みスリーブの貫通孔内を直線的に駆動して前記溶湯を押圧する、プランジャロッドとプランジャチップとからなるプランジャと、
前記鋳込みスリーブと流体連通するキャビティを備えた金型と、を含み、
前記溶湯を、前記プランジャチップによって押圧し、前記キャビティ内を満たし、ダイカスト品を鋳造するダイカスト鋳造装置であって、
前記プランジャチップの先端面が、30度から45度の範囲の、いずれかの傾斜角度が付けられた斜面であることを特徴とするダイカスト鋳造装置。
【請求項2】
前記斜面が、それぞれ異なる傾斜角度が付けられた2つの斜面からなることを特徴とする請求項1に記載のダイカスト鋳造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−121065(P2011−121065A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278482(P2009−278482)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)