説明

ダイクッション装置及びプレス機械

【課題】上金型がワークに接触する際のワークへの衝撃を緩和させることができ、さらに、これまで利用されていたエア式のクッションシリンダを利用して、設置コストを安価とすることができる。
【解決手段】
上金型との間でワークを挟持するブランクホルダ11と、クッションピン12を介してブランクホルダ11を支持するダイクッションパッド13と、ワークが上金型と下金型とに挟み込まれ絞り加工されている際にダイクッションパッド13を弾性的に支持するエア式のクッションシリンダ14と、ダイクッションパッド13を昇降自在に支持するラックアンドピニオン機構20とを備え、ダイクッションパッド13とエア式のクッションシリンダ14との間には、上金型がワークに接触する寸前にダイクッションパッド13をラックアンドピニオン機構20にて降下させる降下用空間Cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイクッション装置及びプレス機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレス機械により絞り加工を行う場合、その加工時におけるワークのしわ発生を抑止することを目的として、ダイクッション装置を備えたものが提供されている(特許文献1参照)。
このダイクッション装置は、上金型との間でワークを挟持するブランクホルダと、クッションピンを介してブランクホルダを支持するダイクッションパッドと、ワークが絞り加工されている際にダイクッションパッドを弾性的に支持するエア式のクッションシリンダとを備える。
【0003】
一方、開示されるダイクッション装置では、上金型とブランクホルダとによりワークを挟み込む際、上金型がブランクホルダ上のワークに勢いよく接触するようになっている。このように上金型がワークに勢いよく接触すると、ブランクホルダに急激的な衝撃が加わることとなるので、装置全体に大きな振動を発生させてしまい、加工精度を悪化させてしまうという問題があった。また、金型自体にも大きな負荷がかかるので、金型の劣化にも繋がったりしていた。さらに、接触した際の衝撃音の音量も、非常に大きなものとなってしまって、騒音問題として指摘されていた。
【0004】
そこで、このような問題を解消するために、上金型がワークに接触する寸前に、ブランクホルダを所定速度で降下(予備加速)させて、上金型がワークに接触する際のワークへの衝撃を緩和させる技術が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−272456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述したような上金型のワークへの衝撃を緩和させる技術にあっては、ダイクッションパッドと接続されたクッションシリンダを、油圧サーボ機構を用いて一緒に降下させることを必要とする。つまり、ワークへの衝撃を緩和させる技術を利用しようとすると、これまで利用されていたダイクッション装置を備えたプレス機械を、丸ごと入れ換える必要があり、導入するコストが高価なものになってしまうという問題が指摘されていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、その目的は、上金型がワークに接触する寸前にブランクホルダを所定速度で降下させ、上金型がワークに接触する際のワークへの衝撃を緩和させることができ、さらに、これまで利用されていたエア式のクッションシリンダを利用して、設置コストを安価とすることができるダイクッション装置及びプレス機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための手段として、本発明は、次のようなダイクッション装置及びプレス機械を提供する。
すなわち、請求項1に係るダイクッション装置は、プレス機械のベッドに設置されるダイクッション装置であって、上金型との間でワークを挟持するブランクホルダと、クッションピンを介して前記ブランクホルダを支持するダイクッションパッドと、前記ワークが前記上金型と下金型とに挟み込まれ絞り加工されている際に前記ダイクッションパッドを弾性的に支持するエア式のクッションシリンダと、前記ダイクッションパッドを昇降自在に支持する昇降装置とを備え、前記ダイクッションパッドと前記エア式のクッションシリンダとの間には、前記上金型が前記ワークに接触する寸前に前記ダイクッションパッドを前記昇降装置にて降下させる降下用空間が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係るダイクッション装置は、請求項1に記載のダイクッション装置において、前記昇降装置は、前記ベッド側に軸支されて回転駆動するピニオンギアと、前記ダイクッションパッドに固定され、前記ピニオンギアと歯合して昇降方向に移動するラックとを備えていることを特徴とする。
請求項3に係るダイクッション装置は、請求項1に記載のダイクッション装置において、前記昇降装置は、前記ベッド側に軸支されて回転駆動する、ナット部材もしくはボールねじの一方と、前記ダイクッションパッドに固定され前記ナット部材もしくは前記ボールねじの一方と歯合し、かつ前記ナット部材もしくは前記ボールねじの一方に対して昇降する前記ナット部材もしくは前記ボールねじの他方とを備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係るプレス機械は、上金型と下金型とによりワークを絞り成形するプレス機械であって、前記ベッドには、請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のダイクッション装置が設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係るダイクッション装置および請求項4に係るプレス機械によれば、ダイクッションパッドを昇降自在に支持する昇降装置を備え、ダイクッションパッドとエア式のクッションシリンダとの間には、上金型がワークに接触する寸前にダイクッションパッドを昇降装置にて降下させる降下用空間が設けられているので、上金型がワークに接触する寸前に、昇降装置にてダイクッションパッドを降下させることができる。
これによって、上金型がワークに接触する寸前に、ダイクッションパッドに支持されるブランクホルダも降下させ、ブランクホルダに載置されたワークも一緒に降下する。つまり、上金型がワークに接触する寸前に、ワークを上金型に対して逃げるように予備加速させることができ、上金型がワークに接触した際のワークの衝撃を緩和することができる。
【0012】
もって、請求項1に係るダイクッション装置および請求項4に係るプレス機械によれば、上金型が、ブランクホルダに載置されるワークに接触する際の、ワークへの衝撃を緩和することにより、発生する振動を低減し、金型の寿命の向上を図り、さらに騒音となる衝撃音の音を小さくすることができる。
【0013】
さらに、請求項1に係るダイクッション装置および請求項4に係るプレス機械によれば、従来から利用されているエア式のダイクッション装置を備えたプレス機械に対して、新たに昇降装置を加えるだけで、予備加速の機能を付加することができ、従来の金型および従来のエア式のクッションシリンダをそのまま利用することができて、簡単かつ設置コストを安価とすることができる。
【0014】
また、請求項1に係るダイクッション装置および請求項4に係るプレス機械によれば、ダイクッションパッドおよびクッションシリンダを一緒に降下させる技術に比して、クッションシリンダの弾性力に抗する力を必要とすることがない。これによって、予備加速の機能を得るにあたっての昇降装置の駆動力も小さなトルクとすることができ、ひいては、消費エネルギーの削減、昇降装置の小型化においても有利となる。
なお、このような昇降装置としては、請求項2および請求項3に記載のように、ラックとピニオンギアとによる構成、あるいは、ナット部材とボールねじとによる構成を、採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明に係るダイクッション装置及びプレス機械の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るプレス機械1の実施形態を示す概略構成図である。
プレス機械1は、ワークWを絞り成形するために利用するものであって、図1に示すように、ベッド6と、ベッド6から上方に延びるアプライト2と、アプライト2を介してベッド6に支持されたクラウン3と、クラウン3から4本(図示では2本)のプランジャ4を介して連結されたスライド5と、ベッド6上に載置されたムービングボルスタ7とを備えて大略構成される。なお、スライド5の下面側には、上金型8が取り付けられ、ムービングボルスタ7の上面側には、下金型9が取り付けられる。
【0016】
これらのうち、クラウン3は、クランク機構、エキセン機構、またはリンク機構等の駆動力伝達機構が内蔵されており、プランジャ4を昇降する。プランジャ4は、クラウン3に内蔵される駆動力伝達機構に連結され、駆動力により昇降する。スライド5は、上金型8をワークWに接近離間させるように、プランジャ4からの昇降駆動により昇降する。
【0017】
ベッド6は、図1に示すように、地盤に掘られたピット内に設置されるものであって、略箱状に構成される。また、このプレス機械1では、ベッド6の内部空間61に、ダイクッション装置10が配置されている。
【0018】
ムービングボルスタ7は、特に図示しないが、定盤状のボルスタ71と、ボルスタ71を支持しベッド6に載置されるキャリア72とを備える。
ボルスタ71は、下金型9が取り付けられるものであって、特に図示しないが、ダイクッション装置10を構成するクッションピン12を挿通自在とした、上面と下面とを貫通された貫通孔を多数備える。
キャリア72は、特に図示しないが、金型8,9を交換するためにボルスタ71をプレス機械1の外部へ移動させる移動手段を備え、適宜に設けられたリブにてボルスタ71を支持している。
【0019】
図2は、ダイクッション装置10の実施形態を示す概略構成図である。図3は、図2の視点方向と直交する方向から視たダイクッション装置10の概略構成図である。
図示するダイクッション装置10は、エア式のクッションシリンダ14を有しながら、ラックアンドピニオン機構20によりダイクッションパッド13を昇降させて予備加速機能を付加させた、いわゆるハイブリッド式のダイクッション装置10である。
【0020】
ダイクッション装置10は、図1〜図3に示すように、上金型8との間でワークWを挟持するブランクホルダ11と、クッションピン12を介してブランクホルダ11を支持するダイクッションパッド13と、ダイクッションパッド13を弾性的に支持するエア式のクッションシリンダ14と、ダイクッションパッド13を昇降自在に支持する昇降装置としてのラックアンドピニオン機構20とを備えて大略構成される。
【0021】
ブランクホルダ11は、図示するように、下金型9の外周を囲うようにした略筒状に構成される。ブランクホルダ11の上端には、ワークWを好適に載置し保持する上側外フランジ111が設けられている。ブランクホルダ11の下端には、クッションピン12が好適に当接して支持する下側外フランジ112が設けられている。
クッションピン12は、ダイクッションパッド13から上方に延出するように設けられるものであって、下端がダイクッションパッド13に当接し、上端がブランクホルダ11の下側外フランジ112に当接して、ブランクホルダ11を支持する。
【0022】
ダイクッションパッド13は、ベッド6の内部空間61に略収まる金属製で、中空の矩形箱状に構成される。本実施形態のベッド6の内部空間61には、ダイクッションパッド13が1つ設けられている。
【0023】
このダイクッションパッド13の上部内面側には、ラックアンドピニオン機構20を構成するラック24の上端を固定するラック上端固定部131が設けられている。また、このラック上端固定部131の鉛直下方のベッド6においては、ラック24の下端を挿通可能に支持するラック下端挿通孔部132が設けられている。このラック上端固定部131およびラック下端挿通孔部132により、ラック24は、昇降方向を保持した状態で設置されて、ダイクッションパッド13を昇降自在に支持する。
【0024】
また、特に図示しないが、ダイクッションパッド13の四周の側面には、ベッド6の内壁面に設けられた案内プレートと対向配置された昇降用の案内プレートが設けられ、これらの案内プレートの接触摺動により、ダイクッションパッド13は好適に案内されて昇降する。
【0025】
エア式のクッションシリンダ14は、降下してきたダイクッションパッド13を弾性的に支持するものであって、適宜のエアシリンダ機構を備えて構成される。なお、このエアシリンダ機構は、広く用いられる公知のエアシリンダ機構であるため、具体的な構成の説明については省略する。また、エア式のクッションシリンダ14のうち、降下したダイクッションパッド13が当接する当接上面には、上面が僅かに突出した状態で埋め込まれたウレタンパッドPが設けられている。
【0026】
また、このダイクッションパッド13と、エア式のクッションシリンダ14との間には、上金型8がワークWに接触する寸前にダイクッションパッド13を降下させるための、降下用空間Cが設けられている。この降下用空間Cは、ブランクホルダ11を降下方向に予備加速させるために設けられるものであって、この予備加速のストローク長に対応した長さに設定されている。
【0027】
ラックアンドピニオン機構20は、ベッド6に設けられた駆動装置21と、ベッド6に軸支され駆動装置21からの駆動力により回転する回転シャフト22と、回転シャフト22に設けられたピニオンギア23と、ダイクッションパッド13のラック上端固定部131に固定され且つピニオンギア23と歯合して昇降方向に移動する上述したラック24とを備えて大略構成される。
【0028】
駆動装置21は、サーボモータと減速機とを備え、減速機を介してサーボモータにより回転シャフト22を回転駆動させる。なお、駆動装置21は、図示するように、ベッド6の対向位置に2つ設置されており、この2つの駆動装置21により、1つの回転シャフト22を回転させている。
【0029】
図4は、駆動装置21の制御ブロック図である。
すなわち、駆動装置21は、図4に示すように、外部制御装置211に電気的に接続されている。外部制御装置211は、スライド5の位置を検出するスライド位置検出装置212と電気的に接続されており、このスライド位置検出装置212の検出信号にしたがって駆動装置21の駆動を制御している。
【0030】
回転シャフト22は、対向位置に配された駆動装置21同士からベッド6の内部空間61に亘って設置されている。この回転シャフト22には、上述したラック24の位置にそって、2つのピニオンギア23が設けられている。このピニオンギア23は、ラック24と歯合し、回転シャフト22の回転によりラック24を昇降させる役割を果たしている。つまり、このプレス機械1により絞り加工が行われる前においては、ダイクッションパッド13は、ラックアンドピニオン機構20により、エア式のクッションシリンダ14から降下用空間Cを保持した状態で支持される。
【0031】
符号15は、ダイクッションパッド13のストロークアジャスト機構であり、クッションシリンダ14の上限位置を上下方向に調整するものである。このストロークアジャスト機構15にて、クッションシリンダ14の上限位置を調整することにより、降下用空間Cを所望の空間に自由に設定することができる。
なお、降下用空間C=0となるように設定した場合、つまり、ダイクッションパッド13の下面と、クッションシリンダ14の上面とが当接する状態に設定した場合には、従来のエア式のダイクッションとして機能させて使用することができる。
【0032】
以上のように構成されたダイクッション装置10を備えたプレス機械1は、次のような作用効果を奏する。なお、図5は、スライド5が降下して上金型8と下金型9とによりワークWを絞り加工している際の、ダイクッション装置10を示す概略構成図である。
【0033】
すなわち、ダイクッション装置10によれば、ダイクッションパッド13とエア式のクッションシリンダ14との間には、上金型8がワークWに接触する寸前にダイクッションパッド13を降下させる降下用空間Cが設けられ、さらに、ベッド6に支持され降下用空間Cを保持した状態でダイクッションパッド13を昇降自在に支持する昇降装置としてのラックアンドピニオン機構20を備えているので、ラックアンドピニオン機構20にてダイクッションパッド13を降下させることができる。
【0034】
これによって、上金型8がワークWに接触する寸前に、ダイクッションパッド13に支持されるブランクホルダ11も降下させ、ブランクホルダ11に載置されたワークWも一緒に降下する。つまり、ワークWを上金型8に対して逃げるように予備加速させることができ、上金型8がワークWに接触した際のワークWの衝撃を緩和することができる。
【0035】
より具体的には、スライド位置検出装置212は、スライド5の位置が予め設定された予備加速開始位置に達したことを検出すると、外部制御装置211にその旨の検出信号を送信する。次いで、その検出信号を受信した外部制御装置211は、駆動装置21のサーボモータを回転させるように制御する。これにより、サーボモータは回転シャフト22を回転させ、ピニオンギア23は回転して、ピニオンギア23と歯合するラック24を降下させる。降下するラック24により、ダイクッションパッド13は、図5に示すように、上金型8がワークWに接触する寸前に降下用空間Cを埋めるように降下する。
【0036】
これによって、上金型8がワークWに接触する寸前に、ダイクッションパッド13に支持されるブランクホルダ11も降下させ、ブランクホルダ11に載置されたワークWも一緒に降下する。そうすると、上金型8がワークWに接触する寸前に、ワークWは、上金型8に対して逃げるように予備加速して降下することとなり、上金型8とワークWとの相対速度を減少させて、上金型8がワークWに接触する際の衝撃を緩和することができる。
また、エア式のクッションシリンダ14のうち、降下したダイクッションパッド13が当接する当接上面には、ウレタンパッドPが設けられているので、ダイクッションパッド13がエア式のクッションシリンダ14に当接した際の衝撃は、緩和されたものとなる。
【0037】
なお、ワークWを予備加速して降下させるためのストローク長は、降下用空間Cで設定されており、上金型8がワークWに接触した後は、図5に示すように、降下用空間Cは無くなっており、ダイクッションパッド13は、エア式のクッションシリンダ14に当接する。つまり、ダイクッションパッド13が、エア式のクッションシリンダ14に当接して弾性的に支持されるようになった場合には、上金型8及び下金型9によるワークWの絞り加工が開始する。
【0038】
また、ダイクッション装置10によれば、ダイクッションパッド13およびクッションシリンダ14を一緒に降下させる技術に比して、クッションシリンダ14の弾性力に抗する力を必要とすることがない。これによって、予備加速の機能を得るにあたっての駆動装置21の駆動力も小さなトルクとすることができ、ひいては、消費エネルギーの削減、装置の小型化においても有利となる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、上述の第1実施形態のダイクッション装置10とは昇降装置(ラックアンドピニオン機構20)に関してのみについて異なる構成を有する、第2実施形態のダイクッション装置について説明する。
第2実施形態の昇降装置は、図示は省略するが、第1実施形態のラックアンドピニオン機構20に代え、ボールねじ機構が採用されて構成される。具体的には、第1実施形態のピニオンギア23が、ボールねじ用ナット部材で構成され、第1実施形態のラック24が、ボールねじで構成される。
なお、ボールねじ用ナット部材は、上述したような適宜の駆動力伝達機構を介して、サーボモータにより回転する。このボールねじ用ナット部材の回転により、ボールねじは昇降する。
【0040】
以上のように構成されたボールねじ機構を採用した昇降装置にあっても、上述の第1実施形態のラックアンドピニオン機構20と同様に、上金型8がワークWに接触する寸前に、ボールねじを降下させ、この降下するボールねじによりダイクッションパッド13を降下させ、上述の第1実施形態のダイクッション装置10と同様の作用を奏することができる。
【0041】
なお、本発明に係るダイクッション装置及びプレス機械は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜に選択変更して構成されるものであってもよい。
例えば、上述の実施形態のダイクッション装置の昇降装置は、ラックアンドピニオン機構、あるいは、ボールねじ機構が採用されて構成されるものであったが、これに限定されることなく、油圧で昇降する油圧式機構が採用されるものであってもよい。なお、ラックアンドピニオン機構、あるいは、ボールねじ機構が採用される場合には、簡単かつ安価に設置することができて有利である。
また、ボールねじ機構に関しては、ボールねじがベッド側に軸支されて回転駆動し、これと相対的に昇降するボールねじ用ナット部材が、ダイクッションパッド側に固定されるように構成されるものであっってもよい。
【0042】
また、上述の実施形態の駆動装置には、適宜の駆動力伝達機構が設けられるものであってもよい。例えば、サーボモータの回転により回転する駆動プーリと、回転シャフトを回転させる従動プーリと、この駆動プーリと従動プーリとに巻回され連動させるタイミングベルトとを備えて構成されたもの等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上述のダイクッション装置及びプレス機械は、ワークへの衝撃を緩和することにより、発生する振動を低減し、金型の寿命の向上を図り、さらに騒音となる衝撃音の音を小さくすることができるダイクッション装置及びプレス機械として利用することができる。また、上述のダイクッション装置及びプレス機械は、従来の金型および従来のエア式のクッションシリンダを利用することができるので、簡単かつ設置コストを安価とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るプレス機械の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】ダイクッション装置の実施形態を示す概略構成図である。
【図3】図2の視点方向と直交する方向から視た、ダイクッション装置の概略構成図である。
【図4】駆動装置の制御ブロック図である。
【図5】上金型と下金型とによりワークを絞り加工している際の、ダイクッション装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0045】
1…プレス機械、6…ベッド、10…ダイクッション装置、11…ブランクホルダ、12…クッションピン、13…ダイクッションパッド、14…エア式のクッションシリンダ、15…ストロークアジャスト機構、20…ラックアンドピニオン機構(昇降装置)、23…ピニオンギア、24…ラック、C…降下用空間、W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機械のベッドに設置されるダイクッション装置であって、
上金型との間でワークを挟持するブランクホルダと、
クッションピンを介して前記ブランクホルダを支持するダイクッションパッドと、
前記ワークが前記上金型と下金型とに挟み込まれ絞り加工されている際に前記ダイクッションパッドを弾性的に支持するエア式のクッションシリンダと、
前記ダイクッションパッドを昇降自在に支持する昇降装置とを備え、
前記ダイクッションパッドと前記エア式のクッションシリンダとの間には、前記上金型が前記ワークに接触する寸前に前記ダイクッションパッドを前記昇降装置にて降下させる降下用空間が設けられている
ことを特徴とするダイクッション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダイクッション装置において、
前記昇降装置は、前記ベッド側に軸支されて回転駆動するピニオンギアと、
前記ダイクッションパッドに固定され、前記ピニオンギアと歯合して昇降方向に移動するラックとを備えている
ことを特徴とするダイクッション装置。
【請求項3】
請求項1に記載のダイクッション装置において、
前記昇降装置は、前記ベッド側に軸支されて回転駆動する、ナット部材もしくはボールねじの一方と、
前記ダイクッションパッドに固定され前記ナット部材もしくは前記ボールねじの一方と歯合し、かつ前記ナット部材もしくは前記ボールねじの一方に対して昇降する前記ナット部材もしくは前記ボールねじの他方とを備えている
ことを特徴とするダイクッション装置。
【請求項4】
上金型と下金型とによりワークを絞り成形するプレス機械であって、
前記ベッドには、請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のダイクッション装置が設置されている
ことを特徴とするプレス機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate