説明

ダイソート用シート

【課題】タックを有するチップを安定して保持することができ、かつタックを有するチップのピックアップが容易なダイソート用シートを提供する。
【解決手段】円形の基材フィルム2と、基材フィルム2の周縁部に積層された環状の粘着シート3とを備え、基材フィルム2の表面中央部がチップ仮着部20となっており、そのチップ仮着部20の表面粗さRaが0.01〜0.4μmであり、粘着剤層を有さないダイソート用シート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タックを有するチップを保管・搬送等するために、当該チップを仮着するダイソート用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一つに、所要の前処理を経て回路が形成された半導体ウェハを複数個のチップに切断分離するダイシング工程がある。この工程では、リングフレームと呼ばれる円形または方形の枠に、半導体ウェハ固定用のダイシングシートを貼着し、このダイシングシートに半導体ウェハを貼付し、回路毎にダイシングし、半導体チップとする。その後、ボンディングマシンによるエキスパンド工程に続いて、例えばエポキシ樹脂等のダイボンド用接着剤をチップ用基板のパッド部に塗布して、半導体チップをチップ用基板に接着するダイボンディング工程が行われる。さらに、ワイヤボンディング工程や検査工程などを経て、最終的にモールディング工程で樹脂封止を行い、半導体装置が製造される。なお、個片化された半導体チップをダイボンドせずに、保管・搬送することもあるが、この場合には、アウトラインにてダイボンディング工程が行われる。
【0003】
このような半導体チップの保管・搬送には、熱可塑性樹脂シートにポケット状凹部をエンボス加工により形成した、リール状のエンボスキャリアテープやチップトレイなどが一般的に用いられている。この凹部に半導体チップを収容した後、カバーシートで被覆して、半導体チップを電子装置に組み込むまで保管・搬送する。このようなエンボスキャリアテープを用いることにより、ダイシング工程後、良品のみを選り分けて出荷することができ、更に1枚の半導体ウェハから複数の工場への出荷も可能となる。
【0004】
ここで、半導体装置では埃、汚れ等が不具合を起こす原因となるため、半導体チップが搬送された先で、半導体チップを使用する前に水洗浄することがある。しかしながら、上記のようにエンボスキャリアテープを用いたときは、半導体チップを再度ダイシングテープなどに固定し洗浄する必要があるため、大変非効率的である。
【0005】
これに対して、汎用ダイシングテープや熱剥離テープ(特許文献1)等の粘着テープを用いて半導体チップをマウントし、半導体チップを保管・搬送するという手法も用いられている。この場合は、粘着テープの粘着剤層に半導体チップが貼付され、保管・搬送される。
【0006】
以上のようなエンボスキャリアテープや汎用ダイシングテープなどを利用した半導体チップの保管・搬送方法は、裏面に接着剤層を備えていない半導体チップに対して用いられていた。
【0007】
これに対して、近年、ダイボンディング時に接着剤の塗布作業を行うのは極めて煩雑であるため、ウェハ固定用感圧接着剤とダイボンド用接着剤とを兼用する性能を有する粘接着剤層を備えたダイシング・ダイボンディングシートが開発されている(例えば特許文献2参照)。この粘接着剤層は、ダイシング工程に先立ちウェハ裏面に貼付され、ウェハとともにチップサイズにダイシングされ、チップの裏面に当該粘接着剤層を有する構造となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−95291号公報
【特許文献2】特開平2−32181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この用途に用いられる粘接着剤としては、ダイシング工程でウェハを固定できるようにある程度のタック(付着性)を有している。このような裏面にタックを有する半導体チップをエンボスキャリアの凹部に収容した場合、当該タックにより半導体チップがエンボスキャリアに付着する。このため、次工程で、エンボスキャリアの凹部から半導体チップを取り出すことは困難であり、さらに取り出した場合も、チップ裏面の粘接着剤層が変形するという問題がある。このような半導体チップを用いて製造された半導体装置では高い信頼性は得られない。
【0010】
また、上記半導体チップを別の汎用ダイシングテープに貼付する場合は、この汎用ダイシングテープの粘着剤に半導体チップの粘接着剤層が固着してしまい、次工程でのピックアップが困難になるという問題がある。また、ピックアップする際に、チップ裏面の粘接着剤層にダイシングテープの粘着剤が付着して、チップが汚染されることがある。したがって、この場合も製造された半導体装置の信頼性は低下する。
【0011】
なお、上記のような問題は、半導体ウェハから得られるチップに限られず、例えば光学素子チップなどあらゆるチップ状物品においても懸念される。
【0012】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、タックを有するチップを安定して保持することができ、かつタックを有するチップのピックアップが容易なダイソート用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、タックを有するチップを仮着するダイソート用シートであって、平面視において、周縁部に粘着部、前記周縁部の内側にチップ仮着部を備えており、前記チップ仮着部は、表面の表面粗さRa(算術平均粗さ)が0.01〜0.4μmであり、粘着剤層を有さないことを特徴とするダイソート用シートを提供する(発明1)。
【0014】
なお、上記の「平面視」は、ダイソート用シートを透視した場合を含むものとする。また、上記の粘着部とチップ仮着部は、ダイソート用シートの同じ面側に位置してもよいし、互いに反対の面側に位置してもよい。さらに、上記の「周縁部の内側にチップ仮着部を備えており」は、「少なくとも周縁部の内側にチップ仮着部を備えており」を意味し、例えば、ダイソート用シートにおいて粘着部とチップ仮着部とが互いに反対の面側に位置する場合には、ダイソート用シートの片面の全面がチップ仮着部となっていてもよい。一方、「タックを有するチップ」としては、粘着剤層を備えたチップ、粘接着剤層を備えたチップ、タックを有する接着剤層を備えたチップ、それ自体がタックを有するチップ等が例示される。
【0015】
上記発明(発明1)によれば、チップ仮着部の表面の表面粗さRaが上記のように制御されることにより、タックを有するチップに対して優れた付着性と剥離性とを兼ね備えたものとなる。すなわち、チップ仮着部の優れた付着性により、チップがそのタックによりチップ仮着部に確実に貼着し、チップを安定して保持することができる。また、チップ仮着部の優れた剥離性により、次工程でダイソート用シートチップを剥離するときに、タックを有するチップを容易にピックアップすることができる。特に、チップが(粘)接着剤層を有するものであるときには、ピックアップ時における当該(粘)接着剤層の変形も防止することができる。
【0016】
上記発明(発明1)においては、前記チップ仮着部の表面の表面粗さRt(粗さ曲線の最大断面高さ)が0.1〜3.0μmであることが好ましい(発明2)。
【0017】
上記発明(発明1,2)において、前記ダイソート用シートは、基材フィルムと、前記基材フィルムの周縁部に積層された粘着シートとを備えて構成され、前記粘着部は前記粘着シートにより構成され、前記基材フィルムの一方の表面が前記チップ仮着部を構成することが好ましい(発明3)。
【0018】
上記発明(発明3)において、前記粘着シートは、前記基材フィルムに貼付される第1の粘着剤層と、枠体が貼付される第2の粘着剤層と、前記第1の粘着剤層と前記第2の粘着剤層とに挟まれた芯材とを備えて構成されることが好ましい(発明4)が、単層からなる粘着剤層であってもよい。
【0019】
上記発明(発明3,4)において、前記粘着部は、前記チップ仮着部を構成する前記基材フィルムの一方の面と同じ側の面に積層されていてもよい(発明5)。
【発明の効果】
【0020】
本発明のダイソート用シートによれば、タックを有するチップを安定して保持することができ、かつピックアップも容易に行うことができる。したがって、本発明のダイソート用シートによれば、タックを有するチップを確実に保管・搬送することができ、また、仮着したチップをピックアップしても、チップはシート側の粘着剤等によって汚染されず、特にチップが(粘)接着剤層を有する場合にも、当該(粘)接着剤層は変形しない。このため、例えば、当該チップが半導体チップの場合、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るダイソート用シートの斜視図である。
【図2】同実施形態に係るダイソート用シートの断面図である。
【図3】同実施形態に係るダイソート用シートの使用状態を示す断面図である。
【図4】他の実施形態に係るダイソート用シートの使用状態を示す断面図である。
【図5】別の実施形態に係るダイソート用シートの使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔ダイソート用シート〕
図1は本発明の一実施形態に係るダイソート用シートの斜視図、図2は同実施形態に係るダイソート用シートの断面図(図1におけるX−X断面図)である。
【0023】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るダイソート用シート1は、円形の基材フィルム2と、基材フィルム2の上面の周縁部に積層された環状の粘着シート3とを備えて構成される。このダイソート用シート1においては、平面視において、周縁部が粘着シート3による粘着部となっており、その周縁部の内側(中央部)における基材フィルム2の表面がチップ仮着部20となっている。
【0024】
本実施形態において、基材フィルム2のチップ仮着部20の表面粗さRa(算術平均粗さ)は、0.01〜0.4μmであり、好ましくは0.02μm〜0.3μmである。チップ仮着部20の表面粗さRaが上記範囲内であることにより、タックを有するチップに対して優れた付着性と剥離性とを兼ね備えたものとなる。すなわち、チップ仮着部20の優れた付着性により、タックを有するチップがチップ仮着部20に確実に貼着し、チップを安定して保持することができる。したがって、例えばその状態でチップを水洗浄しても、チップがダイソート用シート1から脱落することを効果的に抑制することができる。また、チップ仮着部20の優れた剥離性により、次工程でダイソート用シート1からタックを有するチップを剥離するときに、チップを容易にピックアップすることができる。特に、チップが(粘)接着剤層を有するものであるときには、ピックアップ時における当該(粘)接着剤層の変形も防止することができる。
【0025】
基材フィルム2のチップ仮着部20の表面粗さRt(粗さ曲線の最大断面高さ)は、0.1〜3.0μmであることが好ましく、0.2〜2.5μmであることが特に好ましい。チップ仮着部20の表面粗さRtが上記範囲内にあることにより、前述した効果がより優れたものとなる。
【0026】
また、基材フィルム2のチップ仮着部20の表面張力は、25〜45mN/mであることが好ましく、25〜35mN/mであることが特に好ましい。チップ仮着部20の表面張力が上記範囲内にあることにより、前述した効果がさらに優れたものとなる。
【0027】
基材フィルム2の材料としては、上記特性を有していれば特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、アイオノマー、スチレン・ブタジエンゴム等からなるフィルムなどが用いられる。また、これら2種以上の材料を組み合わせてなるフィルムを用いることもできるし、2種類以上のフィルムを積層して用いることもできる。
【0028】
上記フィルムは、フィルム製膜時に上記特性を有するように製造してもよいし、フィルム製造後に、上記特性を有するように当該フィルムに表面処理を施してもよい。前者の場合、例えば、押出に使用するロールの表面粗さを調整することにより、上記特性を有するフィルムを製造することができる。後者の場合、例えば、フィルムに対してサンドブラスト処理や剥離処理等を施すことにより、上記特性を有するフィルムを得ることができる。
【0029】
基材フィルム2の厚さは、10〜1000μmであることが好ましく、20〜800μmであることがより好ましい。
【0030】
粘着シート3は、ダイソート用シート1を枠体の一種であるリングフレームに固定するために設けられ、後述するように、この粘着シート3にリングフレームが貼付される。したがって、粘着シート3は、リングフレームが貼付し得る大きさ・形状となっている。
【0031】
本実施形態における粘着シート3は、基材フィルム2に貼付される第1の粘着剤層31と、リングフレームが貼付される第2の粘着剤層33と、第1の粘着剤層31および第2の粘着剤層33に挟まれた芯材32とから構成される両面粘着シートとなっている。粘着シート3は、単層の粘着剤層からなるものであってもよいが、上記のような構成からなることにより、第1の粘着剤層31の粘着力と第2の粘着剤層33の粘着力とを変えられるという利点がある。例えば、第1の粘着剤層31を強粘着剤から構成し、第2の粘着剤層33を再剥離性粘着剤から構成すると、ダイソート用シート1を使用した後、ダイソート用シート1をリングフレームから除去することが容易になる。
【0032】
第1の粘着剤層31および第2の粘着剤層33を構成する粘着剤としては、特に限定されるものではなく、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の粘着剤を用いることができる。
【0033】
第1の粘着剤層31および第2の粘着剤層33の厚さは、それぞれ1〜100μmであることが好ましく、2〜50μmであることがより好ましい。
【0034】
芯材32の材料としては、第1の粘着剤層31および第2の粘着剤層33を支持できるものであれば特に限定されることはなく、例えば、基材フィルム2と同様の樹脂フィルムの他、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート等からなるフィルム、各種紙、不織布などを使用することができる。それらの中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムのような比較的剛性の高いフィルムを使用すると、粘着シート3の製造時の寸法安定性が良好となる。
【0035】
芯材32の厚さは、10〜500μmであることが好ましく、30〜200μmであることがより好ましい。
【0036】
〔ダイソート用シートの製造方法〕
上記ダイソート用シート1は、常法によって製造することができる。例えば、軽剥離タイプの剥離フィルムの剥離処理面上に第1の粘着剤層31の粘着剤塗工液を塗工し、第1の粘着剤層31を形成する。また、重剥離タイプの剥離フィルムの剥離処理面上に第2の粘着剤層33の粘着剤塗工液を塗工し、第2の粘着剤層33を形成する。そして、第1の粘着剤層31を芯材32の一方の面に、第2の粘着剤層33を芯材32の他方の面に合わせて圧着し、両面粘着シート(上記粘着シート3の両面に剥離フィルムが積層されたもの)を得る。
【0037】
次いで、その両面粘着シートに対して打ち抜き加工を施し、内周円に該当する部分をカットして、内周円の内側部分を除去する。このとき、重剥離タイプの剥離フィルムだけは打ち抜かずに残してもよい。これにより、その後の加工もロール・トゥ・ロールで連続して行うことが可能となる。
【0038】
上記両面粘着シートから軽剥離タイプの剥離フィルムを剥離して、露出した第1の粘着剤層31を基材フィルム1の表面に貼付する。そして、得られた積層体に対して打ち抜き加工を施し、上記両面粘着シートの外周円に該当する部分をカットして、外周円の外側部分を除去する。このようにしてダイソート用シート1が得られる。なお、重剥離タイプの剥離フィルムは、ダイソート用シート1をリングフレームに固定する時に剥離すればよい。
【0039】
〔ダイソート用シートの使用方法〕
次に、上記ダイソート用シート1の使用方法について説明する。本実施形態では、チップとして半導体チップを例に挙げるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、チップは、ガラスチップ等の光学素子チップであってもよい。
【0040】
本実施形態では、図3に示すように、裏面に粘接着剤層8が積層されたチップ7(半導体チップ)をダイソート用シート1のチップ仮着部20に仮着し、当該チップ7を保管・搬送等するものとする。ここで、チップ7の裏面に粘接着剤層8が積層されたものは、例えば、粘接着剤層を有するダイシング・ダイボンディングシートを半導体ウェハ裏面に貼付したものをダイシングして得られる。この粘接着剤層8を構成する粘接着剤としては、熱硬化性樹脂と粘着成分とを含む組成物が好ましく使用される。
【0041】
このような組成物における熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、レゾルシノール樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を例示することができるが、中でもエポキシ樹脂が好ましい。一方、粘着成分としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、あるいは、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑性ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂を例示することができ、それらにはエネルギー線重合性化合物が含まれていてもよい。かかる粘着成分としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。上記熱硬化性樹脂は、粘着成分100質量部に対して、通常は5〜2000質量部、好ましくは100〜1000質量部の範囲の量で使用される。
【0042】
熱硬化性樹脂と粘着成分とを含む組成物として特に好ましいものは、重量平均分子量30000以上の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、重量平均分子量100〜10000のエポキシ樹脂、エネルギー線重合性化合物および熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤を含む組成物である。
【0043】
上記ダイソート用シート1を使用するには、図3に示すように、粘着シート3の第2の粘着剤層33をリングフレーム6に貼付し、ダイソート用シート1をリングフレーム6で固定する。そして、ダイソート用シート1の基材フィルム2におけるチップ仮着部20に、チップ7の裏面の粘接着剤層8を付着させ、チップ仮着部20にチップ7を仮着する。粘接着剤層8はタックを有するため、そのタックにより粘接着剤層8はチップ仮着部20に付着する。チップ仮着部20に仮着するチップ7の個数は所望の数とすればよい。この仮着作業は、例えば、通常のダイボンド装置によって行うことができる。
【0044】
前述した通り、ダイソート用シート1のチップ仮着部20は表面粗さが制御されているため、粘接着剤層8に対して優れた付着性を有する。したがって、チップ7の裏面の粘接着剤層8がチップ仮着部20に確実に貼着し、チップ7を安定して保持することができる。そのため、例えば、ダイソート用シート1に仮着したチップ7をスピン洗浄機等により水洗浄しても、チップ7がダイソート用シート1から脱落することを効果的に抑制することができる。この水洗浄により、保管・搬送中にチップ7または粘接着剤層8に付着するゴミを除去し、コンタミネーションを防止することができる。
【0045】
以上のようにしてチップ7を仮着したダイソート用シート1を、所望により保管・搬送して、次工程、例えばダイボンド工程に移す。この工程では、ダイソート用シート1のチップ仮着部20からチップ7を粘接着剤層8ごとピックアップする。
【0046】
前述した通り、ダイソート用シート1のチップ仮着部20は表面粗さが制御されているため、粘接着剤層8に対して優れた剥離性を有する。したがって、ダイボンド装置等を使用した突き上げおよび吸着等によってチップ7を粘接着剤層8とともに容易にピックアップすることができ、粘接着剤層8の変形も防止することができる。
【0047】
また、上記ダイソート用シート1は、汎用ダイシングテープ等の粘着テープと異なり、チップ7を保持する領域に粘着剤層を有しないため、粘接着剤層8が粘着テープの粘着剤で汚染されず、したがって、当該粘接着剤層8を有するチップ7を使用して、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
【0048】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0049】
例えば、図4に示すダイソート用シート1Aのように、粘着シート3は、基材フィルム2の下面の周縁部に積層されてもよい。このダイソート用シート1Aにおいては、基材フィルム2の上面の全体がチップ仮着部20となり、粘着シート3の下面、すなわち第2の粘着剤層33の下面が粘着部としてリングフレーム6に貼付される。
【0050】
また、本発明のダイソート用シートは、図5に示すダイソート用シート1Bのように、支持フィルム5と、支持フィルム5上に積層された、支持フィルム5と実質的に同じ形状の粘着剤層4と、粘着剤層4上の中央部に積層された基材フィルム2とを備えて構成されるものであってもよい。
【0051】
このダイソート用シート1Bにおいては、基材フィルム2の上面の全体がチップ仮着部20となり、粘着剤層4において基材フィルム2が積層されていない周縁部が粘着部としてリングフレーム6に貼付される。
【0052】
支持フィルム5および粘着剤層4としては、汎用ダイシングテープを用いることができるが、これに限定されるものではない。支持フィルム5の材料としては、前述した粘着シート3の芯材32と同様の材料を使用することができる。支持フィルム5の厚さは、10〜500μmであることが好ましく、30〜300μmであることがより好ましい。また、粘着剤層4を構成する粘着剤としては、前述した粘着シート3の第2の粘着剤層33を構成する粘着剤と同様の材料を使用することができる。粘着剤層4の厚さは、1〜100μmであることが好ましく、3〜80μmであることがより好ましい。
【0053】
また、上記実施形態では、リングフレーム6の形状に合わせてダイソート用シート1の形状を円形としたが、これに限定されるものではなく、使用する種々の形状の枠体に合わせて変更が可能である。例えば、枠体が方形であるときは、ダイソート用シートおよびチップ仮着部も方形とすることが好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
ここで、後述する実施例および比較例における基材フィルムの表面粗さおよび表面張力の測定は、以下のようにして行った。
【0056】
1.表面粗さの測定
製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメータ JIS B0601:2001に準拠し、ミツトヨ社製の接触式表面粗さ計SV3000S4を用いて、Ra(算術平均粗さ)およびRt(粗さ曲線の最大断面高さ)を測定した。測定条件は、λc:0.8mm、λs:0.08mm、基準長さ:2.5mm、評価長さ:10.0mmとした。
【0057】
2.表面張力の測定
プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法 JIS K6768:1999に準拠して、表面張力を測定した。
【0058】
〔実施例1〕
アクリル共重合体(綜研化学社製,SKダイン1811L)100質量部に対して、芳香族性ポリイソシアナート(東洋インキ製造社製,オリバインBHS8515)3質量部および溶剤としてメチルエチルケトン20質量部を加えて、粘着剤溶液aを調製した。
【0059】
また、アクリル共重合体(綜研化学社製,Kダイン1755)100質量部に対して、芳香族性ポリイソシアナート(東洋インキ製造社製,オリバインBHS8515)3.6質量部および溶剤としてトルエン35質量部を加えて、粘着剤溶液bを調製した。
【0060】
上記粘着剤溶液aを、シリコーン剥離剤により剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製,SP−PET381031(S))の剥離処理面上に塗布し、オーブンにて100℃で1分間乾燥し、厚さ5μmの粘着剤層Aを形成した。また、上記粘着剤溶液bを用いて、上記と同様にして、剥離フィルムの剥離処理面上に厚さ5μmの粘着剤層Bを形成した。
【0061】
次いで、芯材として、軟質塩化ビニルフィルム(厚さ50μm)を用意し、この片面に粘着剤層Aを転写した。次いで、軟質塩化ビニルフィルムの他方の面に粘着剤層Bを転写し、両面に剥離フィルムが積層された両面粘着シートを得た。得られた両面粘着シートに対し、直径165mmの円形の打ち抜き加工を行い、内側の円形部分を取り除いた。
【0062】
一方、基材フィルムとして、表面粗さを制御した金属ロールを押出時に通すことにより表面粗さを制御した低密度ポリエチレンフィルム(厚さ:100μm,チップ仮着部側の面のRa:0.044μm,Rt:0.281μm,表面張力:31mN/m)を用意した。
【0063】
上記基材フィルムのチップ仮着部側の面に、上記両面粘着シートから剥離シートを剥離して露出した粘着剤層Bを貼付した。次いで、両面粘着シートの円形の打ち抜き部と同心円となるように、直径207mmの打ち抜き加工を行い、その円の外側部分を取り除き、ダイソート用シートを得た。
【0064】
〔実施例2〕
基材フィルムとして、ポリプロピレンフィルム(厚さ:100μm,チップ仮着部側の面のRa:0.051μm,Rt:0.525μm,表面張力:30mN/m)を用いた以外は、実施例1と同様にしてダイソート用シートを作製した。
【0065】
〔実施例3〕
基材フィルムとして、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体フィルム(厚さ:100μm,チップ仮着部側の面のRa:0.231μm,Rt:1.919μm,表面張力:33mN/m)を用いた以外は、実施例1と同様にしてダイソート用シートを作製した。
【0066】
〔比較例1〕
基材フィルムとして、低密度ポリエチレンフィルム(厚さ:100μm,チップ仮着部側の面のRa:0.430μm,Rt:3.842μm,表面張力:31mN/m)を用いた以外は、実施例1と同様にしてダイソート用シートを作製した。
【0067】
〔比較例2〕
基材フィルムとして、表面粗さを制御した水冷金属ロールを押出時に通すことにより表面粗さを制御した低密度ポリエチレンフィルム(厚さ:100μm,チップ仮着部側の面のRa:0.009μm,Rt:0.099μm,表面張力:31mN/m)を用いた以外は、実施例1と同様にしてダイソート用シートを作製した。
【0068】
〔比較例3〕
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm,チップ仮着部側の面のRa:0.008μm,Rt:0.097μm,表面張力:48mN/m)を用いた以外は、実施例1と同様にしてダイソート用シートを作製した。
【0069】
〔比較例4〕
基材フィルムとして、チップ仮着部側の面がシリコーン剥離剤により剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm,チップ仮着部側の面のRa:0.425μm,Rt:3.750μm,表面張力22.6mN/m未満)を用いた以外は、実施例1と同様にしてダイソート用シートを作製した。
【0070】
上記実施例および比較例で使用した基材フィルムの表面粗さおよび表面張力を、以下の表1にまとめる。
【表1】

【0071】
〔試験例〕
1.チップ保持性試験
粘接着剤層がタックを有するダイシング・ダイボンドシート(リンテック社製,Adwill LE5000)の粘接着剤層上に半導体ウェハ(ダミーウェハ,直径200mm)を貼付し、粘接着剤層ごとウェハをダイシングし、裏面に粘接着剤層を有する半導体チップ(5mm×5mmサイズ)を得た。
【0072】
一方、実施例および比較例で得られたダイソート用シートの両面粘着シートから剥離シートを剥離して、露出した粘着剤層Aをリングフレームに貼付した。
【0073】
ダイボンド装置(キヤノンマシナリー社製,BESTEM−D02)を用いて、上記粘接着剤層付きの半導体チップをピックアップし、ダイソート用シートのチップ仮着部20(基材フィルムにおける両面粘着シートの内側部分)に半導体チップの粘接着剤層を付着させ、半導体チップをダイソート用シートに仮着した。このとき、合計100個の半導体チップを、互いに300μmの間隙ができるように離間させて、格子状に配列した。
【0074】
この状態で25℃にて12時間保管した後、ダイソート用シートに仮着した半導体チップに対して、スピン洗浄機(ディスコ社製ウェハ研削装置,DFD651内ユニット)により回転数4000rpmで1分間、水洗浄を行った。その水洗浄中に、基材フィルムから半導体チップが脱落したものをチップ飛びとし、チップ飛びの数を確認した。結果を表2に示す。
【0075】
2.ピックアップ性試験
上記に続いて、ダイボンド装置(キヤノンマシナリー社製,BESTEM−D02)を用いて、4本ニードルによる突き上げおよび吸着コレットによる吸着により、ダイソート用シートから10個の粘接着剤層付きの半導体チップをピックアップした。
【0076】
このとき、吸着コレットが半導体チップを吸着保持できず、半導体チップがダイソート用シートに残着したり、半導体チップを取りこぼしたものをピックアップ不良とし、ピックアップ不良の数を確認した。結果を表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
表1および表2から明らかなように、本発明の条件を満たすダイソート用シートは、チップ保持性およびピックアップ性のいずれにおいても優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係るダイソート用シートは、ダイシング・ダイボンディングシートを使用してダイシングして得られた粘接着剤層付きの半導体チップの保管・搬送に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1,1A,1B…ダイソート用シート
2…基材フィルム
20…チップ仮着部
3…粘着シート(粘着部)
31…第1の粘着剤層
32…芯材
33…第2の粘着剤層
4…粘着剤層
5…支持フィルム
6…リングフレーム(枠体)
7…チップ
8…粘接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タックを有するチップを仮着するダイソート用シートであって、
平面視において、周縁部に粘着部、前記周縁部の内側にチップ仮着部を備えており、
前記チップ仮着部は、表面の表面粗さRa(算術平均粗さ)が0.01〜0.4μmであり、粘着剤層を有さない
ことを特徴とするダイソート用シート。
【請求項2】
前記チップ仮着部の表面の表面粗さRt(粗さ曲線の最大断面高さ)が0.1〜3.0μmであることを特徴とする請求項1に記載のダイソート用シート。
【請求項3】
前記ダイソート用シートは、
基材フィルムと、
前記基材フィルムの周縁部に積層された粘着シートと
を備えて構成され、
前記粘着部は前記粘着シートにより構成され、前記基材フィルムの一方の表面が前記チップ仮着部を構成することを特徴とする請求項1または2に記載のダイソート用シート。
【請求項4】
前記粘着シートは、
前記基材フィルムに貼付される第1の粘着剤層と、
枠体が貼付される第2の粘着剤層と、
前記第1の粘着剤層と前記第2の粘着剤層とに挟まれた芯材と
を備えて構成されることを特徴とする請求項3に記載のダイソート用シート。
【請求項5】
前記粘着部は、前記チップ仮着部を構成する前記基材フィルムの一方の面と同じ側の面に積層されている、請求項3または4に記載のダイソート用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−169670(P2012−169670A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−120764(P2012−120764)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2008−107480(P2008−107480)の分割
【原出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】