説明

ダイバーシチ受信装置及びダイバーシチ受信方法

【課題】複数のアンテナから入力する受信信号の位相を調整して、複数の受信信号の合成処理を行う場合に、DSPなどの演算処理負荷を軽減し、その小型化及び低価格化を実現する。
【解決手段】強度・位相判定回路19は、主信号及び従信号の信号強度を監視して、主信号と従信号との選択切替を決定したときは、位相シフト回路13、14によって位相が補正された主信号及び従信号を復調するπ/4−DQPSK復調ブロック22が、プリアンブルに基づいて取得したシンボル判定点のタイミングを通知するまでは、その決定した選択切替の実行を待機する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号を受信するダイバーシチ受信装置及びダイバーシチ受信方法に関する。より詳しくは、複数のアンテナから受信する無線信号の中から最適な無線信号を位相基準となる主信号として択一的に選択するダイバーシチ受信の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線信号を受信する際に、伝送特性の変動などで発生するフェージングの影響を受けて受信信号の伝送品質が劣化する。特に、陸上移動無線局のような受信装置においては、基地局からの無線信号が周囲の建造物等によって反射及び屈折してする複数の伝送路(マルチパス)から到達するので、マルチパスによるフェージングの影響を受けて受信信号が大きく変動する。
【0003】
この様な現象を克服するために、受信装置において所定の距離だけ離して複数のアンテナを設置し、この複数のアンテナのそれぞれから受信された信号を切り換えて選択するダイバーシチ受信方式が知られている。例えば、π/4−DQPSK(Differential Quadrature Phase-Shift Keying)は、4つの角度±45°及び±135°のうちの1つを通して信号ベクトルの位相を増加する方向に回転することによって、π/2の位相差を持つ(すなわち、直交する)データビットの対を伝達する変調である。位相回転の際、π/4−DQPSKによって変調した信号は、位相の変化の割合に等しい周波数シフトを示し、この周波数シフトを計測することによって、データビット対を復調することができる。ダイバーシチ受信方式については、下記の特許文献1〜6のように、従来からいくつか提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1においては、2つの受信アンテナからそれぞれ入力する2系統の受信信号の位相を基準位相と比較し、フェージングの影響を受けて本来取り得ない位相領域に変動するデータビットの数を計測し、その計測結果に応じて受信アンテナを切り替えて選択する構成になっている(特許文献1の第一実施例及び第1図ないし第4図参照)。
【0005】
また、特許文献2においては、2つの受信アンテナからそれぞれ入力する2系統の受信信号を局部発振器によって中間周波数に変換して検波し、それぞれの検波信号から抽出した2系統のサブキャリア信号の位相差を検出して、その位相差に応じて一方の局部発振器の位相を制御しながら、2系統の検波信号を合成する構成になっている(特許文献2の第2頁右下欄から第3頁右上欄、及び第1図参照)。
【0006】
また、特許文献3においては、2以上の複数のアンテナから入力する各系統の受信信号のフェージング位相歪を補償した後に、各系統の受信信号の包絡線レベル(すなわち、振幅)を用いて重み付けしてから加算して合成する構成になっている(特許文献3の実施例及び図1参照)。
【0007】
また、特許文献4においては、複数のアンテナで受信された受信信号に同期した搬送波に対して所定の位相量を与える位相器と、搬送波を用いて主受信信号の検波を行い、位相器で位相された搬送波を用いて副受信信号の検波を行い、合成位相制御回路によって各検波信号を分岐して取り込み、位相器で制御する搬送波の位相量を各検波信号が同相合成される値に設定する構成になっている(特許文献4の段落番号「0008」ないし「0010」及び図1参照)。
【0008】
また、特許文献5においては、2つの受信信号の合成後の検波信号の識別結果から得られる位相誤差情報信号を取り込み、所定の補正を行う位相器と、位相誤差情報信号を用いて主検波信号の位相補償を行う主信号位相補償回路と、位相器の出力信号を用いて副検波信号の位相補償を行う副信号位相補償回路と、位相補償後の各位相補償検波信号を合成する信号合成回路と、各検波信号の検波位相を比較し、副信号位相補償回路に与える位相誤差情報信号の補正量を各位相補償検波信号が同相になる値に設定する構成になっている(特許文献5の要約書及び図1参照)。
【0009】
また、特許文献6においては、搬送波の位相が可変対象となる変調方式が適用された無線伝送系の2つのブランチから個別に得られる振幅と位相を求めて、個別に得られる受信波について、振幅の差と位相の差又は振幅の差と位相の差とこれら受信波の何れか一方の位相とが取り得る組み合わせに基づく算術演算によって、ベクトル和の位相を得る構成になっている(特許文献6の実施例及び図4、図6ないし図9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平07−071033号公報
【特許文献2】特開平03−239020号公報
【特許文献3】特公平07−118671号公報
【特許文献4】特開平05−235812号公報
【特許文献5】特開平05−291992号公報
【特許文献6】特許第3388938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図5は、2つのアンテナから信号を受信する場合のマルチパスの一般的な概念をI−Q極平面を用いて説明する図である。図5において、受信信号を表すベクトルは、ベクトルV1が直接波(パス1)であり、ベクトルV2が間接波(パス2)である。また、ベクトルV1の受信信号とベクトルV2の受信信号の合成波(パス1+パス2)をベクトルV3で示している。
【0012】
図5(A)の場合には、直接波のベクトルV1と間接波のベクトルV2との位相誤差は比較的小さい。この場合の合成波のベクトルV3の振幅すなわちベクトルV3の長さであるスカラ値は大きい。一方、図5(B)の場合には、直接波のベクトルV1と間接波のベクトルV2との位相誤差は大きい。この場合には、ベクトルV1及びベクトルV2のそれぞれの振幅が大きいにもかかわらず、合成波のベクトルV3の振幅は小さい。
【0013】
このことから、2つの信号を合成した合成信号の強度(振幅)が強いということは、2つの信号の位相誤差が小さいこと、すなわち、2つの信号の位相がマルチパスのない場合の正規の位相に近いことが条件になる。このため、上記各特許文献等の先行技術においても、ダイバーシチ方式で受信する場合には、強度の強い信号を選択する構成になっている。しかしながら、強度の強い信号を選択するだけでは、マルチパスの影響を根本的に改善することは困難であった。その理由について、以下説明する。
【0014】
図6は、1/4π−DQPSK方式で位相変調された2系統の信号を切り替えながら選択する状態を示す従来例の図である。受信信号のサンプリングのタイミングは、シンボル判定点の周期の1/4の周期になっている。すなわち、シンボル判定点の周期のタイミングをtとすると、シンボル判定点はt=0,t=1,t=2,t=3…と推移するのに対し、直交変換を行うサンプリングのタイミングは、t=0,t=0.25,t=0.5,t=0.75,t=1,t=1.25,t=1.5,t=1.75,t=2…のように推移する。
【0015】
図6(A)は、アンテナ1から受信した信号のベクトルすなわち振幅及び位相の変化を表したものであり、図6(B)は、アンテナ2から受信した信号の振幅及び位相の変化を表したものである。従来においては、2つのアンテナから受信する受信信号の振幅をリアルタイムで常時監視してその位相を調整し、2つの受信信号の合成処理を行う構成になっている。図6(C)は、アンテナ1から受信した信号及びアンテナ2から受信した信号の信号強度を常時比較して、サンプリングのタイミングごとに、主信号を選択するためのアンテナ切替タイミングの有無を示す図である。
【0016】
t=0のタイミングの前(図示しないt=−0.25)までは、アンテナ1の信号を主信号としている。t=0のタイミングからt=0.25のタイミングまでは、アンテナ1の信号強度のほうがアンテナ2の信号強度より大きいので、t=0及びt=0.25の各タイミングにおいては、アンテナ1の信号をそのまま主信号として選択を維持し、アンテナ切替(主信号の切替)は行われていない。
【0017】
t=0.25のタイミングとt=0.5のタイミングとの間で、アンテナ2の信号強度のほうがアンテナ1の信号強度より大きくなると、t=0.5のタイミングでアンテナ2の信号を主信号とするようにアンテナ切替を行う。この後は、t=1のタイミングまでアンテナ2の信号強度のほうがアンテナ1の信号強度より大きいので、t=0.75及びt=1の各タイミングにおいては、アンテナ2の信号をそのまま主信号として選択を維持し、アンテナ切替(主信号の切替)は行われていない。
【0018】
しかしながら、アンテナ切替(主信号の切替)を行う前は、アンテナ1の受信信号とアンテナ2の受信信号との位相差は「+135°」になっているが、アンテナ切替(主信号の切替)を行った後は、アンテナ1の受信信号とアンテナ2の受信信号との位相差は「+20°」になっており、シンボル誤りが発生している。この場合において、例えば、簡単な位相補正を行ったとしても、ドップラーシフトの影響が残ってしまうので、シンボル誤りを解消することは困難である。この対策のため、DSPなどの位相調整手段によって、複雑で高速の演算処理が行われている。
【0019】
このように、上記各特許文献等の先行技術においては、複数のアンテナから受信する受信信号の振幅をリアルタイムで常時、すなわちサンプリングタイミングごとに監視してその位相を調整し、複数の受信信号の合成処理を行っているので、DSPなどの位相調整手段の演算処理負荷が大きくなり、位相調整手段の大型化及び高価格化を招くとともに、変調による振幅変化も合成処理に影響するので、合成利得が十分に得られないという問題があった。
【0020】
本発明は、上記課題を解決するものであり、複数のアンテナから入力する受信信号の位相を調整して、複数の受信信号の合成処理を行う場合に、DSPなどの位相調整手段の演算処理負荷を軽減し、位相調整手段の小型化及び低価格化を実現するダイバーシチ受信装置及びダイバーシチ受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るダイバーシチ受信装置は、ベースバンド信号を表すシンボルが位相変調され、連続するシンボルにおいて各シンボルを判定するためのシンボル判定点に所定の識別信号を有する無線信号を複数のアンテナから受信するダイバーシチ受信装置であって、前記複数のアンテナからそれぞれ受信する複数系統の受信信号をシンボル判定点の周期より小さい周期のタイミングでサンプリングし、互いに直交する一対の信号に直交変換し、それぞれが当該一対の信号からなる複数系統のデジタル信号を出力する直交変換手段と、前記直交変換手段によって出力された複数系統のデジタル信号のうちいずれか1つの信号を位相基準とする主信号として選択し他の信号を従信号として選択する選択手段と、前記選択手段によって選択された主信号及び従信号の位相を補正する位相補正手段と、を備え、前記選択手段は、前記主信号及び従信号の信号強度を監視して、主信号と従信号との選択切替を決定したときは、前記位相補正手段によって位相が補正された主信号及び従信号を復調する所定の復調手段が、前記識別信号に基づいて取得したシンボル判定点のタイミングを通知するまでは、当該決定した選択切替の実行を待機することを特徴とする。
【0022】
例えば、前記位相補正手段は、選択切替直前の主信号と従信号との位相差で選択切替後の主信号の位相を補正し、直前のシンボル判定点における主信号と従信号との位相差で従信号の位相を補正してもよい。
【0023】
また、例えば、前記選択手段は、前記位相補正手段によって位相が補正された主信号及び従信号の位相をそれぞれの一対の信号に基づいて検出して、当該検出した主信号の位相と当該検出した従信号の位相との位相差を算出し、前記位相補正手段は、前記選択手段によって算出された位相差で主信号及び従信号の位相を補正してもよい。
【0024】
また、例えば、前記選択手段は、前記位相補正手段によって位相が補正された主信号及び従信号の信号強度を比較して、前記直交変換手段によって出力される複数系統のデジタル信号について、当該比較結果に応じて主信号及び従信号の選択切替又は選択維持を決定してもよい。
【0025】
また、例えば、前記選択手段は、前記位相補正手段によって位相が補正された主信号及び従信号の信号強度をそれぞれの一対の信号のスカラ値の自乗の和で比較してもよい。
【0026】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係るダイバーシチ受信方法は、ベースバンド信号を表すシンボルが位相変調され、連続するシンボルにおいて各シンボルを判定するためのシンボル判定点に所定の識別信号を有する無線信号を複数のアンテナから受信するダイバーシチ受信方法であって、前記複数のアンテナからそれぞれ受信する複数系統の受信信号をシンボル判定点の周期より小さい周期のタイミングでサンプリングし、互いに直交する一対の信号に直交変換し、それぞれが当該一対の信号からなる複数系統のデジタル信号を出力する第1のステップと、前記第1のステップによって出力された複数系統のデジタル信号のうちいずれか1つの信号を位相基準とする主信号として選択し他の信号を従信号として選択する第2のステップと、前記第2のステップによって選択された主信号及び従信号の位相を補正する第3のステップと、を実行し、前記第2のステップは、主信号及び従信号の信号強度を監視して、主信号と従信号との選択切替を決定したときは、前記第3のステップによって位相が補正された主信号及び従信号を復調する所定の復調手段が、前記識別信号に基づいて取得したシンボル判定点のタイミングを通知するまでは、当該決定した選択切替の実行を待機することを特徴とする。
【0027】
例えば、前記第3のステップは、選択切替直前の主信号と従信号との位相差で選択切替後の主信号の位相を補正し、直前のシンボル判定点における主信号と従信号との位相差で従信号の位相を補正してもよい。
【0028】
また、例えば、前記第2のステップは、前記第3のステップによって位相が補正された主信号及び従信号の位相をそれぞれの一対の信号に基づいて検出し、当該検出した主信号の位相と当該検出した従信号の位相との位相差を算出し、前記第3のステップは、前記第2のステップによって算出された位相差で主信号及び従信号の位相を補正してもよい。
【0029】
また、例えば、前記第2のステップは、前記第3のステップによって位相が補正された主信号及び従信号の信号強度を比較し、前記第1のステップによって出力される複数系統のデジタル信号について、当該比較結果に応じて主信号及び従信号の選択切替又は選択維持を決定してもよい。
【0030】
また、例えば、前記第2のステップは、前記第3のステップによって位相が補正された主信号及び従信号の信号強度をそれぞれの一対の信号のスカラ値の自乗の和で比較してもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、複数のアンテナから入力する受信信号から抽出したシンボルのデータのパターン及びシンボルの推移に基づいてその位相を調整して、複数の受信信号の合成処理を行うことにより、正確な位相調整を可能にするとともに、DSPなどの位相調整手段の演算処理負荷を軽減し、位相調整手段の小型化及び低価格化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】2つのアンテナから受信した2系統の信号を合成する場合の基本的なブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるダイバーシチ受信装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態において1/4π−DQPSK方式で位相変調された2系統の信号を切り替えながら選択する状態を示す図である。
【図4】入力レベルに対するビット・エラー・レイトを従来例と本実施の形態とで比較した図である。
【図5】2つのアンテナから信号を受信する場合のマルチパスの一般的な概念をI−Q極平面を用いて説明する図である。
【図6】1/4π−DQPSK方式で位相変調された2系統の信号を切り替えながら選択する状態を示す従来例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係るダイバーシチ受信装置及びダイバーシチ受信方法の実施の形態について、図を参照して説明するが、その前に、2系統の受信信号を合成して検波する方法について説明する。図1は、ダイバーシチ受信方式において、2つのアンテナ31、32から受信した2系統の信号を合成する場合の基本的な回路のブロック図である。2系統の受信信号は、アンプ回路33、34で増幅された後、位相補正回路(φ)35、36によって位相が補正される。位相補正された2系統の信号は、加算器37で合成されて検波回路38に入力される。
【0034】
理論的には、位相補正回路35、36によって2系統の信号の位相差を補正して、2系統の信号が同相になれば、最大比の合成信号が得られるが、基準となる正しい受信パターンを受信側で持っていないので、図6に示したように、シンボル誤りが発生する場合がある。したがって、「正しい受信パターンの信号」とは、「位相誤差が少ない信号」であり、「信号強度が強い信号」であることから、常に強い信号を得るために、以下、本発明の実施の形態におけるダイバーシチ受信装置及びダイバーシチ受信方法について説明する。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態におけるダイバーシチ受信装置の構成を示すブロック図である。図2において、このダイバーシチ受信装置は、直交変換部100、ダイバーシチ部200、復調部300を有する。
【0036】
アンテナ1、2は、直交変換部100に受信信号を入力する。アンテナ1、2からの受信信号は、ベースバンド信号を表すシンボルが1/4π−DQPSK方式で直交変調されたアナログ信号のi信号及びq信号を含んでいる。ベースバンド信号を構成する各シンボルは、「00」、「01」、「10」、「11」の2ビットで構成されている。各シンボルの先頭には、特定の符号「1001」が16個ないし32個連続するプリアンブル(識別信号)が含まれている。このプリアンブルによって各シンボルを判定するためのシンボル判定点のタイミングを表している。
【0037】
直交変換部100(直交変換手段)は、アンテナ1、2から受信した2系統の信号のそれぞれに対して、直交変換を行う。このため、直交変換部100は、発振器3、−π/2位相シフト器4、4つの乗算器(ミキサ)5〜8を有する。発振器3は、アンテナ1、2から入力された無線信号の搬送信号(キャリア)と同一の周波数の発振信号を出力する。乗算器5、7は、受信信号と発振信号とを乗算してi信号を分離して、ダイバーシチ部200に対して出力する。乗算器6、8は、受信信号と−π/2位相シフト器4によって90°シフトされた発振信号とを乗算してq信号を分離して、ダイバーシチ部200に対して出力する。
【0038】
ダイバーシチ部200は、直交変換部100から出力される2系統の受信信号のそれぞれのi信号及びq信号に対して、不要な高周波成分を除去して、ベースバンド信号であるI信号及びQ信号を抽出し、位相シフト、強度判定及び位相判定を行い、2系統のI信号同士及びQ信号同士を合成して、復調部300に出力する。
【0039】
このため、ダイバーシチ部200は、4つのRRC(ルート・レイズド・コサイン)フィルタ回路からなるLPF(ローパスフィルタ)回路9〜12、2つの位相シフト回路13、14、2つの位相検出回路15、17、2つの強度検出回路16、18、強度・位相判定回路19、及び2つの加算器20、21を有する。以下、これらの機能について説明する。
【0040】
LPF回路9は、直交変換部100の対応する乗算器5から入力されるi信号の不要な高周波成分を除去して、ベースバンドのI信号を位相シフト回路13に出力する。LPF10は、直交変換部100の対応する乗算器6から入力されるq信号の不要な高周波成分を除去して、ベースバンドのQ信号を位相シフト回路13に出力する。LPF回路11は、直交変換部100の対応する乗算器7から入力されるi信号の不要な高周波成分を除去して、ベースバンドのI信号を位相シフト回路14に出力する。LPF回路12は、直交変換部100の対応する乗算器8から入力されるq信号の不要な高周波成分を除去して、ベースバンドのQ信号を位相シフト回路14に出力する。
【0041】
位相シフト回路13、14(位相補正手段)は、A/D変換器、クロック発生回路及びその他の回路(いずれも図示せず)を有し、LPF回路9〜12から入力されるアナログのI信号及びQ信号をサンプリングしてデジタルのI信号及びQ信号に変換する。この場合において、シンボル判定点の周期よりも小さい周期、例えば、本実施の形態においては、1/4の周期のタイミングでサンプリングする。
【0042】
すなわち、A/D変換器は、クロック発生回路が発生するサンプリング信号によって、アナログのI信号及びQ信号をサンプリングして、デジタルのI信号及びQ信号に変換する。したがって、シンボル判定点の周期のタイミングをtとすると、t=0,t=0.25,t=0.5,t=0.75,t=1.0,t=1.25,t=1.5…のサンプリングタイミングで、アンテナ1及びアンテナ2からの2系統のI信号及びQ信号が位相シフト回路13、14において生成されて、それぞれ位相補正がなされる。
【0043】
位相シフト回路13は、位相補正したI信号を位相検出回路15、強度検出回路16、及び乗算器20に出力するとともに、位相補正したQ信号を位相検出回路15、強度検出回路16、及び乗算器21に出力する。また、位相シフト回路14は、位相補正したI信号を位相検出回路17、強度検出回路18、及び乗算器20に出力するとともに、位相補正したQ信号を位相検出回路17、強度検出回路18、及び乗算器21に出力する。
【0044】
位相検出回路15、17は、それぞれ対応する位相シフト回路13、14からのI信号及びQ信号によって受信信号のベクトルの位相を検出する。ベクトルの位相をφとすると、φは次の式によって表される。位相検出回路15、17は、検出した位相を強度・位相判定回路19に出力する。
φ=tan-1(Q信号のスカラ/I信号のスカラ)
【0045】
強度検出回路16、18は、それぞれ対応する位相シフト回路13、14からのI信号及びQ信号によって受信信号の振幅すなわちベクトルのスカラ値を検出する。ベクトルのスカラ値は、I及びQの和(I及びQの自乗の和)の平方根で表されるが、平方根を算出する除算には演算ステップを多く要するので、強度検出回路16、18は、I及びQの自乗の和を演算して、その演算結果を強度・位相判定回路19に出力する。
【0046】
強度・位相判定回路19(選択手段)は、位相検出回路15、17及び強度検出回路16、18から入力される2系統の受信信号の位相及び振幅(実際はI及びQの自乗の和)に基づいて、受信信号の状態を常時(サンプリングタイミングごとに)監視して、必要に応じて主信号及び信号の選択切替を決定して、位相シフト回路13、14に対して選択切替を指示する。ただし、切り替えることを判定したときでも、判定のリアルタイムすなわちサンプリングタイミングで位相シフト回路13、14に対して選択切替を指示するのではない。次のシンボル判定点までは選択切替の指示を待機し、後述するように、復調部300からシンボル判定点のタイミングが通知されたときに、位相シフト回路13、14に対して選択切替を指示する。また、強度・位相判定回路19は、位相検出回路15、17からそれぞれ入力される主信号の位相(φmain)及び従信号の位相(φsub)の位相差Δφを算出して、シンボル判定点のタイミングが通知されたときに、位相シフト回路13、14に対してその位相差Δφを通知する。
【0047】
加算器20は、位相シフト回路13、14から入力される2系統のI信号同士を加算して、復調部300のπ/4−DQPSK復調ブロック22に出力する。加算器21は、位相シフト回路13、14から入力される2系統のQ信号同士を加算して、復調部300のπ/4−DQPSK復調ブロック22に出力する。
【0048】
π/4−DQPSK復調ブロック22(復調手段)は、加算されたI信号及びQ信号についてシンボル判定点を基準としてシンボルごとに復調し、連続するシンボルを「0」及び「1」からなる2値の復調データ列として次段に出力する。この場合において、各シンボルの先頭に付加されている識別情報であるプリアンブルに基づいて、復調の基準となるシンボル判定点を検出する。そして、検出したシンボル判定点のタイミングを強度・位相判定回路19に通知する。
【0049】
位相シフト回路13、14は、強度・位相判定回路19からシンボル判定点のタイミングごとに指示される切替の有無、及び、通知される主信号と従信号との位相差Δφに基づいて、選択切替直前の主信号と従信号との位相差Δφで選択切替後の主信号の位相を補正し、直前のシンボル判定点における主信号と従信号との位相差Δφで従信号の位相を補正する。すなわち、従信号から主信号に切り替わる直前に位相補正された従信号の補正量によって、切り替わった後の主信号の位相を補正し、直前のシンボル判定点において、従信号の位相を主信号の位相に一致させるために、位相差Δφだけ従信号の位相を補正する。
【0050】
次に、図2のダイバーシチ受信装置によって実行されるダイバーシチ受信方法について図3及び図4を参照して詳細に説明する。
【0051】
図3は、本実施の形態において、1/4π−DQPSK方式で位相変調された2系統の信号を切り替えながら選択する状態を示すI−Q極平面の図である。図3において、縦方向の最初の段の項目1は、図2のLPF回路9〜12から位相シフト回路13、14に入力されるI信号及びQ信号のベクトルを表し、次の段の項目2は、図2の位相シフト回路13、14から位相検出回路15、17、強度検出回路16、18、及び加算器20、21に入力されるI信号及びQ信号のベクトル、すなわち位相補正がされたベクトルを表し、最後の段の項目3は、図2の加算器20、21からπ/4−DQPSK復調ブロック22に入力されるI信号及びQ信号のベクトル、すなわちアンテナ1及びアンテナ2の合成信号のベクトルを表している。
【0052】
また、アンテナ1、2からの2系統の受信信号のうち、いずれか一方を主信号として選択し、他方を従信号として選択して、各項目のベクトルについて、シンボル判定点の周期の1/4の周期のサンプリングタイミング(t=−0.25,0,0.25,0.5,0.75,1.0,1.25,1.5…)で、主信号及び従信号の強度を強度・位相判定回路19によって判定する。以下、各サンプリングタイミングでの判定処理について説明する。
【0053】
(1)t=−0.25(シンボル)の時
この時点において、位相基準となる主信号はアンテナ1からの受信信号であり、従信号はアンテナ2からの受信信号であるとする。また、図示しない直前のアンテナ切替時(すなわち、直前の主信号及び従信号の選択切替時、以下同じ)の位相差は「+90°」であるとし、直前のシンボル判定点での主信号との位相差は「+72°」であるとする。
【0054】
まず、位相シフト回路13、14によって、主信号のベクトルの位相を直前のアンテナ切替時(主信号及び従信号の選択切替時)の位相差「+90°」で補正する。補正は位相のみであり振幅の補正は行わない。アンテナ1からの受信信号が主信号である限り、すなわち主信号及び従信号の選択切替がない限り、この補正量は一定である。一方、アンテナ2の従信号のベクトルは、直前のシンボル判定点での主信号との位相差「+72°」で補正する。ただし、従信号のベクトルの位相補正を行っても、ドップラーシフトの影響のために、必ずしも、主信号の位相と従信号の位相とが同じ位相になるとは限らない。なお、強度検出回路16、18によって信号強度の検出は行うが(この場合、アンテナ1>アンテナ2)、このタイミングはシンボル判定点ではないので、アンテナ切替のための主信号及び従信号の信号強度の判定は行わない。主信号のベクトルと従信号のベクトルとを加算した結果、すなわち加算器20、21からπ/4−DQPSK復調ブロック22に入力される主信号及び従信号の合成後のベクトルを項目3に示す。
【0055】
(2)t=0(シンボル)の時
シンボル判定点であるので、主信号の選択切替又は選択維持を行うとともに、主信号と従信号との位相を合わせる。位相シフト回路14から出力されるアンテナ2の従信号の位相は、直前まで「+72°」の補正を加えているので、「+207°(=135+72)」となる。一方、位相シフト回路13から出力されるアンテナ1の信号の位相は「+180°」であるので、位相差は「−27°(=180−207)」となる。この値を補正量「+72°」に加算し、最終的な従信号の補正量「+45°(=−27+72)」が得られる。すなわち、直前のシンボル判定点での主信号との位相差が得られる。この値は次のシンボル判定点まで同じである。また、このタイミングはシンボル判定点であるので、主信号及び従信号の信号強度であるベクトルのスカラ値を計算し、スカラ値が大きい信号を主信号として選択する。ただし、この場合の信号強度は、アンテナ1>アンテナ2で前回のシンボル判定点のときと同じであるので、前回の選択を維持して選択切替は行わない。加算器20、21からπ/4−DQPSK復調ブロック22に入力される主信号及び従信号の合成後のベクトルを項目3に示す。
【0056】
(3)t=0.25〜0.5(シンボル)の時
この場合は、t=−0.25(シンボル)の時と同じであるので、説明は省略する。
【0057】
(4)t=0.75(シンボル)の時
強度検出回路16、18によって検出されたアンテナ1及びアンテナ2の信号強度すなわちベクトルのスカラは、アンテナ2>アンテナ1に変化しているが、シンボル判定点ではないので、主信号及び従信号の切替は行わず、現在の選択を維持して次のシンボル判定点まで待機する。
【0058】
(5)t=1.0(シンボル)の時
シンボル判定点であるので、位相シフト回路13、14において、主信号であるアンテナ1のベクトルを直前のアンテナ切替時(主信号及び従信号の選択切替)の位相「+90°」で補正し、従信号であるアンテナ2のベクトルを、直前のシンボル判定点の主信号との位相差「+45°」で補正する。その結果、アンテナ2に対応する位相シフト回路14から出力される信号のベクトルの位相は「−45°(=−90+45)」であり、アンテナ1に対応する位相シフト回路13から出力される信号のベクトルの位相は「−56°(=−146+90)」であるので、アンテナ1の信号とアンテナ2の信号との位相差は「−11°(=−56−(−45)」となる。これを直前までの補正量「+45°」に加算し、最終的な従信号の補正量「+34°(=+45−11)」を算出する。この補正量が、直前のシンボル判定点での主信号との位相差になる。
【0059】
さらに、このシンボル判定点のタイミングでは、「t=0(シンボル)」時の場合と異なり、強度検出回路16、18によって検出されたアンテナ1及びアンテナ2の信号強度であるベクトルのスカラは、アンテナ2>アンテナ1に変化している。このため、次のシンボル判定点までアンテナ2の信号を主信号として選択し、アンテナ1の信号を従信号として選択するように、以下の手順に従って選択切替を行う。
【0060】
まず、次のサンプリングタイミング(t=1.25の時)以降に、アンテナ2の信号に対して行う主信号側の位相補正量を計算する。これは、直前のアンテナ切替(主信号及び従信号の選択切替)、すなわちアンテナ2の信号に対して行っていた、直前のシンボル判定点での主信号との位相差と等しく、上記で計算した「+34°」と等しい。そして、次のサンプリングタイミング(t=1.25の時)以降に、アンテナ1の信号に対して行う直前のシンボル判定点での主信号との位相差を計算する。この位相差は、これまでアンテナ1の信号に対して行っていた、直前のアンテナ切替(主信号及び従信号の選択切替)と等しく「+90°」である。加算器20、21からπ/4−DQPSK復調ブロック22に入力される主信号及び従信号の合成後のベクトルを項目3に示す。
【0061】
(6)t=1.25〜1.5(シンボル)の時
直前のシンボル判定点のタイミングで、アンテナ2の信号が主信号として選択され、アンテナ1の信号が従信号として選択されたので、主信号であるアンテナ2の信号のベクトルを、直前のアンテナ切替(主信号及び従信号の選択切替)時の位相差「+34°」で補正する。一方、従信号であるアンテナ1の信号のベクトルは、次のシンボル判定点のタイミングまで、従信号の位相補正量「+90°」で補正される。加算器20、21からπ/4−DQPSK復調ブロック22に入力される主信号及び従信号の合成後のベクトルを項目3に示す。
【0062】
図4は、入力レベルに対するビット・エラー・レイト(BER)を従来例と本実施の形態とで比較した図である。図4(A)は、従来例において、60km/hのフェージング環境でのBER特性の測定結果であり、単一のアンテナで無線信号を受信した場合(図の△の測定結果)と、ダイバーシチ方式で無線信号を受信した場合(図の◆の測定結果)とを比較したものであり、入力レベル(dBμV/開放)に対するBERの比較を示す図である。図4(B)は、本実施の形態において、60km/hのフェージング環境でのBER特性の測定結果であり、単一のアンテナで無線信号を受信した場合(図の△の測定結果)と、ダイバーシチ方式で無線信号を受信した場合(図の◆の測定結果)とを比較したものであり、入力レベル(dBμV/開放)に対するBERの比較を示す図である。
【0063】
図4(A)に示す従来例における受信、及び、図4(B)に示す本実施の形態における受信を、単一のアンテナ受信の場合とダイバーシチ受信の場合との改善度で比較すると、1%感度付近では、従来例が6〜7dB改善しているのに対して、本実施の形態では12dB改善している。また、静特性において、同じ信号強度を入力した場合には、従来例は感度の変化が無いのに対して、本実施の形態では感度が10dB向上している。
【0064】
このように、上記実施の形態においては、2つのアンテナ1、2からそれぞれ受信する2系統の受信信号をシンボル判定点の周期より小さい周期のタイミング(t=0,t=0.25,t=0.5,t=0.75,t=1.0,t=1.25,t=1.5…)でサンプリングし、互いに直交する一対の信号に直交変換し、それぞれが当該一対の信号からなる2系統のデジタル信号を出力する直交変換部100と、直交変換部100によって出力された2系統のデジタル信号のうちいずれか1つの信号を位相基準とする主信号として選択し、他の信号を従信号として選択する強度・位相判定回路19と、強度・位相判定回路19によって選択された主信号及び従信号の位相を補正する位相シフト回路13、14と、を備え、強度・位相判定回路19は、主信号及び従信号の信号強度を監視して、主信号と従信号との選択切替を決定したときは、位相シフト回路13、14によって位相が補正された主信号及び従信号を復調するπ/4−DQPSK復調ブロック22が、プリアンブルに基づいて取得したシンボル判定点のタイミングを通知するまでは、その決定した選択切替の実行を待機する。したがって、2つのアンテナ1、2から入力する受信信号から抽出したシンボルのデータのパターン及びシンボルの推移に基づいてその位相を調整して、2系統の受信信号の合成処理を行うことにより、正確な位相調整を可能にするとともに、アンテナ1、2から受信する2系統の信号の振幅をリアルタイムすなわちサンプリングタイミングごとに監視して、その位相を調整することがないので、DSPなどの位相調整手段の演算処理負荷を軽減し、位相調整手段の小型化及び低価格化を可能にする。
【0065】
上記実施の形態において、位相シフト回路13、14は、選択切替直前の主信号と従信号との位相差で選択切替後の主信号の位相を補正し、直前のシンボル判定点における主信号と従信号との位相差で従信号の位相を補正する。したがって、サンプリングタイミングごとの位相補正によるシンボル誤りの発生を防止することができる。
【0066】
また、上記実施の形態において、強度・位相判定回路19は、位相シフト回路13、14によって位相が補正された主信号及び従信号の位相を、それぞれの一対のI信号及びQ信号に基づいて検出して、その検出した主信号の位相と検出した従信号の位相との位相差を算出し、位相シフト回路13、14は、強度・位相判定回路19によって算出された位相差で主信号及び従信号の位相を補正する。
【0067】
また、上記実施の形態において、強度・位相判定回路19は、位相シフト回路13、14によって位相が補正された主信号及び従信号の信号強度を比較して、直交変換部100によって出力される2系統のデジタル信号について、その比較結果に応じて主信号及び従信号の選択切替又は選択維持を決定する。この場合において、強度・位相判定回路19は、位相シフト回路13、14によって位相が補正された主信号及び従信号の信号強度をそれぞれ一対の信号のスカラ値の自乗の和で比較する。したがって、演算ステップを多く要する平方根を演算することがないので、DSPなどの演算処理負荷をさらに軽減し、さらなる小型化及び低価格化に貢献する。
【0068】
なお、上記実施の形態は本発明を説明するためのものであり、本発明は上記実施の形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、当業者によって考えられる他の実施の形態や変形例についても本発明に属するものである。例えば、上記の実施の形態におけるダイバーシチ受信装置及びダイバーシチ受信方法は、2個のアンテナによって受信を行っているが、本発明におけるアンテナ構成は2個のアンテナに限定されるものではない。3個以上の複数のアンテナによって受信を行うダイバーシチ受信装置及びダイバーシチ受信方法も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
13、14 位相シフト回路
15、17 位相検出回路
16、18 強度検出回路
19 強度・位相判定回路
20、21 加算器
22 π/4−DQPSK復調ブロック
100 直交変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースバンド信号を表すシンボルが位相変調され、連続するシンボルにおいて各シンボルを判定するためのシンボル判定点に所定の識別信号を有する無線信号を複数のアンテナから受信するダイバーシチ受信装置であって、
前記複数のアンテナからそれぞれ受信する複数系統の受信信号をシンボル判定点の周期より小さい周期のタイミングでサンプリングし、互いに直交する一対の信号に直交変換し、それぞれが当該一対の信号からなる複数系統のデジタル信号を出力する直交変換手段と、
前記直交変換手段によって出力された複数系統のデジタル信号のうちいずれか1つの信号を位相基準とする主信号として選択し他の信号を従信号として選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された主信号及び従信号の位相を補正する位相補正手段と、
を備え、
前記選択手段は、前記主信号及び従信号の信号強度を監視して、主信号と従信号との選択切替を決定したときは、前記位相補正手段によって位相が補正された主信号及び従信号を復調する所定の復調手段が、前記識別信号に基づいて取得したシンボル判定点のタイミングを通知するまでは、当該決定した選択切替の実行を待機することを特徴とするダイバーシチ受信装置。
【請求項2】
前記位相補正手段は、選択切替直前の主信号と従信号との位相差で選択切替後の主信号の位相を補正し、直前のシンボル判定点における主信号と従信号との位相差で従信号の位相を補正することを特徴とする請求項1に記載のダイバーシチ受信装置。
【請求項3】
前記選択手段は、前記位相補正手段によって位相が補正された主信号及び従信号の位相をそれぞれの一対の信号に基づいて検出して、当該検出した主信号の位相と当該検出した従信号の位相との位相差を算出し、前記位相補正手段は、前記選択手段によって算出された位相差で主信号及び従信号の位相を補正することを特徴とする請求項2に記載のダイバーシチ受信装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記位相補正手段によって位相が補正された主信号及び従信号の信号強度を比較して、前記直交変換手段によって出力される複数系統のデジタル信号について、当該比較結果に応じて主信号及び従信号の選択切替又は選択維持を決定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のダイバーシチ受信装置。
【請求項5】
前記選択手段は、前記位相補正手段によって位相が補正された主信号及び従信号の信号強度をそれぞれの一対の信号のスカラ値の自乗の和で比較することを特徴とする請求項4に記載のダイバーシチ受信装置。
【請求項6】
ベースバンド信号を表すシンボルが位相変調され、連続するシンボルにおいて各シンボルを判定するためのシンボル判定点に所定の識別信号を有する無線信号を複数のアンテナから受信するダイバーシチ受信方法であって、
前記複数のアンテナからそれぞれ受信する複数系統の受信信号をシンボル判定点の周期より小さい周期のタイミングでサンプリングし、互いに直交する一対の信号に直交変換し、それぞれが当該一対の信号からなる複数系統のデジタル信号を出力する第1のステップと、
前記第1のステップによって出力された複数系統のデジタル信号のうちいずれか1つの信号を位相基準とする主信号として選択し他の信号を従信号として選択する第2のステップと、
前記第2のステップによって選択された主信号及び従信号の位相を補正する第3のステップと、
を実行し、
前記第2のステップは、主信号及び従信号の信号強度を監視して、主信号と従信号との選択切替を決定したときは、前記第3のステップによって位相が補正された主信号及び従信号を復調する所定の復調手段が、前記識別信号に基づいて取得したシンボル判定点のタイミングを通知するまでは、当該決定した選択切替の実行を待機することを特徴とするダイバーシチ受信方法。
【請求項7】
前記第3のステップは、選択切替直前の主信号と従信号との位相差で選択切替後の主信号の位相を補正し、直前のシンボル判定点における主信号と従信号との位相差で従信号の位相を補正することを特徴とする請求項6に記載のダイバーシチ受信方法。
【請求項8】
前記第2のステップは、前記第3のステップによって位相が補正された主信号及び従信号の位相をそれぞれの一対の信号に基づいて検出し、当該検出した主信号の位相と当該検出した従信号の位相との位相差を算出し、前記第3のステップは、前記第2のステップによって算出された位相差で主信号及び従信号の位相を補正することを特徴とする請求項7に記載のダイバーシチ受信方法。
【請求項9】
前記第2のステップは、前記第3のステップによって位相が補正された主信号及び従信号の信号強度を比較し、前記第1のステップによって出力される複数系統のデジタル信号について、当該比較結果に応じて主信号及び従信号の選択切替又は選択維持を決定することを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載のダイバーシチ受信方法。
【請求項10】
前記第2のステップは、前記第3のステップによって位相が補正された主信号及び従信号の信号強度をそれぞれの一対の信号のスカラ値の自乗の和で比較することを特徴とする請求項9に記載のダイバーシチ受信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−268396(P2010−268396A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120204(P2009−120204)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】