説明

ダクトの結露防止構造

【課題】低い材料費でダクトの外面における結露の発生を十分に防止する。
【解決手段】サイドベンチダクト15に、空調エア放出手段としての放出口31をサイドベンチダクト15の内外に貫通するように形成し、空調装置から送出された空調エアの一部を、サイドベンチダクト15の下流側外面に向けて放出口31から斜め上向きに放出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装パネルの裏側に配設され、空調装置により送出された空調エアを吹出口に向かって導出するダクトの外面に結露が発生しないようにするダクトの結露防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、断熱性を備えた発泡樹脂層を硬質樹脂層に積層してダクトを形成することで、ダクトの外面における結露の発生を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−205831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1では、結露の発生を十分に防止するためには、発泡樹脂層を分厚くする必要が生じ、発泡樹脂を大量に使用することにより材料費が嵩む場合がある。
【0005】
本発明は、低い材料費でダクトの外面における結露の発生を十分に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、ダクトを流れる空調エアを結露発生防止に利用したことを特徴とする。
【0007】
具体的には、本発明は、車両用内装パネルの裏側に配設され、空調装置により送出された空調エアを吹出口に向かって導出するダクトの外面に結露が発生しないようにするダクトの結露防止構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記空調装置により送出された空調エアの一部を、上記ダクトの外面に向けて放出する空調エア放出手段を有していることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のダクトの結露防止構造において、上記ダクトは、内部に閉断面のダクト空間を有する筒形状に形成され、上記空調エア放出手段は、上記ダクトとは独立して上記空調装置に接続され、上記空調エアを上記ダクトの外面に向けて放出する放出口を有する補助ダクトであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のダクトの結露防止構造において、上記ダクトは樋形状に形成されていて、開口側を上記内装パネルの裏側に向けて該内装パネルの裏面に接合され、上記空調エア放出手段は、上記ダクトの内外に貫通し、上記空調エアを上記ダクトの下流側外面に向けて放出する放出口であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、空調エア放出手段により放出された空調エアがダクトの外面に沿って流れるので、当該ダクトの外面と内面との温度差が低減され、ダクトの外面における結露の発生を防止できる。また、冷房時や積極的に除湿を行う場合、より効果的に結露の発生を防止できる。
【0012】
また、結露が発生した場合でも、空調エアがダクトの外面に沿って流れて結露発生箇所近傍の水蒸気を拡散させてさらなる蒸発を促進する。
【0013】
また、ダクトの壁厚を分厚くする必要がないので、材料費を低く抑えることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、放出口がダクトの外面に向くように補助ダクトを設置するだけで、放出口からダクトの外面に容易に空調エアを当てることができる。
【0015】
また、ダクトが内部に閉断面のダクト空間を有する筒形状に形成されているので、ブロー成形により容易に成形できる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、ダクトに開口を形成するだけなので、部品点数を増やすことなく空調エア放出手段を設置でき、製造コストを削減できる。
【0017】
また、ダクトを射出成形により成形する場合に、放出口をアンダーカット部を構成しない簡素な形状に設定できるので、製造工程及び型構造を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係るインストルメントパネルの略左半分を示す斜視図である。
【図2】実施形態1に係るダクト構成部材の略左半分を示す斜視図である。
【図3】図2のA−A線に相当する断面図である
【図4】図3のB−B線における断面図である。
【図5】実施形態2の図2相当図である。
【図6】実施形態2に係るダクト構成部材の略左半分を示す正面図である。
【図7】実施形態2に係るセンター補助ダクトの放出口の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0020】
(実施形態1)
図1は、左ハンドル車のインストルメントパネル1の左側を示す。このインストルメントパネル1は、図3及び図4に示すように、基材1aと、該基材1a表面の車体前端を除く部分に一体に形成された発泡層1bと、該発泡層1bの表面に該表面を覆うように一体に形成された表皮層1cとから構成されている。このインストルメントパネル1の車幅方向両側には、サイドデフロスターエア吹出口49とサイドベントエア吹出口55とが上から順に車体後方を向くように形成されている。また、インストルメントパネル1の車幅方向中程には、センターベントエア吹出口45が形成されている。また、インストルメントパネル1の車体前端の基材1a露出部分には、車幅方向に延びるフロントデフロスターエア吹出口57が形成されている。図1中、43はオーディオ機器等の装置類取付け用の開口部、47はメーターフード部、51はメーター機器類取付け用の開口部、53はステアリング装置取付け用の開口部である。
【0021】
上記インストルメントパネル1の裏面には、パネル材からなる図2に示すダクト構成部材5が振動溶着により一体に接合されている。このダクト構成部材5には、本発明の実施形態1に係る結露防止構造が適用され、車幅方向全体に亘って延びる樋形状のデフダクト13、該デフダクト13の車体後方で車幅方向左半分に亘って延びる樋形状のサイドベンチダクト15、及び該サイドベンチダクト15の右側で車体前後方向に延びる樋形状のセンターベンチダクト17が形成されている。上記センターベンチダクト17の下端は車幅方向略中央で左右に仕切られている。これらデフダクト13、サイドベンチダクト15、及びセンターベンチダクト17は、開口側を上記インストルメントパネル1の裏側に向けてインストルメントパネル1の裏面に接合されている。このダクト構成部材5は、各ダクト13,15,17の開口側を成形する表側成形型と各ダクト13,15,17の反開口側を成形する裏側成形型とを型閉めしてキャビティを形成し、このキャビティ内に樹脂を射出充填することにより成形される。
【0022】
上記デフダクト13はサイドデフロスターエア吹出口49とフロントデフロスターエア吹出口57とに連通し、上記サイドベンチダクト15はサイドベントエア吹出口55に連通し、上記センターベンチダクト17はセンターベントエア吹出口45に連通している。
【0023】
上記デフダクト13の底面の車幅方向略中央、上記サイドベンチダクト15の底面の右側端部近傍、及び上記センターベンチダクト17の底面の前端近傍にはそれぞれ、図示しない空調装置から空調エアを導入する略矩形状の空調エア導入口19が形成されている。
【0024】
デフダクト13は、空調エア導入口19から導入された空調エアをサイドデフロスターエア吹出口49とフロントデフロスターエア吹出口57から車室内に吹き出し、サイドベンチダクト15は、空調エア導入口19から導入された空調エアをサイドベントエア吹出口55から車室内に吹き出し、センターベンチダクト17は、空調エア導入口19から導入された空調エアをセンターベントエア吹出口45から車室内に吹き出す。
【0025】
サイドベンチダクト15には、図2、図3及び図4に示すように空調エア導入口19の下流側に接近して断面略への字型の膨出部25が形成されている。この膨出部25の下流側端部には、空調エア放出手段としての放出口31がサイドベンチダクト15の内外を貫通するように形成されている。膨出部25の下流側端部は、サイドベンチダクト15の底面に向かって接近するように傾斜している。
【0026】
センターベンチダクト17にも、サイドベンチダクト15と同様の膨出部25が左右対称に1対形成され、各膨出部25には放出口31が形成されている。
【0027】
そして、空調エア導入口19からサイドベンチダクト15内に導入された空調エアの一部は、下流側に行く過程で上記膨出部25の内面により案内されてサイドベンチダクト15の下流側外面に向けて放出口31から斜め上向きに放出される。放出口31から放出された空調エアはサイドベンチダクト15の外面に沿って下流側に向かって流れるので、当該サイドベンチダクト15の外面と内面との温度差が低減され、サイドベンチダクト15の外面における結露の発生を防止できる。また、冷房時や積極的に除湿を行う場合、より効果的に結露の発生を防止できる。
【0028】
また、結露が発生した場合でも、空調エアがサイドベンチダクト15の外面に沿って流れて結露発生箇所近傍の水蒸気を拡散させてさらなる蒸発を促進する。
【0029】
一方、空調エア導入口19からセンターベンチダクト17内に導入された空調エアの一部は、下流側に行く過程で上記膨出部25の内面により案内されてセンターベンチダクト17の下流側外面に向けて放出口31から斜め上向きに放出される。放出口31から放出された空調エアはセンターベンチダクト17の外面に沿って下流側に向かって流れるので、サイドベンチダクト15と同様に、結露の発生が防止されるとともに結露発生箇所近傍の水蒸気のさらなる蒸発が促進される。
【0030】
したがって、この実施形態1では、ダクト構成部材5に開口を形成するだけなので、部品点数を増やすことなく空調エア放出手段を設置でき、製造コストを削減できる。
【0031】
また、放出口31をアンダーカット部を構成しない簡素な形状に設定しているので、製造工程及び型構造を簡素化できる。
【0032】
(実施形態2)
図5及び図6は、本発明の実施形態2に係るダクト構成部材5を示す。本実施形態2では、ダクト構成部材5が、デフダクト13に代えて、2本のサイドデフダクト61及びセンターデフダクト65を備えている。サイドベンチダクト15は、内部に閉断面のダクト空間を有する断面矩形の筒形状に形成され、車幅方向略全体に延びてその開口を車体後方に向けている。サイドデフダクト61は、サイドベンチダクト15の左右両端近傍から分岐し、内部に閉断面のダクト空間を有する断面矩形の筒形状に形成されてその開口を車体後方に向けている。センターベンチダクト17は、内部に閉断面のダクト空間を有する断面矩形の筒形状に形成され、車体前後方向に延びる途中で2手に分岐して一対の開口を車体後方に向けている。センターデフダクト65は、車体上方に向かって幅を徐々に広げる偏平な断面長円の筒形状に形成され、その開口を車体上方に向けて配設されている。これらサイドベンチダクト15、センターベンチダクト17、サイドデフダクト61及びセンターデフダクト65はそれぞれ、ブロー成形により製造される。
【0033】
上記サイドデフダクト61はサイドデフロスターエア吹出口49に連通し、上記センターデフダクト65はフロントデフロスターエア吹出口57に連通している。
【0034】
図5及び図6中、59は空調エアを送出する空調装置であり、該空調装置59は、図示しない空調装置本体と該空調装置本体を収容するケース59aとからなる。このケース59aは、前壁(図示せず)と後壁59bと両側壁59cと底壁(図示せず)とで正面視矩形状に形成されている。
【0035】
サイドベンチダクト15は、空調装置59により送出された空調エアをサイドベントエア吹出口55から車室内に吹き出し、センターベンチダクト17は、空調装置59により送出された空調エアをセンターベントエア吹出口45から車室内に吹き出す。また、サイドデフダクト61は、空調装置59により送出されサイドベンチダクト15を経た空調エアをサイドデフロスターエア吹出口49から車室内に吹き出し、センターデフダクト65は空調装置59により送出された空調エアをフロントデフロスターエア吹出口57から吹き出す。
【0036】
上記空調装置59のケース59aの左側の側壁59cの外面には、先端に放出口を有する円筒形のサイド補助ダクト67の基端が接続されている。このサイド補助ダクト67の先端は、支持部材72によりサイドベンチダクト15の底面に支持されて放出口がサイドベンチダクト15の底面(外面)に対面している。
【0037】
また、上記空調装置59のケース59aの後壁59bの外面には、先端に放出口75を有するセンター補助ダクト73の基端が接続されている。このセンター補助ダクト73は、図7にも示すように、先端に向かって車幅方向に徐々に広がる偏平な断面長円形状に形成され、その先端側がセンターベンチダクト17の底面に近付くように屈曲している。また、センター補助ダクト73の放出口75は、センターベンチダクト17の底面(外面)における分岐の基端に対面している。また、センター補助ダクト73の先端部分は隆起部74により車幅方向中程で分断され、放出口75が2つの放出口部75aに分断されている。
【0038】
この実施形態2に係るダクト構成部材5は、ブロー成形により成形され、サイドベンチダクト15、センターベンチダクト17、サイドデフダクト61、及びセンターデフダクト65の開口を、サイドベントエア吹出口55、センターベントエア吹出口45、サイドデフロスターエア吹出口49、及びフロントデフロスターエア吹出口57に対応させてインストルメントパネル1に取り付けられる。
【0039】
そして、上記サイド補助ダクト67は、空調装置59により送出された空調エアの一部を、放出口からサイドベンチダクト15の底面(外面)に向かって放出する。放出口から放出された空調エアはサイドベンチダクト15の外面に沿って流れるので、実施形態1と同様に、結露の発生が防止されるとともに結露発生箇所近傍の水蒸気のさらなる蒸発が促進される。
【0040】
また、上記センター補助ダクト73は、空調装置59により送出された空調エアの一部を、放出口75からセンターベンチダクト17の底面(外面)に向かって放出する。放出口75から放出された空調エアはセンターベンチダクト17の外面に沿って流れるので、実施形態1と同様に、結露の発生が防止されるとともに結露発生箇所近傍の水蒸気のさらなる蒸発が促進される。
【0041】
その他の構成は、上記実施形態1と同じであるので同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0042】
したがって、この実施形態2では、放出口がサイドベンチダクト15の外面に向くようにサイド補助ダクト67を設置するだけで、放出口からサイドベンチダクト15の外面に容易に空調エアを当てることができる。同様に、放出口75がセンターベンチダクト17の外面に向くようにセンター補助ダクト73を設置するだけで、放出口75からセンターベンチダクト17の外面に容易に空調エアを当てることができる。
【0043】
また、サイドベンチダクト15やセンターベンチダクト17が内部に閉断面のダクト空間を有する筒形状に形成されているので、ブロー成形により容易に成形できる。
【0044】
なお、上記実施形態1において、放出口31は、サイドベンチダクト15やセンターベンチダクト17の底面に限らず、側面に設けてもよい。
【0045】
また、上記実施形態2において、サイド補助ダクト67の放出口がサイドベンチダクト15の側面に向けて空調エアを放出するようにしてもよいし、センター補助ダクト73の放出口75がセンターベンチダクト17の側面に向けて空調エアを放出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、車両用内装パネルの裏側に配設され、空調装置により送出された空調エアを吹出口に向かって導出するダクトの外面に結露が発生しないようにするダクトの結露防止構造として有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 インストルメントパネル(車両用内装パネル)
15 サイドベンチダクト(ダクト)
17 センターベンチダクト(ダクト)
31 放出口(空調エア放出手段)
45 センターベントエア吹出口
55 サイドベントエア吹出口
59 空調装置
67 サイド補助ダクト(補助ダクト、空調エア放出手段)
73 センター補助ダクト(補助ダクト、空調エア放出手段)
75 放出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用内装パネル(1)の裏側に配設され、空調装置(59)により送出された空調エアを吹出口(45,55)に向かって導出するダクト(15,17)の外面に結露が発生しないようにするダクトの結露防止構造であって、
上記空調装置(59)により送出された空調エアの一部を、上記ダクト(15,17)の外面に向けて放出する空調エア放出手段(31,67,73)を有していることを特徴とするダクトの結露防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載のダクトの結露防止構造において、
上記ダクト(15,17)は、内部に閉断面のダクト空間を有する筒形状に形成され、
上記空調エア放出手段は、上記ダクト(15,17)とは独立して上記空調装置(59)に接続され、上記空調エアを上記ダクト(15,17)の外面に向けて放出する放出口(75)を有する補助ダクト(67,73)であることを特徴とするダクトの結露防止構造。
【請求項3】
請求項1に記載のダクトの結露防止構造において、
上記ダクト(15,17)は、樋形状に形成されていて、開口側を上記内装パネル(1)の裏側に向けて該内装パネル(1)の裏面に接合され、
上記空調エア放出手段は、上記ダクト(15,17)の内外に貫通し、上記空調エアを上記ダクト(15,17)の下流側外面に向けて放出する放出口(31)であることを特徴とするダクトの結露防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−91694(P2012−91694A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241166(P2010−241166)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】