説明

ダクトホース

【課題】抗菌性能と消臭性能等のその他性能の双方を効果的に発揮させることができる高機能ダクトホースを提供する。
【解決手段】このダクトホースは、不織布又は織布からなる内層1を備え、この内層1の内周面に、抗菌剤及び消臭剤等を溶剤にて希釈してなる塗布液をグラビアコート等によって塗布している。これにより、ホース内周面に抗菌剤と消臭剤等が薄膜状にむらなく均等に露出して、ホース内部を流れる空気と効果的に接触させることができ、抗菌性能及び消臭性能等をそれぞれ十分に発揮させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば住宅やビル等における空調設備の送排気用として使用されるダクトホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空調設備に接続される送排気用のダクトホースとして、カビ等の細菌の発生を抑制する抗菌性能を有するものが一般的に広く知られている。この種のダクトホースとしては、例えば特許文献1〜3にも開示されているように、ホース内周面に抗菌剤を塗布又は含浸させたものが多く見受けられ、この場合、ホース内部を清潔に保つとともに、ホース内部を流れる空気を除菌して屋内外へ送出することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−233599号公報
【特許文献2】特開平10−197040号公報
【特許文献3】特開平9−210291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年においては、抗菌性能だけでなく、消臭性能等のその他性能も併せ持つ高機能ダクトホースの開発が望まれている。そこで、ホース内周面に対して、抗菌剤と消臭剤等のその他機能剤を重ね塗り或いは塗り分けしたり、さらには抗菌剤と消臭剤等のその他機能剤を含浸させるといった試みがなされている。
【0005】
しかしながら、抗菌剤と消臭剤等のその他機能剤を重ね塗りする場合には、一方がホース内周面に露出して、ホース内部を流れる空気と効果的に接触させることができるものの、これによって他方が覆い隠されてその性能を十分に発揮させることができないといった欠点があった。また、塗り分ける場合には、抗菌剤と消臭剤等のその他機能剤の双方ともホース内周面に露出して、ホース内部を流れる空気と接触させることができるが、塗布面積が狭くなるのでそれぞれの性能が半減するといった欠点があった。しかも、重ね塗りや塗り分けを行う場合には、少なくとも2度の塗布作業が必要となり、ホースの生産性を低下させてしまうといった欠点もあった。さらに、含浸させる場合には、抗菌剤と消臭剤等のその他機能剤をホース内周面に露出させるにあたって、多量の抗菌剤や消臭剤等が必要となってコスト高を招き、またホースの物性低下も懸念されるといった欠点があった。
【0006】
この発明は、上記の不具合を解消して、抗菌性能と消臭性能等のその他性能の双方を効果的に発揮させることができる高機能ダクトホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明のダクトホースは、ホース内周面に、抗菌剤及び消臭剤等のその他機能剤を溶剤にて希釈してなる塗布液をグラビアコート等によって塗布したことを特徴とする。
【0008】
具体的には、不織布又は織布からなる内層1を備え、この内層1の内周面に、前記塗布液を塗布してある。前記内層1は、前記塗布液を塗布した帯状の繊維質材6を螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を直接的又は間接的に接合してなる。
【0009】
また、前記内層1の外側に吸音層2を積層し、この吸音層2は、帯状の不織布20又は帯状の連続気泡構造の発泡樹脂材を螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を互いに突き合わせてなる。
【0010】
さらに、前記内層1の外側に断熱層4を積層し、この断熱層4は、帯状の独立気泡構造の発泡樹脂材30を螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を互いに突き合わせてなる。
【0011】
さらにまた、前記内層1の外周面に、螺旋状に巻回した補強芯材10を取り付けている。
【発明の効果】
【0012】
この発明のダクトホースにおいては、その内周面に抗菌剤と消臭剤等のその他機能剤がむらなく露出して、ホース内部を流れる空気と効果的に接触させることができ、これによって抗菌性能及び消臭性能等のその他性能をそれぞれ十分に発揮させることができる。
【0013】
しかも、1度の塗布作業で複数の機能剤をホース内周面に同時に塗布することができるので、従来のような重ね塗りや塗り分けを行う場合と比べて、作業効率を向上してホースの生産性を高めることができる。また、含浸させる場合と比べて、使用する機能剤を少量に抑えてコストダウンを図ることができ、さらにはホースの物性低下も抑えることができる。
【0014】
また、塗布液を塗布した帯状の繊維質材を螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を直接的又は間接的に接合することで内層を成形すれば、内層の成形工程と塗布工程とを連続して行うことが可能となり、ホースの一連の製造工程のうちの1工程として塗布工程を組み込んで、ホースの生産性をより一層高めることができる。
【0015】
さらに、内層の外側に吸音層及び/又は断熱層を積層することで、吸音性能や断熱性能を付与することができ、さらなる高機能化を実現することができる。さらにまた、内層を補強芯材によって補強して保形性を高めることで、内層の内周面における皺や撓みを抑えて、内周面に露出する機能剤と空気との接触面積が小さくなることを抑制できるから、ダクトの構造として抗菌性能及び消臭性能等のその他性能を最大限に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係るダクトホースは、例えば住宅やビル等の冷暖房装置の給排気口に接続されたり、或いは換気装置の給排気口に接続されて、これら空調設備に対する送排気用として利用される。
【0017】
このダクトホースは、内層1、吸音層2、中間層3、断熱層4及び外層5を内側から順に積層した構造となっている。
【0018】
内層1は、例えば通気性を有するポリプロピレン製の不織布からなる帯状の繊維質材6を螺旋状に巻回することによって、略直筒状に形成されている。なお、内層1を構成する繊維質材6としては、不織布だけに限らず、例えば通気性を有する織布を用いるようにしても良い。
【0019】
内層1の外周面には、例えばポリプロピレン製の押し出し成形品からなる補強芯材10が固着されて、内層1と補強芯材10とが一体化されている。これにより、内層1が略直筒状に維持され、その内周面及び外周面が略平滑に保たれている。
【0020】
補強芯材10は、内層1における隣接する繊維質材6の端縁部間に沿って螺旋状に巻回され、それら端縁部の外周面間に跨って熱融着された断面略凸形の主補強芯11と、繊維質材6の幅方向中央部に沿って螺旋状に巻回され、その中央部の外周面に熱融着された断面略凸形の副補強芯12と、これら主補強芯11と副補強芯12の間において螺旋状に巻回され、繊維質材6の外周面に熱融着された断面略円形の線状補強芯13、13とを備えている。これら主補強芯11、副補強芯12、線状補強芯13、13は、押し出し成形時の溶融熱によって、内層1の外周面に熱融着されている。なお、内層1における隣接する繊維質材6の端縁部同士は、上記のように主補強芯11を介して間接的に接合するだけでなく、主補強芯11を介することなく互いに重ね合わせるようにして直接的に接合しても良い。
【0021】
そして、上記補強芯材10においては、主補強芯11の高さが最も高く、副補強芯12、線状補強芯13、13の順に高さが小さくなっている。すなわち、主補強芯11のホース径外方向への張り出し量が大きく、副補強芯12のホース径外方向への張り出し量が小さくなっていて、線状補強芯13、13のホース径外方向への張り出し量が主補強芯11や副補強芯12よりもさらに小さくなっている。なお、この補強芯材10は、例えば内層1をそれ自身の保形性によって略直筒状に維持することができるのであれば必ずしも設ける必要はなく、場合によっては廃止しても良い。
【0022】
吸音層2は、例えば断面略長方形の帯状に形成した不織布20を、内層1の外周面に沿って螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を突き合わせることによって、略直筒状に形成されている。この吸音層2の不織布20は、例えばポリエステル樹脂等からなる。さらに、不織布20に抗菌剤を練り込むことによって、吸音層2の内部における菌の繁殖を抑制しても良い。
【0023】
なお、吸音層2としては、上記のようなものだけに限らず、例えば可撓性及び弾発性を有する断面略長方形の帯状の吸音発泡樹脂材を、内層1の外周面に沿って螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を互いに突き合わせることによって、略直筒状に形成したものであっても良い。この場合、吸音発泡樹脂材としては、例えば発泡ウレタン等からなる連続気泡構造の軟質発泡樹脂が用いられている。
【0024】
この吸音層2の内周側において、螺旋状に巻回した不織布20の隣接する端縁部間に副補強芯12が入り込むとともに、不織布20の幅方向中央部に主補強芯11が食い込んだ状態となっていて、吸音層2の位置ずれや捻れ等を防止している。
【0025】
中間層3は、例えば軟質樹脂テープ25を螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を熱融着してなる。なお、この中間層3は、必ずしも設ける必要はなく、場合によっては廃止しても良い。
【0026】
断熱層4は、例えば可撓性及び弾発性を有する断面略長方形の帯状の断熱発泡樹脂材30を、吸音層2の外周面に沿って螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を互いに突き合わせることによって、略直筒状に形成されている。この断熱層4の断熱発泡樹脂材30としては、例えば発泡ポリエチレン等からなる独立気泡構造の軟質発泡樹脂が用いられている。
【0027】
この断熱層4における断熱発泡樹脂材30の端縁部間の突き合わせ部分は、吸音層2における不織布20の端縁部間の突き合わせ部分に対してホース軸方向に位置ずれした状態となっており、これにより吸音層2の不織布20の突き合わせ部分、及び、断熱層4の断熱発泡樹脂材30の突き合わせ部が塞がれて、吸音性能及び断熱性能が高められている。
【0028】
そして、断熱層4の内周側において、断熱発泡樹脂材30の隣接する端縁部間に沿って螺旋状に巻回された例えばエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる細幅の接着用テープ31が、それら端縁部間及び中間層3の外周面に熱融着されている。これにより、断熱発泡樹脂材30の隣接する端縁部同士が接着され、また断熱層4と中間層3とが接着された状態となっている。
【0029】
このように、接着用テープ31によって、断熱発泡樹脂材30の端縁部同士をつなぐことで、例えばホースを曲げたときにでも、断熱発泡樹脂材30の端縁部間の突き合わせ部分が開いて、その端縁部間に隙間が生じるといったことがなく、断熱層4において良好な断熱性能を維持するようになっている。
【0030】
外層5は、例えば軟質樹脂テープ35を螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を熱融着してなる。この外層5は、断熱層4の外周面側において螺旋状に巻回された例えばEVAからなる細幅の接着用テープ36を介して断熱層4に接着されている。このような外層5を設けることで、断熱層4の劣化や損傷等を抑えるとともに、断熱性能を高めている。
【0031】
そして、上記のダクトホースにおいて、そのホース内周面すなわち内層1の内周面の全面に亘って、抗菌剤及び消臭剤を溶剤にて希釈してなる塗布液がグラビアコートされて、内層1の内側に抗菌・消臭層40が形成されている。この塗布液としては、抗菌剤及び消臭剤を同一の溶剤にて希釈したものだけでなく、抗菌剤と消臭剤をそれぞれ異なる溶剤にて希釈させた後、これらを混ぜ合わせて最終的に1溶液としたものを用いても良い。この際、各種添加剤を溶液に添加しても良い。
【0032】
塗布液の抗菌剤としては、例えばカテキン、キチン、キトサン等の天然物系抗菌剤、イミダゾール系、チアゾール系、四級アンモニウムフェノール系、ハロゲン系等の有機系抗菌剤、銀、銅等の金属を担持した金属担持無機化合物等の無機系抗菌剤を用いることができ、またこれらを適宜複数種併用しても良い。消臭剤としては、例えば活性炭等の物理吸着型多孔質化合物、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等の化学吸着型無機化合物、光触媒型チタン化合物を用いることができ、またこれらを適宜複数種併用しても良い。溶剤としては、アルコール系、エーテル系、エステル系、芳香族系等の有機溶剤を用いることができる。
【0033】
このような塗布液を使用したグラビアコートは、内層1の成形前に帯状の繊維質材6の片面に施すようにしており、このグラビアコートした帯状の繊維質材6を螺旋状に巻回することによって、内側に薄膜状の抗菌・消臭層40を有する略直筒状の内層1を成形している。すなわち、内層1の成形装置の手前側にグラビアコーティング装置を設置して、グラビアコート工程と成形工程とを連続して行うようにしており、このようにホースの一連の製造工程のうちの1工程としてグラビアコート工程を組み込むことで、ホースの生産性を高めている。
【0034】
上記構成のダクトホースでは、ホース内周面の全面に亘って抗菌剤と消臭剤が薄膜状にむらなく均等に露出して、ホース内部を流れる空気と効果的に接触させることができ、これによって抗菌性能及び消臭性能の双方の性能を十分に発揮させて、ホース内部を清潔に保つとともに、ホース内部を流れる空気を除菌、消臭して屋内外へ送出することができる。
【0035】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。
【0036】
例えば、この発明のダクトホースにおいては、上記のように抗菌性能と消臭性能を付与するだけでなく、さらに芳香性能等のその他性能を併せて付与しても良い。この場合、抗菌剤及び消臭剤とさらに芳香剤等を溶剤にて希釈してなる塗布液を、ホース内周面に塗布すれば良い。また、消臭性能の代わりに芳香性能等のその他性能を付与しても良く、この場合、抗菌剤と芳香剤等を溶剤にて希釈してなる塗布液を、ホース内周面に塗布すれば良い。
【0037】
さらに、この発明のダクトホースにおいては、グラビアコートだけに限らず、例えばハケやスプレー等を用いて内周面に塗布液を塗布するようにしても良い。
【0038】
さらにまた、この発明のダクトホースは、上記のように内層の外側に吸音層及び断熱層を積層したものだけに限らず、例えば図4に示すように吸音層のみを積層して断熱層を廃止したものや、図5に示すように断熱層のみを積層して吸音層を廃止したものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の一実施形態に係るダクトホースの一部破断斜視図である。
【図2】同じくその一部破断側面図である。
【図3】同じくその部分拡大断面図である。
【図4】他の実施形態に係るダクトホースの部分拡大断面図である。
【図5】別の実施形態に係るダクトホースの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1・・内層、2・・吸音層、4・・断熱層、6・・繊維質材、10・・補強芯材、20・・不織布、30・・断熱発泡樹脂材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース内周面に、抗菌剤及びその他機能剤を溶剤にて希釈してなる塗布液を塗布したことを特徴とするダクトホース。
【請求項2】
前記塗布液をグラビアコートによって塗布した請求項1記載のダクトホース。
【請求項3】
前記その他機能剤として、消臭剤を用いた請求項1又は2記載のダクトホース。
【請求項4】
不織布又は織布からなる内層(1)を備え、この内層(1)の内周面に、前記塗布液を塗布した請求項1乃至3のいずれかに記載のダクトホース。
【請求項5】
前記内層(1)は、前記塗布液を塗布した帯状の繊維質材(6)を螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を直接的又は間接的に接合してなる請求項4記載のダクトホース。
【請求項6】
前記内層(1)の外側に吸音層(2)を積層し、この吸音層(2)は、帯状の不織布(20)又は帯状の連続気泡構造の発泡樹脂材を螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を互いに突き合わせてなる請求項4又は5記載のダクトホース。
【請求項7】
前記内層(1)の外側に断熱層(4)を積層し、この断熱層(4)は、帯状の独立気泡構造の発泡樹脂材(30)を螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を互いに突き合わせてなる請求項4乃至6のいずれかに記載のダクトホース。
【請求項8】
前記内層(1)の外周面に、螺旋状に巻回した補強芯材(10)を取り付けた請求項4乃至7のいずれかに記載のダクトホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−224180(P2008−224180A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66594(P2007−66594)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000221502)東拓工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】