説明

ダクト内清掃装置

【課題】様々な大きさの、また、途中で径が変化する円形断面のダクトに対して、ダクトの配向角度にかかわらず使用可能な、ダクト内面を清掃できるダクト内清掃装置。
【解決手段】円形断面のダクト2の内面を清掃するためのダクト内清掃装置1において、回転駆動手段6と、同回転駆動手段に取り付けられ前記ダクトの周方向に回転可能な回転部材62と、同回転部材に、半径方向に配向され且つ半径方向移動可能に取り付けられた複数本の棒状部材61と、同棒状部材を、半径方向内側に付勢する弾性部材66と、前記棒状部材の半径方向外側端部に設けられた清掃具5と、接地部52aに吸着部材を備えるとともに前記ダクトの軸方向に前後進可能とする走行駆動手段40を備えた無限軌道装置3とを有することを特徴とするダクト内清掃装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気等のダクト、特に円形断面のダクト内面を清掃するためのダクト内清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円形断面の排気ダクトを清掃する場合、人手で行われたり、集塵機により清掃を行われることが多かったが、ダクト内面に付着した汚染を確実に且つ簡便に除去するのは困難だった。
そこで、たとえば、下記特許文献1、2に示されるような、回転するブラシを有した管状部材の内面清掃装置が、提案されている。
【0003】
しかし、特許文献1(特開平3−188980号公報)に示されるものは、エアモータで回転する軸に、回転でブラシの穂が広がるブラシを備えたダクト内面清掃装置であり、ダクトの大きさに依存するため、ダクト径によってブラシを付け替える必要がある。
また、上下方向に延びるダクトには適用不可能な機構である。
特許文献2(特開平6−277640号公報)に示されるものは、放射状に配置されたブラシの内部に、ブラシを外周方向に付勢するようにばねを配設し、そのようなブラシを円管の周方向に回転させて円管内面を清掃するものである。そのため、ブラシが外周方向に常に付勢されて突出しようとするため、装置のコンパクトさが得られない。
また、ブラシは円管内を流れる水流で受動的に回転し、能動的な回転ではないので、水流によっては回転数の増速機構等の更なる機構を要する場合があるうえ、円管の径による制約が強く、汎用性に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−188980号公報(第1図)
【特許文献2】特開平6−277640号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、様々な大きさの、また、途中で径が変化する円形断面のダクトに対して、ダクトの配向角度にかかわらず使用可能な、ダクト内面を清掃できるダクト内清掃装置を提供することを課題とする。
そしてさらには、可燃性気体や粉塵除去による粉塵に対して防爆性を備え、リモートコントロールが容易なダクト内清掃装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、円形断面のダクトの内面を清掃するためのダクト内清掃装置において、回転駆動手段と、同回転駆動手段に取り付けられ前記ダクトの周方向に回転可能な回転部材と、同回転部材に、半径方向に配向され且つ半径方向移動可能に取り付けられた複数本の棒状部材と、同棒状部材を、半径方向内側に付勢する弾性部材と、前記棒状部材の半径方向外側端部に設けられた清掃具と、接地部に吸着部材を備えるとともに前記ダクトの軸方向に前後進可能とする走行駆動手段を備えた無限軌道装置とを有することを特徴とするダクト内清掃装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のダクト内清掃装置において、前記無限軌道装置は、前記ダクトの周方向において複数個配設され、前記ダクトの半径方向に拡縮可能とする伸縮駆動手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のダクト内清掃装置において、記伸縮駆動手段は、各無限軌道装置の拡縮リンク機構を相互に連結して共に駆動し、各無限軌道装置の拡縮リンク機構が互いに半径方向の伸縮変位を同じくするように構成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のダクト内清掃装置において、前記吸着部材は、永久磁石であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のダクト内清掃装置において、前記回転駆動手段および前記無限軌道装置に係る駆動手段は、駆動用圧縮空気によって駆動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明のダクト内清掃装置によれば、回転駆動手段が回転部材を回転駆動すると、回転部材に取り付けられた複数本の棒状部材が、遠心力によって半径方向外方に移動する。そのため、棒状部材の半径方向外側端部に設けられた清掃具がダクトの内周面に当接した状態で、棒状部材が回転し、ダクトの内面が清掃される。
清掃具が設けられた棒状部材は複数本備えられるので、回転に際してバランスが取れる配置とすることができる。
棒状部材は、弾性部材によって半径方向内側に付勢されているので、非稼動時(非回転時)は回転部材の中心寄りに移動して、ダクト内清掃装置をコンパクトな状態とすることができ、ダクト内清掃装置の移動が容易になる。
一方、棒状部材は、清掃具がダクトの内周面に当接するまで、弾性部材に抗して、遠心力によって移動できるから、所定の範囲内で、ダクトの径を選ばず、清掃具や棒状部材を交換することなく多様な径のダクトに対応して清掃をすることができる。
【0012】
ダクト内清掃装置は、走行駆動手段を備えた無限軌道装置を有しているので、ダクトの軸方向に移動することによって、ダクト内面を軸方向に順次清掃することができる。
したがって、ダクト内に人が立ち入らずにダクト内の清掃が可能となる。
しかも、無限軌道装置は、接地部に吸着部材を備えているので、滑り落ちることなく、上下方向のダクト内も軸方向に移動できるため、ダクトの配向角度の制約を受けない。
また、所定の範囲内で、ダクトの径を選ばないから、ダクト内清掃装置の移動に伴いダクトの径が変化する場合にも対処が容易である。
【0013】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、無限軌道装置も、様々な大きさの、また、途中で径が変化する円形断面のダクトに対して容易に対処できるようになる。
【0014】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明の効果に加え、伸縮駆動手段は、複数の無限軌道装置の各拡縮リンク機構を同時に同量半径方向に伸縮変位させるので、ダクト内清掃装置の回転部材の回転中心をダクトの中心に一致させることができ、清掃具を設けた棒状部材の回転がスムーズに行われ、清掃が均一になされる。
【0015】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明の効果に加え、ダクトが通常の鋼製の場合、無限軌道装置のダクトへの吸着が確実に行え、上下方向のダクトへの適用が容易となる。
【0016】
請求項5の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明の効果に加え、可燃性気体や粉塵除去による粉塵に対して、防爆性が高く、且つ、駆動用圧縮空気の供給を制御することでダクト内清掃装置のリモートコントロールが容易なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るダクト内清掃装置の使用状態を示す模式的説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るダクト内清掃装置の、回転駆動手段としてのエアモータを略図示した、側面図である。
【図3】図2中、III−III矢視図である。
【図4】無限軌道装置とその走行駆動手段としての走行エアモータの側面図である。
【図5】図4中、V−V矢視図である。
【図6】図4中、VI−VI矢視図である。
【図7】図2における回転部材に、回転駆動手段としてのエアモータが取り付けられた状態の説明図である。
【図8】図7中、VIII−VIII矢視による回転部材、棒状部材、清掃具等の説明図であり、図2中のVIII−VIII矢視にも相当する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るダクト内清掃装置を、図1から図8に基づき説明する。なお、本明細書の説明において、後方とは、ダクト内清掃装置がダクト内に進入した状態で、ダクトの軸方向において駆動用圧縮空気チューブが延設される側であり、前方とは、その逆方向であり、ダクトの軸方向において清掃具が設けられる側である。図において、矢印FRは、前方を示す。
また、図中に付記された黒矢印は、説明に必要な部材の作動方向を、模式的に示すものである。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態のダクト内清掃装置1は、円形断面のダクト2内に挿入されて、ダクト2内を、無限軌道装置3によって前後進し、前方において清掃具5を、回転駆動手段としてのエアモータ6(図7参照)によってダクト2の内周面2aに沿って回転させ、ダクト2の内面を清掃する。図1においてダクト2は、略水平に配向されている。
【0020】
ダクト内清掃装置1の後部からは、ダクト内清掃装置1内の各駆動手段を駆動するための駆動用圧縮空気を供給し、または戻す駆動用圧縮空気チューブ7が延出している。
駆動用圧縮空気チューブ7は、要すれば適宜な圧縮空気チューブ繰出し引込み装置8を介して、駆動用圧縮空気制御・供給装置9に接続される。
駆動用圧縮空気制御・供給装置9にはリモートコントローラ10が接続されており、リモートコントローラ10によって、駆動用圧縮空気制御・供給装置9が制御されることで、駆動用圧縮空気の供給が制御され、ダクト内清掃装置1の各駆動手段がリモートコントロールされる。
【0021】
後述するように、無限軌道装置3は接地部に吸着部材を備えており、図1中に2点鎖線で示す上下方向に配向されたダクト2′内を滑り落ちず、前後進して、上下方向のダクト2′の内面の清掃ができる。
したがって、本実施形態のダクト内清掃装置1は、ダクト2の配向角度にかかわらず、その制約を受けずに適用される。
【0022】
図2、図3に基づき、本実施形態のダクト内清掃装置1の構造を説明する。
ダクト内清掃装置1の本体11は、後端板12と、前端板13と、その間を結び前後方向に配向する3本のメインシャフト14で構成される。
メインシャフト14はその前後端が、前端板13と後端板12とに、図3に示されるように、同一サークルC上に3等分間隔で締結されており、そのサークルCの中心軸は、回転駆動手段としてのエアモータ6の出力軸6aの中心軸Xと同芯であり、中心軸Xは、清掃具5を設けた棒状部材61を取り付ける回転部材62の回転中心軸でもある。
【0023】
各メインシャフト14には、固定ブラケット31が挿通されて前端板13に接して固定され、固定ブラケット31の半径方向外側に、リンクピン孔31aが設けられている。
固定ブラケット31と後端板12の間には、前方から順に、第1摺動ブラケット32、第2摺動ブラケット33が挿通されて摺動自在に取り付けられ、それぞれに、リンクピン孔32a、33aが設けられている。
第1摺動ブラケット32Aと第2ブラケット32Bとの間には連結棒34が締結されて、両者の間隔を規定している。
【0024】
無限軌道装置3のメインフレーム35は、メインシャフト14の半径方向外側に平行に配向され、前後にリンクピン孔32a、33aと同一間隔で、前方からリンクピン孔35a、35bが設けられている。
リンクピン孔32aとリンクピン孔35aとの間、およびリンクピン孔33aとリンクピン孔35bとの間には、それぞれ同じ長さの両端にピン孔が設けられたリンクバー36A、36Bがピン接合され、平行リンクが構成されている。
なお、メインフレーム35は間隔を空けた平行な2枚の棒状板材で構成され(図5、6参照)、リンクバー36A、36Bはその端部が、その間に挿入されてピン接合される。
リンクバー36Aの中央にもリンクピン孔36Aaが設けられ、固定ブラケット31のリンクピン孔31aとの間に、両端にピン孔が設けられた拘束リンクバー37がピン接合されている。
【0025】
各メインシャフト14にはそれぞれ、無限軌道装置3が同様のリンク機構を介して取り付けられており、それぞれの第1摺動ブラケット32が、共通の連結板21に取り付けられて、前後方向位置を同じくしている。
連結板21には、伸縮駆動手段としてのエアシリンダ20のシリンダロッド端20aが取り付けられ、エアシリンダ20は前後方向に配設されて、その後端20bが後端板12に固定されている。
【0026】
連結板21がエアシリンダ20により前後方向に移動すると、全ての第1摺動ブラケット32が同じく前後方向に移動するように駆動され、拘束リンクバー37にリンクピン孔36Aaでピン接合されたリンクバー36Aは傾きを変化させ、上記平行リンクの作用で、無限軌道装置3のメインフレーム35をメインシャフト14と平行を保ったまま、互いに同じく半径方向に伸縮変位させる。
すなわち、各リンク機構は、互いに半径方向の伸縮変位を同じくする拡縮リンク機構38を形成する。
したがって、連結板21は、エアシリンダ20とともに各拡縮リンク機構38を相互に連結して共に駆動する、伸縮駆動手段の一部を構成する。
【0027】
図2において、上側のメインシャフト14は、図示上サークルCの上端に位置した状態で図示され、無限軌道装置3が半径方向外側に伸出した状態を示す。エアシリンダ20のシリンダロッド端20aと連結板21と第1摺動ブラケット32が前方に移動している。
図2において、下側のメインシャフト14は、図至上サークルCの下端に位置した状態で図示され、無限軌道装置3が半径方向内側に縮退した状態を示す。エアシリンダ20のシリンダロッド端20aと連結板21と第1摺動ブラケット32が後方に移動している。なお、下側に示された無限軌道装置3には走行駆動手段としての走行エアモータ40が図示省略されている。
【0028】
なお、図3に示されるように、伸縮駆動手段としてのエアシリンダ20は、無限軌道装置3およびその走行駆動手段としての走行エアモータ40との干渉を避けた位置で、2箇所設けられている。
また、連結板21は、無限軌道装置3の走行エアモータ40および拡縮リンク機構38との干渉を避けた形状に形成されている。
【0029】
図4から図6に基づき、無限軌道装置3の走行に係る構造を説明する。図4から図6に示す無限軌道装置3は、図2において下側に図示された無限軌道装置3の状態に対応する。
前後方向に配設されたメインフレーム35には、それを挟むように対となった転動ローラ41が前後方向複数個所に設けられ、その後方にはチェーン駆動スプロケット42が設けられて、それらを一周する無限軌道帯としての無端チェーン43が、メインフレーム35の両側に計2条巻き掛けられている。図5に示されるように、チェーン駆動スプロケット42の一方の側部には同軸に固定された従動スプロケット44が取り付けられている。
【0030】
一方、メインフレーム35には、側方に向けて走行エアモータ取り付けブロック45が締結され、走行エアモータ取り付けブロック45と押さえ部材46との間に、走行エアモータ40がその出力軸40aを後ろ向きにして前後方向に配向されて挟持される。出力軸40aには傘歯車47が取り付けられる。
【0031】
走行エアモータ取り付けブロック45からは駆動軸支持部材48が延設され、傘歯車47と直角に噛み合う傘歯車49aを備えた駆動軸49が装着される。駆動軸49には駆動スプロケット49bが固定されており、駆動スプロケット49bと従動スプロケット44との間には、駆動チェーン50が掛け渡されている。
【0032】
したがって、走行エアモータ40が回転すると、その出力軸40aに固定された傘歯車47が回転し、それと噛み合う駆動軸49の傘歯車49aが回転し、駆動スプロケット49bも回転する。
駆動スプロケット49bの回転は、駆動チェーン50を介して、メインフレーム35側の従動スプロケット44に伝達され、同軸に固定されたチェーン駆動スプロケット42が回転する。
その結果、チェーン駆動スプロケット42に巻き掛けられた無限軌道帯としての無端チェーン43が走行駆動される。
【0033】
無端チェーン43は、図5、図6に示されるように、各無限軌道装置3のメインフレーム35の両側に1条ずつ、計2条掛け渡されているので、個々の無限軌道装置3は安定してダクト内周面2aに接地することができる。
そして、本実施形態においては、無端チェーン43の一つ置きのリンク51に側方延出部51aが設けられ、接地部材52が取り付けられるが、最も先端の接地部52aは永久磁石で構成されている。
【0034】
したがって、ダクト2が通常の鋼製のものであれば、無端チェーン43が駆動されると、進行前方側では、順次、各リンク51の接地部52aの永久磁石がダクト内周面2aに吸着する。
一方、進行後方側では、順次、各リンク51の接地部52aの永久磁石がダクト内周面2aから引き離されるが、多数の接地状態のリンク51の接地部52aがダクト内周面2aに吸着しているので、無端チェーン43全体としては、無限軌道装置3の走行時においても、安定してダクト内周面2aへの吸着状態を維持しつつ走行を行うことができる。
すなわち、本実施形態の無限軌道装置3は、接地部(吸着部材)52aが、永久磁石で構成されており、ダクトが通常の鋼製の場合、無限軌道装置のダクトへの吸着が確実に行え、上下方向のダクト2′(図1参照)内も滑り落ちることなく、軸方向に移動できるので、ダクト2の配向角度にかかわらず、その制約を受けない。
【0035】
なお、本実施形態においては永久磁石を吸着部材としたが、吸着部材はダクト2の材質、使用状態によって、何らかの他の吸着部材を用いても良い。
たとえば、リンク51毎に接地部(吸着部材)として吸盤を設け、拡縮リンク機構38で無限軌道装置3をダクト内周面2aに押し付けつつ、進行前方側では、順次、各リンク51の吸盤がダクト内周面2aに押し付けられて吸着し、後方では順次引き離されるようにしても良い。
【0036】
無限軌道装置3に係る駆動手段としての、エアシリンダ(伸縮駆動手段)20および走行エアモータ(走行駆動手段)40に接続される駆動用圧縮空気チューブ7は、適宜の束ねられた形で後方に延出して、図1で説明したように、要すれば適宜な圧縮空気チューブ繰出し引込み装置8を介して、駆動用圧縮空気制御・供給装置9に接続される。
【0037】
上記のように、ダクト内清掃装置1の本体11の回り、周方向に均等間隔に3基の無限軌道装置3が配設され、その無限軌道帯としての無端チェーン43がダクト内周面2aに当接してダクト内清掃装置1を支えているが、無端チェーン43を取り付けるメインフレーム35は、連結板21で相互に連結された各拡縮リンク機構38によって、互いに半径方向の伸縮変位を同じくするから、ダクト内清掃装置1の本体11の中心軸Xは、常にダクト2の中心軸と一致している。
【0038】
図2において、前端板13の中央には、ベアリングホルダセット60を介して回転部材62の回転軸62aが回転自在、軸方向移動不可に支持されており、回転軸62aの前端には回転中心軸Xに垂直に回転板62bが固定されている。
【0039】
図2における回転部材62に、回転駆動手段としてのエアモータ6が取り付けられた状態を図7に示し、本実施形態の清掃具5、回転部材62等につき、以下説明する。
前端板13には、ベアリングホルダセット60をかわした一方側(図示上方側)に後方へ突出するハンガーブラケット63が締結され、その後端においてハンガーブラケット63と押さえ部材64との間に、エアモータ6がその出力軸6aを前向きにして前後方向に配向されて挟持される。
【0040】
エアモータ6の出力軸6aは、回転部材62の回転軸62aと中心軸Xを一致させて連結され、回転板62bは、エアモータ6によって、中心軸X回りに回転駆動される。
図8にも示されるように、回転板62bには、中心軸Xから放射状に複数の摺動ホルダ65が設けられる。本実施形態において、複数の摺動ホルダ65は均等に4方向に4個が点対称に設けられている。
【0041】
摺動ホルダ65は、中空角管状で、中に棒状部材61が挿通されており、棒状部材61は所定の範囲で半径方向に移動可能に摺動ホルダ65に支持されている。棒状部材61の半径方向で外側端部の取付け部61aには、清掃具5が交換、取り付け容易な固定手段、例えば締結によって取り付けられ、弾性部材としてのコイルばね66によって、棒状部材61は半径方向で内側に付勢されている。
【0042】
したがって、ダクト2内で、エアモータ6が回転駆動すると、回転板62bが回転し、摺動ホルダ65内に挿通支持されている棒状部材61は、遠心力でコイルばね66の付勢力に打ち勝って、清掃具5がダクト内周面2aに突き当たるまで、半径方向で外側に移動する。
その状態で、清掃具5はダクト内周面2aを周方向に擦りながら中心軸X回りに回転して、ダクト2の内面の付着物除去等の清掃が行われる。またさらには、無限軌道装置3によってダクト2の軸方向の移動が加えられて、ダクトの軸方向に亘る清掃が行われる。
したがって、ダクト2内に人が立ち入らずに、ダクト2内の清掃が可能となる。
なお、清掃具5を設けた棒状部材61は複数本備えられ、点対称で複数の摺動ホルダ65にそれぞれ挿通保持されているので、回転においてバランスが取られ、振動の発生が抑制される。
【0043】
このとき、清掃具5は、遠心力でダクト内周面2aに突き当たるまで移動し、ダクト内周面2aの径に自動的に合わせて清掃を行うので、棒状部材61の移動可能範囲に対応するダクト内周面2aの径の範囲(Dmax〜Dmin)で、任意の径のダクト2の内面の清掃が清掃具5や棒状部材61を交換することなく可能となる。
また、ダクト内周面2aの径の範囲(Dmax〜Dmin)内であれば、ダクト2の径が途中で変化しても自動的に追随して、連続して清掃が可能となる。
【0044】
前述のように、全周に亘る複数の無限軌道装置3が、回転部材62の回転中心軸Xから同量変位してダクト内周面2aに接地するので、回転部材62の回転中心軸Xとダクト2の中心軸が一致する。
【0045】
また、各無限軌道装置3は半径方向に変位して、上記のダクト内周面2aの径の範囲(Dmax〜Dmin)で、ダクト内周面2aの径に合わせて、全ての無限軌道装置3がダクト内周面2aに接地し、ダクト内清掃装置1を支えることができる。
なお、ダクト内周面2aの径が違っても、エアシリンダ20の圧力を同じく保つ制御等により、全ての無限軌道装置3のダクト内周面2aへの接地が維持できる。
【0046】
したがって、回転部材62の回転、すなわち清掃具5のダクト内周面2aに沿った回転において、清掃具5はダクト内周面2aに均等な状態で当接することができ、清掃具5を設けた棒状部材61の回転がスムーズに行われ、振動の発生が防止され、清掃が均一になされる。
なお、図8に示されるように、回転板62bには、通風孔62cが設けられており、清掃のための通気が図られている。径の大きい後端板12にも、図示しないが、適宜の通風孔が設けられる。
【0047】
また、清掃を停止または終了して回転部材62の回転が停止する非稼動時(非回転時)には、棒状部材61はコイルばね66の付勢力によって回転部材62の回転中心軸X方向に移動するので、清掃具5がダクト内周面2aに接することなくダクト内清掃装置1の移動が可能となり、ダクト2に対するダクト内清掃装置1の搬入、搬出が容易になる。
また、ダクト2外においても、棒状部材61と清掃具5が引き込んだ状態なので、ダクト内清掃装置1がコンパクトなものとなり、取り扱いが容易である。
【0048】
なお、エアモータ6は、本実施形態においては、一方向回転タイプを図示しているが、両方向回転切り替えタイプのものであってもよく、その場合は、状況に合わせた清掃操作が容易となる。
いずれの場合も、エアモータ6からは後方に向けて駆動用圧縮空気チューブ7が延出し、無限軌道装置3に係る駆動手段、すなわちエアシリンダ(伸縮駆動手段)20および走行エアモータ(走行駆動手段)40のための駆動用圧縮空気チューブ7とともに、図1で説明したように、要すれば適宜な圧縮空気チューブ繰出し引込み装置8を介して、駆動用圧縮空気制御・供給装置9に接続される。
【0049】
したがって、本実施形態のダクト内清掃装置1の全ての駆動手段は駆動用圧縮空気を駆動源とし、駆動用圧縮空気によってリモートコントロールされるので、発火源を有さず、ダクト内清掃装置1は防爆性が高い。すなわち、ダクト2内で扱われる気体が可燃性気体を含む場合や、清掃によって除去した粉塵に対して、防爆性を備えている。
また、駆動用圧縮空気の供給を制御することで、ダクト内清掃装置1のリモートコントロールを容易に行える。
【0050】
清掃具5としては、ダクト2の材質、取り扱い気体、付着汚染物質やその状態等によって、適切な材質、形状のものを選択して、棒状部材61の取付け部61aにおいて、容易に交換、取り付けができ、例えば、ナイロンブラシロール、金ブラシロール等がある。防爆性をより高めるために適宜な防爆ブラシロール(例えば、市販のAMPCO社製AMCWB−30C)も使用できる。
【0051】
図8に示される、本実施形態の清掃具5は、ロール状(円形)であるが、それに限らず、ダクト内周面2aに向けたブラシ状のものを取り付けても良い。
しかし、図示のような、本実施形態のロール状のものの場合、ロール状の清掃具5に一定以上のトルクがかかった時は、取付け部61aにおいて棒状部材61に対して清掃具5が回転し、それ以下のトルクに対しては清掃具5が回転せず固定されるように、例えば弾性部材を介して、適切な締め付け力で清掃具5が締結取り付けされることが好ましい。
すなわち、通常は清掃具5は遠心力でダクト内周面2aに押し付けられ、棒状部材61の回転によって清掃具5自体は回転せず清掃が行われるが、ダクト内周面2aに溶接部等の突起部があった場合、突起部に突き当たることで清掃具5に一定以上のトルクが発生し、取付け部61aにおいて清掃具5が回転し、突起部を乗り越えられる。
ダクト内周面2aには、継ぎ目(溶接部)やボルトの突出等があるが、清掃具5が一定以上のトルクに対して回転可能としたことで、清掃具5等の破損が防止される。
また、清掃具5の表面がダクト内周面2aに付着していたゴミで目詰まりした場合、ダクト内周面2aとの間の摩擦が増大して清掃具5に一定以上のトルクが発生し、清掃具5が取付け部61aにおいて回転することによって、清浄なロール面で清掃を継続できる。
そのため、清掃具5の目詰まりによる清掃具5交換回数が大幅に低減される。
【0052】
以上のような本実施の形態のダクト内面清掃装置は、下記のような特徴を有している。
すなわち、円形断面のダクト2の内面を清掃するためのダクト内清掃装置1において、エアモータ(回転駆動手段)6と、エアモータ6に取り付けられダクト2の周方向に回転可能な回転部材62と、回転部材62に半径方向に配向され且つ半径方向移動可能に取り付けられた複数本の棒状部材61と、棒状部材61を半径方向内側に付勢するコイルばね(弾性部材)66と、棒状部材61の半径方向外側端部に設けられた清掃具5と、接地部52aに吸着部材を備えるとともにダクト2の軸方向に前後進可能とする走行エアモータ(走行駆動手段)40を備えた無限軌道装置3と、を有するように構成されている。
【0053】
そのため、エアモータ6が回転部材62を回転駆動すると、回転部材62に取り付けられた複数本の棒状部材61が、遠心力によって半径方向外方に移動する。したがって、棒状部材61の半径方向外側端部に設けられた清掃具5がダクト内周面2aに当接した状態で、棒状部材61が回転し、ダクト2の内面が清掃される。
清掃具5が設けられた棒状部材61は複数本備えられるので、回転に際してバランスが取れる配置とすることができる。
棒状部材61は、コイルばね66によって半径方向内側に付勢されているので、非稼動時(非回転時)は回転部材62の中心寄りに移動して、ダクト内清掃装置1をコンパクトな状態とすることができ、ダクト内清掃装置1の移動が容易になる。
一方、棒状部材61は、清掃具5がダクト内周面2aに当接するまで、コイルばね66に抗して、遠心力によって移動できるから、所定の範囲内で、ダクト2の径を選ばず、清掃具5や棒状部材を交換することなく多様な径のダクト2に対応して清掃をすることができる

【0054】
また、ダクト内清掃装置1は、走行エアモータ40を備えた無限軌道装置3を有しているので、ダクト2の軸方向に移動することによって、ダクト2の内面を軸方向に順次清掃することができる。
したがって、ダクト2内に人が立ち入らずにダクト2内の清掃が可能となる。
しかも、無限軌道装置3は、接地部52aに吸着部材を備えているので、滑り落ちることなく、上下方向のダクト2′内も軸方向に移動できるため、ダクト2の配向角度にかかわらず、その制約を受けない。
また、所定の範囲内で、ダクト2の径を選ばないから、ダクト内清掃装置1の移動に伴いダクト2の径が変化する場合にも対処が容易である。
【0055】
また、無限軌道装置3は、ダクト2の周方向において複数個配設され、ダクト2の半径方向に拡縮可能とするエアシリンダ(伸縮駆動手段)20を備えている。
そのため、無限軌道装置3も、様々な大きさの、また、途中で径が変化する円形断面のダクト2に対して容易に対処できる。
【0056】
また、エアシリンダ20は連結板21によって、各無限軌道装置3の拡縮リンク機構38を相互に連結して共に駆動し、各無限軌道装置3の拡縮リンク機構38が互いに半径方向の伸縮変位を同じくするように構成されている。
そのため、エアシリンダ20と連結板21は、複数の無限軌道装置3の各拡縮リンク機構38を同時に同量半径方向に伸縮変位させるので、ダクト内清掃装置1の回転部材62の回転中心Xをダクトの中心に一致させることができ、清掃具5を設けた棒状部材61の回転がスムーズに行われ、清掃が均一になされる。
【0057】
また、無限軌道装置3の接地部52aの吸着部材は、永久磁石である。
そのため、ダクト2が通常の鋼製の場合、無限軌道装置3のダクト2への吸着が確実に行え、上下方向のダクト2′への適用が容易となる。
【0058】
また、エアモータ6、および無限軌道装置3に係る駆動手段である走行エアモータ40とエアシリンダ20は、駆動用圧縮空気によって駆動される。
そのため、可燃性気体や粉塵除去による粉塵に対して、防爆性が高く、且つ、駆動用圧縮空気の供給を制御することでダクト内清掃装置1のリモートコントロールが容易なものとなる。
【0059】
以上、本発明のダクト内清掃装置の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態の態様に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲で多種多様な態様で実施されるものを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1…ダクト内清掃装置、2…ダクト、2′…ダクト、2a…ダクト内周面、3…無限軌道装置、5…清掃具、6…エアモータ(回転駆動手段)、7…駆動用圧縮空気チューブ、12…後端板、13…前端板、14…メインシャフト、20…エアシリンダ(伸縮駆動手段)、21…連結板(伸縮駆動手段)、35…メインフレーム、38…拡縮リンク機構、40…走行エアモータ(走行駆動手段)、43…無端チェーン(無限軌道帯)、51…リンク、51a…側方延出部、52…接地部材、52a…接地部(吸着部材)、61…棒状部材、61a…取付け部、62…回転部材、62a…回転軸、62b…回転板、65…摺動ホルダ、66…コイルばね(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形断面のダクトの内面を清掃するためのダクト内清掃装置において、
回転駆動手段と、
同回転駆動手段に取り付けられ前記ダクトの周方向に回転可能な回転部材と、
同回転部材に、半径方向に配向され且つ半径方向移動可能に取り付けられた複数本の棒状部材と、
同棒状部材を、半径方向内側に付勢する弾性部材と、
前記棒状部材の半径方向外側端部に設けられた清掃具と、
接地部に吸着部材を備えるとともに前記ダクトの軸方向に前後進可能とする走行駆動手段を備えた無限軌道装置とを有することを特徴とするダクト内清掃装置。
【請求項2】
前記無限軌道装置は、前記ダクトの周方向において複数個配設され、前記ダクトの半径方向に拡縮可能とする伸縮駆動手段を備えていることを特徴とする請求項1記載のダクト内清掃装置。
【請求項3】
前記伸縮駆動手段は、各無限軌道装置の拡縮リンク機構を相互に連結して共に駆動し、各無限軌道装置の拡縮リンク機構が互いに半径方向の伸縮変位を同じくするように構成されたことを特徴とする請求項2記載のダクト内清掃装置。
【請求項4】
前記吸着部材は、永久磁石であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載のダクト内清掃装置。
【請求項5】
前記回転駆動手段および前記無限軌道装置に係る駆動手段は、駆動用圧縮空気によって駆動されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載のダクト内清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−86133(P2012−86133A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234126(P2010−234126)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】